SUCS適用領域とユースケースのイメージ(1)

新井 康祐(あらい やすひろ)
(一社)次世代センサ協議会
新井 康祐

はじめに

 誰もが簡単に実世界の現象をセンシングし、収集したデータをすぐに活用できるような世界の実現を目指しているSUCS®(ザックス)について、4回のシリーズで紹介している。
 本稿では、今日センサ・ネットワークが置かれている環境・動向を踏まえてSUCSの活用領域を考察する。

1. デジタルトランスフォーメーション

 DXはエリック・ストルターマン教授による「IT の浸透が、人々の生活をあらゆる面で、より良い方向に変化させること」という提言として行われた。今日、コンピュータやインターネットを使ったデジタル情報処理により、将来の動向を予測する、最も効率のよい作業手順を見つける、など様々なことが可能となり、新ビジネスの創出などにも繋がっている。
 例えば、普段利用している天気予報では、様々な場所での気象情報をデジタルデータとして収集・蓄積し、それに基づき、スーパーコンピュータを使って将来の天気を予想している。

図1 デジタルトランスフォーメーション
図1 デジタルトランスフォーメーション

2. センサ・ネットワーク

 これらの技術を実現するために必要なものは、その時々において最適な「判断」をくだしていくことだ。人工知能(AI)は「判断」するところ、つまり人間の脳に当たる部分を、コンピュータを用いて実現しようとするものだ。判断するためには、その時々の 状況・情報を集めていくことが求められる。

図2 センサ・ネットワーク
図2 センサ・ネットワーク

ヒトは目や耳や鼻や口などを使って、色々なものを、見て、聞いて、触って、その感覚を脳に集めて判断している。目や耳や鼻や口など感覚器に相当する部分はコンピュータの世界ではセンサと呼ばれるデバイスにあたる。感覚器で集められた感覚を脳に集める神経網に相当する部分はコンピュータの世界ではネットワークと呼ばれる。
 様々なモノから得られるセンサデータをネットワークを介して有効に活用することが出来れば、AIが判断するための状況・情報を大量に集めることができる様になる。何をセンサとして使って、そこからどんなデータを、どうやって集めるか。これを追求してDXを進めるのだ。SUCSは、感覚器と神経網に相当する「センサ・ネットワーク」の領域にいるのである。

3. 世の中は変曲点に来ている

世界は、テクノロジーも、地球環境も、人々の価値観も、大きな変曲点に来ている。

図3 社会の “変化” と センシングの “変化”
図3 社会の “変化” と センシングの “変化”

(1) 社会・市場の背景 (従来) Society 3.0, 4.0での 「大量生産/大量消費」の時代だった。
(今後) ライフスタイルや人々の嗜好の多様化が進んでいる。またそのような要望に対応するための、IoTデータ収集やAIデータ解析のテクノロジーも進化している。

(2) テクノロジー活用の目的 この様な世界の変曲点にあって、テクノロジー活用の目的も変化してきている。
(従来) コスト削減や生産性追究など、主に生産設備を対象に経済合理性の追求を第一優先にしてきた。
(今後) ヒトを対象にした健康・満足度、地球環境維持も考える「経済合理性と社会課題解決の同時実現」が大きな目的になっている。DXやSociety 5.0の方向である。

(3) センサの測定対象 この様な背景とテクノロジー活用の目的の変化を受けて、センサの測定対象も変わってくる。
(従来) 主に物理データの取得だった。(電流値、CO2濃度、・・・)
(今後) ヒトの健康、複雑な五感の知覚機能、複数の環境要素を組み合わせた複雑で多様なデータ取得が求められてくる。(血糖値、道路・トンネル・橋梁などのインフラ寿命・・・)
これからは“SENSPIRE®”と呼ばれる、センサとソフトウェア(AI)との融合により、多様で複雑な量を解析し、それぞれの環境に個別カスタマイズした対応が可能になってくる。(参考文献[1],[2]参照)



次回に続く-



参考文献

  1. 今後のセンシングは如何に進化するのか 小林彬:https://sensait.jp/20360/
  2. IoT&ビッグデータ時代におけるセンサ・センシング技術を探る 小林彬 環境試験技術報告 第 14 回試験技術ワークショップ
  3. ビジネスの未来 山口周 プレジデント社
  4. スマートIoT推進フォーラム【ここに注目!IoT先進企業訪問記(55)】センサを活用した予知防災・減災の実現をめざす応用地質 稲田修一:https://smartiot-forum.jp/iot-val-team/mailmagazine/mailmaga-20211022


【著者紹介】
新井 康祐(あらい やすひろ)
次世代センサ協議会SUCSコンソーシアムWG2リーダ

■略歴
2022年 次世代センサ協議会入会、現在に至る