大阪大学産業科学研究所 名誉教授/特任教授 松本 和彦
◇背景・概要
近年の新型コロナウイルスのパンデミックは記憶に新しいものがある。従来、パンデミックと言えば、高病原性の鳥インフルエンザウイルスに起因するもので、図1に示す100年前のスペイン風邪に始まり、アジア風邪、香港風邪と多くの犠牲者を払ってきている。これらは〜40年近い周期で生じていた。ところがコロナウイルスのパンデミックは、2003年のSARSに始まり、MERS、今回の新型コロナウイルスと10年以内の周期で次々とパンデミックが生じていることがわかる。これは我々の日常生活にとって極めて高い脅威となるものである。
図1. 鳥インフルエンザウイルスとコロナウイルスによるパンデミックの歴史。 新型コロナウイルスでは700万人近い人が亡くなっている。
これらパンデミックを防ぐには、迅速、高感度なウイルス検出技術が必要不可欠である。すでに様々な検出技術があるが一長一短の感がある。図2に示すように、PCRは極めて高感度であるが、検査時間が〜1時間以上と長く、かつ高額で、専門の検査技師が必要である。またイムノクロマトを用いた抗原検査キットは安価でわずか15分で検査でき、素人でも可能な簡便さであるが、感度が不十分であり、新型コロナウイルスの検査でも問題になったように、偽陰性、偽陽性の結果を出してしまうことがあり、信頼性にかける。本研究では、グラフェンFETの高感度特性を利用し、高感度であり、かつ高速、簡便に計測できるシステムを開発する。
図2. グラフェンFETを用いたウイルスセンサの位置付け。PCR検査は高感度であるが検査時間が長時間必要であり、高額である。抗原検査は短時間、簡便であるが、感度が不十分である。グラフェンFETセンサは、高感度、高速で、かつ簡便にウイルスを検出可能である。
◇グラフェンFETセンサによるウイルス検出
図3にグラフェンの特長を示す。グラフェンは、伝導体と価電子帯が線形の分散関係を示す特殊な半導体であり、その有効質量はほぼ0に近い。その為、従来のシリコン半導体の移動度の1000倍近い200,000cm2 /Vsという驚くべき実験結果が示されている。またグラフェンの表面にはπ電子で形成される2次元電子ガス(電子が海のように広がっている)が表面に露出している。その為、グラフェンの表面に電荷を有するものが近づくとグラフェンの電気特性が大きく変化する為、高感度が得られる。図3に示すように、グラフェンの表面にウイルスを選択的に補足するレセプター(抗体や糖鎖)を修飾し、電荷を持ったウイルスが溶液中でレセプターに捕捉されると、ウイルスの電荷によりグラフェンの電気特性(ドレイン電流やディラックポイント)が変化する。この変化によりウイルス検出する。
図3. グラフェンの特長。伝導体と価電子帯が線形の分散関係を示す為、有効質量が小さく移動度が極めて高い。 また2次元電子ガスが表面に露出しているため、高感度特性を示す。
図4はSi/SiO2 基板上に集積された32個のグラフェンFETの光学写真である。その模式図と一個の拡大したグラフェンFETの写真を示す。FETのチャネル長は10μm、チャネル幅は100μmである。このFETアレイの左側半分には抗体を修飾してウイルスを選択的に検出し、FETアレイの右側半分は抗体を修飾しない参照FETとした。
さらに従来は、ピペットを用いて導入、排出していたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を自動送液する為に図5に示すマイクロ流路をグラフェンFETアレイ上に形成し、PBSを右の流入口から左の排出口に導入する手法を確立した。これにより再現性が向上した。このマイクロ流路に送液するために、コンピュータ制御のマイクロポンプシステムを形成し、これにより、PBSによる洗浄、溶液交換を定量的に、かつ再現性良く行うことが可能となった。
図4. 32個の集積したグラフェンFETアレイとその模式図、および一つのグラフェンFETの拡大図。
図5. グラフェンFETアレイ上に設置したマイクロ流路(μ-TAS)。右側からPBSを導入し、グラフェンFETアレイ上を通過して、左側から排出する。
上記に示すマイクロ流路測定システムを用いて図6に示す新型コロナウイルスの計測を行った。グラフェンFETアレイの左側13個のFETにはPBASE (1-Pyrenebutyric acid N-hydroxy-succinimide ester)を介して新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク抗体が修飾され、図6で赤いラインがその13個のFETのディラックポイントの平均値を示す。またグラフェンFETアレイの右側13個のFETには抗体を修飾せず、参照FETとし、図6で緑のラインがその13個のFETのディラックポイントの平均値を示す。赤と緑のディラックポイントの差はグラフェンに修飾された抗体とPBASEの電荷によるものである。ウイルスは抗体と体内の生理食塩水濃度である1xPBS(150mM)でもっともよく抗体と結合する。しかし1xPBSにおけるデバイ長は0.7nmであり、抗体の~10nmのサイズよりはるかに小さい。このため1xPBSにおいては、ウイルスが抗体に結合してもウイルスの電荷は電気2重層の電荷により遮蔽されて検出することができない。そこで我々は電荷を検出する際はPBS溶液を0.01xPBSに交換し、デバイ長を7nmと延伸させることにより、ウイルスの電荷をグラフェンFETで検出することに成功した。この溶液交換法を用いて新型コロナウイルスを計測したのが図6である。Tween20によるブロッキングの後、ウイルスの入っていない1xPBS溶液を2回導入している。これは溶液交換により、ディラックポイントに変動が生じないかを確認するものである。図6からわかるように溶液交換によるディラックポイントの変動は極めて小さいと結論づけられた。1×108 FFU/mLの濃度の新型コロナウイルスを含む1xPBS溶液を導入後、0.01xPBS溶液を導入してディラックポイントの変化を測定すると、図6右端の黄矢印に示すように、基準値を示す赤の一点鎖線よりディラックポイントが上むきに変化していることがわかる。これが新型コロナウイルスの電荷を検出した結果である。この変化について以下に詳細に検討する。
図6. マイクロ流路測定システムを用いて計測した新型コロナウイルスの測定結果。
図6の特性は13個のFETの平均値を示したものである。これらの個々のFETのディラックポイントの分布を詳細に解析する。図7は抗体の修飾されたグラフェンFET(左側)と抗体の修飾されていないグラフェンFET(右側)のそれぞれのディラックポイントの分布を示す。横軸はFETのナンバーリングである。青いラインは新型コロナウイルス導入前、赤いラインは導入後の値である。ウイルス導入前のディラックポイントは、抗体のある、無しで~40mV前後の差がある。これは抗体の電荷によるものと考えられる。ウイルス導入後、抗体のある領域ではディラックポイントは〜20mV近く大きく増加する。これに対して抗体のない領域は、ほとんど変化しないことがわかる。この両者のディラックポイントの変化分Δ V DP 図8に示す。
図7. 抗体を修飾したグラフェンFET(左側)と抗体の修飾していないグラフェンFET(右側)のディラックポイントの分布。青はウイルス導入前、赤はウイルス導入後である。
図8. 新型コロナウイルス導入による抗体修飾したFETとしないFETのデイラックポイントの変化。
図8の左側は抗体を修飾したもの、右側は抗体を修飾していないものである。抗体を修飾したFETではウイルスの導入前後で平均Δ V DP =19.1mVの大きなディラックポイントの変化が得られている。この変化は、抗体に選択的に結合したウイルスと、グラフェン上に物理吸着したウイルス、およびベースラインのドリフトに由来する。これに対して抗体を修飾していないFETでは平均Δ V DP =2.79mVの極めて小さな変化が生じた。この変化はグラフェン上に物理吸着したウイルス、およびベースラインのドリフトに由来する。したがってこれら二つのディラックポイントの変化分の差19.1mV-2.79mV=16.3mVは、ドリフトや物理吸着の影響を除いた、抗体に結合した新型コロナウイルスの電荷にのみよる変化であると結論づけられる。以上のように、参照FETによる信号を差し引くことにより、極めて正確に抗体に結合したウイルスの電荷のみを測定する手法を確立した。
次回に続く-
【著者紹介】
松本 和彦(まつもと かずひこ)
大阪大学産業科学研究所 名誉教授、特任教授
■略歴
昭56.3 東京工業大学大学院博士課程電子物理工学専攻修了 工学博士
昭56.4 電子技術総合研究所 電子デバイス部 固体デバイス研究室 入所
昭63〜平2 スタンフォード大学電気工学科 客員研究員
平 5.7 電子デバイス部 微構造エレクトロニクス研究室 室長
平13.4 産業技術総合研究所 総括研究員
平15.3 大阪大学 産業科学研究所 教授
平24.4〜26.3 大阪大学 産業科学研究所副所長
平25.10〜 大阪大学COI研究推進機構 副機構長・研究統括リーダー
平30.3 大阪大学定年退官、名誉教授、特任教授
■受賞
(1)平成 8年度 科学技術庁長官賞 研究功績者表彰
(2)平成 8年度 国際固体素子材料コンファレンス 最優秀論文賞
(3)平成10年度 第30回 市村学術賞 功績賞
(4)平成10年度 第57回 科学技術庁 注目発明選定
(5)平成11年度 第12回 工業技術院長賞
(6)平成13年度 国際固体素子材料コンファレンス 最優秀論文賞
(7)平成20年度 応用物理学会フェロー表彰
(8)平成23年 Micro Nano Process Conference 2010 Award Outstanding Paper
(9)平成24年 Micro Nano Process Conference 2011 Award Outstanding Paper
(10)平成25年, 26年, 27年 大阪大学総長表彰
(一社)日本ROV協会 代表理事 佐藤 友亮
1.はじめに
わが国では2007年に「超高齢社会(総人口の21%が65歳以上)」へ突入し、現在も先進諸国と比較して最も高い水準の高齢化率(29.1%:令和5年10月1日現在、内閣府 令和6年版高齢社会白書より)となっている。これは65歳以上の人口にして3,623万人である。これを受け、港湾工事においてはi-Constructionの推進により、施工の省力化、機械化、自動化が図られている。
一方、高度経済成長期に建設されたインフラの水中部分の点検や作業については、従来潜水士が担っていた。しかし、潜水業界でも働き手が少子高齢化による減少のため、インフラ維持管理においても省力化、機械化、自動化による生産性の向上によって成長力を高めることが極めて重要となる。
本稿では現在の水中インフラが抱える課題とそれを解決するROV(Remotely Operated Vehicle、水中ドローン)について紹介する。
2.水中インフラが抱える課題
2.1.水中インフラの老朽化
そもそも水中インフラとは、港湾設備やダム、河川などに架けられた橋梁、各種水道や発電設備、海底ケーブルなど水中に設置されている設備を指す。今後は洋上風力発電設備もこれらに加わることとなり、今後ますます重要視される分野と思われる。
このような水中インフラ設備は高度経済成長期の1964年東京オリンピックに向けて建設ラッシュを迎えた。海外からの来客に応えられるよう、豪華客船が停泊可能な港を整備し、都内や地方からの移動を円滑にするため高速道路や新幹線なども整備された。以下に建設された各設備の年度別データを示す。
図1:建設年度別橋梁数(令和2年版国土交通白書)
図2:建設年度別港湾施設数(令和2年版国土交通白書)
これらのデータから、橋梁は陸上のものを含め、建設後50年経過したものが2029年には52%に到達し、港湾施設は2024年現在ですでに30%以上となっている。一方で、特に橋梁に関しては9割以上のものが地方公共団体によって管理されており、予算的に容易に架け替えることが不可能な状態となっている。そのため、点検を実施して劣化の進行度合を判定し、優先順位を付けて補修をする水中インフラ維持管理が重要となっている。
2.2.水中インフラへの打撃
前項の老朽化に加え、昨今の地震や台風、ゲリラ豪雨などの災害が頻発化、激甚化の傾向にある。特に台風は以前に比べ、地球温暖化による海面水温の上昇により日本近海で発生し、また大型なものが増えてきた。これにより台風への準備期間が短く、また大雨や風により水中インフラに深刻なダメージをもたらしている。以下に土砂災害の発生件数の推移を示す。
図3:土砂災害の発生件数の推移(令和2年版国土交通白書)
上図の平成12年から21年と平成22年から令和元年で比べると、土砂災害件数が約1.5倍に増えていることがわかる。老朽化を迎えている水中インフラに昨今の災害によるダメージがいかに深刻か見て取れる。水中インフラの事故事例について次項にて説明する。
2.3.明治用水頭首工漏水事故
令和4年5月15日、愛知県豊田市を流れる矢作川の取水施設「明治用水頭首工」左岸側において大規模な漏水事故が発生した。原因は堰の下、地中に水の通り道が作られる「パイピング現象」によるものとされ、これは施設の老朽化などによるものと結論付けられた。これにより農業用水や工業用水の取水が一時制限され、時期的に稲作への被害や周辺の自動車関連工場の一時操業停止などの被害をもたらした。さらに、魚道の水位低下によりアユの遡上ができなくなるなどの生態系まで影響が広がった。
図4:明治用水頭首工(東海農政局)
当初、令和7年度中に取水施設の土台部分をコンクリートにしたうえで、水門の柱を立て直す工事などを完了させる見込みであった。しかし、所管の農林水産省は令和6年6月に右岸側も対策が必要だとして水が取水施設の下を通り抜けないよう板を設置する追加工事を決定した。右岸側の工事は令和8年10月から開始され、工期は令和9年度中まで延長となった。
明治用水頭首工は昭和26年から32年にかけて造成され、現在60年以上が経過する老朽化したインフラ設備である。このような水中インフラ設備が前項の通り日本各地に点在しているため、点検の需要が増大している。
2.4.超高齢社会「日本」
冒頭に記載した高齢化に関するデータを以下に示す。
図5:平成12年度年齢5歳階級別人口(総務省統計局 5歳階級別人口より作成)
図6:令和4年度年齢5歳階級別人口(総務省統計局 5歳階級別人口より作成)
図4の50-54歳のピークは第1次ベビーブーム(団塊の世代)で、25-29歳のピークは第2次ベビーブーム(団塊ジュニア世代)を示している。図5はその22年後となる令和4年度のデータで、第1次ベビーブームの世代の殆どが定年退職を迎える一方で若年層に第2次ベビーブーム以降のピークはなく、労働者は減少の一途を辿っている。そのため、有効求人倍率(図6、表1)は高止まりを見せており、省力化、機械化、自動化による生産性の向上が喫緊の課題となっている。
図7:有効求人倍率の推移(令和2年版国土交通白書)
表1:令和6年7月度有効求人倍率 (厚生労働省 一般職業紹介状況より作成)
職業
有効求人倍率
全職業
1.25
建築・土木・測量技術者
6.58
建設・採掘従事者
5.65
自動車運転従事者
2.72
※パート除く
次回に続く-
参考文献
浦環・髙川真一(1997)「海中ロボット」成山堂書店
佐藤友亮・高木圭太・魚谷利仁(2021)「ROV技能認定 ROV分類Class1準拠テキスト」日本ROV協会
【著者紹介】
佐藤 友亮(さとう ゆうすけ)
一般社団法人日本ROV協会 代表理事
■著者略歴
2011年 明治大学理工学部物理学科卒業
2011年 株式会社東陽テクニカ入社
2019年 日本海洋株式会社入社
2021年 一般社団法人日本ROV協会設立
2022年 株式会社水龍堂設立
2024年 一般社団法人日本ROV協会 代表理事就任
2024年 株式会社UMINeCo 設立
現在に至る
キヤノンは、監視・産業・医療用CMOSセンサの新製品として、1/1.8型で有効画素数約212万画素(1,936×1,096)の“LI7070SAC(カラー)/LI7070SAM(モノクロ)”を2024年10月31日に発売した。明暗差の大きい環境でのハイダイナミックレンジ撮影、暗所での低照度撮影に加え、近年需要が拡大する近赤外線域の高感度撮影も可能にし、監視カメラ・産業用カメラの多様化するニーズに応えるとのこと。
近年、監視カメラ・産業カメラにおいては、人間の目で見える可視光域の撮影に加え、人間の目で見えない近赤外線域の撮影の需要が拡大している。これに伴い、近赤外線域の撮像が可能なCMOSセンサーは、交通監視をはじめとする監視用途のほか、産業用途などにも活用の幅が広がっている。キヤノンはこうした市場のニーズに応えて、近赤外感度を高めたCMOSセンサーの新製品“LI7070SAC(カラー)/LI7070SAM(モノクロ)”を発売する。新製品は、監視用途、産業用途、医療用途などでの活用が可能である。
■ 近赤外線域での高感度撮影を実現
肉眼では見えづらい暗い環境での監視を実現するほか、暗所での検査などの産業用途、蛍光血管撮影などの医療用途にも応用が可能である。”LI7070SAC”は、同じ1/1.8型で有効画素数約212万画素の「LI7050(※1)」(2020年10月発売)と比較し、近赤外感度が約2.4倍(※2)に向上している。
■ 二重露光で120dBの広いダイナミックレンジを実現
新製品は、異なる露光時間で読み出した2枚の画像を重ねる二重露光方式により、120dBの広いダイナミックレンジを実現するHDR駆動機能を搭載している。トンネル内で検査用の照明を点灯する際など、明暗差の大きい状況においても白飛び、黒つぶれを抑えて高画質で撮像することが可能。通常駆動時でも75dBを実現する。
■ 0.08luxの低照度環境下でも撮像が可能
小型ながら高感度を実現できるよう画素構造を設計するとともに、低ノイズを達成し、”LI7070SAC”は0.08lux(ルクス)、”LI7070SAM”は0.04lux(※3)の低照度環境下でも、フルHD動画を撮像可能。公共施設や道路・交通機関などにおける夜間監視をはじめ、小型かつ高感度なイメージセンサーが求められる、水中ドローンに搭載するカメラや、顕微鏡用カメラなどにおいても活用できるという。
※1 カラーセンサーのみ。
※2 近赤外線域の波長850nmでの量子効率は、“LI7070SAC”は33%、「LI7050」は14%
※3 満月の夜の明るさの目安が0.3lux、三日月の月明かりの明るさの目安が0.01lux。
プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001057.000013980.html
自動運転の民主化をビジョンに掲げる(株)ティアフォーは、2023年10月のGLP ALFALINK相模原での認可の取得に続き、長野県塩尻市の一般道において運転者を必要としない自動運転システム「レベル4」の認可を取得した。歩行者と一般車両が混在する環境下の一般道において、車両最大時速35kmでの走行によるレベル4認可は全国で初めてとなる。なお、今回の道路運送車両法に基づく認可の対象は塩尻駅と塩尻市役所間の経路であるという。
政府は「デジタル田園都市国家構想戦略」において、2025年に50箇所程度、2027年に100箇所以上での自動運転サービスの導入を目標として掲げている。本方針の基、塩尻市は国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業(自動運転事業)」に採択され、自動運転の社会実装を進めている。
今回の認可は、ティアフォー製の自動運行装置「AIパイロット*1」に対して与えられた。「AIパイロット」は、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware*2」とそれに対応したセンサーシステム、コンピュータシステム、車載情報通信システムから構成され、様々な車両に搭載可能である。自動運転システムの開発を目指すパートナーへのソリューションとして、今回のレベル4認可で得たプロセスや設計は公開し、自動運転の社会実装に貢献していくとしている。
・ティアフォー 代表取締役社長CEO 加藤真平のコメント
――日本では人口減少や高齢化により地域公共交通の維持が困難となる社会課題が顕在化しています。ティアフォーでは、自動運転技術による社会課題の解決を目標に掲げ、自動運転移動サービスの社会実装を進めてきました。塩尻市でのレベル4認可の取得はその大きな一歩です。今後も研究開発と実証実験を重ね、社会実装を加速させていきます。
・長野県塩尻市 市長 百瀬敬氏のコメント
――本市では「次世代交通がもらたす安心して便利に暮らせる地域社会の実現」を目指し、2020年度からティアフォーとともに自動運転サービスの導入検討と実証走行を進めてきました。昨年度からは「Minibus」を用いて自動運転レベル4の実現に向けた走行試験を重ねてきましたが、この度、本市内を運行区間とする走行環境条件付与が行われたことで、本市内一般公道歩車混在空間における自動運転レベル4の社会実装が近づきました。今後もティアフォーと緊密に連携し、自動運転レベル4の社会実装を進めるとともに、この取り組みをきっかけに自動運転レベル4の社会実装が全国に広がり、自家用車以外の交通手段の確保や交通事故減少、地域活性化による地域公共交通の維持につながることを期待しています。
・長野県塩尻市民のコメント
――塩尻市の市民からは、「自動運転やDXが進んでいる塩尻市で自動運転バスが走ることが大変楽しみであり、たくさん利用していきたい」「移動に便利な社会となるために、これからも積極的に進めて欲しい」「運行を応援している」「自動運転バスにはたくさんの技術と時間が詰まっており、市民がそれを使えることを誇りに思う」などのコメントも寄せられているという。
*1 AIパイロットは、ティアフォーの登録商標。
*2 Autowareは、The Autoware Foundationの登録商標。
プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000080.000040119.html
・最新の実績あるMeters and MoreおよびPRIME1.4規格を標準搭載したプログラマブル電力線通信(PLC)モデムがスマート・メータの柔軟な導入に貢献
・10月22日~24日にミラノ(イタリア)で開催されるEnlit Europeにおいて、STのマルチ・プロトコル対応スマート・グリッド・ソリューションを展示予定
STマイクロエレクトロニクスは、実績あるMeters and MoreおよびPRIME 1.4スマート・グリッド規格を標準搭載したプログラマブル電力線通信(PLC)モデム「ST85MM」を発表した。同製品は、エネルギー・データ処理の柔軟性を向上させる次世代マルチ・プロトコル対応スマート・メータに最適であるという。
現在、あらゆる場所でエネルギー転換が進み、メータリングの役割が進化してきている。この背景には、よりインテリジェントなネットワークや新たなステークホルダーが、追加情報や使用データへのより柔軟なアクセスを求めている状況がある。STは、ヨーロッパおよび世界各地の主要な公益事業者と長期的かつ密接な関係を築いており、ST製品をベースに6000万台以上のメータが導入されているMeters and MoreおよびPRIME技術において独自のリーダーシップを発揮している。この経験を活かし、実績あるMeters and MoreおよびPRIME技術をサポートするプログラマブルPLCモデム「ST85MM」を開発した。
ST85MMは、プログラマブルDSPおよびArm® Cortex®-M4コアを搭載しており、Meters and MoreまたはPRIMEいずれかのプロトコルを実行可能である。完全なPLCアナログ・フロントエンドと、ターンキーの安全な通信専用に、すぐに使える最先端暗号化エンジンを統合している。また、電力線ドライバIC「STLD1」をコンパニオンICとして使用することで、ST85MMと連携してスマート・メータ設計のPLC通信機能を完成させる。
STは、最新のプロトコル機能に加えて、ベース・ノードでPRIME 1.4 Hybrid(PLCおよびRF)の認定を取得したことを市場で初めて発表した。これにより、ST85MMと超低消費電力無線トランシーバ「S2-LP」を組み合わせることで、電力線接続と無線接続の両方のメリットを活用できる。
ST85MMは現在入手可能で、QFN56パッケージ(7 x 7mm)で提供される。
(https://www.st.com/ja/interfaces-and-transceivers/st85mm.html?icmp=tt41197_gl_pron_oct2024)
STは、2024年10月22日~24日にミラノで開催されるエンド・ツー・エンドのエネルギー展示会「Enlit Europe」において、ST85MMとすべてのスマート・グリッド用マルチコネクティビティ・ソリューションを展示する予定であるとのこと。
プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001412.000001337.html
大阪ガス(株)と、グーグル・クラウド・ジャパン(同)〔以下「Google Cloud*1」〕は、製造業における製品の品質向上や生産性向上などを目的に、大阪ガスのセンシング技術*2に、Google CloudのAI基盤技術を活用した、物質内の成分を推定するAIシステムの開発に向けた共同実証を開始した。
大阪ガスは、長年にわたり調理機器の開発を行う中で、調理・加工における様々な食材の変化に関する知見を深めてきた。この知見を基に、ガスセンシング技術、画像解析技術、非接触温度計測技術、近赤外分光分析技術*3などの独自のセンシング技術を開発し、食品製造時の食材の成分変化(水分、発生ガスなど)や状態変化(構造、温度など)などを数値化・可視化する取り組みを進めてきた。
今後は、これらのセンシング技術とGoogle CloudのAI基盤技術を組み合わせることで、製造業における様々な物質の成分や状態変化を推定することを目指す。
この取り組みの第一弾として、2024年10月より、近赤外分光分析技術とGoogle CloudのAI基盤技術を組み合わせ、食材や樹脂内の水分量を高精度かつリアルタイムに推定する成分推定AIシステムの共同実証を開始した。
従来の一般的な水分量把握の方法としては、食材では熟練者が物質の見た目・手触りから水分量を判断する方法や試料を乾燥させた際の重量変化を基に測定する方法が、樹脂では特定の試薬を用いて測定する方法などがある。しかしながら、これらの方法には、属人的であることや時間を要するなどの課題があり、本取り組みによりそれらの解決を目指す。
◎共同実証の概要
実証期間:2024年10月~2025年3月
実証内容:センシング技術とAIを用いた物質内の水分量推定精度の検証
対象業種:食品関連業種、樹脂関連業種
役割分担:■大阪ガス
①近赤外分光分析技術による対象物の近赤外スペクトル*4の撮影
②AIを用いた対象物の近赤外スペクトルの解析による水分量の推定
■Google Cloud
①AI基盤技術の提供
②成分推定精度の改善に資する技術情報の提供、提案および助言
*1: Google CloudはGoogle LLCの商標
*2: センサ(感知器)などを使用して様々な情報を計測・数値化する技術の総称
*3: 対象物に近赤外光を照射して、光の吸収の度合いから成分を判別・定量する方法
*4: 光を波長ごとに分光し、波長ごとの光の強度分布を並べたもの
プレスリリースサイト:https://www.osakagas.co.jp/company/press/pr2024/1783738_56470.html