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京セミ、アバランシェフォトダイオード「KPDEA003-T」発表

(株)京都セミコンダクター (以下京セミ) は、光ファイバー敷設の際に不可欠なOTDR (Optical Time Domain Reflectometer: 光パルス試験器) *1向けに、高感度・高増倍・低ノイズを実現したKP-A アバランシェフォトダイオード*2「KPDEA003-T」を発表した。

DXおよび5Gの普及に伴い、光ファイバーの敷設も増加の傾向にある。光ファイバーの敷設でいち早く異常を発見するために、OTDRに使用されるアバランシェフォトダイオードには非常に高感度で低ノイズの特性を満たす要望があった。

要望に応えるべくKP-A アバランシェフォトダイオード「KPDEA003-T」はOTDRなどの光ファイバーのセンシング向けに開発された。本製品はSC光コネクター付きシングルモードファイバーが同軸上に一体化されたモジュールなので、SC光コネクターをご使用の光学機器と容易に接続が可能である。京セミの独自開発のウエハ構造で同社従来製品より2倍の高増倍*3での使用が可能となった。また暗電流の低減も実現しており同社従来製品の1/5の低ノイズ*4性能となっているという。

これらの特性によりPINフォトダイオードや従来型のアバランシェフォトダイオードでは出来なかった微弱な光のセンシングが可能になる。OTDRをはじめとした光ファイバーのセンシングはもちろんのこと、他の医療・分析分野のセンシングや光通信用途など幅広く使用できる。
なお、KP-A アバランシェフォトダイオード「KPDEA003-T」の量産開始は2022年9月30日を予定している。

*1 OTDR: Optical Time Domain Reflectometer 高速通信で用いられる光ファイバー網の障害を発見する光通信用計測機器
*2 アバランシェフォトダイオード: 逆バイアス電圧を印加することによる光電流増幅を備えた半導体フォトダイオード。 この光電流増幅は、通常のフォトダイオードよりもはるかに多くの電流を発生する。 高感度が要求される用途に使用される。
*3 従来製品KPDEA005-56Fとの比較 電流増倍率: M=58  測定条件: 入力発光波長λ=1310 nm , VR=V (at ID=1µA)
*4 従来製品KPDEA005-56Fとの比較 暗電流: ID=2 nA 測定条件: 逆電圧VR=降伏電圧VBR x 0.9

ニュースリリースサイト(kyosemi):https://www.kyosemi.co.jp/news/2111/

洋上風力発電の方向性と可能性 (2)

足利大学 理事長
牛山 泉

2.3 国内の洋上風力発電導入の動き

 国内における洋上風力発電については、着床式、浮体式ともに、2008年より経済産業省、NEDO、環境省により洋上風況観測システムや洋上風力発電の実証研究がなされ、その成果から、台風、地震荷重、波浪など環境条件の評価手法や支持構造物の計算手法などについてIEC国際電気標準会議に対して提案を行ってきた。さらに2011年から、福島沖での浮体式洋上風力発電の実証研究も2MW、5MW、7MW風車とそれぞれ異なる形式の浮体を用いて実証試験が行われた。6) 7)
 一方、2016年の港湾法の改定で、港湾内風力の設置が可能となり、2019年4月からは、「海洋再生可能エネルギー発電に関わる海域利用促進法」も施行され、一般海域での洋上風力発電の開発環境が整った。同年6月には海域指定、事業者選定を含むガイドラインが公表された。これは経済産業省、国土交通省を中心に関係省庁が共同で進められており、地元調整の場である地域協議感の設置、事業者の選定などが定められている。
 そして2019年7月末には既に一定の準備段階に進んでいる海域として、青森3海域、秋田4海域、新潟1海域、千葉1海域、長崎2海域の5県11海域のうちから、最初の有望な4海域(秋田県能代市沖、秋田県由利本荘市沖、千葉県銚子市沖、長崎県五島市沖)が発表された。認定された事業については30年間一般海域での海域利用が可能となる。
 欧州諸国に比べて大きく遅れていた日本の洋上風力発電は、20020年10月の菅首相による「2050年ゼロカーボン宣言」を契機に、CO2ゼロ実現の最有力手段として洋上風力発電が大きく取り上げられ、官民協議会も立ち上がった。2020年末には「洋上風力発電産業ビジョン」が発表され、2030年までに1000万kW、2040年までに3000万~4500万kWを導入するという野心的な目標が掲げられた。さらに、民間では2040年までに洋上風力発電関連産業のサプライチェーンにおいて国内到達率60%を目指すことも確認されたのである。8)
 再エネ海域利用法の施行プロセスと施行状況を図3に示すが、2019年12月には長崎県五島市沖を初の促進区域に指定し、占用計画の評価を経て、2020年6月には戸田建設が事業者に確定している。続いて、2020年7月には秋田県由利本荘市沖や千葉県銚子市沖などが促進区域に指定され、さらに、2021年7月には秋田県八峰町・能代市沖を含む4海域が新たな有望区域として公表された。認定された事業については、30年間にわたって一般海域での海域利用が可能となる。

図2 再エネ海域利用法の施行プロセスと施行状況
(出典、経済産業省HP一部加工)
図2 再エネ海域利用法の施行プロセスと施行状況

 このように、各自治体の要望を反映しつつ、政府主導で洋上風力発電の導入が急ピッチで実施されつつあるが、図4に示すように、多くの海域で洋上風力発電のための環境アセスメントが実施されている。これらの案件は、2021年末時点で総容量約35GWに達している。

図3 国内における洋上風力発電導入計画
出典:発電所環境アセスメント情報サービス(経済産業省HP)等から作成
図3 国内における洋上風力発電導入計画

3.わが国における洋上風力発電の可能性と課題

 洋上風力発電を今後の脱炭素化社会の最強の切り札と分析しているIEA Offshore Wind Outlook 2019において、地域別に見ると圧倒的に先行している欧州に加えて、今後は中国、中国以外のアジア、そして米国が大きく増えるとしている。洋上風力の潜在開発可能量ポテンシャルは、欧州、米国、日本が大きく、特に日本は電力需要の9倍ものポテンシャルがあることが注目される。日本政府の2040年までに3000万kW~ 4500万kWという導入計画を達成すると日本は、図4に示すように、2040年には米国並み世界3位ないし4位の洋上風力発電国となり、再エネを主力電源とする第6次エネルギー基本計画も実現することになる。2) 8)

図4 洋上風力発電の現状と将来予測(政策シナリオ)
(出典、IEA offshore wind outlook 2019)
図4 洋上風力発電の現状と将来予測(政策シナリオ)

 一方、世界的に洋上風力発電が急進展する状況の中で、国内では2015年に、三菱重工業はデンマークのVestas社との合弁により、国内の開発製造を休止し、2019年には日立製作所と日本製鋼所が風車の製造からの撤退し、国内に1MWを超える風車メーカーは存在しないのが現状である。現在、洋上風力活性化の動きの中で、欧州で実績のある洋上風力発電事業者が日本市場に強力な攻勢をかけており、日本は国内風力関連産業を再興しうるかどうか、文字通り岐路に立たされているのである。さらに、洋上風力発電の運用が始まると洋上風力発電の技術者に加えてO&M要員などの急増が見込まれることから、洋上風力発電関連の人材育成も急務と言える。9) 10)
 このような脱炭素化が世界の大目標となる動きの中で、IEA(国際エネルギー機関)はEnergy Outlook 2019年版において、初めて再エネを大きく取り上げ、洋上風力に関する詳細な分析をしている。図5に示すように、当然のことながら、石炭火力は現状の20%から2040年には2%~3%に激減し、原子力も次第に減少し、2040年には18%になり、その後さらに減少が進む。一方、2019年に電力の10%程度の陸上風力は2026年頃に15%、2040年に20%となるが、その後は適地の減少もあって横ばいとなるのに対して、洋上風力は、現状の2%から2028年には10%、2040年に20%となり、その後もさらに増大して、再エネの中で最大のシェアを占めることになるとしている。まさに、これからは洋上風力発電の時代なのである。2)

図5 IEAによるエネルギーシェアの将来予測
(出典、IEA offshore wind outlook 2019)
図5 IEAによるエネルギーシェアの将来予測

4.おわりに

 わが国では、2019年には海洋再エネ発電促進法が施行され、さらに、送電線への接続枠も電力会社の空き容量の開放などにより拡大しつつあり、洋上風力発電の大量導入の準備は整いつつある。2021年に改定された第6次エネルギー基本計画においても、風力などの再生可能エネルギーを「主力電源」とすることがうたわれている。同じ海洋国である英国の壮大な洋上風力導入プランに倣い、官民により掲げられた風力導入に対する野心的な高い目標実現を目指して、研究開発と市場拡大によりコスト低減を図り、洋上風力発電事業と地域と共生しうる洋上風力発電産業の振興が期待される。



参考文献

  • 2)IEA Offshore Wind Outlook 2019
  1.  石原孟; 洋上風力発電の現状と将来展望, 第21回風力エネルギー利用総合セミナーテキスト, 足利大学総合研究センター, 2021 年6月.
  2.  永尾徹;福島浮体式洋上風力発電の総括と将来展望、第21回風力エネルギー利用総合セミナーテキスト, 足利大学総合研究センター, 2021年6月
  3.  資源エネルギー庁、洋上風力の産業競争力強化に向けた技術開発ロードマップ、(2020)官民協議会
  4.  Wood Mackenzie. Power & Renewables; Total market Outlook 2016-2018, March 18, 2019
  5. Craig Richard;Emerging offshore markets facing skills shortage, Wind Power Monthly,16 April (2020)


【著者紹介】
牛山 泉(うしやま いずみ)
足利大学理事長

■略歴
1942年長野県生まれ。1971年上智大学大学院理工学研究科博士課程修了、工学博士。
エネルギー変換工学を専門とし、主に風力発電など再生可能エネルギーの研究に従事。1971年より足利工業大学(現足利大学)機械工学科講師、助教授、教授を務め、2008年度より2期8年間学長。2016年度より足利大学理事長、大学院特任教授。日本機械学会フェロー、1977年に足利工業大学において日本風力エネルギー学会創設、元会長、日本太陽エネルギー学会元会長、フェロー、日本技術史教育学会前会長、経済産業省(METI)および新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)洋上風力発電委員長、新エネルギー財団(NEF)風力委員長、などを歴任。論文は風力関連を中心に160件、著書は単著共著合わせて26冊(うち5冊は中国、台湾、韓国で翻訳出版)。受賞はWWEC世界風力エネルギー会議栄誉賞、WREC世界再生可能エネルギー会議パイオニア賞、同功労賞、文部科学大臣賞、日本風力エネルギー学会特別表彰など12件。

浮体式洋上風力発電の水槽模型試験における計測技術について (2)

(国研)海上・港湾・航空技術研究所
海上技術安全研究所
中條 俊樹

3.水槽模型試験の例

3.1 一点係留型浮体の水槽試験

 当所で実施した大縮尺の水槽試験の例を紹介する。ここで示す水槽試験は、2016年度から2017年度にかけて実施された、「風力発電等技術研究開発/洋上風力発電等技術研究開発/次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究(要素技術開発)」において実施されたものである7)。ここでは、浮体コンセプトの設計の安全性の確認、浮体建造方法や建造コストの試算が行われた。その中で著者らは縮尺1/15、1/30の大型模型を用いた水槽試験を実施し、数値計算手法や設計の妥当性を検証した。なお、1/15の水槽試験では実海域再現水槽を、1/30の水槽試験では海洋構造物試験水槽をそれぞれ用いた。

表2 一点係留浮体コンセプトの仕様
Part Item Value Remarks
Wind turbine Power generation 6 MW  
Number of blades 2 Downwind type
Rotor diameter 140 m  
Hub height 112 m  
Floater Length 90 m  
Breadth 93 m  
Depth 35m  
Draft 15m  
Mooring Number of lines 6 Turret at a windward column
図2 縮尺1/30模型を用いた水槽試験の様子(海洋構造物試験水槽)
図2 縮尺1/30模型を用いた水槽試験の様子
(海洋構造物試験水槽)
図3 縮尺1/15模型を用いた水槽試験の様子(実海域再現水槽)
図3 縮尺1/15模型を用いた水槽試験の様子
(実海域再現水槽)

 水槽試験では、浮体が風上側のコラム下に設置されたタレットを中心として、風向変化に追随するための回転運動をすることから、浮体運動の計測には非接触式の光学式運動計測装置が用いられた。また、必要な送風範囲を発生可能な送風装置を用いることが困難だったため、いずれの試験においても風車のスラスト荷重は、電動ダクテッドファンを組み合わせた模擬風車を作成し、その発生するスラストの反力を風車の発生するスラストとしている。

3.2 ブレード・ピッチ制御可能な風車模型

 浮体式洋上風力発電に搭載される風車も、陸上設置型や着床式洋上風力発電と同様に、ブレードのピッチ角を風速に合わせて制御することで発電量の最大化や高風速時の風荷重低減を図っている。しかし、浮体式洋上風力発電においては浮体の動揺による相対風速の変動により、一般的なブレード・ピッチ制御によってネガティブダンピングと言われる浮体運動の増幅現象を発生する可能性があることが知られている8)。浮体式洋上風力発電においては、発電量の最大化と浮体動揺の低減を両立する制御が求められ、著者らもこれまで研究開発を実施している9)
 風速は高度が上がると大きくなることが知られているが、前述の通り、風車の大型化により、ブレードに入射する風速は、ロータ上部と下部では大きな差が生じていることが考えられる。著者らは、このような大きな風速差に対応したブレード・ピッチ制御アルゴリズム開発のため、風洞試験を中心に研究を実施している。その一例として、3本のブレードを独立して制御可能な風車模型を紹介する。これまで著者らは、浮体式洋上風力発電のブレード・ピッチ制御を再現可能な風車模型を浮体模型に搭載して水槽試験を実施してきたが、3本のブレードを独立して制御可能な風車模型を開発した10)。その概要を以下に示す。
 従来の模型は、モータ駆動をギアで直線運動へと変換し、スリップリングでハブへ伝達し、そしてハブ内部のギアで3枚のブレード基部の回転に伝達する構造である。この方式は、3本のブレードを同時に制御する方式では十分に軽量であったが、3本のブレードを独立して制御する場合には、機構が複雑化かつ大型化し、浮体式洋上風力発電の相似則から大きく外れるものとなった。そこで、新たに風車模型のハブ内にブレード・ピッチ制御のための小型サーボモータを内蔵する模型を開発した。この模型はナセルとハブ合わせて約0.75kgと、総重量の大幅な削減に成功した。今後はこの模型を用いた水槽試験も実施可能となった。
 なお、各ブレードの動作はブレード基部に設置した小型サーボモータを用いて直接動作させるが、各モータの指令値、出力値は無線通信(ZigBee)を用いて外部コントローラと受け渡す方式である。このとき、指令入力用と動作出力用の2系統非同期無線を採用することで、安定した信号の授受を可能にした。また、無線通信による制御は、試験の自由度の向上と模型重量の低減に大きく寄与している。

図4 従来のブレード・ピッチ制御機構
図4 従来のブレード・ピッチ制御機構
図5 新たに開発したブレード・ピッチ制御機構
図5 新たに開発したブレード・ピッチ制御機構

4.おわりに

 模型試験は、数値計算ではモデル化が困難な現象の再現や数値計算で見落としやすい現象の確認に有用であり、数値計算環境が発達した現状においてもその意義は失われていない。しかしながら、検討対象となる風車が大型化する中で、試験水槽の制約もあり縮尺模型は想定実機の大型化に対応出来ていない。
 このような状況下において、これまでよりも小さな縮尺で想定実機の挙動を再現可能な縮尺模型が必要であり、そのためにはセンサーに加え、可動部や制御系の小型化と非接触化が極めて重要となると考えられる。



参考文献

  1.  中條俊樹、タレットを用いた一点係留方式の浮体式洋上風力発電について、海洋エネルギーシンポジウム、2021.
  2.  中條俊樹、南 佳成ら、浮体式洋上風力発電のブレード・ピッチ制御の効果に関する実験的検討、第34回海洋工学シンポジウム講演論文集、2012.
  3.  中條俊樹、羽田 絢ら、大縮尺模型を用いた浮体式洋上風力発電の水槽試験、第27回海洋工学シンポジウム講演論文集、2018.
  4.  羽田 絢、中條俊樹ら、浮体式洋上風力発電施設の加振が後流に及ぼす影響に関する実験的研究、風力エネルギー利用シンポジウム論文集、2020.


【著者紹介】
中條 俊樹(ちゅうじょう としき)
(国研)海上・港湾・工区技術研究所 海上技術安全研究所
 洋上風力発電プロジェクトチーム チームリーダー
(兼)海洋先端技術系再生エネルギー研究グループ グループ長

■略歴
2008年 独立行政法人 海上技術安全研究所入所
2011年 同 主任研究員
2020年 洋上風力発電プロジェクトチーム チームリーダー
2021年 海洋先端技術系再生エネルギー研究グループ グループ長
海洋構造物、特に浮体式洋上風力発電の波浪中応答評価、安全性評価に従事。

“3E+S”とは地産地消 -自然エネルギ―の利活用は自然と共に生きる事- (2)

Xodus Group Japan(株)
代表取締役社長
小川 逸佳

 自然エネルギーは地産地消型発電が可能である。日本においては、地熱、太陽光、水力、陸上風力などもあるが、一番大きな可能性を含むのは洋上風力発電である。洋上風力発電は欧州では普通に電気の供給先として使われている。特に英国においては、洋上風力発電の価格は近年各段と下がり、最近では英国の10%近くの電力を供給している(5)。

 今稼働中の洋上風力発電は、主に着床式の洋上風力発電を指す。それは洋上風力導入を先駆けて進めた英国周辺の海が浅瀬で、着床式が作り易いと言う地の利があったからだ。例えば、北海南部の平均水深は30m(北海全体の平均は90m)、世界最大級のDogger Bank(6)は約15-30mである。しかし、水深がおよそ60mを超えると着床式では難しく、浮体式が必要になる。簡略して説明するが、着床式の場合、風車は大型化すれば大型化するほどコストパフォーマンスが良く、海底の地質によりモノパイルかジャケットで基礎を作るという二択になる。現在設置されているもので、一番大型の風車はロッテルダムにある、GE Haliade-X 14MW(7)で、ローターが220m、羽の長さは107m、高さはおよそ248mである。今開発されている一番大型な風車であるMingYangになると、サイズが16MWに上り、現在それを設置できるSEP船はない。しかしながら、着床式においての風車の大型化の波はまだ留まりを見せず、主だった風車メーカー三社は只管大型化にフォーカスをしている。

 世界規模で見た場合、着床式が出来る場所よりも、浮体式しか出来ない深さの海域の方がはるかに広い。国を例に挙げると、欧州ではフランス、ポルトガル、またアメリカ西海岸、アジアではもちろん日本だ。日本では30m以下の浅瀬の海は、今公募に出ているような秋田や銚子などかなり限定された場所にしかない。それは日本の海はトラフが多く、平均水深が1667m(8)だからである。よって日本の洋上風力開発は主に浮体式に成らざるを得ない。浮体式洋上風力発電は着床式に比べて難易度が高く、そのため現在欧米でもこれがスタンダードと言える形が一つあるわけではなく、まだ研究開発が続けられている。また、開発の中心となっているのは風車ではなく、浮体式基礎の部分である。2016年に世界で初めて事業化された浮体式洋上風力発電が、スコットランド沖のHywindだが、これはスチール製スパーで、Hywind Tampen側はコンクリートのスパーを使用している。その他主な浮体式基礎を簡単に説明すると、セミサブ型、TLP型などがある。

 日本は現在2030年までに10GW、2040までに30-45GWを目標とし、そのためNEDOでも10月にグリーンイノベーション基金事業の一環として、洋上風力発電の低コスト化プロジェクトが公募(9)に出されているが、この浮体式基礎がスタンダード化しない限り、大量生産には繋がらないのでコスト削減はかなり難しいと思われる。

 世界で見ると浮体式基礎ではセミサブ型の開発と実証がリードしている。国内調達比率を上げるということも政府の方針の一つであるため、日本を中心に話をすると、日本だけでも三菱造船の箱柱のV型(またはA型)、Navel Energies社と共同開発のブレースなしの日立造船型、またはジャパン・マリン・ユナイテッドの四本柱のセミサブ型などいろいろな形が試されている。今日本で実証されている基礎でセミサブ型以外では、現在建設中の戸田建設のハイブリッド・スパー、BW IDEOLのバージ型、更にMODECのTLP型である。これらの個別の技術比較はここでは割愛するが、どの浮体式基礎にしてもスチールを使用する限り、一つ共通する重大な、日本の浮体式基礎建造のボトルネックになっている問題がある。それは造船所のドックヤードを使用するということだ。ドックヤードと言うのは船を作るためにあるで、船の形のように細長い長方形に用地が取られている。しかし、浮体式基礎の形を見てもわかるように、細長いヤードでは、最終的にセミサブ型の基礎を組み立てる際の溶接には不向きである。欧州では北海油田開発の歴史により、港湾設備が整っているだけでなく、洋上風力用に港湾の設備拡大も進めている。アジアでは韓国は国が造船所を纏めて浮体基礎に取り組もうとしている。例えスパーで進めようにも、日本は基地港湾の整備が遅れているだけでなく水深が浅く、サテライト港湾もまだ構想段階である。各造船所のドックヤードも簡単に拡大とはいかないというのが現状だ。それでは12MW級以上の風車の浮体式洋上風力発電を日本でするためには、風車から基礎まで海外生産したものを日本まで運んでくるしかない。この浮体式基礎建造用地はスチール製で進める限り、真っ先に解決するべき問題である。

 また、第二の問題点は、浮体式構造物に対する認証の見直しが必要であることだ。これも建設基準法を含めいくつかあるが、主にコンクリートの使用を認めるかどうかである。コンクリートの利点は簡単に言えば、早く作れて、高度な技術を持つ専門人材が必要なく、すなわちローカライゼーションがしやすいため、地元企業が参画でき、地元経済への促進と還元に繋げることが可能である。IDEOLのコンクリート式バージ型はフランスで実証中、また先ほど例に挙げたHywind Tampenもコンクリートだ。しかし、日本では浮体式基礎構造物は「船」として評価されるため、コンクリートの船はない(10)ということから、基本的に使用不可と言う状況になっている(11)。

 以上二点より、政府は国内調達比率を2040年までに60%と言う意欲的な目標を立てているが(12)、達成はかなり難しいと思われる。

 第三の問題点は、新しい技術をもっと意欲的に支援するべきいうことである。日本はたくさんいい技術を持っているが、海外に比べて研究から実証までのサポートのギャップにより、新技術開発が進んでいない。欧米各国では、様々な新コンセプトの小型海上実証に支援金が出されることに対し、日本での「実証」は海外でほぼ確立したコンセプトの大型化支援という状況が起きている。ここで日本の政府機関に申し上げたいのは、実証と言うものはこれから実験する技術で、前例がある、または実歴がある技術には実証は必要がないということである。それこそある程度確立されている技術なら、次は大型化することがコスト削減への近道であり、Feed-In-Tariff/Feed-In-Premiumや英国のContract for Differenceのような別のファンディング・スキームでサポートするべきである。

 第四の問題点は洋上風力が開発されるにつれ、ますます系統接続の問題が出てくることだ。日本はエネルギーミックスの中に原子力発電を含んでいるため、系統を開けておく必要があることを考慮すると、売電以外の洋上風力発電の市場が必要になる。

 そこでまた表題の地産地消に戻ることになる。日本は世界でも先駆けて水素とアンモニア燃料両方のロードマップを作り上げているが、水素の供給においては、3E+Sから外れ、海外輸入ベースとした構想になっている。欧州でもドイツなどは輸入するしかないが、洋上風力が進んでいる英国、更にその中でも風力の余剰電力の多いスコットランドでは、すでにグリーン水素輸出を視野に入れた洋上風力開発をしている(13)。政府だけでなく、民間企業も後れを取っていない。例えば、スコットランド沖には、Subsea 7とSimply Blue Groupが始めた、浮体式からグリーン水素を作るというSalamanderプロジェクトがある。弊社Xodusは、このSalamanderのトップ・エンジニアを務めている。また、グリーン水素の事業化にも積極的に官民が動いており、政府はカーボン・タックスと言う形でサポートし、民間企業は事業化への実証を始めている。そのいい例が、スコットランドの名産品であります、ウィスキーの脱炭素化に水素を使用することである。化石燃料を燃やして熱を出して蒸留するよりも、水素を代わりに使用した実証がされている。これも弊社Xodusが参画しているプロジェクトの一つだ(14)。

 水素のコスト削減には二つの関門がある。一つ目は貯蔵、二つ目は運搬だが、この二つの問題は結局同じ根を有する。水素は宇宙の中で最も軽い物質であり、そのため常温では分散しているということがネックである。そのため、運搬するにも貯蔵をするにも、水素を圧縮して高圧ガスにし、それを強靭なカプセルに入れるか、ガス管を通して運ぶことになるが、日本のように遠い外国から持ってくる場合は後者は現実的ではない。また、水素を高圧化しても、需要量を完全に海外輸入に頼るなら液化することが必要になる。しかし、水素をマイナス235°まで液化するだけで膨大なエネルギーが必要だ。それだけでなく、実際に現在の技術では運搬の最中で水素が気化し漏れてしまうため、最終的に日本に到着した時点では30%減になると言われている。

 そうすると液化では水素のコスト削減は難しいということになり、水素キャリアが期待されるが、主に三つキャリアの候補がある。一つ目は一番安定しているため安全な水素合金だが、これは重さの面により長距離を運搬するには向かない。第二はMCHになるが、この技術を使用すると水素をMCHに付着させる際にエネルギーをかける必要があり、また水素を抽出する際にもエネルギーを必要する。それはアンモニアを水素キャリアとして使用した場合も同じである。そのため、日本政府はアンモニアを水素キャリアとしてよりは、そのまま燃料として使うロードマップを築いている。結果、水素キャリアを使用してもやはり水素のコスト削減は難しく、水素社会の実現は儚い夢に見える。

 しかし、国内で日本の自然エネルギーでグリーン水素を作ったらどうだろうか?水素を使う場所で水素が必要な時に、水素を作ることが出来れば、貯蔵と運搬の問題はほぼ解決される。結局地産地消が一番のコスト削減への道なのである。

 結論として、3E+Sを本当に成し遂げるには、国内自然エネルギー導入率をあげること、これには浮体式の成功が不可欠である。また水素も輸入に頼らず国内調達をすることが一番水素社会構成へ繋がる。そのためには政府が意欲的な自然エネルギー導入を進めるための政策を、積極的に打ち出していくことをお願いしたい。また、同時に学術機関、認証機関と民間企業には、一丸となって浮体式の技術開発とスタンダード化を目指すことを期待したい。そうすれば、自然エネルギー100%をベースとした3E+Sは困難な目標ではあるが、決して不可能ではないのだ。



参考文献および注釈

  1.  2Q 2021年は風速が落ちたため、7%まで落ちた。
    https://www.ons.gov.uk/economy/environmentalaccounts/articles/windenergyintheuk/june2021
  2.  完成次第Hornsea2が世界最大になる。
  3. https://www.ge.com/renewableenergy/wind-energy/offshore-wind/haliade-x-offshore-turbine
  4. https://www.jma-net.go.jp/jsmarine/japansea.html
  5. https://www.nedo.go.jp/content/100938386.pdf
  6.  第二次世界大戦中はコンクリートの船もあったが、戦時下なので比較対象にはならないということなのだろう。
  7.  戸田建設で建設中のものはハイブリッド・スパーなのでコンクリートが部分的に使われている。
  8. https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/yojo_furyoku/pdf/002_02_e01_01.pdf
  9. https://www.emec.org.uk/press-release-scottish-government-launch-hydrogen-action-plan/
  10. https://www.xodusgroup.com/whiskhy-campaign/


【著者紹介】
小川 逸佳(おがわ いつか)
Xodus Group Japan株式会社 代表取締役社長

■略歴

  • 2019年7月~2021年6月
  • 英国国際通商省 エネルギー・インフラストラクチャーセクター 対英投資上級担当官 英国洋上風力、洋上風力海底送電線、潮流・波力発電などの自然エネルギー・エリアにおける、日本投資家・企業へのアドバイスと英国政府、自治体、学術機関や諸団体・協会との連携を一環としたプロジェクト・サポート。 また、産業クラスター中心の二酸化炭素回収・貯留プロジェクト、港湾の脱炭素化プロジェクト化。 水素ハブの形成、水素サプライチェーンとオフテイカーの連携と実証。
  • 2021年6月~2012年11月
  • Star Magnolia Capital Ltd. Co-Founder & Partner 香港と上海に拠点を置く、マルチ・ファミリーオフィスの超長期投資ファンド立ち上げと運用。ヘッジファンド、プライベート・エクイティファンドへの投資以外にも、ブロックチェーン事業や植物工場案件などを担当。
  • 2010年10月~2009年7月
  • Sullivan & Cromwell LLP ニューヨーク州弁護士

学歴
2009年 University of Pennsylvania Carey Law School卒業

JMU次世代セミサブ型洋上風力発電浮体コンセプトについて (2)

ジャパンマリンユナイテッド(株)
神澤 謙

3.次世代セミサブ型浮体コンセプト

本浮体コンセプトは前述の福島実証研究事業等で培った浮体の建造・設置・保守管理の知見を活かし、信頼性・製造性・収益性の高い設計を目指している。
また2021年に本浮体デザインに対して、DNV(ノルウェー船級協会)よりSTATEMENT OF FEASIBILITY を取得した。特にシンプルな構造体とすることで、高い信頼性とライフサイクルコストの低減を実現できるとの評価を受け、本浮体が実用的技術であることが認められている。

次世代セミサブ型浮体
次世代セミサブ型浮体
DNV Statement of Feasibility
DNV Statement of Feasibility

3.1 浮体の信頼性

洋上風力発電浮体は他の海洋構造物と比較して非常に大きな風荷重を受けることが特徴である。一旦設置された後は20 年以上稼働することが前提であり、その間台風を始めとした日本特有の厳しい気象海象に耐える必要があるため、浮体には高い信頼性が求められる。
本浮体では高信頼性を実現するため、損傷リスクの高いブレース等を使用せず、シンプルな平板ボックス構造を採用した。また全ての区画に浮体内部からアクセス可能としており、高いメンテナンス性を確保している。

3.2 浮体の製造性

風力発電のコスト低減のため今後更なる風車大型化が想定されており、浮体には大型風車の施工に対応可能な高い施工性が求められる。更に風車大型化に伴い浮体も大型化するため、既存設備を有効活用できるよう高い建造性も確保することが低コスト化において重要となる。
本浮体は4本コラムとすることで浮体の幅を縮小し、国内外の多くの造船所で建造できる設計としている。また喫水が浅いため風車搭載や曳航時荒天避難の際に多くの港湾に入港が可能である。

3.3 浮体の収益性

採算性の高い浮体コンセプトとするには浮体自体のコスト削減に加え、設備利用率を向上させる必要がある。
本浮体においては、12MW級の大型風車に対応しつつもコンパクトな浮体サイズとすることで鋼材使用量を削減している。また大波高時でも低動揺となる性能を実現することで波が高い時でも発電が可能となり、設備利用率の向上が見込め、荒天時の風車の破損を防止することができる。

4.おわりに

JMUでは海象条件や風車機種といった様々な仕様条件に合わせ、設計・建造・風車搭載・設置までを一貫して行うことが可能である。その技術力を生かし開発した次世代セミサブ型浮体の早期実現化を通じ、温室効果ガス排出量の削減が世界的に求められる中で環境保護と社会の発展に貢献していく所存である。



【著者紹介】
神澤 謙(かみざわ けん)
ジャパンマリンユナイテッド株式会社 海洋エンジニアリング事業部
海洋エンジニアリングプロジェクト部 洋上風力開発G

■略歴
2017年 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 卒業
同年 ジャパンマリンユナイテッド株式会社 入社 現在に至る
  洋上風力発電浮体を始めとした、海洋構造物の開発・設計に従事

関西大、摩擦発電マットを使った通過人数計測システムの開発

関西大学システム理工学部の谷 弘詞教授は、東洋アルミニウム(株) および株(株)サーベ イリサーチセンターと共同して、摩擦発電マットを用いた通過人数計測システムの開発に取り組んでいる。
このたびマット下に置いた摩擦発電機の発電電力(約 2mW)によって歩数を計測し、ワイヤレス送信が可能なことを確認した。

ポイント
・大面積化が可能な薄く軽量な摩擦発電機をマットの下に配置
・歩行によって発電素子が効率よく電力を発生させ、送信モジュールに電力供給
・歩行数に応じた送信を行うことで、通過人数を計測

谷教授らの研究グループは、摩擦により発生する静電気を利用した発電やセンサの開発に取り組んでいる。開発した摩擦発電機は、薄いフィルム、電極から成り、大面積化が容易である。そこで上記 2 社と共同で歩行により発電し、ワイヤレス送信する通過人数計測システムの開発を行っている。今回の開発では、摩擦発電機をマットの下に配置し、電源制御回路を介してその電力をワイヤレス送信モジュールに供給することで、マット上を通過した歩数をモニタ出来ることを検証・確認した。
昨今のコロナ禍の影響もあり、あらゆる場所での混雑状況の可視化が求められている。カメラ+AI による可視化が一般的だが、カメラを使えない場所などに対応すべく、本研究を行ってきた。この摩擦発電マットを用いて通過人数を計測することで、混雑状況の把握や不法侵入の検知などが可能になると考えられるという。

※詳細内容は日本機械学会IIP2022(情報知能精密機器部門講演会(3月7,8日開催予定)で発表予定。

ニュースリリースサイト:https://kyodonewsprwire.jp/press/release/202201176141

SECOM、公共空間と調和するセキュリティロボット「cocobo」発売

セコム(株)は、商業施設やオフィスビルなどさまざまな場所に調和しながらAI・5Gなどの最先端技術を活用して警備業務を行うセキュリティロボット「cocobo(ココボ)」を、2022年1月17日(月)に発売する。

このたびセコムが発売する「cocobo」は、AI・5Gなどを活用し、常駐警備員の代わりに巡回警備や点検業務を行うセキュリティロボット。「cocobo」は、巡回ルートを自律走行し、搭載したカメラでとらえた映像をリアルタイムでAI解析、残留者や転倒者、放置物の検知ができる。不審者を発見した場合には、音声やライトでの警告、煙を使った威嚇を行うことも可能。点検業務を行う際はアームを装着し、ベンチの下や自動販売機の奥側・底面など、人では確認が難しい場所も点検することができる。また、「バーチャル警備システム※」などのセキュリティシステム、建物の監視カメラ映像、エレベーター・電気錠などの設備情報、施設や地域の情報など、クラウド上のさまざまな情報を活用し、平時・有事の安全確保から有用・快適情報の提供まで、常駐警備員と連携して、幅広い業務の効率化と品質向上を実現します。利用客が必要とする情報と連携する拡張性を有しているため、多種多様なニーズに応えるという。

※ 「バーチャル警備システム」の報道資料(2022年1月13日):
https://www.secom.co.jp/corporate/release/2021/nr_20220113.html
世界初、AIを活用したバーチャルキャラクターが警戒・受付業務を提供する「バーチャル警備システム」を発売

■主な機能 ※オプション
・自律走行・自動充電
  ‐屋外走行が可能。(防水加工が必要)※
  ‐最高速度「6km/h」、段差「約50mm」まで走行可能。(周囲環境に合わせて速度を制限)
  ‐傾斜や凸凹などの悪路も自律走行し、障害物等を自動で検知して衝突回避が可能。
  ‐バッテリー残量に応じ充電台に戻り、自動充電。(約3時間充電で約3時間走行可能)
・映像、音声伝送/記録機能
  ‐搭載したカメラやマイクで収集した周囲の映像や音声はリアルタイムで監視卓に送られ、
   確認と記録が可能。
・残留者・転倒者検知※
  ‐画像AIにより残留者や転倒者を検知して監視卓に通知。
・異常音検知※
  ‐大きな音などの異常音を検知して監視卓に通知。
・火災検知※
  ‐赤外線センサー又は熱画像センサーにより火災を検知して監視卓に通知。
・放置物検知※
  ‐画像AIにより放置物を検知して監視卓に通知。
・アームによる点検※
  ‐赤外線センサー、可視カメラを搭載したアタッチメントを使用して熱源(危険物)を検知し監視卓へ通知。
  ‐ハンド型アタッチメントを使用して扉の施錠確認が可能。(開発中)
・クラウド連携※
  ‐セキュリティシステムや設備情報などの各種クラウド情報と連携させることで、エレ
   ベーター連動によるフロア移動、災害情報の提供や注意喚起などが可能。

<レンタル価格>  cocobo本体(標準) 300,000円/月(税込 330,000円/月)

ニュースリリースサイト(SECOM):https://www.secom.co.jp/corporate/release/2021/nr_20220117.html

「高精度3次元地図」を利用した「除雪支援システム」の実証実験

ダイナミックマップ基盤(株)と東京海上日動火災保険(株) 長野支店は、ダイナミックマップ基盤が開発する「高精度3次元地図」を利用した「除雪支援システム」の実証実験を2022年1月17日から長野県飯山市において実施する。

過去、除雪作業は熟練除雪オペレータの知見や経験に頼っていたが(第1世代)、近年のオペレータの高齢化を受け、ノウハウの伝達にも限界がある。また、近年用いられている夏季のビデオを参考にしたり、位置精度が10mにも及ぶGPS信号を利用した地図サービスや道路沿いの風景を提供するインターネットサービスなどを利用した除雪作業にも限度がある(第2世代)。
また、完全な自動運転による除雪車の普及にはまだまだ時間がかかり、その費用も非常に高価なものであると考えられる(第4世代)。そこで、自動運転分野で実績がある当社の「高精度3次元地図」と高精度の自己位置推定が可能な「RTK測位」と組み合わせた「除雪支援システム」(第3世代)の実証実験を行い、実際の豪雪地域での有効性や使い勝手などを確認した上で、今後さらに試行を重ね、全国の豪雪地域で事故のない安全安心な除雪作業をサポートするために早期の社会実装に結び付けたいという。

日米主要メーカーが採用している「自動運転システム」では、センサで認識できない道路上の構造物を「高精度3次元地図」によって把握している。この技術を応用して積雪や降雪環境下で見えなくなってしまっている道路上の構造物(マンホール、橋梁ジョイント、区画線など)、道路周辺の構造物(ガードレールなどの路肩縁、電柱・照明柱・標識柱などのポール状構造物)を見える化し、さらに仮想構造物である「投雪禁止エリア」を提示することによって、事故のない除雪作業をサポートすることを目的として開発した。

システム構成も非常にシンプルで、ソフトバンク株式会社が提供する高精度測位サービス「ichimill」の「GNSS受信機」と「GNSSアンテナ」、画面表示用の「タブレット」だけと特別な機器などは必要なく、「高精度3次元地図データ」もリアルタイムかつオンラインでやり取りするため、データ更新などの煩わしい作業も必要ない。自動運転向けに整備した高精度3次元地図データを流用し、且つシンプルな構成とすることで安価な運用コストで最新技術を利用できるシステムであるとのこと。

この「除雪支援システム」は「高精度3次元地図」の技術だけではなく、「RTK測位」と呼ばれる相対測位の手法を用い、数cmレベルの正確な自己位置推定を実現している。正確な自車位置と高精度3次元地図データを組み合わせることで、除雪作業時に周辺構造物との接触を避けることが出来るという効果が期待されるとしている。

ニュースリリースサイト(dynamic-maps):https://www.dynamic-maps.co.jp/news/2022/0114.html

東洋インキと東工大「東洋インキグループ協働研究拠点」を設置

東洋インキSCホールディングス(株)と東京工業大学は、2022年1月13日、環境・IT・バイオ分野に関する先端研究を推進する「東洋インキグループ協働研究拠点」を、東京工業大学オープンイノベーション機構の支援のもと設置した。

東洋インキグループ協働研究拠点では、東京工業大学が保有する幅広い領域における高度な学術的知見と、東洋インキグループが蓄積した顔料・樹脂合成をはじめとする種々の低分子・高分子合成技術や微細分散技術等を融合することで、個別研究では困難であった包括的かつ総合的な研究開発を推進し、新たな価値を持つ新規機能性材料と産業応用に向けた技術の創生を進める。
地球規模の環境問題解決に向けた次世代電池開発やCO2活用の推進、デジタルテクノロジーの発展に貢献するIT関連材料技術の開発、次世代の医療技術につながるバイオテクノロジーの追求に取り組み、新たな時代に求められる価値の創造に挑戦する。さらに、相互の研究者の交流をベースとした研究開発ネットワークを構築し、次世代の先端研究および産業技術分野の発展を担う人材育成を図る。

東洋インキグループは、東京工業大学との最先端の科学技術分野における共同研究により、サステナブル、コミュニケーション、ライフの3つのサイエンス領域で革新的なテクノロジーを生み出していく。このテクノロジーを製品開発に活かし、世界の人々の健やかで快適な暮らしの実現に寄与することで、化学メーカーとしての社会貢献を行うという。

■「東洋インキグループ協働研究拠点」の概要
名 称 :
 国立大学法人東京工業大学 オープンイノベーション機構協働研究拠点 東洋インキグループ協働研究拠点
研究内容:
 1.環境分野 次世代電池、エネルギーハーベスト、CO2活用等の研究開発
 2.IT分野 次世代イメージセンサ・半導体への応用を目指した革新的材料に関する研究開発
 3.バイオ分野 次世代医療技術に繋がる生体物質と化学材料との相互作用に関する研究開発
場 所 :br>  神奈川県横浜市緑区長津田町4259
 国立大学法人東京工業大学 すずかけ台キャンパスB1・B2棟829号室
設置期間:
 2022年1月13日 ~ 2025年1月12日
拠点長 :
 菅野了次(国立大学法人東京工業大学 科学技術創成研究院 全固体電池研究センター長・特命教授)
副拠点長:
 三原久和(国立大学法人東京工業大学 副学長・生命理工学院 教授)、
 山岡新太郎(東洋インキSCホールディングス株式会社 常務執行役員 技術・研究・開発担当)

ニュースリリースサイト(toyoinkgroup):https://schd.toyoinkgroup.com/ja/news/2022/22011301.html

キヤノン、レーザー光の向きを自在にコントロールするガルバノスキャナー

キヤノンは、レーザー加工装置におけるレーザー光の向きを自在にコントロールするガルバノスキャナーの新製品として、ガルバノスキャナーモーターGM-2000シリーズ“GM-2010/GM-2015/GM-2020”の3機種を2022年1月13日に発売。

ガルバノスキャナーは、先端に取り付けたミラーでレーザー光の進む方向をコントロールし、レーザー光を狙った位置に照射するための装置。3Dプリンターやレーザー溶接機、レーザーマーキング装置などに搭載されている。スマートフォンタッチパネルやFPD(フラットパネルディスプレイ)製造のレーザー加工、自動車・電池部品のレーザー溶接加工の高精細化にともなって、ガルバノスキャナーの高精度化ニーズが高まっている。GM-2000シリーズは、搭載するミラー(別売り)の大きさに合わせて3種類をラインアップしている。自社開発の新光学式エンコーダー※1を搭載したことにより、従来機種GM-1000シリーズ(2008年発売)に比べ、位置決め精度が向上し、より高精度なレーザー加工を実現するという。

■おもな特長■

・自社開発の新光学式エンコーダー搭載により位置決め精度が向上
自社開発の新光学式エンコーダーを搭載したことにより、従来機種と比べ、“GM-2010/GM-2020”は約8.8倍※2、“GM-2015”は約5.8倍※2の分解能※3でモーター軸の回転角度を検出、制御することができる。これによりレーザー走査の精度や安定性が向上し、直線加工のずれ幅を従来機種に比べ大幅に抑制できることで、より精度の高いレーザー加工が可能となる。また、従来機種同様、光学式エンコーダーとデジタルサーボ技術により、温度変化に伴う加工位置の変化がアナログ式製品と比べ圧倒的に小さく、安定した生産に寄与する。

・従来機種と共通の高いユーザビリティー
すでにミラーやマウントブロック(別売り)を導入済みのユーザーは、従来機種と外寸が同じため、そのまま使用できる。また、ドライバーとドライバーに同梱しているソフトウエアや、コントローラーなどのすでに発売している別売り機器にも対応しているため、新製品とこれらの別売り機器をユーザーニーズに合わせて組み合わせ、ガルバノスキャナーシステムとして提供可能。

 ※1. モーター軸の回転角度(位置)を検出するセンサ。
 ※2. “GM-2010/GM-2020″は「GM-1010/GM-1020」と比較。”GM-2015″は「GM-1015」と比較。
 ※3. 測定対象となる信号(角度)をどの程度細かく検出できるかを示す能力のこと。

■ガルバノスキャナーの市場動向■

PCB(プリント基板)の穴あけ加工、レーザー溶接、レーザーマーキングなど、さまざまな用途が広がっている。3Dプリンターの技術進歩に伴う複雑・高精度形状への対応や、スマートフォンタッチパネル、FPD(フラットパネルディスプレイ)製造のレーザー加工、自動車・電池部品のレーザー溶接加工の高精細化にともなって、ガルバノスキャナーの高精度化ニーズが高まっている。今後、航空宇宙分野、自動車分野、電気・電子分野、医療分野などの幅広い分野での活用が予測される。(キヤノン調べ)

ニュースリリースサイト(canon):https://canon.jp/corporate/newsrelease/2022/2022-01/pr-dgscanner