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ミリ波センサで収集した点群データから人の姿勢を高精度に推定する新技術

 富士通(株)は、一般的なミリ波センサで取得される粒度の粗い点群データから人の姿勢を高精度に推定できる新技術を開発した。

 本技術は、対象者の一連の動作における点群データの時系列情報を融合処理することで、粒度の粗い点群データからでも姿勢推定に必要な粒度が細かい点群データへの拡張を可能とし、そこに高精度に姿勢を推定できる独自のAIモデルを組み合わせて、転倒などの確実な検知とプライバシーの配慮の両立を実現している。
 さらに、人の複雑な行動を認識する当社独自のAI技術「行動分析技術 Actlyzer(アクトライザー)」(注1)との連携により、病院や介護施設などのプライバシー性の高い空間でもカメラを設置せずに転倒前後の行動を詳細に分析できる。
 同社は、本技術について、病院や介護施設との実証実験を実施することでさらなる効果検証と精度向上を重ね、2023年度中のサービス化を目指すという。

■ 背景
 近年、病院や介護施設では、患者や高齢者の安全を守り、かつ看護師や介護者の業務負担を低減するため、センサを利用した見守り技術が注目される中、特にミリ波センサを用いた見守り技術は、個人を特定する情報の取得リスクが低く安価に導入できることから期待が高まっている。しかし、一般に普及している安価なミリ波センサは粒度の粗い点群データしか得られないため患者や高齢者の転倒を高精度に検知できないほか、転倒前後の行動の詳細な分析も困難だった。

■ 開発した技術
 今回、同社は、国内電波法に準拠する79GHz帯の一般的なミリ波センサを用いて人の詳細な行動分析を実現する新技術を開発した。
 なお、前身となる技術を用いて、鳥取県鳥取市が富士通Japan(株)とともに市営住宅においてひとり暮らしの高齢者を見守る実証実験を2022年2月に実施し、プライバシーに配慮した住民の状況監視における本技術の有効性を確認した。また、2022年6月に、同社は神奈川県川崎市とともに、福祉製品やサービスの開発、改良を支援する施設「Kawasaki Welfare Technology Lab」(通称:ウェルテック)内の模擬環境ラボにて、起床をはじめとする様々な動作時の機器の反応や通知内容などを検証し、その結果を踏まえて2022年8月以降に実際の高齢者施設において実証実験を予定している。

1. 姿勢推定に適した入力データを生成する点群データ拡張技術
 1回あたりの電波の照射で取得できる点群データの粒度が粗い一般的なミリ波センサでも高精度な推定を実現するため、人の姿勢が時系列の点群データとして表現できることに着目した。複数回電波を照射によって取得できる大量の点群データから、人の姿勢を推定するのに適した点群データを選定することで、粒度が細かい点群データへの拡張を可能する点群データ拡張技術を開発した。

2.姿勢推定を高度化する大規模データセットと姿勢推定AIモデル
 姿勢推定に充分な粒度に拡張した点群データをもとに、さらに高精度に姿勢を推定するため、点群データと人の関節点の3次元座標情報を対応させた大規模データセットを構築した。データセットは、約140人の人物による、約50種の異なるシーンでの行動データを取得して構成し、このデータセットに基づいて高精度な姿勢推定AIモデルを開発した。

3.「行動分析技術 Actlyzer」との連携による複雑かつ詳細な行動分析
 本技術に加えて、約100種の基本動作データを組み合わせて人の複雑な行動を分析できる「行動分析技術 Actlyzer」を連携させることで、ベッドから立ち上がった時の転倒なのか歩行時の転倒なのか、といった前後の行動を含む詳細な分析が可能となり、看護師や介護者が目視で見守りを実施する負担や緊急時の対応の遅れを減らすことができる。

(注1) 行動分析技術 Actlyzer:本技術は、当社のAI画像解析ソリューション「FUJITSU Technical Computing Solution GREENAGES Citywide Surveillance」の行動検知として商品化されている。

プレスリリースサイト(fujitsu):https://pr.fujitsu.com/jp/news/2022/07/6.html

ボールSAWセンサの原理(1)

ボールウェーブ(株)
取締役研究開発本部長
東北大学 名誉教授
山中 一司

1.はじめに

 ガスセンサは環境と産業の安全と安心に不可欠なものであり、化学的センサ、電界効果トランジスタ(FET; field effect transistor)や電気抵抗型など電気的なセンサ、光学的センサなどがある。
 しかし、これらのセンサは特定の物理的または化学的現象に基づいて、特定のガスの特定の濃度範囲でのみ使用できる。たとえば、触媒燃焼型水素ガスセンサは、爆発下限界(LEL)を超える水素濃度では水素が燃焼し、センサが爆発を誘起する可能性がある。一方、FETタイプの水素センサは、高感度である反面1〜10%を超えるガス濃度で飽和してしまう。水素ステーションや燃料電池自動車では、高圧水素容器の不具合により、低濃度の漏れだけでなく、急激に高濃度水素の噴出が起きる可能性がある。そこで広い範囲の濃度の水素のセンサが必要だが、まだ実現していない。
 別の例として、ガスの微量水分の測定は、半導体プロセスや天然ガスのパイプラインシステムの品質管理にとって重要である。キャビティリングダウン分光法(CRDS)の水分検出限界は最も低いが、その用途は主に高純度ガス中の微量水分の検出に限定され、天然ガスのようにメタン、エタン、プロパンその他の重いガスで構成される混合中では適用困難である。鏡面ミラー型露点計は、長期安定性と再現性が高いが、微量ガスへの応答時間は長くなり、オンライン測定には適していない。
 一方、スマホなど移動体通信用の周波数フィルタとしてSAW(Surface Acoustic Wave;弾性表面波)フィルタが普及している。図1のように、SAW伝搬経路上に感応膜を成膜してガスの吸着による音速減衰変化を測定するSAWセンサも研究され、弾性波と物質の多様な相互作用による高い汎用性が期待されている。しかし、SAWが一定の距離を超えて伝搬すると回折により拡散して減衰する。そこでSAWとガスの相互作用長が短いため感度に課題があり、SAWセンサの実用化は進んでいない。東北大学ではSAW素子の材料特性の計測法を研究していたが、あるとき軸受メーカーから、軸受球の表面傷のSAWによる検査の依頼を受けた。この検討中に、球のSAWを特定の条件で発生すると、回折によって拡がって減衰することなく、多重周回により長伝搬距離する現象が発見された。1) この現象がSAWセンサの飛躍的な感度向上をもたらす可能性に着目して、ボールSAWセンサ2,3) の開発が始まった。
 本稿では、ボールSAWセンサの原理を説明する。また別稿で水素センサ、微量水分計およびガスクロマトグラフへの応用を紹介する。

図1 SAW素子・センサと回折損失

2.無回折コリメートビームの発見

 前節で述べた軸受球で観測したSAWの挙動が理論的に解析された。周波数が十分高く波長が球の直径より十分小さい場合は、図1(a)の座標系において、SAWの変位は
図1 SAW素子・センサと回折損失
となる1)。ここで、C は定数、θ は発生点と観測点を結ぶ円弧の中心角(伝搬角)、k = 2π/λは波数(λは波長)、α は球の半径( は円周とSAWの波長の比)、VR はSAWの位相速度である。 >>1の場合、VR は平面上のSAWの速度とほぼ等しい。

図2 球のSAWの理論解析
図2 球のSAWの理論解析
(a)解析に用いる座標系 (b)~(d)SAWのエネルギー分布の計算結果

 式(1)は弾性波動方程式の解の球面上における展開の1次の項として導かれ、簡単であるが球面上のSAWの重要な特徴を表している。すなわち、平面上のSAWはxは音源からの距離)で幾何減衰項が与えられるが、式(1)ではに置き換わっている。sinθ は伝搬角 θ の周期関数なので1周すると同じ値になり、幾何減衰は無くなる。また、発生点( θ =0°)から離れるにつれて振幅の減少したSAWが対極点で再び集まって、対極点( θ =180°)では無限大に発散する。
 図2(a)の円弧状音源による球面上のSAWの伝搬が調べられた。音源上の点Pと観測点Qが中心となす角度をとおくと余弦定理より
cosθ=cosφ0cosθ0cosφ1cosθ1+sinφ0cosφ1cosθ1+cosφ0sinθ0sinθ1  (2)
となる。中心Oから見た開口角が2θAの円弧状音源による点Qの音場は、式(2)に含まれる角度 θ0を独立変数にとって、式(1)の υRを – θAから θAまで積分することにより得られる。求めた音場の空間分布は、点Qの仰角 θ1の関数として表示する。
 図2(b)は、波数パラメータkr=600の場合、円弧状音源から放射されるSAWのエネルギー分布を球面上に3次元的に表示した例である。球面からの高さがエネルギーを表わす。開口角2θA=60°の場合、伝搬角 φ1が増加すると音場の幅が減少し、φ1=90°で最小になった後、再び幅が増加して、対極点 φ1=180°で音源上と同じ分布が再現する。これは集束ビームである。これ以後は180°毎に同じ変化を繰り返し、何周回っても変化しない。この場合、音源の幅(開口角2θA=60°)より音場が広がることが無いので、θ1> θAの部分にはSAWのエネルギーが拡散しない。
 次に、開口角が θA=2°と小さい場合、図2(d)のように、点音源の場合と類似した発散ビームとなった。伝搬角 φ1が増加すると音場の幅が増加し、φ1=90°で最大になった後、再び減少して、対極点 φ1=180°で音源上と同じ分布が再現される。集束ビームの場合と異なり、SAWのエネルギーが θ1 < θAの帯状部分に閉じ込められず、φ1=90°では、赤道から離れた位置まで広がる。支持部など接触部がこの近傍にあるとSAWは散乱される。そのため、このような状態は、球の精密な検査をする場合には好ましくない。ただし、無重力の場合や空気圧による球の浮上が行える場合は、支持部が無くて良いので、接触部による散乱の問題はなくなる。
 最後に、図2(c)に示す開口角2θAがほぼ7°の場合、伝搬によって音場の幅はほとんど変化せず、常に θ1= θA程度の幅で伝搬するコリメートビームが得られた。このようなビームが得られる開口角をコリメート角 θ COLと呼ぶ。(b)-(d)を比較すると、開口角2θAがコリメート角 θ COLにほぼ等しいとき、最も狭い帯状部分にSAWのエネルギーが閉じ込められることがわかる。球にひずみや不均一性があっても、狭い軌道に閉じ込められたSAWの伝搬はあまり乱されない。支持部など接触部があっても軌道の外であればSAWは散乱されない。そこで、コリメートビームは最も減衰が小さく周回数が多いと期待される。
 このコリメート角は波数パラメータ に依存するので、 を変化させて同様の数値解析を行った結果、表1のように変化した。コリメートビームの形成は、回折効果によって周辺に広がろうとする効果と球面の曲率による集束効果が拮抗した結果と解釈できる。表1の関係は、

で精度良く近似できる。そこで、コリメートビームの幅wは近似的にで与えられる。ここで、Dは球の直径である。式(3)は、ボールSAW素子において音源の長さを設計する際に有用で、異方性のある結晶の場合でも、電極形成位置の音速を用いて近似的に適用できる。結晶球での周回ルートは実験的に見出された。たとえば、LiNbO3にはいくつかの周回経路があるが、水晶やランガサイトでは、Z軸(Zシリンダー)に垂直な赤道に沿った経路の周回特性が最適である4)。ボールSAWに対する結晶異方性の影響は、三方晶結晶上の蛇行コリメートビーム5)など、まだ完全には理解されていない。

表1
波数パラメータ コリメート角 θCOL (Radian)
50 0.28
160 0.15
320 0.10
530 0.075
790 0.065


次回に続く-



参考文献

  • 1) Yamanaka K, Cho H and Tsukahara Y 2000 Precise velocity measurement of surface acoustic waves on a bearing ball Appl. Phys. Lett. 76 2797-2799.
  • 2) Yamanaka K, Ishikawa S, Nakaso N, Takeda N, Sim, D, Mihara T, Mizukami A, Satoh I, Akao S, Ebi Y, Tsukahara Y 2006 Ultramultiple roundtrips of surface acoustic wave on sphere realizing innovation of gas sensors IEEE Trans UFFC 53 793–801.
  • 3) 山中一司 2015 ボールSAWセンサを用いたガス中微量水分計測 応用物理 84, 218-223.
  • 4) Akao S, Nakaso N, Ohgi T, Yamanaka K. 2004 Observation of the Roundtrips of Surface Acoustic Waves on a Single Crystal LiNbO3 Ball Jpn. J. Appl. Phys. 43 3067–3070.
  • 5) Yanagisawa T, Ohgi T, Akao S, Nakaso N, Tsukahara Y, OharaY, Tsuji T and Yamanaka K Meandering collimated beam of surface acoustic waves on a trigonal crystal ball Appl. Phys. Lett. 98 123508.


【著者紹介】
山中 一司(やまなか かずし)
ボールウェーブ(株) 取締役研究開発本部長
東北大学名誉教授

■略歴
1975年 東京大学工学部物理工学科卒業
1977年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了(物理工学専攻)
1978年 通商産業省工業技術院機械技術研究所研究員
1987年 工学博士(東北大学)
1987年 カナダNRC工業技術研究所訪問研究員(兼任)
~88年
1997年 東北大学教授
2015年 東北大学名誉教授
2015年 ボールウェーブ株式会社取締役
現在に至る

超音波による材料評価・非破壊検査の研究および弾性表面波センサの研究に従事。1999年NEDOプロジェクトにて軸受球の非破壊検査の研究中に球の弾性表面波の自然なコリメートビームを発見、科学技術振興調整費研究にてボールSAW水素センサ、CRSETにて携帯型ガスクロを研究開発。1997年応用物理学会論文賞、2008年文部科学大臣表彰、山崎貞一賞受賞。東北大学名誉教授。

ボールSAW水素センサの開発(1)

ボールウェーブ(株)
取締役事業本部長
竹田 宣生

はじめに

 近年、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーである水素エネルギーへの期待が高まっており、燃料電池自動車や家庭用燃料電池をはじめとして、様々な水素応用が検討されている。それに伴って、水素センサも必要とされており、図1に示すように電気抵抗式水素センサを始めとして、平面型SAWセンサ等様々な水素センサが研究・開発されている。中でもボールSAW水素センサ1)は、従来の水素センサに比べて約1桁近く応答速度に優れ、10ppmv以下の水素感度を有している2)。本稿では、ボールSAW水素センサの水素漏洩検出等への応用を目的としてさらなる高感度化を追求した、最新の研究成果について紹介する。

図1 種々の水素センサの水素濃度と応答時間の関係 1)
図1 種々の水素センサの水素濃度と応答時間の関係1)

1. Pd-Pt感応膜

 水素を検出するための感応膜としては、水素選択性が高いパラジウム(Pd)やパラジウム合金がよく知られている。Pd薄膜は水素と結合して水素合金を形成すると「固く」なり伝搬するSAWの速度が速くなるので、音速変化として検出できる。ここでは、相転移を抑制するためにプラチナ(Pt)を添加したPd-Pt合金を感応膜として用いた。成膜には2元スパッタ法を用い、PdとPtのターゲットに供給する電力とスパッタ時のAr圧力により、Pd-Pt組成比を制御した(表1)。本実験に用いた感応膜ではPd-Pt組成比を4:1とし、膜厚は20nmとした。

表1 2元スパッタ法による成膜条件とPt組成比率
表1 2元スパッタ法による成膜条件とPt組成比率

 水素センサとして用いるボールSAW素子は直径3.3㎜の水晶球で、温度特性を演算・除去できる80MHz/240MHzの2周波センサとした。Pd-Pt感応膜を成膜した後のボールSAW水素センサの大気中におけるSAW周回特性を図2に示す。伝搬するSAWの音速は約3200m/sで、1周約3.3µsecで周回し、80MHzにおける減衰率は39dB/m、240MHzでは214dB/mであった。特定の周回の遅延時間として測定する音速と減衰率が水素濃度を測るパラメータとなる。

図2 ボールSAW水素センサの周回特性
図2 ボールSAW水素センサの周回特性

2. 窒素中の微量水素感度

 ボールSAW水素センサの窒素中の微量水素感度を評価した。微量水素は、100ppmv水素添加窒素ボンベを基準として、マスフローコントローラによる2段希釈システムによって発生させた。また、周回の遅延時間の測定には、弊社製微量水分計に搭載されているBUS(Burst Under Sampling)回路7)を用いた。BUS回路とは、同時励起した80MHzと240MHzの送信バースト信号によるボールSAWセンサからの受信波形を100MHzでアンダーサンプリングする回路で、取得波形をウェーブレット変換することで通常のオーバーサンプリングと比べて遜色のない計測が行える。
 ボールSAW水素センサの遅延時間変化による代表的な微量水素応答を図3に示した8)。10ppbvから5000ppbvまでの微量水素を10分導入―10分パージのインターバルで導入しており、それぞれ明瞭な応答が見られている。

図3 代表的なボールSAW水素センサの微量水素応答
図3 代表的なボールSAW水素センサの微量水素応答

 異なるセンサ温度に対して、遅延時間変化と水素濃度の関係を示したのが図4である。水素に対するセンサ感度は、水素濃度の対数におおよそ比例しており、センサ温度が低いほど感度が大きいことがわかる。ノイズレベルの2倍を検出限界とすれば、窒素中の微量水素の検出限界は約6ppbv(センサ温度60℃の時)であった。

図4 遅延時間変化と水素濃度の関係
図4 遅延時間変化と水素濃度の関係

 水素濃度が一定の場合におけるセンサ遅延時間変化のセンサ温度に対するアレニウスプロットが図5である。センサ遅延時間変化は水素濃度によらず一定の反応エンタルピーを持っており、遅延時間変化DTCはおおよそ次式であらわされる。

ここで、NH2は水素濃度(ppbv=nmol/mol)、Hは反応エンタルピー(J・mol-1)、Rは気体状数(J・K-1・mol-1)、Tは絶対温度(K)である。
 水素濃度が一定であれば遅延時間変化は温度が低いほど大きく、遅延時間変化の絶対温度の逆数に対する傾きから反応エンタルピーを計算すると-13.1kJ・mol-1となった。遅延時間変化は生成された水素合金の量を反映しており、反応エンタルピーが負であることから、水素合金を生成する反応は発熱反応であることが示された。すなわち、ファントホッフの式により反応温度が上昇すると平衡定数は減少して、少ない量の水素合金生成で平衡することが分かる。

図5 遅延時間変化のセンサ温度依存性
図5 遅延時間変化のセンサ温度依存性


次回に続く-



参考文献

  • 1) K. Yamanaka, et.al: IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control. 53, 793 (2006).
  • 2) T. Tsuji, et.al.: Material Transactions, 55, 7 (2014) pp.1040 to 1044
  • 3) S. Ju, et.al.: Sens. Actuators B, 146 (2010) 122.
  • 4) A. D’Amico, et.al.: Proc. IEEE Ultrason. Symp. (1982) 308.
  • 5) W. P. Jakubik, et.al.: Sens. Actuators B 82 (2002) 265.
  • 6) C. Wang, et.al: Sens. Actuators B, 173 (2012) 7
  • 7) T. Tsuji, et.al.: Rev. Sci. Instrum. 89 (2018) 055006.
  • 8) 竹田他:2022年春の応用物理学会、講演番号: 23p-D113-12


謝辞
この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業(JPNP14012)の結果得られたものである。



【著者紹介】
竹田 宣生(たけだ のぶお)
ボールウェーブ株式会社 取締役事業本部長

■略歴
1985年:東北大学大学院工学研究科修了、工学博士。(株)大日本科研技術顧問。
1985年-1986年:新技術開発事業団創造科学推進事業特別研究員で専門は半導体デバイス、プロセス。
1988年-1994年:東北インテリジェントコスモス構想(株)小電力高速通信研究所コミュニケーションデザイン研究室室長兼任
1986年-1997年:(財)半導体研究振興会研究員、
1997年:Ball Semiconductor社入社。
2000年-2010年:米国ベンチャーBall Semiconductor社上席副社長として一貫して微量水分センサをはじめとするBall SAW Sensorの開発に携わる。
2006年-2010年:Ball Semiconductor社と大日本科研(株)のジョイントベンチャーであるINDEXテクノロジーズ(株)執行役員としてマスクレス露光技術分野の開拓にも携わる。
2010年-2012年:東北大学未来科学技術共同研究センター客員教授、
2010年-2012年:カナダのベンチャーAiscent Technologies社CTO、
2012年-2014年:中国ベンチャーAMLI社技術顧問、
2012年-2014年:東北大学大学院工学研究科産学連携研究員
2014年-2016年:東北大学大学院工学研究科非常勤講師、
2014年-2016年:株式会社メムス・コア技師長としてMEMSセンサ受託開発に従事。
現在、ボールウェーブ株式会社 取締役事業本部長

ボールSAW微量水分計(1)

ボールウェーブ(株)
代表取締役社長
赤尾 慎吾

1. はじめに

 最先端半導体製造に用いられる材料ガスやプロセスガスの水分コンタミは、歩留まりやスループットに直接影響を及ぼす。また、天然ガスのパイラインシステムの品質管理には、天然ガス混合物中の微量水分の測定が重要である。これらでは高速な応答と高い信頼性に加え、さまざまな種類のガス中における水分の監視が要求される。現在市販されている微量水分計に、キャビティリングダウン分光法(CRDS)やチルドミラー式 があるが、前者は主に高純度単一ガス中の微量水分の検出に用いられてきおり、後者は長期安定性と再現性に優れ、分解能も高いものが多いが、微量ガスに対する応答時間が長いためオンライン計測には不向きである。そこで、我々はこれまで球状弾性表面波素子(ボールSAW素子)表面に非晶質シリカ感応膜を成膜した0.2 ppbvの検出限界を示す微量水分計FT-700WT (FalconTrace)と1 ppmvにおいて応答速度1秒以内のFT-300WT (FalconTrace mini)1-4)を開発した。

2. 遅延時間変化の周波数差分を用いたセンサ温度補償

 遅延時間変化の周波数差分を得るため、直径3.3 mmの水晶を用いた基本周波数80 MHzと3倍高調波240 MHzの同時励振を可能にしたボールSAW素子に、ゾルゲル反応によって合成したSiOx溶液を塗布した1)。このボールSAW 微量水分計は、図1に示すように拡散管法5)に基づいて微量水分発生装置に接続された。微量水分発生装置は希釈系によりppbvオーダーの微量水分を付加した窒素を流量0.1 L/min供給することができる。ボールSAW 微量水分計の下流にCRDS6)(Tiger Optics社製、HALO 3 H2O)を接続した。ボールSAW微量水分計のガス圧は、CRDSの内蔵圧力調整器により130 kPaに調整された。

図1 ボールSAW微量水分計とCRDSの比較実験
図1 ボールSAW微量水分計とCRDSの比較実験

 微量水分の測定結果を図2に示す。3時間ごとに徐々に水分濃度が上昇し、減少している。図2(a) は80 MHz と240 MHz での遅延時間応答である。水分濃度80 ppbv以上での応答は明瞭であるが、温度ドリフトにより乱れていることがわかる。SAWセンサの応答は温度依存性があるため、温度効果の補償が課題となる。そこで2つの周波数でセンサ温度を補償するモデルについて紹介する。
SAWセンサの周波数 および周波数 における相対的遅延時間変化 (DTC)および

で与えられる4)。ここでB(T) は感度因子wはガス濃度G(w) はwの関数、Tはセンサ温度、TREFは基準周波数、A1,A2は周波数1, 2における音速の温度係数である。低濃度領域の微量水分計では、である。
 式(1), (2)より、圧電結晶の温度係数による温度依存性を補償した、濃度による遅延時間変化は

 濃度によらず温度のみによる遅延時間変化は

となる。ここで、C=A1/A2である。
 図2 (b)は上記のモデルを適応した微量水分応答の遅延時間差分出力である。周波数差分法を用いた温度補償により、6 ppbvと19 ppbvでも応答は明瞭であった7,8)。図2 (c)は、市販の微量水分計の中で最も高感度かつ高精度であることが認められている CRDS を用いて測定した応答である。ボールSAW微量水分計は全水分濃度域においてとCRDSと同様の応答を示した。
 ボールSAW微量水分計の応答はCRDSの応答より速く、水分濃度を400 ppbvから810 ppbvに変化させたときの10〜90 %の応答時間はボール SAW センサと CRDS の応答時間はそれぞれ90 秒と780 秒であった。ボールSAWセンサの前に接続した場合のCRDSの応答時間はこのケースと同様であったため、CRDSの応答時間はボールSAWセンサに制限されないと考えられる。この応答時間の差は,CRDSとボールSAWセンサのセルのキャビティの容積の差に起因すると考えられる.

図2 微量水分測定 (a) ボールSAW微量水分計の出力の生信号 (b) 温度補償されたボールSAW微量水分計 (c) CRDS
図2 微量水分測定 (a) ボールSAW微量水分計の出力の生信号
(b) 温度補償されたボールSAW微量水分計 (c) CRDS

 遅延時間変化と濃度の関係を図3に示す2)。図中、白丸はSiOx感応膜を有するボールSAWセンサの4回繰り返しの結果である。図中、三角は微量水分応答の発見に至った水晶表面にダメージを設けたセンサの結果である。実線と点線は、それぞれ実験結果と実効値ノイズの3倍値に最小二乗フィッティングして外挿した線を示す。同じ測定系で感度が2桁向上し、検出限界は0.2 nmol/mol(ppbv)となった。なお,CRDS の検出限界は 0.1 ppbv オーダーであり、これらの結果から、ボールSAWセンサの感度は、CRDSと同程度にできることが示された。さらに、SiOx膜をコーティングしたボールSAWセンサのデータは、10 ppbvレベルまで平方根関数にフィットすることが示された。この平方根依存性は、水分子とシリカ格子の反応モデルを検証するための鍵になる4)

図3 遅延時間の校正曲線と感度
図3 遅延時間の校正曲線と感度


次回に続く-



参考文献

  • 1) K. Takayanagi, et al.: Mater. Trans. 55 (7) (2014) 988.
  • 2) S. Hagihara, et. al :Jpn. J. Appl. Phys.57 (2014) 07KD08.
  • 3) N. Takeda, et al. :J. Thermophysics .36 (7) (2015) 1-13.
  • 4) K. Yamanaka, et al: Jpn. J. Appl. Phys. 56 (2017)
  • 5) H. Abe, et al: Synthesiology 2 (2009) 223-236.
  • 6) H. H. Funke, et al: Rev. Sci. Instrum.74, 3909 (2003).
  • 7) A. Witkowski, et al: J. Press. Vessels Pip. 166 24 -34 (2018)
  • 8) K. Yamanaka, et al: Jpn. J. Appl. Phys. 58 (2019) SGGB04


【著者紹介】
赤尾 慎吾(あかお しんご)
ボールウェーブ株式会社 代表取締役社長

■略歴
1997年 東邦大学理学部物理学科卒業
1999年 筑波大学大学院理工学研究科修了
凸版印刷株式会社入社総合研究所配属。
2009年 東北大学大学院工学研究科材料システム工学専攻博士課程後期終了
東北大学未来科学共同研究センター客員准教授
2014年 東北大学未来科学共同研究センター特任准教授として参画
2015年 ボールウェーブ株式会社設立、代表取締役社長
現在に至る

ボールSAWセンサを用いた超小型ガスクロマトグラフの開発(1)

ボールウェーブ(株)
研究開発本部
岩谷 隆光

1. はじめに

 作業環境中の有害ガス検知や食品の生産・輸送現場における品質管理のための匂い分析、ひいては惑星探査における月・惑星・小天体の表面その場分析など、多種類のガスのオンサイト分析には多様なニーズがある。多種類のガスを分析する方法は、大きく2つある。1つはセンサアレイを用いた方法である。センサアレイは小型であり、短時間で測定できるが、湿度など環境因子に影響し、複雑な組成のガスの分析には限界がある。もう1つは、混合ガスをカラムで分離して検出するガスクロマトグラフ(Gas chromatograph; GC)を用いた方法である。GCは、温度制御したカラムで混合ガスを分離するため、環境による影響を分離することができ、幅広いガスの分析に有効である。しかし、通常のGCは大型で現場への持ち運びが困難という課題がある。これに対してボールウェーブでは、検出器として小型で高感度なボールSAWセンサを用いた可搬型のボールSAW GC1)を開発してきた。
 本稿では、ボールSAW GCの原理を説明し、JAXA宇宙探査イノベーションハブでの共同研究において開発した有人宇宙環境モニタリングを目的とした1リットルサイズのGCや、製品プロトタイプとして開発した手のひらサイズGCの“Sylph”を用いた日本酒の香気成分分析の実験結果を紹介する。

2. ボールSAW GCの原理

 図1にボールSAW GCの概念図を示す。本GCでは、サンプルガスを効率的に捕集しカラムに注入するため小型の濃縮器2)を備える。濃縮器は、ステンレス管の中に吸着剤を充填し外周に抵抗加熱のためのニクロム線を巻き付けた。測定手順は、まずサンプルガスをポンプで濃縮器に吸引して吸着剤に吸着させる。次に、バルブを切り替えて濃縮器を抵抗加熱により急速昇温すると、吸着した化合物は脱離して、キャリアガスによってカラムに導入される。それらの各化合物は、カラムの内面に塗布された固定相との相互作用の違いによって異なる保持時間でボールSAWセンサに到達し、センサに成膜された感応膜との相互作用により多重周回するSAWの遅延時間変化として検出される。ボールSAWセンサの感応膜はカラムの固定相材料を用いることで、カラムで分離できる幅広い化合物を検出できる。

図1 ボールSAW GCの概念図
図1 ボールSAW GCの概念図

 ボールSAWセンサはSAWの多重周回により高感度化を実現しているため、感応膜を薄く設計できる。これにより、時間分解能が求められるGCの検出器として現実的な応答速度を実現している。ボールSAWセンサは、他の代表的なGCの検出器である水素炎イオン化検出器(Flame ionization detector; FID)や熱伝導度型検出器(Thermal conductivity detector; TCD)と同様に、質量分析器(Mass spectrometer; MS)のような化合物の識別性はないが、MSに比べて非常に小型である。さらに、ボールSAWセンサは、100 ℃以上の動作を基本とするFIDやTCDに対して室温で動作することから省電力である点や、FIDに必要な燃焼ガス/支燃性ガスの供給やTCDに必要な参照ガスが不要な点で有利である。

3. 有人宇宙環境モニタリングのための超小型GC

 ボールSAWセンサは、ガスを非破壊で検出できるため、一度検出したガスを再利用することが出来る。そこで、2つのカラムとセンサを用いて短時間で多種類のガスを分析できるガス直進法と呼ぶカラムスイッチング法が開発された3)。図2にガス直進法の概念図を示す。まず、図2(a)に示すように直列接続の状態で、化合物A~Gを含むサンプルガスを注入する。1つ目のカラム(CL1)は保持力が小さく、化合物AからCは分離されず重なったピークとしとして一つ目のセンサ(BS1)で検出され、2つ目のカラム(CL2)に導入される。
 次に図2(b)に示すように並列接続に切り替えると、CL1に保持されていた化合物DからGはCL1で分離されBS1で検出される。化合物AからCは、CL1よりも保持力の大きいCL2で分離され、2つ目のセンサBS2で検出される。以上より、ガス直進法を用いることで、1つのカラムを用いたときの凡そ半分の時間で測定することが出来る。また1種類のカラムではどのような固定相を用いても分離が困難な化合物も、異なる固定相を持つ2種類のカラムを通過させることで分離することができる。

図2 ガス直進法 (a)直列接続 (b)並列接続
図2 ガス直進法 (a)直列接続 (b)並列接続

 図3は、ガス直進法を適用したGCの例である4)。キャリアガスは水素吸蔵合金キャニスターから供給され、圧力コントローラーで流量を制御されている。キャリアガスラインを除いたシステムの外形は、10×20×5.6 cmで体積が近似的に1 Lであるため、リッターGC(LGC)と呼ばれている。濃縮器は吸着剤として、Carboxen®1000とTenax®TAをそれぞれ約5 mg充填した。CL1は、ステンレス板の微細加工技術により小型化した20m長の流路に固定相として14% cyanopropylphenyl-86% dimethylpolysiloxaneを塗付したメタルMEMSカラム5)を用いた。CL2は、固定相にPolyethylene glycol (PEG)を塗付した15 mの金属キャピラリーカラム(UltraALLOY®/フロンティア・ラボ)を内径30 mm、外径75 mm、厚さ1 mmの円筒状に巻いたソレノイドカラムを用いている。
 中心周波数150 MHzのφ3.3 mm水晶球に、感応膜としてBS1はpoly-dimethylsiloxane (PDMS)を、BS2にpoly-N-vinylpyrrolidone (PNVP)をそれぞれ成膜したボールSAWセンサを用いている。カラム温度制御機構やバルブ制御機構など卓上型GCと同等の機能を有して、システムの重量は約1㎏だった。さらに、開発した濃縮器は、卓上型GCでは液体窒素を用いたコールドトラップを実装しなければ不可能なクロマトグラムの短いバンド幅を達成できる。

図3 LGC (a)外観 (b)内部構造
図3 LGC (a)外観 (b)内部構造

 LGCを用いて、NASAの規格Spacecraft Maximum Allowable Concentrations For Airborne Contaminants (SMACs)6)に指定される有害ガスから表1に示す12種類を選定した混合ガスを分析した。化合物4~7は分子量の近い低分子で、どんな固定相を用いても単一カラムでは分離できない。この混合ガスの選定は、分析法に対して開発課題を提示することも目的としている。
 サンプルガスは、窒素中に表1の化合物を各濃度50 ppmvで調整したガスボンベを購入し、これを窒素で0.1から2 ppmvの範囲で希釈した。測定では、サンプルガスを、流量25 ml/minで、1分から25分の範囲で濃縮器に捕集した。カラム温度はCL1, CL2ともに40℃で5分間保持した後10 ℃/minで140 ℃まで昇温した。図4に各濃度2 ppmvの混合ガスを5分間、体積として125 ml捕集して分析した結果を示す。図中の各数字は表1の数字に対応する。上段に示すBS1のクロマトグラムでは、化合物1~7とサンプルガス調整中に混合した水が十分に分離されなかったが、下段のBS2のクロマトグラムでは、それぞれピークとして確認できた。化合物8~12は、キシレンの異性体である10,11を除いて明瞭に分離したピークとしてBS1で検出された。

表1 SMACsから選定したサンプルガス成分
表1 SMACsから選定したサンプルガス成分
図4 LGCを用いた宇宙機における空中汚染物質の混合ガスのクロマトグラム
図4 LGCを用いた宇宙機における空中汚染物質の混合ガスのクロマトグラム


次回に続く-



参考文献

  • 1) S. Akao, N. Iwata, M. Sakuma, H. Ohnishi, K. Noguchi, T. Tsuji, N. Nakaso, and K. Yamanaka, “Development of Microseparation Column for Ball Surface Acoustic Wave Gas Chromatograph,” Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 47, 2008, pp. 4086-4090.
  • 2) T. Iwaya, S. Akao, K. Yamanaka, T. Okano, N. Takeda, Y. Tsukahara, T. Oizumi, H. Fukushi, M. Sugawara, T. Tsuji, T. Tanaka, R. Hiraoka, A. Takeda, A. Shima, S. Matsumoto, H. Sugahara, T. Hoshino, and T. Sakashita, “Development of Ball SAW Gas Chromatograph with Preconcentrator for Analysis of Multiple Hazardous Gases,” Proc. 41st Symp. Ultrasonic. Electronics, 2020, 3J3-1.
  • 3) Y. Yamamoto, S. Akao, H. Nagai, T. Sakamoto, N. Nakaso, T. Tsuji, and K. Yamanaka, “Development of Multiple-Gas Analysis Method Using the Ball Surface Acoustic Wave Sensor,” Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 49, 2010, 07HD14.
  • 4) 岩谷隆光,赤尾慎吾,山中一司,岡野達広,竹田宣生,塚原祐輔,大泉透,福士秀幸,菅原真希,辻俊宏,田中智樹,武田昭信,島明日香,松本聡,菅原春菜,星野健,坂下哲也, “ボールSAWセンサを用いた有人宇宙環境モニタリング用ガスクロマトグラフの開発とその地上利用,” 圧電材料・デバイスシンポジウム2022, 151-156.
  • 5) T. Iwaya, S. Akao, T. Sakamoto, T. Tsuji, N. Nakaso, and K. Yamanaka, “Development of High Precision Metal Micro-Electro-Mechanical-Systems Column for Portable Surface Acoustic Wave Gas Chromatograph,” Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 51, 2012, 07GC24.
  • 6) V. E. Ryder, “Spacecraft Maximum Allowable Concentrations for Airborne Contaminants,” JSC 20584, April 2020.


【著者紹介】
岩谷 隆光 (いわや たかみつ)
ボールウェーブ株式会社 研究開発本部

■略歴
2010年3月 東北大学工学部材料科学総合学科卒業
2012年3月 同大学修士課程修了
2012年4月 株式会社LIXIL入社
2019年1月 ボールウェーブ株式会社入社、現在に至る

AI対応センサーフュージョン(Camera Vision + mmWave RADAR)対応Jetson開発キット

2022年7月1日、ポジティブワン(株)は、AI-SFK(Camera Vision + mmWave RADAR)対応Jetson開発キットの販売を開始した。

AI対応のセンサーフュージョンキットは、統合されたパフォーマンス指向のカメラビジョンおよびmmWave RADARフュージョンプラットフォームであり、最新のAI、ディープラーニング、およびビデオ分析アプリケーションの切実なニーズを満たすという。

NVIDIA社JetsonSoMベースのAI対応センサーフュージョンキット(AI-SFK)は、最新のAI、ディープラーニング、およびビデオ分析アプリケーションの切実なニーズを満たす、統合されたパフォーマンス指向のカメラおよびmmWaveRADARセンサーフュージョンプラットフォームである。

AI-SFK(Camera Vision + mmWave RADAR)は、ADAS、自動運転車、スマートリテール、産業用4.0、ロボット工学、スマートビルディング、スマートシティなどのアプリケーションに優れたイメージング機能とともに範囲精度を提供するように独自に設計されている。

モジュール上のCameraVision+ mmWave RADARは、オブジェクトの検出、分類、範囲、速度、および高度のパラメーターを相互に補完する。このプラットフォームは、ビジョン分析とレーダーデータ融合をリアルタイムで提供する。AI対応のセンサーフュージョンキットは、NVIDIA Jetson Xavier NX SoMと組み合わせたMistral製ニューロンベースボード(NB-Turbo)と、Mistral製77GHz mmWave RADARモジュールおよび最大21fpsでサポートするカメラモジュール(CSIベースの8 MP/4Kカラーセンサー)で構成されている。

このボードはNVIDIA社JetPackSDKをサポートしており、カメラとmmWave RADARセンサーベースのAIアプリケーションの開発を可能にし、すべての主要なAIフレームワーク、コンピュータービジョン、グラフィックス、マルチメディアなどをサポートする高速ライブラリを備えている。製品/システム開発用のエンジニアリングサービスを提供するだけでなく、カスタムカメラ統合用のセンサーフュージョンキット、サーマル、LiDARなどの他のセンサー統合、ML / DLアルゴリズムの開発と統合、リモートファームウェアアップグレード、オーディオおよびビデオ、クラウドおよびモバイルアプリ、PoE、電力最適化、機械的エンクロージャのカスタマイズ、FCC / CE認定のサポート、およびChirp Profile Tuningのサポートをする。

◆仕様
– 48個のテンソルコアを備えた384コアのNVIDIAVoltaGPU
– 6コアNVIDIA社CarmelARMv8.264ビットCPU
– 7ウェイVLIWビジョンプロセッサを搭載した2xNVDIAエンジン
– 8 GB 128ビットLPDDR4x、16 GBeMMC5.1および10/100/1000Base-Tイーサネット
– CSI2-2レーンカメラインターフェース
– Leopard ImagingのSony社iMX219
– PLL、送信機、受信機、ベースバンド、ADCが統合されたFMCWトランシーバ
– 利用可能な帯域幅4GHzで76~81GHzのカバレッジ
– M.2Mキーベースの250GBSSD
– GigE、Wi-Fi 802.11 a/b/g /n/acおよびBT5.0
– Ubuntu 18.04LinuxOSをネイティブにサポート
– OpenCV、VisionWorks、TensorRT、LibArgus、CUDA、CuDNN、ROS1 Melodic

プレスリリースサイト(positive-one):https://www.positive-one.com/info/news-0000261549.html

HIROTSUバイオサイエンス、「N-NOSE安心アフターサービス(無料)」の提供開始

(株)HIROTSUバイオサイエンスは、線虫がん検査「N-NOSE®」でハイリスクとなった方を対象※に、7/1(金)から新サービスの提供を開始する。
これは看護師など医療関連の知識を有する専任スタッフが、N-NOSE検査の結果解説や次の検査に進むための情報提供、がん検診予約代行/検診受診後のフォローアップを行うもので、同社はこれを通じて利用者の不安を解消するとともに、がん早期発見に繋げるための一連のプロセスをサポートしていくという。

同社が開発・提供する線虫がん検査「N-NOSE®」は、嗅覚に優れた線虫という生物が人の尿中に含まれるがんの匂いを検知することを利用した、世界で唯一のがんの一次スクリーニング検査。
同社は、2020年1月の実用化以降15万人以上の方に受検されている「N-NOSE®」のサービス向上に日々努めており、このたび新たに「N-NOSE安心アフターサービス」の運用を開始した。
サービスの概要は画像参照。

※2022年7月1日(金)以降に新価格(定期検査コース:13,800円、1回検査:14,800円)でN-NOSEを購入し、受検後にハイリスク(C-3、D、E)の結果を受け取った利用者が対象。

同社は、「N-NOSE®」でハイリスクとなった方へのサポート体制を強化することで、利用者により安心して検査を受けていただけるようなサービスづくりを進めるとのこと。

【参考】線虫がん検査「N-NOSE®」(エヌノーズ)について
「N-NOSE®」は、嗅覚の優れた線虫が、人の尿中に含まれるがん特有の匂いを検知することを利用した検査である。生物の能力を活用したこの新しい検査は簡単で痛みがなく、以下6つの特長を有している。

① 簡便:健康診断と同じく、わずかな尿で検査可能
② 安価:線虫の飼育コストが安いため、検査料金を安価に提供可能
③精度:感度は 86.3%(*1)
④ 早期発見:早期がん(ステージ0、Ⅰ)にも反応
⑤ 非侵襲:尿で検査できるので、痛みなどの苦痛を伴わない
⑥ 全身網羅的:一度の検査で全身(*2)のがんリスクを調べることが可能
*1 日本がん予防学会(2019 年 6 月)、日本人間ドック学会(2019 年 7 月)、日本がん検診・診断学会(2019 年 8 月)で発表のデータより
*2 線虫が反応することが分かっているがん種:胃、大腸、肺、乳、膵臓、肝臓、前立腺、子宮、食道、胆嚢、胆管、腎、膀胱、卵巣、口腔・咽頭(15 種類)

プレスリリースサイト(hbio):n-nose安心アフターサービス(無料)提供開始のお知/

故障前の予兆をキャッチする「遠隔モニタリング」がIT導入補助金2022の対象ツールに

新東工業(株)は、経済産業省が中小企業・小規模事業者に向けて実施する「IT導入補助金2022」において、「IT導入支援事業者」として採択された。また、同社の商品である「遠隔モニタリング」が対象ツールとして登録され、導入時に補助金交付を受けることが可能になった。

IT導入補助金2022とは、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートする制度。
この制度に同社の遠隔モニタリングが登録されたことにより、一定の基準を満たした事業者は、遠隔モニタリングを導入する際に補助金の交付を受けることが可能になった。
IT導入補助金:https://www.it-hojo.jp/first-one/

■センサで故障前の予兆をキャッチする「遠隔モニタリング」について
遠隔モニタリングは、小型のセンサを任意の設備や箇所に取り付けるだけで、振動や温度などの変化を遠隔で監視できるIoTサービス。数値が設定値を超えた場合には担当者にメールを配信する機能があり、設備に異常が発生する前に点検を行うことができる。これにより、設備の突発的な故障を回避して生産性向上に貢献するとともに、設備の保全に関する工数やコストの削減に繋げることも可能である。
また小型のセンサはマグネットで簡単に取り付けができるため、高所や狭所などに設置することで、危険を伴う巡回点検を減らすことができる。また、設置工事が不要のため、ご契約後すぐに導入も可能。

以下の機能をウェブアプリケーションで利用できる。
①詳細
 現在の測定値や、センサの設置位置、設置時の写真を確認できる。
②グラフ
 測定値のデータを任意の期間でグラフ表示できる。
③報告書
 一定期間のグラフや警告回数のまとめをレポートの形で出力することができる。
④データ出力(CSV)
 取得した各データをCSV形式でダウンロードすることができる。
⑤対象の稼働判定
 現在の測定値をもとに、対象設備の稼働と未稼働を判定する。

■遠隔モニタリング導入による効果
・傾向監視による突発な機器故障を未然に防止
・24時間365日監視、作業者の負担を軽減
・危険を伴う巡回点検から解放

■遠隔モニタリングシステム構成(画像)
測定機器仕様:
・子機(センサ)・・・振動、温度、周波数
・アナログ信号測定器・・・汎用的な4-20mA出力付センサが接続可能

ニュースリリースサイト(sinto):https://www.sinto.co.jp/product/iot/news/2294

スイッチサイエンス「Raspberry Pi Pico H」を2022年6月30日販売開始

(株)スイッチサイエンスは、Raspberry Pi財団が2022年6月30日に発表した「Raspberry Pi Pico」新製品3種のうち、ピンヘッダを実装済みの「Raspberry Pi Pico H」を同日販売開始する。
無線接続が可能な「Raspberry Pi Pico W」とそのピンヘッダ実装済み版「Raspberry Pi Pico WH」は、2022年6月30日時点で工事設計認証(いわゆる技適)を未取得のため、取得及び表示などの対応が実施された後、スイッチサイエンスウェブショップにて販売開始を予定している。

「Raspberry Pi Pico H」は、 40ピンヘッダとデバッグ端子3ピンにはJST SH 3ピンコネクタ(1 mmピッチ)を実装済みで、趣味用途においても産業用途においても、使いやすさを向上する。

「Raspberry Pi Pico W」は、インフィニオン・テクノロジーズ社のCYW43439無線チップを追加搭載(※)し、無線LAN機能が利用可能。CYW43439用のアンテナはABRACON(formerly ProAnt)ライセンスのオンボードアンテナを利用しており、ワイヤレスインターフェースはSPIでRP2040と接続する。

「Raspberry Pi Pico WH」は、「Raspberry Pi Pico W」にピンヘッダを実装したモデル。

※ CYW43439にはBluetooth 5.2の機能も搭載されているが2022年6月30日時点では無線LAN機能(IEEE 802.11n)のみ対応。

▶︎ 「Raspberry Pi Pico H」の特徴
・Raspberry Pi(UK)設計のRP2040マイコン搭載
・デュアルコア ARM Cortex M0+プロセッサ、最大動作周波数 133 MHz
・SRAM:264KB、フラッシュメモリ:2MB
・USB 1.1 ホスト/デバイス両対応
・低消費電力スリープモードおよびドーマントモードが利用可能
・USBを介しマスストレージを使ったドラッグアンドドロップによるプログラムの書き込みが可能
・26 x 多機能GPIOピン
・2 x SPI、2 x I2C、2 x UART、3 x 12 bit ADC、16 x PWMチャンネル
・正確なクロックとタイマーを搭載
・温度センサ搭載
・高速な浮動小数点ライブラリを搭載
・8 x プログラマブルI/O(PIO)
・寸法:21 mm(W) x 51.3 mm(L) x 12.9 mm(H)
・重さ:6 g

▶︎ 「Raspberry Pi Pico H」販売情報
スイッチサイエンスのウェブショップ( https://www.switch-science.com/ ) にて販売
型番 RPI-SC0917
商品名 Raspberry Pi Pico H
価格(消費税込み) 814円
購入ページ https://ssci.to/8170

▶︎ 「Raspberry Pi Pico W」の特徴
・2 MBフラッシュメモリおよびRP2040マイコンを搭載
・シングルバンドの2.4 GHz無線LANインターフェース搭載(802.11n)
・電源/データ通信用Micro USB-Bポートを搭載(プログラム書き込みも可能)
・2.54 mmピッチの40ピン端面スルーホールを備えたDIPスタイルの薄さ1mm PCB
 ・26本の多機能3.3 V GPIO
 ・23本のGPIOピンはデジタル専用、残り3本はADC搭載ピン
 ・本製品を部品として表面実装可能
・3ピンArm SWD(serial wire debug)ポート
・シンプルかつ柔軟性の高い電源供給アーキテクチャ
 ・micro USBや外部電源、電池などの様々な電源から簡単に供給可能
・ソフトウェアサンプルやドキュメントを含んだSDKを用意
・寸法:21 mm(W) x 51.3 mm(L) x 3.9 mm(H)
・重さ:4 g
※本製品ではI/O電圧は3.3 Vに設定

▶︎ 「Raspberry Pi Pico W」「Raspberry Pi Pico WH」販売情報 工事設計認証(いわゆる技適)の取得及び表示の対応がなされた後、スイッチサイエンスのウェブショップ( https://www.switch-science.com/ ) にて、販売を予定している。
型番 RPI-SC0918
商品名 Raspberry Pi Pico W
価格(消費税込み) 1,111円
購入ページ https://ssci.to/8171

型番 RPI-SC0919
商品名 Raspberry Pi Pico WH
価格(消費税込み) 1,265円
購入ページ https://ssci.to/8172

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000091.000064534.html

総務省公募「周波数資源の有効活用に向けた高精度時刻同期基盤の研究開発」に採択

(株)コアは、総務省が募集した「令和4年度から新たに実施する電波資源拡大のための研究開発に係る提案公募」における「周波数資源の有効活用に向けた高精度時刻同期基盤の研究開発」について、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下「NICT」)、FCNT(株)と共同で応募し採択された。

●多点測位システムの研究開発
 5GまたはBeyond 5G実現後の社会において、各センサーや端末の時刻同期精度・位置精度を向上させることで、周波数資源の有効利用促進に貢献。

 5GまたはBeyond 5G実現後の社会においては、ドローン制御や自動運転をはじめ、長期的には無人工場や無人港湾の管理など、各センサや端末間で位置データ・高解像度画像等のデータをリアルタイムに処理する必要のあるユースケースの実現が見込まれている。本研究開発では、小型民生機器に搭載可能な小型原子時計と、 それを活用し近距離通信において各端末で時刻情報を高精度に同期・管理する時刻同期基盤(以下「高精度時刻 同期基盤」)を確立するとともに、端末の位置情報を正確に把握するための時空間座標情報基盤を実現する多点測位システムを確立する研究開発を行う。これにより、各端末の時刻同期精度・位置精度を向上させ、時間軸や空間軸での周波数資源の有効利用促進を目指す。
 コアでは、準天頂衛星みちびきセンチメートル級測位補強受信機を使用した小型原子時計搭載GNSSアンカーと、単眼カメラを活用した多点測位システムの開発を実施する。センチメートル級の高精度受信機を使用することで、従来のGNSS受信機に比べて測位精度と周波数安定性を1桁向上させ、時空間の座標基準としてのアンカーを実現する。また、世界測地系に準拠した測位を非GNSS環境にも適用するために、空間的に離れた複数センサによる物体位置推定と、異なるセンサによる物体位置推定を検証する多点測位システムを実現するという。

●研究開発の背景
 逼迫する周波数資源の有効活用には、無線ネットワーク の時刻同期精度の大幅な改善が必要不可欠

 ネットワークに接続されるIoTデバイスの数は今後も加速度的に増加することが見込まれている。また無線ネットワークにおいては、多数のモビリティ機器やセンサの間で画像等の大量のデータをリアルタイムに送受信する用途が拡充されるために、通信量がさらに爆発的に増大することが危惧されている。このような周波数逼迫の問題に対し、単純な周波数帯域の拡充だけでは、各デバイスに搭載されるアンテナやフィルタ等が増加して小型端末のボード面積が増大していくため、周波数資源の活用を時間軸や空間軸の観点から見直すことが求められている。
 空間的多重度は、断続的な通信途絶からの復帰等において逐一実行される同期処理等を抑制・削除することや、端末間の時刻同期精度および位置同定の精度を向上させて高指向性の電波送信技術と組み合わせることによって、高めることができる。一部の端末が占有する周波数帯域を最小限に抑制することによって、周波数資源を有効利用することが可能となる。この空間的多重度の向上を実現するためには、無線ネットワーク の時刻同期精度の大幅な改善が必要不可欠となる。
 本研究開発では、多くの通信ノードや小型民生機器を含むIoTデバイスが原子時計を搭載できる環境を整えるとともに、原子時計の搭載が困難な端末へもネットワーク内の原子時計搭載端末と連携させ、原子時計と同程度の精度の時刻推定を可能にするアルゴリズムを実現するという。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000070745.html