教授
八木 康史
3 大規模歩容データベース
このような歩容認証の性能向上に貢献しているのが,大規模データセットの存在である.大規模データにより,歩容からの性別認証・年齢推定の可能性など,小規模データベースでは知り得ない新たな知見も得られている.我々が構築したOU-ISIR歩容データベースは,米国のIEEE Biometrics Council News Letter(2013年4月)で紹介され,歩容認証研究の標準データセットとなった.表1は,代表的な公開データベースである[8-17].CASIAとOU-ISIRが,現状,世界標準の歩容データセットとして活用されている.歩容認証も実用化のフェーズにどんどんと近づく中,より一般環境での評価が求められる.そのような状況下,2021年には,VersatileGai[16]やGREW[17]などの新しいデータセットが公開されている.
4 歩容鑑定
実応用の観点では,この技術は,2009年に日本の警察史上で初(世界2例目)の科学捜査技術として活用され,2013年に,世界初の歩容鑑定システム(図5)をリリース,2014年に警察白書に新しい個人識別法として掲載され[18],2016年裁判証拠として認定された.裁判官の判断では,「以上によれば,本件歩容鑑定は,精度を保つための条件を充足する両資料を基に,一定の信用性の認められるシステムを用い,適切な手法に基づいて行ったものと認められるのであって,その結果は相応の根拠に基づくものであり,一定の証明力を有するものと認められる.」とのコメントが出ている.現在,警察庁科学警察研究所法科学研修所主催の鑑定技術職員研修にて歩容鑑定の研究が実施され,都道府県における技術職員の基礎能力を高めるとともに,科学警察研究所でこのシステム運用が続いている.
5.おわりに
歩容映像解析は,犯罪捜査・テロ対策,防犯・セキュリティなど警察捜査での利活用が始まりつつあるが,警察利用だけでなく,商業施設での施設誘導・買い物支援,カルチャー施設や病院施設などでの利用者ケア支援,スマートハウスなどの居住施設の環境知能化,各種医療分野における診断補助など,私たちが暮らす社会全般において活用できる基盤技術である.我々の願いとしては,歩容映像解析を,人を理解し,人と安全に接するためのブレ-クスルー技術として確立し,日本がその先導的役割を果たしながら,新たなビジネス創成につなげていくこと,そのためにも,世界唯一の大規模歩容データベースを構築し,歩容映像解析において先導的研究を続けていきたい.
参考文献
- S. Yu, D. Tan, and T. Tan, A framework for evaluating the effect of view angle, clothing and carrying condition on gait recognition, Proc. 18th Int. Conf. Pattern Recognition, vol.4, pp.441–444, 2006.
- D. Tan, K. Huang, S. Yu, and T. Tan, Efficient night gait recognition based on template matching, Proc. of 18th Int. Conf. on Pattern Recognition, vol. 3, pp. 1000–1003, 2006.
- Haruyuki Iwama, Mayu Okumura, Yasushi Makihara, and Yasushi Yagi, The OU-ISIR Gait database comprising the large population dataset and performance evaluation of gait recognition, IEEE Trans. on Information Forensics and Security, Vol. 7, No. 5, pp. 1511-1521, 2012.
- C. Xu, Y. Makihara, G. Ogi, X. Li, Y. Yagi, and J. Lu, The OU-ISIR gait database comprising the large population dataset with age and performance evaluation of age estimation “, IPSJ Trans. on Computer Vision and Applications, Vol. 9, No. 24, pp. 1-14, 2017.
- M.Z. Uddin, T.T. Ngo, Y. Makihara, N. Takemura, X. Li, D. Muramatsu, Y. Yagi, The OU-ISIR large population gait database with real-life carried object and its performance evaluation, IPSJ Trans. on Computer Vision and Applications, Vol. 10, No. 5, pp. 1-11, 2018.
- N. Takemura, Y. Makihara, D. Muramatsu, T. Echigo, and Y. Yagi, Multi-view large population gait dataset and its performance evaluation for cross-view gait recognition, IPSJ Trans. on Computer Vision and Applications, vol.10, no.1, p.4, 2018.
- W. An, S. Yu, Y. Makihara, X. Wu, C. Xu, Y. Yu, R. Liao, and Y. Yagi, Performance evaluation of model-based gait on multi-view very large population database with pose sequences, IEEE Trans. on Biometrics, Behavior, and Identity Science, vol.2, no.4, pp.421–430, 2020.
- X. Li, Y. Makihara, C. Xu, Y. Yagi, Multi-view large population gait database with human meshes and its performance evaluation, IEEE Trans. on Biometrics, Behavior, and Identity Science, vol. 4, no. 2, pp. 234-248, 2022
- H. Dou, W. Zhang, P. Zhang, Y. Zhao, S. Li, Z. Qin, F. Wu, L. Dong, and X. Li, Versatile gait: A large-scale synthetic gait dataset with fine-grained attributes and complicated scenarios, ArXiv preprint, vol. abs/2101.01394, 2021.
- Z. Zhu, X. Guo, T. Yang, J. Huang, J. Deng, G. Huang, D. Du, J. Lu, and J. Zhou, Gait recognition in the wild: A benchmark, Proc. of the IEEE/CVF Int. Conf. on Computer Vision, pp. 14789–14799, 2021.
- 平成26年度警察白書, https://www.npa.go.jp/hakusyo/h26/youyakuban/youyakuban.pdf
【著者紹介】
八木 康史(やぎ やすし)
大阪大学産業科学研究所 教授
■略歴
1985年大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程了。工学博士。1985年三菱電機(株)応用機器研究所/産業システム研究所研究員。平成2年大阪大学助手、同講師、同助教授を経て、平成15年大阪大学産業科学研究所教授、平成24年 同研究所長、平成27年8月から令和元年8月まで大阪大学理事・副学長(研究、産学共創、図書館担当)を経て、令和元年8月より産業科学研究所教授、JST創発的研究支援事業プログラムオフィサー、AMED臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業プログラムオフィサー。平成30年からは、パーソナルデータの利活用により、身体の健康、心の健康、社会的健康(コミュニケーション)、環境の健康を基軸にして輝く人生(高いQOL)をデザインし、様々な技術革新と社会経済環境の変革を大学から発信することを目指す、ライフデザイン・イノベーション研究拠点本部長、データ取引市場MYPLRを運用する(一社)データビリティコンソーシアム代表理事。
コンピュータビジョン、パターン認識、ロボットビジョンの研究の従事。Asian Federation of Computer Vision Societies (Vice President)。情報処理学会フェロー。知能ロボット、コンピュータビジョン分野で普及した、周囲360度を一度に撮影できる全方位カメラを1980年代に考案、特に移動ロボットのための視覚技術として展開、電子情報通信学会論文賞等を受賞。また、人の歩く姿から個人を識別する歩容認証技術に関して,世界初の歩容鑑定システムをリリース、その成果から、2014年、科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 研究部門「歩容映像解析とその科学捜査利用に関する研究」受賞。2016年春、刑事裁判にて鑑定結果の証拠力が日本の裁判所で認められる。
柔らかなエレクトロニクスを用いたバイタルセンシング技術(2)
センシングシステム研究センター
吉田 学
2.1高伸縮配線部
銀メッキ繊維を用いた高伸縮デバイスの開発
伸縮性配線は快適なウェアラブルデバイスを実現するために非常に重要な部材である.図4に示すように人体は非可展面(二次元平面に展開できない曲面)で構成されているため,プラスチックフィルム等を用いたフレキシブルデバイスを装着した場合,完全な密着状態を実現することは不可能である.故に,人体表面への高いフィット性を実現するためには伸縮性を持つデバイスを作製する必要がある.
それでは,人体にデバイスを装着するために,配線部はどれだけ伸長する必要があるだろうか.単純に球面などの曲面にデバイスを貼り付けることを考えた場合,最も伸長する部分で,60%の伸長率(元の長さの1.6倍)が必要となる.また,人体などでは,装着後,体の動きなどによりデバイスが伸長する.膝関節部等では,0度~150度屈曲させた場合,40%程度の伸長率が必要となる.現在,印刷できる伸縮性導電ペーストは様々なものが開発されている.故に,印刷により伸縮性の導電配線を形成することが可能である.しかし,印刷により形成する導電性配線は,伸縮時の抵抗変化をどれだけ抑えられるかが現状の開発課題となっている.我々は,図5に示すように,柔軟で,伸縮性の高いデバイスを実現するため,柔軟な薄膜樹脂上に導電性繊維をバネ状に形成した高伸縮性バネ状導電配線を開発した.この導電配線は,3倍以上伸長しても,抵抗値変化は1.2倍程度と安定な電気特性を示す.この高伸縮配線をLED用配線として用いたところ,3倍以上の伸長時にもLEDの発光輝度がほとんど変化せず,伸長時の抵抗値変化が非常に小さいことが確認された.一方,従来の伸縮性導電材料を用いた場合,配線抵抗が大きく変化しLEDの発光輝度の大きな揺らぎが観測された.一般的に,伸縮性導電配線を伸長・収縮させた場合,抵抗値が急激に変化したのち一定値に安定するまでに非常に長い時間を必要とする.故に,これらの材料を配線として用いたセンシングデバイスに変形が加えられたとき,出力信号にノイズがのってしまうことやセンシングした信号の定量性を確保できないことが問題となっていた.一方,開発したバネ状導電配線は,伸長・収縮時の抵抗値変化が小さいことに加えて,抵抗値が安定するまでの時間が短く安定に信号をモニターすることができるため,信頼性の高いセンシングシステムを構築することができる. また,この配線は折り畳んでもほとんど抵抗値変化を示さない.20万回以上折り曲げても(曲げ半径0.1 mm以下)抵抗値は安定しており,十分な耐久性を備えている.従来の金属系のフレキシブル配線では,折り畳んでしまうと断線してしまうため,ある程度の曲率半径を担保して用いる必要があり,デバイス薄化の妨げとなっていた1).今回開発した配線を用いることにより,非常に薄いデバイスを実現することが可能となる. 図6に示す銀メッキ短繊維電極は粘着剤をパターニングした上に銀メッキ繊維を吹き付けなどの手法により貼着するものであるため,所望のパターンの高伸縮電極を形成することができる.この電極で誘電体フィルムを挟み込むことにより静電容量型の圧力センサを作製することができる.この圧力センサは伸縮性があり,コンピューター用マウスなどの曲面上に隙間なく張り付けることができる(図7).このような柔軟なセンサを椅子のカバーの裏に作り込み,着席時の重心移動などを圧力分布として分析することに成功している.このセンサは非常に柔軟であるため,着席時も圧力センサを感じることはなく快適性が確保されている.また,座面部分のセンサの感度調整をすることにより,臀部や大腿部の圧力変化から呼吸の周期や血管の脈動(脈波)を検出することもできる(図8).このセンサは衣服にも同様に作り込むことができるためウェアラブル生体情報センサとして用いることも可能である.
3.まとめ
現行のウォッチ型ウェアラブルデバイス等では柔軟なエレクトロニクス技術は十分に活用されていないが,将来的に要求される衣服型ウェアラブルデバイス等では柔軟なエレクトロニクス技術が不可欠な技術となる.しかし,有用で,信頼性の高いウェアラブルデバイスを安価に世の中に送り出すためには,無理に全てを柔軟なエレクトロニクスデバイスで構成することを考えるのではなく,従来のシリコンプロセスで製造したデバイスや繊維状デバイスとのハイブリット化が非常に重要な開発技術になると考えられる.
参考文献
- 岡田顕一ら,“HDD用高屈曲FPC”フジクラ技報,99 (2000) 49.
【著者紹介】
吉田 学(よしだ まなぶ)
国立研究開発法人産業技術総合研究所
センシングシステム研究センター・研究チーム長
■略歴
1999/3 千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了・博士(工学)
1999/4-2001/3(財)科学技術振興事業団 戦略的基礎研究推進事業(CREST)特別研究員
2001/4-2009/9(独)産業技術総合研究所 光技術研究部門 入所 任期付研究員
2009/9-2012/6(独)産業技術総合研究所 フレキシブルエレクトロニクス研究センター 主任研究員
2012/7-2013/6(独)新エネルギー・産業技術研究開発機構(NEDO) 電子・材料・ナノテクノロジー部 主任研究員
2013/7-現在 現職
2017/10-現在 埼玉大学大学院 連携教授 兼任
心の状態のセンシング(2)
准教授
小室 信喜
4.心的状態推定精度
4.1 実験方法
本研究では,ウェアラブルデバイスによって測定された4感情データの分類問題を考える.教師あり機械学習ベースのパターン認識アルゴリズムの1つであるランダムフォレストを使用する.ランダムフォレストは,多数の決定木を生成し,その結果を多数化(平均化)することで,決定木の過学習を標準化するアルゴリズムである.多数の決定木を作成し,平均化することで,高精度な学習済みモデルを生成することが可能である.そして本研究における13~14の多数のパラメータに対応することが可能であることが考えられる.さらにパラメータの重要度も算出することで,各種屋内環境データがストレス状態のどのように影響を及ぼすのが考察する.ランダムフォレストの他にSVMやKNN法などの手法も試みてみたが,ランダムフォレストによる推定が最も高い精度であることを確認した.画像データやバイタルデータは使用していない.測定した屋内環境データ(温湿度,照度,ブルーライト強度,音,臭気,人感,距離,CO2濃度,ほこり濃度,ポイントベースのサーモセンサ,大気圧)のうち60日分を使用した.このうち,70%をトレーニングデータ,30%をテストデータとする.
4.2 実験結果
表1に2人の心的状態推定結果を示す.ID1,2はポイントベース温度センサも含めた14種類のセンサで推定された結果である.ランダムファレストによる心的状態推定の正解率は7~9割程を達成している.この結果は開発したパーソナルセンサ及びインドアセンサが心的状態推定に効果的であることを示している.正解率は測定されたデータ量よりも正解データとして用いた感情データの偏りに依存している箇所も検出されたが,いずれの結果もランダムフォレストによって求めた正解率の割合が結果の感情の割合よりも大きな値をとっていることから,環境センサで測定したデータが正解率を向上させていると考えられる.さらに測定データの量の影響について図4に示す.結果より,測定データ量が増えると4感情のHappy,Stress,Relax,Sadの正解率と推定精度は飽和することを示していることがわかる.データ量が少ない場合,正解率は不安定であるが,データ量が大きい程,一人一人の推定精度は安定する.また,被験者によって4つの心的状態の割合は異なり,人によって屋内環境に対して感じる心的状態はさまざまであることがわかる.
センサデータごとの重要度を表2に示す.CO2濃度はどの被験者においても共通で重要度が高い結果が得られ,感情に大きく影響を及ぼすことが考えられる.さらに,ID1,2についてはポイントベースサーモセンサも高い重要度を示している.このセンサは被験者の顔の温度の変動を測定できるためであると考えられる.人間検出センサについては,被験者が自身の席についているかどうかを確認するために使用したため,重要度は低い結果となっている.その他のパラメータについては各被験者によって異なる結果となった.Averageの結果より,臭気やブルーライト,音も心的状態推定に比較的影響があることも確認できる.このことからこの心的状態分類の有効であることを示す.
| ID1 | ID2 | |
|---|---|---|
| Number of data | 6685 | 14420 |
| Happy Ratio | 0.679 | 0.666 |
| Stress Ratio | 0.240 | 0.221 |
| Relax Ratio | 0.071 | 0.095 |
| Sad Ratio | 0.011 | 0.018 |
| Train Accuracy | 0.998 | 0.999 |
| Estimation Accuracy | 0.821 | 0.822 |
| Parameter | ID1 | ID2 | Average |
|---|---|---|---|
| CO2 Thermography Blue Light Distance Odor Temperature Loudness Visible Ray Illuminance Infrared Ray Dust Atmosphere Pressure Human Detection Humidity |
0.133 0.083 0,076 0,079 0.065 0.099 0.060 0.067 0.067 0.062 0.062 0.046 0.042 0.059 |
0.0149 0.103 0.085 0.101 0.073 0.019 0.063 0.076 0.080 0.069 0.062 0.068 0.039 0.067 |
0.148 0.093 0.087 0.087 0.082 0.078 0.069 0.067 0.066 0.062 0.061 0.057 0.053 0.050 |
5.おわりに
本研究では,人の認知機能に影響を及ぼし得る屋内環境データと生体データによる心的状態データを同時に計測することにより,人の心的状態推定・把握に向けた基礎的な検討を行った.今回焦点を当てたのは4つの心的状態の分類問題と屋内環境との関係をモデリングすることにより,その相互作用を考察した.心的状態分類に関して,ランダムフォレストによる機械学習を導入することでその精度は80%にまでのぼることがわかった.
本研究は,認知科学的知見とデータサイエンス的知見を融合し,IoT技術によって得られる人間の認知機能に影響を及ぼし得る環境データから心的感情を推定する方法論・モデルの構築を試みたものであり,人間の認知機能に影響を与えうる環境データを用いることによって高精度に心的状態を判定できるという得られた.この結果は,今後の心的状態推定・把握に関する研究アプローチに有用な知見である.
謝辞
本研究の一部は,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業(JPNP20004)の結果得られた.
【著者紹介】
小室 信喜(こむろ のぶよし)
千葉大学 統合情報センター 准教授
■略歴
2005年茨城大学大学院理工学研究科修了.同年より東京工科大学助手,同助教.2009年千葉大学大学院融合科学研究科助教,2016年同准教授,2017年同大統合情報センター准教授,現在に至る.2012年米国州立ラトガース大学訪問研究員.無線センサネットワーク技術とその応用に関する研究に取り組んでいる.無線センサネットワークプロトコル,無線センサネットワーク技術を用いた心的状態推定,照明光通信,屋内位置推定に関する研究などに従事.博士(学術).
アドテック、九州大学およびPalmensと「MEMSマイクロ血流量センサ」共同開発
AKIBAホールディングスグループの(株)アドテックは、、この度、各方面で活用が期待できる「MEMSマイクロ血流量センサ」について、特許保有者である国立大学法人九州大学及び開発者であるPalmens(株)との間で、特許利用に関する契約及び共同開発を実施する。
アドテックは、医療機器などの様々なハードウェア開発の実績からIoTを社会実装する事業を進めてきた。
社会課題に対する様々な取り組みの中で、特に重要となっている少子高齢化の社会への対応においては、健康状態のデータ収集および分析を行うため、データベースの構築が望まれている。
これを実現するためには、簡易的かつ高精度に個々のバイタル情報を把握する事が必要不可欠であり、この度、高精度に計測可能な「MEMSマイクロ血流量センサ」について、特許保有者である九州大学及び開発者であるPalmensとの間で、特許利用に関する契約及び開発に向けた契約を締結し、人生100年時代に向けた健康づくりを見据えた、次世代ヘルスケアサービスの研究開発を実施していくという。
■血流量測定の意義
血流が全身に酸素、栄養、熱、身体の生理的な状態や自律神経とも関係した情報を運ぶことから、血流量の測定は非常に重要である。
しかし、血行などの言葉は頻繁に使用されるが、血流量の測定はあまり行われていない。日常の健康維持、スポーツ医学、東洋医学などにおいて有益な種々の応用が報告されている。
■接触圧を考慮した血流量測定の意義
血流量は接触圧の影響を大きく受けるので、接触圧を考慮した血流量の測定が再現性良い血流量測定には必要で、接触圧の制御には接触面積と生体に加わる力の測定が不可欠である。
この特許を利用し、センサ開発の最終工程における共同開発をPalmensと実施していく。
本製品の開発期間は現時点では約2年間を想定しており、3年目からセンサの販売開始を見込んでいる。
また、血流センサを活用した応用製品の開発についても検討をおこなうとのこと。
ニュースリリースサイト(adtec):https://www.adtec.co.jp/information/10150/
電力スマートメーターの通信を活用した「灯油タンク残量監視センサ」の実証試験
北海道電力ネットワーク)、ホクレン農業協同組合連合会およびゼロスペック(株)は、電力スマートメーターの通信ネットワークを活用した「灯油タンク残量監視センサの実証試験の共同実施」に関する覚書(以下、「本覚書」)を締結し、実証試験を開始した。
本覚書に基づき、三社は、2022年11月から2023年3月までの期間、北海道電力NWおよびゼロスペックが共同で開発した「電力スマートメーターに通信可能な灯油タンク残量監視センサ(以下「灯油センサ」)」を一般の利用客設備等に設置し、道内各地における多様な通信環境下で灯油センサの性能および通信品質等を確認する実証試験に取り組む。
また、今回の実証試験を踏まえて、将来的には農業用としてハウスの加温に使用する灯油や、トラクター等の農業機械に使用する軽油等のタンクへの適正な配送を目指すという。
灯油等の燃料配送は、一般的に定期配送または利用客による残量の確認・依頼に基づくが、本取り組みは、配送事業者がタンク内の液面高(残量)データをセンサで検知することにより、給油タイミングの適正化や効率的な配送ルートの設定が行えるなど、より安定的な配送に繋げるもの。
北海道電力NW、ホクレンおよびゼロスペックは、今後もそれぞれが保有する知見、技術および設備を活用しながら地域経済の発展や社会的な課題の解決に取り組むとのこと。
■実証試験の概要
1.期間:2022年11月~2023年3月
2.内容:灯油センサの性能および通信品質等を検証
3.概要図(イメージ図:画像)
ニュースリリースサイト(hepco):https://www.hepco.co.jp/network/info/2022/1251927_1916.html
コンクリートの品質管理技術を完全デジタル化『スマートセンサ型枠システム』
(株)JUST.WILLが東京大学大学院 ・野口貴文教授と共同研究開発した『スマートセンサ型枠システム』の採用実績が、この度、200現場を突破した。国土交通省やNEXCO発注の案件を中心に、全国各地の大規模な土木・建築工事での導入が進んでいるという。
1.開発の背景
トンネルや橋などのコンクリート構造物の工事では、テストピースと呼ばれる供試体を用いた圧縮強度試験によって強度管理が行われている。これは、コンクリートで作った円柱型のサンプルに圧力を掛け、どれだけの力(重さ)に耐えられるのかを確認する、極めてシンプルかつ原始的な手法である。これまで数十年に亘り、コンクリートの強度管理はこの手法で行われてきた。JUST.WILLでは、より合理的かつ高度なコンクリートの品質管理を目指し、「温度と強度の相関性」に着目した強度推定式を採用、多機能センサを用いた無線通信による情報化施工を実現する『スマートセンサ型枠システム』を東京大学と共同で研究開発した。
2.「スマートセンサ型枠システム」の技術概要
「スマートセンサ型枠システム」は、コンクリートの表面から直接情報を収集することで、高度な品質管理を実現したICT技術である。型枠に設置された多機能センサにより、構造物の強度や内外温度、施工履歴等を、無線通信によって手元のタブレットでリアルタイムに一元管理することが可能である。
「スマートセンサ型枠システム」ウェブサイト https://smartsensor.jp/
3.今後の展開
「スマートセンサ型枠システム」は、スーパーゼネコンを始め、大手ゼネコンによる大規模な工事で積極的に導入されてきた。国土交通省やNEXCO等の発注案件を中心に採用が進み、この度200現場を突破した。
採用現場の詳細は、以下のGoogle Mapで参照のこと。
https://www.google.com/maps/d/edit?mid=1f1mUQ2OnyiCI-clYlFgTkzPt7x2uRH0&usp=sharing
また、現在、新たなセンサ技術の開発も進行中である。
同社は「コンクリートにもDXを。」をミッションに、人手不足や高齢化の進む建設現場において更なる省人化・効率化・デジタル化の推進を目標に、今後も最先端のセンサ技術で建設業界の業務改革に貢献するとしている。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000111639.html
圧力感知材料のインクジェット印刷技術を開発
都産技研(地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター)は名古屋大学と共同で、力を加えると色が変化する特徴を持つ素材『メカノクロミック材料』について、アルコールと共に加工すると特徴を消さずに微粒子化できるうえに、繰り返し利用できることを発見した。
▮開発のポイント
◆アルコール共存下で、すりつぶす・擦る(こする)など、力を加えることで色が変化する特性を保ちながら、何度も繰り返し利用が可能。
◆産業への利用が期待されているメカノクロミック材料。加工時に特徴が消えるという製造上の問題を解決したことで電力不要な圧力センサやタッチパネルなど応用展開に期待。
◆微粒子化したメカノクロミック料から塗料を作製(画像)することが可能に。インクジェットプリンタで紙や布に印刷できるように。
本技術はネイチャー系オープンアクセスジャーナルScientific Reports誌に掲載されている。
論文誌名:Scientific Reports
掲載日:2022年10月10日
論文タイトル:Iet printing of mechanochromic fluorenylidene-acridane
DOI:10.1038/s41598-022-21600-x、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36217025/
特許出願済:特願2021-110345、特願2022-007891
▮本研究の概要
名古屋大学大学院工学研究科/未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所の松尾 豊 教授との共同研究により、機械的刺激により見た目の色が変化(メカノクロミズム)する材料の微粒子化に成功した。本研究では、このメカノクロミック材料を基に塗料を作製、インクジェットプリンタに適用し、繰り返し利用可能かつ柔軟性に優れた圧力感知材料を開発した。
▮背景
機械的刺激に応答し色が変化するメカノクロミック材料は、その特性からセンシングデバイス等への応用展開が期待されている。しかし実際には、機械的刺激に応答してしまうために材料加工や実装自体が困難であり、具体的な応用展開事例が乏しいという課題があった。
▮本研究によって得られた成果
本研究では見た目の色が変化するオリジナルのメカノクロミック材料について、アルコール共存下では機械的刺激を加えても色の変化が起こらないことを発見した。さらに、発見したメカノクロミズムの制御という特性を利用して、ビーズミル処理による機械的加工を可能とし、従来の1/100以下の微粒子を得ることに成功した。
また、この微粒子を基にメカノクロミック塗料を作製し、インクジェットプリンタへの適用を行った。この実装により、任意のパターンを紙や布にプリントすることが可能となり、従来の使い捨て材料では不得手であった曲面での使用や繰り返しの利用を可能とする圧力感知材料を実現した。
▮今後の展開
◆ 汎用性の高いインクジェットプリンタへの実装を可能としたため、多様な分野への展開が期待される。
◆ 開発したメカノクロミック塗料はインクジェットのみならず、スクリーン印刷やスプレー塗装、染料としての活用も可能。
◆ 本研究で得られた成果を活用して貰える中小企業との共同研究を募集している。
ニュースリリースサイト:https://kyodonewsprwire.jp/release/202211099470
DKK、自社工場にて、ローカル5G環境下でのロボット制御に成功
電気興業(株)以下(DKK)は自社工場(栃木県鹿沼市)にて、ローカル5G(Sub6帯)を利用した搬送用ロボット(以下AMR)制御に成功した。ロボットは(株)スマートロボティクスから提供された。
DKKはローカル5Gを利用した各種ソリューションの提供を予定している。本実験の成功により、DKKのローカル5Gを活用したソリューションの幅がさらに拡がったものと考えているとのこと。
本実験では、AMR本体に搭載された人や障害物を感知するセンサ機能や自動走行機能を活かしつつ、ローカル5G環境下における映像伝送やスマートグラスを用いた遠隔操作の実証実験を行い、ロボットがスムーズに制御監視できることを確認した。
DKKは、今後もローカル5Gを使用したスマートファクトリー実現のための省人化に寄与し、ロボットが身近にいる生活を目指していく。また、様々なユースケースを想定したアプリケーションの開発および協業によるラインナップの拡充を図っており、引き続きパートナー企業様を募集しているという。
ニュースリリースサイト(denkikogyo):https://denkikogyo.co.jp/6755/
東京都、西新宿エリアにおけるスマートポールを活用したプロジェクト採択
「スマート東京」先行実施エリアである西新宿では、5Gや高速Wi-Fi、センサ等の多様な機能を搭載した「スマートポール」を整備し、5Gと先端技術を活用したサービスの都市実装に向けて取り組んでいる。
この取組の一環として、本年8月に募集を開始した「西新宿エリアにおけるスマートポールを活用したプロジェクトの募集」について、下記のとおりプロジェクトを決定した。
1 採択プロジェクト
(1)サービス型プロジェクト 2件
スマートポールの機能を活用し、将来的に民間事業者が提供を目指すサービスモデルの検証を行うもの
【スマートポールを活用した情報発信プロジェクト】
西新宿の情報発信メディア「西新宿LOVEWalker」編集部がお得な地域情報(ジモトコンテンツ)をスマートポールサイネージに配信し、地域振興を図る。
代表:(株)角川アスキー総合研究所
【気象連動型サイネージ広告配信プロジェクト】(画像)
スマートポールの属性データとルグラン社が有する気象データを用い、サイネージ閲覧者の属性や天候に合わせた広告を掲出し、地域振興を図る
代表:(株)ルグラン
(2)公共型プロジェクト 2件(各テーマ1件ずつ)
スマートポールの機能を活用し、将来的に行政や地域等で提供されることを目指す公共性の高いサービスモデルの検証を行うもの
〔ア〕 テーマ:防災・防犯
【音声ARインフラを活用した「西新宿」の多層化】
西新宿の来訪者に対して、スマートポールのセンサによる位置情報を活用した音声ARを使ったコンテンツを提供し、地域の防災・安全意識を醸成
代表:エイベックス・エンタテインメント(株)
〔イ〕 テーマ:インフラ保守・点検
【公園管理を効率化する新宿中央公園と利用者の最適なコミュニケーション方法検証】
公園管理者と利用者間の効果的なコミュニケーション方法について、スマートポールの人流データ等を活用して検証し、公園管理を効率化
代表:小田急電鉄(株)
詳細は以下URL(pdf)を参照のこと。
https://prtimes.jp/a/?f=d52467-20221107-ba0cdda30cae0bb29831af2ea8aeee67.pdf
2 今後の取組
東京都及び東京都が委託する事業プロモーター(デロイトトーマツコンサルティング〔同〕)により、実施にかかる費用負担やアドバイス等を通じてプロジェクトが円滑に進むようサポートを実施し、2022年度末までプロジェクトを実施する。
プロジェクトの成果は、検証結果としてとりまとめ、今後のサービス創出に向けた施策等に活用するという。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003761.000052467.html
超小型高性能ガスクロマトグラフ(Sylph)を柳井電機工業が販売開始
ボールウェーブ(株)と柳井電機工業(株)は、ボールウェーブが開発し製造販売する超小型高性能ガスクロマトグラフ※1 (商品名:Sylph)について販売代理店契約を締結した。
■ 背景
ボールウェーブは革新的な高感度センサ「ボールSAWセンサ※2」を活用して、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)との共同研究によって世界初の超小型でかつ重さ約1kg のガスクロマトグラフを開発した。この開発を通じ得られた、小型・高信頼性技術を応用し産業用途として手のひらサイズの超小型ガスクロマトグラフ(Sylph)を開発した。この度、この商品を柳井電機が代理店として販売することになった。
Sylphの用途の一つに、発酵醸造分野がある。
発酵醸造製品は、日本酒、焼酎、みそ、しょうゆ等あるが、これらの製品の美味しさのうち、8割は香りによるものだと言われている。特に日本酒の香り成分は100種類を超えると言われており、そのバランスでお酒の香りが決まってくる。この香り成分(香気成分)を測定する装置は既にあるが、Sylphは超小型高性能かつ軽量で携帯できるため、現場に持ち込んでその場で香気成分を測定できるのが特長になっている。この技術を用いることで温度、使用する酵母、麹の破精の付き具合による香気成分の変化を制御できる可能性がある。今までと違う新しい発酵醸造製品開発への挑戦に貢献できるという。
■ Sylphの用途
超小型高性能ガスクロマトグラフ(Sylph)は、発酵醸造、半導体、環境など様々な分野において多くの用途が期待される。
• 醸造発酵分野:酒・醤油等の香気分析による醸造プロセス制御や新製品開発および既存製品品質の維持向上など
• エネルギー/工業分野:天然ガス熱量評価のための成分分析、リチウム電池製造・使用中にバインダ・電解液から放出されるガスの成分分析、VOC 分析、異臭検査など
• 農林水産分野:鮮魚・野菜果物等の生鮮食品や、食用油などの劣化の早期検出によるフードロスの低減、酒・醤油等の香気分析による醸造プロセスモニタリングなど
• 半導体分野:半導体製造工程設備での各種ガス成分の分析、クリーンルーム内環境分析など
• 環境分野:大気汚染物質の監視、地殻やマグマに存在するラドンガス発生による地震予知など
■ 用語解説
※1. 超小型高性能ガスクロマトグラフ:
中空の管をリールに巻いたカラムと呼ばれる流路を混合ガスが通過する際に時間的に分離される現象を利用して、多種類のガスの種類と濃度を測定する分析装置をガスクロマトグラフと呼ぶ。
※2. ボールSAWセンサ:
球の表面に集中して、横方向にも拡がらず繰り返し周回する球状弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を用いるセンサ。東北大学大学院工学研究科の山中一司名誉教授らによって開発された。
※3. ケミカルセンサ:
物質の化学変化を捉えるためのセンサ技術。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000038635.html
