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ST、機械学習開発を簡略化する先進的な機能を組込みAI開発ツールに追加

STマイクロエレクトロニクスは、機械学習ライブラリ開発用ツール「NanoEdge AI Studio」および、組込みAI開発ツール「STM32Cube.AI」のアップデートを発表した。両ツールの最新バージョンでは、組込みAIおよび機械学習アプリケーションの開発加速に貢献する機能が強化されており、AIおよび機械学習のエッジへの移行を促進する。AIや機械学習をエッジで処理することにより、プライバシー・バイ・デザイン、確定性の高いリアルタイム応答、優れた信頼性、低消費電力など、さまざまなメリットを実現可能であるという。

NanoEdge AI Studioは、ニューラル・ネットワーク開発を必要としない機械学習ライブラリ自動生成ツール。STM32マイクロコントローラ(マイコン)、およびST独自のインテリジェント・センサ処理ユニット(ISPU)内蔵MEMSセンサに対応している。STM32Cube.AIは、ディープ・ラーニングによる学習済みのニューラル・ネットワークを、STM32マイコン用のC言語コードに変換・最適化するツール。両ツールの最新バージョンは、高性能の組込みAIや機械学習ソリューションを迅速かつ最小限の投資で設計・実装するための機能を提供する。

NanoEdge AI Studio バージョン3.2は、開発の生産性を向上させる自動データロガー・ジェネレータを備えている。入力には、データ・レート、レンジ、サンプル・サイズ、軸数など、STの開発ボードおよび開発者によって定義されたセンサ・パラメータなどが含まれる。これらのパラメータから開発ボード用のバイナリ・コードが生成されるため、開発者がコードを作成する必要はない。 

機械学習では、データセットの品質が性能に直接影響を与える。そのため、NanoEdge AI Studioには新しいデータ処理機能が搭載されており、取得したデータのクリーニングおよび最適化をわずか数クリックで実行可能である。また、検証ステージが追加され、推論時間やメモリ使用量、および精度やF1スコアといった一般的な性能指標を表示することで、ユーザのアルゴリズム評価に貢献する。選択したライブラリの前処理や機械学習モデルについて、より詳細な情報を表示することも可能。最新のNanoEdge AI Studioには、高性能な異常検知および回帰アルゴリズム用に前処理技術や機械学習モデルが追加されている。さらに、同ツールはスマート・ライブラリの生成に対応しているため、重回帰モデルを使用して将来のシステムの状態を予測することができる。

STM32Cube.AI バージョン7.3は、最先端の組込みAIや機械学習ソリューション開発に最適なツール。STM32マイコンの開発エコシステムに完全に統合されており、学習済みのニューラル・ネットワークを変換し、業界で最も普及している32bit Arm® Cortex®コア搭載STM32マイコンに最適化されたCコードを作成できる。最新のSTM32Cube.AIでは、ニューラル・ネットワーク最適化の柔軟性がさらに向上しており、要求性能やメモリ制約に対して既存のニューラル・ネットワークを最適化させることができる。また、性能とメモリ制約のトレードオフを最適化することも可能。今回のアップデートでは、TensorFlow 2.10モデルもサポートされており、新しいカーネルの性能向上にも貢献する。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001274.000001337.html

Kudan、SLAM技術を活用したモバイルマッピング開発キット

Kudan(株)は、Kudan 3D-Lidar SLAM(KdLidar)を活用した車載向けと手持ち(ハンドヘルド)向けのモバイルマッピング開発キットの発売を開始した。

これまで、KudanのSLAMソフトウェアを用いて点群を容易に取得・生成することができるように、センサなどのハードウェアとKudanの3D-Lidar SLAMを組み合わせてパッケージにしたソリューションへの要望が非常に強くあった。モバイルマッピングソリューションは既にいくつか市場に存在しているが、マッピング業界において特定の顧客層、特に大学や研究機関などでは、より高いコストパフォーマンス、柔軟なパラメータ調整、容易な取り扱いのニーズが強く、従来製品は必ずしもこれらのニーズに応えているわけではなかった。今回の開発キットの発売で、これらの市場の要望に応えられると考えているとのこと。

特に他のソリューションに比べて優れている点:
・優れた投資対効果: Kudan 3D-Lidar SLAMの性能により点群の精度は妥協することなく、多くの既存代替製品の半分程度の価格で提供
・設定の柔軟性:様々な適用事例のニーズに応えられるように、データ収集や点群生成における様々なパラメータを調整可能
・取り扱いの容易さ: パッケージを開けてから1時間以内にデータ収集・点群生成が可能

此度の発売に合わせて、本開発キット専用のウェブサイトページも設置しており、詳細の情報については、下記ページを参照されるか、HPより問い合わせのこと。
 ハンドヘルド:https://www.kudan.io/jp/mapping_dev_kit/handheld_version/
 車載用:https://www.kudan.io/jp/mapping_dev_kit/vehicle_mount_version/

ニュースリリースサイト(kudan):https://www.kudan.io/jp/archives/1204

遠隔管制システム「X-Area Remote」を搭載した「TractEasy」自律運転けん引車の実証試験

パナソニック ホールディングス(株)と、長瀬産業(株)、ならびにEasyMile SASは、長瀬産業が事業開発をしているEasyMileの自律運転けん引車(AIT※)「TractEasy」へ、パナソニックHD が開発した遠隔管制システム(「X-Area Remote」)を採用・搭載した上で、2022年11月19日(土)に三菱ふそうトラック・バス(株)川崎製作所にて、車両エンジンの運搬を想定した実証実験を共同で実施した。

「TractEasy」はEasyMileが設計・開発および製造するEV自律運転けん引車。センサやカメラから取得した走行距離などのデータをリアルタイムで処理し、自律的に運搬(最大けん引重量:25トン)を行う。本実証試験で使用された車両は、cm単位の位置特定技術や、障害物の広範囲検知、車両とインフラをつなぐV2X無線通信、予測制御、交差点・横断歩道の判断などのナビゲーションシステムが組み込まれている他、パナソニックHDが設計・開発した遠隔管制システム「X-Area Remote」を搭載している。

「X-Area Remote」は公衆モバイル環境(4G/5G)での低遅延安定通信、サイバーセキュリティ、遠隔オペレータへのAIアシスト機能などを搭載し、多様なモビリティを複数台まとめて統合的に監視・操作・運用管理する遠隔管制ソリューションを提供している。経路を塞ぐ複雑な障害物など自動走行が困難なシーンを想定し、遠隔管制センターから遠隔監視・操作を行い、ダウンタイムの発生を抑えたシームレスなAITの遠隔オペレーションを実現する。本車両と遠隔管制システムの活用を通じて、工場や物流現場の人員不足や作業負担の軽減、またEV化による工場内物流のCO2排出量削減が期待される。

本実証試験では、三菱ふそう川崎製作所にて車両エンジンの運搬を想定し、「TractEasy」の安全性や走行能力、遠隔操作・監視システムの操作性や実用性を検証した。今後も、貨物輸送自動運転プラットフォームの社会実装を見据え、本車両の実証試験および長瀬産業によるサービス事業化を進め、空港・港湾を中心とした物流業界に展開予定であるという。

ニュースリリースサイト(panasonic):https://news.panasonic.com/jp/press/jn221124-2

多種多様なBluetooth®センサを簡単にクラウド管理できる「BlueXtender」

サン電子(株)は、メーカーの異なる複数のBluetooth Low Energyセンサを長距離通信化し、簡単にクラウド管理できるIoTサービス「BlueXtender」を2022年12月6日(火)にリリースする。


■BlueXtenderの主な特長
・多種多様なBluetooth Low Energyセンサと連携が可能
 メーカーに依存することなく多種多様なBluetooth Low Energyセンサを組み合わせることができるため、スピーディーな課題解決に貢献

・Bluetoothの長距離通信化  Bluetoothの弱点とされる通信距離の短さを、サブギガ通信を用いて長距離化。さらにLTE通信をすることで現場のBluetooth Low Energyセンサの情報を簡単にクラウド管理することができる。

・ダッシュボード「SunDMS Insight」で簡単見える化
 Bluetooth Low Energyセンサの計測値を一目で見える化できるダッシュボード「SunDMS Insight」を用意。ダッシュボード作成機能、閾値によるアラートメールなどのルール設定、豊富な外部連携手段を組み合わせることで効率的にセンシングデータを管理することができる。

・新しいBluetooth Low Energyセンサにも即連携
 新たなBluetooth Low Energyセンサがリリースされても簡単な操作で連携が可能。
※Bluetooth Low Energy GATT通信仕様に対応したセンサ機器と連携が可能。デバイスの仕様によっては対応できない場合もある。

●BlueXtenderと連携検証済みのBluetooth Low Energyセンサ
メーカー           機種          センサ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
サン電子           おくだけセンサ     温度、湿度、照度、加速度、磁気 
チノー            MF500B         中心温度計 
チノー            IR-TB          放射温度計 
A&D             AD-5626        中心温度計 
ラトックシステム       RS-BTEVS1       CO2センサ 
オムロン           2JCIE-BL01       温度、湿度、照度、気圧、UV、騒音 
ジェイテクトエレクトロニクス 試作品         電流計 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ニュースリリースサイト:https://www.sun-denshi.co.jp/sc/press/newsrelease/221124_bxe.html

海⾯に着⽔した⾶⾏艇型ドローンが深海底観測に成功「HAMADORI 6000」東大、横国大、selab

(株)スペースエンターテインメントラボラトリーと東京大学 生産技術研究所の横田裕輔准教授、横浜国立大学の平川嘉昭准教授は、共同で飛行艇型ドローン「HAMADORI 6000」搭載用の海底測地観測装置を開発し、世界で初めて海面に着水したドローン(UAV)と1,000m以深の深海底との音響通信・測距に成功。
実験に使用した「HAMADORI 6000」の試作機は、11/25・26に行われるロボット・航空宇宙フェスタふくしま2022にて初公開する。

◆実験の詳細については、以下の東京大学・横浜国立大学・弊社の共同発表資料を参照。
https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/4047/

●今回実証実験を行ったドローン
水上発着できる飛行艇型ドローン「HAMADORI 6000」の試作機
水上で発着でき、船のようにも航行できる「HAMADORI 6000」は、翼幅6mの飛行艇型ドローン。観測地点の座標を設定し、110km/hで航続時間8時間を目標に開発を進めている。実験当日、最大風速約8m、最高波高約1.5mの相模湾の環境においても、安定した海面保持を実現した。

「HAMADORI 6000」はペイロードにさまざまな観測機器を搭載し「海」にまつわる多様な調査に対応できるのが特徴。海洋調査はもちろん、インフラ整備の事前調査・点検、水上監視、漁業環境の調査など、各種実証実験の相談も、問合せを受ける。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000111364.html

ライカジオ、「イメージングトータルステーションを使用した遠隔測量」をNETIS 登録

 Hexagon 傘下であるライカジオシステムズ(株)は、新技術「イメージングトータルステーションを使用した遠隔測量」ついて、NETIS (国土交通省 New Technology Information System)登録が完了したことを発表した。

 ライカジオシステムズでは従来、ワンマン測量による作業効率の改善を提案している。ワンマン測量での作業効率改善はとても効果的なワークフローで生産性向上にもつながっているが、常に測量技術者が機器を現場にて操作する必要があり、技術者の手配やスケジュール調整が難しいという課題が依然として残っていた。そこでライカジオシステムズは、新技術としてNETIS 登録が完了した、イメージング機能が搭載されたトータルステーション(Leica Nova MS60、Leica Viva TS16 I、Leica Nova TS60 I、Leica Nova TM60 I)と、測量に適した汎用性の高いコントローラーLeica CS30(以下、CS30)を使用した遠隔測量を新たに提案する。

 今回提案する遠隔測量の技術では、測量技術者が直接現場に赴くことなく、離れた場所からインターネットを介して測量器を操作し、測量作業を実施する事が可能になる。現場では測量補助者が機器を設置し、遠隔測量終了後には機器を撤去するだけとなる。これにより測量作業に関わるコストの軽減が期待される。

1.現場における機器の設置状況 〔画像〕
 機器(イメージング機能搭載トータルステーションとCS30)を作業現場に設置し、CS30でイメージング機能搭載トータルステーションをコントロールすると、トータルステーションのビデオデータがCS30に表示される。この状態からCS30からインターネット接続を行う。CS30の画面をタップするとタップした方向に器械が自動旋回する。

2.離れた場所からの遠隔測量作業
 オフィスにいる測量技術者はインターネット経由でCS30にアクセスし、イメージング機能搭載トータルステーションのビデオ画像を見ながら、測量ポイントに器械を向けて、測量作業を行う。オフィスにおいてPC上に表示されるCS30の画面を使用して現場にいるのと同様な作業を行う事が可能になる。

【NETIS登録情報】
・新技術名称: イメージングトータルステーションを使用した遠隔測量
・NETIS登録番号: QS-220024-A

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000079.000006745.html

GSアライアンス、CO2からギ酸を作る人工光合成シート、繊維を開発

 GSアライアンスは、、量子ドットと金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)を複合化させた独自の触媒を、安価な不織布、シートに塗布、固定化して、温室効果ガスであるCO2と水、そして太陽光エネルギーを用いて、外部からの電気エネルギーを必要とせず、燃料や化学物質の中間体原料となり得るギ酸を、光還元(人工光合成)反応により合成することに成功した。

 人口爆発に伴う気候変動、地球温暖化、資源枯渇、プラスチック汚染問題などの環境破壊問題は深刻になりつつあり、生態系を破壊する壊滅的なレベルになりつつある。このような状況の中、温室効果ガスやエネルギー資源不足に対処するために、植物のように、太陽光エネルギーを使って、二酸化炭素(CO2)と水から有機物を生成する人工光合成という技術に注目が集まっている。CO2は地球温暖化の原因であるとされており、CO2を削減することが脱炭素、カーボンニュートラル社会構築に向けての目標だが、逆にこの悪者であるCO2を原料として使用する。CO2を原料として用いることによって、新たな資源エネルギーを生み出し、CO2削減も同時に達成できるという、究極の脱炭素技術とも言われているとのこと。

■金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)について
 MOFとは無機金属クラスターと有機リンカーから合成される、新しいタイプの超多孔性の有機無機ハイブリッド材料であり、ナノメートルの分子レベルで構造が制御でき、表面積が非常に大きく、近年、注目されている最先端材料である。これらの優れた特徴からMOFはガス貯蔵、ガス分離、金属吸着、触媒、ドラッグデリバリー、水処理、センサ、電極、フィルターなど種々の応用が検討されています。近年の研究から、MOFがCO2を吸着、回収する能力に優れていることが明らかになっており、さらにその回収したCO2を光還元、化学物質の合成など、つまり人工光合成として応用する検討も始まっている。その特徴のあるMOFの超微細多孔性構造、そして光吸収の波長範囲を、合成により制御、最適化できる利点から、他の人工光合成の材料候補である酸化物、金属錯体、窒化物、酵素などより有利になるとも言われている。GSアライアンスでは、そのMOFを合成しており、CO2の吸収に最適なMOFも自社で合成している。

■量子ドットについて
 量子ドットとは、量子化学、量子力学に従う光学特性を持つシングルナノスケール(0.5~9nm)の超微細構造の最先端材料。量子ドット1個あたりの原子、分子数は数個~数千個といわれており、人工原子、人工分子とも言われている。物質がこのサイズになってくると、量子封じ込めと言われる物理化学的効果により、量子ドットにおいての電子エネルギー準位は連続ではなく、分離が生じ、光励起による発光波長が量子ドットのサイズに依存するような現象を示すようになる。この量子ドットも、その優れた光吸収能力、励起子を複数生成できる能力、大きな表面積を有していることから、人工光合成に適する可能性のある材料として研究開発が進んでいる。

■GSアライアンスの取り組み
 GSアライアンスでは、このMOF、量子ドットを両方とも自社内で合成している。これまで、既にこれらの2つの最先端材料を複合化させて最適化して、人工光合成の触媒として用いて、ギ酸を合成することに成功していた。しかしながら、MOF-量子ドット複合体は水中に粉体として存在しており、ギ酸を抽出するにしても、濾過などの作業を施す必要があり、連続的な操作ができず、実用化に向けて課題が残っていた。しかしながら、この度、同社の梶野哲郎研究員、岩林弘久研究員、森良平博士(工学)は、このMOF-量子ドット複合体触媒を、安価な不織布、シートに塗布、固定化して、連続的なギ酸抽出が可能な手法を確立した。反応後、ギ酸を含む水、水分を取り出し、再び、その容器に水、水分を追加して、人工光合成の反応を再開できる、連続的な反応が可能になることになる。
 ギ酸は強酸であるという取り扱い時のデメリットはあるものの、液体なので、宇宙で最も小さい元素である水素と比較して貯蔵するのがはるかに楽であり、燃料電池の燃料として水素を使用するより、より適した燃料エネルギー資源となる可能性がある。
 また、ギ酸はアルケンと合成させ、さまざまな化学品の基幹原料となりえる。
 人工光合成の反応効率そのものの低さなどは、改善するべき課題ではあるものの、今後もさらなる人工光合成用の触媒固定化の工夫、合成効率の向上の検討を続け、人工光合成の実用化を目指すとしている。

ニュースリリースサイト:https://www.atpress.ne.jp/news/335081

山形大学、印刷や塗工が可能なガラス並みのウルトラ・ハイバリアを開発

山形大学硯里研究室は、印刷や塗工が可能なウルトラ・ハイバリアを開発した。従来、ガラス基板並みの高いバリア性能を達成するには真空成膜法が用いられており、生産性が悪く高価であった。本研究ではプレカーサーを印刷・塗工し、真空紫外光(VUV光:波長172nm)を照射することで緻密な無機膜を形成し高いバリア性能を達成した。得られたバリア性能は従来から1桁以上の性能向上であり世界最高性能(@印刷・塗工)である。これらの成果の論文掲載ならびに特許出願が完了した。真空成膜プロセスから印刷・塗工プロセスに変更することで低コスト化だけでなく、低炭素化にも寄与できる。バリア技術は幅広く応用可能であり、OLEDやセンサ、太陽電池、リチウム二次電池のようなデバイスだけでなく、包装分野等にも展開を進める予定である。

​【背景】
バリア技術は広く産業に用いられている。その多くが水蒸気もしくは酸素に対するバリア技術である。水蒸気バリア技術は各種デバイス(OLED、トランジスタ、センサ、太陽電池等)に用いられており、パッシベーション膜とも呼ばれている。一方で、酸素バリア技術は食品や工業製品、医療品等の包装用途として用いられている。一般的に高いバリア性能は真空成膜法(スパッタ法、CVD法等)で製造されてきた。真空成膜法で得られるバリアは、その手法や構造にも依存するが、水蒸気・酸素を透過しないガラス並のバリア性能(水蒸気透過率<10-5g/m2/day)の達成が可能である一方、スループットが悪く高価である。一方で低コスト化が可能な印刷・塗工によるバリア性能は低い(水蒸気透過率=2×10-3g/m2/day)という課題があった。

【研究成果】
山形大学硯里研究室では、印刷や塗工が可能なウルトラ・ハイバリア技術の研究を独自に行ってきた。溶解可能な前駆体をウェットコートし、室温・真空紫外光(VUV光:波長172nm)を照射することで緻密な無機膜を得る手法である。これまでに前駆体としてSi-Nを主鎖としたポリシラザン(PHPS)を用い、窒素下・室温でVUV光照射を行うことで緻密なSiN膜を得ることに成功していた。今回、本反応を利用したバリア構造では、ウェットプロセスとしては世界最高のバリア性能(水蒸気透過率=5×10-5g/m2/day)を達成した。このバリア性能はこれまでの性能を1桁以上更新するもので真空成膜に迫る性能である。また光学的に透明であること、屈曲性があることに加え、印刷・塗工プロセスであることから低コスト化・低炭素化が可能であることも大きなメリットである。

論文掲載:Advanced Materials Interfaces, 2022, 2201517
     https://doi.org/10.1002/admi.202201517
特許出願:特願2022-148356号
関連論文:ACS Appl. Nano Mater. 4, 10, 10344-10353 (2021) 
     ACS Appl. Mater. Interfaces ,11(46),43425-43432(2019)

【今後の展望】
水蒸気バリア性能は、その用途により要求性能が異なるが、特にSociety5.0の達成に向けIoTデバイスが急増する中、デバイス保護のためのバリア技術は今後も要求が高まると予想される。本技術は、印刷・塗工によるハイスループット・低価格化だけでなく、印刷プロセスにより必要な部分のみにパターニングできる。「欲しい場所に欲しいバリア」の実現を目指し、インクジェットプロセスによるバリア膜研究も進めている。更に真空機器を必要としないという観点から低炭素にも大きく寄与できる技術である。本研究は特に水蒸気バリア性能の向上を目指したものであるが、酸素バリア性能にも効果を発揮すると考えており、長期的には食品包装や医療用包装などの包装分野にも貢献していきたいとしている。

※用語解説
1.水蒸気透過率(度):単位面積(m2)、単位時間(day)あたりの透過する水蒸気量(g)で評価する指標。
 値が小さいほど、高い水蒸気バリア性能を示す。
2.真空紫外光:波長が10~200nmの紫外光のことを特に真空紫外光(VUV:Vacuum Ultra Violet)と呼ぶ。

・論文
Tatsuki Sasaki, Lina Sun, Yu Kurosawa, Tatsuhiro Takahashi, Yoshiyuki Suzuri*
“ Solution-Processed Gas Barriers with Glass-Like Ultrahigh Barrier Performance “
Advanced Materials Interfaces 2022, 2201517 (8pp.)
DOI : 10.1002/admi.202201517

・特許
特願2022-148356号 出願人 国立大学法人 山形大学

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000109893.html

誘導型センシングの限界を克服するように設計されたNCS32100回転位置センサ

オンセミは、その速度と精度が注目を集める、革新的なデュアル誘導型回転位置センサを発表した。NCS32100は、新たに特許を取得した誘導型位置センシングへのアプローチを採用し、高速動作のロボットや機械が配備される産業用アプリケーションやロボットアプリケーションに最適な製品となっているという。

誘導型エンコーダの機能は、産業用アプリケーションにとって非常に魅力的だが、従来は高精度が不要で、低回転速度で動作するユースケースに限定されていた。NCS32100で、オンセミは20年以上に及ぶ誘導型センサの設計に関する専門知識を活かして、誘導型エンコーダの高信頼性の利点と、一般的にミドルエンドからハイエンドの光学式エンコーダが持つ精度や速度を実現した。38 mmセンサを使用したこのデバイスは、6,000 RPMで +/-50 arcsecの精度を実現する。NCS32100は精度を下げれば、100,000 rpmまでの速度に対応できる。

誘導型センサは、ほぼすべての種類の汚染や干渉に対する感度が低い、機械的振動に対して堅牢、一次温度依存性がないことなど、産業用アプリケーションに望ましいいくつかの重要な特徴を備えている。NCS32100デバイスは、センサの機械的ミスアライメントを考慮した較正ルーチンを内蔵している。高度な構成機能により、さまざまなプリント基板(PCB)のセンサ設計に対応しており、OEMはソリューションを構成して差別化を図ることができる。内蔵のArm Cortex-M0+ MCUは、不揮発性フラッシュメモリ(NVM)およびホストプロセッサとの通信用として構成可能なインタフェースを備えている。

産業用アプリケーションの設計プロセスをさらに加速させるために、リファレンスデザインと評価ボード(https://www.onsemi.jp/design/tools-software/evaluation-board/STR-NCS32100-GEVK)が用意されている。NCS32100は現在、オンセミの販売サポートおよび正規代理店を通じて販売中。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000221.000035474.html

ワイヤレス生体計測技術
Wireless Sensing of Physiological Signals(2)

阪本 卓也
京都大学 大学院工学研究科
教授
阪本 卓也

4.心拍のワイヤレス計測

 従来、皮膚変位波形を単にフーリエ変換することで平均心拍数を計算する例が多く報告されていたが、そもそも心拍数は時間とともに大きく変動することが普通であり、そうした時間依存の情報が欠落すると、大きな精度低下が生じる。筆者らは、皮膚変位を生じる心臓の収縮と拡張に非対称性が存在する点に着目し、皮膚変位の山側と谷側を公平に扱わず、再現性が高く、信頼できる特徴量のみを選択的に利用する手法であるトポロジー法を開発した。一例として、26 GHz帯の準ミリ波レーダによる計測を通じ、被験者の瞬時心拍数を誤差約1%という高精度で計測できることを示した5-6)。その後、呼吸成分を効率的に抑圧する手法が開発され7)、睡眠中の非接触心拍計測への応用8)なども報告され、さまざまな研究が現在も進展している。
 これまで、レーダによる非接触心拍計測の研究の多くは、胸部や腹部の変位計測にもとづくものであった。筆者らは、60 GHz帯のミリ波レーダにより人体の足底(足の裏)での心拍計測を初めて報告した9)。さらに、79 GHz帯レーダにより人体の頭頂部での心拍計測も報告し10)、さまざまな周波数および人体部位でのワイヤレス生体計測の性能を調査してきた。足底および頭部の計測による心拍間隔の推定誤差は、いずれも平均して20 msを下回っており、高い精度が達成されている9-10)
 このように、トポロジー法は心拍間隔を時間の関数として高精度に推定できるため、心拍間隔の時間変動である心拍変動を求めることができる。こうした心拍変動は、自律神経の活動を反映していることが知られている。例えば、心拍変動を低周波(low frequency: LF; 0.04-0.15 Hz)成分および高周波(high frequency: HF; 0.15-0.40 Hz)成分に分離すると、LF成分とHF成分の強度比(LF/HF)を算出することができる。LF/HFはストレス指標とも呼ばれ、自律神経の活動をモニタリングする目的で用いられる。
 さて、はたしてレーダ計測データからLF/HFを算出することはできるのだろうか。LF/HFを求めるには、低周波成分(LF)の低域カットオフ周波数0.04 Hzの逆数である25 sを超える時間長にわたり、心拍間隔を連続かつ高精度に計測する必要がある。しかし、レーダによる非接触計測では、体動などの影響により、長時間にわたって高精度で心拍間隔が計測できる保証はないため、LF/HFなどの自律神経計測への応用は容易ではなかった。そこで、筆者らはレーダ計測された心拍間隔の時系列の性質から、レーダ計測の精度を見積もる方法を開発し、信頼できるデータのみを選択的に検出することを可能にした。その結果、精神的ストレス指標であるLF/HFを精度よくワイヤレス計測することに成功した11)
 こうして開発されてきたワイヤレス生体計測技術を社会へ応用するため、科学技術振興機構センター・オブ・イノベーション(center of innovation: COI)プロジェクトの京都大学拠点において、医療機器ベンチャー企業の株式会社マリ(京都市)などと共同で開発した研究用途の非接触見守りセンサVitaWatcher(図2)が2021年2月に上市された。同センサは、79 GHz帯ミリ波レーダにより、対象者の呼吸と心拍を非接触かつ高精度に計測する機能を有し、医療分野を含めた幅広い応用が期待されている。また、筆者らは多人数を非接触で計測するための技術開発を進めており、図3に示すとおり、任意配置の対象者7人の生体信号を非接触で同時計測できることを実証した12-13)。さらに、血圧と密接に関係する脈波伝播の非接触計測技術14-16)の開発も進めている。

図2 株式会社マリと共同開発したレーダ非接触見守りセンサ(2021年2月販売開始)
図2
株式会社マリと共同開発したレーダ非接触見守りセンサ(2021年2月販売開始)
図3 被験者7人の呼吸のレーダによる非接触計測実験 13) © 2021 IEICE
図3
被験者7人の呼吸のレーダによる非接触計測実験13)
© 2021 IEICE

5.ワイヤレス計測による個人識別・ジェスチャー識別・行動識別

 ワイヤレス生体計測は、バイタルサインの計測だけにとどまらず、さまざまな応用可能性を秘めている。例えば、プライベートな場所での利用が望ましくないカメラによるモニタリングに代わり、電波センサのみによる個人識別を実現するべく、筆者らは2.4 GHz帯レーダによる呼吸計測と機械学習を組み合わせ、ワイヤレス個人識別技術を開発した17)。さらに、筆者らは4.2 GHz帯レーダによる対象者の歩行・着座運動計測と機械学習を用いて、同じく個人識別を実現した。この手法では6人の被験者に対し、約93.3%の精度で個人識別することに成功している18)
 また、筆者らは、今後のスマート社会への応用が期待されるジェスチャー識別技術の開発も進めている。2.4 GHz帯レーダによる腕の計測を行い、データに対して時間周波数解析などの計算負荷が高い処理を用いず、受信した時間領域信号のみを使って描出した複素信号軌跡(I-Qプロット)の画像に畳込みニューラルネットワークを適用し、6種類のジェスチャーを91.3%の高精度で識別できることを示した(図4)19)。さらに、レーダによる行動識別技術20)の開発も進め、ワイヤレス生体計測をヘルスケア・セキュリティの両用途へ展開することを目指し、多くの研究が進められている。

図4 ワイヤレス計測によるジェスチャー識別の例
図4 ワイヤレス計測によるジェスチャー識別の例

6.まとめ

 ワイヤレス生体計測が提供するサービスは、何も身に着けない解放感と快適性がユーザの経験を根本的に変革し、「センサを装着せずとも環境が見守ってくれる」という新たな発想にもとづいた革新的サービスの登場が期待される。
 例えば、ワイヤレス生体計測技術が導入されれば、自宅でのスクリーニングにより健康状態を常に観察することが可能となり、不要な医療検査を減らすことができる。一方、精密な検査が必要な場合には、生体情報から特定のイベントを検知し、本人に通知することで医療機関受診を促すことができ、早期発見・早期治療による健康寿命延伸と医療費削減を両立することが可能となる。
 また、呼吸や心拍などの生体情報を意識した健康的なライフスタイルに興味がある人々にとっては、ワイヤレス生体計測によるモニタリングを活用し、センサを意識することなく効果的なトレーニングやエクササイズを楽しむことができる。今後、ワイヤレス生体計測が可能にするこれらの革新的サービスにより、「人」が中心となるスマート社会が実現されることを期待している。



参考文献

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【著者紹介】
阪本 卓也(さかもと たくや)
京都大学 大学院工学研究科電気工学専攻 教授
Professor, Kyoto University
Department of Electrical Engineering, Graduate School of Engineering

■略歴
 平12京大・工・電気電子卒.平17同大大学院情報学研究科通信情報システム専攻博士課程了.同大学院にて日本学術振興会特別研究員PDを経て,平18同大学院情報学研究科通信情報システム専攻助手,平19より同助教,平27兵庫県立大学大学院工学研究科電子情報工学専攻准教授,平31京都大学大学院工学研究科電気工学専攻准教授,令4同教授.その間,平23から平25まで日本学術振興会海外特別研究員としてオランダ王国デルフト工科大学客員研究員兼任.平29 米国ハワイ大学マノア校客員研究員兼任.平30から令4まで科学技術振興機構さきがけ研究者兼任.アンテナ伝播国際シンポジウム最優秀論文賞(平24),電子情報通信学会通信ソサイエティ活動功労賞 (平27, 平30),堀場雅夫賞(平28),電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ活動功労表彰 (平31),電子情報通信学会エレクトロニクスシミュレーション研究会優秀論文発表賞(一般部門)(令4),電気通信普及財団賞 テレコムシステム技術賞(令4)各受賞.IEEEシニア会員,電子情報通信学会正員,電気学会正員,システム制御情報学会正会員.京都大学博士(情報学).システム理論的センシング,ワイヤレス生体計測,レーダイメージングを研究テーマとしている。