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次世代ウエアラブルIoTのための非侵襲バイオセンシング(2)

三林 浩二
東京医科歯科大学
生体材料工学研究所
センサ医工学分野

2.2 マウスガード型グルコースセンサ

口腔用のマウスガード型グルコースセンサもSCL型センサと同様に、マウスガード材料に薄膜電極を成形し、GODを固定化し作製した。マウスガードについては、市販のマウスガード材料であるポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を選択し、電極(PtとAg)の薄膜をスパッタ装置にて成膜した。 次に、GODを生体適合性ポリマーにて包括固定化した。なおマウスガード型センサでは、上下2枚のマウスガード用シートを積層し、計測回路と通信回路を被覆コートし作製した(図3)。作製では、石膏歯型をもとに吸引型成型器にて、シート材料(厚さ:0.5mm)からマウスガード(下部)を3次元成型した。 次に臼歯の頬側に回路部が位置するように設置し、成型器にて上部のマウスガードを加工した。
次に、上述の電極作製方法を用いて、下部のマウスガードの口腔内側表面部にバイオセンサを構築した後、測定回路と電極端子を接合し、マウスガード型バイオセンサとした[3]。無線計測を行うため、測定・通信回路を設計・外製した。無線の周波数帯域には、産業・医学用機器の周波数帯である2.4 GHz帯を採用し、ボタン電池(1.5 V、1個)を計測および無線通信の電源とした。出力電流値は、数値データとして受信機に送信され、リアルタイムでPC(スマートホン、スマートウオッチ)に表示される。

図3 通信機能付きマウスガード型グルコースセンサ模式図・外観写真と口腔への装着写真(右)
  

予備実験として、人工唾液をもとに調整した標準グルコース溶液を、マウスガード型センサに負荷したところ、出力電流値の著しい低下が観察された。人工唾液に含まれるタンパク質(ムチン等)がセンサ感応部に吸着することが、その原因と考えられた。
そこで、感応部に生体適合性ポリマーをオーバーコートすることで、タンパク質の影響防止を図った。改良したバイオセンサではS/N比が向上し、唾液濃度(20〜200µmol/l)を含む、10〜1000µmol/lの濃度範囲でグルコースの定量が可能となった[3]
なお作製したセンサの選択性を、各種の糖類(ガラクトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース)を用いて調べたところ、グルコースに対して高い選択性を示した。現在は本学歯学部との共同研究にて、開発した無線通信機能付きマウスガード型センサによる唾液グルコース計測の実験を進めている。

次週に続く-

参考文献

[3] Arakawa T, Kuroki Y, Nitta H, Chouhan P, Toma K, Sawada S, Takeuchi S, Sekita T, Akiyoshi K, Minakuchi S, Mitsubayashi K, Mouthguard biosensor with telemetry system for monitoring of saliva glucose: A novel cavitas sensor, Biosensors and Bioelectronics, 84, 106–111 (2016)


著者紹介
氏名:三林 浩二(みつばやし こうじ)
所属:東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 センサ医工学分野

■略歴
1985年3月  豊橋技術科学大学大学院 工学研究科 修士課程 エネルギー工学専攻 修了
1994年9月  東京大学大学院 工学系研究科 博士課程 先端学際工学専攻 修了(博士[工学])
1998年4月  東海大学 工学部電気工学科 助教授
2003年9月  東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 計測分野(現:センサ医工学分野)教授
2011年    仏国ペルピニアン大学 IMAGES研究所 客員教授
(2008年4月~2011年3月 東京医科歯科大学 評議員)
(2011年8月~2014年3月 同大学 学長特別補佐[評価担当])
(2014年4月~2017年3月  同大学 副理事[企画・大学改革担当])
現在に至る
—————————————————————
学会役員など
2013/1-現在  化学センサ研究会  役員
2016/5-現在  次世代センサ協議会 理事
2012/1-現在  Biosensors and Bioelectronics (@Elsevier) 編集委員
2015/1-現在  Sensors and Materials (@MYU) 編集委員、2017/4-現在 Associate Editor
2017/4-現在  センサ&IoTコンソーシアム会長
など
—————————————————————
2006年  日本機械学会「講演論文賞」
2006年  IEEE Sensors 2006, Best Presentation Award
2011年  電気学会「優秀技術論文賞」
2015年  Runner Up Award、4th International Conference on Bio-Sensing Technology, Lisbon on 10-14 May 2015.
他、多数

■専門分野・研究テーマ
センサ医工学、医療用バイオデバイス、生体情報計測、ユビキタス情報通信、生体応用工学 など

オムロン、子どもやペットの置き去り検知システムの構築可能なセンサ

オムロンの子会社として車載事業を担う、オムロン オートモーティブエレクトロニクス(株)(以下、OAE)は、生体が呼吸する際に発生する胸の動きを電波で捉えることで、自動車内において乗員の存在をより正確に検知する「呼吸時体動検知センサー」を開発した。

「呼吸時体動検知センサー」は、従来の超音波式と比較してより微小な体の動きを捉える技術により、熟睡した子どもなど、体の動きが少ない対象を正確に検知することができる。例えば、本センサと、2017年に発表した、「ドライバー見守り車載センサー」※1を組み合わせることで、子どもやペット、意識を失った大人など、自力で車外に出られない対象だけを検知し、必要な場合にのみ警報を発するシステムを構築することが可能とのこと。

OAEは、2019年秋に自動車メーカー各社へ「呼吸時体動検知センサー」のサンプル提供を開始し、2021年末の量産化を目指すとしている。

昨今、高温環境下の車内において乳幼児が熱中症で死亡する事故が多発するなど、子どもの車内への置き去りが社会問題となっている。こうした中、欧州における自動車の安全性評価機関「Euro-NCAP」は、車内に置き去られた子どもを検知するシステムの搭載有無を2022年より安全性評価の対象項目とすることを発表※2している。そこで、自動車メーカー各社は、車内における子どもやペットの置き去りを検知し、ドライバーや周囲に知らせる置き去り検知システムの開発を進めている。OAEは、自動車メーカー各社の置き去り検知システムの構築加速に向け、「呼吸時体動検知センサー」や「ドライバー見守り車載センサー」などセンシング機器を提供していくという。

ニュースリリースサイト(オムロン):https://www.oae.omron.co.jp/press/20190306.html


※1 2017年9月発表 「ドライバーが運転に集中できるか判断するドライバー見守り車載センサー」
   https://www.omron.co.jp/press/2017/09/c0927.html
※2 Euro-NCAP 「ロードマップ2025」より(2017年9月発表)

LINEで家と会話できる「necolico HOME+(ネコリコホームプラス)」を個人向けに提供開始

(同)ネコリコは2018年4月に中部電力(株)と(株)インターネットイニシアティブが共同で設立し、サービス事業者様向けにLINEで家と会話できるホームIoTサービスを実現するプラットフォームを提供しているが、同社ではスマートハウス市場およびホームIoT市場の盛り上がりによる利用客の需要に応えるため、手軽に弊社ホームIoTサービスを利用できる個人向けサービス 「necolico HOME+ (ネコリコホームプラス)」の販売を開始した。

necolico HOME+ (ネコリコホームプラス)は、ネコリコ開発のサービス事業者様向けプラットフォームを活用し、機能等を標準化した個人向けサービス。同社では、本サービスを直販だけでなく、再販・取次等の方法でサービス事業者による取扱いも想定しており、自社ブランド活用ができる従前のサービス事業者向けプラットフォームの提供とあわせ、両輪での拡大を見込んでいるという。
あわせて販売開始記念に、購入して応募をした利用者から抽選で50名に、電池で動く「OMRON環境センサ」が当たる「スタートダッシュキャンペーン」を開始する。

■「necolico HOME+ (ネコリコホームプラス)」について
necolico HOME+は家庭に設置した各種センサやスマートメーターなどからセンサ情報を、暮らしをより良くするLINEメッセージとして受け取ったり、LINEから家電を操作したりできる個人向けホームIoTサービス。
necolico HOME+のキットやオプションの詳細は以下を参照のこと

■necolico HOME+ 特設サイト:https://www.necolico.co.jp/homeplus/

セキュリティ機能搭載IoTルータ(4G LTE/WiFi 2.4/5GHz/Ethernet)開発完了

(株)トランザスは、2020年に向けて5G/WiFi/EthernetにおけるIoT市場のコネクティビティとセキュリティを確立するソリューション(VPN/Firewall)として、より安全さを実現するというSecure IoT 800 シリーズの開発が完了した事を発表した。

【製品の概要】
Secure IoT 800 シリーズは、インターフェースとして4G LTE/WiFi(2.4/5Ghz)/Ethernetを搭載しており、様々なシーンで導入出来るシステムとのこと。
4G LTEはNTT DoCoMo/KDDI/Softbank/mineo(K-Opticom)/IIJ/OCNに対応しており、WAN側 EthernetポートではNTT Flet’s(PPPoE)に対応。
VPN機能ではIPSec/L2TPをサポートしておりCisco/Juniper社のコアルーターにIPsecによるセキュアなVPN接続を確立。
また、Firewall機能をサポートし外部からのアタックからIoT機器を保護する。
管理機能としてはGUIによるコンフィグレーションでリモートからファームウェアのアップグレード、コンフフィグレーションのインポート、エクスポートにてコンフィグレーションの変更が可能。リモート管理からのログイン情報は全てSyslogにロギングされる。
IoTの様々な利用シーンとして自動販売機や路線バス、ロボット、IoT組込みシステムへのフレキシブルなシステムへの展開が可能としている。

【今後の展開】
将来の5Gへの移行は4G LTEモジュールを交換する事によりスムーズに5Gへのマイグレーションが出来る。販売時期は6月を予定しており、今後フィールドテストを実施し、終了後に販売を開始。OEM提供販売も対応可能とのこと。

【システム仕様】:SecureIoT 800シリーズ(Secure IoTルーター)(Made in Minatomirai)
・対応Simカード(NTT DoCoMo/KDDI/Softbank/mineo(K-Opticom)/IIJ/OCN (5G対応は4G LTEモジュール交換によりアップグレード対応)
・サイズ:W:190×H:22×D:110mm
・重量 222.9g

ニュースリリースサイト:https://www.dreamnews.jp/press/0000190578/

LPWA対応のIoTアプリケーション構築プラットフォーム「IoTBASE」

IoTアプリケーションの開発・サービス提供を行う(株)LiveRidgeは、LPWA対応のIoTアプリケーション構築プラットフォーム「IoTBASE」をリリースした。また、2019年3月1日より社名をIoTBASE(株)に変更した。

「IoTBASE」は、IoTアプリケーションで多く利用される汎用的なバックエンド機能を提供することで、アプリケーション開発を効率化するサービス。クラウド上に用意された機能をAPIで呼び出すだけで利用できるので、サーバーの設計・開発・運用不要でバックエンド機能をアプリに実装することができ、工数削減によるコストカット・スピードアップに貢献するという。

サービスの特長として、Sigfox、LoRaWAN、LTE-M、NB-IoT等の多様なLPWA通信方式や、位置情報、温湿度、照度、ジャイロ、加速度、バッテリー残量等の多様なセンサを接続サポートしているため、要望に合わせた自由な組み合わせで利用できるとのこと。
※通信方式、センサは今後も拡張予定。

◇「IoTBASE」で構築できるアプリケーション例
・インフラ系:インフラ監視、防災管理、ゴミ残量管理、デマンドバス管理 等
・GPS位置系:子ども見守り、高齢者見守り、作業員管理、資産管理、車両管理、ペット見守り 等
・現場業務系:設備保全監視、建築/工事現場管理、来客人数管理、交通量調査 等
・状態監視系:登山・スポーツ、屋内外測位、鳥獣わな監視、スマートホーム 等

「IoTBASE」サイト: https://iotbase.jp/

SENSPROUT、スマホ・PCから灌水予約・管理ができる「灌水制御システム」

(株)SenSproutは、いつでもどこでもスマートフォンやPCから水やりができる「SenSprout 灌水制御システム」の販売を開始する。

【SenSprout 灌水制御システムの特長】
◇スマートフォンやPCで遠隔から灌水予約・管理ができるので圃場に移動する工数を削減 ◇土壌水分量と温度を計測するSenSprout Pro センサーシステムと連携して適切な水分管理が行える ◇コンセントプラグの差し込みで設置できるので大がかりな工事が不要

SenSprout 灌水制御システムは、灌水制御装置、灌水ゲートウェイ、専用電磁弁がセットになったシステムで、圃場に行くことなく遠隔地からスマートフォンやPCを使って灌水予約ができ、「いつ」「どこで」「どのくらい」灌水したかの記録や管理もおこなえる。既存の100V/200Vコンセントプラグに差し込み、専用の電磁弁と接続するだけなので、大がかりな設置工事も必要ないとのこと。

SenSproutの灌水制御システムを導入することで、遠隔操作による灌水と管理が可能となり、圃場に行く移動時間および、灌水作業に掛かる労力の削減につながるという。

灌水制御システムの販売価格は、灌水制御装置 x 1台、灌水ゲートウェイ x 1台、専用電磁弁 x 2台の一式で398,000円(税抜)。
販売開始を記念し、期間限定で灌水制御システムの試用キャンペーンを実施。

(株)SenSprout 製品サイト:http://sensprout.com/irrigationcontrolsystem

他の光素子と集積可能なフォトダイオードとして、21.8A/Wの受光感度を達成

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と光電子融合基盤技術研究所(PETRA)、沖電気工業(株)(OKI)は、光信号を電気信号に変換する素子であるフォトダイオードの小型化と高感度化を両立させる技術の開発に成功し、シリコンフォトニクス技術により他の光素子と集積可能なフォトダイオードとして、1600nm波長帯の光に対して世界最高となる21.8A/Wの受光感度を達成したと発表した。本技術は、第5世代移動通信(5G)ネットワークのスモールセル基地局装置に搭載される光通信ユニットの超小型化・低消費電力化に貢献するという。

1. 概要
超高速、同時多数接続、低遅延の通信サービスを提供する第5世代移動通信(5G)ネットワークでは、基地局エリアがスモールセルと呼ばれる小さなエリアに細分化され、従来の第4世代移動通信(4G)ネットワークに比べて面積当たり約100倍の数の基地局を設置することが必要になる。多数のスモールセルを結ぶネットワークには、パッシブ光ネットワーク(PON)(注1)の構成を用いてスモールセル基地局を既存の光アクセスネットワーク(注2)に収容する方式が設備コストの観点から有望と考えられ、5Gネットワークを世の中の隅々まで普及させるためには、設置場所を選ばない手のひらサイズの小型のスモールセル基地局装置が必要で、それに内蔵できる超小型の光トランシーバー(注3)の実現が待望されている。

こうした背景から、NEDOとPETRA、OKIは、5Gネットワーク向け超小型光トランシーバーの技術開発プロジェクト(注4)を進めてきた。この度、光トランシーバーを構成する主要素子の一つであるフォトダイオード(注5)において、小型化と高感度化を両立させる技術の開発に成功し、シリコンフォトニクス技術(注6)により集積可能な構造のフォトダイオードとして、1600nm波長帯の光に対して世界最高となる受光感度(注7)21.8A/Wを達成したとのこと。今回開発したフォトダイオードは、アバランシェフォトダイオード(APD)(注8)の原理を利用したもので、小型化が可能なシリコンフォトニクス技術を用いたAPDとして実用に十分な受光感度を実現した世界初の事例となるとしている。これにより、伝送距離の長延化、収容可能な基地局数の増加など、設備コスト低減につながる効果が期待される。

今後、本開発素子を含め、光源や光変調器などの全ての光素子をシリコンチップ上に集積化することにより、超小型光トランシーバーを実現し、5Gネットワークのスモールセル基地局装置に搭載される光通信ユニットの超小型化・低消費電力化に貢献するという。
なお、PETRAとOKIは、本成果について、2019年3月3日から3月7日に米国カリフォルニア州・サンディエゴで開催される世界最大級の光通信関連の国際学会「OFC2019」で発表する。

2. 今回の成果
一般に、APDでは、受光に伴って発生する電子の流れを、電界をかけた増倍領域において増幅することにより高い受光感度が得られる。これまで化合物半導体を用いたAPDでは、非常に高い受光感度が達成されていたが、他の光素子との集積化は難しく、製造コストも高くなる課題があった。一方、他の光素子との集積化が容易で、製造コストを安価にできるシリコンフォトニクス技術を用いたAPDでは、シリコン光導波路(注9)の上に増倍領域とゲルマニウムからなる光吸収領域を順次積み重ね、さらに光吸収領域の上に電極を設ける構造が報告されていたが、十分な受光感度を得ることができなかった。

今回開発したフォトダイオードでは、光アクセスネットワークで近年利用が始まった1600nm波長帯の光に対して高い受光感度を得るために、ゲルマニウム光吸収領域上に電極を持たない構造をとることにより、光吸収領域における光損失の低減を図りました。その結果、シリコンフォトニクスにより他の光素子と集積可能な構造のフォトダイオードとして、1600nm波長帯の光に対して世界最高となる受光感度21.8A/Wを実現して、5Gネットワークに十分適用可能な性能を達成したという。

また、増倍領域をシリコン光導波路の中に設ける独自のシンプルな構造を採用したことにより、大量生産技術が確立している安価なCMOSプロセス(注10)での製造が可能となったとのこと。

3. 今後の予定
今回開発したフォトダイオードを、光波長フィルター、光変調器、送信用光源など他の光素子とともに集積すると、数mm角の超小型光送受信集積チップとなる。今後は、 5Gネットワークのスモールセル基地局装置に内蔵できるよう、この光送受信集積チップを実装した超小型光トランシーバーの開発を進めていくという。
また、本集積チップの小型である特長を生かして、分光機能を集積した光学分析チップの受光素子など、センサ応用への展開も進めていくとのこと。

※注1:パッシブ光ネットワーク(PON)
光アクセスネットワークにおいて、収容局と加入者を結ぶ光ファイバーを分岐して、時間多重により収容局と加入者を1対多数で結ぶネットワーク構成。収容局側設備と光ファイバー線路を複数の加入者で共用するため、ネットワークの設備コストを低く抑えることができる。
※注2:光アクセスネットワーク
光通信ネットワークにおいて、加入者と通信事業者の収容局を結ぶネットワーク。
※注3:光トランシーバー
電気信号と光信号を相互に変換する装置。
※注4:プロジェクト
事業名:超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発
事業期間:2013年度~2021年度。
※注5:フォトダイオード
光の検出器として動作する半導体素子。光信号を電気信号に変換できる。
※注6:シリコンフォトニクス技術
シリコンを材料とする光素子技術の総称。従来の光素子は、ヒ化ガリウム、リン化インジウムなどの化合物半導体、または石英などの誘電体を材料とすることが一般的であった。シリコンを材料とすることにより、光素子の小型化、光素子とシリコンLSIの集積化、生産性の向上などが期待される。
※注7:受光感度
光信号を電気信号に変換する効率を表す指標。フォトダイオードの場合は、発生する電流を入射光強度で割った値をA/W(アンペア/ワット)の単位で表す。
※注8:アバランシェフォトダイオード(APD)
フォトダイオードの一種。光を受けて発生する電流を電界の効果に
より内部で増幅することで、高い受光感度が得られる。
※注9:光導波路
所望の経路に沿って光を伝搬させるための光の通り道。
※注10:CMOSプロセス
半導体集積回路の製造で一般的に用いられる製造工程。大量生産により製造コストを極めて低く抑えることができる。

ニュースリリースサイト:
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101073.html

次世代ウエアラブルIoTのための非侵襲バイオセンシング(1)

三林 浩二
東京医科歯科大学
生体材料工学研究所
センサ医工学分野

1. はじめに

医療や健康科学の領域においてウエアラブルデバイス、センサネットワーク、IoT、医療クラウドなどが活性化している。生体情報をリアルタイムで計測するデバイスやセンサ技術が求められているが、今後は生体の化学/生化学情報を捉え、情報化するかが大きな課題である。特に採血などを行なわず、身体を傷つけない「非侵襲的な計測」が有効であり、涙液や唾液、生体ガスなどに含まれる生体情報が注目されている。さらに無意識での生化学モニタリングを実現にするには、身体への装着性や生体親和性に優れたデバイスの開発、そして非接触にて生体情報をイメージングする技術も重要である。もちろん、これらデバイス開発や計測技術には、MEMSやバイオセンサ技術を融合した高機能なバイオデバイスを構築する必要がある。
本稿では涙液や唾液を測定対象として、涙液嚢や口腔などの「窩腔」に装着できる「キャビタス(体腔)センサ」(Cavitas sensors)について解説する。また疾病や代謝由来の生体ガスの高感度計測を目的とし、代謝酵素を利用した生化学式ガスセンサ(バイオスニファ)と生体ガスのイメージングシステム(探嗅カメラ)を紹介し、非侵襲バイオセンシングの可能性を示す。

2. 生体の窩腔に装着するキャビタスセンサ

身体には口腔や鼻腔、咽頭腔、結膜嚢などの窩腔(キャビタス)が多数あり、その窩腔鵜を利用したコンタクトレンズやマウスガードなどすでに広く社会に普及している。これらにセンサ機能を付加することで、涙液や唾液に含まれる生化学的・化学的・生物学的な情報を計測し、健康管理や疾病予防、疾病モニタリングなどの日常医療に応用が可能となる。以下に、結膜嚢に装着可能な「ソフトコンタクトレンズ型グルコースセンサ」と、口腔に装着する「マウスガード型センサ」について詳解する。

2.1 ソフトコンタクトレンズ型グルコースセンサ

糖尿病は罹患者数が年々増加しており、先進国のみならず途上国においても大きな社会問題となっている。血糖値測定では、簡易測定器を用いる自己血糖評価法が一般的であるが、採血は大きな負担であり、感染症などの危険性もある。現在、多様な計測法が検討されているが、血糖値と相関する各種体液(涙液、唾液など)を利用する方法も検討されている。そこで柔軟性に優れたコンタクトレンズ(SCL)形状のバイオセンサを開発し、涙液グルコースの変化をリアルタイム計測し、血糖値評価の可能性を調べた。
SCL型バイオセンサの開発では、眼部に装着して涙液モニタリングを行うことから、医療機器に使われるポリジメチルシロキサン(PDMS)を母材として作製した。次にポリマーレンズに薄膜電極を形成し、電極感応部にグルコース酸化酵素(GOD)を固定化し、グルコースセンサとした[1,2]。電極膜は、コンタクトレンズの凸面に薄膜ステンシルを介して、PtおよびAgをイオンビームスパッタ法にてパターン成膜し、Pt作用電極とAg電極を形成した。酵素の固定化では、生体適合性MPCポリマー(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine polymer)を用いて、GODを電極感応部に固定化し、柔軟なSCL型グルコースセンサとした(図1)。作製したSCL型センサは、コンタクトレンズのみならず電極部も高い柔軟性を有し、曲げ応力に対しても電極が剥離したり、クラックが発生することはなく、コンタクトレンズに高い密着性を維持しており、電気化学計測に用いることができる。本センサの特性を調べたところ、涙液糖濃度(0.05~0.36mmol/L)を含む、0.03~5.0mmol/Lの間でグルコースの定量が可能であった。

図1 ソフトコンタクトレンズ型グルコースセンサの概観写真(右:折り曲げ状態)
 

次に電極、リード線、端子部をPDMSにて一体化したSCL型センサを作製し、感応部を日本白色種家兎の眼部に装着し、涙液グルコースの連続計測を行った。実験では無麻酔の家兎眼部にSCL型センサを装着し、グルコース(1g/体重1kg)を経口投与した後、涙液糖の濃度変化を調べた。なお比較のため耳介静脈より採血し、市販の自己血糖評価キットにて血糖値変化を計測した。図2に家兎での涙液計測の結果を示す。この図からからわかるように、グルコースの経口投与後、血糖値は直ちに上昇を始め、投与後45分頃にピーク値を示したのに対し、SCL型センサでの出力は数分の時間遅れにて血糖値に追従し、ピークに達した後に低下した。本結果より、SCL型センサは涙液糖の濃度モニタリングが可能で、時間的な遅れがあるものの、涙液糖による血糖値評価の可能性が示唆された。今後、薄膜の通信機器やエネルギーシステムの開発などが必要である。なお、開発した技術は生体適合性を要するあらゆる形状のデバイス開発に展開でき、眼部のみならず、皮膚表面や口腔内、さらには体内埋め込み用のデバイスへも展開できる。次節では本技術を発展し、通信回路とバッテリーを組み込んだ無線通信機能付きのマウスガード型センサについて解説する。

図2 OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)での家兎涙液グルコース(実線)と血糖値(破線)の変化

次週に続く-

参考文献

[1] M.X. Chu, K. Miyajima, D. Takahashi, T. Arakawa, K. Sano, S. Sawada, H. Kudo, Y. Iwasaki, K. Akiyoshi, M. Mochizuki, K. Mitsubayashi; Soft contact lens biosensor for in situ monitoring of tear glucose as non-invasive blood sugar assessment, Talanta, 83, 960–965, 2011

[2] M.X. Chu, T. Shirai, D. Takahashi, T. Arakawa, H. Kudo, K. Sano, S. Sawada, K. Yano, Y. Iwasaki, K. Akiyoshi, M. Mochizuki, K. Mitsubayashi; Biomedical soft contact-lens sensor for in situ ocular biomonitoring of tear contents, Biomed Microdevices, 13, 603–611, 2011.


著者紹介
氏名:三林 浩二(みつばやし こうじ)
所属:東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 センサ医工学分野

■略歴
1985年3月  豊橋技術科学大学大学院 工学研究科 修士課程 エネルギー工学専攻 修了
1994年9月  東京大学大学院 工学系研究科 博士課程 先端学際工学専攻 修了(博士[工学])
1998年4月  東海大学 工学部電気工学科 助教授
2003年9月  東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 計測分野(現:センサ医工学分野)教授
2011年    仏国ペルピニアン大学 IMAGES研究所 客員教授
(2008年4月~2011年3月 東京医科歯科大学 評議員)
(2011年8月~2014年3月 同大学 学長特別補佐[評価担当])
(2014年4月~2017年3月  同大学 副理事[企画・大学改革担当])
現在に至る
—————————————————————
学会役員など
2013/1-現在  化学センサ研究会  役員
2016/5-現在  次世代センサ協議会 理事
2012/1-現在  Biosensors and Bioelectronics (@Elsevier) 編集委員
2015/1-現在  Sensors and Materials (@MYU) 編集委員、2017/4-現在 Associate Editor
2017/4-現在  センサ&IoTコンソーシアム会長
など
—————————————————————
2006年  日本機械学会「講演論文賞」
2006年  IEEE Sensors 2006, Best Presentation Award
2011年  電気学会「優秀技術論文賞」
2015年  Runner Up Award、4th International Conference on Bio-Sensing Technology, Lisbon on 10-14 May 2015.
他、多数

■専門分野・研究テーマ
センサ医工学、医療用バイオデバイス、生体情報計測、ユビキタス情報通信、生体応用工学 など

歩行解析デバイス「AYUMI EYE」

製品名
歩行解析デバイス「AYUMI EYE」  (株)早稲田エルダリーヘルス事業団

3軸加速度センサーが搭載されたモジュールとiOSアプリを用いて、歩行時の加速度データに基づき、歩行機能をスコアリングにより可視化するデバイスです。超小型で軽量設計、高精度で低価格を実現しました。簡便な測定による歩行の可視化で、歩行機能の客観的な把握、運動に対するモチベーションの浮揚とコミュニケーションの促進が期待できます。

加速度算出方法に関するプログラム等10種類の特許を有し、各変量を算出するために、独自のアルゴリズムを用いており、ヒールコンタクト検出、ヒールコンタクトに対する左右ラベリング、およびそれらと加速度データにて計算した値を使った各種パラメータ計算を行っています。

測定方法
歩行者の第三腰椎に装着し、6~10メートルの歩行で、モジュールからデータが送信されます。取得したデータはサーバ上で一元管理されるため、測定を実施したiPhone以外のパソコン等からでも自由にデータを取得・更新することが可能です。
測定に際し、所要時間は約3分で、安全かつ特殊な技能等を必要としません。結果の解析・データ化も瞬時に可能なため、どのような環境においてもすぐに導入していただくことが可能です。

活用事例
・介護事業所:デイサービス、デイケア、有料老人ホームetc.
・医療機関:リハビリ、研究、福祉用具選定etc.
・自治体:地域支援事業、地域包括支援センター、健康関連イベントetc.
・その他:開発、企業・健康保険組合、スポーツ、エンターテイメントetc.

「評価項目・帳票開設」
測定結果の帳票は上・中・下段の三段構成となっています。
上段は推進力、バランス、リズム、それらを構成する各パラメータ、および総合評価点数を数値化しており、中段はバランスマップ、歩くテンポによって歩行の状態をマップ・グラフ化しています。

・総合評価点数:推進力、バランス、リズムより算出
・推進力:歩行速度と歩幅
・バランス:左右一歩時間の差
・リズム:1歩周期にかかる時間とそのばらつき
・バランスマップ:前後左右加速度のプロットデータを2次元ヒストグラム化
・歩くテンポ:左右一歩時間を棒グラフ化

その他詳細なデータ解析が可能となっており、研究等も含め様々な用途でご利用いただけます。
歩行が誰にでもわかりやすい形でスコア化・グラフ表示されるため、歩行機能の現状把握および以前の結果や他者との比較が容易にできます。
測定データはクラウドサーバに蓄積され、個人別、施設別等様々な切り口での比較分析が容易に行えます。すでに収集された数多くのデータを分析しながら、順次アップデートを重ねています。
また、帳票の下段においては、上・中段において明らかになった弱点・課題に対するソリューションを提案しており、改善に向けた運動プログラムは、株式会社早稲田エルダリーヘルス事業団開発のイートレガイドブック(運動教本)の内容と紐づいています。

主な仕様

一般的名称 歩行解析デバイス AYUMI EYE
禁忌・禁止 本装置は防水型ではないので、装置を水に濡らさない。
本装置は防爆型ではないので、装置の近くで可燃性及び爆発性の気体を使用しない。
本装置は精密電子機器なので、極端に高い磁場のかかる場所や
強い電波の発生する場所に持ち込まない。
形状・構造
及び原理等
本装置は
(1)モジュール「AYUMI EYE」およびその付属品(装着ベルト)、
(2)iOSアプリ、
(3)イートレガイドブック(運動教本)、
(4)ユーザー向けポータルサイトのアカウントからなります。
寸法 幅:62.4mm 高さ:30.9mm
厚さ:11.8mm(装着ベルトは除く)
重量 18.5g(電池含む)
電源 リチウム電池(CR2032)x 1
定格 3V
使用目的、効能
又は効果
歩行又は歩行パターンを試験する装置です。
加速度センサーが搭載されたモジュールとiOSアプリを用いて、
歩行時の加速度データに基づき、歩行機能を「推進力」「バランス」「リズム」の3点から分析し、
スコアリングにより可視化するデバイスです。
仕様 「AYUMI EYE」 型番 EHA-AYU
3軸加速度センサモジュールLIS2DH12 (STMicroelectronics製)
検出範囲 ±4G  検出軸 3軸
精度 ±1%(デバイス規定=ビットあたりのG値誤差規定より算出)
サンプル周期 31.25Hz
A/D分解能 12bit(バッテリ電圧検出A/D)
通信規格 Bluetooth Low Energy  BLE4.1 2mW  Class2 
iOSアプリ App Storeよりダウンロードください。
使用上の注意 使用温度 5~40℃
本装置を水に濡れる恐れのある場所や
結露するような条件・高湿度環境下で使用しない。
ボタン電池(CR2032)式をご使用ください。
電池寿命(概算理論値):23.6日(2時間/日使用の場合)
取得したデータはサーバ上で一元管理されるため、
測定を実施したiPhone以外のパソコン等からでも自由に
データを取得・更新することが可能です。
貯蔵・保管方法
及び使用期間等
保存温度 0~45℃ 水や高湿度の及ばない環境で保管する。
取扱い上の注意 落としたり、衝撃を与えない。
発熱や異音などの異常が発見された場合は使用を中止する。
清掃は清浄な布巾による乾拭きで行う。
保守・点検に
係る事項
使用開始時に先の細いものでリセットボタンを押してください。
iPhoneと接続が切れて約5分でレジュームします。

問い合わせ先
株式会社早稲田エルダリーヘルス事業団
事業開発グループ マネジャー / 理学療法士 伊藤 太祐

TEL : 03-5447-5470
FAX : 03-5447-5480
Mail : t_ito@waseda-e-life.co.jp

〒108-0074東京港区高輪4-24-58-2F
歩行解析デバイスAYUMI EYE http://ayumieye.com/

絆創膏型生体センサ「VitalgramR」 

製品名
絆創膏型生体センサ Vitalgram®  アフォードセンス(株)

製品概要
Vitalgram®は、世界で最小、最軽量、薄型の折り曲げ可能な絆創膏型多機能生体センサです。ゲル電極を介して直接胸に貼り付ける、あるいは電極つきウェアを着るだけで、いつでもどこでも装着者の体調や運動情報がモニタリングされそのデータは、リアルタイムに携帯端末やクラウドサーバに送信、記録されます。

特長
【1】バイタル情報(心電・心拍、自律神経のバランス指標(LF/HF)、呼吸数、深部温(*)、体表温度、汗や皮膚表面の乾燥度)、モーション情報(行動情報、姿勢情報、活動量、歩数、カロリー消費量ほか)、環境情報(環境温度、湿度、高度)を収集

【2】多種多様な装着方法に対応した実装筐体を提供

【3】センサは充電クレードルに載せるだけで充電、電池持続時間は2,3日から1週間(端末との通信頻度やデータ送信容量に依存)。

【4】装着するだけで自動スタート

【5】防水(IPX6レベル)

(*)深部温計測機能付きセンサはVitalgram®CTとして別売。

(左・中央)シリコンゴム筐体センサ外観(Vitalgram® II) (右)クレードル上で充電
(左)Vitalgram®CT (右)(深部温計測機能付き) 装着ベルト

応用分野
・ 労働者の勤怠管理・体調管理・安全見守り(心拍・深部温・汗計測による熱中症等の予知・予防、モーション情報を基にした行動推定による長時間労働の管理や勤怠管理)
・ 職業ドライバーの体調管理(心拍・自律神経バランス指標・深部温計測による居眠り運転の予知、疲労の管理)
・ チームスポーツ等での選手の訓練、体調管理および試合中のパフォーマンス評価
・ 在宅での高齢者や退院した患者のモニタリング
・ 生活リズム・生体リズム計測による未病・健康管理(慢性的な時差ボケ状態の予防による成人病、うつ病や認知症の予防)
・ 女性の基礎体温の管理

主な仕様

心電 128/256/512/1024 Hzサンプリング,10bit

3軸加速度 8/16/25.6/32/40.96 Hzサンプリング,±8G

体表温度 1~60 秒サンプリング,精度0.5℃

深部温 1~60 秒サンプリング,36から42℃,精度0.5℃

相対湿度 1~60 秒サンプリング,0~100%,精度±2%

環境温度 1~60 秒サンプリング,精度±0.5℃

圧力(高度) 1~60 秒サンプリング,範囲300~1100hPa,精度±1.5hPa

無線 Bluetooth® 4.0 ワイヤレステクノロジー

対応デバイス iOS8.0以降のiPhone,iPad,iPod touch

ログデータ記録方式 SQLite ファイル / CSV形式に変換可能

寸法および重量
Vitalgram (シリコンゴム筐体実装時)
VitalgramCT(樹脂筐体実装)


55 mm×20 mm×5 mm,約4g
61 mm×37 mm×11 mm,約14g

問合せ先
アフォードセンス株式会社
TEL: 079-267-6019
E-mail : info@affordsens.com
URL : http://www.affordsens.com