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東芝、レベル4以上の高度自動運転の実現に貢献するLiDAR向け受光技術を開発

東芝は、ソリッドステート式LiDAR向けに新たな受光技術を開発した。
従来困難だった超高感度受光デバイスSiPM(注)の小型化を可能にし、高解像度と長距離測定性能の両立を実現した。SiPMは、微かなレーザーの反射光を高感度に検出することが可能で、LiDARの長距離測定に適した受光デバイス。

従来のSiPMでは、一度光を検出した受光セルは一定時間応答ができなくなるといった物理上の特性があり、漏れなく光を検出するためには非常に多数のセルを搭載することが必要だった。今般、SiPM上に受光セルを再起動させるトランジスタを搭載することで、受光セルが応答できない時間を短縮することに成功した。これにより、少ないセル数でも効率よく光を検出できるようになり、SiPMの大幅な小型化を実現した。小型SiPMを用いることで、限られたパッケージ面積内に多数のSiPMを配列することができ、高解像度化を図った。

また、本受光技術は、市販のレンズと組み合わせて使用することができ、利用用途によって生じる複雑なカスタマイズが不要。乗用車、バス、作業車など、多様な車種への搭載が容易となり、今後、ドローンやロボットへの搭載も期待できる。
同社は、本技術を、市販のレンズを用いたシステム構成において実装し(図)、高解像度を保ったまま、ソリッドステート式において従来比4倍となる200メートルの長距離測定性能を達成した。

同社は6月16日(日本時間)にオンライン開催された半導体回路国際会議VLSIシンポジウムで本技術を発表したとのこと。

(注)SiPM (Silicon Photo Multiplier):
   1光子を受けると、100万電子に変換する光検出デバイス。サイズ~100µm角

ニュースリリースサイト(TOSHIBA):https://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/2007_01.htm

ユニバーサルロボット、SMC社の協働ロボット用エアチャックをUR+製品として認証

ユニバーサルロボット(UR) はSMC(株)が開発・製造する協働ロボット用エアチャック JMHZ2-X7400Bを、URロボットの周辺機器プラットフォーム「UR+」製品として認証したことを発表した。

小型、軽量で高把持力を発揮するSMCの協働ロボット用エアチャック JMHZ2-X7400B は、エア供給チューブ1本と、電機配線M8コネクタを接続するだけで動作可能で、URロボットのティーチペンダント上で直感的な操作でプログラムすることができる。これまでユーザーが自作することも多かったエンドエフェクタだが、簡単に設定できるエアチャックが誕生したことで、SMCの主要顧客層である自動車、電機電子、金属加工業界はもちろん、食品、化粧品、医薬品業界などでも応用が可能になり、部品搬送などの工程の自動化に貢献するという。

協働ロボット用エアチャックJMHZ2-X7400Bの特長は、以下のとおり。
・小型で430gと軽量のため、より重いワークを把持可能
・エアチャック、ソレノイドバルブ(電磁弁)、オートスイッチ、速度調整機構を一体化
・安全性を考慮し、樹脂製保護カバー付き
・高剛性リニアガイドを採用した小形軽量エアチャック(JMHZ2-16D)を搭載、長い把持点でも使用可能
・オートスイッチを2個搭載、ワークの把持確認が可能
・開閉速度調整機構を内蔵、ワークやタスクに合わせ適切な速度での把持が可能

ニュースサイト(UR):https://www.universal-robots.com/ja/

AI・ビッグデータによる感性価値創造(1)

関西学院大学 理工学部
教授 長田 典子

1. はじめに

 ユーザのニーズが多様になり、プロダクトやサービスのカスタマイズ化やパーソナル化がますます求められている。そのためには一人ひとりが持つ感性を的確に把握し,それにあわせて具体的なデザインに展開する方法論が望まれる。
 ここでは、人の感性を工学、情報学、心理学、脳科学、芸術学等さまざまな分野の知見に基づき定量化し、製品設計に役立つ客観的なものさし(メトリック)を作る感性指標化技術について紹介する。とくにAI・ビッグデータサイエンスを取り入れて感性指標を自動構築する方法と,そのプロダクトデザインへの応用事例について述べる。またプロダクトやサービスを通して得られる感動や共感を感性価値とし、感性価値を創出する取り組みについても紹介する。

2. 感性指標化技術

2.1 感性の階層構造と印象の定量化

 感性研究において中心的なトピックの一つが印象(イメージ)の定量化である。プロダクトデザイン分野においては、人がプロダクトに対して「好き」や「欲しい」などの感情(感性価値)を抱くのは,「かわいい」や「美しい」といった印象を抱くからであり、またこうした印象は色や表面性状などの物理要因によって形成されると捉えられている。
 我々が研究を進めている感性指標化の枠組み1)を図1に示す。ここでは感性のモデルを「感情―印象―物理量」の3層からなる階層構造として表現する。最下位層である対象の物理量から、上位要素である対象の印象、印象に基づく総合評価である価値や価値によって喚起される内的な情動までの階層的な対応関係を構成する。印象層を介することでヒト(価値)とモノ(物理要因)の対応関係における感性的な価値形成の根拠(因果関係)が明らかになり、プロダクトデザインへのフィードバックが容易になる。また印象層で個人差の補正を行えるので、モデル全体の精度が上がるというメリットもある。
 モデル化のフローは図2に示すように、心理学実験と統計解析に基づくものである。主観評価によって有効な評価語セットと対象物セット(プロダクトやサービス)を選定し、次にこれらの対応関係を主観評価によってデータ化し、統計解析によって指標を構築し、さらに物理要因とマッピングする。フローの各ステップでは開発者の予断や先入観を極力排除し、対象となるヒトが対象となるモノから喚起される反応を正しく取り出し、これを真値 (grandtruth) としてモデルを構築する。こうして構築されたモデルによって、対象物の持つ価値やそれにより喚起される情動を定量化・可視化し、逆に情動や価値をもたらす物理要因を求めることができる。
 代表的な手法としてOsgoodによるSD (Semantic Differential) 法が挙げられる。複数の形容詞対を尺度として対象を評価し、因子分析により印象構造を少数の主要因子で表現する。他にも多次元尺度構成法(MDS)、クラスタ分析、評価グリッド法、Dematel法、経験抽出法、共分散構造分析や各種回帰・機械学習手法などを目的や対象に応じて選択し組み合わせることで、階層構造を作る。そのとき評価語(形容詞)や刺激の取捨選択において、代表性(選ばれた評価語や刺激による結果が、空間全体の結果を反映するか)と網羅性(対象とする空間を十分に満たしているか)を高めることが有効である。
 図2に素肌とメイク肌における透明感の指標化を行った例を示す。2つの透明感指標(透明感を構成する下位要因の構造)には高い類似性があった一方で、素肌とメイク肌の透明感に固有な要素として、素肌では「キメの整い」、メイク肌では「シルキー感」が抽出された。この比較結果をもとに「触感の透明感」という新しいコンセプトが創出され、なめらかな触感(スキンケアタッチ)を特徴とするファンデーションとして製品化され高い評価を得ることができた2)
 このような心理統計に基づいた感性指標化手法とそのプロダクトデザインへの応用は、化粧品だけでなく自動車、電気機器、化学、素材、建築、日用品などあらゆる業種に及んでいる。しかしながら指標化の各段階において複数の主観評価実験・分析が必要となり、人的および時間的な負荷が高いということが大きな課題となっている。

図1 感性の階層構造と感性指標化アーキテクチャ
図2 素肌とメイク肌の透明感指標の比較

2.2 機械学習による感性指標の自動構築と得点化

 そこで主観評価実験を行わなくても、感性の階層構造に則った指標を構築する手法が望まれる。人工知能分野ではユーザの嗜好や感情を推定する研究が盛んに行われている。例えば評価極性(肯定的/否定的)をWeb上のテキストデータから推定する感情/評判分析(Sentiment Analysis)などがある。しかしこれらは物理量から直接的に感情に繋がる要因や評価(e.g. シルエットが好き)を推定するものであり、印象要因を介している(e.g. シルエットが上品だから好きなのか、シルエットがシンプルだから好きなのか)わけではない。そのため、プロダクトデザインにフィードバックするという観点からは、得られた知見を設計情報に直接反映するのは困難である。
 我々は感性の階層モデルをWeb上のテキストデータから機械学習により自動構築する手法を提案し、プロダクトのレビューデータを用いて検証した3,4)。本手法は評価表現の階層構造化、印象トピックの抽出、感情の得点化の3ステップからなる。
 まず評価表現の階層構造化では,アプレイザル理論に基づく評価表現辞書を用いる。アプレイザル理論では評価表現を外評価/内評価の2種類のカテゴリに分類している。外評価は「きれい」「やわらかい」など対象の印象を表し、内評価は「嬉しい」「楽しい」など評価者の内的な感情を表す。Web上から収集する評価語には印象語と感情語が混在しており、これらを区別できないまま構造化をしてしまうと、モデルの精度が低下するという問題が起こる。そこでアプレイザル評価表現辞書における内評価/外評価のカテゴリに基づき印象層/感情層に分類することにより,階層化を実現した。
 次に印象層において、印象語のみを用いたHDP-LDA(階層ディリクレ過程 潜在ディリクレ配分法)などによる印象トピック(従来の心理統計手法における主要因子に相当する)の抽出を行い、プロダクト毎に印象トピックの得点を算出する。
さらに感情層において、感情表現辞典を用いて10種類の感情カテゴリ(喜,怒,哀,怖,恥,好,厭,昂,安,驚)と係り受け解析から,印象トピックそれぞれの10種類の感情得点を算出する。最終的に、各プロダクトが印象を介して喚起される感情の得点を算出したり、逆にある感情を喚起するデザイン要素がどのようなものかを、印象を介して求めたりすることができる。
 例としてECサイトにおける特定の製品分野(腕時計、図3参照)を対象に、商品レビューデータ約20万件に対して本指標化手法を適用した。表1に示すような丁寧だ、素敵だ、見易い、軽いといった4つの印象トピックが抽出された。またそれぞれの印象得点と,それらから喚起される10種類の感情カテゴリの得点が得られた。検証実験として、算出された印象得点および感情得点を、人の評価に基づく得点と比較すると高い相関(r=0.4~0.7程度)を示した。さらにレビューデータに加えて、レビューの対象であるプロダクトの画像約2000枚を利用して、印象得点を教師データとしてCNN(畳み込みニューラルネットワーク)により学習を行うと、結果はレビューデータのみのときより画像を併用したときの方がさらに人の評価と強い相関(r=0。8程度)を示すことが確認され、本指標化手法が主観評価による感性指標化手法に代わる可能性が示された5)
 またアプレイザル評価表現辞書は現在日本語版しか存在していないが、クラウドソーシングを用いて他言語版の辞書を作る方法を開発した。検証実験では、実際の商品として芝刈り機(日本では一般的ではない商品)を対象として、英語の商品レビューからEU圏における感性指標を抽出し(quieter, sturdy, slick, etc.)、複数の商品のそれぞれの感性価値を適切に得点化できることを確認した。また分析に用いるテキストデータを特定の商品レビューからtwitterなどSNSに広げて感性指標を作ることで(decent, poor, proud,etc.)、より広い概念と文化・価値観などを計ることができた。このように異なる地域や文化における人々の潜在的なニーズやウォンツを発掘し、それらを未来のプロダクトデザインに繋げる試みも行っている。


図3 AIをベースとした感性指標の自動構築と得点化
表1抽出された印象トピックと、それらに対して算出された感情カテゴリの得点

次回に続く-

参考文献

1) 片平建史,武藤和仁,橋本翔,飛谷謙介,長田典子,SD法を用いた感性の測定における評価の階層性,日本感性工学会論文誌,Vol.17, No.4, pp. 453-463 (2018)

   

2) 雪肌精スノー CC パウダー,肌どけファンデ開発ストーリー,
 https://www.kose.co.jp/sekkisei/hadadoke/story/

   

3) 山田篤拓,橋本翔,長田典子,レビューデータを用いた評価表現辞書に基づく印象の自動指標化,日本感性工学会論文誌,Vol.17, No.5, pp. 567-576 (2018)

   

4) 橋本翔,山田篤拓,長田典子,レビューデータを用いたアプレイザル辞書に基づく感性の自動指標化,人工知能学会全国大会論文集,JSAI2019, 4M3-J-9-02 (2019)

   

5) 鈴木秀通,飛谷謙介,橋本翔,山田篤拓,長田典子,レビューテキストと画像を用いた機械学習によるプロダクトの感性指標構築. 精密工学会誌, Vol.85, No.12, pp.1143-1150 (2019)



【著者紹介】
長田 典子(ながた のりこ)
関西学院大学 理工学部 教授 / 感性価値創造インスティテュート 所長

■略歴
 1983年京都大学理学部数学系卒業,同年三菱電機(株)入社,
  産業システム研究所においてマシンビジョンの研究開発に従事
 1996年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了
 2003年より関西学院大学理工学部情報科学科助教授
 2007年同教授
 2009年米国パデュー大学客員研究員
 2013年感性価値創造研究センター長
 2015年革新的イノベーション創出プログラム
 「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」サテライトリーダー
 2020年感性価値創造インスティテュート所長。博士(工学)。専門は感性工学、メディア工学等。
  著書「感性情報処理」(共著)他

 2013年文部科学大臣表彰科学技術賞(科学技術振興部門)、2014年グッドデザイン賞受賞

顔と表情の感性計測(1)

早稲田大学人間総合研究センター
招聘研究員 菅原 徹

 感性工学とは、人の心の仕組みを知り、心の形を学び、心の喜ぶもの創りをサポートすることを目的とした学問である。あいまいな感性の定量化、見えにくい心の状態の可視化など、これまで工学が取り扱わなかった領域に挑戦している。筆者は20年以上、顔の魅力と表情の定量化に関する感性工学研究を続けてきた。それは、顔が心の鏡、心の情報掲示板と呼ばれるためである。30種類以上の顔面の筋肉は心情を反映した表情をつくりだし、見るものに対して多様な感性情報を発信している。また、表情の変化、つまり表情筋活動は私たちの脳活動に大きく作用する。『幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せになれる。』心理学者ウィリアムス・ジェームスが残した金言がそれを表している。
顔の内側と外側、表情のメカニズムと変化からどのようなことが読み取れるのか。顔、表情の定量的分析の代表例として、顔の特徴情報を分析し感情を定量化する研究と、表情筋の筋力トレーニング効果の検証を行った研究を紹介したい。

1.「顔に残る感情の足跡」を測る

1.1 はじめに
 「顔は人生の履歴書である。」「顔には、生き様が表れる。」というが、それは、人が何を感じて、どう行動するかが結果として顔に表れるということだ。感情や思考が顔つきや表情に出て、顔貌に刻まれるということである。
 そこで、本研究では感情や思考が表情に出ると、どのように顔立ちや印象に影響するのかを検討した。短期的な視点として、感情保持と表情がニュートラルな顔立ち(真顔)と笑顔に与える影響について明らかにすることを目的とした。「Neutral(中立)」の真顔に表出する感情成分、「Happy(幸福)」、「Angry(怒り)」、「Sad(悲しみ)」、「Surprised(驚き)」、「Scared(恐れ)」、「Disgusted(嫌悪)」を定量的に扱い可視化するために、FACS(Facial Action Coding System)理論をベースに開発された表情分析ツール・フェイスリーダー6.0(ノルダス社製)[1][2] を採用した。
 表情研究の道を開いたEkman&Frisen(1978)は顔に針電極を刺し、不明瞭な筋肉の動きを確認して、表情の動きを顔面上の機能的単位(Action Unit:AU)で表現することを試みた[3]。筋肉の動きでつくられる44のAUの組み合わせによって表情を評価する手法がFACSといわれる。例えばFACSによって笑顔は、AU6(頬を持ち上げる)とAU12(唇の端を水平に引く)の組み合わせで記述される。

2. 方法

2.1 実験手順
 健康な40代~60代の成人女性18名を対象とし、下記の手順で実験を行った。
 はじめに、課題表情(嫌悪、微笑み、笑顔)の練習と表情写真の撮影を行い、実験手順の説明後に深呼吸、検者との対話でリラックス状態をつくった。真顔の動画撮影(30秒)、随意的な笑顔の動画撮影(15秒)を行った。つぎに被験者は不快シーンの想起と嫌悪の表情を3分間持続し、続けて真顔の動画撮影(30秒)、最後に随意的な笑顔の動画撮影(15秒)を行った。同様に、快シーンを想起して微笑みを3分間持続し、真顔の動画撮影(30秒)、随意的な笑顔の動画撮影(15秒)を行った。快と不快の感情想起と表情形成の課題は被験者ごとに順序を変え、課題に対するインタビューも行った。

2.2 分析ツール
 表情を読み取り感情要素に定量化する「フェイスリーダー」(FaceReader6.0/ノルダス社製)はFACSを基に表情の種類と強度の算定が可能である。顔面内の特徴点、491ポイントを特定して、表情に伴う顔の動きの最小単位となるAUの組み合わせから、「Happy(幸福/笑顔)」、「Angry(怒り)」、「Sad(悲しみ)」、「Surprised(驚き)」、「Scared(恐怖)」、「Disgusted(嫌悪)」そして「Neutral(中立)」の7つの感情要素を判定する(図1)。

図1: フェイスリーダーを用いた表情の分析

 分析方法は、動画をキャプチャしてJPG画像として保存し、リラックス後の真顔、嫌悪後の真顔、微笑み後の真顔と笑顔の平均顔画像を作成した。なお平均顔画像は、すべての被験者18名のパターンと評定者3名が顔印象の違いを共通して認めた被験者7名のパターンを用意した(図2)。これら平均顔画像をフェイスリーダーにかけ、真顔、笑顔ごとの各感情成分を可視化、違いを比較することとした。

図2: 真顔と笑顔の平均顔
(左:18名の平均顔画像、右:7名の平均顔画像)

2.3 結果
 7名の平均顔画像をフェイスリーダーで比較すると、不快感情後の真顔にはAngryという成分が10%検出された(図3)。不快感情後の笑顔はHappy成分が53%であり、リラックス後の笑顔の89%、快感情後の笑顔の89%より低い値を示した。また、18名の平均顔画像を基にした分析では、不快感情後の笑顔にScaredの成分が6%確認できた(図4)。
 不快感情と表情を保持した場合は、その後の真顔や笑顔にも不快感が表出され、一方で快感情と表情を保持した場合は、その後の真顔や笑顔にも快感情が表出されることがわかった。同じ真顔でも直前で保持した感情や表情によって、真顔から抽出される感情成分が変動することがわかった[4]

図3: 真顔に残る感情の足跡/不快後に悲しみが増加し怒りが表出
図4:  笑顔に残る感情の足跡/不快後に幸せが減り恐れが表出

2.4 考察
 不快な感情を保持し、表情として出る(眉間にシワを寄せる)場合、皺眉筋や鼻根筋、上唇鼻翼挙筋、上唇挙筋の筋緊張が持続することが予想される。この後、意識的に真顔に戻った場合、筋緊張が残ることにより、顔印象が低下する可能性がある。一方で、快感情を保持し、口角を左右に広げて微笑んだ場合は、頬骨筋、笑筋、頬筋が緊張し、真顔の形成時には頬部の筋緊張がリフトアップという形で残ることで好印象を与えることが予想される。
 人は日常生活において、感情や表情をそのまま出すのではなく、立場や環境に応じて、感情を抑えたり出したりしている。この長い繰り返しにより、生き様が顔に表れるのであれば、感情の出し方や付き合い方が人生の顔立ちに影響するといえる。


次回に続く-

参考文献

[1] ノルダス社・ホームページ,http://www.noldus.com/(2020年6月閲覧)

[2] 株式会社ソフィアサイエンティフィック・ホームページ,http://www.sophia-scientific.co.jp/(2020年6月閲覧)

[3] Ekman, P., Frisen, W.V.,The facial action coding system(FACS): A technique for the measurement of facial action, Consulting Psychologists Press(1978)

[4] M.Miyazaki, T.Sugahara, N.Orihara,S.Umezawa,Footprint of Emotions that Remain in Facial Features:The influence of emotion and facial expression is given to the complexion, 5th Intl Conf on Applied Computing and Information Technology/4th Intl Conf on Computational Science/Intelligence and Applied Informatics/2nd Intl Conf on Big Data, Cloud Computing, Data Science & Engineering,179-183(2017)



【著者紹介】
菅原 徹(すがはら とおる)
早稲田大学人間総合研究センター 招聘研究員、 博士(工学)

■略歴
2005年 信州大学大学院 工学系研究科博士後期課程生物機能工学専攻 修了
2008年 早稲田大学 人間科学学術院(人間科学部人間情報科学科) 助手
2010年 人間総合科学大学 人間科学部人間科学科 助教
2011年 早稲田大学 人間総合研究センター 招聘研究員
現在に至る

■専門分野
感性工学、魅力工学、感情・人格心理学、スポーツ心理学

■学会活動
スマイルサイエンス学会 代表理事(2013-)
可視化情報学会 可視化アートコンテストオーガナイザー(2015-)
日本感性工学会 評議員(2018-)

視線計測による似顔絵を上手に描くためのスキル抽出および
集中レベルの評価(1)

広島国際大学 健康科学部 心理学科
准教授 大西 厳

1 はじめに

今日の科学技術の発達は、私たちの暮らしに多大な恩恵をもたらしている。人工知能、ディープラーニング技術は、一昔前では難しかった手書き文字認識や音声認識を日常でストレスなく使えるレベルにまで押し上げている。コンピュータのユーザーインタフェースも、コマンドプロンプトからグラフィックユーザーインターフェースへ、さらには、音声入力や手書き文字入力が付加されることが当たり前の時代となってきた。近未来では、脳波や視線を用いたインターフェースが登場する可能性もある。1) また、人間でしか対応できなかった保険サービス分野では、AI保険アドバイザーが実用化されてきている。コンピュータの応答は正確になってきたものの、その一方で「冷たい」「優しさが無い」「人間味が無い」「気持ちを理解してくれない」という問題は、未だ解決されていない。人の感性や心を理解したり熟練者のスキルを分析したりする技術は、AIだけでは不十分であり、人から発せられるそれらに結び付く情報を計測・評価する技術の確立が強く求められている。

2 似顔絵描画スキルと感性計測

絵を描くなどの趣味は、仕事や対人関係によるストレスを発散させて心を落ち着かせてくれる。小学校低学年の頃は絵を描くことが好きだったのに、高学年になると苦手意識を持つ子供が増え始める。特に似顔絵は、がんばって描いてもあまり似ていなかったりして、次第に敬遠するようになる。また、小中学校の教育では、絵を上手に描く技術や表現方法などについてはほとんど触れない。その理由として、これらの技術や教育方法は漠然としていて、まだ確立されていないことが挙げられる。デッサンなどにおいて人物や物体の形状を表現する方法は、いくつか提案されている。2), 3) しかし、これらの多くが個人の経験やアンケートなどの主観で述べられているため、生体情報を用いた客観的評価によるその根拠が必要とされている。現在、この生体情報として、視線、鼻部表面温度、脳波、心拍、筋電位などが脚光を浴びている。
「目は口ほどに物を言う」ということわざにもあるように、ここでは、アイトラッキング(注視線計測)を用いて、被験者の似顔絵描画時の特徴量を抽出し、似顔絵の上手な人と下手な人の違いを客観評価した研究事例を紹介する。4) アイトラッキングは、赤外線を用いて非拘束・非接触の状態で、被験者の注視線座標を獲得するため、肉体・精神的負担が生じない。5) 似顔絵描画中に獲得した注視線情報と、完成した似顔絵に対するアンケート評価を用いて、似顔絵を上手に描くためのスキルおよび特徴量を抽出し、その根拠を数値化・可視化する。

3 実験方法

この研究では、絵の上手・下手を問わず、40名の被験者(20~40歳、男性22名、女性18名)に似顔絵を描いてもらい、そのときの視線の動きを計測した。図1に実験の様子を示す。被験者に対して事務作業をする照明光下、タッチパネルセンサー内蔵の21.5型液晶モニター(IO DATA, LCD AD221FB-T)の画面左側半分に少女の顔を表示する。画面右側半分に表示されたAz Painter(Free software)のキャンバス上に、静電式タッチペンを用いて、被験者に似顔絵を描いてもらう。似顔絵描画時間は6分30秒から7分30秒とした。似顔絵描画時の被験者の視線の動きを、アイトラッキングシステム(Tobii, X1-light)を用いて、サンプリング周波数30Hzで計測する。獲得した注視線データを、Gaze plot(60ms以上の停留点を順にプロットし、その間を直線で補間した図)とHeat map(60ms以上の停留点を総和して、その時間の長さを色温度で示した図)にして比較・検討した。

図1 実験の様子

4 評価・分析方法

被験者40名にそれぞれ似顔絵を描いてもらい、8名の専門家による評価アンケートより、それらを上手、下手に分類する。それぞれ40作品を「上手-下手」「似ている-似ていない」の7段階尺度で評価してもらった。
ここでは、似顔絵が上手であることの定義を、「顔のバランスが取れていて顔として成立し、かつ描画対象モデルの特徴を捕えて似ていること」とした。上手ならば7点、下手ならば1点、似ているならば7点、似ていないならば1点とし、両項目の点数を合計した8名の総得点によって、高評価群の似顔絵10作品と、低評価群の似顔絵10作品を決定した。 似顔絵を描いたときの対象モデルと描画キャンバス上の似顔絵間の1分あたりの平行な視線移動回数および描画視線率(描画時間全体の視線移動に対する有効な視線移動の割合)を比較する。またHeat mapにおいて、描画対象モデル側の注視時間およびその部位を比較し、描画時の集中レベルを推定する。
Gaze plotにおいて、視線の移動距離が300dot(75mm)以上の線で、かつ線の傾きaが-0.3 < a < 0.3の範囲にあるものを、対象モデルと描画キャンバス上の似顔絵間の視線移動に使ったものとした。その個数Mを、視線の移動距離が100dot(25mm)以上の線の本数Aで割ったものを、描画視線率Cとし、作業時に用いた全体の視線の動きに対して、対象モデルを正確に描画するために使用した視線の動きの割合とした。6)

次回に続く-

参考文献

1) ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)が切り開く新しいニューロテクノロジー,吉峰俊樹,平田雅之,栁沢琢史,貴島晴彦,脳神経外科ジャーナル,Vol.25, No.12, pp.964-972, (2016).

2) 誰でもすぐに絵が上手くなる 魔法の塗り絵 Vol.1,小野日佐子,神宮館, (2014).

3) “Drawing on the Right Side of the Brain: The Definitive, 4th Edition”, Betty Edwards, Penguin Group Inc., (2012).

4) 注視点計測による似顔絵を上手に描くための特徴量抽出,大西厳,柏尾俊樹,依藤周,河内綾香,正司強,日本感性工学会論文誌, Vol.15, No.4, pp.553-561, (2016).

5) “Examination of Musical Effects on Gaze Patterns in Portrait Drawing”, Gen ONISHI, Ayaka KOCHI, Hiroshi ARAO, et.al., Research and Surveys, Innovative Computing, Information and Control, Part B: Applications, Vol.9, No.6, pp.501-507, (2018).

6) アイトラッキングによるレモン芳香効果についての検討,依藤周,浅雛翔太,八木冴香,大西厳,第16回日本感性工学会大会,on USB-Memory, (2014).

【著者紹介】
大西 厳 (おおにし げん)
博士(工学)
広島国際大学 健康科学部 心理学科 准教授

■略歴
1996年 大阪電気通信大学大学院 修士課程 修了
1996年 徳山高専 機械電気工学科 助手
2004年 長岡技術科学大学 技術開発センター 講師
2006年 広島国際大学 心理科学部 感性デザイン学科 講師
2013年 広島国際大学 心理科学部 臨床心理学科 准教授
2020年 広島国際大学 健康科学部 心理学科 准教授
現在に至る。

■専門分野
心理・感性計測、感性工学、生体情報計測、知能情報工学

感性アナライザによる感性計測(1)

(株)電通サイエンスジャム
太田 英作

1. はじめに

 人の気持ちの評価すなわち感性評価は消費者ニーズの吸い上げや製品の良し悪しを測るために従来から行われていた。しかし,その主流であるアンケートやインタビューの手法にはリアルタイム性に課題があった。例えば動画コンテンツのような被験者の気持ちが頻繁に変動する対象では,どの場面で面白く感じた,感じなかった等のシーン別の評価が重要となる。このシーン別の評価でアンケートやインタビューを逐次行うと被験者の負担が増えてしまい,本来の変化が取得できない可能性が高くなってしまう。逆に最後にまとめて行うと人間の記憶特性として後半のシーンに重みがかかることになる。
この問題に対して我々は脳波を用いた感性のリアルタイム評価を行い,1秒ごとに感情を数値化する方法を提案し,感性アナライザというシステムを作成した(感性アナライザ ©電通サイエンスジャム)。これにより,動画コンテンツをはじめとした様々な場面で応用している1)-3)。これらは,感性・感情という数値では評価しづらい指標の数値化を行うことができたことで,興味がある度合いやストレスが高い度合い,集中できる度合いや快適に感じる度合いなど被験者の個人的・意図的な主観の評価に縛られず,客観的な感性・感情評価を行うことができている。本稿ではこれらの指標の脳波からの計測方法と指標を使った活用事例について紹介する。

2. 脳波計測

2.1 脳波の利用

 脳波は脳の活動により生じる電気信号を脳波計で記録したものである。我々は人の感性・感情を感性評価として数値化する際に,この脳内の活動と関連した脳波を利用した。脳内の活動を計測する方法には,脳波以外にも磁気共鳴機能画像法(fMRI)・陽電子放出断層撮影法(PET)・近赤外分光法(NIRS)など様々な方法がある。また,脳の活動の他に,表情や行動,心拍・脈拍・呼吸などの生体信号から感性を評価しようとする研究も行われている。本節では感性評価を行う上で脳波の有用性について述べる。
 これらの計測方法の中で,脳波は非侵襲でありながら高い時間分解能にて時系列変化を計測できる優位性がある。脳活動を細かい時間変化の中で観察できると,その結果から実際に体験している状態の感性を導けることに繋がる。一方,脳波はノイズの干渉を受けやすいという欠点もある。しかし,近年では機器の小型化や計測技術の向上により,小型の脳波計(図1)でもノイズ混入を低減し,従来の大掛かりな装置や準備が必要であった脳波計に近いレベルでの計測が可能になっている。こうした小型脳波計の発展により,被験者の負担の低減と自然な環境に近い被験者の脳活動を計測することができる。これまで病院や研究室等でしか計測できなかった人の脳波が,定量的な感性として日常生活の中で観測可能になってきたのである。

図1 小型脳波計

2.2 ノイズ問題

 脳波を計測する際の非侵襲性には,被験者に対する負担が小さく安全性が高い反面,脳波以外の情報も混合されるという課題がある。具体的には,電極を頭皮上に設置した計測となるため,皮膚上を伝わってくる筋電や発汗の影響を受ける。例えば被験者が瞬きを行うと,脳波として計測している信号の中に瞬きの筋電による緩やかな低周波成分が混入してしまう。これを未処理で評価すると,感性に直接関与しない瞬きの有無によって評価が影響されるため,ノイズとして除外する必要がある。脳波には上記のような瞬きの筋電だけでなく,様々な要因でノイズが混入する。それらのノイズを除去することで脳波として必要な特徴量が抽出でき,感性と紐づけることが可能になる。これらのノイズに対処するために注意すべきことについて次節で説明する。


2.3 生体ノイズ

 脳波計測時に混入する生体現象に由来するノイズが生体ノイズである。内容として体動や発汗によって電極の接触状態が変化して発生するノイズと瞬き,眼球運動,筋電のような脳波以外の生体信号が重畳することによるノイズに大別される。前者はドリフト(基線変動)と呼ばれる低周波成分として現れることが多く,後者は要因にも依るが高い電位が発生して高振幅の波形が混入してしまう。これらの生体ノイズに関しては発生源を減らす事が重要であるため,被験者には計測したい対象以外のストレスが負荷されないよう十分なインフォームド・コンセントを行うように注意する。計測に際してどうしても発生する体動や発汗に対しては導電性のジェルを電極に塗布することでノイズを低減することが可能である。また,これらの注意を行った上でも混入してしまうノイズに関しては,バンドパスフィルタや独立成分分析等を用いて除去を行う。


2.4 環境ノイズ

 生体現象に関係なく混入してしまうノイズが環境ノイズである。計測する環境に由来するノイズとなるが,交流の電源を持つ機器による干渉とカーテンの揺れなどで発生する静電気の干渉に大別される。前者はハム・ノイズとも呼ばれ商用交流の50/60Hz周期のスパイク状の波形として現れ,後者は静電界の変化により主にドリフトが観測される。環境ノイズの大部分はシールドルーム内で計測することで回避できるが,評価対象を実現するためシールドルーム外で計測することも多い。計測に際しては不要な電子機器は遠ざけコンセントは抜くことに注意する。対策を行った後に混入するノイズに関しては,ハムフィルタ等を用いて除去する。


3. 感性計測


3.1 感性アナライザ

 感性アナライザは,脳波からリアルタイムに感性を数値化するアプリケーションである。このアプリケーションはタブレット端末上で動作するよう設計されており,開発にあたっては慶應義塾大学満倉研究室で培ってきた技術に基づき,株式会社電通サイエンスジャムとの共同開発により完成した。これまでの脳波計測には,非常に高価な装置と大掛かりな準備が必要であり,取得した脳波に対しても測定者が周波数解析を都度実施して意味付けをする必要があった。周波数解析においては解析者がα波,β波,θ波の増減等を把握して,先行研究との比較から意味を見つけ出す手順が必要となり,時間やコストの課題があった。しかし,感性アナライザを利用すると1秒毎に脳波解析と意味付けが行われるため,リアルタイムに感性を数値として取得することが可能となる。
 感性アナライザの特徴であるリアルタイム性は時系列に感性の評価を行う際に,特に効果を発揮する。前述した動画コンテンツの評価を例に挙げてみる。一般的なアンケート用紙を用いた評価では,視聴者が最後まで覚えているシーンの感想しか得られずに後半に偏った結果となる可能性が高い。ここで感性アナライザを使用すると1秒毎に記録できているため,全ての区間に亘って評価可能となる。

3.2 感性指標推定

 脳波を用いて感性のリアルタイム推定を行う技術には,慶應義塾大学満倉研究室のデータベースが用いられている。データベースには約17年間に亘り特定の環境下で取得された脳波データが感性指標と1対1で対応づけられており,これを用いて感性を推定するアルゴリズムを構築している。
 感性アナライザには脳波から感性を推定する感性アルゴリズム(図2)が組み込まれている。感性アルゴリズムはフィルタリング手法,特徴抽出手法,パターン認識手法によって構成される。本アルゴリズムではまず,フィルタリングにより脳波データから先に示した体動や瞬き等のアーチファクトを除去し,その後フィルタリングされたデータをパワースペクトル等の特徴量に変換する。変換された特徴量はパターン認識手法により,脳波データベースで定義付けられた感性指標値へ変換される。
 パターン認識手法では,脳波データベースを用いて脳波データと感性指標値の関係性を解析しており,アルゴリズムの構築までは計算サーバー等を用いる。アルゴリズムの構築が完了した後,タブレット端末上に実装することでリアルタイム処理を可能にしている。

図2 感性アルゴリズムの概念図

次回に続く-

参考文献

1) 満倉,“脳波による感性アナライジング”,電気学会誌, 136巻10号,pp。687-690 (2016)

2) 満倉,“生体信号のユビキタスセンシングと意味抽出および実利用化“,計測と制御,Vol 53, No。7 (2014)

3) 満倉靖恵, 関研一, 井上全人, 森田小百合, 西村秀和, “感性をリアルタイムで測り製品に生かす試み(“デライト”を科学する)”, 設計工学, Vol。 52, No。 7, pp。 434-438, 2017年7月



【著者紹介】
太田 英作(おおた えいさく)
株式会社電通サイエンスジャム 主席研究員

■略歴
2002年4月~2017年3月 株式会社NTTデータMSE
2017年4月~現在    株式会社電通サイエンスジャム

電柱を活用した水害対策サービス実証試験の実施

 千葉県佐倉市は、昨年3月17日付けで、東電タウンプランニング(株)と「洪水・浸水対策支援サービスの実証試験に関する協定」を締結し、本年7月6日より実証試験を開始したことを発表した。

 昨年10月25日の大雨では、市内各所で洪水、浸水被害が発生し、道路網も寸断されたため、被害状況の把握が困難な状況となった。そこで、実証試験により、冠水データの収集と、それを基にした情報配信による防災対策の有効性を検証することとした。

 本実証試験では、小型で軽量な浸水センサを観測面に設置し、電柱上に設置したRFルーターを介してクラウド上でセンサ情報を一元集約する。集約された浸水情報はリアルタイムで把握することができるという。

 今後、浸水センサで感知した道路冠水を、自動的に現地のLED表示板で通行車両に注意喚起する実証試験も行う予定とのこと。

ニュースリリースサイト(salkura city):http://www.city.sakura.lg.jp/0000027244.html

埼玉工業大学、ITbookと水陸両用無人運転・運航技術を共同開発

埼玉工業大学(埼工大)はITbookテクノロジー(株)と水陸両用バスの自動運転・運航システム構築に関する共同開発を開始すると発表した。

これは、公益財団法人日本財団の「無人運航船の実証実験にかかる技術開発共同プログラム」に、ITbookホールディングスが代表となる「水陸両用無人運転技術の開発 ~八ッ場スマートモビリティ~」が採択され、そのプロジェクトに、長野原町、エイビット、日本水陸両用車協会と共にコンソーシアムのメンバーとして参画するもの。
※画像:八ッ場ダム水陸両用バス(長野原町所有)

埼工大は同プロジェクトにおいて、ITbookテクノロジーとの共同研究契約により、自動運転・運航の水陸両用バスの実験車両兼船舶の開発と、ソフトウェアを設計・開発。この共同研究により、長野原町が導入した水陸両用バスに、自動運転・運航における、離着水・離着桟、水上障害物の回避、遠隔操作技術など機能を構築していく。群馬県の八ッ場あがつま湖(八ッ場ダム)の水陸両用車が地上から入水し、水上を自動航行した後に、上陸して地上に戻るような自動運転・運航を目指す。
研究期間は2年間の予定で、実用化に必要な技術を開発・検証し、5年後の実用化を目指して、無人運航を可能にする技術開発をしていくとのこと。

この共同研究では、埼工大の自動運転バスにも用いられている、ジョイスティックロボカー技術及びオープンソースの自動運転ソフトウェアであるAutoware(*)をベースに、水陸両用バスの自動運転・運航システムを構築する。このシステムを用い、主に次の技術の実証実験を行うという。
(1)離着水・離着桟における位置推定及び自動運航技術
(2)水上障害物検知及び回避のための技術
(3)ローカル5G等を用いた遠隔操作技術

*:「Autoware」はThe Autoware Foundationの商標

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000021794.html

KELGEN SD熱電EH振動センサデバイスKSGD-SV『TPM優秀商品賞 開発賞』を受賞

(株)KELKは、エネルギーハーベスティング(※1)を電源とした、電池レスで動作するKELGEN SD (ケルジェン エスディー) 熱電EH振動センサデバイスKSGD-SVにて、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が主催する「2020年度TPM優秀商品賞 開発賞」を受賞した。
TPM優秀商品賞は、メンテナンス機器に関する新技術の開発を奨励し、メンテナンス技術の進歩を促進するために制定された表彰制度で、KSGD-SVはアイデアと先行性・独創性に優れている商品として『TPM優秀商品賞 開発賞』を受賞したとのこと。

【受賞理由】
・回転機器の排熱を利用した世界初の熱電エネルギーハーベスティング振動センサデバイスである点。
・無線のIoT デバイスにおける電源の問題は、メンテナンスの観点から大きな問題であり、この点から自己発電は大いに期待される技術である。振動モニタリングの応用のほとんどを占める回転機においては、動力損失による発熱は多かれ少なかれ必ず存在するので、温度差が10℃以上あれば動作する本機の熱電EHは適用範囲が広いと考えられる点。
・電池レス、配線レスを実現でき、電池とその交換作業のコストがなくなる点。

【KELGEN SD(ケルジェン エスディー)】
IoTの電源問題を解決するエネルギーハーベスティングにより、電池レスで動作するセンサデバイス。搭載する熱電発電モジュールKELGEN(ケルジェン)による自己発電で温度差(※2)10℃(無風状態)から動作する。振動センサデバイスKSGD-SVの他、熱電対センサデバイスKSGD-ST、アナログ入力デバイスKSGD-SAがある。センシングしたデータを連続監視することで故障予兆検知や日常点検の自動化に利活用できるという。

【KSGD-SV】
KELGEN SD 熱電EH振動センサデバイスKSGD-SV
回転機器に置くだけで、排熱によるKELGEN (ケルジェン)の自己発電で動作し、振動と温度をセンシングし、データを無線送信する。FFT(※3)解析を搭載するKSGD-SV2は振動加速度に加え、速度RMS、オーバオール値などを送信。

※1 エネルギーハーベスティング:Energy Harvesting、環境発電。環境中の微小なエネルギー(熱,光,振動,電波,等)から電力を得る技術。
※2 温度差:KELGEN SD本体部の受熱側の表面温度と周囲温度との温度差。
※3 FFT:Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換。測定した振動を解析して周波数成分に変換するアルゴリズム。

ニュースリリースサイト(KELK):https://www.kelk.co.jp/news/2020/200701.html

北陽電機、移動ロボットの環境認識用測域センサ(LiDAR) 最上位機種発売

北陽電機(株)は、移動ロボットの環境認識に多く利用されている測域センサ(LiDAR) USTシリーズで検出性能と屋外環境性能を向上させた最上位機種UST-30LXを2020年7月に発売する。

省人化対応や自動化による作業効率向上を目的に、いろいろな場面で活躍が始まっている自律移動ロボットにおいて、目の役割を果たすセンサの重要性が高まっている。
自律移動ロボットは周囲の環境を認識しながら地図(マップ)を作り、その地図と自分の位置を把握しながら自律して目的地まで移動(SLAM)することができ。また障害物などを回避する必要がある場合、その周囲の環境認識と障害物を検出するセンサが測域センサ(LiDAR)である。

今回発売するUST-30LXは、従来シリーズと同じ大きさ(寸法W50×D50×H70)のコンパクトサイズでありながら、検出距離を30mと大幅に向上させ、耐外乱光も80,000lx、マルチエコー対応、使用周囲温度-25~50℃、保護構造もIP67(防水)とし、内部構造と信号処理の工夫により今まで以上に汚れにも強くすることで、移動ロボットに必要とされる検出性能と屋外でも使用できる環境性能を満足させるものという。

用途として、物流、工場での搬送ロボット(AMR)、オフィスやパブリックスペースでの活躍が期待されているサービスロボット(案内、警備、配送、清掃ロボットなど)などの環境認識と障害物検出用センサとして活用できるとしている。

ニュースリリースサイト:https://www.atpress.ne.jp/news/216363