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東大IoTメディアラボラトリー、IoT通信の実証実験「LPWA本郷テストベッド」の開設

東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 IoTメディアラボラトリー(以下、IoTメディアラボ)は、IoTの無線通信技術である省電力広域センサネットワークLPWAの実証実験を東京大学の本郷キャンパス工学部2号館内に「LPWA本郷テストベッド」を構築する。LPWA本郷テストベッドを利用した実験・検証に当たっては、横須賀リサーチパーク(YRP) 研究開発推進協会 WSN協議会の協力のもとで実施するとのこと。

近年、各種IoTデバイスからデータを収集する最も有効な通信手段の一つとして、低消費電力かつ長距離無線通信が可能なLPWAの利用が増加している。しかし、LPWAには複数の方式があり、これまで多くのIoT事業者は、複数のLPWAの中からどのLPWAを採用したら良いかを正確に判断したいという要望が少なくなかった。

LPWA本郷テストベッドは、この要望に応えるため、IoT事業者に対し実験を通して、東京都文京区本郷という都市部における個々のLPWAの通信性能(多くのセンサを様々に配置した時の到達距離や通信速度、到達率など)の測定を可能にする。

IoT事業者は、LPWA本郷テストベッドを利用することで、自ら実証実験の環境を構築することなく、低コストかつ短期間に最適なLPWAを選定できるだけでなく、スピーディーな都市部におけるIoT事業のサービス開発につなげることが可能となる。

一般に普及しているWiFi規格は2.4GHzや5GHzの周波数の電波を用いた無線通信であり、データを高速で送れる反面、障害物に弱く通信距離は数十メートルの範囲である。一方、LPWAは障害物に強い900MHz帯の周波数を利用することによって長距離通信が可能で、伝送速度は遅く少量のデータのやりとりに向いた技術と言える。また、LPWAで利用される電波の920MHz帯は免許不要の周波数であり、現在下記のように複数のLPWAの方式が存在し、各々個別にサービスされている。しかし、今後のLPWA利用の増加、センサ数の増加に伴い、同一LPWAはもちろん異なるLPWA間での干渉・混信の発生が想定される。

LPWA本郷テストベッドでは、この問題に対応するため、単一のLPWAはもちろん異種複数のLPWAが同時に利用され、多くのセンサが通信した時にどのような干渉・混信などの現象が発生するかについても検証する。

上記の実験・検証の対象とするLPWA規格としては、LoRaWAN(ローラワン)、Sigfox(シグフォックス)、ELTRES(エルトレス)、ZETA(ゼタ)、IEEE 802.11ah(Wi-Fi Halow)、Wi-SUN(ワイサン)などを想定している。

これまで、YRP研究開発推進協会 WSN協議会は、「横須賀ハイブリッドLPWAテストベッド」を構築し、2018年4月にサービスを開始し、各種LPWAの比較評価を進めてきた。IoTメディアラボは、本協議会と連携し、横須賀の市街地と東京の本郷地域の両地域における実験結果に基づき、検証を進める。

LPWA本郷テストベッドでは、LPWAによるセンサの大量・同時使用による干渉・混信問題の検証に当たっては、TELEC T-245(*1)に規定された各種測定を実施できる設備を用意し、実験参加者が利用できるように整備している。測定機器の一つとして、大型の電波暗箱(*2)を用意し、周辺の電波の影響がない状態で各種測定を行う。電波暗箱による測定は、実際の利用環境における干渉を推定する上で有効であるという。

(*1)TELEC T245: 我が国で無線設備を運用するためには、電波法令の技術基準に適合していることを証明する「技術基準適合証明」が必要です。「技術基準適合証明」は、一般財団法人TELEC(テレコムエンジニアリングセンター)などの登録証明機関により交付されます。920MHz帯の無線設備に対する試験方法・手順については、TELEC T245に詳しく記載されている。

(*2)電波暗箱:シールドボックスとも呼ばれ、外部からの電波ノイズを遮断し、内部の電波の反射がなく、電波を外部に漏洩させないために用いられる実験環境。電波暗箱では、内部を電波吸収体で覆うことによって電波の反射を防ぎ、無響環境を作り出す。電波暗箱を用いることにより、送信周波数偏差、送信アンテナ電力、占有周波数帯幅、隣接チャネル漏洩電力、変調指数、スプリアス発射の強度、副次的に発する電波の強度、信号伝送速度等の精密な測定を行うことが可能になる。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000063297.html

“カバンに入れて持ち歩けるクルマ”『WALKCAR』展示および店頭販売開始

cocoa motors.(株)は、”カバンに入れて持ち歩けるクルマ”「WALKCAR(ウォーカー)」の展示および店頭販売を8月7日(金)より次世代型ショールーム「蔦屋家電+(プラス)」(二子玉川ライズS.C.テラスマーケット)にて開始する。また店頭ではWALKCARに乗って体験することができる(店舗の状況により実施していない場合あり)とのこと。

WALKCAR®️は、13インチノートPCと同等サイズで、重さ2.9kgと超小型軽量の「持ち歩けるクルマ」。最高時速16キロのパワフルな走行性と、自動停止機能を搭載した安全設計の両立を実現。2016年の製品発表​以来、国内・海外の多くのメディアから反響を呼び、世界13カ国から累計約7800台の先行予約が入っている。製品の発表から約4年を経て多くの研究開発・製品改良を重ね、この度ついに正式発売の運びとなった。ノートPC感覚で持ち運べるこのクルマは、既存の交通インフラに依存しない新しい生活スタイルを提供するとしている。

【WALKCAR®️(ウォーカー)概要】
製品名:WALKCAR®️
販売価格:198,000円(税別)
本体重量:2.9kg
大きさ:13inch(ノートPCサイズ)
寸法(縦・横・高さ):215 mm × 346 mm × 74 mm
最高速度:16km/h (スポーツモード時)、10km/h (ノーマルモード時)、6km/h(歩行アシストモード時)
航続距離(1回充電あたり):5km (スポーツモード時)、7km(ノーマルモード時、歩行アシストモード時)
最大登坂能力:10度 (積載重量60kgかつ当社試験環境での値)
満充電にかかる時間:60 分
積載重量:最大80 kg、最小30kg

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000057641.html

既設エレベータ向けに「非接触ボタン」を販売開始

フジテック(株)は、同社製の既設エレベータ向けに、タッチレスでエレベータの操作ができる「非接触ボタン」の販売を8月3日から開始した。
この商品は本年4月から、新設のエレベータ向けに販売してきた「非接触ボタン」を、既設のエレベータ向けに商品化したもの。エレベータのボタンが設置された操作盤の交換 工事を行うことで、既存の建物でもエレベータに非接触ボタンを導入することができるという。


【商品概要】
既設エレベータのかご内と乗場(エレベータホール)の操作盤を、非接触ボタンの付いた操作盤に交換する※1ことでタッチレス操作を実現する。新しい操作盤には、プッシュ式ボタンに非接触ボタンが併設されたハイブリッド型を採用。乗場は各フロアの操作盤をそれぞれ交換する。
なお、交換後のプッシュ式ボタンは抗菌機能付き。これは素材に抗菌性樹脂を練りこんでおり、細菌の増殖を抑制するので安心して使用することができる。

※1 利用者の要望がある場合、非接触ボタンのみの操作盤を追加で設置することができる。また、かご内のインターホン呼びボタンと閉ボタンはプッシュ式を採用する。

【販売概要】
・標準工期:2日
・販売価格:個別見積もりによる
・対象機種:2005年以降に設置した同社標準型 エレベータ(定員15名以下)※2かつ、停止数12フロア以下
・発売日 :2020年8月3日

※2 2005年より前に設置したエレベータは、本体のリニューアルと合わせて、非接触ボタンに変更することが可能。また、2005年以降に設置した定員15名を超える同社エレベータも、非接触ボタンへ変更できる場合がある。詳細はお問い合わせのこと。

ニュースリリースサイト(FUJITEC):https://www.fujitec.co.jp/announcement/5994

体動センサが大阪大学の新型コロナウイルス関連研究に採用

住友理工(株)は、心拍や呼吸など生体情報(バイタルデータ)を同時に計測できる診断用機器「体動センサ」(一般医療機器クラスI)を開発し、昨年より医療機関や企業向けに供給してきた。此度、同社が体動センサの供給を通じて参画する、大阪大学の「呼吸安定性時間(Respiratory Stability Time:RST)を用いたCOVID-19患者に対する重症化指標に関する研究開発」(研究開発代表者:大阪大学澤芳樹教授)が、日本医療研究開発機構(AMED)が公募する「ウイルス等感染症対策技術開発事業」に採択されたことを発表した。

大阪大学をはじめとする研究開発チームは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の重症患者が呼吸器不全に陥る状況を踏まえ、重症化前には呼吸様式の異常が始まっていると考えられることに着目。睡眠時の呼吸状態からRSTを算出することで、心不全や呼吸不全の予兆を早期に察知するシステムを開発してきた。

今回、このシステムに、柔軟で薄く、高精度な同社の体動センサが採用された。患者に大きな負担を生じさせることなく、迅速かつ効果的な医療の提供が可能になると期待されている。さらに、新型コロナウイルスはもちろん、感染リスクが高く、接触を極力避ける必要があるパンデミックにおいて、オンラインで常時監視することで、早期の治療介入による重症化の低減だけでなく、医療従事者の感染リスク回避にも大いに寄与するものと考えているとのこと。

また、大阪大学はこれに先行して昨年9月より、在宅で心不全患者のRSTを監視する遠隔モニタリングの治験を開始しており、ここでも同社の体動センサが採用されている。

ニュースリリースサイト(sumitomoriko):
https://www.sumitomoriko.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/08/n51910535.pdf

生産ライン組込み用の高精度計量センサ「AD-4212Lシリーズ」を新発売

(株)エー・アンド・デーは、生産ライン組込み用の高精度計量センサ「AD-4212Lシリーズ」を新発売したと発表した。

【1.高精度計量センサ「AD-4212Lシリーズ」の主な特長】

●高速応答:約0.3秒(0~5g/良好環境、最適フィルタ設定時)
●ロードセル方式のコンパクトな計量部:30mm幅
●1,000回/秒の高速サンプリング
●振動に強い2系統のハイパフォーマンスデジタルフィルタを搭載
●表示部は制御盤への組込みに最適なDINレール装着タイプ
●外部入出力はRS-485(ModbusRTU)、コントロールI/O(入力6点、出力8点)
●計量部に過負荷防止ストッパー装備●計量部の防塵・防滴等級IP42

【2.高精度計量センサ「AD-4212Lシリーズ」の主な用途】

(1)塗布重量のチェック
(2)ディスペンサーの吐出量のチェック
(3)液体充てん装置に組込み、充てん量をチェック
(4)部品生産ラインに組込み、製品重量をチェック

【発売日】
 2020年7月27日

ニュースリリースサイト(A&D):
https://www.aandd.co.jp/pdf_storage/whatsnew/2020/0805_ad4212l/newsrelease_0805_ad4212l.pdf

ドローン向けOEMデュアルセンサモジュール「FLIR Hadron」取り扱い開始

SkyLink Japan((株)WorldLink & Company)は、FLIR Systems(フリアーシステムズ)社の正規代理店として、ドローン開発に向けたOEM用デュアルセンサーモジュール「FLIR Hadron」の取り扱いを開始する。
この製品は12メガピクセルの可視光カメラと、最高60Hzのフレームレートの赤外線カメラ「Boson」が、非常に軽量・コンパクトに一体設計されている。 Hadronは米陸軍向けに設計された信頼性があり、機動性が求められる災害・救援時の対象物の早期認識や、点検分野での熱異常箇所発見の用途など、日本国内でもドローン開発の重要な要素になることが期待されるという。

■FLIR Hadronの特長
●統合された可視光/赤外線モジュール
飛行中の熱画像とHDカラー画像を表示。検査など暗所で対象を発見するのに最適。
●コンパクト設計
小型クラスの機体用に設計された高解像度の出力が可能。コンパクト設計のため機体への柔軟な配置ができ、より長い飛行時間を維持できる。
●市場投入までの時間短縮
ドローンメーカーはこのソリューションにより、研究開発のコストや時間を短縮可能。

■主な仕様
・赤外線カメラセンサー:Boson 320×256 pixels/60Hz or 30Hz
・可視光カメラセンサー:Sony 4056×3040 pixels(12MP)/60Hz
・サイズ:24 x 45 x 36 mm
・重量:42.8g
・動作環境温度:−20℃ 〜+60℃
・防水防塵性能:IP53

さらに詳しい情報、価格・納期等につきましてはSkyLink Japanまでお問合せのこと。

ニュースリリースサイト: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000034283.html

アプトポッドとテラデータ、自動車開発向けDXソリューション提供で協業

(株)アプトポッドは日本テラデータ(株)と自動車分野で加速するデジタルトランスフォーメーション(以下DX)に向け協業することを発表した。

アプトポッドとテラデータは、アプトポッドが開発するあらゆる産業シーンのDXに強力な機能を提供する高速IoTプラットフォーム「intdash(イントダッシュ)」とテラデータが提供する次世代アナリティクス・プラットフォームTeradata Vantage(以下Vantage)を連携し、産業データ収集から高度な分析処理までをワンストップで実現するデジタルソリューション(以下、本ソリューション)を共同開発、提供するとのこと。

本ソリューションではintdashが提供する強力なデータ収集機能とVantageが提供する大規模で複雑なアナリティクス環境の管理に、自動化やテラデータ独自の分析ノウハウを連携することで、データの収集から分析までの一連のワークフローに“遠隔化・自動化”などの進化をもたらす。これにより、従来のプロセスに比べ“時間”、“コスト”、“リソース”などのあらゆる軸でDXによる競争力強化を実現するという。

<本ソリューション概要>-Vプロセスにおけるデータ収集、分析の自動化、効率化
自動車開発では、モデル(仕様)をベースにした試作車による検証で構成される開発工程である、モデルベース開発が採用されている。モデルベース開発はロボット開発や医療機器開発などの先端分野でも活用が期待されている。モデルベース開発の工程においては、シミュレーションデータとリアルデータを用いた検証や分析が必要とされるが、本ソリューションでは、特に試験車両でのデータ収集・管理・分析といった工程を効率的に行うことができるクラウドベースの環境を提供し、開発工程の圧倒的な効率化を実現することで、自動車メーカー様の開発競争力の向上への貢献を目指すとしている。

[主な機能]
・試験車両におけるデータ収集の遠隔リアルタイム化、自動化
・時系列データ同期処理の自動化
・Visual M2Mによる時系列データの可視化(リアルタイム、オンデマンド)
・収集データのクレンジング処理
・時系列データの空間マッピング
・各種分析処理、関数計算処理の自動化
・分析データの可視化

ニュースリリースサイト(aoptpod):https://www.aptpod.co.jp/news/news/aptpod-teradata

マイクロ波ドップラーセンサを用いた非接触生体計測技術(1)

神戸大学大学院
システム情報学研究科
准教授 和泉 慎太郎

1.はじめに

近年、高血圧や糖尿病・肥満等の生活習慣病が増加している。これらの生活習慣病は動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞等の心血管疾患の原因となる。心血管疾患はすべての年齢層において死因の上位に含まれており、また、要介護の主原因ともなっている。従って、生活習慣の改善や心血管疾患の早期発見は健康寿命の延伸に不可欠であり、少子高齢化社会の重要な社会課題である医療費の抑制にも貢献する。そのための手段として、ウェアラブルセンサをはじめとしたさまざまな生体計測デバイスを用いた常時モニタリングが注目されている。 日常生活下において生体信号の常時モニタリングを実現するためにはユーザビリティの向上が大きな課題である。長期間装着するデバイスは小型かつ軽量でなければならないが、バッテリ容量が限られるため消費電力の削減が求められる。また、日常生活下では体動をはじめとした様々なノイズへの対策も必要となる。皮膚に電極を接触させる必要のあるセンサでは、皮膚のかぶれや不快感が問題となる。これらの課題はトレードオフの関係にあり、デバイスとアルゴリズムの協調設計により解決する必要がある。
本稿では心拍の計測に着目し、ユーザビリティの課題を解決する非接触心拍計測技術について紹介する。

2.心拍の計測

心拍の変動を解析することで、自律神経系の働きの評価やストレスモニタリング、心疾患のスクリーニングにつながる指標を得ることができる。これまでにさまざまな心拍計測手法が提案されている。

2.1 心電図

心臓は心筋細胞の電気的活動によって収縮と拡張を繰り返し、血液を体中に送り出している。心筋の電気的活動は右心房にある洞結節から始まり、房室結節を経て心室へと伝わる。心筋は脱分極と再分極を繰り返す。図1に示す心電図(ECG: Electrocardiograph)はこの心筋細胞の電気的な活動を記録したものである。

図1 心電図波形の例

心筋の電気的興奮によって、体表面に電位分布が現れることが知られている1)(図2)。この電位の時間変化を体表面に貼り付けた電極で計測したものが心電図(図1)である。体表面に電極を接触させる必要があり、最も高精度な心拍情報が得られるが、電極を皮膚に直接触れさせる必要があるため長期間の計測では使用者への負担が大きい。ジェル電極を用いるのが一般的であるが、乾燥電極も開発されている。

図2 シミュレータ(ECGSIM)による体表面の電位分布例

2.2 容量結合型心電図

皮膚に電極を直接接触させる必要があるという心電図の欠点を解消する手法として、容量結合型心電図が提案されている2)。これは電極と皮膚表面との間に衣服等の絶縁体が挟まった状態を前提とした心電図計測手法である。図3はその等価回路を示している。この構成を実現するためには1GΩ以上の入力インピーダンスが必要であり、ハムノイズ等の影響を強く受ける。また、CE が変動すると大きなノイズが計測信号に現れるため体動ノイズ耐性の低さもこの手法の課題である。

図3 容量結合型心電図

2.3 光電式容積脈波

心臓の収縮により血液が動脈に拍出される際に、血管内に生じる圧力の変化が末梢方向へ伝わる波動を脈波と呼ぶ3)。時間軸における脈波の概形を図4に示す。血管内の圧力変化を計測したものを圧脈波、血管の容積変化を計測したものを容積脈波と呼ぶ。また、脈波を1階微分した波形は速度脈波、2階微分した波形は加速度脈波と呼ぶ。

図4 容積脈波の波形例

侵襲度の低い脈波の計測方法として、光電式容積脈波法(PPG: Photo Plethysmography)が広く用いられている。PPGは、発光素子であるLEDと受光素子であるフォトダイオード(PD)を用いて脈波を計測する手法である(図5)。LEDにより光を体表面から血管を流れる血液に向けて照射し、体組織に吸収されずに残った光をPDによって受け取り、PDの出力電流を電圧に変換・増幅する4)。血液中のヘモグロビンは光の波長によって吸収率が異なるが5)、ウェアラブルセンサでは緑色光がよく用いられる。PPGではLEDを点灯させながら脈波計測を行うため、消費電力が大きいという課題がある。

図5 PPGによる脈波の計測

2.4 動画像

非接触でPPGと同様に脈波を計測する手法として、動画像を用いた方法が提案されている6)。カメラの撮像素子は被写体で反射した光の強度をRGBの輝度値として記録する。この情報から、前述した血液中のヘモグロビンが高い吸光係数を示す緑色の輝度値の変化を抽出することで、相対的な血流量の変化を計測することができる。この手法は、非接触で計測できるという利点があるが、体動ノイズと環境光の変化に弱いという課題がある。カメラを用いることと、動画像に対する信号処理の演算量が多くなるため、消費電力が大きい点も課題である。

2.5 圧脈波と体表面の振動

心臓の拍動に合わせて、体表面には脈波と相関のある振動が現れる。これを圧力センサや電波を用いて計測することでも同様の情報が得られる。例えば、圧電素子を手首の撓骨動脈近傍等の動脈に近い皮膚表面に貼り付けることで、脈動による血管壁の振動が体組織を通して皮膚表面に現れた圧脈波を計測できる(図6)。圧電素子を用いる方法は低消費電力に実現することができるが、動脈が皮膚に近い位置にある部位に装着位置が限定されるという課題がある。また、皮膚との接触状態の変化や、体動によるノイズに弱い点が実用上の問題となる。胸部に加速度センサを装着し、心臓の拍動による振動を計測する手法(BCG: Ballistocardiograph7))もあるが、圧電素子と同様の課題がある。

図6 圧脈波の計測

電波を用いることで、体表面の振動を非接触に計測することができる。人体とアンテナの結合の変化やドップラー効果を用いて、心臓の拍動により体表面に生じる微小な変位を読み取り、心拍を抽出する。特に、マイクロ波ドップラーセンサのように高い周波数を用いることで、心拍成分を高精度に計測できる(図7)。この手法も、動画像を用いる方法と同様に非接触で計測できるという利点があるが、体動ノイズと周辺動体によるノイズへの対策が課題である。消費電力はカメラほど大きくはないが、数十mAの電流を消費する。

図7 マイクロ波ドップラーセンサを用いた脈波の計測

2.6 心拍計測手法のまとめ

心拍計測手法を比較すると、動画像とマイクロ波ドップラーセンサを用いる手法は完全に非接触、非拘束での計測が可能である。近年はユーザビリティの観点からこれらの非接触手法が着目されている。ただし、特に体動ノイズに対する耐性が低いという課題がある。また、消費電力も大きい。動画像と比較すると、プライバシー面や消費電力面でマイクロ波ドップラーセンサを用いた方法に利点がある。

次回に続く-

参考文献

1) Sum-Che Man, Arie C. Maan, Martin J. Schalij, Cees A, Swenne, “Vectorcardiographic diagnostic & prognostic information derived from the 12‐lead electrocardiogram: Historical review and clinical perspective,” Journal of Electrocardiology, vol. 48, pp. 463-475, 2016

2) T. Matsuda , M. Makikawa, “ECG monitoring of a car driver using capacitively-coupled electrodes,” Proc. of IEEE EMBC, pp. 1315-1318, 2008.

3) 嶋津秀昭ほか、”臨床検査学講座 医用工学概論、”医歯薬出版株式会社、pp.203-204, 2015.

4) K. Watanabe, S. Izumi, K. Sasai, Y. Yano, H. Kawaguchi, M. Yoshimoto, “Low-Noise Photoplethysmography Sensor Using Correlated Double Sampling for Heartbeat Interval Acquisition,” IEEE Transactions on Biomedical Circuits and Systems, vol. 13, no. 6, pp. 1552-1562, Dec. 2019.

5) Scott Prahl, Optical Absorption of Hemoglobin、https://omlc.org/spectra/hemoglobin/ (Accessed 2020/07/13)

6) D. Shao, Y. Yang, C. Liu, F. Tsow, H. Yu and N. Tao, “Noncontact Monitoring Breathing Pattern, Exhalation Flow Rate and Pulse Transit Time,” IEEE Transactions on Biomedical Engineering, vol. 61, no. 11, pp. 2760-2767, Nov. 2014,

7) K. Tavakolian, F.M.Zadeh, Y. Chuo, A. Vaseghi, and B. Kaminska, “Development of a novel contactless mechanocardiograph device,” Int J Telemed Appl. 2008:436870.

【著者紹介】
和泉 慎太郎(いずみ しんたろう)
神戸大学 大学院システム情報学研究科 准教授

■略歴
2011年 神戸大学大学院工学研究科博士後期課程修了 博士(工学)

2009年 日本学術振興会 特別研究員
2011年 神戸大学先端融合研究環 助教
2018年 大阪大学産業科学研究所 特任准教授(常勤)
2019年 神戸大学大学院システム情報学研究科 准教授

液体金属を用いた伸びるバイタル検出センサの開発(1)

横浜国立大学 工学研究院
准教授 太田 裕貴

1. 背景

近年、数多くのフレキシブルセンサ及びシステムが報告されている。特に、フレキシブルデバイスの一番の利用方法として期待されていることの一つが、ウェアラブルデバイスとしての利用である。現在までに、Electric skinなどフレキシブルセンサを用いたウェアラブルデバイスが数多く提案されている。しかしながら、肌に密着したウェアラブルデバイスを考慮したうえで、必要不可欠な特性の一つはストレッチャビリティであると考えられる。そのストレッチャビリティを克服するために、Waver状の電極を用いたシステムなどがこれまでに提案されている。その中の一つが、究極のフレキシビリティとストレッチャビリティを持つガリウム系液体金属(Galinstan)を用いたセンサとシステムである。このようなelectronicsは、従来のSolid-state electronicsを超えたLiquid-state electronicsとなると考えている。本論では、これまで、我々の研究室で開発してきた液体金属による伸縮可能なセンサと加工及びシステム開発に関して論ずる。

2. 加工方法

デバイスを構築するためにリソグラフィ及び3次元プリンティングによるマイクロ流路を元に電極形成を行った(図1, 2)1,2。実際にはフォトリソグラフィ技術及び3次元プリンティングにより流路を基板内に作製し、その流路内に電極にあたる液体金属を導入することでデバイスを構築する。フォトリソグラフィを用いれば数µmレベルでの配線構造を作製することが可能である。ただし、液体金属を流路形状に注入しているため流体抵抗が発生し、過度に細く長い電極を作製することは困難である。一方、3次元プリンティングによる電極作製を利用することで容易に3次元回路を作製することが可能である。

通常、薄膜を用いた回路では層ごとに回路を作製し、アライメントを行いVIA(Vertical Interconnect Access)を形成するという工程が必要である。液体金属の場合は注入することだけで3次元の回路を作製することが可能となる。3次元プリンティングの精度に関してはまだ改善する必要があるが、非常に強力な加工ツールになる。基材としてPDMS(ポリジメチルシロキサン)やPU(ポリウレタン)が使用可能である。我々の研究室では、以上のようなマイクロ流体を利用することでゲルの中に配線しかつ3次元のコイル形状を構築することに成功している(図3)3。このように、液体金属を利用し最適な加工方法を選択することで自由自在に電極配線を行うことが可能である。

図1:リソグラフィを用いたセンサの構築方法。
Copyright © 2014 Springer Nature
図2:3次元プリンティングを用いたセンサの構築方法。
Copyright © 2016 Wiley
図3:液体金属とハイドロゲルを用いたコイル形状の液体金属配線の作製とコイルを利用したアクチュエータの作製。
i)液体金属コイル、ii) アクチュエータの動作部分、iii) 液体金属を用いたゲルアクチュエータ
Copyright © 2020 Wiley

3. センサ

3.1 圧力センサ

PDMS内に作成した2つのマイクロ流路内にGalinstanを注入することで、圧力センサを開発している(図4)4。センサには、中心部に圧力が加わると中心部の引張と、外縁部の圧縮が作用する。その結果、ホイートストンブリッジ回路構造を用いることで圧力を検出できる。作製した圧力センサを対象の手首に装着すれば心拍を計測できる(図5)。更に、我々は図4の小型の圧力センサをPDMSで作成したグローブ内に埋め込むことで図6のような圧力グローブを実現した。実際に、果物をつまんだ時に、その圧力を検出できる(図6)。

図4:液体金属による圧力センサ。
a) 実際に作製したデバイス、b, c) デバイス設計とそのメカニズム、d, e) シミュレーション
Copyright © 2017 Wiley
図5:圧力センサを利用した脈拍センサ。
a-c)圧力センサの装着方法、d) 実際の圧力センサ、e) 計測した脈拍の推移、f, e)脈拍検出
Copyright © 2017 Wiley
図6:果物を握った時の圧力の変動
Copyright © 2017 Wiley

3.2 温度・湿度・光センサ

イオン液体をセンシング材料として用いることで温度・湿度センサを開発した(図7)1。実際の構成は三つのマイクロ流路の二つに液体金属による配線を施し、残りの一つの流路にイオン液体を導入する。本研究において、温度センシングの実験では1-ethyl-3-methylimidazolium trifluoromethanesulfonate ([EMIM][Otf])を用い、湿度の実験では[EMIM][Otf]、1-butyl-3-methyli-midazoliumhexafluorophosphate([BMIM][PF6])と1-butyl-1-methylpyrrolidinium bis(trifluoromethylsulfonyl) -imide([BMPYR][NTf2])を用いた。実際には電極間のイオン液体の電気特性をPotentiostatを用いて、Nyquist plotを作成し、そのプロットから、Constant phase elementを持つコンデンサと抵抗からなる等価回路を想定した。その等価回路を用いてコンダクタンス及びキャパシタンスを計測することで各外乱(温度、湿度)のセンシングを行った。

本センサの測定感度は通常の金属の温度・湿度センサに比べて約10倍の感度があり、超高感度センサを確立することができた。更に、アゾ系のイオン液体を用いることで光に対して感受性を有する液体光センサを実現した5。このイオン液体に有機溶媒を混合することで、センシングによる持続時間を変更することが可能である。この技術を用いることで光メモリも実現することができた。

図7:液体センサを変形した時のセンサの状態。
a-d)液体センサを伸縮した時の状態、e-l)の各変形の差異のセンサの様子
Copyright © 2014 Springer Nature

次回に続く-

参考文献

1) H. Ota et al., “Highly-deformable liquid-state heterojunction sensors.”, Nature Communications, 5(5032), pp. 1-9, 2014.

2) H. Ota et al., “Application of 3D printing for smart objects with embedded electronic sensors and systems.” Advanced Materials Technologies, 1(1), 1-8, 2017.

3) K. Matsubara, et al., “Hydrogel actuator with a built-in stimulator using liquid metal for local control”, Advanced Intelligent Systems, 2000008, 2020.

4) Y. Gao et al., “Wearable Microfluidic Diaphragm Pressure Sensor for Health and Tactile Touch Monitoring.”, Advanced Materials, 1701985, 2017.

5) T. Kozaki et al., “Liquid-state Optoelectronics Using Liquid Metal”, Advanced Electronic Materials, 1901135, 2020.

【著者紹介】
太田 裕貴(おおた ひろき)
横浜国立大学 工学研究院 准教授

■略歴
2011年慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。同年博士(工学)取得。日本学術振興会特別研究員(PD)にて東京女子医科大学先端生命医科学研究所に所属。
2013年から海外特別研究員、Project scientistとしてカリフォルニア大学バークレー校に所属。
2016年から特任助教として大阪大学産業科学研究所に所属。2017年3月より横浜国立大学大学院工学研究院システムの創生部門にて准教授として研究室を主宰。
2018年に一般社団法人日本機械学会新分野開拓表彰。
2020年に文部科学省表彰若手科学者賞等を受賞。専門は機械工学・電気電子工学。
近年は、液体金属をもちいたストレッチャブルデバイスおよび新生児用スマートデバイスの開発を行っている。

インキャビン生体レーダー検出と脈拍数推定(1)

日本電産モビリティ(株)
ボディシステム事業部
三谷 重知

1.はじめに

近年、多くの人が自動車を便利な、或いは、日常生活に不可欠な移動手段として利用している。移動の自由が得られることは、生活の質を向上させる上でも重要な役割を果たしている。しかし、一方で、不適切な利用の仕方やミスによって、不幸な事故へ繋がる要素を含んでいる。そのため事故を防止するための適切な予防安全システムが必要とされている。その対象は、走行中の事故のみではなく、搭乗して目的地に到達するまでの過程や駐車中の車室内への滞在も含まれる。例えば、後席に子供を置き去りにしてしまい、閉め切った車室内で熱中症になり死亡する事故が報告されている。また、子供によるドアの開閉による事故なども多く報告されている。更に、運転ストレスによる体調悪化によるものも考えられる。そこで、我々は、車室内の生体を検出し、生体情報を利用することで、これらの事故防止につなげる生体センサの開発を行っている。

我々が開発している生体センサは、車室内にいる生体の位置や大きさ(大人/子供)を判別し、呼吸数や脈拍数といった生体情報を抽出することを目標としている。例えば、図1に示すような車室内に子供だけが取り残されている状態を判別したり、子供が座っている側のドアのチャイルドロック機能を有効化したり、衝突事故発生時にエアバック展開を着座姿勢に応じて制御したりするなど、車室内での生体の情報が活用できる。また、呼吸数や脈拍数などの生体情報は、大人か子供かの判別に利用できるとともに、乗員のストレス状態を判断して空調システムを制御するなどの活用にも期待できる。

図1 車室内の様子(※写真の赤ん坊は人形)

2.生体レーダー検出

昨今CMOSベースのミリ波レーダーデバイスが安価に入手できるようになった。マイコン内蔵のミリ波モジュールを利用すれば、図2に示すように、電源、アンテナ、通信回路を構成することで、生体レーダー検出システムを構築することができる。今回開発したシステムでは、アンテナは送信2チャンネル、受信4チャンネルで構成し生体の方位を判別している。このシステムに生体検出アルゴリズムを実装することで要求されるアプリケーションへ対応する。

図2 インキャビン生体レーダーシステム

図3の(a)にセンサとシートに座った人の位置関係を側面から見た状態を示す。実際には、送信波は、身体だけでなく、他のシートや床面にも到達し、その反射波をセンサで受けることになる。このように、ミリ波レーダーデバイスを車室内で使うと、電波を強く反射する金属物の影響で幾つかの問題が生じる。また、それらの金属物は、走行時やアイドリング時などに振動するため、移動物体の検出に優れたドップラー式レーダーにおいては、非常に大きな外乱の中に埋もれた状態から生体固有の信号を抽出するという信号処理手法を駆使しなければならない。我々は、独自の生体検出アルゴリズムの開発を行ってこれらの課題を解決している。

図3 ミリ波を使った生体検出の様子

今回構成したミリ波レーダーでは、FMCW方式のビート周波数により対象物までの距離を知ることができる。また、複数の受信アンテナ間の位相差から検出物の方向を知ることができる。図3の(b)に、座標軸X-Yの対応付けが分かりやすいように上面図を示し、ミリ波レーダーから得られる情報の解析画面を図3の(c)に示している。ミリ波レーダーから得られる信号は、各受信アンテナで得られる信号をミリ波モジュールでミキシング処理された後のI,Q信号である。FMCW方式では、これをフーリエ変換することで距離指標毎に分離して取得する。解析画面の左上部のグラフは、受信アンテナ1チャンネル分のデータをアンテナからの距離0~155cmの範囲で示している。橙色はI,Q信号の大きさ、黄色は、その変動成分の大きさを示している。この変動成分の抽出には、呼吸成分の利得が高くなるようバンドパスフィルターの設計を行っている。電波を反射する物体が存在する距離でI,Q信号の大きさは大きくなる。また、生体の呼吸等により動きが大きい距離でI,Q信号の変動成分の大きさは大きくなる。更に、解析画面の右上部のグラフは、各受信アンテナ間の位相差から求めた方位プロファイルである。横軸は角度で-90~90degの範囲で、検出物体が存在する距離70cmからの到来波の状態が分かるように表示を合わせている。検出物体が存在する方位で、強度が強くなるように信号を合成している。解析画面の右下部は、検出物体の位置をX-Y座標のレーダーマップ上に三角印で示している。このマップの生成処理では、I,Q信号の距離と方位の強度情報を使って、生体が存在する位置の強度が高くなるように信号合成を行っている。そして、そのピーク位置を生体として検出する。

生体の位置が特定できれば、その位置に対応したI,Q信号から生体情報を抽出する。解析画面の左下部には、抽出した生体情報を数値パラメータとして示し、更に、大人/子供の判別結果を人型の模擬灯で示している。本稿では、抽出する生体情報のうち脈拍数の推定方法について説明する。

次回に続く-

【著者紹介】
三谷 重知(みたに しげとも)
日本電産モビリティ株式会社 ボディシステム事業部 技術専門職

■略歴
2004年 オムロン株式会社へ入社
2011年 オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社へ転籍
2019年 日本電産モビリティ株式会社へ社名変更
     デジタル信号処理技術を駆使したアルゴリズム開発に従事