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ゲート・ドライバとGaNトランジスタ内蔵SiPを搭載した250W共振コンバータのリファレンス設計を発表

STマイクロエレクトロニクスは、250W共振コンバータのリファレンス設計「EVLMG1-250WLLC」を発表した。
このリファレンス設計は、シリコン・ベースのハーフブリッジ・ゲート・ドライバと、2つのGaN(窒化ガリウム)パワー・トラジスタを内蔵した高集積のシステム・イン・パッケージ(SiP)「MasterGaN」を搭載し、電力密度と電力効率の向上、設計の簡略化、および製品開発期間の短縮に貢献するとのこと。

EVLMG1-250WLLCは、基板外形が100 x 60mm、部品の最大高さが35mmの250W共振コンバータで、1個のハーフブリッジ・ゲート・ドライバ「STDRIVE」と2個の650Vノーマリー・オフ型GaNパワー・トランジスタを1パッケージに集積したMasterGaN1を搭載している。2個のGaNパワー・トランジスタは、タイミング・パラメータのマッチングがとられており、150mΩのオン抵抗(Rds(on))と10Aの最大電流定格を備えている。ロジック入力は、3.3V~15Vの信号と互換性があるという。

MasterGaN1は、最大400WのAC-DC電源、DC-DCコンバータ、およびDC-ACインバータで使用される高効率ソフト・スイッチング・トポロジ(共振 / アクティブ・クランプ・フライバック / フォワード / ブリッジレス・トーテムポールPFC(力率補正回路)など)に最適。
1次側は、GaNパワー・トランジスタの高い電力効率を活用し、ヒートシンクなしで動作可能。また、GaNの優れたスイッチング性能により、従来のシリコンMOSFETより高い動作周波数で使用できるため、小型の磁性部品とキャパシタで高い電力密度を実現すると共に、部品点数の削減に貢献するとのこと。

EVLMG1-250WLLCは、定格400V電源用に設計されており、24V/10Aの出力を提供し、94%を超える最大効率を実現する。MasterGaN1に内蔵された安全機能により、コンバータの出力は短絡と過電流から保護されている。また、ブラウンアウト保護と入力電圧検出機能を備えているため、複数のDC-DCコンバータを使用したシーケンス制御が可能で、低電圧状態におけるモータの始動を防止するという。

MasterGaNファミリの製品は、対称構成と非対称構成を含む、ピン配置互換性を持つ高集積SiPで、薄型のGQFNパッケージ(9 x 9mm)で提供される。搭載されている回路の定格は最大650Vで、パッケージは高電圧パッドと低電圧パッドの間で2mm以上の沿面距離が確保されている。また、さまざまな定格電力の製品が提供されているため、ハードウェアの変更を最低限に抑えつつ、柔軟な設計が可能とのこと。
EVLMG1-250WLLCは、STのウェブサイトまたは販売代理店から入手可能で、価格は約230.00ドル。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001155.000001337.html

工場のケーブル・コネクタ挿入が自動化 OKIKAE for ケーブル挿入作業をリリース

(株)ASTINAは、、5月12日より、『OKIKAE(オキカエ)工場向け作業自動化DXソリューション』の第二弾として、AI/ロボティクス技術を活用したケーブル挿入の自動化パッケージを提供を開始した。

◆「OKIKAE for ケーブル挿入作業」が解決する課題について
基板組立てや製品組立てのケーブル挿入作業は、人力による手作業が多く、工場側からは人員不足や労働生産性の観点で課題視する声が上がっていた。
そこで今回、上記作業の課題となる人員不足や生産性の向上を「OKIKAE AI/ロボティクス」によるファクトリーオートメーション化(FA)にて以下の特徴をベースとするソリューションを実現したという。

◆OKIKAE for ケーブル挿入作業の特徴
○AIによるコネクタ、ケーブル先端の検出
○エッジAI搭載による高速な認識
○3Dカメラによる姿勢検出
○ロボットアームによる高精度な動作
○力覚センサを利用した無理のない挿入
ケーブルやコネクタが複数種類ある場合でも、AIによって種別判定することが可能。また、繊細な機器を取り扱う場合でも、力覚センサによって無理のない挿入を実現するという。

ニュースリリースサイト(astina):https://astina.co/blog/other/post-866

人とほぼ同じ感覚を数値化することに成功した試験機「QUANTITEXTURE 」今秋発売

カトーテック(株)は、人の感覚神経の特性からデータを解析し、人とほぼ同じ感覚を数値化することに成功した試験機 「QUANTITEXTURE クオンティテクスチャー」を2021 年秋から販売する。

触った時の「つるつる」「ざらざら」を“指の神経情報”から 独自のアルゴリズムにより数値化し、定量化が難しかった樹脂素材の“心地よさ・触感”の測定が可能となった。
これまで困難であったスマートフォンや自動車内装材などの触感測定が可能となり、使用感・心地よさの品質向上が期待できるという。(画像は製品完成イメージ図)
本試験機は、アクチュエータ工学やソフトロボティクスを専門とする慶應義塾大学理工学部 竹村研治郎教授との共同研究により実現した。

■「QUANTITEXTURE」特徴
1. ものに触った時の「なめらかさ」「すべりやすさ」「ざらつき」を測定
2. 指の4 つの機械受容器(※1)マイスナー小体、メルケル触盤、パチニ小体、ルフィニ終末の特性から触感を数値化
3. これまではものの表面の粗さや摩擦係数などで触感を数値化してきたが、人の触感や知覚のメカニズムを基に解析しているため、より人間の感覚に近い触感のデータを取得可能

(※1)機械受容器・・・感覚の元となる刺激を受け止めて、神経信号を発生する細胞や器官のこと

■開発経緯
触感は製品の特徴の一つとして製品評価に大きく関係しているが、視覚や聴覚に比べて、自ら押したり動かしたりする能動的な動作を伴い、また人によって感じる感覚は嗜好的であるため、定量化が難しい。
さわり心地計測の試験機と言えば、衣料品のほか化粧品や不織布など、さまざまな分野でKES(ケス)が利用されているが、その中でも特に樹脂素材については「材質が硬く物性値(※2)での判断が難しい」との声が多くあった。
このような声を受けて、物体の物性値だけでの判断ではなく、触感評価に深く関係する“人の感性情報”からデータを抽出し数値化する手法を開発した。これまで触感評価が困難であった樹脂素材(自動車内装材や住宅内装材、スマートフォンのカバーなど)の触感測定も可能となったとのこと。

(※2)物性値とは・・・物質のもつ熱的、電気的、磁気的、光学的、機械的などの性質の値

ニュースリリースサイト(keskato):https://www.keskato.co.jp/archives/1608

長瀬産業、IBMの味覚センサ技術“HyperTaste”を化学品分析サービスに応用

長瀬産業(株)は、米国IBM社との間で、IBMが開発したAIを応用した味覚センサ技術“HyperTaste(ハイパーテイスト)”を、主に液体向けの化学品分析サービスとして実用化する共同研究を進めている。2023年度中をめどに、グループ会社が取り扱う化学品や食品素材の取引に活用し、グループのサプライチェーンの安心・安全、スピード、安定供給を支えることを目指す。

共同開発では、IBMが主催する異業種による基礎研究コンソーシアムIBM Research Frontiers Instituteが研究テーマの一つとして掲げる“HyperTaste”に、化学品や食品素材の取り扱いに強みを持つNAGASEグループの知見を掛け合わせ、化学品分析サービス として実用化することを目指す。 HyperTaste”は味覚成分の組み合わせを学習することで味覚をデータ化する学習型AIセンサで、電気化学ポテンシャル(液体中のイオン分布によるセンシング電極の電圧)の変化から液体中のイオン等の成分を分析する 機能を化学品の精度測定に応用するという。

一般的に、化学品取引においてはメーカー側にて評価された「分析証明書(COA)」により品質が保証されているが、分析データの転記ミスや製品ラベルの貼付ミスなどにより、分析証明書と製品の現物とが乖離しており、輸出入者や顧客側で確認が必要となるケースもある。現状、このようなケースにおいては分析に専門機器が必要であり、且つ分析に一定の時間(約1日~数日程度)がかかるため、機器の導入コストや設置場所、またリアルタイムの分析が難しいことが課題とのこと。

長瀬産業とIBMが共同開発するセンサはポータブルな手のひらサイズの装置をスマートフォンに連携可能にしたもので、現場でほぼリアルタイムでの測定が可能。2020年1月から始まった第1期の共同研究で6つの元素をppmレベル(0.0001%)まで測定する技術は実験フェーズで確立しており(※1)、2022年1月までの第2期においてさらに多様な化学品を対象に現場での検証を重ね、数種類の元素をppbレベル(0.0000001%)まで測定できる精度に向上する。23年度をめどに、まずはグループ会社で実用化し将来的にグループ外にサービスとして提供することを目指すとしている。

(※1)日本化学会秋季事業 第10回CSJ化学フェスタ2020にて発表(“HyperTaste: An AI assisted e-tongue for fast and portable fingerprinting of complex liquids”, Patrick Ruch他)

ニュースリリース(nagase):https://www.nagase.co.jp/assetfiles/news/20210518.pdf

新型コロナウイルス患者のバイタルサインを遠隔地でモニタリングするシステムを構築

順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学の葛西隆敏 准教授、保健医療学部 デジタルヘルス遠隔医療研究開発講座の鍵山暢之 准教授ら、および日本光電工業(株) 荻野記念研究所の松沢航らの共同研究グループは「新型コロナウイルス患者が自身で測定したバイタルサインを遠隔でモニタリングするシステム」を構築し、同システムによる測定値の信頼性が高いことを実証した。
本成果により、新型コロナウイルス感染症の流行下において、医療スタッフが感染リスクの高いバイタルサイン測定を行わずとも患者の測定値を遠隔でモニタリングすることが可能となり、医療スタッフの負担軽減や安全性の確保に繋がる。
研究論文はJournal of Telemedicine and Telecare誌のオンライン版で公開された。

背景
新型コロナウイルス感染症の流行下、従来、患者のバイタルサインは医療スタッフが患者の部屋を訪問して測定していたが、患者自身がバイタルサインを測定し、それを医療スタッフが遠隔でモニタリングするシステムを高い信頼性をもって運用することが可能になれば、医療スタッフと患者の直接的な接触を減らし、医療スタッフの負担軽減と感染リスクの低減につながると考えられる。しかしながら、患者は訓練された医療スタッフではないため、血圧計、パルスオキシメータ、体温計などを使って測定するバイタルサインの信頼性に課題がある。そこで本研究では、それらの値が診療に用うる信頼性があるかどうか検証したという。

内容
本研究では、まず新型コロナウイルス患者のバイタルサイン測定値を遠隔でモニタリングするシステムを構築した(画像)。そして、新型コロナウイルス感染が確定、または疑われて入院した患者が、体重・体温・動脈血酸素飽和度(SpO2)・血圧・脈拍・心拍を自分で測定した。同時に医療スタッフも測定を行い、それらのバイタルサインの測定データと、ベッドの下に配置されたマットタイプのセンサを使用して呼吸数を測定し自動的にクラウドにアップロードした。これらの測定値が医療者による測定とどの程度一致しているのかを検証した。
2020年5月26日から9月23日までの間に、16人の患者が研究に参加して、その全員が10分間のレクチャーによって使用機器の使い方をマスターすることが可能だった。研究期間中に、3,835回バイタルサインの測定データがクラウドにアップロードされ、患者自身が測定したバイタルサインの値と医療スタッフが測定した値は、すべてのパラメーターでよく一致していた。信頼性の指標となる一致の程度を示す級内相関係数(0.8以上で非常に良い相関と解釈される)は、収縮期血圧で0.92、拡張期血圧で0.86、心拍数で0.89、動脈血酸素飽和度(SpO2)で0.92、体温で0.83、呼吸数で0.90となった(いずれもp値は0.001以下)。
これらの結果は、今回、構築した遠隔モニタリングシステムの測定値は高い信頼があることを示しており、新型コロナウイルス感染症流行下の医療スタッフによるバイタルサイン測定値の代替として有効であることを実証したとのこと。

今後、臨床現場での実運用において感染リスク低減度合や負担の軽減度合を評価する研究を行い、また実際に病院でこのシステムを運用することの課題を洗い出す予定。さらに実臨床のニーズにあったシステムとして改良、開発を続けていくとしている。

ニュースリリースサイト(juntendo):https://www.juntendo.ac.jp/news/20210517-01.html

ドラック、革新的な新しい圧力制御モジュールと次世代型の圧力センサ発売

ベーカーヒューズ社傘下のドラックは、革新的な新しい圧力制御モジュールPACE CM 3と次世代型の圧力センサADROIT 6000の販売を開始した。

PACE CM 3は、圧力計測における高精度、高速、安定性を顧客に提供する最速の圧力コントローラ。
ADROIT 6000圧力センサは、狭所にもフィットするように設計されており、幅広い温度範囲にわたって高度なレベルの圧力精度と信頼性を提供するという。

ドラックの副社長ドハーティ氏によると、
 「当社のお客様は、圧力計測、テスト、校正においてドラック製品に信頼を寄せています。スマートフォンに使用されている大気圧センサの圧力測定装置の製造から、高速列車のブレーキシステムの製造、医療用の人工呼吸器や血圧システムの構築とテストに至るまで、PACE CM 3は業界に新たな基準を打ち立てます。ドラックのADROIT 6000産業用センサは、信頼性が高く正確な圧力計測が必須であるさまざまなアプリケーションの性能基準を引き上げます。重要な製造過程にける圧力測定は、わずかな誤差も許されません。」
 さらに、「ドラックの革新的な新製品は、圧力測定の精度、速度、信頼性のレベル、そしてお客様のパフォーマンスを向上させ、また、たびたび求められる最も過酷な動作環境においての安心を提供します。PACE CM 3とADROIT 6000の需要レベルは、すでに私たちの期待を超えています。まるで、圧力制御と圧力測定技術のゲームチェンジャーになると運命づけられているかのようです」と述べている。

詳細サイト(Druck):
https://www.bakerhughesds.com/jp/druck-yaliji-xiaozhengqi-measurement-sensing

我が国における計量標準とその供給体制(2)

産業技術総合研究所
計量標準総合センター
堂前 篤志

3. 我が国の計量標準

3.1 計量法

日本において、計量の基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展および文化の向上に寄与することを目的として制定された法律が計量法であり、1952年に施行された。1992年の計量法改正では“計量単位のSI化”6)が導入され、非SI単位を段階的に計量単位から削除することにより、原則として1999年9月30日までにSI単位への統一が行われた。

1992年の計量法改正において、“計量単位のSI化”と共に大きな柱とされたのが、先端技術分野や工業生産における高精度計測や品質管理の信頼性確保を目的とした計量法トレーサビリティ制度
(JCSS)の創設である7)。JCSSは計量標準供給制度と校正事業者認定制度(2005年より校正事業者登録制度)から構成される。計量標準供給制度は国家計量標準につながる校正を維持するための仕組みであり、校正事業者登録制度は計量法関係法規およびISO/IEC 17025 (JIS Q 17025、試験所及び校正を行う試験所の能力に関する一般要求事項)の要求事項に適合している校正事業者を登録する制度である。後者は、認定機関である独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)認定センター(IAJapan)が運営を担当している。

3.2 計量法トレーサビリティ制度

計量法トレーサビリティ制度の概要を図2にまとめる。この制度では、NMIJ、電力および電力量の分野の標準を担当する日本電気計器検定所(JEMIC)又は経済産業大臣が指定した指定校正機関が国家計量標準を維持・供給する。そして、校正事業者登録制度にて登録された校正事業者(登録事業者)が維持・管理する二次標準、常用参照標準を介して、切れ目のない校正の連鎖を通して、ユーザーの計測機器による計測の結果が国家計量標準へ関連付けられるようになった。この制度に基づいて行われた校正の結果は、JCSSロゴマーク付きの校正証明書へ記載される。現在、指定校正機関は一般財団法人化学物質評価研究機構(CERI)、一般財団法人日本品質保証機構
(JQA)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)である。日本以外の各国においても、それぞれの国の内情に則したトレーサビリティ制度が確立されている。

図2 計量法トレーサビリティ制度の概要

3.3 NMIJからの標準供給

NMIJが行っている標準供給に関するサービスは、校正対象ごとに校正方法、校正手順などがマニュアルとして文書化されており、ISO/IEC 17025に基づく品質システムにより運用されている。校正方法は妥当性が確認された世界的に公知な国際規格、および国内規格等に準拠した方法を採用しており、これらの校正方法から得られた結果に問題がないことの確認は、前述の国際比較や各種の妥当性確認によって行っている。NMIJが行っている主要な標準供給に関するサービスは、CIPM MRAに対応することを目的に、ピアレビューを受け、物理的な計測を行う際の基準となる物理標準ではISO/IEC 17025の適合審査を、化学的な計測を行う際の基準として用いられるNMIJの標準物質ではISO 17034(JIS Q 17034、標準物質生産者の能力に関する一般要求事項)の適合審査を、それぞれ受審している。上述の審査の結果、IAJapanより製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)の認定を取得している。

3.4 今後の計量標準整備

計量標準のトレーサビリティ体系が一旦整備されたとしても、その時点での最新の科学的知見や利用できる最高の技術を用いて常にその高度化に取り組んで行くことは、NMIにとって非常に重要な任務のひとつとなっている。このため、NMIJでは、我が国の科学技術基本計画8)を踏まえて策定された計量標準等の整備計画(知的基盤整備計画)9)にしたがって各種計量標準の整備、校正サービスの拡充、計測技術の高度化を着実に行っている。

第1期の知的基盤整備計画(2001年~2010年)では、欧米並みの計量標準整備を目指して、物理標準および標準物質にてそれぞれ約300種類の整備を達成し、CIPM MRAに必要な基本となる計量標準を欧米と遜色ないレベルに到達させた。第2期の知的基盤整備計画(2011年~2020年)においては、第1期を踏まえ、量の整備に加えて質的強化を図り、さらなる計量・産業ニーズへの対応、JCSS制度の拡充、計量標準の広報普及活動の目標設定、ユーザーのニーズ調査に基づいた整備計画の定期的な見直しを行い、効果的な計量標準整備を実施した。現在策定中の第3期知的基盤整備計画(2021年~2030年(予定))では、計量標準の更なる普及啓発と利用促進を目指して、オールジャパンでの効果的かつ効率的な整備・供給、計量標準・計測の活用シーンの拡大、利用促進・人材育成・連携活動を推進していく。これにより、産業・社会ニーズへの迅速かつ適切な対応、社会課題解決への寄与、産業競争力の強化や安全・安心な社会の実現を目指す。

4. まとめ

我が国における計量標準の整備と供給と題して、国際的な計量標準の枠組み、我が国における計量標準の枠組みおよび今後の計量標準整備について、それぞれ概説した。

少子高齢化の本格化や国際競争での産業競争力の低下など我が国の産業界を取り巻く状況はより厳しいものとなっており、それを反映して当初に想定した種類以外にも標準のニーズが拡がっており、より高精度な標準への期待、校正の簡便化・迅速化などの要求も高まっている。また、市民生活においてはデジタル化の進展に伴う新しい決済方法や消費形態が普及しつつあり、それら商取引の信頼性構築が求められている。NMIJは、これらの産業界からの要請や市民生活の動向を注視し、引き続き計量標準の整備・供給に取り組むとともに、産業界から要請される計測・分析技術の開発、ならびに商取引の信頼性維持に寄与できるよう取り組みを進めていく。

参考文献

6) 今井秀孝, 計量法の計量単位-そのSI化への対応, J. SICE, Vol.33 No.8, pp.670-679, Aug. 1994.
7) 独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センター, JCSS20年史 ~未来につなぐ計量トレーサビリティ~, 平成26年7月. https://www.nite.go.jp/data/000050173.pdf
8) 内閣府ウェブページ, 科学技術基本計画及び科学技術・イノベーション基本計画,
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index.html
9) 経済産業省ウェブページ, 知的基盤,
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/index.html



【著者紹介】
堂前 篤志(どうまえ あつし)
国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)
計量標準総合センター(NMIJ)
計量標準普及センター 計量標準調査室 総括主幹

■略歴
2000年 豊橋技術科学大学 工学部 電気・電子工学課程卒業
2014年 東京都市大学 工学研究科 博士後期課程修了、博士(工学)
2000年 通商産業省 工業技術院 電子技術総合研究所 入所
2001年 産業技術総合研究所 計測標準研究部門、2015年 同所 物理計測標準研究部門を経て、
2020年8月より現職

ISO/IEC 17025に基づく認定校正とは(2)

一般財団法人 日本品質保証機構
片桐 拓朗

2.校正機関認定の仕組みの具体例

我が国においてISO/IEC 17025に基づく校正機関を認定する主要な仕組みとして、計量法校正事業者登録制度(JCSS)がある。その登録・認定機関は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)認定センターである。日本の国家計量標準は通常、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJ)が所有する標準器または標準物質である。この計量標準を産業界等の測定器ユーザーへ適切に供給するための仕組みがJCSSである。この制度では、JCSSシンボルマーク付き校正証明書を発行できる校正機関を登録事業者と呼ぶ。なお、登録事業者のうち、国際MRA対応(計量法の制度に国際的な認定ルールを付加した審査を受けることを契約したもの)の認定を受けている事業者をMRA対応認定事業者と呼んで区別している(図1参照)。
JCSSは法律に基づく国内に限定された制度であるのに対し、海外の認定機関による認定は、どこの国のラボでも対象とすることができる。例として、米国のNVLAP*1、A2LA*2、PJLA*3、英国のUKAS*4等が挙げられる。これらの認定機関は、ISO/IEC 17025の規格に適合していることを審査して認定した試験・校正機関に対し、それぞれの認定機関のシンボルマーク付き証明書の発行を認めている。
 したがって、認定シンボルマーク付きの校正証明書であれば、国家計量標準(基本的にはSI)にトレーサブルであり、かつ不確かさのついた信頼性の高い校正結果が提供される。

*1) National Voluntary Laboratory Accreditation Program
*2) American Association for Laboratory Accreditation
*3) Perry Johnson Laboratory Accreditation
*4) United Kingdom Accreditation Service

図1 国際MRA対応の認定校正機関の仕組み

3.ISO/IEC 17025認定校正機関が求められる場面

近年、「自動車産業向け品質マネジメントシステム規格」IATF 16949の認証を取得した組織やJISマーク表示制度等の製品認証制度における試験所では、そこで使用される測定器については、ISO/IEC 17025認定校正機関のシンボルマーク付き校正証明書の付いた校正が要求されている。これは、製品の規格適合性をより厳しく評価するために課せられた手段の一つであると考えられる。このことからも、測定器ユーザーは、これらの認証の取得企業のみならず、製品やサービスの品質レベル維持のために信頼できる試験所や校正機関を選択することが重要である。

4.認定校正機関としての活動

一般財団法人 日本品質保証機構(JQA)では、全国4事業所でJCSS登録事業者として25区分中17区分について登録・認定を取得し校正サービスを行っている。また、A2LAからも9分野において校正機関の認定を広範囲に取得し校正サービスを行っている。その一部を表1に示したが、長さ、質量、温度、電気量など計測の基本量はほぼ網羅している。これらの校正を受けることにより、認定シンボルマークの付いた校正証明書が発行されるため、ISO/IEC 17025での要求事項を満たした機関で校正されたことが証明され、国家計量標準またはSIにトレーサブルでかつ不確かさの付いた校正値を得ることができる。また、品目によっては出張校正でも認定シンボルマーク付き校正証明書が発行できるので、運搬困難な測定器や多数の測定器の同時校正の場合に特に有用である。

表1 認定範囲の校正品目例
認定範囲の校正品目例
長さ・角度 高精度長さ標準器・マイクロスケール 質量・力・トルク・ 硬さ・圧力 分銅・おもり・はかり
各種校正用マスタゲージ類 力計・一軸試験機
精密測定機 トルク計測器・トルクツール
工場測定工具・直尺・巻尺類 硬さ試験機
角度測定器 圧力計・真空計
電子計測器・放射線・EMC 電圧・電流測定器 体積・流速・流量 体積計
電圧・電流発生器 風速計
電力測定器 気体流量計
減衰器 音響・振動 騒音計・計測用マイクロホン
周波数測定器 振動加速度計・振動試験機
高電圧測定器 温度・湿度 温度計
放射線測定器 湿度計・温湿度試験装置
LCR測定器 濃度 光散乱式粒子計測器
EMC試験用計測機器 その他の計測器 粘度計・その他
その他電子計測器

おわりに

ISO/IEC 17025認定校正の特徴とそのメリットについて述べてきた。近年になって測定器の校正は質の問われる時代になってきている。校正証明書を書類として揃えておくだけでは、本来の意味の測定器校正の実施や、計測のトレーサビリティの確保にはならない。今後は、製品やサービスの品質をより確実にし、安心・安全の提供をより強固なものにするために、信頼できる試験・校正を受けることがその一つの手段になるであろう。



【著者紹介】
片桐 拓朗(かたぎり たくろう)
一般財団法人 日本品質保証機構 理事

■略歴
東京都立大学大学院工学研究科電気工学専攻修了。
1985年4月、財団法人 機械電子検査検定協会(現 一般財団法人 日本品質保証機構)に入構。
計量器、計測器の検定、校正事業に従事。
2005年から2010年までJCSS、A2LA認定校正事業の品質管理責任者に従事。
2015年より現職。

最近の温度測定と校正技術(2)

(株) チノー
清水 孝雄

5. 高精度の温度センサと放射温度計・サーモグラフィ(熱画像)

5.1 1000℃の高温で使用できる高精度な白金抵抗温度計2)

電子部品や医薬品などの製造・管理において高精度な温度測定が必要な場合には,白金抵抗温度計が広く利用されている。しかし,1000℃付近の高温では,白金線に生じる熱歪みや白金自身の変質によりその抵抗値が不安定になることから,高精度での測定が難しいという問題があった。

図6 1000℃で使用できる高精度白金抵抗温度計 の外観(左)と先端センサ部(右)
図7 銀の凝固点(961.78℃)における温度安定性

そこで,産総研は,図6に示す高精度白金抵抗温度計の開発に取組み,白金の変質を抑制するための最適な熱処理工程を確立した。また,熱歪みはセンサ部の白金線を保持する形状に依存するため,新たな保持構造を採用して,高温で発生する熱歪みを低減した。この白金抵抗温度計では,水の三重点(0.01℃)と銀の凝固点(961.78℃)の間で)熱サイクル試験を行った後でも,図7に示すように1000℃付近で±0.001℃以内で高い安定性を得ている。近年,材料プロセスでは高温域での高精度な温度測定・温度制御のニーズが高まっている。また,高温域でも温度性能が安定していることから,開発された精密白金抵抗温度計は,温度計測の整合性確保と信頼性向上のための国際的な比較・検証での活用も期待される。

5.2 超高温での連続温度制御用に使用する高精度な高温用2色温度計

図8 2色温度計
図9 高温用2色温度計の温度安定性

測定波長が一つの放射温度計は,黒体を前提とした分光放射輝度の温度特性をもとに温度を求めるため,放射率が1でない一般の物体の測定や,熱放射エネルギーを減衰させる外乱の存在によって直接的に温度指示の低下が生じる。これに対し二つの波長を用いた2色温度計は,2波長が同じ割合で減衰する(灰色減光)場合には2波長の熱エネルギー比に変化がなく,温度指示に影響を与えないので,測定窓の汚れや測定光路によって吸収障害がある場所での測定や微小物体の測定が可能で,製造現場や研究機関などで2色温度計が広く普及している。2色温度計(図8)では,2色,単色測定の切り替えができ,金属‐炭素共晶点(6.1節参照)において温度校正することで,高温域での高精度な温度測定を可能になっており,2000℃以上の高温での連続測定に使用される場合が多いが,長時間の強い熱放射エネルギーの集光は温度計の検出素子にダメージを与える。最近の2色温度計では,光学系の構造の工夫を施し,図9に示すように2400℃における約3年間の連続運転試験でも長期的に安定した温度出力ができる。

5.3 サーモグラフィ(熱画像装置)

(1)高性能な固定形サーモグラフィ(熱画像装置)3)

図10 固定形サーモグラフィカメラと測定例(コークスのベルトコンベア上の残火検知)

近年,安心,安全,環境・省エネ等での計測用センシング技術として,プラントの広域異常発熱監視や鉄鋼関連の生産ラインでのセンシングおよび異常監視な測の観点から,サーモグラフィカメラの低価格,小形化も求められている。図10に,固定形サーモグラフィカメラの外観と測定例を示す。通常,サーモグラフィカメラは,周囲温度の変化に対する2次元検出素子の出力ドリフト補正用としてメカニカルシャッターを使用している。このため,周囲温度の変化に応じて補正用のシャッターが閉じるため,連続測定できない場合があった。このカメラは,切れ目のない温度計測を可能とするシャッターレス構造を採用したことと,独自の補正技術によって環境温度の影響を小さくし,生産現場や設備監視等での2次元の温度分布測定の高精度化を実現している。

(2)サーモグラフィカメラによる顔表面温度計測

図11 顔認識機能を備えた体表面温度発熱監視装置による発熱者監視・警報システム

新型コロナウイルスの流行で,感染拡大を防止するための社会的対応が今までの感染症流行時とは比較にならないほど強化された。それに伴いサーモグラフィカメラが空港など海外との出入口となる場所だけでなく,日常的な施設にも多く利用されるようになっている。また,サーモグラフィカメラと可視画像と組合せた画像認識による顔検知が行われ,あわせて人物の温度値が表示されるものが多い。図11は、機械学習により熱画像のみで顔認識機能を備えた体表面温度発熱監視装置(サーモグラフィカメラ)で,警報システムを組合せて発熱者を検知し,警告用のライトや無線などで管理者への通報や発熱者がいる場合は入場用のゲートを閉じて接触式の体温計による検査を促すような警報システム例である。

6. 新しい温度校正装置

6.1 高温での放射温度計用の温度校正用金属‐炭素共晶点技術4)

図12 放射温度計の高温度域校正
図13 金属-炭素共晶点用超高温定点黒体炉

放射温度計の高温域においては,これまで国際温度目盛ITS-90で定義されている温度定点の最高温度は銅点(銅凝固点:1084.62℃)であったが,産総研では,世界に先駆けてこの銅点以上の高温域での温度定点を開発し実用化した。この定点校正装置で用いられる定点物質は純金属ではなく,金属と炭素の合金を用いる金属-炭素共晶点および包晶点を温度定点として用いる。実用化している主な金属-炭素共晶点として,鉄-炭素(1153℃),コバルト-炭素(1324.316℃),パラジウム-炭素(1492℃),白金-炭素(1738.342℃),レニウム-炭素(2474.749℃)などがある。図12に示すように,これまで高温の温度目盛が銅点までの定点にて校正され,それ以上の温度では,温度計の出力を外挿して求めていたが,これらの高温定点の実現により,銅点以上の温度定点を使用することで,内挿で目盛校正することが可能になり,放射温度計の校正の不確かさが飛躍的に小さくなった。図13は,産総研と共同で開発した金属‐炭素共晶点用の超高温定点黒体炉で,日本発信の温度標準技術として世界の多くの研究機関にて使用され,放射温度計の高温標準定点として普及している。また,高温での放射温度計のJCSS認定の校正試験の範囲は,0.65μmの単色放射温度計の校正にてトレースされているが,これまでの銅点に加え,金属-炭素共晶点を使用することにより,校正温度範囲を2800℃まで拡大することができる。これによって,従来よりも,放射温度計の高温域での不確かさが格段に小さくなり,高温素材産業や航空・エネルギー産業での製造工程や研究機関等での温度測定の不確かさの飛躍的改善が見込める。

6.2 高放射率温度可変黒体炉5)

図14 高放射率温度可変黒体炉と温度安定性(300℃)

放射温度計・サーモグラフィを比較校正に用いるため,温度可変黒体炉(Variable Temperature Blackbody) には,標準放射温度計と校正対象の放射温度計の波長評価において,空洞の実効放射率ができるだけ1に近いことや,高温域での時間安定性が求められる。これまでの黒体炉は,空洞材質の固有放射率が可視域の波長から赤外域の波長まで範囲で平坦でないため,測定波長に依存する不確かさの値が大きかった。放射温度計が測定する空洞の炉底にカーボンナノチューブ(以下CNT)基板を使用した高放射率温度可変黒体炉の外観と温度安定性(300℃)を図14に示す。CNTは,炭素原子が結合して出来た筒状構造で,5μmから12μmの広い波長範囲において0.98以上の高い固有放射率である。黒体炉の構造は,空洞部分にグラファィトを用い,放射温度計が測定する空洞の炉底にCNT基板を使用して,広い波長範囲(1.55~14μm)で高い実効放射率(0.999±0.001)を実現している。この温度可変黒体炉により放射温度計やサーモグラフィの測定波長の違いによる校正温度の不確かさを大幅に軽減することができる。

7. おわりに

温度計の種類,校正方法,校正装置や温度測定の不確かさの評価および,最近の新しい温度計や温度校正装置とその技術について紹介した。今後も増々半導体,デバイス技術の技術革新により温度計や温度測定技術は進化しており,既存市場のみならず,新しい市場を創出する上でも重要な測定技術になる。また,得られた温度データに信頼性,安定性がなければ意味のないデータとなりかねないため最適な温度センサの選択やセンサの精密な校正装置および校正時の温度の不確かさの評価が今後も増々重要になっている。

次回に続く-

参考文献

2) 産業技術総合研究所,“1000℃付近の高温で使用できる高精度な温度計の開発”,産業技術総合研究所Webサイト,https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20160627/pr20160627.html
3)恩田佳則,“シャッターレス構造により切れ目のない連続計測を可能にした熱画像計測装置”,計装,60-10(2017),p11
4) 山田善郎,“金属-炭素共晶を用いた高温度標準の動向”,計測と制御,42-11(2003),p918
5) 及川英明ほか,“カーボンナノチューブを用いた黒体炉の開発”,第35回センシングフォーラム(計測自動制御学会)(2018)



【著者紹介】
清水 孝雄(しみず たかお)
株式会社チノー 久喜事業所長 取締役常務執行役員

■略歴
1976年 東京教育大学 理学部応用物理学科卒業
1976年 株式会社千野製作所(現 株式会社チノー)勤務  現在に至る

■著書
・温度計測 基礎と応用(共著,コロナ社)
・ワイヤレスセンサシステム(共著,東京電機大学出版局)

流量センサの校正(2)

島津システムソリューションズ(株)
岩政 明

3. 流量校正の種類

3.1 校正方法

液体流量センサの校正方法としては、秤量法、比較法、体積法が挙げられる。
校正のための設備として、不確かさが明確にされた校正設備が求められる。不確かさの大小に影響する因子としては、設備の管理はもとより、校正に使用する標準器が重要である。表3.1.1に液体流量センサの校正方法と、そこで用いる標準器についてまとめる。表には流量を求めるために直接用いる標準器を挙げた。設備や設置環境の因子の影響を明らかにするために使用する標準器(温度・気圧など)や流量センサからの出力信号を測定する標準器も必要である。

表3.1.1 液体流量センサの校正方法と標準器
校正方法 標準器
秤量法 秤(質量)、タイマー(時間)
比較法 タービン流量計、コリオリ流量計、電磁流量計などの流量計(流量)、タイマー(時間)
容積法 タンク・体積管(定容積)、タイマー(時間)

3.2 秤量法による校正

図3.2.1に秤量法による校正設備のブロック図を示す。

図3.2.1 秤量法による校正設備のブロック図

高架水槽から校正対象の流量センサに水を流し込み、秤量タンクに水を溜める。秤量タンクには、ダイバータによって水の流れを切り替え、一定時間のみ水を溜める。秤量タンクに水を溜める時間をダイバータの動作に連動したタイマーで計測し、秤量タンクに溜められた水の質量を秤で測定する。測定した質量を秤量タンクに水を溜めた時間で割ることで質量流量を求め、これを標準流量とする。校正対象の流量センサからの出力信号がパルス信号のとき、秤量タンクに水を溜めている期間に出力されるパルス数をカウンタによって計測し、標準流量と比較することによって校正する。

3.3 比較法による校正

図3.3.1に比較法による校正設備のブロック図を示す。

図3.3.1 比較法による校正設備のブロック図

校正対象の流量センサと直列に接続したマスターメーターを標準器とし、供給源から流体を流し込む。この接続によって校正対象の流量センサとマスターメーターは同じ流量を測定することになる。校正対象の流量センサとマスターメーターからの出力パルスをカウンタで測定し、同時に測定時間をタイマーによって測定する。校正対象の流量センサとマスターメーターそれぞれの平均流量を求め、両者を比較して不確かさを求めることによって校正する。

3.4 容積法による校正

図3.4.1に容積法による校正設備のブロック図を示す。

図3.4.1 容積法による校正設備のブロック図

この方法では、あらかじめ体積を校正した水(標準体積)を校正対象の流量センサに流し、流し終えるまでの時間を測定する。標準体積を測定時間で割ることで標準流量を求め、校正対象の流量センサの出力と比較して校正する。
標準体積としてタンクや体積管が用いられる。

4. 液体流量計の校正設備

4.1 恒久的な設備

水による液体流量センサの校正設備例を図4.1.1に示す。

図4.1.1 液体流量計校正設備の概要

高架水槽から水を流し込み、テストラインに設置した校正対象流量センサを通過させる。高架水槽は、常時オーバーフローさせることで水位を保ち、一定の瞬時流量で水を供給できる構造としている。さらに転流器(ダイバータ)によって、水を秤量タンクまたは戻り水路へと導く。ダイバータを使用する代わりにバルブの開閉で流体の流路を切り替える設備もある。校正対象の流量センサに水を流す配管は、上流側を整流装置と流量センサの口径の40倍以上の直管とで構成し、流入する水の流れを十分に発達した軸対称の流速分布としている。校正対象流量センサから出力される信号がパルス信号の場合、パルスをカウンタによってカウントする。また、秤量タンクに水を溜める時間、あるいは校正対象流量センサへ水を流す時間を計測するためのタイマーと、秤量タンクに溜めた水の質量を計測する秤を備え、積算流量を求める。配管ライン(テストライン)を複数備えるとともに、流量計からの出力信号として、オープンコレクタや電圧のパルス信号、4~20mAの電流出力、瞬時値の表示などに対応できるようにして、様々な口径、流量範囲、校正対象出力の流量計の校正を可能としている。
例えば、口径250mmの流量センサを校正できる設備は、テストラインの長さ10m以上、水頭数10mの高架水槽を備える規模である。

4.2 現地校正設備

標準器を校正対象の流量センサが使用されているサイトに持ち込んで校正を行う現地校正設備の例を図4.2.1に示す。この例では比較法で校正を行う。比較法では標準器(マスターメーター:ここでは比較法における標準器をマスターメーターと呼ぶ)を使用している。マスターメーターとしては、高精度で原理的に上流側・下流側の直管長などによる制約を受けにくいコリオリ式流量計が使用されている。図4.1.2の設備にマスターメーターと現地校正で使用する機器が設置されており、マスターメーターの上流と下流にホースを介して現地の校正対象の流量センサが取り付けられた配管を接続して校正する。

図4.2.1 現地校正設備の例

4.3 微小流量用設備

医薬品や半導体製造装置など、ごく少量の液体の流量を管理する必要が生じるケースでは、微小用の液体流量センサが使用される。3.2~3.4に示した方法での校正が可能であるが、わずかな流量を安定して発生させる機構が必要である。また、流す液体の量が非常に少ないため、不確かさの小さな校正結果を得ようとすると、長い時間を要することとなる。また、少量の液体を長時間かけて取り扱うために蒸発による影響が大きく、その対策を講じた設備が必要である。

5. 注意事項

流量センサによる測定結果は、配管への据え付け状態や使用方法に左右されることがあり、再現性や繰り返し性を良くするためには幾つかの注意事項がある。正確な測定結果を得て校正するためには適切な手順に従わなければならない。また、流量センサの高機能化が進んだ結果、信号処理が高速化し、使用される現場の口径や流体の種類に合わせてソフトウェアにより信号処理することで汎用性を高めた製品も普及している。このような高機能なセンサでは、ソフトウェアの設定が適切に行われていなければ、意図した結果が得られないことがある。
流量センサの校正手順における注意事項の代表例を表5.1に示す。

表5.1 流量センサの校正における注意事項の例
対象の流量センサ 注意事項(問題点) 影響(理由)
流量計全般 流量センサと配管の中心がずれている 直管長を有する流量センサの場合、偏差に影響を与える
絞り流量計
超音波流量計
電磁流量計
渦流量計
直管長が不足している 流れを十分に発達させた流速分布でなければ正確な測定結果が得られない
コリオリ流量計 配管にストレスが加わっている コリオリ力に影響を与える
電磁流量計 検出器がアースに接地されていいない ゼロ点(配管の基準電位)に影響を与える
流量計全般 キャビテーションの発生 測定結果が安定しない
電磁流量計 流量センサの管路内が汚れている 正確な測定結果が得られない。測定結果が安定しない
流量計全般 取扱説明書に示された設置条件や設定を守っていない 補正や信号処理を行う高機能なセンサではソフトウェアの設定内容が測定結果に影響を与える

6. おわりに

流量センサは社会インフラや製造設備で重要な役割を担い、正確な計量や高品質な製品づくりに貢献している。流量や口径の範囲、出力の種類など、流量センサの高機能化・高性能化が進むとともに、流量センサの校正の適用範囲が広がり、ニーズもますます高まるものと考える。



【著者紹介】
岩政 明(いわまさ あきら)
島津システムソリューションズ株式会社・技術部 兼 流量計校正試験所

■略歴
2008年 島津システムソリューションズ株式会社入社。
2011年 流量計校正事業に従事し、現在に至る。