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REVORN、思い通りの香りを誰でも調香できるToB向けの新サービス「調香AI」

(株)レボーンは、11月1日より「香り」をより自由に組み合わせて楽しむことができる、複数のキーワードを入力するだけで簡単に目的のイメージに合ったブレンドを処方することができるToB向けの新サービスの提供を開始した。

■サービス開発の背景
 コロナ禍において、消費活動のEC化が加速する中、各企業が新規ファンの獲得や高いエンゲージメントを確保するために、顧客の趣味・趣向に応じてオーダーメイドが可能な商品開発に積極的に取り組んでいる。スーツなどの衣料品はもちろん、家具や家電などもカスタマイズできるユニークな商品が多数登場している。

 そんな中、同社ではEC市場における香りのカスタマイズに着目した。誰でも手軽に思い描く香りをオーダーメイドできることで、香りを楽しむ商品においてもカスタマイズが可能なサービスの提供を可能にする。香水やコスメ用品はもちろん、コーヒーやハーブティのブレンドまで簡単にカスタマイズを可能になり、各社が提供するサービスにも幅が広がると考えている。また、本サービスはEC市場だけではなく、実店舗での展開も想定しており、実店舗での顧客エンゲージメントを高めるサービスとしても導入されると考えているという。

■サービスの概要
 あらかじめ商品カテゴリ、イメージワードの設定や原料データをAIへ学習させておけば、ユーザーは思い描くイメージワードを入力するだけで香りブレンドのレシピがAIによって瞬時に割り出される。  イメージするキーワードも各社で自由に設定することが可能なため、商品ブランドの世界観にあったキーワードを開発することも可能。

■活用例:
★コーヒーショップでの導入想定例
 コーヒー豆を販売する店舗にて、顧客のお好みあったコービーブレンドをその場でカスタマイズし提供する新規サービスの展開が可能。これにより、顧客との高いエンゲージメントの獲得や新たな顧客のニーズの発見につながる可能性もある、画期的なサービスとして導入検討できるとのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000038832.html

サイレックス、リモート環境からUSB機器へのアクセスを可能にする USBデバイスサーバ

サイレックス・テクノロジー(株)は、USB機器をローカルネットワークで利用可能にするUSBデバイスサーバ「DS-700」をバージョンアップし、ローカルネットワークに加え、インターネット経由での接続を可能にした。
これにより企業はリモート環境からローカルネットワーク上のUSB機器や各種センサに接続できるようになる。最新ファームウェアと接続アプリケーション「SX Virtual Link(SVL)」のダウンロードは、サイレックスのホームページから無償でダウンロードが可能とのこと。

背景
サイレックスのUSBデバイスサーバは、主にオフィス内にあるプリンタやスキャナといったOA機器と組み合わせて利用されている。生産現場や物流現場でもリモートワークを取り入れる動きが加速し、ローカルネットワーク環境内の接続だけでなく、インターネット経由の接続を実現したいという要望の高まりを受け、USBデバイスサーバ「DS-700」および接続アプリケーション「SX Virtual Link」をバージョンアップする。

想定するユースケース
<工場・物流・倉庫>
工場内にあるシリアル機器、各種USBセンサなどの情報をインターネット経由で取得することが可能になる。人が容易に立ち入ることができないエリア、海外を含む遠方の工場や倉庫などにあるシリアル機器やUSBセンサにインターネット経由で接続し、デバイスの管理、情報の取得、人の移動にかかるコストを削減する。

<オフィスリモートワーク>
社内にあるUSB機器にインターネット経由で接続が可能になる。また、ユーザのクラウドサービス上にあるWindows仮想OSにSX Virtual Linkをインストールし、リモートデスクトップで接続することで様々なOSから遠隔にあるUSB機器にアクセスすることが可能になる。

プレスリリースサイト(silex):https://www.silex.jp/backnumber/press/press_product_211101_ds700.html

バンドー化学、嚥下(えんげ)運動モニタ「B4S™」を販売開始

バンドー化学(株)は、このたび、同社が独自開発した伸縮性ひずみセンサ「C-STRETCH®」を用いたヘルスケア機器である嚥下運動モニタ「B4S™」(ビーフォーエス)を2021年10月から販売を開始した。

1. 名 称: 嚥下運動モニタ 「B4S™」(ビーフォーエスBando Stretchable Strain Sensor for Swallowing)

2. 開発の背景・ねらい
 近年、我が国の平均寿命が年々伸びる一方、加齢とともに、食べ物を飲み込む際に「むせて」しまうなど、嚥下機能の低下について注目されるようになった。「むせる」原因はさまざまだが、嚥下障害はその大きな原因の一つであり、結果として誤嚥性肺炎という重大な疾病に至るケースもある。一方、食べることは人生の楽しみの一つであり、嚥下機能を維持することはクオリティ・オブ・ライフの観点からもますます重要になると考えられる。
 このような背景のもと、同社では伸縮性ひずみセンサ「C-STRETCH®」を活用した嚥下運動モニタ「B4S™」を開発した。この「B4S™」は、非侵襲的な手法を使い、今まで嚥下訓練の施術者にしか把握できなかった嚥下時の喉の動きを可視化し、被験者と共有することにより、嚥下訓練のモチベーション向上につながることが期待されるという。

3. 製品の特長
1)簡単に喉の動きを捉えられる
 「B4S™」を喉にあてると、搭載された伸縮性ひずみセンサ「C-STRETCH®」が喉の動きを捉え、専用タブレットに嚥下時の喉の動きを波形にて表示。
2)嚥下時の喉の動きを可視化
 喉の動きを意識して嚥下訓練に取り組むことができる。
3)嚥下回数、嚥下時間(嚥下から次の嚥下までの時間)を計測
 専用タブレット画面にて嚥下回数、嚥下時間のデータ変化を確認することができる。

ニュースリリースサイト(BANDO):https://www.bandogrp.com/news/date/20211029_01.html

感動を測るーものづくりに活かす“感動指数”ー (1)

金沢工業大学
情報フロンティア学部
教授 神宮 英夫

1.“ひと・もの・こと”と感動

 企業や製品などのキャッチコピーで、「感動」という言葉がよく使われている。辞書では、「ある物事に深い感銘を受けて強く心を動かされること」となっている。物事は、“ひと・もの・こと”それぞれと人との間での関わりを意味している。そして、その人の心が動く、つまり何らかの変化がもたらされた結果が、感動である。
 もちろん、涙を流すような強く心が動かされる大きな感動から、製品と接して何となくその良さを感じて心が動く程度の小さな感動まで、感動には幅の広さがある。ここでは、この小さな感動を対象として、以下話を進めていくことにする。
 大きな感動は、当然、その心の動きを意識することができるので、言葉で表現できる。したがって、言葉での評価や涙のような明確な行動指標から、その感動を推測することができる。しかし、小さな感動は、“何となく”感じる心の動きであり、実は感じている本人自身もおそらく意識してない、言葉では表現しきれない、心の動きである。
 心の動きは、言葉で表現されることだけではなく、本人も気がつかない“何となく”感じていることが多くある。官能評価や調査のような言葉での表現だけでは捕捉しきれない部分である。潜在的な“何となく”に、わずかでも光を当てて見える化できれば、ものづくり・ことづくりの方向性が大きく変わることになる。
 潜在的な“何となく”の側面は、生理・脳機能などの生体測定で、ある程度知ることができる。この点について、この後、研究事例を含めて述べていく。また、インタビューデータの特別な解析や、言葉のデータであっても工夫した多変量解析、例えばグラフィカル・モデリングなどで、ある程度は“何となく”の見える化が可能である1)(図1)。

図1 心の動きの潜在性
図1 心の動きの潜在性

2.生理指標を有効に活用するために

 大きな感動では、その心の動きが意識され、言葉で表現できるとともに、生理・脳機能などの生体反応に明確に反映されることが期待できる。しかし、小さな感動では、“何となく”感じる心の動きのため、言葉はもちろん、生体反応に明確に反映されることはあまり期待できない。言葉で表現しきれない以上、何とか工夫して生体反応でその心の動きを補足できないかと考えることになる。つまり、“何となく”の見える化である。
 以前に、ある企業から次のような依頼を受けた。「頭の良くなる」香りを手に入れたので、本当に頭が良くなるかを調べてほしいというものであった。もちろん、香りを嗅いで頭が良くなることはありえないと思ったが、その会社の社員の人たちは、みんな仕事がはかどり、頭が良くなった気がするといっている、とのことであった。
 そこで、「頭が良くなる」ということは、おそらく何らかの脳活動が活性化することになるだろうと考え、NIRSを使用して主に前頭葉の脳機能測定を行なった。当該香料(脳活)、ラベンダー、ミネラルウオーター(香りなし)、の3種を嗅いだ時の脳機能を測定した。結果に全く違いはなかった。これは、香りを嗅ぐ、頭が良くなる、脳機能、というストーリー化での測定であった。
 次に、香りを嗅ぐ、集中力が増す、このことで頭がよくなった気がする、というストーリー化を考えてみた。このストーリーでは、脳機能というよりも自律神経系の測定を考えることになるであろう。そこで、香りを嗅いだときの顔面温を測定し、最低と最高の差を求めた(図2)。当該香料の顔面音の低下は、他の2つの香りに比べて10%の有意傾向で低下していた。おそらく、当該香料は、眠気を飛ばし集中力を高める効果があると考えられる。
 より明確な結果を得るためには、眠気を感じたり、リラックスしたりしている状況を設定して、香りを嗅ぐことで、より強調された測定結果が得られると考えられる。つまり、“何となく”の状態を際立たせる状況設定が、より明確な測定結果をもたらすということである。

図2 顔面温による香りの効果
図2 顔面温による香りの効果

 このように、“何となく”感じている心の動きを特定して、このことを生体反応で測定するために、どのように適切なストーリー化ができるかが、重要である。心地よさを明らかにしたいと考えたときに、心地よい時に人はリラックスしているとストーリーを立てて、リラックスしていれば、副交感神経の活性化を測定すればよいということになる。さらに、このことを際立たせるために、リラックスとは逆の状況を設定することで、より測定結果に反映される可能性が出てくる。もちろん、この状況は、なるべく日常性を担保したものである必要があろう。
 次に、“何となく”感じる感動を指数化しようとする試みを紹介する。

参考文献

1) 神宮英夫(2017). ものづくり心理学ーこころを動かすものづくりを考えるー 川島書店

次回に続く-



【著者紹介】
神宮 英夫(じんぐう ひでお)
金沢工業大学 情報フロンティア学部心理科学科
教授・文学博士

■略歴
1977年 東京都立大学人文学部心理学教室助手
1980年 東京学芸大学教育学部教育心理学教室助手
    同専任講師、同助教授
1998年 明星大学人文学部心理・教育学科心理学専修教授
2000年 金沢工業大学教授
2012年〜2015年 金沢工業大学情報フロンティア学部学部長
2016年〜2019年 副学長
2007年より 金沢工業大学感動デザイン工学研究所長. 文学博士

ロボットにおける擬似感情 −計測・生成・倫理− (1)

千葉工業大学 教授
未来ロボット技術研究センター
富山 健

1. はじめに

 近年の日本において長期的に真剣に考えなくてはならないロボットの応用先は介護の現場である.世界に例を見ない急速な超高齢化という現実があり,介護者の確保は危機的な状況になっている.この現実に対してロボットが貢献できる役割は多い.
 この背景の元,筆者らは介護の現場へのロボット応用の研究を開始し,「介護者支援ロボット」の概念を提唱した.このロボットの基本的な機能として被介護者の感情状態検出とロボット自体の感情の生成さらにその感情の表出,が設定された.この3つを合わせて擬似感情と定義しているが,この小論ではこれについて述べる.
 一方,人間とのコミュニケーションを主たる目的にしたいわゆるソーシャル・ロボットと呼ばれるロボットに関して倫理的側面が近年注目されるようになってきた.擬似感情を持つ介護者支援ロボットも同様のロボットに分類できるため,この点についても考察を加えてみたい.

2. 介護者支援ロボット

 よく言われる「介護ロボット」とはどのようなものであろうか.2021年の最近のものでは,センサ類とAIで患者を診ると宣伝されている看護ロボ・グレイス1)に期待を込めて注目している読者もいることと思う.しかし,現場で現実に使用されているいわゆる介護ロボットは実に単純なものに限られている.詳しくは介護ロボットポータルサイト2)に詳しいのでそちらを参照していただきたい.
 ここで,私の研究グループのアプローチを紹介する.介護行動には様々なものがあり,人間に向いているもの,例えば会話、やロボットに向いているもの,例えば24時間の見守り,がある.ロボットが得意とする仕事を引き受ければ人間の介護者がより多くの被介護者に対してより良い介護ができるようになり,全体としての介護の質を向上することができる.つまり,ロボットの存在目的は介護者を支援することにあり,そこから介護者支援ロボットという概念が生まれた.
 24時間の見守りにおいては,被介護者の物理的な状態の見守りだけでは不十分で喜怒哀楽のような感性的な状態の観測も必要であることが介護の現場でのボランティアや実習を通して明らかとなった*1 .そこで被介護者の物理的な状態の観測と共に感情状態を推定する能力も開発項目に含まれた.同時に,介護者不足から介護者が余裕を持って被介護者と接することは現実的に不可能であり,介護に切れ目が生じてしまうことも明らかである.その切れ目を繋げることが必須であり,それには介護者の「こえかけ」のような被介護者への能動的な働きかけをする能力が必要であるが,ロボットというプラットフォームはこれを可能にする.

*1 排泄介助支援もよく言及されたが,これに関しては研究室OGの宇井吉美氏が起業したaba社が,匂いで排泄を検出するHelppadを開発・販売している。

3. 擬似感情

 人間の行動を規定するものとして「知・情・意」が知られている.これらに相当する機能を司っている脳各部も知られるようになってきた.特に最近大きな話題になっているAI,人工知能は人間の大脳皮質(cerebral cortex)のなかでも前頭前野(prefrontal cortex)が司っている機能を模倣している.
 一方,特にソーシャル・ロボットと呼ばれるジャンルにおいて「感情を持った」というキャッチフレーズをよく見かける.情に関しては脳科学では感情ではなく情動という言葉がよく使われるが,大脳辺縁系(cerebral limbic system)が担っていることが知られている.この部分の機能をロボットに持たせることによって人間との相性をよくすることが期待されているわけである.しかし,そういったソーシャル・ロボットたちは本当に感情を持っているのであろうか?ロボットが怒っているように見える時果たしてロボットは本当に怒っているのであろうか.あるいは怒っているロボットは必要なのであろうか.私はこれらの設問に対してNOと答える.
 知能に関して,研究者たちは人工知能という言葉を使いはっきりと本物の知能ではないことを宣言している.ロボットの振る舞いの中に感情を感じる時,それを感じているのは人間であってロボットは単にそう見せるための振る舞いをしているにすぎない.よって,ロボットが持つのは正確には「擬似感情(Virtual Emotion)」である.本物ではないがあたかも本物のようなという意味で人工ではなく擬似(Virtual)を使っている.3)
 擬似感情処理部(広義の擬似感情とも呼ばれる)を含むロボット行動生成機構の概念図を図1に示す.ここには感情検出部,擬似感情生成部,及び感情表出部の3モジュールの関係も示されている.

図1 広義の擬似感性を含むロボット制御機構
図1 広義の擬似感性を含むロボット制御機構

 感情検出部の目的はパートナーの感情状態を検出することであり,パートナーの音声,表情,しぐさや環境条件などを入力としている.出力感情にはエクマンの6感情(怒り・嫌悪・恐怖・喜び・悲しみ・驚き)から驚きを除いた5感情に平静を加えた6感情を用いた.驚きの検出は別モジュールで行い,その後の処理も別の経路を用意した4)が,ここでは省略する.
 初期の感情検出部にはニューラルネットワーク(NN)などを用い,音声,表情からそれぞれ感情を推定していた.音声,表情,しぐさの3個の入力を統合して感情を検出するために用いた検出部は,それぞれに対応したベイジアンネットワーク(Bayesian Network)を用い,それらを最適化された混合比を使って統合した.5)

 図2に示される擬似感情生成部は狭義の擬似感情とも呼ばれるが,パートナーの感情状態と1ステップ前のロボット自身の擬似感情状態のフィードバックを用いて現在のロボットの擬似感情状態を作りだす感情エンジンがその主体をなしている.重要な点はこのフィードバック路を持つことにより過去の情報を使うことになり,擬似感情生成部が記憶を持つ事である.

図2 擬似感情生成部内の感情エンジンと1ステップ時間遅れ(D)を含むフィードバック路
図2 擬似感情生成部内の感情エンジンと1ステップ時間遅れ
(D)を含むフィードバック路

 実際の感情エンジンにはNNや隠れマルコフモデル(HMM)などの他にユニークな構造としてペトリネット(Petri-Net)と遺伝的アルゴリズム(GA)を組み合わせたものを用いた.この構造においてはペトリネット内に複数存在するトランジッションと呼ばれる部分が発火することでネット内を流れるトークンと呼ばれるものを消費・生成し,そのトークンの分布状態を感情に対応させている.
 ここで,感情エンジンには適応能力あるいは学習能力が必須の機能であることを述べておきたい.その理由は簡単で,感情の遷移は個人によって千差万別である,ということである.ベテランの介護者は被介護者の感情状態に対して自分の感情状態を合わせることによっていわゆる「馬が合う」関係性を構築している.介護者の不在を補佐する役割を担うためには,ロボットも被介護者とそういった良好な関係性を構築している介護者の感情遷移をなぞる能力が必要である.これを我々研究グループでは「感情遷移の個性化」と呼んでおり,この個性化にはペトリネットとGAを組み合わせた構造が有効であった.ペトリネットの発火状況を戦略的に制御することによって感情の推移パターンを変化させ,個性を持った感情生成を可能とした.6)

参考資料

  1. Grace robot, https://www.youtube.com/watch?v=ByLiGisgpN0&t=3s
  2. 介護ロボットポータルサイト,http://robotcare.jp/jp/home/index.php
  3. Y. Miyaji and K. Tomiyama, “Virtual Emotion for Robots –What, Why, and How–,” Intl. Symp. on Affective Sci. and Engr. (ISASE-MAICS 2018), Proc. A1-2, Spokane, May 2018.
  4. M. Zenkyo and K. Tomiyama, “Surprise Generator for Virtual KANSEI Based on Human Surprise Characteristics,” Proc. (CD), 14th Intl. Conf. on Human – Computer Interaction (HCI2011), Florida, July 2011.
  5. K. Kamijo and K. Tomiyama, “Emotion Estimation Based on Facial Image, Voice Sound and Body Motion,” Intl. Assoc. of Societies of Design Research (IASDR2013), 01D-4 (Paper number 1678-1), Tokyo, August 2013.
  6. Y. Miyaji and K. Tomiyama, “Construction of Virtual KANSEI by Petri-net with GA and Method of Constructing Personality,” Proc., 12th IEEE Workshop on Robot and Human Interactive Communication (RO-MAN2003), pp. 6B4(CD-ROM), 2003.

次回に続く-



【著者紹介】
富山 健(とみやま けん)
千葉工業大学 未来ロボティクス学科 教授
未来ロボット技術研究センター(fuRo)研究員

■略歴
1971年 東京工業大学 制御工学科 学士
1973, 77年 カリフォルニア大学・ロサンゼルス校
システムサイエンス学科 修士(M.S.),同 博士(Ph.D.)
1978~1983年 テキサス大学・エルパソ校 電気工学科 助教授
1983~1988年 ペンシルバニア州立大学 電気工学科 助教授
1988~2000年 青山学院大学機械工学科 助教授,のち教授
2000~2006年 青山学院大学情報テクノロジー学科 教授
2006~2014年 千葉工業大学未来ロボティクス学科 教授
2014年~ 現職

主な研究分野は介護者支援ロボット,ロボットの擬似感性,並びにロボットの倫理.英語による学術論文発表指導を日本機械学会及び日本感性工学会を含む様々な団体にて実施.YouTubeチャンネル「CIT Quality Education」で英語による講義「数学基礎」シリーズ担当.
活動の主体を表すキーワード:ロボット、介護、教育、プレゼンテーション指導

■著書・連載
理系科学英語 徹底トレーニング [ロボット工学],(監修),アルク
私の修行時代,「修行時代の出会いを生かす」,(分担),弘文堂
いざ国際舞台へ! 理工系英語論文と口頭発表の実際,(共著),コロナ社
国際舞台で“結果を出す” テクニカルイングリッシュの心得第1回〜12回,日本機械学会誌 2018年,Vol.121, No. 1190~1201連載
“Virtual Emotion for Robot – Towards Human Support Robot,” Uehiro-Carnegie-Oxford Conference: Ethics and the Future of Artificial Intelligence, 2018.

主観的触覚の評価と活用に関する展望 (1)

名古屋工業大学
大学院工学研究科 教授
田中 由浩

1.はじめに

 触覚が情報化されることの意義は大きい.モノの触感,道具の使用感,着心地,座り心地,触れることを通して得る様々な感覚があり,これらの感覚が数値化されれば,客観的な評価やデザインへの活用はもちろんのこと,その数値を利用した新しいサービスが期待できる.さらに,触覚は運動とも密接であり,身体認識や情動とも関連する.VRやロボット,またそれらを活用した応用技術にも展開が期待される.
 ここで,視覚や聴覚と比べると触覚は外部環境と身体との直接の力学的インタラクションを通して得られる感覚であり,より能動的で個々人の身体に依存した感覚といえる.すなわち,対象の物理的な特性だけでなく,皮膚の特性,さらにはどのように触るかの運動の特性も,感覚を左右する重要なパラメータとなる.筆者はこのような触覚の特性を鑑み,「主観的触覚」と呼んでいる.触覚の時空間特性などの基礎的な機械受容器の生理学的知見1)については省略させていただき,本稿では,主観的触覚を扱う上で注目したい皮膚特性や運動特性について,またその情報化の一例や応用展開について,筆者の関連する研究開発事例を中心に紹介したい.

2.皮膚特性と運動特性

2.1 皮膚特性

 触覚を検知する複数種類の機械受容器は皮膚の内部にあり,図1に示すように皮膚には指紋や真皮乳頭,層構造などの力学的特徴がある1).従って,対象の物性値は皮膚を介して変換され,機械受容器に伝えられている.指紋や真皮乳頭が皮膚への機械刺激を増強して機械受容器に伝える仕組みが実験や有限要素モデルで明らかにされつつある2) 3)
 筆者らは皮膚上で発生する伝播振動に着目をしている.対象をなぞった時に直接触った皮膚に振動が生じるが,その振動は皮膚を伝播し触れていない領域にも伝わる4).そしてこのような皮膚振動とテクスチャーや粗さとの対応関係が示されている5)6).そこで,指先にスイープ振動を与え,皮膚を伝播した振動を計測し,皮膚振動の伝達関数を求めた.その結果,100−300Hz付近に共振周波数を有すること,個人差があることを示した(図2)7).また,押付け力によっても伝達関数は変化する8).押付け力の増大とともにゲインおよび共振周波数が上昇する傾向が見られ,特に0.25 Nと0.5 Nの間に有意な差が確認された.押付け力による感覚の変化の観点からは特に,小さな押付け力で対象を触れる場合に,押付け力の変動に注意が必要であることを示唆する.

図1 皮膚の基本的構造と機械受容器の分布
図1 皮膚の基本的構造と機械受容器の分布
図2 皮膚伝播振動の周波数特性,2名の被験者の結果(実線F(s):センサの特性も含む実験値,点線G(s):指をマス・バネ・ダンパモデルとして推定された伝達関数)
図2 皮膚伝播振動の周波数特性,2名の被験者の結果(実線F(s):センサの特性も含む実験値,点線K(s):指をマス・バネ・ダンパモデルとして推定された伝達関数)

 皮膚振動に関連する研究として,テープを指に貼り付けることより指先感度の増強を調べた9)(図3).テープを貼り付けることで,振動が伝播しやすくなり,指先に加えられた振動により皮膚に発生する振動は増大する.この時の指先の触覚感度を計測した結果,250 Hzの振動に対する検出閾値が有意に小さくなることが示された.特に,弁別閾値も減少した被験者については,感度の増強量と皮膚振動の増大量について有意に相関も認められた.人は触れた対象に対し触感を想起するが,実際には自身の皮膚の力学状態を手かがりにしていることを示した結果といえる.

図3 テープによる皮膚振動および感度の増強(250Hzに対する振動検出閾値,白:テープなし,灰色:テープあり)
図3 テープによる皮膚振動および感度の増強(250Hzに対する振動検出閾値,白:テープなし,灰色:テープあり)

2.2 運動特性

 触覚は皮膚特性だけではなく,押付け力によって皮膚特性も変化するように,運動も極めて重要なパラメータとなる.さらに,触覚の受容と運動との間には双方向の関係があり,私たちは対象や目的に応じて,運動を意識的/無意識的に調整している.物体把持では,皮膚表面で生じた局所的な滑りを検知し,適切な力加減で物体を把持することができる.対象の触感の取得においても,なぞり動作での凹凸検出に対する押付け力の差10)や対象の硬さに応じた押付け力の差11)が報告されている.人は必ずしも同じ運動で対象を触るとは限らず,状況に応じて適切に運動を変化させている.
 筆者らは,粗い試料群と滑らかな試料群を用意し,さらに,なぞるのみ,弁別課題,識別課題を課した場合について,押付け力およびなぞり速度を計測し,人がどのような運動戦略を持っているかを調査した12)(図4).試料には,番手の異なるサンドペーパーとラッピングフィルムを準備した.実験の結果,目的なく単純になぞった場合には,粗い試料群に対して押付け力,なぞり速度ともに小さくすることが示された.これは,快適性が要因と考えられる.一方,課題がある場合には異なる傾向が見られた.いずれの課題についても,粗い試料群よりも滑らかな試料群について,使用する押付け力の変動が大きいことが示された.滑らかな試料群では,発生する皮膚振動が小さく,より大きな力を使用することで刺激を大きくして課題を達成しやすくする狙いがあると考えられる.また,弁別課題と識別課題では,いずれの試料群についても,弁別課題の方がなぞり速度が速くなった.これは,弁別のために記憶を鮮明にして比較しやすくするためと考えられる.

図4 粗い試料群と滑らかな試料群に対する目的別の押付け力となぞり速度の例
図4 粗い試料群と滑らかな試料群に対する目的別の押付け力となぞり速度の例

参考文献

  1.  岩村吉晃, タッチ<神経心理学コレクション>, 医学書院, (2001).
  2.  前野隆司、小林一三、山崎信寿, ヒト指腹部構造と触覚受容器位置の力学的関係, 日本機械学会論文集(C編)、63(607), pp. 881-888 (1997).
  3.  J. Scheibert, S. Leurent, A. Prevost, G. Debregeas, The role of fingerprints in the coding of tactile information probed with a biomimetic sensor, Science, 323, pp. 1503-1506(2009).
  4.  Y. Shao, V. Hayward, Y. Visell, Spatial patterns of whole-hand cutaneous vibration, Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(15), pp. 4188-4193 (2016).
  5.  S. Bensmaïa, M. Hollins, Pacinian representations of fine surface texture, Perception & Psychophysics, 67(5), pp. 842-854 (2005).
  6.  L. R. Manfredi, H. P. Saal, K. J. Brown, M. C. Zielinski, J. F. Dammann, V. S. Polashock, S. J. Bensmaia, Natural scenes in tactile texture, Journal of Neurophysiology, 111(9), pp. 1792-1802 (2014).
  7.  Y. Tanaka, D. P. Nguyen, T. Fukuda, A. Sano, Wearable skin vibration sensor using a PVDF film, Proceedings of the 2015 IEEE World Haptics Conference, pp. 146-151 (2015).
  8.  Y. Tanaka, T. Yoshida, A. Sano, Practical utility of a wearable skin vibration sensor using a PVDF film, Proceedings of the 2017 IEEE World Haptics Conference, pp. 623-628 (2017).
  9.  Y. Tanaka, Y. Ueda, A. Sano, Effect of skin-transmitted vibration enhancement on vibrotactile perception. Experimental Brain Research, 233, pp. 1721–1731 (2015).
  10. A. M. Smith, G. Gosselin, B. Houde, Deployment of fingertip forces in tactile exploration, Experimental Brain Research, 147(2), 209-218, (2002).
  11. L. Kaim, K. Drewing, Exploratory strategies in haptic softness discrimination are tuned to achieve high levels of task performance, IEEE Transaction of Haptics, 4 (4), pp. 242-252 (2011).
  12. Y. Tanaka, W. M. Bergmann Tiest, A. M. L. Kappers, A. Sano, Contact force and scanning velocity during active roughness perception, PLOS ONE, 9(3), e93363 (2014).

次回に続く-



【著者紹介】
田中 由浩(たなか よしひろ)
名古屋工業大学大学院工学研究科 教授

■略歴
2006 年東北大学大学院工学研究科修了.同年より名古屋工業大学助手,特任助教などを経て,2015 年同准教授,2021年教授,現在に至る.これまでに JSTさきがけ研究者,ユトレヒト大学客員助教,藤田保健衛生大学医学部客員准教授,秋田大学産学連携推進機構客員教授などを兼任.触覚を現象的に捉え知覚メカニズムの解明,およびそれを活用した触覚デバイスの開発と応用研究に取り組んでいる.錯覚や知覚メカニズムに基づく触感デザイン,触覚フィードバックによる感覚運動制御の支援,触覚の共有による人―人/ロボット協調システム,触覚コミュニケーションの研究などに従事.Advanced RoboticsおよびIEEE Transactions on HapticsにおいてAssociate Editorを務める.博士 (工学).

感性の計測 ―体感からひも解く評価および提示技術の紹介― (1)

宇都宮大学 工学部 准教授
石川 智治

1.はじめに

 感性は、複合的で多種多様な分野に関連する。そのため、多くの研究者により、その定義などの議論1)-4)が重ねられてきた。本稿では、辞書などで一般的に記述される定義:物事(モノやコト)に対する感受性や外界からの刺激を捉える感覚的能力とする。この立場では、感性は、モノやコトなどの対象の特性や内容、及びそれらが存在する環境や状況に応じて、ヒトの内面に喚起されるものといえる。したがって、感性の計測5)6)は、ヒトの内面を表す心理的側面および生理的側面を捉えることであり、それは環境や状況に影響されるモノの物理的側面やコトの内容などに起因すると解釈できる。
 心理的側面の主な計測には、評定法や尺度法などを用いた方法7)や感性語などの評価指標に対する評価を統計分析する方法8)9)などがあり、対象に対する認知や印象などを尺度上に記述して分析・定量化することにより、感性の心理的メカニズムなどが研究されてきた。また、生理的側面の主な計測には、脳波、心拍や皮膚・筋電位など、自律神経系および運動神経系を中心とした指標10)11)があり、各々の指標に対応する測定器を用いた計測結果から、ヒトの感性の生理的なメカニズムが研究されてきた。ただし、これらは心理学および生理学の個々の分野における方法や計測指標に基づく結果であり、心理と生理の相互の関係性を重視した感性情報処理メカニズムや感性モデル12)-14)の検討には至っていない。それでも感性を探究する研究者は、対象に関連する感性語の慎重な検討や多チャンネル・多種の生理反応の計測・分析の実施など、より確度の高い感性の心理的・生理的なメカニズムの解明に挑戦している。
 近年では、情報技術を活用した数理的な感性モデリングの研究15)16)、色と香りなどの共感覚に注目した感性の多次元的な構造化に関する研究17)、オノマトペによる心理・物理の関係を学習させて多感覚感性のAI化を目指す研究18)、感性の階層構造に注目して心理・生理を統合的に捉えてデザインや社会実装を目指す研究19)、脳波に特化した感性計測を実用化させた研究20)などが行われてきている。これらの研究は、感性を多次元・多感覚の視点から多角的に捉えているため、感性の新たな観点やモデルの提案に大きく寄与すると考えられる。しかし、ヒトの感性において重要かつ密接に関わる心理と生理の相互関係に重点をおいたアプローチではないため、それら相互に関連するデータが取得できていない可能性を含んでいる。つまり、あくまでも各分野における方法や計測指標(切り口)に基づいた計測結果による関係付けや学習などを基盤とするため、計測されていない未知の要因や特性までは言及できていない可能性がある。そのため、上述した研究において得られた結果が新たな切り口となり得るかどうかなどを含めて、感性の本質を捉えた計測およびメカニズムの解明などの議論と研究開発が求められる。
 本稿では、心理と生理の相互関係を重視した感性計測を実現するための一つの切り口として、「体感」に注目した研究を紹介する。またそれと同時に、その「体感」にとって重要となる空気を媒体としたヒトの感覚:空気覚の研究について紹介する。この記事を切欠として、より多くの研究の萌芽的発見の一助となれば幸甚である。

2.「体感」に注目した心理と生理の相互関係を重視した新たな切り口:体感評価語

 生の演奏会(ライブ)を視聴した人の多くは、歌い手の息遣い、会場の雰囲気、そしてその場の臨場感などを“体感”し、迫真の演奏に高揚感をおぼえたり、感動に至った経験があるのではないだろうか。また、ライブを視聴した経験がない人でも、心を奪われるような印象的なシーンとの遭遇や、滅多に起きないような衝撃的な出来事を体験するなど、その瞬間に生じた感性や感動などが深く記憶に刻まれるような経験をしてきていると考えられる。高忠実な音響再生システム(後者では、高忠実な映像再現システムも含む)では、実際の演奏を視聴した際に生じた感性や味わった感動と等価なものを、再生音を視聴した際に生じさせるために、演奏を高忠実に再生すること(後者では、記憶に深く刻まれたシーン等の経験時に生じた感性や感動と等価なものを再現映像の視聴にて高忠実に再現すること)が求められる。つまり、このような観点から、感性を喚起させる情報〔感性情報〕の忠実な再生を重要視する音響再生/映像再現システムの研究開発が行われてきた(以降、映像再現も含むが説明上省く)21)。この研究では、視聴者に実際の演奏の視聴時と同様の感性や感動を喚起させるための必要条件は、感性や感動を喚起させる情報を含んだ演奏コンテンツと、それを忠実に再生する上述のシステム、そしてその再生音を視聴する静寂な環境、の三項目を満足する「場」の実現であることを明らかにした。これまでに、その「場」を体験した約 1000人以上の人々が、感動などに至ったことを実験的に実証している。そして、その時に発せられた評には、多くの体感に関連する身体感覚の言葉が含まれており、それらを“体感評価語”として28語を定義した(表1 ※詳細は文献を参照のこと)22)

表1:体感評価語 22)
体感評価語(28語)
“首筋から頭の天辺にかけてしびれる”、“声が首筋から頭の天辺にかけてしびれる(体に電気が走る)”、“身体が音楽に合せてのってくる・動く”、“音楽に同期して身体全体の血液が踊っている”、“脳や身体が解きほぐされる”、“身体に溜まっていたしこりが解消される”、“癒される”、“首の後ろ斜めから音が泌み込む”、“足のつま先から音が泌み込む”、“頭の中が真っ白になる”、“頭がふわっとする”、“頭の後ろが熱くなる”、“顔が上気する”、“背中から腰が温かくなる(脳にいたる脊髄などの中心部)”、“指がしびれる”、“背中がぞくっとする”、“鳥肌が立つ”、“腸が震える”、“五臓六腑が震える”、“胸に染み込む”、“音が腰(S字結腸あたり)まで下がる”、“背骨に響いてくる”、“身体が包み込まれる”、“身体全体の細胞が音を聴いている”、“大きな風船を抱っこしているようだ”、“サラウンドのゆりかごのようだ”、“空気を肌で感じる”、“音が頬を撫でる”

 また、体感評価語は身体感覚を伴った言語であるため、心理学と生理学の相互の橋渡し的な役割を担っており、感性の本質を捉えた計測およびメカニズムの解明などの新たな切り口として期待される。また、この相互関係に加えて、物理学との関係を探究することにより、感性に関与する新たなモノづくりの知見が得られるとも考えられる(図1)。

図1:体感評価語の位置づけ
図1:体感評価語の位置づけ

3.「体感」に注目した空気流を媒体とする新感覚:空気覚

 上述したように、聴取者がライブなどで経験した時と同様の感性や感動を生じ得る「場」の体感から身体感覚を伴った体感評価語が導出された。またこのことは同時に、音の伝搬において体感する空気流が、ライブなどで経験した時と同様の感性や感動の喚起に寄与したことを示唆している。一般に、皮膚は身体全体を覆って外界の刺激から身を守る役割を担っているだけではなく、身体全体に分布する外界を認識するセンサとして存在している11)ため、空気流が皮膚に触れることにより、ヒトの心理や生理状態に影響を及ぼしたと考えられる23)。ヒトが対象を認識する際は、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚などの五感が支配的であると言われているが、上記したヒトの心理や生理状態への影響は、ヒトの感性を主軸として考えた“体感”という視点から導出された感覚※であり、空気を媒体として生じることから『空気覚』と呼称する。そして、この空気覚を生じさせる空気流発生装置(AFGD: Air Flow Generating Device)を開発(4節)し、その空気流に対するヒトの認知特性(5節)、および嗜好や温冷に関わる感性的・生理的・物理的特徴(6節)を明らかにした。この空気流発生装置(AFGD)は、新しいメディアになり得ると考えられる。(※体性感覚11)に類する感覚という解釈もできる)


次回に続く-



参考文献

  1.  辻三郎編:感性の科学 感性情報処理へのアプローチ,サイエンス社, 1997.
  2.  原田昭:感性の定義, 感性評価2, 感性評価構造モデル構築特別プロジェクト研究組織, 岡崎章編著, pp.41-47, 1999.
  3.  椎塚久雄, 原田昭:感性とは何か ―感性の由来とそのフレームワーク―, 電子情報通信学会誌, Vol.92, No.11 pp.912-914, 2009.
  4.  長沢伸也:感性工学の基礎と現状, 日本ファジィ学会誌, Vol.10, No.4, pp.647-661, 1998.
  5.  上條正義:感性計測による手触り・肌触り評価方法の検討, 感性からのものづくり(2), 日本化粧品技術者会誌, Vol. 45, No.2, pp.92-99, 2011.
  6.  長町三生:感性工学とは, 繊維学会誌, Vol.50, No.8, pp.468-472, 1994.
  7.  難波精一郎, 桑野園子:音の評価のための心理学的測定法, 音響テクノロジーシリーズ, 日本音響学会編集, 1998.
  8.  斎藤堯幸, 宿久洋:関連性デ-タの解析法 -多次元尺度構成法とクラスタ-分析法-, 共立出版, 2006.
  9.  奥野忠一, 久野均, 芳賀敏郎, 吉澤正:多変量解析, 日科技連出版社, 1981.
  10. 吉田倫幸:感性・快適性と心理生理指標, 日本音響学会誌, Vol.50, N.6, pp.489-493, 1994.
  11. 真島英信:生理学, 文光堂, 2002.
  12. 加藤俊一:視覚感性の工学的なモデル化とその情報提供サービスへの応用, 日本画像学会誌, Vol.47, No.3, pp.183-188, 2008.
  13. 荻野晃大, 加藤俊一:感性検索システムの設計手法:感性システムモデリング, 情報処理学会論文誌, Vol.47, No.SIG4, pp.28-39, 2006.
  14. 相良泰行:食感性モデルによる「おいしさ」の評価法, 日本食品科学工学会誌, Vol.56, No.6, pp.317-325, 2009.
  15. H. Yanagisawa, C. Miyazaki, C. Bouchard: Kansei Modeling Methodology for Multisensory UX Design, 21st International Conference on Engineering Design ICED17, pp.159-168, 2017.
  16. 大西厳, 上中田歩, 太細孝, 関口彰, 正司強, 木村一郎:ニューラルネットワークを用いた色感性モデルの構築, 日本感性工学会論文誌, Vol.11, No.1, pp.103-111, 2012.
  17. 齋藤美穂:感性をつなぐ色彩―色彩を結び目とした多感覚研究への展開―, 基礎心理学研究, Vol.35, No.1, pp.29-34, 2016.
  18. 坂本真樹:オノマトペによる感性の定量化 ―‘もの’と感性をつなぐ技術へ―, 電子情報通信学会誌, Vol.100, No.11, pp.1193-1198, 2017.
  19. 長田典子:感性の指標化とプロダクトデザインへの応用, 電子情報通信学会誌, Vol.102, No.9, pp.873-880, 2019.
  20. 満倉靖恵:脳波によるリアルタイム感性計測とその応用 ―実社会における感情・感性を用いる試みの広がり―, 電子情報通信学会誌, Vol.13, No.3, pp. 180-186, 2020.
  21. 宮原誠:未来映像音響創作と双方向臨場感通信を目的とした高品位 Audio – Visual System の研究, 平成13年度日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業研究成果報告書, (理工領域)マルチメディア高度情報通信システム, 1997.
  22. 石川智治, 宮原誠: バーチャルリアリティに重要な体感に基づく心理生理的評価の一提案, 映像情報メディア学会誌, Vol.60, No.3, pp.446-448, 2006.3.
  23. 傳田光洋:皮膚感覚と人間のこころ, 新潮社, 2013.


【著者紹介】
石川 智治(いしかわ ともはる)
博士(情報科学)
宇都宮大学工学部、基盤工学科・情報電子オプティクスコース、准教授

■略歴
2001年3月 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科修了
2001年4月 日本学術振興会・未来開拓学術研究推進事業・RA
2001年11月 北陸先端科学技術大学院大学 助手
2008年10月 宇都宮大学大学院工学研究科 助教
2012年6月 宇都宮大学大学院工学研究科 准教授
現在に至る

■専門分野
感性情報学、多感覚認知、質感知覚、心理物理学

■学会活動
日本感性工学会 理事 (2021-)

千葉大、光渦を照射するだけで構造色を示すフォトニックリングを直接印刷する研究

 千葉大学分子キラリティー研究センターの尾松孝茂教授、桑折道済准教授、北海道大学大学院工学研究院の山根啓作准教授、大阪市立大学大学院理学研究科の柚山健一講師、大阪大学大学院基礎工学研究科の川野聡恭教授らの共同研究グループは、誘電体(絶縁体)のナノ微粒子が分散して存在する液膜に光渦(注1)を照射することで、青から青緑の構造色(注2)を示すフォトニック構造(注3)のマイクロリングを印刷することに成功した。
 さらに、金属のナノ微粒子が分散する液膜に光渦を照射することにより、単一の金属ナノ粒子を高精度(高解像度)で印刷できることも示した。

 これらの印刷技術は、マイクロリングレーザー、プラズモニックナノアンテナといった次世代の光通信や、バイオセンサといったデバイス開発など、次世代プリンタブルエレクトロニクス技術の確立に繋がることが期待される。また、光渦とナノ粒子の相互作用に基づくこれらの現象を応用することで、混合物中のナノ微粒子の種類(誘電体であるか金属であるか)に応じてナノ微粒子を空間的に分離する「光渦ナノ粒子ソーティング」という新しいナノ微粒子分離法が可能となる(図1)という。
 本研究成果は、2021年10月25日にドイツ学術誌「Nanophotonics」にてオンライン掲載された。

●研究の背景
 近年、電子デバイスのフレキシブル化、製造のオンデマンド化の需要の高まりに伴い、半導体・電子製品などを印刷(プリンティング)により製造するプリンタブルエレクトロニクス技術に注目が集まっている。レーザー誘起前方転写法(注4)(Laser-induced forward-transfer: LIFT)は、単一レーザーパルスを液膜に照射して印刷したい物質(ドナー物質)を吐出させて転写するという印刷技術。ノズルを使うノズルジェット印刷とは異なり、高濃度で高粘度なドナー物質でもノズルの目詰まりの心配がなく印刷できるため、次世代プリンタブルエレクトロニクスの印刷手法として期待されている。
 しかし、LIFTは印刷できるドットの形状やドット内のドナー物質の空間分布を制御することは原理的に不可能だった。これらの課題を克服するため、光渦と呼ばれる特殊なレーザー光を用いた光渦レーザー誘起前方転写法(光渦LIFT)を考案したとのこと。

●研究者のコメント(千葉大学分子キラリティー研究センター 教授 尾松孝茂)
 本技術を活用すると、ナノ微粒子の濃度や光渦の角運動量の次数を変調するだけで様々な色調を発色させることができるので、色材を用いないカラー印刷が可能になる。また、レーザー色素などを含有したナノ微粒子をドナーに用いた場合、構造色に相当する様々な波長で発振するマイクロリングレーザーを印刷技術で形成できる。さらにマイクロリングは光の伝播速度を制御できる光ルーターなどにも応用できると思われる。金属ナノコアはバイオセンサなどのデバイス応用などが期待できる。本技術は次世代プリンタブルフォトニクスに繋がることが期待できるとしている。

●用語解説
(注1))光渦:等位相面(同じ位相の場所を通り、かつ波の進行方向に対して垂直になるような面)である波面が螺旋状(螺旋波面)になっており、中央に光の暗点がある円環型の強度分布をもつ光を光渦と呼ぶ。光渦は、1波長あたりの螺旋波面の巻き数ℓ(整数)に対してℓℏのトルク(軌道角運動量)を有する。
(注2)構造色:物体自身が持つ色ではなく、周期的な微細構造によって発現する色。微細構造により、特定の色のみを反射することで、タマムシのような光沢のある鮮やかな発色を示す。
(注3)フォトニック構造:光の波長と同程度の周期でナノ微粒子が配列してできた構造。特定の周波数に対する選択的な回折(反射)が起こるため、層数あるいは層間隔に応じた構造色が現れる。
(注4)レーザー誘起前方転写法(LIFT):透明基板上に形成したドナー液膜に対してレーザーパルスを照射して、前方にドナー液滴を飛翔させて転写する印刷技術。原理的に転写できる物質の粘度や濃度に制限がない。

●研究プロジェクトについて
 本研究は、科学研究費助成事業基盤研究Aおよび科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(CREST)の一環として行われた。また、千葉大学分子キラリティー研究センター内における共同研究の成果。

ニュースリリースサイト(chiba-u):https://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/info/post_1019.html

川崎汽船と日本IBM、自動車船荷役作業の安全品質向上を目指した実証実験

川崎汽船(株)と日本アイ・ビー・エム(株)は、IoT機器やAIを活用し、自動車船内における車両走行の情報、車両や作業員の位置情報、作業員のバイタル情報などを収集して分析することで、荷役作業の安全管理強化による作業品質の向上を目的とした実証実験を行った。

実証実験では、車両の走行スピード抑制、作業員と車両の接触防止、車両の追突防止、作業員のバイタル情報の収集について検証した。具体的には、荷役会社協力の下、船内にビーコン(位置情報センサ)、状況監視カメラ、スピード計測機器を設置してデータを収集した。また、AIによる画像認識技術を利用して、カメラ映像から自動車と作業員を分別し、接近状況が分かるようにした。さらに、ウェアラブルデバイスから心拍データを取得し、アルゴリズムを元に解析したデータから作業員のストレス傾向を把握。これらの多様で複雑なデータを分析し、船内でのスピード違反やヒヤリハットの発生件数、発生状況を可視化することで、安全管理強化による作業品質の向上を図ることを目指しているという。

データの分析にはデータ基盤としてセキュアで多くの企業で実績のあるIBM Cloudを採用した。日本IBMはセンサ情報の収集、管理、分析のため、大規模データのリアルタイム可視化、AIによる異常検知、構成可能なダッシュボードを提供するリモートモニタリングのソリューションであるIBM®︎ Maximo Monitor( https://www.ibm.com/jp-ja/products/maximo/remote-monitoring#section-heading-1 )をIBM Cloud上に構築し、データサイエンティストが中心となり、IoTアプリケーションの設計やデータ分析などを支援しているとのこと。

今後、川崎汽船は今回の実証実験の結果を踏まえて、実装に向けた更なる検証を進めていくとしている。

ニュースリリースサイト(kline):https://www.kline.co.jp/ja/news.html

Luxonus、研究用光超音波3Dイメージング装置の外販を開始

Luxonusは、当社比2倍の空間分解能(0.2mm→0.1mm)となる新型センサの開発に成功し、研究用の理化学機器として光超⾳波3Dイメージング装置の外販に向け、受注を開始した。

新型センサによる超高解像度3D画像については、第17回 ⽇本⾎管腫⾎管奇形学会学術集会にてポスター発表し、優秀ポスター賞に選出された。また、動物試験の結果について、第80回⽇本癌学会学術総会にて、東京⼯業⼤学ならびに慶應義塾⼤学との連名で口頭発表を行った。担癌マウスでは、非造影・無被ばくで腫瘍関連血管の3D画像(静止画、動画)を取得しているとのこと。

●新型センサによる画像比較(画像上2点)
新型センサを用いたヒトの指先の光超⾳波画像については、第17回 ⽇本⾎管腫⾎管奇形学会学術集会にて発表を行った。⾼分解能化によって描出できる⾎管の数が増えているのが明確に識別できる。

●担癌マウスを撮影した画像(画像下)
新型センサを⽤いた動物実験の結果について第80回⽇本癌学会学術総会にて発表を⾏った。静止画像を取得したことに加え、腫瘍深部の⾎管を動画撮影することによって世界で初めて腫瘍関連血管が生体内で動いている様子を3D動画としてイメージングすることができたという。


【Luxonusについて】
Luxonus(ルクソナス)は、キヤノンと京都⼤学が2006年度に開始した文科省イノベーションシステム整備事業(CKプロジェクト)を起源とする。同プロジェクトを引き継ぎ、2014年度から内閣府の⾰新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で開発を進めた光超⾳波イメージングの装置を実⽤化するため、2018年12⽉に設⽴された。
本開発は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)ならびに国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の資金協力を得て進めている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000084850.html