3.水中コンクリート構造物の劣化診断
- 水中コンクリート構造物の劣化をP波とS波で探る
寒地土木研究所のコンクリート製試験水路に予め、2枚のコンクリート板を合わせ、隙間を0mmから5mmに調整した。送波には100kzのPSBP(パラメトリックプローブ)を焦点ポイント(水平0mm)に照射し、P波、S波がコンクリート板内を水平伝搬するようにした。
受波素子は表面をウレタンシートで覆い、水中伝搬波を遮蔽し、水面下120mmの深さに、コンクリートの合わせ目の左側に100mm, 200mm, 合わせ目を300m右側に400mm, 500㎜の位置にTC4013 のはハイドロフォンをセットした。同時に水面にPCBの空中マイクをセットした。 - 計測試験
入射角を0度、20度、35度に変え、2次周波数を8kHz,10kHz,12kHzにおいて、コンクリート板の隙間の間隔を0mm, 0.2mm, 0.4mmで送受信計測を実施した。 - 解析状況
まずは、1次伝搬波について解析を実施した。コンクリート板内には、P波、S波が形成され、伝搬速度で区別が可能であった。
また、振幅についてはつなぎ目付近では、P波に比べS波が小さくなる傾向がみられた。亀裂の診断に有効な特徴と推定される。
これまで、コンクリート岸壁や、矢板岸壁に垂直にPSBP音波を照射して、2次波で内部を診断する技術開発を行ってきた。本研究は寒地土木研究所との共同研究として、構造物の表面横方向に音波を伝搬させて診断する手法を探る目的で実施している。
4.音響ビデオカメラを使用した船体歪と付着生物量の計測システム開発
- 動揺を抑え、等間隔で音響的に撮像するため、8mの連結スキャンレールを独自に設計開発し、音響ビデオカメラで船体を2mから5mの距離で三次元計測を行った。音響ビデオカメラARIS3000の前面に1度のconcentrate lensを装着し、水平移動方向に1度、鉛直方向に0.25度の送受ビームを128本形成した。移動速度はステップモータを使用し0.5m/sとし、10 fames/sで撮像した。船体、ビルジキール、スラスター、シャフト、舵板などを3mmの高精度で計測を行った。
- 船体映像の動揺補正を行い、3mmの分解能で船体歪と付着生物の量を計測
船体形状、ビルジキール等の特徴を利用して、カメラの動揺を検出して補正を行った。
これらに加え電気ノイズ、干渉ノイズ除去手法を開発し、高品質化を図った。 - 船体歪と付着生物量の定量計測
本計測、解析技術を使って、船体の歪や、フジツボ等の付着量を計測することが可能となった。
本技術開発は東京都補助金を受け、株式会社AGSの事業として実施した。
5.おわりに
これから産業技術として期待される水中計測技術は、画像、映像処理に移行しつつあり、視覚的にわかりやすい結果が求められる傾向にある。一方、映像から簡潔に特徴を数値化、定量評価、診断する、マッピング技術も並行して必要である。また、水中探査の音響ビデオ信号や音響信号もwcs水中映像化され、数値、定量化が重要である。
これらの情報を汚す、ノイズ除去処理、歪補正、動揺補正、位置ずれ修正、大きなノイズに埋もれた僅かな信号を的確に抽出する差分解析技術、音速と反射吸収減衰から土質の密度を推定する、P波とS波の伝搬特性から物体の劣化を推定する、時空間的に変動する不要な信号と時間的にゆっくり移動する有用な信号を識別抽出する、プルームとプランクトンや魚を識別する技術開発に取り組んできた。水中気泡の定量化、水中の気泡や砂泥に覆われた被写体を復元する技術、などの取り組みを紹介してきた。また、測位、計測技術を踏まえた総合的な映像信号処理の重要性も強調したい。
【著者紹介】
浅田 昭(あさだ あきら)
東京大学 名誉教授
■略歴
- 昭和52年3月早稲田大学工学部電気工学卒業
- 平成7年10月東京大学理学博士授与
- 昭和54年4月海上保安庁海洋情報部入庁
- 平成12年4月東京大学生産技術研究所教授
- 平成25年4月東京大学生産技術研究所海中工学国際研究センター長
- 平成31年3月定年退職
- 令和元年6月東京大学名誉教授
学会活動:
WSS2008,Scientific Committee (平成20年)
IEEE/OES Japan Chapter , 表彰選考委員(平成20年)
海上保安庁UJNR海底調査専門部会, 日本側技術顧問(平成22年)
UT2013, Technical Committee Co-chair (平成25年)
TECHNO-OCEAN General Co-Chairs (平成30年)