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英国TELEDYNE e2v社、ToFセンサ最新モデル「超高速フレームToFセンサ《Hydra 3D》」

CMOSイメージセンサのリーディングカンパニー 英国・TELEDYNE e2v社〔国内代理店:コーンズテクノロジー(株)〕は、ToFセンサ最新モデル「超高速フレームToFセンサ《Hydra 3D》」をリリースした。


《Hydra 3D》の3つの特徴
1.解像度832x600画素で12bit出力最大416.7fpsを実現。
2.センサに搭載された10 ㎛ 3タップグローバルシャッタピクセルが超高速転送を可能に。
3.屋内外、短距離、中距離、遠距離で高精度測距を提供。

ターゲットアプリ
・自走ロボット(AGV等)
・物流システム
・ロボット、ドローン
・マシンビジョン
・自動ドア
・監視カメラ

製品・仕様についての詳細は製品ページを参照のこと。
https://www.cornestech.co.jp/tech/products/products-19561/
また、同社WebマガジンにてCMOSイメージセンサに関する記事も掲載。
■TOF イメージセンサーについて:
https://www.cornestech.co.jp/tech/webmagazine/wm-2004-2/
■NEW! Column: イメージセンサの感度についての比較実験:
https://www.cornestech.co.jp/tech/webmagazine/webmagazine-22244/

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000064519.html

OPTEX、水質管理をDX化する「WATER itデータマネジメントサービス」を公開

オプテックス(株)は、水質管理をスマート化するサービス「WATER it(ウォーターイット)データマネジメントサービス」の提供を開始した。本サービスはオプテックスの水質測定機器などと連携することで、遠隔かつリアルタイムでの水質管理が可能となるという。

■開発の背景
オプテックスは、1993年に滋賀県の依頼により琵琶湖の透明度を正確に連続測定できる「透明度自動測定システム」を開発。以来、国内外の河川や工場など様々な場所で水環境の管理支援を行ってきた。水質管理を行う現場では、従来からの人手不足や従業員の高齢化に加え、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、定期点検巡回を減らしたいという要望が高まっている。その一方で、設備の老朽化による故障や異常発生を迅速に把握し対応できる体制構築も求められている。
本サービスはオプテックスのセンシング技術とIoT技術を活用し、水質管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)として現場の負担を大幅に削減する目的で開発を行った。既に設置済みのセンサとも連携可能(※)で、安価に導入できる点も特徴である。
※センサタイプによる

■主な特徴
 『「はかる」「つたえる」「みる」をカンタンに。』をコンセプトにいつでも、どこでも水環境を把握できる仕組みをトータルで提案。現場を遠隔で監視し、アラーム通知等で異常を早期発見できるため、業務の確実性向上と簡素化を実現できる。

[ 機能例 ]
・データ表示:測定データの傾向監視ができるトレンドグラフ表示、多拠点の管理に適したマップ表示、CSV出力に便利な一覧表示が可能。
・アラーム通知:異常をメールでプッシュ通知。用途にあわせて条件を設定できる。
・メンテナンス通知:消耗品交換時期やメンテナンス時期、機器異常やローバッテリーをメールで通知し、現場での保守・メンテナンスをサポート。
・レポート機能:測定データの集計を自動化。報告業務を確実に、そして簡素にする。
・気象情報連携:測定場所の降水量や気温を取得。レポートやアラームの設定に活用できる。
・グループ機能:閲覧権限を設定でき、複数人での管理が可能。

■データマネジメントサービスのプランと各センサとの連携について
用途に合わせて選べる月額のプランを用意している。またデモ機の貸出と合わせて無料で試せるトライアルプランも利用可能。詳細は公式サイトを参照のこと。
 ※WATER it公式サイト : https://navi.waterit.optex.net/
Water itデータマネジメントサービスは、オプテックスの水質センサすべてと接続できる。またセンサタイプが合致する場合、社外品を活用してデータを取得することが可能。

ニュースリリースサイト(optex):https://www.optex.co.jp/news/2022/0217.html

Panasonic、低抵抗と高い透過率を兼ね備えた「透明導電フィルム」を商品化

パナソニック(株) インダストリー社(以下、同社)は、業界初のロール to ロール独自工法を用い、低抵抗と高い透過率の特長を併せ持つ、一括両面配線透明導電フィルムを商品化したと発表した。

昨今のタッチディスプレイの高画質化・大型化に対する透明導電フィルムのニーズを受け、メタルメッシュ[1]の開発が進められている。メタルメッシュの一般的なエッチング工法では、低抵抗による大型化は実現出来るもののメタルメッシュの配線見えなどが課題となっている。
同社は「ロール to ロール独自工法」により従来のエッチング工法では困難だった配線幅2 μmを実現しつつ高いアスペクト比[2]を達成し、低抵抗かつ高い透過率を併せ持つ透明導電フィルムを実現した。更に、フィルム両面への一括配線により高い座標精度と使用材料の削減を実現し、顧客の高画質化・大型化・環境負荷低減のニーズに応えるとのこと。

【特長】
1. 高い配線アスペクト比の実現によるディスプレイ高画質化・大型化への貢献
2. 一括両面配線形成による高い座標精度の実現とフレキシブル化対応
3. ディスプレイ消費電力および使用材料の削減による環境負荷低減への貢献

【用途】
車載、民生用途のタッチセンサ、透明アンテナ、透明ディスプレイ用基板、透明ヒーターなど

【用語説明】
[1]:メタルメッシュ:金属配線を格子状に形成した電極。
[2]:アスペクト比:配線 厚さ/幅の比。

プレスリリースサイト(panasonic):
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2022/02/jn220216-1/jn220216-1.html

ドローン測量向け「地形追従飛行計画webアプリ」無料トライアルユーザーの募集

(株)FLIGHTSは、2月15日より、LiDAR搭載ドローンでの測量向け「地形追従飛行計画webアプリ」の無料トライアルユーザーの募集を開始した。

このアプリは、地形の凹凸に沿った“地形追従”の飛行計画も、たった10分で作成可能。大幅な業務の効率化を実現する。トライアルは3月末日、申込みは3月25日まで。

◆「地形追従飛行計画webアプリ」の機能と対応機材
飛行する範囲と高度などを設定すれば、アプリが自動で計算して地形に沿った飛行計画を作成。作成される飛行計画はKMLデータなので、そのまま操縦アプリにインポートできる。

■地形追従飛行計画作成webアプリの特徴
 1.直感的でカンタンな操作
 2.地形追従飛行計画の作成が最短10分
 3.インストール不要、webブラウザで使用可能
■対応機材
□ドローン:
DJI Matrice 300 RTK
□センサ:
GreenValley International社製
・LiAirV70N(重複スキャン/非重複スキャン トリプルリターン)
・LiAirV40N
・LiAir50N
NextCore社製
・RN50
・RN100
※対応機材は今後追加予定。写真測量も今後対応予定。

◆【無料トライアル 募集概要】
・トライアル期間:2022年2月15日〜2022年3月末
・募集人数:上限なし ※応募者多数の場合は早期受付終了の場合あり
・料金:トライアル期間は完全無料(通信費等はユーザーの負担)
 ※トライアル期間終了後に自動的に課金されることはありません。
・申し込み方法:利用規約をご確認の上、専用ページ(https://flights-construction.com/app/)の申込フォームより必要事項を入力し送信。
・申し込み期限:2022年3月25日まで
・利用開始方法:フォーム送信後2〜3営業日以内に、申込みのメールアドレスに招待リンクを送付。
・参加条件:利用開始後に送付するアンケートへの回答にご了承いただける方
 ※そのほかの詳細な条件を専用ページにてご確認の上、お申し込みのこと。

◆今後の機能追加と開発の計画
■開発計画
FLIGHTSでは現在のところ、以下の機能やサービスの開発を計画している。
・Waypoint飛行による地形追従プランの作成
・飛行前後の八の字飛行(キャリブレーション飛行)の追加
・アノテーション機能(対空標識の設置場所記載等) の追加
・i-Construction/公共測量の成果物作成を容易にするサービス
・対応機材・センサの追加
※このほか、トライアルユーザーのフィードバックをもとに機能の改善や追加を行う予定。ご意見、ご要望はトライアル利用開始後のアンケートにて。

■開発の方針
FLIGHTSは、2016年から測量、点検、農業、空撮など幅広い分野でドローンを運用。数多く存在するドローン関連企業の中でも、「LiDAR」の”運用”までをも扱う企業はわずか。FLIGHTSのアプリは、そんな貴重かつ豊富な現場経験から得た「LiDAR」「ドローン」「運用」の3つを掛け合わせた独自のノウハウから生まれるという。
今後のアプリ開発は『ドローンやLiDARの運用を総合的にサポートするサービス』を目指し、建設現場のIT化のさらなる推進に貢献するとしている。

募集申込みサイト(FLIGHTS):https://flights-construction.com/app/

ST、容量性負荷をスマートに駆動するデュアル・ハイサイド・スイッチ発表

STマイクロエレクトロニクスは、最新のデュアル・ハイサイド・スイッチ「IPS2050H」および「IPS2050H-32」を発表した。これらの製品は、プログラム可能な2つの電流制限値を備え、高いスタートアップ電流を消費する容量性負荷の駆動において優れた柔軟性を提供する。

「IPS2050H」および「IPS2050H-32」は、8V~60Vの入力電圧範囲、および最大耐圧65Vの入力ピンを備え、産業機器において優れた柔軟性と堅牢性を実現する。また、低オン抵抗のパワーMOSFETを内蔵しているため、エネルギー効率の向上と熱損失の低減に貢献する。内蔵パワーMOSFETのシングル・パルス・アバランシェ・エネルギーは、2A時に1Jを超えるため、誘導性負荷の駆動における信頼性が向上する。さらに、アクティブ・クランプ回路を内蔵しているため、高速消磁を実現する。

IPS2050Hは、主電流制限を最大2.5Aに設定可能で、PLCモジュールによって制御される負荷の駆動や、ファクトリ・オートメーション(FA)におけるI/Oペリフェラル、コンピュータ数値制御(CNC)装置、抵抗性 / 誘導性 / 容量性負荷の汎用駆動装置などに最適。IPS2050H-32の最大電流制限は5.7Aと高く、自動販売機などの単方向モータに最適である。電流の作動しきい値と制限値は、外部抵抗を使用して設定できる。また、外付けのキャパシタでスタートアップ電流制限の時間を設定することで、容量性負荷をスマートに駆動できる。

両製品ともに、減電圧ロックアウト(UVLO)機能や、過電圧 / 過負荷 / 短絡 / グランドとの断線 / Vccの断線に対する保護など、幅広い保護機能および診断機能が内蔵されているため、高い安全性と信頼性を提供する。また、個別のエラー信号により、過負荷および接合部の過熱をチャネルごとに通知しする。パッケージの過熱保護向けに、追加のセンサも1つ搭載されている。両製品は、ESD(静電放電)に関するIEC 61000-4-2 ESD、高速過渡に関するIEC 61000-4-4、およびサージ耐性に関するIEC 61000-4-5仕様に準拠している

また、STM32* Nucleoボード用のデジタル出力機能拡張ボード「X-NUCLEO-OUT03A1」および「X-NUCLEO-OUT04A1」、付属ソフトウェア・ドライバ「X-CUBE-OUT3」、「STSW-OUT03F4」、「STSW-OUT03G4」も提供されており、産業用負荷に接続した際の駆動・診断機能の迅速な評価に貢献する。さらに、STM32 X-Nucleo機能拡張ボード向けのソフトウェア「STSW-IFAPGUI」を使用することで、さまざまなデジタル出力機能拡張ボードや付属ソフトウェアを共通のグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)で起動・制御することが可能である。

IPS2050HおよびIPS2050H-32は、小型・省スペースのPowerSSO-24パッケージで提供される。単価は、1000個購入時に約3.19ドル。

* STM32は、STMicroelectronics International NVもしくはEUおよび / またはその他の地域における関連会社の登録商標。STM32は米国特許商標庁に登録されている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001214.000001337.html

「LEAD SKIN®」と「AD5940」を活用した繊維センサソリューション提供開始

エーアイシルク(株)は、高機能な導電性繊維「LEAD SKIN®」を使用した繊維センサー機器のリファレンス・デザインとして、アナログ・デバイセズ(株)のインピーダンス測定用に設計されたアナログ・フロントエンド「AD5940」を採用し、繊維センサソリューションの提供を開始する。

シルクを染色技法で導電性機能を持せる研究開発から事業を始めたエーアイシルクは、ポリエステルなどの合成繊維にも適用素材を拡大し、移転拡張した量産工場において、2021年10月より、高機能な導電性繊維「LEAD SKIN®」の生産を開始している。スポーツ、医療、産業、ロボティクスなど幅広い分野に対して、導電性繊維の提供体制を構築した。

今回採用したアナログ・デバイセズのアナログ・フロントエンド「AD5940」は、インピーダンス測定などの電気化学ベースの高精度の測定技術を必要とするポータブル・アプリケーション向けに設計された、高精度かつ低消費電力のアナログ・フロントエンドである。エーアイシルクの導電性繊維を計測するための専用センサ機器(デバイス)を用意している。

LEAD SKINの製品概要
・高く均質で従来よりも高い導電性(1Ω/sq)繊維材料(繊維センサへ応用)
・安全、清潔、長寿命(水に濡れても錆びない)
・洗濯しても劣化なしに細菌・ウイルスを寄せつけない
・安全に電磁波をブロックできる

AD5940の主な特長
・電気化学計測に最適な高精度アナログ・フロントエンド回路(TIA,ADC,DAC)内蔵
・信号発生、DFT演算デジタル回路内蔵
・ポータブル向けに最適化された小型パッケージ、低消費電力・センサ計測のサイクル制御機能

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000069388.html

大阪産業技術研究所 和泉センターにおけるオープンイノベーション事例(2)

4.無機バインダを用いたリチウムイオン二次電池用高機能Si負極の開発

斉藤 誠

4-1. はじめに
リチウムイオン二次電池の用途拡大、とりわけEV(電気自動車)分野での採用に伴い、高容量化、高出力化などの性能向上の要求はこれまで以上に加速している。シリコン(Si)はグラファイトの10倍程度の電気容量を有し、かつ、地表に含まれる金属元素として最多であり資源としても豊富なことから、次世代リチウムイオン二次電池の負極活物質として有望である4-1)。一方、充放電に伴う体積変化が大きく、そのため、サイクル特性が劣る問題があった。Si負極の劣化は複数のメカニズムによって進行するが、極初期の劣化要因として、電極基材からの活物質層の剥離や活物質層内での導電ネットワークの破壊4-2)が挙げられる。この解決策として、ポリイミド4-3)などの高強度樹脂バインダをはじめ、バインダの改良によるアプローチが検討されてきている。本稿では、大阪産業技術研究所とATTACCATO合同会社(大阪府和泉市)が共同研究のもと開発した、無機バインダによるSi負極のサイクル特性改善やその作用機序について紹介する。

4-2.ケイ酸塩系無機バインダを利用したSi負極の作製

4-2-1.電極コーティング剤としての利用
ケイ酸塩系無機バインダは19世紀中ごろには「水ガラス」として防火剤や接着剤、木材や石材、コンクリートなどの強度を高めるためのコーティング剤に利用されてきた材料である4-4)。シロキサン結合(Si-O-Si)を骨格とした強固な結合力に加え、有機樹脂系バインダと比べて圧倒的な耐熱性や耐酸化性を特長とする。一方、有機樹脂系バインダと比べて比重が大きく、バインダとして単用した場合、重量効率の点で問題がある。そこで、ケイ酸塩系無機バインダを活物質層にコーティングし、活物質粒子間に強固な骨格構造を形成する電極構造を考案した。
無機バインダコートSi負極は、従来のグラファイト系負極と同様の手法でSi電極を作製したのち、無機バインダ水溶液をスプレー、乾燥・熱処理の工程を経て作製できる。本手法で必要とする熱処理温度は140~160 ℃であり現行のグラファイト系負極製造設備を流用できる。これは、硬化処理に200~300 ℃の真空熱処理を要するポリイミド系バインダと比較して設備投資・開発期間短縮の点で大きな利点となる。

図4-1 無機バインダコートSi負極の断面方向のNa分布

EPMAを用いて断面方向への元素分布を確認したところ、無機バインダに由来するNaは主に活物質粒子の隙間を埋めるように存在しており、また、電極表面から内部まで均一に分布していることが確認された(図4-1)。すなわち、活物質層の空隙部分を強固な無機バインダが骨格形成材として充填している構造が示唆される。また、無機バインダをコートすることで、活物質層の機械強度および密着力は大きく増加した。

無機バインダコートの有無によるサイクル特性の違いを図4-2に示す。無機バインダをコーティングしていない場合、初回サイクルでわずかに放電するものの、サイクル特性は極めて乏しかった。無機バインダのコーティングによりサイクル特性は大きく改善した。

図4-2 無機バインダコートの有無によるサイクル特性の違い
[◆:コートあり、○:コートなし]

初回サイクル前後のSi負極の断面を図4-3に示す。無機バインダコートの有無にかかわらず、充放電前の電極では活物質層と電極基材は良好に密着しているものの、無機バインダをコーティングしていない場合、初回の充放電サイクル後に活物質層が電極基材から剥離する。一方、無機バインダをコーティングした電極では活物質層の剥離は見られなかった。
これらの挙動の違いは、無機バインダの強固な結着性によるものと考えられる。PVdFや SBRなど従来、用いられてきたバインダは結着力の弱いため充電時のSi粒子の体積膨張に耐えることができず、活物質層が基材から剥離する。ここに、無機バインダをコーティングし、活物質間を強固な無機バインダ成分で充填することで結着力を高め、その結果、活物質層の剥離を抑制できたと理解している。

図4-3 Si負極の初回サイクル前後の断面SEM 像(左:コートなし、右:コートあり)

4-2-2.コーティング量・組成の最適化

無機バインダのコーティング量には最適値が存在し、活物質のSiに対しおおむね6~50%程度の重量比の場合に電気容量・サイクル特性とも良好な結果が得られた。一方、過剰の無機バインダは放電容量を低下させた(図4-4)4-5)

図4-4 無機バインダコート量の違いに伴うサイクル特性の変化

この理由は、Si負極にコーティングした無機バインダは活物質層に浸透し粒子間の骨格形成剤として働くが、余剰の無機バインダ成分は電解液と活物質の接触を阻害したり、リチウムイオンの拡散を妨げたりするためと考えられる。また、無機バインダコート後の乾燥速度が不適正だと、電極内部まで十分浸透する前に表層付近で乾燥し、充分に骨格が形成されないためサイクル特性に劣ることも合わせて確認している。これら、無機バインダのコート量や乾燥の良否など、量産時の生産管理には迅速に深さ方向への元素分布が評価できるGD-OESが有用である4-6)

4-3.無機バインダの作用機序に関する考察

図4-5 無機バインダーをコートしたSi微粒子のSTEM像

無機バインダによるサイクル特性向上のメカニズムを調べるために、Si負極のSTEM観察を行った(図4-5)4-7)。Si粒子の周りに厚み20~50 nm程度の無機バインダによる皮膜が形成されており、その界面は不明瞭なアモルファス状であった。すなわち、無機バインダのシラノール基(Si-OH)とSi粒子表面の水酸基(-OH)とが脱水縮合することで強固なシロキサン結合(Si-O-Si)を形成している構造が推察される。また、無機バインダはSi粒子だけでなく、電極基材(Cu箔)表面の自然酸化被膜に由来する水酸基とも脱水縮合することで、Si粒子と電極基材とを強固に接着し、充電時の体積膨張による剥離を抑制していると考えられる。

4-4.おわりに
本技術を用いてラミネート型電池(5Ah級)を試作したところ、その重量エネルギー密度は289 Wh/kgと、現行のEV(電気自動車)に搭載されている電池パック(200〜250 Wh/kg)と比較しても高い重量エネルギー密度を達成した。また、0℃付近での低温でも安定に動作することに加え、釘刺時の発火・爆発の危険性も抑制できることが確認されている。これらの諸特性が、生態調査(バイオロギング)用の電源として着目され、亜南極圏での生態調査等に採用されている4-8)

謝 辞
本研究の一部は 「和泉市ものづくり技術商品開発事業」 「大阪府ものづくりイノベーション支援プロジェクト」 の助成を受けて行われた。関係各位に深く感謝する。

参考文献

4-1) T. Sakai, Electrochemistry, 71(8), 722 (2003).

4-2) D. Reyter, S. Rousselot, D. Mazouzi, M. Gauthier, P. Moreau, B. Lestriez, D. Guyomardéa and L. Roue, J. Power Sources, 239, 308 (2013).

4-3) M. Morishita, A. Yamano, T. Kitaoka, H. Sakai, T. Ojima and T. Sakai, J. Electrochem. Soc., 161, A955 (2014).

4-4) J. Nepomuk Fuchs, Polytechnisches Journal, 17, CIV, 465 (1825).

4-5) 岩成大地、吉田一馬、田中一誠、坂本太地、山下直人、池内勇太、佐藤淳、綿田正治、向井孝志、第58回電池討論会, 1B16 (2017).

4-6) 斉藤誠、西村崇、向井孝志、坂本太地、山下直人、池内勇太、第59回電池討論会、2A05 (2018).

4-7) 髙橋牧子、木下智博、田名網潔、青柳真太郎、向井孝志、池内勇太、坂本太地、山下直人、Honda R&D Technical Review, 33 (1), 78 (2021).

4-8) https://www.youtube.com/channel/UCcn6Oh5y6eu-G1Qsl1xJ_Bw, 参照日:2022-01-11.

【著者紹介】
斉藤 誠(さいとう まこと)
2009年3月大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻博士後期課程程了。
産業技術総合研究所ポスドク、大阪大学技術職員を経て、2013年4月より、地方独立行政法人大阪府立産業技術総合技術研究所(現大阪産業技術研究所)にて、リチウムイオン電池、キャパシタなど蓄電材料の開発、材料評価、表面分析などに従事。
現在、同所、金属表面処理研究部、表面化学研究室、主任研究員。博士(工学)。


5.銅合金材料の金属3Dプリンティング技術の開発

中本 貴之

5-1. はじめに
金属3Dプリンティング(積層造形法)は、3次元CADデータに基づいて一層ずつ積み上げながら加工する付加製造法(AM; Additive Manufacturing)である。その特長は、従来の金属加工(機械加工、塑性加工、鋳造など)では製造できない複雑形状を比較的短時間で造形できる点である。工業分野では内部に任意の冷却流路を有する射出成形金型やジェットエンジンの燃料噴射ノズルなど、医療分野ではテーラーメイドの人工股関節や歯科補綴物など、金属3Dプリンティングの特長を活用したものづくりは盛んになってきている。

金属粉末を直接溶融・凝固させる3Dプリンティングの方式には、粉末床溶融結合法[Powder Bed Fusion (PBF)]と指向性エネルギー堆積法[Directed Energy Deposition (DED)]の2種類がある。PBFは図5-1に示すように、金属粉末をブレードと呼ぶワイパーで平面上に薄く敷き詰め、造形したい部分にのみレーザあるいは電子ビームを照射して粉末を溶融・凝固させる工程を繰り返しながら所望の形状を造形する。一方、DEDは図5-2に示すように、ノズルから金属粉末の投入とレーザの照射を同時に行いながら基材とともに粉末を溶融・凝固させ、ノズルを移動させていくことで肉盛り溶接しながら所望の形状を造形する。両者を比較すると、より高精度に内部構造を造形できる手法はPBFであり、PBFタイプの金属3Dプリンタは世界中で広く普及している。

図5-1 粉末床溶融結合法[Powder Bed Fusion (PBF)]の断面図
図5-2 指向性エネルギー堆積法[Directed Energy Deposition (DED)]の断面図

PBFで一般的に使用される金属材料は、鋼、チタン合金、アルミニウム合金、ニッケル基超合金など多岐にわたるが、銅はレーザを反射しやすく、かつ熱伝導率が高いため、造形物の高密度化が難しいと言われてきた。そのため、高い電気伝導性や熱伝導性が要求される機能部品を金属3Dプリンティングで実現するためには、新たな銅系材料とその造形技術を開発する必要があった。本稿では、大阪産業技術研究所と株式会社ダイヘンが共同研究のもと開発した銅合金粉末およびそのPBF造形技術と、株式会社ダイヘンが実用化したアーク溶接用高電流水冷トーチについて紹介する。

5-2.銅合金粉末およびそのPBF造形技術の開発5-1)
純銅粉末を用いて、ドイツ製EOSINT M280金属3Dプリンタにより作製した造形物の断面写真の一例を図5-3に示す。黒色の領域は空隙に相当する。純銅粉末では、造形時のレーザ照射条件(出力、走査速度、走査間隔、および積層厚さ)を変化させても、高密度な造形物が得られなかった。そこで我々の研究グループは、種々の銅合金材料を用いて造形実験を繰り返す中で、銅にクロムを少量添加した銅合金(Cu-Cr)粉末を用いることにより、ほとんど空隙が認められない高密度な造形物を得ることに成功した(図5-4)。高密度化の要因の一つとして、今回用いたレーザと同じ波長の光の反射率は、純銅粉末に比べCu-Cr粉末のほうが20%程度低下しており、溶融しやすくなったためと考えられる。しかし、添加元素量が増えると銅合金の導電率は低下することが知られており、実際にCu-Cr造形物の導電率は造形ままの状態で20%IACS程度とかなり低い値であった。

図5-3 純銅粉末の造形物の断面写真
図5-4 銅合金(Cu-Cr)粉末の造形物の断面写真

そこで熱処理(各温度1時間)による導電率の改善を試みた。図5-5に示すように、400 ℃以上の熱処理により、導電率は大幅に上昇している。これは、レーザ照射による急冷凝固に起因して、造形ままの状態でCuマトリックス中にCrが過飽和に固溶しており、それが熱処理により時効析出して固溶量が減少したためと考えられる。

図5-5には機械的性質として引張強さの結果も示してあり、引張強さは400~600 ℃の範囲の熱処理により上昇し、450 ℃において最高値を示す。ここでは熱処理前に溶体化処理を施していない。Cu-Cr合金の造形物では、上述のようにレーザ照射による急冷凝固の効果で、溶体化処理を施さなくてもCrがCuマトリックス中に過飽和に固溶し、時効処理のみで硬化したと考えられる。 以上のように、用途に応じて造形物の特性を任意に変更することができ、導電率を重視する場合は導電率を純銅の90%程度まで、機械的性質を重視する場合は引張強さを純銅の3倍程度まで高めた造形物の作製が可能になることを見出した。本銅合金粉末およびその造形技術は、2016年10月にプレスリリースし5-2)、各方面から注目を集めている。

図5-5 銅合金(Cu-Cr)造形物の熱処理後の導電率および引張強さの変化

なお、本銅合金粉末とその造形物を対象とした特許は、国内外で複数取得済である。現在、本銅合金粉末は三井金属鉱業株式会社から製造、販売されており5-3)、一般の装置ユーザーにも開放している。

5-3.溶接トーチの実用化5-4)
株式会社ダイヘンでは、本造形技術を応用して、高能率アーク溶接システム「D-Arc」用の高電流水冷トーチを開発した(図5-6)。金属3Dプリンティングの特長である複雑形状を活用し、最適な水冷経路を構築することで、従来なし得なかった高冷却機能と小型軽量化を実現している。

図5-6 高能率アーク溶接システム「D-Arc」水冷トーチのカットモデル(写真提供:株式会社ダイヘン)

5-4.おわりに
大阪産業技術研究所の和泉センター内に令和3年4月に開設された「3D造形技術イノベーションセンター」5-5)は、PBFタイプ3台、DEDタイプ1台の計4台の金属3Dプリンタを所有している。また、造形物の高機能化につながるトポロジー最適化設計や、造形不良を回避できる熱変形シミュレーションといった、実際の造形前に設計・解析できるソフトウェアも取り揃えている。本センターは、これらの装置およびソフトウェアを駆使して、材料・造形技術、設計・解析技術、特性評価技術など各要素技術の研究開発を一貫して支援できる金属3Dプリンティングの拠点として活動中である。企業、大学、研究機関など利用者の皆さまには、製品開発、試作のスピードアップ、製品の高度化など、専門研究員からの技術支援やアドバイスのもと、研究開発を推進していただきたく、まずはお気軽にご相談ください。

参考文献

5-1) S. Uchida, T. Kimura, T. Nakamoto, T. Ozaki, T. Miki, M. Takemura, Y. Oka and R. Tsubota, Mater. Des., 175, 107815 (2019).

5-2) 株式会社ダイヘンWebページ,金属3Dプリンタによる銅合金3D積層造形技術を確立,https://www.daihen.co.jp/newinfo_2016/news_161026.html, 参照日:2022-01-11.

5-3) 三井金属鉱業株式会社Webページ,3D積層造形用銅合金粉,https://www.mitsui-kinzoku.co.jp/project/kinousei-funtai/custom.html, 参照日:2022-01-11.

5-4) 株式会社ダイヘンWebページ,銅合金3D積層造形技術,https://www.daihen.co.jp/tech/3dprinter/, 参照日:2022-01-11.

5-5) 地方独立行政法人大阪産業技術研究所Webページ,「3D造形技術イノベーションセンター」の開設,https://orist.jp/kouhou/press_release/2021042702.html, 参照日:2022-01-11.

【著者紹介】
中本 貴之(なかもと たかゆき)
1997年3月京都大学大学院工学研究科修士課程修了。
1997年4月より松下電器産業(現パナソニック)株式会社勤務を経て、2004年4月より、大阪府立産業技術総合研究所(現大阪産業技術研究所)にて金属粉末積層造形法における造形物の高性能化に関する研究開発に従事。
2010年9月京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。
現在、同所、加工成形研究部、特殊加工研究室長(主幹研究員)。博士(工学)。


6.結 言

 4つの事例を通じて、その背後にあるオープンイノベーションを成功させるカギ、オープンイノベーションの重要性を感じ取っていただければ幸いです。とくに、これらの事例で共通して言えることは、オープンイノベーションを成功させるために、ものづくり企業と大阪技術研の担当者間で、組織内外での調整を含め、確固としたネットワークを構築してきたことが挙げられます。

大阪技術研は、単に製品開発のイノベーションに資する技術を提供するだけでなく、マーケティング、市場調査などの領域でもオープンイノベーションを確立できるよう、官公庁や金融機関を含む支援機関とのネットワークを強固なものにし続けています。加えて、変化の激しい現代社会において、ものづくり企業のニーズに応え続けていくためには、常に新しいアイデアや技術を大阪技術研外から取り入れることが極めて重要と考え、戦略的に、アイデアや技術の取り入れを実施し、大阪技術研のあるべき姿を追い求めています。

とくに、今後、人材などのリソースの機動性が一層高まり、国内のみならず国際的なオープンイノベーションを多くの企業が実施することになってきます6-1)。そのため、大阪技術研では、安全保障輸出管理制度6-2)に留意しつつ、オープンイノベーションにおけるリスクや課題の整理とともに、新型コロナウイルスによる生活の変化にも十分に対応できる体制(オープンイノベーションプラットフォーム)づくりを目指しています。

参考文献

6-1) 例えば、https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu11/siryo/attach/1333196.htm, 参照日:2022-01-11.

6-2) 例えば、https://www.meti.go.jp/policy/anpo/gaiyou.html, 参照日:2022-01-11.

7.謝 辞

大阪技術研、和泉センターが実施してきたオープンイノベーションを通じた研究開発事例について、紹介できる貴重な機会をいただき、深く感謝申し上げます。紹介しました事例を参考に、大阪技術研と協業、共創することで、新たな市場を切り開き、新しい商品の創出に繋がることを少しでもご理解いただければ、幸いです。
なお、本レポートでは、和泉センターのオープンイノベーションの事例を紹介しましたが、森之宮センターでも積極的にオープンイノベーションを推進しております。引き続き、両センターともに、みなさま方から多くの利用があることを願っています。

【著者紹介】
櫻井 芳昭(さくらい よしあき)
1989年4月より、大阪府立産業技術総合研究所(現大阪産業技術研究所)にて、ディスプレイ、光学素子、電池の開発に従事。
2002年3月大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。
現在、同所和泉センター研究管理監兼経営企画本部マネージャ(総括研究員)。博士(工学)。

フラウンホーファー研究機構・日本代表部の活動及びセンシング関連研究の紹介(2)

林田一浩
フラウンホーファー日本代表部
アシスタントマネージャー

4.Research Fab Microelectronics Germany (FMD)

フラウンホーファーにおいて近年特筆すべきナノ・マイクロエレクトロニクス分野の研究活動として、Research Fab Microelectronics Germany (ドイツ語でForschungsfabrik Mikroelektronik Deutschland、略称FMD)がある 1) 。FMDは、フラウンホーファー・マイクロエレクトロニクスグループ所属の11研究所(EMFT、ENAS、FHR、HHI、IAF、IIS、IISB、IMS、IPMS、ISIT、IZM)とライプニッツ研究所(FBH、IHP)の計13パートナーが参加する、ナノ・マイクロエレクトロニクス分野における欧州最大の組織横断型の研究協力枠組みである。ドイツ連邦教育研究省(BMBF)からも、公的プロジェクトとして2017年~20年までに約3億5000万ユーロ(約453億円)の助成を受けている 2) 。FMDは約2000人の研究者とフラウンホーファー・ライプニッツ各研究所の多様な能力や研究インフラを擁する。ワンストップショップとして、お客様が新しいアプリケーションと高度な技術に簡単にアクセスできるよう、設計、材料からプロセス、デバイス&部品、パッケージング、信頼性等の分析試験に至るまでのバリューチェーン全体にわたる研究開発サービスを各研究所の橋渡しにより提供している。各研究所間の連携も盛んで、複数研究所が各分野・工程間で分担・協力することも多い。以下では、FMDのセンサシステム、MEMSアクチュエータ関連の主要な研究活動を紹介する。

4.1.センサシステム
FMDでは、センサ製造と複雑なシステムへのセンサ統合に関するさまざまな知見を提供している。

  • センサシステムの設計、信頼性のための設計、過酷環境下でのセンサシステムの試験
  • 完全に統合されたセンサソリューション(CMOS上のMEMS)およびハイブリッド統合センサシステム
  • センサ・センサシステムの特性評価(光学的、音響的、電気的)や試験―非破壊的方法、複数の圧力シナリオでの信頼性評価

4.1.1.セラノスティックインプラント
セラノスティックス(Theranostics)とは、スマートテクノロジーを用いて単一の測定・機能デバイスに診断機能と治療機能を一体化させた、患者の精密医療と個別治療を容易にする新しい医療技術である 3) 。フラウンホーファーでこの分野に注力しているのがENAS(エレクトロ・ナノシステム研究所)である 。デバイスのベースになっているハイエンドセンサ技術は、高度に小型化されたワイヤレスで埋め込み可能なマルチセンサシステムの開発のためのフラウンホーファー内部のプロジェクトである「Fraunhofer Lighthouse Project」において実証された。システム全体は、圧力センサ、データ・エネルギー管理用のASIC、加速度センサ、誘導エネルギー供給・データ送信用のコイルを含むLTCCインターポーザーで構成されている。圧力センサの動作範囲は800hPa〜1400hPaで、分解能は0.2hPaである。加速度センサはシステムに統合され、動きや衝撃などの外部条件を検出する。2次元慣性センサには、±1 g(低周波)と±5 g(高周波)の2つの測定領域があり、1次元あたり約100 fF / gの感度を有する。

図5 長さ約15mm、直径約3mmの圧力センサおよび加速度センサを含むセラノスティックインプラントシステム
(© Fraunhofer ENAS)

4.1.2.高圧パワーグリッドモニタリング

図6 高圧パワーグリッドモニタリングシステム
(© Fraunhofer IZM)

「ASTROSE®」は、フラウンホーファーIZM(信頼性・マイクロインテグレーション研究所)が開発した、高圧パワーグリッド用に実証されたモニタリングシステムである 4) 。信頼性の高いデータストリームの提供により、電線の電流容量を最適化するほか、障害と損傷を即座に特定し、保守作業をより効率的に管理できる。ASTROSE®は、送電網を直接送電網上でモニタリングする。自律型ワイヤレスセンサノードは回線自体に設置され、ローカルでさまざまな情報をキャプチャする。完全自律型センサノードは、最大500 mの距離で設置され、通常はパイロンの背後にある。 監視データは、センサチェーンを介して、グリッドコントロールセンターと接続するフィードポイントにワイヤレスで送信される。電線の傾きは物理的測定値として、また電線の現在の温度やカテナリー・表面のクリアランス等の追加プロパティ計算のための参照値として用いられる。

4.1.3.Universal Sensor Platform (USeP)
フラウンホーファーENAS、IIS / EAS、IPMS、IZM-ASSIDは、GLOBALFOUNDRIES Dresden Module One LLC&Co. KGと協力し、Universal Sensor Platform (USeP)の共同開発を行った 5) 。22nmのCMOS回路は、GLOBALFOUNDRIES社から提供され、フラウンホーファー研究所のさまざまなセンサとアクチュエータがパッケージに統合されている。本プロジェクトでは、革新的なパッケージング、システム設計、センサ開発、データ転送、シミュレーション、試験が進行中である。本プラットフォームは、新しいハードウェアおよびITセキュリティソリューションのアプリケーションを想定したものである。

図7 USeP向けチップパッケージ例(© Fraunhofer IIS/EAS)

4.2.MEMSアクチュエータ
MEMSアクチュエータ分野のテクノロジープラットフォームでは、以下のように設計、材料とプロセス、システム統合、材料の特性評価、デバイス試験、信頼性評価に重点を置いている。

  • 設計(アナログ・混合信号の設計、信頼性、機能安全、過酷環境向け設計)
  • エピタキシー、高度なSiエッチング、圧電材料等、バルク・表面マイクロマシニング向け材料・プロセス開発
  • 光学スキャナ、空間光相変調器(SLM)、音響アクチュエータ等のデバイス開発
  • 高度なパッケージングとシリコンマイクロパターニングおよびMEMS / NEMSパッケージング 例:ハーメチックガラスパッケージ、ウェーハレベルキャッピングを成熟したデバイス技術として提供
  • 材料・デバイスの試験と特性評価(過酷環境下の試験も可能)
     例:幅広い材料の非破壊分析、デバイス劣化評価、ヘテロ統合システム特性評価
  • 複数の圧力シナリオ下での信頼性試験

4.2.1.MEMS / CMOS統合
フラウンホーファーIMS(マイクロエレクトロニックサーキットシステム研究所)とIPMS(フォトニック・マイクロシステム研究所)は、密接な協力関係のもとにMEMSアクチュエータをCMOSバックプレーンに統合するプロセスを開発している 6) 。IMSはバックプレーンを設計し、IPMSに200mmウェハを提供する。IPMSでは、MEMSおよびMOEMSアクチュエータのCMOS基板への統合を行う。この協力関係により、空間光相変調器(SLM)とマイクロミラーアレイの製造がすでに行われている。

図8 個々の独立したマイクロミラーから構成されているチルトミラーアレイ
(© Fraunhofer IPMS)

5.おわりに

本稿では、フラウンホーファー研究機構の概要、日本での活動、委託研究等でのご協力可能性に加え、Research Fab Microelectronics Germany (FMD)の概要やセンサシステム、MEMSアクチュエータ関連の研究内容を紹介した。日本代表部では、日本企業等の研究パートナーとウィンウィン(Win-Win)の関係を築けるような委託研究プロジェクトをさらに増やしていくことが重要であると考えている。本稿が読者の皆様のオープンイノベーションの取り組みのヒントとなり、フラウンホーファーとの協業へのご関心を高める一助となれば幸いである。


参考文献

1) Fraunhofer Group for Microelectronics in cooperation with the Leibniz institutes IHP and FBH, About FMD, https://www.forschungsfabrik-mikroelektronik.de/en/About-FMD.html

2) BMBF, Forschungsfabrik Mikroelektronik Deutschland (FMD), https://www.elektronikforschung.de/projekte/forschungsfabrik-mikroelektronik-deutschland-fmd

3) Fraunhofer Institute for Electronic Nano Systems, Implants, https://www.enas.fraunhofer.de/en/business_units/smart_health/Implants/Theranostic_Implants.html

4) Fraunhofer Group for Microelectronics in cooperation with the Leibniz institutes IHP and FBH, High-Voltage Power Grid Monitoring, https://www.forschungsfabrik-mikroelektronik.de/en/Range_Of_Services/Technologies/Sensor_Systems/High-Voltage_Power_Grid_Monitoring.html

5) Fraunhofer Institute for Integrated Circuits IIS, Division Engineering of Adaptive Systems EAS, Project USeP, https://www.eas.iis.fraunhofer.de/en/application_areas/microelectronics/usep.html

6) Fraunhofer Group for Microelectronics in cooperation with the Leibniz institutes IHP and FBH, MEMS/CMOS Integration, https://www.forschungsfabrik-mikroelektronik.de/de/unser-angebot/Technologieplattformen/MEMS_Aktoren/MEMS-CMOS_Integration.html

【著者紹介】
林田 一浩(はやしだ かずひろ)
フラウンホーファー日本代表部 アシスタントマネージャー

■略歴
2016年、慶應義塾大学法学部政治学科を卒業。大学卒業後、フラウンホーファー日本代表部に勤務。
2018年からアシスタントマネージャーとして、委託研究プロジェクトサポート・コーディネートおよび広報を担当。

不確実性とグローバルな変動の時代に対応するSRIのイノベーション-日本の新しい可能性-(2)

Youssef Iguider
SRIインターナショナル日本支社

SRIのイノベーションに対するアプローチ

「発明・Invention」は「イノベーション・Innovation」ではないということを最初に明記しておこう。発明とは天才的なアイデアであったり、優れた科学論文であったり、確固たる特許であったりするかもしれない。だが、残念なことにあまりにも多くの発明が市場化までに至らず、市場の人々に価値を提供するイノベーションになり得ていないのが現状である。SRIは発明をイノベーションに変えることができるが、それは対象となる顧客にとって重要かつ深刻な問題を解決するとともに、ニーズを満たしつつ、各状況に応じた高い価値を伴うソリューションを顧客に提供できた時のみである。対象となる顧客は(市場内の)社外である場合もあれば、社内(自組織内の他チームやマネジメント)の場合もある。

ニーズや課題は千差万別である。その多くは技術的な観点から見ると「興味深い」課題だが、そのすべてが「重要な課題」として認められるわけではない。「興味深い課題」と「重要な課題」の違いは、「興味深い課題」に対する解決策は「あってもかまわない」が、「重要な課題」は解決策が「必須である」ということである。市場においては、「重要である」課題に焦点をあて、誰かが「必須である」とする解決策を導いて初めてイノベーションが達成される。

SRIでは技術的な話や技術開発に深く踏み込んでいく前に、いくつかの戦略的な質問に対する回答を顧客と共に考え、評価するようにしている。この目的は、SRIの顧客やその顧客自身の顧客に対する真の価値を見出し、それを提供することである。質問の中には、「どのような重要課題を解決しようとしているのか」「なぜ特定の課題を解決する必要があるのか」「この課題を解決することで、誰が利益を得るのか」「一定状況下における外部顧客、もしくは内部顧客は誰か」「特定の課題を解決した場合に与える顧客への影響はどの程度なのか」などがある。また、最初は顧客から何か特定のテクノロジーを開発「したい」と声をかけられることもよくある。その開発「したい」という思いから真の「ニーズ」を抽出し、特定する時にもこれらの質問は役立つ。SRIではこの「なぜ(Why?)」「なぜそれをしたいのか」という一連の問いを繰り返すというシンプルなことを実践しているのだ。

SRIではこの段階を「ディスカバリー・フェーズ」と呼んでおり、顧客の重要な「ニーズ」を的確かつ明確に定義することを目標としている。「良好に定義できた課題は、半分解決できたも同然だ」とも言われているくらいである。

顧客の重要課題を明確に定義し、顧客のニーズを十分に判別した後には、SRIの研究者チームと顧客のチームが同席する「アイディエーションワークショップ(Ideation Workshop)」を開催する。このワークショップでは双方の集合知とSRIのイノベーションに関する手法を活用し、特定した課題を解決できる革新的なソリューションのコンセプトを共同で作り上げる。実のところ、MOTOBOTのようなSRIの著名なテクノロジー・ソリューションのコンセプトは、このようなアイディエーションワークショップ(Ideation Workshop)から生まれたものである。

ソリューションのコンセプトを形成して顧客の承認を得た後は、技術ソリューションの開発を実際に進めていき、設計したコンセプトに基づくコンセプトの証明(Proof of Concept:POC)を顧客に提出する。POCはコンセプトの実現可能性(フィージビリティ)を検証・実証し、その実用可能性を証明することを目的としている。この段階では顧客企業のエンジニアをSRIのラボに常駐させ、SRIの科学者とともに作業を行うこともある。その後はSRIのラボが顧客のプロトタイプ開発を支援し、SRIの技術ソリューションに基づいた製品(プロダクト)を顧客が開発できるように技術を移転させる。

SRIが日本のイノベーターに力を与える

SRIが日本にオフィスを構えたのは1963年である。当時の目的は、野村総合研究所(NRI)の設立を支援することであった。SRIの日本オフィスは、米国外におけるSRIの唯一の拠点である。この約60年にわたり、SRIはさまざまな分野や産業において日本を支援し、商業界や学術界、政府機関で日本のイノベーターを支援してきた。

近年、自動車産業や建設業、重工業、化粧品など各業界の重要なニーズに応える新たな技術ソリューションの開発において、日本の大手企業がSRI日本支社に大いに注目している。

野村SRIイノベーション・センター(NSIC)

SRIは日本のイノベーターに先進的な技術ソリューションを提供するだけでなく、野村證券株式会社と提携してシリコンバレーに野村SRIイノベーション・センター(NSIC)を設立した。NSICの拠点はカリフォルニア州メンロパークのSRIのメインキャンパス内にあり、日本企業のみを対象にしてサービスを提供している。

NSICはすでにその運営を開始しており、現在はさまざまな業種の大手日本企業を受け入れている。NSICのプログラムはメンバー企業が新技術を判別し、評価できるようにするための最良慣行(ベストプラクティス)を習得・育成できるように設計されており、次世代イノベーションの採用を促進するとともに、テクノロジーへの投資価値を最適化することを目的としている。

NSICでは2022年の新規メンバー企業募集を検討している。メンバーの日本企業がシリコンバレーで開催されるNSICのプログラムに現地参加できるようになる可能性もあるが、リモートで参加できるようにもしており、メンバー企業の日本にある組織もオンラインにて参加できるように整えている。

日本の課題と可能性

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは日本や世界に多くの新しい課題を突き付けた。また、地域的・世界的な競争の激化に加え、高齢化や労働力の減少、イノベーションの実践の衰退、インフラの老朽化など日本が近年直面している多くの課題も浮き彫りにしている。

しかし、日本が何度も不況から迅速に回復したことを歴史は示している。また、日本は常に新しい発明を取り入れ、それを適応させ、重要なニーズに応える価値あるイノベーションに発展させることに長けていたことも、歴史が証明している。例えば、5世紀に起源を元とする日本の文字の発展から、近代戦後の自動車生産、造船、半導体産業、TQM(Total Quality Management:総合的な品質管理)プロセスなど、幅広い例を数多く上げることができるのだ。

このように、日本は現在、上記にあげたような課題に直面しているが、まさに今は世界のその他地域のイノベーションに関する成功事例を学んで採用し、これをさらに発展させることによって、現在日本が抱えるイノベーションの課題に対応できる時でもある。

幸いなことに、技術や研究開発における最新の進歩やトレンドを礎にして、スマートかつカスタマイズした革新的なソリューションを採用すれば、これらの課題の大半には対応可能である。さらに言えば、技術革新をうまく適用できれば、日本が抱える課題をさらなる経済成長につなげる新たなチャンスに変換することができるのかもしれない。

「未来」を考える

今、世界はこれまでとは比べられないほど繋がっている。また、現在の世界のバランスは、かつてないほど速い変化を遂げている。イノベーションのエコシステム、グローバル市場、地域市場、競争の性質(今や地域横断的だけでなく産業横断的にも)、そしてモダン・イノベーションの世界的な台頭も同様に言える。しかし、このような前例のない不確実な変化の時代は、企業や国にとって新たなチャンスをふんだんに与える時でもある。だがその反面、それはイノベーションの課題を正しく、かつ的確に捉え、成功させることができれば、に限る。


【著者紹介】
Youssef Iguider(イギデル ユセフ)
SRIインターナショナル 日本代表 兼
ビジネス デベロップメント担当バイスプレジデント

■略歴
約30年にわたりITC業界の日米トップ企業にて勤務し、技術革新のさまざまな分野で、シリコンバレーと日本の架け橋として25年以上の経験を有す。現在はSRIインターナショナルの日本代表として、日本の産学官協力を通して大型のグローバルパートナーシップを組み、SRIのイノベーションを事業化することを主な責任としている。
2007年SRIインターナショナル入社。前職ではDatacraft Japan ソリューションセールスディレクター、Cisco Systemsプロダクトマーケティングマネージャー、Panasonicでは多様なエンジニア職を歴任。オデッサ州立工科大学 情報工学修士号取得。国立大学法人電気通信大学 情報工学 博士課程修了。英語、日本語、フランス語、ロシア語、アラビア語が堪能。

Eco-Pork、東工大と養豚領域における共同研究を開始

(株)Eco-Porkは、東京工業大学と共同研究契約を締結した。本共同研究では、東京工業大学 環境・社会理工学院 助教 大橋匠氏らと共に、人間中心デザインの見地から生産現場でのスマート養豚技術の普及促進要因および消費者の行動変容促進要因を明らかにしていくという。

Eco-Porkは、誰もが安心して豚肉を楽しむ未来を守ることをミッションに、豚肉の安全・安定供給と養豚産業の環境負荷低減を実現すべく、養豚業界にICTによる情報可視化ツール「Porker」の提供、IoTセンサや体重・体調測定カメラの開発・提供を行うなど、養豚農家の作業効率改善・生産性改善・疾病対策等へ取り組んでいる。

主力事業である養豚経営管理システム「Porker」は、14の販売提携先の協力を受け、全国に販売を実施しており、沢山の農家から評価を得ているとのこと。

■共同研究について
国内の養豚現場では、高齢化による離農や若者の農業離れによる担い手不足が深刻な問題となっており、スマート技術を効果的に養豚現場へ導入しながら、省力化・軽労化を図り、生産性を高めていくことが欠かせない。また、家畜の生体情報の把握・管理を行うスマート技術は、家畜の快適性に配慮した飼養や畜産物の品質担保を可能にし、消費者に対しても安心安全な商品を提供することに繋がる。さらに、生体情報に基づき限られた資源を有効に活用することで、環境負荷低減にも貢献できる。

本共同研究では、以上のようなスマート技術を養豚現場へ普及させる上での機会と障壁を明らかにすることで、持続可能な未来の養豚業の実現に貢献する。具体的には、①生産現場におけるスマート技術採用の促進/抑制要因、および、②スマート技術を活用し生産された畜産物の消費行動促進/抑制要因を明らかにしていく。
さらに、対象となる人々や現場のニーズを汲み上げて、ニーズに基づき問題を解決するプロダクト/サービスをデザインする「人間中心デザイン」という考え方に基づき、生産者にとって省力的な養豚管理手法のデザインを目指すとしている。

ニュースリリースサイト(Eco-Pork):https://www.eco-pork.com/20220210