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磁気応用と環境発電(1)

(株)KRI
フェロ&ピコシステム研究部 部長
藤井 泰久

1.はじめに

 株式会社KRIフェロ&ピコシステム研究部では、MEMSと磁気制御を基盤技術としてIOT/ロボット分野や脱炭素に貢献する分野に向けた磁気応用デバイスの研究開発に取り組んでいる。
 具体的磁気応用としては、磁性流体熱輸送や磁気冷凍などの冷却用途、磁気式触覚センサや磁気リニアアクチュエーターなどのロボット用途、電磁誘導振動発電などのIOT用途などが挙げられる。この様に磁気応用は用途が広範に渡っており、今後の実用化が期待される分野である。
 本稿では、破壊に強い柔らかい磁性材料を用いた環境振動発電に焦点を絞って弊社の研究の一端をご紹介する。

2.磁性エラストマ

 昨今、磁性エラストマー(磁性を有する粘弾性材料)とよばれる機能性材料が注目されている。この材料は、例えば、シリコーンゲルやウレタンゲルなどの粘弾性材料に鉄粉等の磁性微粒子を分散・硬化させたものであり、粘弾性と磁性との2つの性質を兼ね備える。この種の機能性材料は、外部磁場によって、硬さや粘弾性が変化(MR効果)し、また変形を誘起される(磁歪効果)ため、ソフトアクチュエータ1)、免振装置2)、可変軸バネ3)など応用研究が盛んにおこなわれている。
 筆者らは磁性エラストマの鉄粉の代わりに永久磁石粉を用いて材料自体に保磁力を有する機能性材料を提案し、変形により磁化が変化する(逆磁歪効果)特性を利用した環境発電の研究に取り組んでいる。

3.環境振動発電

3-1.供試体

 供試体としては、図1に示す様に直径18mm、高さ18mmの円柱状永久磁石エラストマを用いた。分散媒はシリコンポッティングゲル、分散質は永久磁石粉(混合割合は60w%、70w%)であり、型に入れて加熱硬化後に6Tの磁場を印可して着磁してある。
 エラストマ硬化時に無磁場で硬化させた際には、エラストマ中に磁粉がほぼランダムに配向した状態であり、エラストマ硬化時に厚み方向に磁場を1.5T印加して硬化した場合には、磁粉は厚み方向に配向(クラスター化)した状態になっている。ランダム配向と厚み配向(クラスター化)状態の模式図を図2,図3に示す4)

図1 シリコンゲルと永久磁石粉と硬化後の永久磁石エラストマー
図1 シリコンゲルと永久磁石粉と硬化後の永久磁石エラストマー
図2 磁石粉のランダム分散
図2 磁石粉のランダム分散
図3 磁石粉の配向(クラスター)
図3 磁石粉の配向(クラスター)

3-2.振動発電実験

 磁性エラストマを用いた振動発電実験系を図4に示す。供試体をコイル中に設置し、正弦波形の強制振動を与え変形させ、ファラデーの電磁誘導により発電をおこなった。加振ストロークは10mmと一定とし、加振周波数をパラメーターとし実験をおこない、誘導起電力を測定し、その値をもとに発電量を算出した。
 誘導起電力は、基本式 V= – N dΦ /dt で表され、磁束の時間変化量に巻線数を乗じた量で表され、磁性エラストマの変形により時間当たりの磁束変化量を大きくすることがポイントになる。
実験結果を図54)に示す。

図4 振動発電簡易実験図
図4 振動発電簡易実験図
図5 振動発電実験結果
図5 振動発電実験結果

3-3.発電実験結果

 最大発電量は、10Hzの振動周波数の時に磁石粉のクラスター形成あり、磁石粉配合割合70w%の時に約900μWを記録した。
 実験範囲内では、磁石粉の配合比率が多いほど、振動周波数が高いほど、発電量は大きくなっていく傾向にある。配合比率が多い方がエラストマの表面磁束密度が上昇していく一方で、70w%より多くすれば、弾性の劣化が起こり振動の周波数追随性が悪くなる傾向にあり、配合比率や振動周波数は適正な条件が存在する。また、エラストマ中の磁石粉のクラスター有(磁石粉の厚み方向の配向)は、なし(ランダム配向)と比較すると、条件により1.6倍から2.0倍程度の発電量となり、クラスター形成はエラストマ表面磁束密度が高められ、発電量には非常に有効である。



次回に続く-



参考文献

  1.  岸、下野、出口、藤井、山本、磁場配向の異なるエラストマ磁石を用いたフレキシブルリニアモータの比較実験、電気学会産業応用部門、(2021)
  2.  Y. Li et.al., Smart Mater. Struct., 22, 035005, (2013)
  3.  梅原ら,鉄道総合研究所, 鉄道車両を支える台車技術、2018年5月号 Vol.75 No.05
  4.  特開-2019-22435


【著者紹介】
藤井 泰久(ふじい やすひさ)
株式会社KRI フェロ&ピコシステム研究部 部長

■略歴
1988年 東京理科大学理工学部卒業
1988年 ローム株式会社入社
サーマルヘッド、インクジェットヘッドの開発
1997年 ミノルタ株式会社入社
ライン型インクジェットヘッドの開発、MEMS開発
2002年 株式会社KRI入社 フロンティア研究部 研究員
流体MEMS研究開発(バイオチップ、マイクロリアクター、嗅覚センサなど)
2014年 フェロ&ピコシステム研究部 部長
~現在  磁気MEMSの研究開発(振動発電、触覚センサ、磁気冷凍・磁性流体冷却など)

凸版印刷、半導体原版メーカーを会社分割により設立

凸版印刷(株)は、会社分割により、半導体用フォトマスク事業を行う新会社「(株)トッパンフォトマスク」を設立し、独立系投資ファンド インテグラル(株)を出資パートナーとして、この度株式譲渡契約を締結した。トッパンフォトマスクは、凸版印刷とインテグラルの合弁会社として4月1日から事業を開始、独立企業体として更なる成長と競争力の強化を実現し、急速な成長を続ける半導体産業への継続的なサポートを目指す。

■ 新会社設立の背景と狙い
 AIや5Gなどテクノロジーの進化を受け、さまざまなマーケットにおけるデジタルイノベーションが加速する中、世界の半導体市場は急激な拡大を続けており、2030年に100兆円を超える水準に達すると予測されている。世界的な半導体不足を背景に、半導体メーカー各社による生産能力増強の動きとともに、半導体製造に不可欠な回路原版としてフォトマスクの需要も世界各地域でこれまで以上に高まっている。
 凸版印刷は、1961年にフォトマスク事業を開始して以来、高い技術力を武器に、日本から欧米、アジアへと製造拠点の拡大を進め、半導体産業の成長を支え続けてきた。現在、各国政府による半導体の「地産地消」の動きが広まる中、凸版印刷はワールドワイドな生産体制を構築する唯一のフォトマスクメーカーとして、半導体用フォトマスクの外販市場におけるトップシェアを占めている。
 一方で、半導体市場の急速な成長により、フォトマスクの市場は変曲点を迎えており、事業の継続的な拡大・成長のためには、市場環境の変化、顧客動向などを見極めながら、これまで以上に迅速かつ柔軟な研究開発投資と設備投資を行うことが求められている。
 このような環境において、凸版印刷として選択しうる戦略的オプションを幅広く検討した結果、本事業を会社分割により分社化をしたうえで、独立した企業体として経営の自由度を高めることで、市場のニーズを捉えた投資を俊敏に実行し、さらなる成長と競争力の強化を実現・継続していくことが、顧客と株主への価値向上に資するとの結論に至り、この度の決定となったという。

■ 新会社の概要
新設する企業の名称:
 (株)トッパンフォトマスク (Toppan Photomask Co., Ltd.)
本社所在地:
 東京都港区芝浦3-19-26 トッパン芝浦ビル
執行体制:
 代表取締役社長・CEO 二ノ宮 照雄
 COO Michael G. Hadsell
事業内容:
 半導体製造用フォトマスクの製造・販売
主要拠点:
・製造拠点
 朝霞、滋賀(日本)、ラウンドロック(米国)、ドレスデン(ドイツ)、
 コルベイユ(フランス)、上海(中国)、利川(韓国)、桃園(台湾)
・研究開発拠点
 朝霞(日本)、ドレスデン(ドイツ)
資本金:
 4億円
出資比率:
 凸版印刷50.1%、インテグラル49.9%
企業ウェブサイト:
 https://www.photomask.co.jp

novotechnik、農業・建設機械で活躍、耐環境性に優れた非接触角度センサ新仕様。

角度センサ・リニアスケール 専門メーカーのnovotechnikが、農業・建設機械で実績多数の非接触角度センサ RSA-3200シリーズで、新しく出力特性「180°オフセット」仕様を2022年5月にリリースする。屋外環境でも使用可能な耐環境性に優れた角度センサが、より幅広いニーズに対応するという。

■非接触角度センサ RSA-3200シリーズ
移動式作業機械や産業用トラックコンベヤのバケット・ブーム角度検出に使う角度センサは、屋外で使用するため非常に高い要求を課す。
耐環境性に優れた角度センサ RSA-3200 は、保護等級IP67で埃や汚れ、水が掛かっても問題無く使用可能。
温度範囲も-40℃~+125℃で過酷な操作条件下でも信頼性の高い機能を提供する。

RSA-3200 は車載用用途向けに最適化されており、コンパクトな設計、最高 EMC 規格である ISO11452 に準拠している。 安全関連のアプリケーションでの使用に適した、1 チャンネルバージョンとマルチチャンネルバージョンがある。 また、ステンレス鋼シャフトはレバーアームの組み立て用に設計されている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000061.000009609.html

次世代衛星アプリケーション向けに耐放射線設計の2.5V動作 DAコンバータ

STマイクロエレクトロニクスは、最低2.5Vで動作する耐放射線性DAコンバータ(DAC)「RHRDAC121」を発表した。同製品は、従来の3.3V動作品では対応できない最新の低消費電力システム設計に使用することができるという。

RHRDAC121は、12bit、1Mspsの逐次比較型(SAR)DACで、最大速度および電源電圧における消費電力がわずか0.6mWであるため、次世代衛星のサイズ、重量、および消費電力(SWaP)削減に貢献します。SPI互換のシリアル出力、内部電圧リファレンス、0V出力の自動パワーオン・リセットなどの機能を内蔵しており、通常は遠隔測定、ハウスキーピング、高精度センサのゲイン調整回路に使用される。最小限の外付け部品で高精度が得られるため、回路の簡略化や基板面積の削減に貢献する。

また、最大100krad(Si)の吸収線量(TID)により、過酷な条件においても安定した性能を維持するとともに、最大125MeV.cm²/mgのシングル・イベント・ラッチアップ(SEL)耐性を備えている。シングル・イベント・トランジェント(SET)およびシングル・イベント・アップセット(SEU)の特性評価がされているため、アップスクリーニング無しですぐに導入可能である。

RHRDAC121は、QML-V認定を取得済みで、金メッキ、ハンダ仕上げのリード付き密封セラミック・パッケージ、およびベア・ダイで提供される。ヨーロッパで設計・製造された同製品には、STの130nm CMOS技術および航空宇宙産業分野で45年以上の実績を持つプロセスが活用されている。同製品は、フランスの宇宙機関であるフランス国立宇宙研究センター(CNES)の資金提供を受けて開発された。

エンジニアリング・モデル(EM)「RH-DAC121K1」の単価は、10個購入時に約950.00ドル。フライト・モデル(FM)「RHRDAC121K01V」の価格は約2450.00ドル。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001222.000001337.html

「環境ウォッチ ver.2」を開発、ARにより室内環境をリアルタイムに可視化

富士ソフト(株)と(株)安藤・間〔安藤ハザマ〕は共同で、Microsoft社が提供するヘッドマウントディスプレイ端末である「HoloLens 2」を活用した室内環境可視化技術「環境ウォッチ ver.2」を開発し、安藤ハザマ技術研究所にて運用を開始した。

本技術では、「環境ウォッチ」で備えた事前実施したシミュレーション結果の表示機能に加え、センサで計測した温度や湿度などのデータをリアルタイムで室内にAR(拡張現実)表示することが可能となった。
利用者は事前のシミュレーションと現在の室内の状況を実スケールで確認でき、これまで見落としがちであった問題点を発見するツールとして活用できる。室内環境改善や設備運用上の課題を早期発見することにより、お客様価値の向上に寄与する。

1.開発の背景
 2018年に発表した「環境ウォッチ」はデモンストレーションに参加したお客様から高い評価を得た。しかし、室内環境の事前シミュレーション結果を表示する機能に特化していたことから、リアルタイムで室内の環境状況を見える化したいという声が利用者から多数寄せられた。そこで「計測データのリアルタイム表示機能」と「クラウドでのコンテンツ管理機能」を追加し、新たに「環境ウォッチ ver.2」として開発した。

2.システムの特長
① 室温などのセンサデータのリアルタイムAR表示 ・センサ類で計測した室内環境の変化を、クラウド連携により2分間隔でモデルに反映させながら実空間に表示できる。(画像)
・クラウドに蓄積したデータを利用し、時間を遡って室内環境を確認することも可能。
② 複数現場の3Dコンテンツをクラウド上で同時管理
・専用のWebアプリを使用することで、複数の現場の室内環境データ(3Dコンテンツ)※をPC上で簡単に管理できる。
③ QRコードを要所に配置し、表示位置の正確性を向上
・3Dコンテンツの位置合わせにはQRコードを使用します。複数箇所に設置することで、端末を利用中に生じる、実空間とコンテンツの位置ズレを常に修正することができる。

※ 3Dコンテンツ:本技術によりAR表示する、温度・湿度センサデータや事前シミュレーション結果の3Dモデルを総称してこのように呼称

3.適用事例
 2022年2月に安藤ハザマ技術研究所にて当該技術を適用し、運用を開始した。所内に設置しているZEB実証エリア※1にて温度センサデータと連携した室内温度分布のリアルタイム表示機能を適用するとともに、事前の3Dシミュレーション結果や設計BIM※2データを複数切り替えてAR表示する機能を適用している。

※1 ZEB実証エリア:ZEB(Net Zero Energy Building)に関する要素技術について、省エネルギー性や快適性を実証することを目的として、安藤ハザマ技術研究所内整備されたエリア
※2 BIM(Building Information Modeling):コンピュータ上に再現した3次元の建物モデルにコスト、材料などの情報を付加したもの

4.今後の展開
 竣工検査時の空調設備の確認と室内温度計測支援や、建物引き渡し時のお客様とのコミュニケーションツールとして、設計業務や施工現場へ積極的に展開を図る予定。  また、現在は、温度や湿度などスカラー量のドット表示のみの対応だが、今後は風向風速などのベクトル量やサーモグラフィのような面データ表示への対応に取り組み、本技術の活用の幅を広げていく。加えて汚染物質の拡散度合や空間の快適性の可視化など、適用先拡大に向けて開発を進めていくとしている。

ニュースリリースサイト(FUJISOFT):https://www.fsi.co.jp/company/news/20220329_2.html

Nexvision、Blickfeld社 新型屋外向けLiDARセンサの販売

ネクスビジョンテクノロジーズ(株)とBlickfeld GmbHは、IP65等級の新型屋外向けLiDARの販売を開始する。

Blickfeld社のCube 1 Outdoor LiDARセンサはIP65に準拠し、あらゆる方向からの塵埃・噴流水の侵入に対して保護されている。Power-over-Ethernet技術により設置とメンテナンスが簡単になり、必要なアクセサリー数が減るため包括的LiDARシステムの複雑さが軽減される。

ミュンヘンを拠点とするLiDARハードウェアおよびソフトウェアソリューションのメーカーであるBlickfeld社は、屋外での使用を想定したCube 1 Outdoor LiDARセンサを発表した。この新型センサは、体積測定や人数カウント、セキュリティ用途など多数のプロジェクトで成功を納めているCube 1モデルをベースにしている。Cube 1 Outdoorは保護等級IP65に準拠した防塵・防水設計となっており、電源はデータ回線と同じケーブル、いわゆるイーサネットケーブルで供給されるという特別な仕様になっています。PoE(Power-over-Ethernet)技術は外部接続やアクセサリーが少なく、センサシステムの設置・操作・メンテナンスを大幅に簡素化できる。

IP65に準拠した防塵・防水保護性能
国際規格IP65(侵入保護)によって認証されているCube 1 Outdoorは、あらゆる方向からの塵埃や噴流水の侵入に対して保護されている。PoEプラグには密閉型コネクタを採用し、屋外での使用に最適化することで認証条件を満たした。

Power-over-Ethernetによる簡単な設置
Blickfeld社のセンサーは低電力消費となっているため、電源及びデータ回線に標準のイーサネットケーブルを使用することが可能となっている。電力信号とデータ信号を分離するには、いわゆるPoEスプリッタが必要である。Cube 1 Outdoorにはこの機能が内蔵されているため、外付けのスプリッタは不要となる。イーサネットケーブルと内蔵スプリッタを使用することで、特別なケーブル・コネクタ・電源の必要性が大幅に削減されている。

外部アクセサリーを削減することで、埃や水からの保護およびケーブルの供給や設置および保守が必要となるアクセサリーが最小限に留められ、全体的な費用削減につながります。特に大規模なLiDARシステムでは、コストも応じて高くなります。Cube 1 Outdoor センサを選択することで、数十から数百ものセンサを備えたシステムの複雑さが緩和され、より迅速な設置が可能となる。

オペレーションに表れるその違い
LiDARセンサーのハードウェアとソフトウェアは環境センシングと認識における性能に加えて、使いやすさが企業にとって重要な検討事項となる。これは、コストと運用に大きな影響を与えるためという。

プレスリリースサイト:https://nexvision.co.jp/pressrelease/details_18.html

建物OSと複数ロボットプラットフォームを組み合わせた連携基盤の実証運用

清水建設(株)、ブルーイノベーション(株)、オムロン ソーシアルソリューションズ(株)の3社は、建物設備と複数モビリティ・ロボットを連携させたサービス開発に向け、豊洲スマートシティのエリア内に所在する大規模オフィスビル「メブクス豊洲」において、清水建設の建物OS「DX-Core」と複数のロボットプラットフォームを組み合わせたロボット連携基盤の実証運用を2022年4日1日(金)より開始する。

本実証運用では、ロボットプラットフォームを介してDX‐Coreと連携したロボットによる「ロボット清掃サービス」「ロボット案内サービス」の開発を手始めに、ロボットプラットフォームを介した建物施設とロボットの連携基盤の構築を進める。将来的には自動運転車やドローンなどによる広域・空域を対象としたサービス開発・展開も視野に入れ、モビリティやロボットと人が共生・協働する街づくりを推進していく予定とのこと。

■取り組みの背景
スマートシティでは都市内のあらゆる施設や設備が連携してデータを収集、統合、分析し、その結果に応じて設備や機器などを遠隔制御することで、インフラや施設の運営・業務最適化や生活者の利便性・快適性向上が図られる。
その実現のためには、建物内の空調や自動ドア、エレベーターなどの設備機器からビル内を自動走行するロボットに至るまで、多種多様な機器類の制御アプリケーションを連携させる必要がある。一方、アプリケーション間の連携は設備機器・デバイスごとに個別にプログラミングしなければならないケースが多く、建物設備とロボットの連携機能の実装を妨げる要因となっていた。

■具体的な取り組み
こうした課題を解決すべく、清水建設は、建物運用のデジタル化を支援する基本ソフトウェアとして、建物の設備機器などをメーカーの違いを問わず連携させることで、IoTデバイスや各種アプリケーションの相互連携を容易にする建物OS「DX-Core」を開発・実用化。併せて、DX-Coreを核に、エレベーター・自動ドア等の建物設備と、案内ロボット・配送ロボット等のサービスロボットや自動運転車等の各種モビリティを連携・統合制御するプラットフォーム「Mobility-Core」を構築するなど、各種モビリティ・ロボットを連動・活用した付加価値の高い建物インフラおよびサービスの開発を進めている。

一方、ブルーイノベーションは複数機種のドローンやロボット・モビリティなどを遠隔かつ一括で自動制御できるデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(以下 BEP)」を有しており、建物の屋内外点検や物流、監視など幅広い分野でドローンやロボットなどを活用した各種ソリューションを開発・提供している。今年3月には、BEPが持つ機能の中からオフィス清掃業務に特化した機能をパッケージ化し、オムロンの複合型サービスロボット「Toritoss」を活用した「BEPクリーン」のトライアルサービスをリリースしている。

「ロボット清掃サービス」の開発では、BEPを介してDX-CoreとToritossを連携させ、Toritossが人の手を介さずにエレベーターや自動ドアと連動し、ビル内をシームレスに移動しながら自動清掃できることを実証する。
また、「ロボット案内サービス」の開発では、DX-CoreとMobility-Coreにより、案内ロボットとエレベーターや自動ドアを連携させ、ロボットによる階をまたいだ来客案内サービスの実証運用を進めるとしている。

ニュースリリースサイト(blue innovation):https://www.blue-i.co.jp/news/6725/

京大とパナソニック、マイクロ波電力伝送システムのサンプル提供開始

京都大学 生存圏研究所 篠原真毅教授とパナソニック(株)は、京都大学COI(Center of Innovation)において、マイクロ波電力伝送システムについて共同で研究開発を進めていたが、此度プロトタイプシステムの開発が完了し、試験用サンプルの提供を開始する。

開発したシステムは、920 MHz帯のマイクロ波(電波)を活用し、長距離でのワイヤレス電力伝送を行うことが可能で、電池交換や電源ケーブルが不要でいつでもどこでも電源供給をすることのできる技術。
この920 MHz帯のマイクロ波電力伝送技術は、2022年に電波法施行規則等に関する省令が改正される見込みとなっており、免許を取得することで、屋内の一般環境下で利用することができる。現段階では送電できる電力が小さいため、受電機器はセンサをはじめとする小電力で動作する機器に限定されるが、離れた場所に設置された送電機から常に電力を供給することができるため、電池切れの心配や電源コードの煩わしさの無い空間を提供することができる。

今回、パナソニックは、920 MHz帯の電波を活用した送電機と受電機からなるマイクロ波電力伝送システム Enesphere(エネスフィア)を開発し、サンプル提供を開始するとともに、様々な用途・シーンでの試験的活用を進めていくという。

ニュースリリースサイト(panasonic):
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2022/03/jn220324-3/jn220324-3.html

大気汚染対策と温暖化対策のコベネフィットに向けた窒素酸化物(NOx)濃度分布の新知見

 千葉大学環境リモートセンシング研究センターの入江仁士准教授と電力中央研究所の板橋秀一主任研究員は、二酸化窒素(NO2)の大気中濃度の三次元分布を観測する独自の差分吸収分光法(DOAS法:注1)を利用した受動型の大気リモートセンシング(注2)・地上観測網・キロメートルスケール(1.3 km)の精密な空間解像度を実現した大気環境モデリングを融合させた研究を実施し、首都圏における窒素酸化物濃度分布について新たな特徴を明らかにした。
本研究により、大気環境モデルは集中観測期間中の地上と上層(高度0-1 km)のNO2濃度の空間分布や時間変化をよく再現できることが分かった。また、地上と上層の濃度の対応関係を見てみると、両者は強い相関関係をもっており、上層の濃度は地上の濃度の0.4-0.5倍に相当することなどが新たに判明した。

●研究の背景
 地球温暖化を緩和させるためには、主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の削減が不可欠だが、CO2と大気汚染物質の発生源を考えると、化石燃料の燃焼等の産業活動に由来するものが多いという共通点がある。そのため、大気汚染対策を進めれば地球温暖化対策になるという相乗効果(コベネフィット)に注目して対策を進めることが重要である。

 このような認識の下、短寿命気候汚染物質(short-lived climate pollutants:SLCPs:注3)のひとつである対流圏中のオゾン(O3)濃度の減少が求められてきた。O3は化石燃料の燃焼等の産業活動に由来する前駆気体(注4)である窒素酸化物(NOx=NO+NO2)や揮発性有機化合物(VOCs)から生成し、光化学オキシダントとして人体や植物に悪影響を及ぼす。そのため、NOxとVOCsの排出規制が進められ、この40年にわたり日本国内ではそれらの濃度低下が示されてきた。
 しかしながら、これは主に地上の観測網から把握された結果であり、地上よりも上層、特に大気境界層内(注5)のNO2汚染状況の理解は、これまで定常観測方法が無く、限定的な把握しか出来ていなかった。また、空間的に複雑な排出源を有する都市域を対象としても、従来は5km程度の空間解像度が一般的で、それよりも精密なキロメートルスケールでの大気環境モデリングの研究は計算コストなどの課題によりあまり進んでいなかった。

●研究の成果
 本研究では、千葉大学に設置された4台の多軸差分吸収分光法(MAX-DOAS法:注6)のリモートセンシング装置による三次元のNO2濃度計測、環境省大気汚染物質広域監視システム「そらまめくん」(AEROS)の地上観測網(画像)にキロメートルスケール(1.3 km)という高い空間解像度を有する大気環境モデリングを組み合わせて、首都圏の地上と上層(高度0-1 km)のNO2汚染の時空間分布の解明に迫った。研究対象は2015年秋季の集中観測期間(2015年11月9-23日)とした。大気環境モデルは、集中観測期間中の地上と上層のNO2濃度の空間分布や時間変化を良く再現でき、NO2濃度が夜間に高く、日中に低くなる日内変動も概ね捉えていた。
 また、期間中に観測された高濃度NO2は、夜間に発生する場合と、日中に濃度低下せずに発生する2つのケースがあることが分かった。いずれも風が停滞した気象場が要因として考えられたが、後者については、曇天下で境界層高度が低いことも影響していたことが分かった。日平均したモデル結果から、地上と上層のNO2濃度には強い相関関係があり、上層NO2濃度は地上NO2濃度の0.4-0.5倍に相当することが分かった。
 このように、最先端のMAX-DOASリモートセンシング観測・地上観測網・大気環境モデリングの連携により、首都圏における窒素酸化物濃度分布に関する新たな知見を獲得することができたという。

●今後の展望
 本研究の結果から、首都圏において地上と上層のNO2濃度が強い相関関係をもって変動することが分かった。2023年度打ち上げが予定されている日本の温室効果ガス・水循環観測技術衛星(Global Observing Satellite for Greenhouse gases and Water cycle: GOSAT-GW)からは、宇宙からCO2とNO2を同時観測することで、未知排出源の同定のみならず、排出量推定精度の向上も期待されている。人工衛星からは地上濃度だけの観測は難しく、上層の濃度も加わった鉛直カラム濃度(注7)が計測される(参考:http://www.cr.chiba-u.jp/lab/Irie-laboratory/research.html)ため、そのデータの解釈を地上濃度と関連させて適切に行う上で、本研究の成果は役立つ。
 また、キロメートルスケールという精密な大気環境モデリングが可能となったことで、空間的に複雑な排出源を有する都市域の排出評価が高精度化されることも期待される。
 このような大気リモートセンシング・地上観測網・大気環境モデリングの連携による研究成果は世界的にあまり報告されておらず、新しい手法である。このような取り組みにより大気汚染対策を進めつつ、脱炭素化を促進し、温暖化対策に貢献するといったコベネフィットが期待されるとしている。

(注1)差分吸収分光法(Differential Optical Absorption Spectroscopy: DOAS法):高波長分解能で測定したスペクトルに含まれる観測対象物(微量ガス)の特徴的な吸収スペクトル構造を利用し、Lambert-Beerの法則に基づいて微量ガスの濃度を導出する方法。測定されるスペクトルには微量ガスだけでなくレイリー散乱やミー散乱等による影響も含まれるが、そういった微量ガスの吸収構造よりも低周波(波長方向に緩やかな構造)の影響は多項式で近似して除去する。これにより、0.1%以下のわずかな吸収をも同定し微量ガスの濃度を高精度で導出できる。

(注2)リモートセンシング:広義には、対象物から離れた場所より対象物に関する情報を得る技術のことを意味する。狭義には、人工衛星、航空機、地上の観測所などのプラットフォームに搭載あるいは設置されたセンサを用いて地球環境に関わる情報を得る技術を意味する。

(注3)短寿命気候汚染物質(short-lived climate pollutants: SLCPs):大気への放出後、気候に対する影響が数日から10年程度の物質(短寿命気候強制因子(short-lived climate forcers: SLCFs))のうち、放射強制力が正(温暖化を誘因)である物質のこと(国連環境計画の下で活動している「気候と大気浄化の国際パートナーシップ(Climate and Clean Air Coalition: CCAC)」による定義)。具体的には、対流圏オゾン、メタン、ブラックカーボンなどがある。

(注4)前駆気体:ある化学物質が生成する前の段階の物質のことを前駆体という。大気化学や大気環境学においては気体が重要な前駆体となることが多いため、それを特に前駆気体と呼ぶ。

(注5)大気境界層:対流圏のうち、流体としての大気が地表面の影響を受ける高度2 kmぐらいまでの層をいう。温帯域では1 kmぐらい、熱帯域では2 kmぐらいの厚みを持つ。地表面の影響をほとんど受けない自由対流圏と区別される。大気境界層内では自由対流圏に比べ人間活動などの地表の影響が顕在化する。

(注6)MAX-DOAS法:Multi-Axis Differential Optical Absorption Spectroscopyの略。DOAS法の一種。太陽散乱光の低仰角測定機能を加え、NO2等の⼤気汚染物質の⼤気中カラム濃度と鉛直分布データを得るための地上設置型のリモートセンシング装置またはその技術。

(注7)鉛直カラム濃度:単位面積の底面を持った鉛直の気柱(カラム)の中に含まれる気体分子の個数。

※本研究は、環境再生保全機構の環境研究総合推進費、日本学術振興会の科学研究費助成事業、宇宙航空研究開発機構の地球観測研究公募の支援を受けて遂行された。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000581.000015177.html

広島市立大学ほか、「センサ信号のコンテナフォーマット」の国際標準化へ審議開始

広島市立大学、TIS(株)、(株)エー・アンド・デイ、帝人(株)の4者が中心となり「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマット(※1)」に関する国際標準規格の提案を行い、IEC(※2)において、2021年12月に承認された。今後は、IEC 63430として2023年度の発行を目指して規格文書の完成度を上げる作業と審議を行っていく。 また、これを機に、ウェアラブルデバイスを始めとする広範なIoT・サービスに係る事業者・関係者と幅広く連携し、今後の普及拡大に向け様々な施策を推進していくという。
【概要、背景】
近年、日常生活での体調管理や運動時の活動測定などを目的としたIoT・ウェアラブルデバイスの普及・利活用が急速に拡大している。一方で、取り扱う信号の形式などがメーカーや機器ごとに異なるため、”メーカーA社とメーカーB社の機器を同時に接続できず、データ連携や共有がしづらい”など、利便性に多くの課題を抱えている。

4者は、経済産業省公募(※3)による「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットに関する国際標準化」の採択を契機として、ウェアラブルデバイスでの上位レイヤーから下位レイヤーまでのセンサ信号を共通的に処理できるよう、信号のやり取りを「コンテナ」化する技術仕様一連の標準化準備(国際標準規格案策定)作業を行ってきた。そして2021年10月に、IECのTC100(※4)に対し、新規国際標準規格として「ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術」の提案を行い、同年12月に承認された。

コンテナフォーマット技術によって標準化されたセンサ信号が流通することで、様々なIoT・ウェアラブルデバイス間の接続性が高まり、測定したデータを容易に共有・連携することが可能となる。4者は、国内外のエキスパート・専門家と議論しながら、引き続き国際標準発行に向け活動していくとのこと。

【ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術概要】
「コンテナフォーマット」は、ウェアラブルセンサ信号に係る互換性や5Gシステムと連携するIoTへの適応性を高め、データの共有・利活用を柔軟に行える、標準化の核となる技術。

・Sensor Device(測定):Sensor Deviceは、センサ素子が得る信号をデジタルデータに変換して、Edge Computing Deviceに送出する。
・Edge Computing Device(計算):Edge Computing Deviceは、Sensor Deviceから受け取ったデジタルデータを「コンテナ」化する。以降はコンテナフォーマットをベースとして計算処理を行う。
・Repository(収納):Repository(サーバー)は、Sensor Deviceからの情報に基づき、データの構造情報を提供する。
・Viewer(閲覧):クラウド・ネットワークを経由し、Viewerで、測定値を可視化する。

【利活用分野・領域】
多様なIoTサービスやウェアラブルデバイスと親和性の高いウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術は、先ず「ヘルスケア・医療」領域での活用を想定している。

Society5.0で目指す超スマート社会の実現には、”高齢者対策に資するサービスの開発やニーズの掘り起こし”が重要課題と目されており、AAL(※6)の重要性が一層高まると予想される。しかし一方で、AALに係るセンサやデバイスのメーカー・システム開発企業が各々別個に開発を進め、ソリューション・サービス事業者も各々への個別適応に終始する取り組みのままでは、実現スピードが遅滞し早期の事業規模拡大への懸念も生じかねない。

国際標準規格を採用することで、自社の製品やサービスと他社との連携において迅速かつ主導的な展開が図れるとともに、国内はもとより海外と共通のデバイス、システムやサービスを構築することができ、国内で成功したモデルをグローバルに展開することが容易になる。

標準化されたウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術は、製造、流通、金融、建設、運輸、サービス、エネルギー、公共など社会の様々な分野・領域への適用が可能であり、「スマートシティ」実現のキーテクノロジーの一つとして広範に普及活用されることによって、事業の競争力強化や新たな市場の創造が実現するものと考えるとのこと。

【今後の展望】
今後は、2023年の国際規格発行に向けた諸活動と並行して、リファレンス・システム(※7)の開発を計画している。
さらに、デバイスをはじめプラットフォーム、ソリューションなどウェアラブルセンサ信号を利活用しうるユーザー・関係諸団体など幅広い層の参画を念頭に、ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術の普及に向けた組織の設立を検討していくとしている。

※1 Data Container format for wearable sensor
※2 IEC:International Electrotechnical Commission(国際電気標準会議)
※3 (経済産業省:令和2年度 募省13)省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットに関する国際標準化」(令和2年度から3年間)
※4 IEC TC(Technical Committee)100:オーディオ、ビデオ、マルチメディアシステムおよび機器の技術分野に関連する国際標準化を担当する技術委員会
※5 BAN:Body Area Networkは、人体の周囲にネットワークを構築することで、バイタルサイン等データ測定適所に装着した複数センサの計測情報を集約する近距離無線通信技術。 代表的な規格として「SmartBAN(スマートバン)」が挙げられる。
SmartBANは、複数センサを連携させ情報を統合する「高精度な時間同期」のほか、医療・ヘルスケア用途での信頼性の高い通信に不可欠な、生体情報に応じた許容誤り率での「最適伝送」、生体の異常に係る緊急信号の「低遅延伝送」、混信など他人との「干渉回避」、充電を削減し長時間使用できる「低消費電力化」、スイッチを入れると直ぐに使用できる「短時間での初期接続」 など数々の特長を有している『次世代ボディエリアネットワーク無線通信規格』。
なおSmartBANは、2015年にETSI(欧州電気通信標準化機構)で標準規格化されており、IECにおいてもIEC 63203-801-1およびIEC 63203-801-2として2022年中に規格書発行予定である。
※6 AAL:Active Assisted Living(自立生活支援)
※7 リファレンス・システム:考案したウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術の機能や実装の検証用システム

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000035997.html