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MESONと博報堂DYHD、三菱地所・TMIPと、丸の内でAR/VR実証実験

 (株)MESONは、(株)博報堂DYホールディングス(以下、博報堂DYホールディングス)との共同研究にて進める、実空間とサイバー空間を融合させた新たなコミュニケーション体験構築プロジェクト「GIBSON(ギブソン)」において、観光・買い物・イベント用途での体験価値検証のための実証実験を、三菱地所(株))、Tokyo Marunouchi Innovation Platform(以下、TMIP)と共同にて実施致した。

「GIBSON」は、実空間(フィジカル空間)の 3Dコピーである「デジタルツイン」を用いて「サイバー空間」を構築し、そこにログインする遠隔地(体験スペース)の VRユーザーと実空間(丸の内周遊エリア)の ARユーザーとがあたかも同じ空間で場を共有しているようなコミュニケーション体験を可能にするもの。

今回の実験では、大手町・丸の内・有楽町地区で活動する NPO 法人大丸有エリアマネジメント協会、一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会、三菱地所(株)にて構成された実行委員会主催の社会実験「Marunouchi Street Park 2021 Winter(*2)」と連携し、「GIBSON」が将来的に活用を想定している観光・買い物・イベント用途での体験価値の検証を行った。

<実証実験の概要>
日程:2021年12月20日~23日 各日10:00~16:00
場所:
・ARユーザー 丸の内仲通り、丸の内ビル1F「マルキューブ」
・VRユーザー 新丸の内ビル10F「EGG JAPAN」、大手町パークビル会議室
対象:TMIP会員企業の方、博報堂DYホールディングス・MESONが募集した被験者
目的:AR/VR横断コミュニケーションがもたらす臨場感やビジネスユースケースにおける価値の評価検証
※本実験は、新型コロナウィルス感染症対策に十分配慮して実施した。

実証実験の結果、GIBSONのコンセプトで実現されるコミュニケーション形態においては、実際の現地(今回は丸の内)にいるという感覚に加え、”サイバーとフィジカルが融合した新たな空間に自分が実際に居る”という感覚をもたらすことが分かった。また、動的な周囲の状況変化の観測に関わるスコアも高く、事前に想定していたユースケースである観光・イベント・コマースでの活用が有望であることを確認できただけでなく、オンライン/オフラインをハイブリッドさせたオフィスでの活用など、さらなるユースケースについても体験者の皆様から示唆をいただくことができたという。

MESON・博報堂DYホールディングスでは、今後も AR/VR そしてセンシング技術を活用しながら、物理空間とサイバー空間が高度に融合する社会における新たなコミュニケーション体験やサービス体験についての研究を進めるとしている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000032228.html

OPTEX、経済産業省「DX認定事業者」の認定を取得

オプテックス(株)は、2022年4月1日、経済産業省が定める「DX認定事業者」の認定を取得いたした。これは、オプテックスの経営ビジョンや事業戦略、DX推進体制をはじめとする取り組みが、経済産業省のDX推進指標に基づく認定基準を満たすとともに、ステークホルダーへ適切に情報開示していることなどが評価されたものだという。

ICTやIoT、クラウド技術の進展・普及によってセンサとインターネットは簡易に繋がれるようになり、センサから得られるデータの重要性が高まっている。一方で、リーマンショックや新型コロナウイルス感染症の世界的な流行など、急激に変化する社会情勢に迅速に対応するため、オプテックスでは長期に渡って経営基盤を強化するとともに、DXを推進してきた。

■オプテックスのDX推進「3本の柱」

1.ビジネスモデル変革(Business DX)
従来の製品のみを生産・販売するビジネスモデルを変革。センサとIoTを活用し、お客様や社会の課題を解決するソリューション・サービス事業を展開している。

2.グローバル業務改革(Inner DX)
グローバルに事業を展開するオプテックスでは、世界中に経営データが存在し、また管理システムも乱立していた。そこで経営基盤の刷新やITインフラの構築、サプライチェーンマネジメント改革を推進。グローバルでの業務標準化に加え、リアルタイムで経営状況を把握できる仕組みを構築し、課題の早期発見と意思決定の迅速化を実現している。

3.人財の強化
経営層が中心となってDX化を推進。経営資源を適切に活用するとともに、DX推進組織を構築するなど企業文化や風土から変革。
全社におけるITリテラシーの向上や、人財育成を行っている。

オプテックスは今後も戦略的なDX推進を通じて強固な経営基盤の構築を進める。また、あらゆる社会課題をセンサを通じたビジネスで解決し、世界中の皆様に安心・安全・快適な暮らしを提供していくとしている。

ニュースリリースサイト(optex):https://www.optex.co.jp/news/2022/0407.html

REVORN、においデータの視覚化の実現に向け九州工業大 古川教授と連携

株式会社レボーン(以下、REVORN)は、この度、九州工業大学 古川徹生 教授が研究テーマにあげる自己組織化アルゴリズムの理論・開発・応用における知見を、同社で展開するにおいデータの視覚化における研究開発の推進に活用し、商用化に向けた各種取り組みを加速させるための連携を開始した。第一フェーズとして、2022年8月より同氏の研究室へのREVORN社員が複数回訪問することを通じ、同氏の研究内容への理解を深め、においデータの視覚化の実現を進めていくという。

■ 九州工業大学 古川徹生教授 研究テーマ
古川氏は、知能の計算原理となる学習理論とアルゴリズム開発の研究をしている。とくに、複数の異なる学習課題を学ぶことを通して、課題間に共通する汎用モデルを獲得するメタモデリングの研究を中心に取り組んでいる。メタモデリングは、未知の状況にも柔軟に適応するシステムを実現するうえで重要なテーマである。古川氏はまた、また複雑な構造を持つデータを多様体ネットワークとしてモデル化する方法の研究にも取り組んでいる。多様体ネットワークにより、ユーザーは視覚的な検索と探索を通して知識発見したり、ユーザー自身のケースを検 証・予測したりすることができる。とりわけ多様体ネットワークは、人間の多様な感性に関するデータのモデリング・解析・予測に適しているとのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000038832.html

東京エレクトロン デバイス、「即日始動!工場DXパッケージ」提供開始

東京エレクトロン デバイス(株)〔以下TED〕は、製造業の顧客の現場改善を支援する「即日始動!工場DXパッケージ」を開発し、4月6日から提供開始する。

製造現場の主な生産ロス要因には、「設備の故障」「刃具交換」「チョコ停」「制御不良」「環境影響」「調整ミス」などがある。「即日始動!工場DXパッケージ」は、こうした状況をデジタルで可視化、ロス要因をデータ解析から特定し、改善策を現場に反映できる。「課題の抽出」「原因調査」「改善効果の可視化と横展開」といった一連の改善プロセスの業務をDX化することで、生産性の向上に貢献する。

本パッケージは、「工場のデジタル化ツール CX-D」を用いて設備の稼働状況のデジタル化と課題の抽出を行い、「現場業務の改善ツール CX-M」を使って日々の運用で得られたデジタルデータからロス要因を速やかに分析、改善対策を現場に反映して工場のDX化を実現する。2つのDXツールを連携して活用することで、経験や勘に頼らない安定した工場運営と生産現場の生産ロス削減に寄与する。

本パッケージの3つの利点
(1)工場内で全て完結し現場主導のDXを実現できる
(2)自社運用でDXを推進し、ノウハウを蓄積できる
(3)開発不要で素早く始動し導入コストを最小化できる

■工場DXパッケージの特長
1. 「工場のデジタル化ツールCX-D」が、設備稼働をデジタルでとらえデータから課題を抽出、監視
・工場内の多様な設備やセンサと接続しデータを収集し記録する。単にデータ収集をするだけでなく、データ取り始めから利用できる「クイックAI異常検知機能」により「いつもと違う」を検知できる。いつもと違う挙動と現場課題をデジタルデータでつなげ真の課題を抽出する。
・プログラミング開発は不要で画面からの設定作業ですぐに利用できる。ITやデータ分析の専門知識は不要で、工場のデジタル化を実践できる。

2. 「現場業務の改善ツールCX-M」が、データからロス要因を特定し改善対策を現場に反映
・異常検知・要因調査・状態診断の分析作業をCX-Mが1台で対応し、設備の予知保全、製造工程の異常検知、品質不良の要因をデジタルデータから調査し、分析結果など、生産ラインの良否判断に用いる情報をわかりやすく可視化し、改善検討作業の質を向上する。
・従来のデータ分析専門家による分析作業やエンジニアによるプログラム開発作業を自動化できるため、ものづくり現場の技術者が本来の業務に専念でき、現場業務の改善を効率化する。

■今後の展開
工場DXの取り組みを検討されている顧客や、すでに取り組んでいるが道半ばの顧客に、オンライン会議形式で要望のヒアリングと工場DXパッケージのデモンストレーションの機会を提供し、現場改善のサポートを進めていくとのこと。
(オンライン相談の申込みサイト:https://www.inrevium.com/product/online_community/)

■開発の背景
製造現場の改善プロセスのDX化は、多くのお客様が関心を持っている反面、実現には大きく3つの課題があった。「課題の抽出(なにから取り組むべきかという悩み)」、「課題の原因調査(データ分析作業と成果)」、「改善効果の可視化と横展開」である。これらは1つの改善プロセス内の課題であり、一連の課題を連携して解決できる環境(DXツール・システム)が求められていた。そのため、現場の担当者が課題で悩むことなく現場主動で改善プロセスが回せる環境を実現したのが本工場DXパッケージである。従来の進め方に、うまくデジタル要素を取り入れる事で業務に新たな定量化視点を追加し、体系的に進めることができるという。

パッケージ詳細ページ(TED):https://www.inrevium.com/pickup/dx-process/

ST、コンスーマ機器と産業機器の高効率電源を実現する50W GaNコンバータ

STマイクロエレクトロニクスは、高電圧GaN(窒化ガリウム)コンバータ「VIPerGaN50」を発表した。同製品は、最大50Wのシングル・スイッチ・フライバック・コンバータの設計簡略化に貢献する。また、650V耐圧 GaNパワー・トランジスタを内蔵し、高効率化・小型化に貢献するという。

小型・低コストのパッケージ(5 x 6mm)で提供されるVIPerGaN50は、シングル・スイッチのトポロジを採用し、電流検出および保護回路を内蔵した高集積のGaNコンバータ。内蔵のGaNパワー・トランジスタにより、小型かつ軽量のフライバック・トランスを使用して高速スイッチングを実現する。最小限の外付け部品を追加するだけで、先進的な高効率スイッチング電源(SMPS)を設計することができる。

また、GaNのワイド・バンドギャップ技術により、世界的な省電力化や炭素排出量ゼロを目標とした厳しいエコデザイン基準への対応に貢献する。電源アダプタやUSB Power Delivery対応充電器、生活家電、エアコン、LED照明、およびスマート・メータ用の電源など、コンスーマ機器および産業機器に最適な製品とのこと。

VIPerGaN50は、複数のモードで動作し、さまざまな入力電源や負荷条件において効率を最大化する。高負荷時には、ゼロ電圧スイッチングによる擬似共振(QR)動作がターンオン損失とEMIを最小限に抑える。低負荷時には、バレー・スキッピングによりスイッチング損失を抑え、ST独自のバレー・ロックで可聴ノイズを防止する。また、ゼロ電圧スイッチングを使用した周波数フォールドバックにより、低負荷時に最大限の効率を実現するとともに、超低負荷時には適応型のバースト・モード動作が損失を最小限に抑える。さらに、先進的なパワー・マネージメントにより、スタンバイ電力を30mW未満まで削減する。

VIPerGaN50は、出力過電圧保護、ブラウンインおよびブラウンアウト保護、入力過電圧保護などの保護機能を内蔵し、高い安全性と信頼性を実現する。入力電圧フィード・フォワード補正も備えているため、出力ピーク電力の変動を最小限に抑えることが可能。サーマル・シャットダウン機能、およびEMI抑制に貢献する周波数ジッタリング機能も内蔵されている。

VIPerGaN50は現在量産中で、QFNパッケージ(5 x 6mm)で提供される。単価は、1000個購入時に約2.09ドル。STのeSToreでは、無料サンプルも提供されている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001224.000001337.html

SGST、東工大とモバイルロボットの3次元ライダーに関する共同研究

(株)SGSTは、ウイズコロナ時代のソリューション提案として、飲食店やレジャー施設、医療・介護施設向けにロボットによる非接触サービス化の展開を進めている。今般、モバイルロボットの自動走行をより高知能化かつ高精度化を実現するために、3次元ライダーを用いた高精度の3次元データマッピング技術を東京工業大学と共同研究することで合意し、令和4年度4月から開始する。

1. 研究テーマ
 3次元ライダーを用いた高精度の3次元マッピング技術により、モバイルロボットの自動走行を高知能化、高精度化する。合わせて、3次元ライダーセンサに関するデータ処理アルゴリズムを構築する。

2. 期間
 2022/4月~2023/3月

3. 担当者
 東工大/工学院機械系 工学博士 朱 疆
 SGST/開発部長 王 利国

ニュースリリースサイト(SGST):https://sgst.ai/news/view/29

MSYS、EnOcean社製品に対応したモニタ付き小型端末「Smart Monitor」販売

丸紅情報システムズ(株)(略称:エムシス/MSYS 以下、MSYS)は、従来取り扱うEnOcean社製エナジーハーベスティング製品および無線通信製品に対応する、株式会社ステップの受信データ確認用モニタ付き小型端末「Smart Monitor」の販売を開始する。

エネルギーハーベスティングシステムは安全性、耐久性に優れていながら電力効率と運用効率の高いシステムの需要からIoTデバイスの導入が進んでいることに伴い市場規模が拡大している。

MSYSが取り扱うエネルギーハーベスティング無線技術を利用したEnOcean社のセンサ製品を活用した各種ソリューションやシステムの導入も事例が増加しているが、導入時にはセンサ受信機がセンサ製品の電波エリア内に設置できているか事前検証をする必要がある。電波状況の事前検証にはセンサ受信機であるUSBデバイスを接続したモバイルPCを持ち歩いて電波エリアと電波強度の確認を行っていた。

SmartMonitorは、電波強度に加えて温度、湿度、加速度、コンタクトなどセンサから受信した信号をモニタで確認することができる、幅50㎜、奥行き50㎜、高さ30㎜のキューブタイプのモニタ付き小型端末である。センサからの受信データをモニタリングすることができるため、システム事前検証などでモバイルPCの代替端末として使用することができるという。

ニュースリリースサイト(MSYS):https://www.marubeni-sys.com/news/2022/20220404/

Sensor, Sensing発展の流れを視る ~研究論文数の年次推移から~

大阪大学 名誉教授
奥山 雅則

 センサ・センシングは現代の高度情報化社会を支える重要な科学技術です。工場、輸送、農林水産業、オフィス、病院、学校、家庭の至るところでセンサを用いたセンシングにより種々の状態・状況を推し量る定量的情報が捉えられ、役に立てられています。本稿では、これらのセンサ・センシングの研究についての発展の流れ、現状や動向について発表論文数の推移から概観してみます。

 センサの開発はここ約60年の間に高感度化、高速化、小型化、高機能化、知能化に向けて大きく進みました。これらの発展には新物質や新現象の発見、MEMS(微小電気機械システム)、信号処理用半導体素子との一体化等の先端技術が取り入れられ発展してきました。検知対象も従来の物理量、化学量から生体・バイオ状態認識へと大きく広がっています。これらの研究開発進展を発表論文数から調べてみました。よく知られた文献検索アプリのscopusにおいて、論文タイトル、抄録、キーワードにsensorとdeviceが入る年間発表論文数を1960年から2021年まで約60年間の年次推移を図1に示します。縦軸は論文数の常用対数およびsensorとdeviceの論文数の比を10倍したものです。Device論文数は60年間で約2桁単調に増え半導体エレクトロニクスの発展に対応していますが、sensor論文数は約3桁増えdevice論文より1桁増加量が多く、sensorの新規開発に多くの関心が高まっていると受け取れます。

図1.センサ、デバイスの論文数とその比の年次推移
図1.センサ、デバイスの論文数とその比の年次推移
図2.検知対象別センサ論文数の年次推移。挿入図:各センサの全体に対する比率。
図2.検知対象別センサ論文数の年次推移。
挿入図:各センサの全体に対する比率。

 検知対象別のセンサの論文数の年次推移を図2に示します。対象としたセンサはoptical(光)、chemical(化学)、position(位置)、pressure(圧力)、force(力)、magnetic(磁気)、sonic(音波)、temperature (温度) sensorです。なお、1年ごとのばらつきが大きいので前年と翌年の半分との平均を取り平滑化しています。挿入図は各センサの論文数を全体の論文数で割った比率です。各センサの論文数は1970, 1980年代から急速に増加しています。最初に圧力センサがMEMS技術によるSiのメンブレン構造により進展しました。次いで光センサ非接触、高速で赤外光から可視光、紫外光の広いスペクトル領域を捉え、イメージングも大変有用な所から急速に増え最も大きな分野となっています。化学センサは1990年頃から新しい検知材料と高性能化、知能化により増えています。

図3.sensor, sensingの信号処理、ソフトウェア論文数の年次推移。挿入図:各センサの全体に対する比率。
図3.sensor, sensingの信号処理、ソフトウェア論文数の年次推移。挿入図:各センサの全体に対する比率。

 次に、センサの信号をコンピュータやプロセッサに取り込み、我々が必要とする分かりやすい情報に変えるソフトウェアについての調査です。 図3は、sensor, sensingのintelligent, smart(インテリジェント,スマート)、deep learning・machine learning (深層・機械学習)、IoT、AI(人工知能)、neural network(ニューラルネットワーク)、big data(ビッグデータ)の年平滑化論文数の年次推移を示します。挿入図は各信号処理の全体に対する比率を表しています。1980年中頃からSiのMEMS構造を用いたセンサの信号処理するICが同じ基板上に組み込まれたインテリジェント・スマートセンサが作製され現在まで大きく発展しています。ニューラルネットワークは当初複数のガスセンサの信号からガス種を推定する方法として行われ、最近広い対象で再び脚光を浴びています。AIは数回流行りが繰り返され、現在再び注目される展開となっています。

図4.sensor, sensingの主な国の論文数の年次推移。挿入図:国別の全体に対する比率。
図4.sensor, sensingの主な国の論文数の年次推移。
挿入図:国別の全体に対する比率。

 Top10の国別sensor, sensingの論文数の年次推移を図4に示します。挿入図は10か国総数に対する各国の比率を示します。米国は圧倒的に多くの論文を出していましたが、中国は2000年頃から急速に増加し、2011年には米国を追い抜き現在では全体の30%を越え最も多くの論文を出すに至っており、その躍進ぶりは全科学分野 1)よりもかなり大きくなっています。日本は1990~2010年頃の貢献度は大きいですが、2000年以降漸減しており優位性が小さくなり、今後の奮起を期待したいところです。

 以上のような状況の中でセンサ・センシングを発展させていくには、図5に示すような要素技術の発展が必要と考えられます。センサ開発に必要な新現象・効果探索、材料、素子製造、駆動のための分散電源、信号処理・情報分析のためのデータ通信、高速度信号処理、データ解析です。こういった基礎的な科学技術の新規開発を通じて日本のセンシング技術の向上を期待してやみません。

図5.センシング開発のための要素技術。
図5.センシング開発のための要素技術。

1) 文部科学省科学技術・学術政策研究所科学技術指標2021
https://www.nistep.go.jp/sti_indicator/2021/RM311_table.html



【著者紹介】
奥山 雅則(おくやま まさのり)
大阪大学 名誉教授
大阪大学ナノサイエンスデザイン教育研究センター 招聘教授

■著者略歴
1968年 大阪大学基礎工学部電気工学科卒業
1973年 大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了、工学博士
1991年 大阪大学基礎工学部電気工学科 教授
2005年 大阪大学大学院基礎工学研究科 副研究科長
2009年 大阪大学退職、大阪大学名誉教授
大阪大学ナノサイエンスデザイン教育研究センター 特任教授
2019年 同 招聘教授

■主な受賞
1993年 Pioneer Contribution to Integrated Ferroelectrics賞受賞
2003年 大阪府商工業功労者周年記念表彰
2009年 応用物理学会フェロー表彰
2010年 電気学会業績賞
2019年 強誘電体応用会議功績賞

エネルギーハーベスティングコンソーシアム(1)

(株)NTTデータ経営研究所
竹内 敬治

はじめに

 エネルギーハーベスティングコンソーシアム(EHC1)は、日本企業のエネルギーハーベスティング事業の早期立ち上げと国際競争力強化の支援を目的として、2010年5月に設立された任意団体である2。当時、我が国におけるエネルギーハーベスティング技術の事業化の取り組みは、欧米と比較して10年程度は遅れていた。現時点においては、我が国での取り組みは欧米にかなり追いついていると言えるが、そこに至るまでの道のりは決して平たんではなかった。本稿では、エネルギーハーベスティングを巡る国内外の動きと、その中でのEHCの歩みを紹介する。

1.2010年頃の国内外の状況とEHC設立の経緯

 2010年頃、エネルギーハーベスティングは世界的なブームを迎えていた。IoT(モノのインターネット)という言葉は、まだ日本国内ではほとんど知られていなかったが、欧州や中国では、積極的な政策支援が行われ、研究開発や実証プロジェクトも数多く実施されていた。特に欧州では、IoT向け電源技術としてのエネルギーハーベスティング研究への支援が数多くなされており、ベンチャー企業も生まれてきていた。米国では、IoTがテロに活用される危険が指摘され、欧州や中国でのようなブームにはなっていなかったが、エネルギーハーベスティング技術については、主に軍事技術としてDARPAやNASAによる支援が古くからなされ、ベンチャー企業も多数生まれていた。
 無線技術の低消費電力化が進展するに伴い、エネルギーハーベスティング技術をIoT電源に利用できる現実性が高まってきていた。欧米の展示会が、エネルギーハーベスティング技術をフィーチャーし始め、ベンチャー企業の出展で観客の注目を集めていた。例えば、米国シカゴ郊外で毎年開催されていたセンサ関連の大規模な展示会Sensors Expo & Conferenceでは、2010年に、初めてエネルギーハーベスティングがフィーチャーされ、十数社のベンチャー企業が並んだ。2009年に英国ケンブリッジで開催されたEnergy Harvesting & Storage Europeも好評で、翌年からは、欧州と米国で毎年展示会が開催されることとなった。日本では、2010年のテクノフロンティア展で、エネルギーハーベスティングゾーンが設けられ、多くの観客を集めた。
 欧米の展示会では、すぐに買って使える製品群が並んでいたことに対して、日本の展示会で見られたのは開発品の参考展示であり、事業化の面で欧米と日本の差は大きかった。当時は、日本政府の政策的支援もなく、差は開くばかりの状況であった。
 このようなタイミングで、エネルギーハーベスティングコンソーシアムは発足した。きっかけとなったのは、筆者が当時書いていたブログ「WBB最新情報3」である。WBBとはワイヤレスブロードバンドのことで、エネルギーハーベスティングとは関係がない。海外ではエネルギーハーベスティングの事業化が進んでいるのに、国内ではほとんど知られていない。そのような状況を打破するために、たまたま別テーマで書いていたブログに間借りをしてエネルギーハーベスティングの記事を書き始めた(図1)4。これが2008年のことである。
 その後、エネルギーハーベスティングのブログ記事へのアクセス数は増加を続け、Google検索でエネルギーハーベスティングの検索順位1位にもなった。それに連動するように、講演依頼も増えてきた(最盛期には、週1回のペースで講演をしていた)。講演では、日本はこんなに遅れているという話をしていたが、あるとき、知人から、コンソーシアムを作ってはどうかという意見をいただいた。そこで、講演の最後にコンソーシアムの話をするようにしたところ、講演の聴衆間でディスカッションが起きるなど、非常に関心が高いことが分かった。
 コンソーシアムに関心がある企業が50社を超え、本格的に設立を考え始めたのが2009年後半である。いろいろと経緯があり、筆者は2010年5月にエネルギーハーベスティングコンソーシアムを立ち上げた。

図1 最初のエネルギーハーベスティング関連ブログ記事
図1 最初のエネルギーハーベスティング関連ブログ記事

2.EHCの設立目的

 2010年時点では、環境発電に関して優れた要素技術を有している日本企業が多いにも関わらず、事業化では欧米に遅れていた。欧米では、政府支援プロジェクトを基に多くのベンチャー企業が誕生し、環境発電技術、蓄電技術、無線技術等を統合した完成度の高い製品が多数市販されていた。一方、日本では、大規模な政策的支援は行われず、材料や単体の発電デバイスの研究が主で、蓄電技術、無線技術等と統合した実用的なシステム製品の開発は遅れていた。いわば、我が国の事業化の取組状況は欧米に10年遅れていた。
 出遅れ感のある我が国企業が、先行する海外ライバル企業に伍していくためには、各社の有する強みを結集することによる研究開発の加速、商品開発の迅速化が不可欠であること、当時リーマンショック後で経済の見通しが明るくない中で、将来マーケットを開拓していくためには、1企業当たりの負担を軽減しつつ、戦略的に市場創出を具現化していくための仕掛けが重要であること、新たな産業の創出、特に、注目高まる環境産業・グリーン産業創出のためには、グリーンニューディールに象徴される政策・制度と産業界の活動を一体化した取組みが重要であることから、我が国企業の国際競争力の強化に向け、アライアンスの構築が重要と考えられた。
 このような状況で、個別要素技術ではポテンシャルを有している我が国のエネルギーハーベスティング技術を国際的に競争力のあるビジネスとするために、関係企業を中心とした情報共有、共同活動の推進等を行うプラットフォームとして、EHCが設立された。そして、会員各社の事業(競争領域)には立ち入らず、メンバー各社が個別で行う必要の無い活動、個別では実行しにくい活動(非競争領域)を連携して推進していく母体としての活動を目指した(図2)。
 当時のエネルギーハーベスティングの世界的なブームに加えて、「欧米に比べて10年遅れている」というキャッチーなフレーズで、メディアに好意的に取り上げられたこともあり、設立時点で12社だった会員企業は、年度末には30社を超えるまでに急増した。

図2 EHCの概要
図2 EHCの概要

3.その後の国内外の状況とEHCの活動

 エネルギーハーベスティング技術は発電技術であるが、単に発電しただけでは使えない。整流や電圧調整のための電源回路や、蓄電デバイス、低消費電力の無線やセンサも同時に必要であり、発電量が変動することへのソフトウェア的な対処も必要である。このような、エネルギーハーベスティング技術を利用しようとしたときの難しさが徐々に明らかになるにつれて、初期のブームは沈静化していった。
 特に、2013年のInfinite Power Solutions(IPS)社の撤退は、業界に衝撃を与えた。当時、エネルギーハーベスティングと組み合わせるのに適した蓄電デバイスの選択肢がほとんどない中で、IPS社の薄膜全固体リチウムポリマー電池は、業界のデファクトとなっていた。唯一使えるといってよい同社の製品が利用できなくなったことで、世界で多くの試みがとん挫したと思われる。日本でも、IPS社の電池を搭載していたアルティマ社と東京エレクトロンデバイス社の環境発電開発用キットの販売が中止された。その後、2015年には熱電発電のMicropelt社が倒産、2016年には振動発電のAdvanced Cerametrics社が倒産するなど、2010年頃に注目された多くのベンチャー企業が市場から消えていった。
 EHCでは、設立後すぐに、海外企業からの入会希望があり、受け入れるべきか会員企業内でも議論となった。シーズを持つ会員企業からは、我が国企業を支援するためのコンソーシアムで海外企業を利するのかという反対意見があった。また、ニーズを持つ会員企業からは、技術の選択肢が増えるので参加を歓迎する意見もあった。そして、日本に定住していない者が活動に参加する場合に、輸出管理規制に誰が責任を持つのかという指摘もあった。これらの意見を踏まえ、適正な情報管理のために、準会員というランクが作られることとなった(図3)。

図3 EHCの会員種別と機密情報の扱い
図3 EHCの会員種別と機密情報の扱い

 海外企業も含め、EHCの会員数は一時59社まで増加したが、世界的なブームの沈静化とともに会員数は減じ、その後、安定的な活動のフェーズに入る。
 EHC会員企業には、基礎研究段階から製品販売段階まで、いろいろなフェーズの会社が属しており、業種も多岐にわたる。それらの会員企業の活動を支援するため、EHCでは様々な活動を行っている。
その時々の状況に応じて活動内容は変化するが、構想は以下のとおりである。

① コンソーシアム共通活動

  • 関連最新情報(技術情報、特許情報、ビジネスモデル情報など)の収集
  • 海外技術の我が国への展開の支援
  • 会員への技術紹介と連携可能性の検討支援
  • 会員相互間の連携支援(シーズ・ニーズのマッチング)
  • 要素技術に関するニーズを有する企業と要素技術を保有する企業間での情報交換
  • マーケット情報を有する企業と要素技術保有企業・研究開発企業等との情報交換
  • 国際標準化に関する最新動向の把握、国際標準化に向けた戦略の検討と実施
  • エネルギーハーベスティング推進に向けた制度面での課題の検討と提言(必要に応じて)
  • 検討テーマを定めたWGの設置及び運営(WGテーマの設定、WGメンバーの募集方法、参加企業数等についてはWG毎に事務局を中心に定めるものとする)
  • 中立性を生かした情報発信と市場開拓

② SG(スピンオフグループ)活動

  • 有志企業によるアプリケーションの共同開発
  • 有志企業による各社のシーズの統合商品化
  • 有志企業による各社商品の共同販売の検討


次回に続く-





【著者紹介】
竹内 敬治(たけうち けいじ)
株式会社NTTデータ経営研究所
エネルギーハーベスティングコンソーシアム事務局

■著者略歴
1988年3月京都大学大学院工学研究科修士課程修了(工学修士)。大手シンクタンクなどを経て、2010年5月より株式会社NTTデータ経営研究所。
2010年5月、エネルギーハーベスティングコンソーシアムを設立し、事務局を務める。
JST CREST・さきがけ複合領域「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」領域アドバイザー。
文科省地域イノベーション・エコシステム形成プログラム「磁歪式振動発電事業化プロジェクト」事業プロデューサ(金沢大学客員教授)。
JST未来社会創造事業大規模プロジェクト型「センサ用独立電源として活用可能な革新的熱電変換技術」採択課題「磁性を活用した革新的熱電材料・デバイスの開発」アドバイザー(NIMSリサーチアドバイザ)。 NEDO技術委員。(いずれも記事掲載時点)

熱電エネルギーハーベスティングデバイスの状況(1)

(株)KELK
熱電発電事業部 部長
村瀬 隆浩

はじめに

2010年代前半に米国の起業家が、年間1兆個のセンサを活用した膨大なセンサネットワークを張り巡らせることで、地球規模での社会問題の解決に活用しようといった“Trillion Sensors Universe”構想を提唱したが、様々な課題によりセンサの設置台数は大きく増加しておらず、実現に至っていない。2021年10月に調査会社ガートナー社が発表した「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル」によると、IoT(モノのインターネット)は過度な期待に応えらなく関心が失われつつある”幻滅期“の中にあり、市場へ浸透する啓蒙活動期には至っていない状況と分析している。
株式会社KELKは、IoTの課題の1つである膨大な数のセンサへの電源供給問題への解として、2017年に熱電素子でのエネルギーハーベスティング(EH)により動作するIoTデバイス(熱電EHデバイス KELGEN SDケルジェン エスディー)を開発した。2020年には熱電EHにより電池レスで継続的にモータなどの回転機器の振動の状態を自動で測定する世界初の『熱電EH振動センサデバイスKSGD-SV』を発売した。
本稿では、熱電エネルギーハーベスティングによるIoTデバイス(熱電EHデバイス)の特長、および熱電EHデバイスの利活用事例として、工場内のインフラ設備の状態を継続的に監視する故障予兆検知用モニタリングシステムを紹介する。

2.株式会社KELK

 株式会社KELKは、コマツが始めた熱電半導体の研究開発を前身として1966年に設立した熱電素子の研究開発から応用製品の製造販売までを行う熱電素子のリーディングカンパニーである。高性能と高品質を要求される半導体製造装置の前工程で使用される温度制御装置、および通信のインフラを支える光通信向け半導体レーザの精密温調用の高性能熱電素子において世界トップメーカーである。熱電発電においては、世界最高効率7.2%(受熱側温度280℃、放熱側温度30℃の温度帯)の熱電発電モジュールと応用機器を製品化している。

3.熱電発電のしくみ

 熱電発電は、熱電半導体と呼ばれる材料を介して熱を電気に直接変換するゼーベック効果(図1)を応用した技術である。ゼーベック効果は、金属もしくは半導体の両端に温度差が生じると、両端の電子もしくは正孔濃度分布に差異が発生し、起電力(熱起電力)が生じる現象である。
P型、N型の熱電半導体素子(熱電素子)を金属電極により交互に多数直列接続することにより、同じ熱流方向に対して、それぞれの熱電素子の熱起電力が累積され、より大きな電圧を得ることができる。

図1 ゼーベック効果の原理図
図1 ゼーベック効果の原理図

 熱電素子による熱電変換の効率(η)を高めるには、熱電素子の性能指数Zまたは熱電素子の両端間の温度差ΔTjを大きくする(式1および図2)。

式1 熱電変換効率(η)
式1 熱電変換効率(η)
図2 EHデバイスの温度勾配
図2 EHデバイスの温度勾配

4.KELGEN SDの発電部の性能

 熱電素子は、他の金属材料に比べ機械的な強度が弱い。また、水分に触れるとマイグレーションや短絡により破損に至る。一方、熱電素子を保護するために樹脂などで覆うと熱電素子の両端の温度差が小さくなり発電効率は著しく低下する。
 KELGEN SDの発電部(図3)は熱電素子への機械的衝撃や熱変形の影響を低減し、熱電素子の両端の温度差を保つ構造を備える。また、発電部の筐体は、熱電変換効率を高めるため、設置面で受熱した熱をKELGENの受熱面へ効率よく伝え、放熱面から安定して外気に熱伝達する構造とし、筐体による熱電素子両端の温度差の低下を低減した。これらにより、発電部は熱電素子両端の温度差を保ち、耐衝撃性・耐振動性はJIS C 60721-3-3,-4に適合する構造を実現した。また、発電部は屋外でも使用可能な保護等級IP67規格へ対応する防塵・防水性能を備える。発電部の動作温度範囲は受熱面側温度で-5~80℃である。
 KELGEN SDは、高性能熱電素子KELGEN(ケルジェン)による起電力を昇圧して蓄電した微小な電力を電源とし、温度や振動を測定してデータを無線で送信する電池レスのIoTデバイスである。

図3 KELGEN SD 発電部の外観図
図3 KELGEN SD 発電部の外観図

 KELGEN SDの発電部は、受熱面温度と雰囲気との温度差10℃から(発電部の上下の表面温度差で7℃程度から)自己発電により動作する。
発電部の性能を評価するため、屋外の負荷が一定な排気モータにKELGEN SDの発電部を設置し、昼夜・天候の変化に対する発電部の温度差の変化を観察した。(図4) 晴天の6月19日において、昼と夜でモータの表面温度は15℃変化したが、発電部の設置側と放熱側との温度差は一定である。雨天の6月20日において、7時から12時にかけて発電部は全体として降雨により一時的に10℃近く冷却されたが、モータからの一定な排熱を受熱する設置側の温度と放熱側との温度差はほぼ一定している。また、8月と12月とでの気温の変化に対する発電部の設置側と放熱側との温度差を評価し結果、気温の差は30℃以上となったが、発電部の温度差は一定であることを確認した。KELGEN SDの発電部は、昼夜・天候・季節の変化に対し、安定した温度差を保つことができ、安定した電力を発電する。

図4 屋外の排気モータに設置した発電部の受熱面と放熱面との温度差
図4 屋外の排気モータに設置した発電部の受熱面と放熱面との温度差

5.熱電EH振動センサデバイス

 熱電エネルギーハーベスティングにより動作するKELGEN SDの代表製品として、設備故障の原因で最も割合の大きな回転機器の振動を測定する熱電EH振動センサデバイスKSGD-SV(図5)を紹介する。

図5 熱電EH振動センサデバイスKSGD-SV
図5 熱電EH振動センサデバイスKSGD-SV

 設備の故障予兆検知向けに振動の状態を把握するには、周波数レンジ5kHz以上、かつサンプリング点数1,000点以上での測定が必要である。一般的にセンサデバイスの測定値は有線または無線により外部機器へ送信され、外部機器内で振動状態を評価する指標である振動加速度ピーク値、速度RMS値などを演算する。KSGD-SVでは振動センサデバイスの消費電力を大幅に削減するため、測定した振動値を内蔵するマイコンにより演算し、演算した各指標の結果のみを無線で送信する。これにより、熱電エネルギーハーベスティングで発電した微小な電力のみで動作する世界初の振動センサデバイスを実現した。

 KSGD-SVの発電部は、昼夜・天候・季節により変動する周囲からの受熱量(モータ等からの排熱を除く)により全体としての温度が変化する。一方、モータは、省エネルギー化が進んでいるものの、その効率により入力する電気エネルギーに対し、5%~15%が熱エネルギーとして捨てられる(図6)。

図6 モータ効率値比較(IP4X 50Hz4極200V)※(1)
図6 モータ効率値比較(IP4X 50Hz4極200V)※(1)

 モータの表面温度はその効率からの排熱により周囲環境に比べ高くなる。モータの表面に設置されたKSGD-SVの発電部は、モータが動作するとその設置側の温度と雰囲気とに温度差が生じ、温度差10℃から自己発電し動作する。

1)KSGD-SVの基本構成
 KSGD-SVは、サンプリング周波数26kHz、サンプリング点数約7,000点で測定する振動センサと温度センサを搭載したセンサ部と、温度差10℃(無風状態)からの自己発電で動作する発電部とで構成される。発電部の上下面には温度モニタ用のセンサを備える。

2)測定項目
 KSGD-SVには、測定項目が異なる3種類の製品がある(表1)。各製品は、周波数レンジは7.5kHz(±3db)、7,000点以上のサンプリング値につき演算を1回実行する。最上位機種のKSGD-SV4は有線式や携帯式の振動診断計に備わるエンベロープ FFT※(2) 解析機能を備える世界初の熱電EH振動センサデバイスである。エンベロープFFT解析機能は、回転機器の異常時に発生する規則的な衝撃波の周期を解析し、故障箇所の特定を支援する。
KSGD-SV6は測定項目を絞り、短時間での充電により計測を実行する。

表1 KSGD-SVの測定仕様の比較
表1 KSGD-SVの測定仕様の比較

 1回の測定に要する蓄電時間は、発電部が動作を始める温度差10℃の環境においてKSGD-SV4は45分、KSGD-SV6は8分である。携帯式の振動診断計レベルに性能が向上した電池レスで動作するKSGD-SVは、保全員による巡回点検の廃止を支援する。



次回に続く-



参考文献

  1.  一般社団法人日本電機工業会 トップランナーモータ モータ効率値比較(2015.11)にもとづき作成
  2.  FFT:Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換。測定した振動を解析して周波数成分に変換するアルゴリズム。


【著者紹介】
村瀬 隆浩(むらせ たかひろ)
株式会社KELK 熱電発電事業部 部長

■略歴
1989年 コマツ 入社
2002年 株式会社KELK入社、現在に至る