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低コストのジェスチャ認識用ソフトウェア・パッケージ「STGesture™」を発表

STマイクロエレクトロニクスは、シンプルかつ低コストのコンスーマ機器と産業機器において、ジェスチャによるタッチレス制御を実現するソフトウェア・パッケージ「STGesture™」を発表した。
このソフトウェア・パッケージは、STのマルチゾーン対応FlightSense™ ToF(Time-of-Flight)測距センサ「VL53L5CX」用の無償の開発ソフトウェアで構成されている。ToF測距センサによるジェスチャ認識は、さまざまな機器で洗練されたタッチレス制御を実現する革新的な技術であるという。

当初はハイエンドの自動車向けに開発されたジェスチャによるタッチレス制御は、キッチン用生活家電、サーモスタット、スマート・ホーム機器、スマート照明制御、ノートPC、AR / VR用ヘッドセット、タブレット、スマートフォンなど、幅広い機器の操作性向上に貢献する。また、ジェスチャ認識可能なユーザ・インタフェースは、自動販売機や券売機、エレベータのスイッチ、デジタル・サイネージの操作など、今日の社会で課題となる機器を介した感染症の拡大防止にも貢献する。

「STGesture™」で提供される最新のソフトウェアは、マルチゾーン対応ToF測距センサ「VL53L5CX」用に開発されており、コンスーマ・産業機器向けアプリケーションにおいてシンプルかつ低コストでジェスチャ認識機能を実現する。これらのセンサとソフトウェアを組み合わせて、手のX / Y / Z座標をリアルタイムで計算し、その動きをトラッキングすることで、タップやスワイプ、レベル制御などのジェスチャを認識する。

従来のジェスチャ認識システムには、一般的に高コストかつプライバシー・リスクを持つカメラ・ベースのマシン・ビジョンが使用されている。STのソリューションは、ビジョン・ベースのソリューションと異なり、ユーザのプライバシー保護と低消費電力を実現し、外部照明を追加することなく暗所でも動作するシステムの構築を可能にする。軽量なジェスチャ・アルゴリズムは、低消費電力マイクロコントローラ(マイコン)で動作し、必要なシステム・リソースを最小限に抑えられるため、既存アプリケーションに簡単に組み込むことができる。

ソフトウェア・パッケージ「STSW-IMG035」は、マルチゾーン対応dToF(ダイレクトTime-of-Flight)測距センサ「VL53L5CX」向けに設計されており、STの汎用32bitマイコン「STM32*ファミリ」で提供されるマイコンで使用可能。STの最新世代ToF測距センサであるVL53L5CXは、64ゾーンで最長400cmの高精度測距が可能で、対角63°の広い視野角を備えている。

VL53L5CXは現在量産中で、16ピンの光学LGAパッケージ(6.4 x 3.0 x 1.5mm)で提供される。ジェスチャ認識用ソフトウェア・パッケージ「STSW-IMG035」には、GUI、サンプル・コード、ライブラリ等のリソースが含まれている。詳細については、ウェブサイトを参照のこと。
https://www.st.com/ja/embedded-software/stsw-img035.html

* STM32は、STMicroelectronics International NVもしくはEUおよび / またはその他の地域における関連会社の登録商標です。STM32は米国特許商標庁に登録されている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001230.000001337.html

愛媛県災害情報5G活用検討会にて被災現場の高精細映像活用の実証試験

(株)愛媛CATVは、TISインテックグループの(株)インテックと、災害時に被災現場の高精細映像をリアルタイムで伝送する実証試験を実施した。


愛媛CATVは、愛媛県が、防災・減災対策への5Gや先進デジタル技術の活用方法を検討するために設置した「令和3年度愛媛県災害情報5G活用検討会」の運営等業務を受託し、以下の任務の一環として本実証試験を実施した。

<検討会の任務>
(1)5Gや先進デジタル技術を活用した防災・減災対策の効果的・効率的な推進
(2)災害時の活用を想定した実証試験に係る検討及び結果の検証
(3)次期災害情報システム・防災通信システム更新の際における先進デジタル技術の活用

 本実証試験では、中山間地域や沿岸地域を災害発生地と想定し、その地域の高精細映像を愛媛CATVのローカル5G※1と地域閉域網、インテックのワイヤレスIoTデバイス※2と都市OS(FIWARE)を活用して愛媛県庁まで伝送し、その映像を確認した。愛媛CATVとインテックは、映像の4KとHDとの比較や、ドローン・船舶などの撮影位置を映像と合わせてリアルタイムに把握できるICT環境構築の支援を行った。

※1 ローカル5G: 企業や自治体等が5Gによるプライベートネットワークを構築して利用できる通信環境。無線通信回線として利用可能で、運用するには無線局免許の取得が必要。
※2 ワイヤレスIoTデバイス: 水位センサや赤外線センサなどのセンサデバイスの総称。クラウド上の都市OSにセンサデバイスで取得したデータを収集するために無線ネットワークを活用。本試験では撮影位置を特定するためにGPSを活用。

■実証試験結果
 5Gの電波伝搬特性の異なる環境(中山間地域、沿岸地域)において、いずれも5Gが4K高精細映像の伝送に有効に活用できることが確認され、概ね、良好な結果が得られた。
 また、実運用に向けて、県が要請してから高精細映像を閲覧できるまでの所要時間、基地局からのカバーエリアや4K映像を効果的に活用できる撮影方法などが確認できた。また、ワイヤレスIoTデバイス等と都市OS(FIWARE)のダッシュボード機能との組合せにより、海上のように撮影場所の把握が困難な現場においても、撮影場所を迅速・的確に把握できることが確認できたとのこと。

■今後の課題と展開
 愛媛県においては、今回の検討会での検討結果を踏まえ、次期防災システムの検討や防災・減災対策を更に強化していく予定。
 愛媛CATVとインテックは、実証試験で得たデータや知見を踏まえ、既存サービスの更なるブラッシュアップに努めるとともに、引き続きそれぞれの強みを活かしながら連携し、防災分野に限らず、ローカル5Gや地域閉域網を活用した地域データ連携基盤※3の活用を通して、地域貢献や社会課題解決に向けスピード感を持って取り組むという。

※3 データ連携基盤:社会・公共分野で業種を超えてデータの共有・活用を実現するデータ共有基盤の「FIWARE」を利用して、各自治体が抱えるさまざまな課題を解決するためにセンサ情報を収集・分析・可視化するインテックが開発した自治体向けIoTプラットフォームを利用。

ニュースリリースサイト(intec):https://www.intec.co.jp/news/2022/0510_1.html

タスカジ、パナソニックと東京都「DX推進実証実験プロジェクト」での共同実験

家事代行マッチングプラットフォーム「タスカジ」を運営する(株)タスカジは、昨年より東京都が実施するデジタル・トランスフォーメーション(DX)の普及に向けた「DX推進実証実験プロジェクト(以下:本プロジェクト)」社会変革DX領域第2期に採択され、家事分野におけるDX化の取り組みを推進している。

本プロジェクトでは、タスカジの社会実験事業であるタスカジ研究所とパナソニック(株)が共同で、IoT機器とECサイトを結び、「名もなき家事」の代表格である日用品の購入・在庫管理を最適化・自動化する『イエナカ自動購入アプリ』のサービス提供に向けた共同研究を実施した。

■背景:共働き世代の家事分担やシニアの介護支援問題を解決するための家の中のデジタル化
日用品の市場規模は約2兆5689億円を有しており、そのうちコロナ禍においては外出自粛の中、日用品の消費の11.6%がインターネット購入に流れており、コロナの収束後もインターネット利用を続ける見込みが7.2%と、日用品のインターネット購入は増加していく傾向にある(※1)。

日用品のインターネット購入が身近になる流れの中で、家庭内の日用品の消費状況に応じた自動発注の仕組みが必要になると考えられる。特に、共働き世代層とシニア層の2つの層では、掃除や食事などの一般的な家事代行だけでは解決できない生活援助が求められている。日用品などの在庫管理をDX化することにより、共働き世代では買い物工数や無駄な買い物の削減に繋がり、シニア世代では買い物難民と言われる介護を必要とした方々への支援につなげ介護保険のコストを大幅に軽減することが可能になる。

タスカジでは、様々なIoT機器と多種多様なECサイトを結び個人に応じた最適な購入先とタイミングで自動購入する仕組みを作り、家事分担やシニアの買い物援助の問題を解決し、「名もなき家事」をDX化する。家事を効率的にすることで個人の自由な人生を送れる世界を作っていくという。
※1:VALUES inc調べ

■パナソニック(株)との共同実験の概要
今回の共同実験では、タスカジが構築した日用品の購入・在庫管理を最適化・自動化する『イエナカ自動購入アプリ』を、パナソニックの在庫を感知するIoT重量センサとECサービスに連携することにより、宅内日用品の購入を自動化する実験をした。さらに、アプリ内ではIoT機器と連動しながら全日用品の宅内在庫の残量を把握し、適切なタイミングでECサイトに自動発注を行った。今回の実験後のアンケートでは、「都度購入の手間がなくなった」「管理ストレスからの解放された」といった声もあり、ユーザーからイエナカの自動化のニーズがあることがわかった。タスカジでは、今後事業化に向けて検討するとしている。

ニュースリリースサイト(taskaji):https://corp.taskaji.jp/information/newsletter/2022/05/09/dx01/

Agx、熱中症対策を目的とするIoTを活用した「安全管理ソリューション」を発表。

Agx(株)は、IoT技術を活用したデータ可視化ソリューション「ThingBridge VISION(https://thingbridge.jp/vision/)」のアプリケーションの一つとして「安全管理ソリューション」を発表した。

「安全管理ソリューション」は主として屋内外で作業に従事する人員の体調管理、特に熱中症の予防を目的として高砂熱学工業(株)と共同で開発されたIoTソリューション。同ソリューションはITに不慣れな方にも利用しやすいように設計されており、温湿度センサや皮膚温度センサを用いた作業エリアの環境情報や個人の周囲の環境情報を簡単に可視化することができる。
現在この仕組みを高齢者施設へ応用し入居者の居住環境や体調管理を行うツールとしての有効性の確認のための実証実験を2022年4月から行っているとのこと。

「安全管理ソリューションの特徴」
●マルチセンサ対応
温湿度センサー
・場所に設置することで周囲の環境情報の収集
・人が携帯することでその人の周辺の環境情報の収集
皮膚温度センサー
・センサデバイス装着者の皮膚の温度の収集

●マルチデバイス対応 ​
「安全管理ソリューション」は簡単にIoTデータを確認することを目的として開発されており特別なアプリケーション等のインストールは必要ない。利用者はパソコンやスマートフォン、タブレットのブラウザからシステムにアクセスするだけですべての機能の利用が可能となる。普段ITに不慣れな人でも直感的に利用することができる。​

●ヒートマップ機能
収集された温湿度データはヒートマップ機能により、過去24時間の温度・湿度・暑さ指数(WBGT)近似値をグラフィカルに表示することができる。これによりセンサを設置した環境の温度・湿度の変化を俯瞰的に確認することで作業現場の環境改善に寄与する。​

●グラフ表示機能
収集された温湿度データと皮膚温度データは過去1日、1週間、1か月単位でグラフ表示を行うことが出来る。またこれらのデータはCSV形式でダウンロードを行うことが可能となり、収集された時系列のデータを活用し統計分析などに役立てることが出来る。​

●ALL in ONE パッケージソリューション
安全管理ソリューションはシステムなどの開発を行うことなく温湿度センサーや皮膚温度センサーとデータ受信用のルータを環境に設置するだけでシステムを利用することが出来る。 同ソリューションを利用することで作業担当者や高齢者の方々の日々の温湿度などの情報を可視化し環境改善に役立てられるツールを目指すという。
安全管理ソリューションは2022年5月16日から夏場に向けてアーリートライアルユーザーの募集を開始する予定。

※安全管理ソリューションは医療機器ではない。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000038068.html

JR夜間工事のデジタルツイン化に向けた実証実験完了

MODE, Inc.は、東日本旅客鉄道(株)とJR東日本スタートアップ(株)とともに2022年1月より開始していた、JR浜松町駅における夜間工事のデジタルツイン化に向けた実証実験が完了したと報告した。

●背景
建設業界では今、生産年齢人口減少による仕事の担い手・技術者不足や、作業工程が複雑化する中で現場における全体の作業進捗や作業員・重機の位置把握が困難といった課題が顕在化している。
なかでも鉄道建設工事は、終電から始発までのわずかな時間で作業を行う場合も多く、現場によっては軌陸車10数台、作業員100名以上が短時間で集中的に作業を行う。また、営業線に近接した現場での作業になるため、夜間、昼夜問わず列車の安定輸送、利用客や作業員の安全管理は最重要課題である。
しかしながら、現在は現場で人力に頼った安全管理を行っており、安全性を確保しつつ管理コストを下げたいという課題に対し、位置情報のリアルタイム把握が必要不可欠だった。
本実証実験では、JR浜松町駅における夜間改良工事で、これまで全体把握が困難な鉄道工事をデジタルツイン化し、鉄道工事現場におけるデータ活用について検証を行った。

●実証実験概要
(1)内容
本実験では、JR東日本様のDXプラットフォームの構築と実運用を想定した検証ならびに、これに伴うデジタルツインのプロトタイピングを実施した。具体的な実証方法は以下の通り。
① 工事関係者・軌陸車のリアルタイム位置情報把握(準天頂衛星対応GPSトラッカー使用)
② 工事関係者の活動状況・バイタル相関分析(活動量計測シューズセンサ、超小型温度計測パッチセンサ使用)
③ 鉄道工事中で使用する保安機器の状況把握(準天頂衛星対応GPSトラッカー使用)

(2)実施時期
2022年1月〜2022年3月

(3)検証結果
本実験で実証できた主な結果は以下の通り。
1. 作業時間の4時間で14,000歩/人 以上の活動量を確認した。特に安全確認の注意力が特に必要な撤収作業時間帯に歩数が多くなっており、体力的にも負荷がかかりやすい時間帯であることを認識することができた。
2. 約二ヶ月で、59項目の知見、12項目の課題を取得し、次のステップでの取り組みが明確になった。
3. アンケート結果から、80%の作業者が負担にならないと回答し、現場に負担のかからないセンシングを検証できた。
4. 工事関係者、軌陸車の位置をリアルタイムに把握することができた。

●今後について
本実証実験を通して、現場データ全てをリアルタイムで収集・蓄積することの有効性が確認され、実用化に向けてはGPS精度の検証を継続する必要性が認識された。
次は実運用展開・多用途展開を目標に、地方部や夏季の運用、センシング機能の拡張、サービス事業での活用などに取り組むとしている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000085.000035514.html

木材由来、電気特性と3D構造をカスタマイズできるナノ半導体を創出

【研究のポイント】
・木材由来、電気絶縁性のナノセルロースをナノ半導体に変換することに成功
・目的や用途に応じて、電気特性と3D構造を広範かつ系統的にカスタマイズ可能。ウェアラブルセンサやバイオ燃料電池発電用途における有用性も実証
・全て木材由来、持続可能なエレクトロニクスに向けた端緒を拓く成果として期待

【概要】
 大阪大学産業科学研究所の古賀大尚准教授、東京大学大学院工学系研究科の長島一樹准教授、高橋綱己特任准教授、九州大学大学院総合理工学研究院の末松昂一助教、岡山大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太研究教授らの研究グループは、木材由来のナノセルロースを用いて、電気特性と3D構造を幅広く制御できるナノ半導体の創出に成功した。
 環境調和型の次世代エレクトロニクスに向け、持続可能な電子デバイスの開発が希求されている。古賀准教授らの研究グループは、持続可能な生物資源、木材ナノセルロース由来の紙「ナノペーパー」を用いて、紙の電子ペーパーや生分解性ペーパーメモリといった環境調和型の電子デバイスを世界に先駆けて開発してきた。しかし、ナノペーパーは電気を通さない完全な絶縁体であったため、これまでは主に基材としての利用にとどまっており、電子デバイスとして動作させるためには枯渇性資源由来の半導体が不可欠だった。
 今回の研究では、ナノペーパーによる紙ならではの3D構造設計技術、および、段階的炭化・形態保持炭化技術を駆使し、絶縁体~準導体まで系統的な電気特性制御が可能、かつ、ナノ~マイクロ~マクロのトランススケールで3D構造制御が可能な新奇ナノ半導体を得ることに成功した。これにより、目的や用途に応じた電子機能や3D構造のカスタマイズが可能になり、全て木材由来の電子デバイスを作製することも夢ではなくなる。持続可能なグリーン・エレクトロニクスの実現に向けた道を拓く成果として期待されるという。

■ 特記事項
本研究成果は、2022年4月27日(水)午前0時(日本時間)に米国科学誌「ACS Nano」(オンライン)に掲載される。
タイトル:“Nanocellulose Paper Semiconductor with a 3D Network Structure and Its Nano–Micro–Macro Trans-Scale Design”
著者名:Hirotaka Koga, Kazuki Nagashima, Koichi Suematsu, Tsunaki Takahashi, Luting Zhu, Daiki Fukushima, Yintong Huang, Ryo Nakagawa, Jiangyang Liu, Kojiro Uetani, Masaya Nogi, Takeshi Yanagida, Yuta Nishina

 なお、本研究は、JST 創発的研究支援事業(JPMJFR2003)、JST さきがけ(JPMJPR19J7)、JST CREST(JPMJCR18R3)、JSPS科研費「基盤研究B」(JP18H02256)・「新学術領域研究(水圏機能材料)」(20H05224)、物質・デバイス領域共同研究拠点:人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンスにおける共同研究「COREラボ」(20186002)、日本国際賞平成記念研究助成、MEXTナノテクノロジープラットフォーム事業(JPMXP09S21OS0029)の支援を受けて行われた。

プレスリリースサイト(okayama-u):https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id959.html

Panasonicとfamiliar、五感を刺激するセンサリールームの体験イベントを共同開催

パナソニック(株) エレクトリックワークス社は、ベビー・子ども関連ブランドを展開している(株)ファミリアと、センサリールームを体験できるイベントをファミリア神戸本店にて2022年5月28日(土)、29日(日)に共同で開催する。

センサリールームは、光や色、音、素材などに配慮し、視覚や聴覚などの人の様々な感覚を心地よく適度に刺激するよう整えられた空間である。大きな音や強い光が苦手な子どもでも落ち着ける空間として、欧州のスポーツスタジアムや空港、児童館などを中心に導入施設が増えつつある。

パナソニックでは照明器具を基軸にしたセンサリールームを、言葉での表現がまだ苦手な幼い子どもとその家族が落ち着いて過ごせ、親子のコミュニケーションを深められる場として空間提案する事業を検討しており、様々な社外パートナーと効果検証などに取り組んでいる。

今回、「子どもの可能性をクリエイトする」を企業理念に、体験型店舗を積極的に展開しているファミリアにこの取り組みについて共感を得て、センサリールームを体験できるイベントを共同開催する。ゆっくりと色が変わる照明、優しい音楽や映像などにより、非日常的かつ落ち着いた空間が体験できるという。

<イベント概要>
【開催場所】ファミリア神戸本店 1Fスタジオ
【日時】2022年5月28日(土)~29日(日)
【体験所要時間】約45分(体験約35分、アンケート約10分)※事前予約制
【対象】未就学のお子様とそのご家族(4名様まで)
【参加費】1,100円(税込)

高度化するセンサ・MEMS技術への取り組み

東北大学、(株)メムス・コア
江刺 正喜

1. はじめに

 高密度集積回路 (LSI) や大容量通信技術のお陰で多くの情報が得られる時代になっていますが、多様なセンサやMEMS (Micro Electro Mechanical Systems) のような技術を、ビジネスとしてどう発展させていけばよいか、以前SEMI通信に書いた記事 https://www.semi.org/jp/blogs/technology-trends/mems-business (2020年6月30日) を具体的な事例は参照して頂きながら、バージョンアップして述べてみたいと思います。

2. LSIとMEMS

 LSIの素子数は微細化により1.5年から2年で2倍になるムーアの法則で指数関数的に進歩してきましたが、これは高集積化の流れでMore Mooreと呼ばれます。これに対して、システムの入出力などに使われるセンサ・MEMS技術は多くの場合に多品種・少量で開発がボトルネックになり、毎年13%の割合で進歩し、多様化の流れでMore than Mooreと呼ばれます。米国のテキサスインスツルメンツ社の社長であった Patrik E. Haggerty氏は集積回路の将来について、「ほんの数社 (五つ程度) が工業の必要全需要の90%かそれ以上を供給する」と1964年に述べています (フレデリック サイツ、ノーマン アインシュプラッハ 「シリコンの物語」 内田老鶴圃 (2000))。標準化と大量生産で設備投資を回収できる集積回路に対し、MEMSビジネスは多くの場合に困難に遭遇します。2004年にカリフォルニア州サンノゼに SVTC (Silicon Valley Technology Center) という会社ができ、8インチラインでLSIとは異なる多様な半導体デバイスの試作・小規模生産を始めましたが、2012年10月に閉鎖されました。
 SEMI通信に書いたようにMEMSビジネスはそれぞれ工夫して生き延びています。2003年に創立された米国のカリフォルニア州にあるA. M. Fitzgerald社は、技術戦略のコンサルティングや設計から試作を行い、量産ファウンドリに移行させる支援を行っていますが、主に大学の設備を使って6インチウェハで試作するコンパクトな形で行っています。またカナダでは、アルバータ州エドモントンにMEMSファウンドリTeledyne Micralyneがあります。1986年にスタートしたUniv. of Albertaのプロジェクトをベースに1998年にMicralyneが設立され、標準的なプロセスをプラットフォームにして発展してきましたが、2019年にTeledyneが買収しました。欧州の場合に、ドイツのフラウンホーファ研究機構 (FhG) の例では、それが各大学のキャンパスに分散して設置され、ニーズや技術課題を収集し完成度の高い技術を産業界に提供しています。フランスのMINATEC、ベルギーのiMEC、フィンランドのVTTなども、それぞれ産業界に貢献しています。

3. 日本のセンサ・MEMS

 1990年頃まで日本のMEMSは世界の一翼を担っていました。例としては、豊田中央研究所で開発されたピエゾ抵抗型の圧力センサが、1980年代に自動車のエンジン制御に使われ、排気ガス対策に貢献しました。1987年に横河電機では振動型圧力センサを開発し、今でも使われています。また深くエッチングするBoschプロセスによるDRIE (Deep Reactive Ion Etching) を住友精密工業が1995年に製品化しMEMS分野に大きく貢献しました。
 2000年頃からクローバル化が進み、企業内での開発が弱体化して、新たにMEMSを始めた多くの会社が正しく判断できずに、外部から持ち込まれた技術を安易に取り入れて失敗しました。同じピエゾ抵抗型3軸加速度センサを数社以上が作るという2006年頃の異常な状況 (日経エレクトロニクス 2006/9/11, 71-77) は日本企業における判断の弱さを象徴しており、関わった企業は撤退しました (日経マイクロデバイス, 2009/5, 80-81)。2010年頃から海外ベンチャ企業などとM&Aで提携するように変わってきました。新技術が生まれにくい日本の現状では止むを得ないと思いますが、組織間の壁を低くし日本発の新技術が産業に結び付くよう、努力していく必要があります。
 MEMSファウンドリは2005頃に公的資金に支えられて生まれましたが、自社向けデバイスを優先して (日経マイクロデバイス, 2009/2, 104-105) 全てが撤退し、世界における地位が相対的に低下しました (日経マイクロデバイス, 2008/11, 49-55)。LSI関係のTSMC (台湾) や、MEMS関係最大のSilex Microsystems (スウェーデン) における、ピュアファウンドリとしての節操あるやり方を見習う必要があると思います。しかし日本のMEMSも、MEMSマイクロホンなどをMEMSファウンドリとして供給しているソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、またMEMSマイクロホンを自ら製造しながら外国のMEMSファウンドリも使って供給する日清紡マイクロデバイス(旧 新日本無線)、光技術をベースにしたMEMSの試作・製造工場を持つ浜松ホトニクス、下で述べる「試作コインランドリ」も使いながら採算が合いにくいMEMS開発・試作を請け負うメムス・コアなど、特徴あるMEMSビジネスもあります。
 日本のMEMSビジネスの問題を考えてみます。縦割り行政が要因で、産総研などが産学を結び付けるハブの役割を果たしてないことが課題です。日本の大学では、産業界の問題点が伝わらないため製品につながる研究は少なく、ベンチャ企業も育ちにくくなっています。また形式的に論文の数で研究を評価する傾向があり、採択されやすい新しさだけのテーマを選定することも問題です。一連の設備を利用して完成度の高い試作品を作れる環境や技術が無いため産業化につながらず、自分で作らず外部に丸投げも見られます。企業でもアイデアを実現するために設備投資をするわけにはいかず、しかし設計試作の経験を持たないで外部委託するとほとんど失敗します。

4. 試作コインランドリ

 東北大学の「西澤潤一記念研究センター」では、移設した半導体工場をベースに寄付された設備などを利用し、1,800 m2のクリーンルームにある「試作コインランドリ」 http://www.mu-sic.tohoku.ac.jp/coin/index.html で、会社から派遣された人が自分で操作し、4インチや6インチ、一部8インチのウェハで試作開発ができるようにしています。2010年より戸津健太郎教授が中心になって運営していますが、ここで作られたデバイスを市販させてほしいとの要望に応え、東北大学が文部科学省や経済産業省と交渉し、2013年より製品製作が認められました。2022年3月までのユーザは361機関 (企業297社)、毎月延べ1,000件ほど使われ、年間予算3億円ほどで利用料により独立採算に近い形で運営されています。また建物はモノづくりのベンチャ企業などにも利用されています。
 MEMS技術は様々な知識を必要とするため、いかにして多様な知識にアクセスするかが大きな課題です。シーズから書いた 江刺正喜 「はじめてのMEMS」 森北出版 (2011)、ニーズから書いた 江刺正喜、小野崇人 「これからのMEMS – LSIとの融合 -」 森北出版 (2016)の他、入門書の 江刺正喜 「半導体微細加工技術 MEMSの最新テクノロジー」 アナログウェア No.13 (トランジスタ技術2020年11月号別冊付録) CQ出版社 (2020)、専門書の M. Esashi ed. “3D and Circuit Integration of MEMS”, Wiley VCH (2021) を参照してください。
 会社の相談に乗り、各地で無料セミナーなどを開催して知識提供に努めてきました。1,000冊ほどの文献ファイルをExcelでキーワード検索できるようにしたり、関連する学会の予稿集などを整理し、探しやすくして利用頂いております。また4部屋の展示室 http://www.mu-sic.tohoku.ac.jp/nishizawa/ を整備し、サンプルなどを直接見て頂けるようにもしています。是非多くの方や会社にお使い頂きたいと思います。



【著者紹介】
江刺 正喜 (えさし まさよし)
東北大学 名誉教授

■著者略歴
昭和46年東北大学工学部電子工学科卒。51年同大学院博士課程修了。
同年より東北大学工学部助手、56年助教授、平成2年より教授となり、現在名誉教授。
東北大学 シニアリサーチフェロー (マイクロシステム融合研究開発センター) 兼 ㈱メムス・コア CTO。
半導体センサ、マイクロマシニングによる集積化システム、
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の研究に従事。

■主な受賞
電子通信学会業績賞(昭和55年)、SSDM Award(平成13年)、第3回産学官連携推進会議文部科学大臣賞(平成16年)、紫綬褒章(平成18年)、IEEE Andrew S.Grove Award 2015(平成27年)、IEEE Jun-ichi Nishizawa Medal 2016(平成28年)、応用物理学会業績賞(令和4年) 他

ハイパースペクトルフィルタアレイ技術(上)

丸善インテック(株) 技術顧問
仲井 淳一

1.はじめに

 私たちは光と言えば、人間の目で見える可視光線(波長380〜780nm)をまず思い浮かべるが、光も宇宙を含めて空中を飛び回っている様々な電磁波の中の一つである。電磁波の中には波長が数十kmにも及ぶ電波から、十億分の1m(1nm)以下のX線や、さらに短いガンマ線まで数多くの種類がある。
 宇宙に存在するあらゆる物体に対して光を当てると、その光の波長によって透過したり、反射したり、吸収したり、時には吸収した波長と異なる波長の光を発したり(蛍光)、さらにはその物体を構成する分子と光が相互作用してラマン散乱と呼ばれる現象が起きることがある。身近なところでは、物体で光が反射され、人間が視覚で色として認識できるということは、反射された可視光スペクトルが、人間の網膜に刺激を与えて色として感じさせているのである。
 物体に光を当てて、その反射された光をその波長の相違によって分解し、光の波長帯(バンド)すなわち光スペクトル特性を調べることによって、その物体を構成する分子の特性や組成に関する様々な情報(分光データ)を得ることができる。この現象を利用した分光技術は、近年多方面で利用され、我々の生活に深く関わっている。
 ここでは、物体を構成する分子独自の光スペクトル特性を得るために不可欠な光学部品の一つであるViavi Solutions社のハイパースペクトルフィルタアレイ(HFA:Hyperspectral Filter Array)について、その技術と応用を2回に分けて紹介する。

2.ハイパースペクトルフィルタアレイおよびその製造方法

2.1 ハイパースペクトルフィルタアレイ

 我々が最も身近で利用しているデジタルカメラやスマートフォンに搭載されているカメラには、赤、緑、青(RGB)という光の三原色のカラーフィルタアレイを受光部上に形成したCCDやCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子が使われている。その撮像面にカメラレンズを介して被写体を結像させ、その光の強さに応じた電気信号を映像信号として取り出すことによって、人の目に映る色合いを再現したカラー画像を取得している1)。このようなRGBフィルタアレイは、被写体から反射された光のうち、可視光領域の光を3種類の波長帯(バンド)で3分割しただけであるが、さらにバンド数を増やすことによって、それぞれの波長ごとのより詳細な情報(分光データ)を得ることができる。
 顕微鏡観察などで使われているマルチバンドフィルタアレイは多くても10バンド程度であるが、それよりも多いバンド数を有するフィルタアレイはハイパースペクトルフィルタアレイ(HFA)と呼ばれている。Viavi Solutions社のハイパースペクトルフィルタアレイ(HFA)は、近紫外線領域から中波長の赤外線領域(300〜5000nm)を、実用的には16〜300の波長帯(バンド)に分割することができる。また各フィルタ間の光の混色(迷光)を抑制するための遮光マスクを形成するオプションも有している2)。Viavi Solutions社がガラス基板上に形成した近赤外線領域(775〜1075nm)を64バンドに分割したフィルタアレイの分光透過特性を図1に示す。これは300nm幅の近赤外線領域を約5nmおきに64分割したハイパースペクトルフィルタアレイ(HFA)である。

図1 近赤外線領域のHFA分光透過特性
図1 近赤外線領域のHFA分光透過特性

2.2 ハイパースペクトルフィルタアレイの製造方法

 ガラス基板上あるいは先に述べたCCDやCMOSイメージセンサが形成されたウェハ上に、このハイパースペクトルフィルタアレイ(HFA)を形成する方法を以下に述べる。
 このフィルタは、光の持つ干渉性の原理を元に低屈折率と高屈折率の誘電体膜(スペーサ層)を交互に積層し、光の反射と吸収をコントロールすることによって形成することができる。上記イメージセンサ上に形成する場合は、厚さが可変のスペーサ層をイメージセンサの画素毎に所定の膜厚で成膜(スパッタリング、蒸着など)し、アレイ状に形成する3)4)。スペーサ層としては、例えば750〜1100nmの近赤外線領域の場合、低屈折率誘電体膜として酸化ニオブ(Nb2O5)または酸化チタン(TiO2)を、高屈折率誘電体膜として水素化シリコン(SiH)などが使われる5)。しかしながら、この方法で先述の64バンドに分割したハイパースペクトルフィルタアレイ(HFA)を作製するためには、64回の成膜工程とパターニング工程を個別に行わなければならないことになり、歩留まりの低下と製造コストの増大が問題となる6)
 この問題を解決するために、ファブリ・ペロー(Fabry-Perot)共振器の原理に基づいて、厚さが可変のスペーサ層をバイナリ方式で付加的に形成していく、バイナリマルチスペクトル(BMS:Binary Multispectral)フィルタ技術による製造方法が知られている7)8)。この方法で形成したハイパースペクトルフィルタアレイ(HFA)の製造工程と完成模式図を図2に示す。まず基板上(ガラス基板やイメージセンサが形成されたウェハ上)にミラー層を形成する(図2(a))。このミラー層は、銀(Ag)やアルミニウム(Al)または銅(Cu)をベースとした金属ミラー層が用いられる。その上のスペーサー層について、スペーサ層2の膜厚(光学膜厚Optical Thickness)は同1の半分(図2(b))、スペーサ層3の膜厚は同2の半分、というように1つ前の層の半分の膜厚で形成される9)。この図の場合では、8バンドに分割したフィルタアレイを形成するのに4回の成膜工程とパターニング工程でできる。製造効率の高いこの方法を使えば、64バンドであれば8回という少ない成膜/パターニング回数で製造することができる(図2(c))。スペーサ層のパターニング工程には、半導体プロセスでよく知られているリフトオフ法が使われる10)。図2(d)はこの方法で形成した8バンドの完成模式図であり、図3はViavi Solutions社の64バンドのハイパースペクトルフィルタアレイ(HFA)(1片が約2mm□)の拡大写真である。

図2 HFAの製造工程と完成図の模式図
図2 HFAの製造工程と完成図の模式図
図3 64(8×8)バンドのHFAの拡大写真
図3 64(8×8)バンドのHFAの拡大写真

3.ハイパースペクトルフィルタアレイの利用

 一般に光学フィルタは、そのフィルタを通過した光信号を電気信号に変換するセンサ素子の上に配置され、光学センサとして利用される。例えば前述したCCDやCMOSイメージセンサは、アレイ状に配置されたRGB原色フィルタ等の複数のカラーフィルタと組み合わせて、カラー画像センサとして利用される。イメージセンサに搭載されているほとんどのRGB原色フィルタアレイは、染料や顔料を用いて形成されているが、相対的に色通過帯域が広い。言い換えればRGB分光透過特性の波形がブロードで互いの波形とのオーバーラップが大きく、その結果、色の鮮やかさに劣る。さらに赤外光(IR)も透過するので、可視光領域の良質な映像を得るためには、それを遮断するIRカットフィルタを装備しなければならない。
 一方、これまで述べてきた誘電体膜を使った光学フィルタは、色通過帯域が狭く、赤外光等の余分な光を通さないのでRGBの鮮明な画像を得ることができる11)12)。ただイメージセンサの小型化、高画素化の流れが速く、それに対応できる微細化に追随できていないのが現状である。
 近年、近赤外線によるバイオイメージングが注目されており、中でも短波近赤外線領域(SWNIR:Short Wavelength Near-IR)は、身の回りの材料組成に関する情報の宝庫と言われている。特に650〜950nmの「第一生体窓(the first biological window)」と呼ばれている領域は、ヒトの生体組織の主成分である水とヘモグロビンの吸収、散乱が起こりにくいため、生体に対して高い透過率を持っている13)14)。この波長領域内では、加工も比較的容易で微細化もシリコンプレーナ技術を活用して小型化、高画素化に対応できるCCDやCMOSイメージセンサが使われる。特にCMOSイメージセンサの近年の技術革新は目覚ましく、微細化による小型化、高画素化に加えて、裏面照射(BSI)等による高感度化技術と高度な画像処理技術によって、スペクトル検出に理想的なレベルにまで進化した。さらにこれまで課題であった950nm付近の近赤外線領域の光子検出効率PDE(Photon Detection Efficiency)も、近年各社から発表されている裏面照射型のSPAD(Single Photon Avalanche Diode)センサの登場で克服されようとしている15)16)
 ただこのようなシリコン(Si)をベースとしたセンサ素子は、可視光領域から波長1000nmぐらいまでが限界で、それ以上になると光検出感度が急激に落ちてしまう。それよりも長波長の領域(第二、第三生体窓)では、1700nmあたりまで感度があるインジウムガリウムヒ素を使ったInGaAsセンサ素子が使われる17)。これらのいわゆる化合物光半導体受光素子は、Siセンサ素子に比べて加工が難しく、また原材料も高価であり、民生機器へ搭載するにはコスト面でも厳しい課題はあるが、近赤外線センサだけではなく、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の半導体レーザー分野、量子ドットレーザーや太陽電池、医療用赤外線画像診断装置等、その応用範囲も多岐に渡り、今後の更なる発展が期待されている。
 これまで分光技術は、物質の成分特定や分子構造の解析など、様々な分析を可能にし、大学などの研究機関だけでなく、医療の現場や、半導体・電子機器・農業・製薬・食品・エネルギーといった広範囲の分野で活用され、人々の暮らしや社会に役立ってきた。今後は以上述べてきたように、小型化、高性能化されたセンサ素子の上にハイパースペクトルフィルタアレイを搭載することによって、厳しいコストとサイズの要件をクリアし、ベンチトップ型からハンディ型、さらにはスマートフォンやスマートウォッチへの搭載も現実化しつつある。次項では、このハイパースペクトルフィルタアレイの応用について紹介する。



次回に続く-



参考文献

  1. 米本和也 著 『改訂CCD/CMOSイメージセンサの基礎と応用』 2018年 CQ出版社
  2. https://www.viavisolutions.com/en-us/osp/solutions/spectral-sensing#tabs-custom-optical-filters
  3. 特許公報 第6244103号
  4. 特許公報 第6458118号
  5. 特許公報 第6812238号
  6. スチーブ・サックス著 『Laser Focus World Japan 』 2017年9月号p.16-17
  7. H. Angus Macleod著 『MACLEOD:光学薄膜原論』 2013年 アドコム・メディア(株)
  8. 公開特許公報 2020-21052
  9. 小檜山光信 著 『光学薄膜の基礎理論(増補改訂版)』 2019年 オプトロニクス社
  10. S. M. Sze著 『VLSI TECHNOLOGY』 1983年 McGraw-Hill Book Co.
  11. 特許公報 第6509258号
  12. 特許公報 第6847996号
  13. 小森谷健二 他 著 『生体医工学』 2013年51巻2号p.135-141
  14. 梅澤雅和 他 著 『ぶんせき』 2020年11月号p.420-425
  15. https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06403/
  16. https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01537/00279/
  17. Jian Xu, et al., J. Mater. Chem. C, 2016,4,11096-11103


【著者紹介】
仲井 淳一(なかい じゅんいち)
丸善インテック株式会社 技術顧問

■著者略歴
1981年 京都大学大学院理学研究科 修士課程修了
同年 シャープ株式会社入社
技術本部中央研究所にて固体撮像素子の研究開発プロジェクトチームに参画
2003年 シャープ株式会社センサー事業部開発部長
2016年 シャープ株式会社定年退職
2017年 丸善インテック株式会社 技術顧問、現在に至る。

高速度カメラとイメージセンサ(1)

(株)ナックイメージテクノロジー
執行役員
小熊 和彦

1.はじめに

 目にも留まらぬ速さ、まさに人間の眼で識別できないものを見てみたい欲求を満たすことは高速度カメラの役目である。高速度カメラとは1秒間に何枚の映像を撮影できるかを表す「撮影速度」が高いカメラのことである。スポーツや広告などの制作分野、また産業機器、車の衝突試験、燃焼、溶接、宇宙開発、医療などの計測分野、これら多様な撮影に活躍している。
 高速度カメラはフィルム式と電子式の2種類がある。1870年代、馬の疾走を複数台のカメラで捉えたEadweard Muybridgeに始まり、20世紀までフィルム式は主流であった。それから約100年後の1970年代、撮像管とビデオテープを用いた電子式が初めて登場した。その後、撮影速度が上がるにつれて、高速度カメラは大容量の半導体メモリに映像を記録するようになった。
 ここでは、1回に数千コマ以上の連続した映像が撮れるカメラと使われているイメージセンサについて説明する。撮影速度はおおよそ100~1,000,000コマ/秒(以下fpsと略す)である。1,000,000 fps以上の撮影が可能なカメラは10コマ前後の記録に限られる。最大でも約100コマである。イメージセンサのタイプは異なるので本稿では触れない。

2.高速度カメラの歴史

 高速度カメラに使われた、初期のイメージセンサから現在のCMOSイメージセンサに至るまでの歴史について述べる。図1は弊社の高速度カメラの歴史を示している。縦軸は速さ(ピクセルレート)で「画素数x撮影速度」を指標とした。横軸は年代である。高速度カメラは何故CMOSイメージセンサを必要としたかが分かる。

2.1 2000年以前

 2000年以前は、高速度カメラは市販のイメージセンサを利用するしかなかった。そして、この時代のイメージセンサ(撮像管、MOS、CMD、CCD)はすべて画素順次信号処理の構造であり、信号出力は1本だった。図2はCMOSイメージセンサを信号処理の構造によって分類した図1) だが、これらセンサは (a) の構造に当てはまる。撮影速度はどれだけ速く各画素の信号処理をして出力できるかによって決まる。弊社は独自の読出しと信号処理あるいは光学系の工夫で高速化を実現したが、ピクセルレートは0.1 Gpixel/secが限度だった。これ以上の撮影速度を得るにはCMOSイメージセンサの出現が必要であった。

2.2 2000年以降

 1990年代の半ば、Dr. Eric FossumがPhotobit社を、ヨーロッパではimec出身者たちがFillfactory社を創立し、CMOSイメージセンサの開発・製造を始めた。構造の特徴を生かして、センサは信号出力を複数本持つことでピクセルレートを飛躍的に向上させた。
 弊社のカメラもピクセルレートは1桁上がり、2001年に1280×1024画素、1,000 fpsの製品が完成した。このセンサは水平方向(1行)の16画素の信号を同時に出力でき、信号出力は16本、10 bitのデジタルである。構造は図2 (b) の列並列信号処理である。高速化できた理由は次の3.1項で述べる。2000年以降、各社は映像信号をいかに同時に沢山出力して撮影速度を上げられるかの技術開発に努力している。
 なお、Photobit社とFillfactory社は現在存在しないが、これら会社の出身者達は新たな会社で市販品やカスタム品の高速度イメージセンサの開発を続けている。

図1 高速度カメラの歴史
図1 高速度カメラの歴史
図2 CMOSイメージセンサの構造
図2 CMOSイメージセンサの構造
図3 列並列信号処理の一例
図3 列並列信号処理の一例


次回に続く-



参考文献

1)  映像情報メディア学会編;「CMOSイメージセンサ」、コロナ社



【著者紹介】
小熊 和彦(おぐま かずひこ)
株式会社 ナックイメージテクノロジー 技術部 執行役員

■著者略歴
1976年 名古屋工業大学電子工学科卒業
1977年 株式会社ナック(現ナックイメージテクノロジー)入社、技術部
高速度カメラ、高速度イメージセンサの開発に従事