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「交通インフラDX推進コンソーシアム」設立

(株)JTOWER、住友電気工業(株)、日本信号(株)、日本電気(株)の4社は、東京大学 大口 敬教授、慶應義塾大学 植原 啓介教授の協力を得て、産官学連携により「交通インフラDX推進コンソーシアム」を8月22日に設立した。

同コンソーシアムは、人・モビリティ・インフラが協調した安全安心で持続的な交通社会の実現に向けて、交通信号機の活用による5Gネットワークを軸とした柔軟性かつ拡張性のある新たなDX基盤やアプリケーションが社会実装されるよう、検討・対外活動を推進する。

具体的には、インフラ普及やアプリケーションの社会実装に向けた調査・研究、情報発信・広報活動、技術的な要件検討、ガイドライン案の取り纏め、ならびに関係する府省庁、団体、大学など様々な方々との協議なども踏まえた関係機関等への提言を行う。

【コンソーシアム設立の背景】
2019年度から3か年にわたり行った官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)事業では、交通信号機を5G基地局の設置場所として活用するとともに、5Gを用いた交通信号機の集中制御化等を目的とした技術や制度の検討を進めてきた。さらに、本事業では、交通信号柱を交差点における貴重な公共アセットと位置付け、ここに5Gネットワーク機器や各種センサを取り付け、得られた信号情報、センサデータなどの活用による社会課題解決の可能性についても検証してきた。
上記プロジェクトは2021年度末をもって一定の成果を上げて終了したが、今後、社会実装を進めていくためには、引き続き中長期的な観点でニーズの深掘りを進め、技術要件、制度・運用面など実現方法、事業性についてさらに検討を深める必要性がある。よって、産官学で連携したコンソーシアムを立ち上げてこれらの活動を引き継ぐこととした。

交通インフラDX推進コンソーシアム Webサイト: https://www.cdx-traffic.org/

プレスリリースサイト(jtower):https://www.jtower.co.jp/2022/14760/

帝京大学、テフロン™のケミカルサイクルに成功

帝京大学 理工学部バイオサイエンス学科 柳原尚久教授は、耐薬品性ならびに耐熱性に優れているが故にケミカルリサイクルには不適切であったテフロン™を効率良く鉱物化することに成功した。本研究成果によってフッ素系ポリマーから蛍石の主成分であるCaF2を回収することが可能となり、循環型社会の構築に向けた技術利用が期待されるという。

【研究成果のポイント】
〇化学的・熱的に非常に安定したポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン™)のケミカルリサイクルに成功。
〇従来法と比べて反応が容易で簡単。反応に必要な主な試薬は、汎用薬品である水酸化ナトリウムNaOH。
〇溶融状態にある NaOH を用いてテフロン™を分解。その分解生成物を水に溶かし、最終的にフッ化カルシウム CaF2 として回収することに成功。
〇テフロン™以外のフッ素系ポリマーも同様の方法で鉱物化に成功。

これまでにテフロン™以外のフッ素系ポリマーは、酸素 O2、過酸化水素 H2O2 あるいは過マンガン酸カリウム KMnO4 といった酸化剤を共存させた超臨界水あるいは亜臨界水を用いて分解できることが既に報告されていた。しかしながら、フッ素系ポリマーの中で最大の需要があり、最も融点の高いテフロン™(融点 321 ̊C)に関する鉱物化の研究報告はなく、今回の研究成果が初めての成功事例となるとのこと。

【論文情報】
雑誌名: Green Chemistry(英国王立化学会の論文誌、IF = 11.0)
論文タイトル: Mineralization of poly(tetrafluoroethylene) and other fluoropolymers by molten sodium hydroxide.(溶融水酸化ナトリウムを用いたポリテトラフルオロエチレンならびにその他のフッ素樹脂の鉱物化)
受理日:2022 年 7 月 22 日
DOI: 10.1039/D2GC00797E
URL:https://doi.org/10.1039/D2GC00797E

ニュースリリースサイト(teikyo-u):https://www.teikyo-u.ac.jp/topics/2022/0822

アドバンテック、設置とメンテナンスの手間を大幅削減可能な、オールインワンAIカメラ

アドバンテック(株)は新しいエッジ産業用AIカメラ「ICAM-500」を発売開始した。NVIDIA® Jetson Nano™を組み込んだICAM-500は、産業グレードのSONY IMX 296イメージセンサ、先進的なLED照明、可変焦点レンズに加え、画像データ取得およびAIコンピューティング機能を兼ね備えているという。


●クラウドツーエッジのビジョンAIアプリケーションの開発・展開を加速
 アドバンテックのICAM-500は、コンパクトな産業用カメラシステムの中にNVIDIA Jetson Nano AIコンピューティングモジュールを搭載している。これにより、画像データ取得とAI推論機能を同一システム内で統合し、IPカメラ、クラウド、AI推論システム間の距離によるレイテンシーを低減する。また、FPGAベースのトリガー入力、照明ストロボ出力、MIPIインターフェースを備えており、低レイテンシーかつ高帯域幅の画像データ取得を行うことが可能。これらの機能により、現場でのAI推論の効率向上、AI自動光学検査、AI光学文字認識、エッジでの物体認識など、リアルタイムな応答性が求められるエッジAIアプリケーションに最適なソリューションが実現する。

 ICAM-500は、NVIDIA DeepStream SDKもサポートしている。AI開発者は、C/C++、Python、またはNVIDIAのローコードツールであるGraph Composerを使用して、ビジョンシステム内にスピーディに展開するために事前にトレーニングされたモデルを迅速に統合することが可能である。

●オールインワンソリューションにより、ビジョンシステムの設置とメンテナンスの手間を削減
 ICAM-500は、プログラマブル可変フォーカスレンズ、LED照明、SONY製産業用イメージセンサを搭載した高集積産業用AIカメラ。これらの機能により、設置やメンテナンスに必要な労力を軽減することができる。カメラの汎用設定、照明、1mの検査距離により、ほとんどのビジョンアプリケーションの要件を満たす事ができる。また、ICAM-500に内蔵されたボタンにより、スナップショットの撮影や機能のカスタマイズが可能。ユーザーはICAM-500を接続し、LANを使って制御するだけで、ビジョンシステムを実現することができる。 ICAM-500はUSBインターフェースを持ち、Wi-Fiや5Gアプリケーション向けの通信モジュールのソリューションを柔軟に接続することができる。これにより、AIソフトウェア開発者の参入障壁を下げ、ビジョンAIアプリケーションに踏み出すことが容易になる。 ICAM-500は、ユーザーがソフトウェアとハードウェアを容易に統合できるよう、ボードサポートパッケージサポートを提供する。

 ICAM-500は、照明、カメラ、AIコンピューティングをコンパクトなシステム(82 x 121 x 53 mm)に統合している。これにより、スペースを節約できるだけでなく、ビジョンソリューションプロバイダーがAIコンピューティング機器を追加で設置する時間を節約することができる。また、ファンレス設計のため、過酷な工場環境下等でも安心して使用できる。ICAM-500は、様々な産業用エッジAIビジョンアプリケーションに最適な製品であるとしている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000073476.html

フジテック、高層建物向けエレベータの新たな地震対策機能を開発

フジテック(株)は、高層ビルや高層マンションを対象としたエレベータの地震対策として、測域センサ※を用いた新たな長周期地震時管制運転を開発した。

長周期地震時管制運転とは、エレベータが地震の揺れを感知すると最寄り階でドアを開き、運行を一時休止して利用者の閉じ込めを防止する目的の機能である。従来の機能では、強風など地震以外による揺れの場合でも、運行を一時休止することで利用者の安全を確保してきた。

今回新たに、測域センサで揺れを測定する機能を追加したことで、従来以上に精緻に揺れを判定できるようになった。安全面に支障がないと判定できた場合は、エレベータの運行継続が可能。また、管制運転が作動した場合も、揺れが収まればできるだけ早く運行を再開することができる。これにより、エレベータの休止時間を短縮する。

※別名はレーザースキャナ―。レーザー光で対象物との距離を測る

ニュースリリースサイト(fujitec):https://www.fujitec.co.jp/announcement/8138

データを活用したソリューションの実装スピードを飛躍的に高めるi-BELTサービス提供開始

オムロン(株)は、現場データ活用基盤、「i-BELT Data Management Platform」(以下、i-DMP※1)を開発。2022年8月18日より、現場データ活用サービスi-BELT(※2)に組み込み、サービス提供を開始する。
近年、製造現場では、ネットワークの高速化など先進的な情報技術が導入され、多種多様な現場データの蓄積・分析が可能となったことで、データを活用した生産性や品質向上などの現場革新の取り組みが注目されている。一方で、実際の製造現場では、データ活用の取り組みを支援する様々な機器やソフトウェアの活用を試みるも、試行錯誤の繰り返しにとどまり、目に見えるかたちでの成果に至らないケースも散見される。現在、製造業にとって重要な社会課題である脱炭素の取り組みにおいても、「エネルギーデータを見える化したものの、課題解決に向けて何から手をつければよいかわからない、既存システムとの連携が上手くいかない」という事例も多く見られる。

オムロンは、このような課題を解決するため、現場データ活用サービス「i-BELT」の提供を2017年から開始。今回、お客様固有のモノづくり課題に最適化したi-BELTサービスを、よりスピーディに提供し、課題解決ソリューションの継続的な進化に貢献するi-DMPを開発した。例えば、エネルギーデータと生産性のデータを統合し、エネルギー生産性の指標をベースに工場の脱炭素化の取り組みを加速させることも可能。i-DMPは既に複数の弊社工場に導入し、その効果を実証している。
オムロン京都太陽(株)では、障がい者雇用の現場特性に合わせたシステム導入を行っている。本事例では、企業経営において“多様性”が重視される中、設備データに加えて人作業のデータを常時取得することで現場一人一人の“今この瞬間”の把握を実現し、生産性11%向上を達成した。また、システム構築までの期間は従来比1/8(※3)で実現した。このi-DMPは、同社からのi-BELTサービス提供時に加えて、今後、ライセンスによるパートナー企業への提供も検討している。

【i-BELT Data Management Platform(i-DMP)の特長】
1. “既存の現場システム”を最大限活用したデータ利活用を実現
i-DMPは多様なネットワークやリレーショナルデータベース(RDB)、FA機器と簡単に接続することができ、既存システムや各社PLC情報など、現場に点在するデータを必要に応じてエッジ領域でリアルタイムに収集・蓄積し、一元管理ができる。クラウドなどを使用しない、スモールスタートで製造現場でのデータ活用が可能。また、i-DMPの拡張性の高さを活用し、設定したゴールや進化シナリオに応じて段階的に機能を拡張し現場へ展開することができる。

<i-DMP接続対象>
・通信プロトコル:OPC-UA、Ethernet/IP、PROFINET、Edgecross(※4)など
・RDB:PostgreSQL、Oracle Database、Microsoft SQL Serverなど
・制御機器:コードリーダ、産業用カメラ、パーティクルセンサを含む多様なFA機器

2. i-DMP+マネジメントソフトウエアで、製造現場をリアルタイムに可視化し、潜在する課題も顕在化
同社が製造現場で培ったナレッジを組み込んだ50種類以上の豊富なマネジメントソフトや部品を活用することで、エッジ領域で収集したデータを現場課題に合わせて、現場の状態の変化を簡単に可視化できる(製品単位/工程単位、標準工数/実績工数、人作業バラつきなど)。それにより、お客様の目的に最適化したデータ活用の仕組みをスピーディに実現し、潜在する課題までも顕在化、そしてアクションへつなげることができる。例えば、人作業が多い現場では、作業者の動線、動作や作業内容の分析など原因対策の具体化に向けてデータ分析による要因特定を行い、全体最適を見据えた改善サイクルの仕組み化に貢献する。

3. 一元管理した現場データの活用により、継続的な製造現場の改善・進化に貢献
エッジ領域で多様なデータを収集・蓄積し、一元管理を可能にすることで、データ分析を通して製造現場で自動化すべき領域を特定、さらに制御へのフィードバックも可能になる。多様化・複雑化する課題に対しても、弊社がモノづくり革新コンセプト「i-Automation!」により創出・蓄積してきた250を超える革新的なアプリケーションの現場実装や、AI(人工知能)の活用などにより、現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進め、現場革新を支援する。

※1:i-BELT Data Management Platform(i-DMP)
様々な機器やシステムからデータを収集、整理して利用可能な形式に変換するデータ活用プラットフォーム。
※2:i-BELT
生産現場にあるデータを活用し、課題解決する共創サービス。詳細は下記を参照。
https://www.fa.omron.co.jp/solution/i-belt
※3: 1/8
2021年6月 当社調べ、オムロン京都太陽への導入実績
※4:Edgecross
企業・産業の枠を超え、FAとITの協調を実現するエッジコンピューティング領域のオープンなソフトウェアプラットフォーム。詳細は下記を参照。
https://www.edgecross.org/ja/

ニュースリリースサイト(OMRON):https://www.omron.com/jp/ja/news/2022/08/c0818.html

OKIとKRYSTAL、超音波センサの感度を20倍にする圧電単結晶薄膜接合技術

沖電気工業(株)とKRYSTAL(株)は、圧電単結晶薄膜(注1)とSOIウエハー(注2)の接合技術を確立し、超音波センサなど圧電MEMS(注3)デバイスの性能を飛躍的に向上させる「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」の試作に成功した。
両社は、11月を目途に圧電MEMSデバイスメーカーをターゲットにサンプル出荷を開始し、2023年には様々な要求に応じたカスタムウエハーの提供を目指す。

圧電MEMSデバイスは、物体検知を行う超音波センサ、小型マイク/スピーカー、通信用途の高周波フィルターなどとして、自動車、ロボット、ウェアラブル端末、IoT、スマートフォン、通信基地局など多くの市場で使われている。ニーズは拡大しているが、さらなる小型化と低消費電力化が求められているため、素材レベルでの基本特性の向上が課題である。圧電MEMSデバイスの基本特性を決める圧電薄膜は、「単結晶」化により、あらゆる特性が向上することが知られている。しかし、単結晶薄膜をウエハー上に形成するためには特殊なバッファー層(注4)が必要で、実現可能なデバイス構造が限定されていた。そこで特性が劣るものの製造が容易な「多結晶」薄膜が一般に用いられている。

今回、OKIのCFB技術(注5)によりKRYSTALの高性能なPZT(注6)圧電単結晶薄膜だけをバッファー層から剥離しSOIウエハーに直接接合する技術を確立した。本技術を用いて試作した「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」は、バッファー層なく単結晶薄膜のみを直接デバイスに搭載することが可能なため、様々なデバイス構造に適用可能。さらに、本接合ウエハーを用いて試作したMEMS超音波センサの測定結果から、従来の多結晶薄膜と比較して、超音波センサの感度(送受信電力効率)が20倍以上(送信4倍と受信6倍の積)となった。この結果から、本接合技術は圧電単結晶薄膜の高い性能を損なわず、本接合ウエハーはデバイスメーカーの既存MEMSプロセスへの適用が可能であることを実証した。

KRYSTALは、独自技術のバッファー層を用いることで、業界初のPZT単結晶薄膜を商用化した実績があり、これまで困難とされていた窒化アルミニウムなど各種材料の単結晶化にも成功している。OKIはCFB技術を用いたプリンター印字ヘッド用LEDアレイで15年以上の量産実績がある。それぞれの強みを活かしたことにより今回の開発に結び付けられた。

なお今回は、シリコンウエハー、SOIウエハーへの接合を実証したが、ガラス基板、有機材料基板などへも適用が可能で、デバイス構造を限定することなく、圧電単結晶薄膜の用途分野を大きく広げられる。また、単結晶薄膜の必要な部分だけを選択的に剥離/接合できるため、同一ウエハーから必要な薄膜を複数回繰り返し剥離でき、資源の有効活用・環境負荷や製造コストの低減にも貢献するという。

(注1):圧電単結晶薄膜
 センサやアクチュエーターなどのMEMSデバイスの特性を決める薄膜層。一般的なデバイスでは多結晶の薄膜が用いられるが、KRYSTALの独自技術により単結晶の圧電薄膜が提供可能となった。
(注2):SOIウエハー
 SOI(Silicon on Insulator)ウエハーとは酸化シリコン膜上にシリコン単結晶層を形成した構造のシリコンウエハーで、高速LSI、低消費LSI、パワーデバイス、MEMSなど幅広い分野で使われる。
(注3):圧電MEMS
 半導体のシリコン基板・ガラス基板・有機材料などに、圧電要素部品のセンサ・アクチュエーター・電子回路などを集積した、ミクロンレベルの電気機械システム。(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)
(注4):バッファー層
 今回の場合、シリコン単結晶基板と圧電単結晶膜の結晶格子のミスマッチを整合させるための層。
(注5):CFB
 Crystal Film Bondingの略。機能層「Crystal Film」を剥離し、異なる素材の基板に分子間力接合するOKI独自技術。分子間力接合は接着剤を使わない直接接合が特長。
(注6):PZT
 チタン酸ジルコン酸鉛の略称であり、代表的な圧電体。

プレスリリース(OKI):https://www.oki.com/jp/press/2022/08/z22027.html

漏れ試験について(2)

(株)フクダ
標準品技術部
井元 宏行

3.3. ヘリウム漏れ試験方法

  • 概要
    ヘリウムガスをサーチガスとし用いて漏れを検出する試験方法。一般にヘリウムガスの検出にはヘリウムディテクタを用いる。
  • 特徴
    定量的に測る手法、漏れ位置の特定が出来る手法など豊富な手法がある。大気中のヘリウムガス濃度は、体積分率5×10−6、不活性なガスであり、また分子径も小さいため微少な漏れの検出に優れている(一般に使用される漏れ試験方法の中で最も検出感度が高い)。
  • 対応規格
    JIS Z 2331
  • 試験手法
    1. 真空法(試験体へのガス流入法): 試験体内部を真空にして外側をヘリウムガスで覆い欠陥部より流入するヘリウムガスを検出する手法。主なものは、次のとおり。
      • 真空外覆法(真空フード法): 試験体内を真空にし、試験体の一部又は全体をヘリウムガスで覆い欠陥部より試験体内へ流入するヘリウムガスを検出する手法。定量性がある。
      • 真空吹付け法(スプレー法): 試験体内を真空にし、ヘリウムを試験体の外側の試験面に吹付けプローブで吹き付け、欠陥部より試験体内へ流入するヘリウムガスを検出する手法。漏れ箇所の特定に向く。試験技術者の習熟が必要。
    2. 加圧法(試験体からのガス流出法): 試験体内にヘリウムガスを封入し、外部に流出するヘリウムガスを検出する方法。主なものは、次のとおり。
      • 吸込み法(スニッファ法): 試験体内にヘリウムガスを入れ、試験体の外側に流出するヘリウムガスをスニッファプローブで吸い込み、漏れを検出する方法。漏れ箇所の特定に向く。試験技術者の習熟が必要。
      • 吸盤法(サクションカップ法): 試験体内にヘリウムガスを入れ、試験体の外側に漏れ出すヘリウムガスを、試験部に当てたサクションカップで吸い込み、漏れを検出する手法。ある程度の漏れ位置の特定、定量性がある。
      • 真空容器法(ベルジャー法/チャンバ法): 試験体を真空チャンバ内に置き、試験体内部にヘリウムガスを入れ、試験体からチャンバに漏れ出すヘリウムガスを検出する手法。定量性がある。
      • 加圧積分法: 試験体内にヘリウムガスを入れ、試験体の一部又は全部をフードで覆い、試験体の外側に流出するヘリウムガスをフードに蓄積させ、スニッファプローブを用いて検出する手法。定量性がある。
    3. ボンビング法(試験体へのガス流入流出法): ヘリウムガスをボンビングチャンバ内に充填し、試験体にヘリウムガスを浸漬させた後、試験チャンバに移しチャンバ内を排気し、試験体から漏れ出すヘリウムガスを検出する手法。加圧、排気口が無い封止された試験体に適用される。大きな漏れの検出に向かない(又は出来ない)。試験手法と試験体の知見が必要(詳細は対応規格参照)。
  • ヘリウムリークディテクタ
    ヘリウムディテクタの構造例を図5に示す。試験体/チャンバは、予め外部に取り付けた粗引きポンプにより減圧されテストポートに接続される(試験体の容積が小さい場合は、ディテクタの補助ポンプで粗引きすることもある)。始めテストバルブは閉じられ、粗引き・フォアバルブからの逆拡散(カウンターフロー)により分析管に届いたヘリウムガスを測定する。測定の結果が所定の値より低いことを確認し、テストバルブを開けて感度を上げた測定を行う。
    ヘリウムガスの測定は分析管で行われる。磁場偏向形の質量分析計を採用しているものが多い。偏向角は複数存在するが、180度偏向分析管を例に検出の原理を説明する(図6参照)。
    分析管に導入されたガス分子がイオン化室に入り内部に設けられたフィラメントより放出された熱電子と衝突すると、ガス分子の最外殻電子がはじき出されイオン化する。イオン化したガス分子はイオン化室と分析部の間に印加された加速電圧で加速され分析部に入る。分析部には、磁界が掛けられていて、イオン化した分子が移動するとローレンツ力を受け軌道が変化する。変化する軌道はイオン化された分子の重さにより異なるので、ヘリウムイオン分子の軌道に合わせて、イオンコレクタを配置するとヘリウムガスを検知できる。
図3 エアリークテスタの回路例
図3 エアリークテスタの回路例
図4 差圧センサの構造例
図4 差圧センサの構造例

4. 試験方法の選択

試験体に関する規格があり、試験方法が規格で指定されている場合はそれに従えばよいが、定められていないものも多い。そのときは、試験方法を選択しなければならない。どの試験方法を採用するかは、要求される判定漏れ量と試験方法の最小可検漏れ量(条件により変わるものが有るので注意)、試験体の特性(容積、試験圧力、検査面の肉厚、材質、排気/加圧口の有無、試験で使用する媒体の影響など)、試験目的(漏れ位置の特定の要否、定量性など)を鑑み、各試験法の特徴と照らし合わせて決める。

5. 考慮すること

非破壊試験では、欠陥部の特性(位置、大きさ、深さなど)を明らかにする。しかし、漏れ試験で測定する“漏れ量”は、漏れ出た媒体の量であって欠陥部そのものではない。しかもその漏れ量は欠陥部の入口と出口の圧力差が変化すると変わってしまう(温度によっても変化する)。漏れ量として閾値を定量化しても、試験条件でその量が変化することに注意する必要がある。
また、漏れ量は媒体により変わる。ヘリウム漏れ試験では、試験のためにヘリウムガスを試験体に充填し測定する。しかし、実使用時の媒体が水だとすると、同じ欠陥でも水の漏れる量はヘリウムガスと異なる。漏れ試験は、そのほとんどが実際の状況とは異なる試験であり、製品の実使用での規格と整合させなければならない。
“漏れが無い”という言葉を耳にすることがある。例えば、水を入れて漏水がないことを確認した容器があったとする。この容器に圧縮空気を充填して発泡剤を塗布したところ漏れを発見した。この容器は漏れがあるのか、漏れは無いなのか。この容器で水を貯めるならば問題は無いが、圧縮空気を蓄圧するには支障がでる。このように、“漏れが無い”とする言葉には“仕様上・実使用上で問題の無いとする漏れ”、“実施した試験方法の検出感度より少量で検出できない漏れ”が含まれている。合否を判定することは、閾値未満の漏れは許容することでもある。“漏れが無い”の言葉のままに試験法を決めると、過剰な品質、コスト高な試験を実施することになる。



引用・参考文献

  • 1) JIS Z 2300:2012 非破壊試験用語
  • 2) JIS Z 2330:2012 非破壊試験−漏れ試験方法の種類及びその選択
  • 3) JIS Z 2329:2019 非破壊試験−発泡漏れ試験方法
  • 4) JIS Z 2331:2006 ヘリウム漏れ試験方法
  • 5) JIS Z 2332:2012 圧力変化による漏れ試験方法
  • 6) 一般社団法人 日本非破壊検査協会編集 漏れ試験Ⅱ(2012) 一般社団法人 日本非破壊検査協会 発行


【著者紹介】
井元 宏行(いもと ひろゆき)
株式会社 フクダ 標準品技術部

■略歴
1983年に㈱フクダに入社
以来,圧力変化漏れ試験,水素漏れ試験に関連する試験機の設計,開発に携わる。

電子部品の気密試験について(2)

(株)フクダ
密封品リーク技術部
原 努

7. ファインリーク試験 MIL-STD-883 METHOID1014 SEAL 2.1 A1,A2
 (JIS Z 2331付属書D、JIS-C-60068-2-17付属書D)

電子部品の気密性を保証するためにはファインリーク試験が必須である。例えば内容積1cm³の真空封止された試験体に1E-09Pa・m³/secの小さなリークがあった場合、1日程度で100Paも上昇してしまうからである(図6.)。

図6. リークと内圧の関係
図6. リークと内圧の関係
内容積とは:
図7. ヘリウム浸漬法
図7. ヘリウム浸漬法

 電子部品のような密封製品のファインリーク試験は、サーチガスにヘリウムガスを用いたヘリウム浸漬法(図7.)が主流である。予め試験体をヘリウムガス雰囲気中で浸漬加圧しておき、欠陥のある試験体内部に入ったヘリウムガスを次工程のリークディテクタで検知する方法である。
 ラインで採用されているリークディテクタはターボ分子ポンプ一体型が多く、ターボ分子ポンプによる高い排気性能と、ヘリウムや水素など軽いガス分子の逆拡散現象を併用して、ヘリウム検知管に届く邪魔ガスや汚染物質を減らして実用感度の向上と長寿命化が図られている。
 ヘリウム浸漬法では、等価標準リーク率を有する試験体の測定ヘリウムリーク量R1は、Howell-Mann式と呼ばれる式(1)で与えられると考えられる。第1項が等価標準リーク率に対するヘリウム流量を、第2項が浸漬時間で入るヘリウム量を、第3項が放置時間後に残存するヘリウム量を計算している。

式(1)

R1 = 不合格にするヘリウムの最大許容リーク測定値(ヘリウムリーク量)
L = 最大許容等価標準リーク率(標準空気流量)
PE = ボンビング圧力 (絶対圧)
PO = 大気圧(絶対圧)
MA = 空気の分子量
M = トレーサガス(ヘリウム)の分子量
t1 = ヘリウムボンビング時間
t2 = ボンビング後、リーク試験までの滞留時間(放置時間)
V = 試験体内の空間容積(内容積)

 ヘリウム浸漬後は、測定までの間は試験体内部に浸漬したヘリウムガスは欠陥を通じて放出されるため、ボンビングタンクから試験体を取り出した後は、試験体表面から放出されるリーク以外のヘリウムを減衰させたうえで規定した放置時間以内に測定を完了しなければならない。またヘリウムリークディテクタで測定した値はその時のヘリウムリーク量を示すため必ず等価標準リーク率(空気)への換算が必要となる。
 MIL-STD-883 METOD1014 SEALでは試験条件を固定するA1と、式(1)をベースにしてフレキシブルに設定するA2の方法があるが、昨今の電子部品はA1で規定する最小サイズ(0.05cm³=50mm³)より遥かに小さくなっているためA2での検討を推奨する。
 最小可検リーク量(R1 )は試験体に大きく依存し、1E-09Pa・m³/s~である。試験品のパッケージにガラス質材料が多いと浸透・離脱ヘリウムが増えて小さなリークが見えなくなる。
 本方式でのメリットは、
・定量的な試験が可能で数値管理ができる
・極微小欠陥の検査が可能
 デメリットとしては、
・試験用ヘリウムガスが高価で供給リスクもある
・ヘリウム浸漬装置が別途必要
・ヘリウムガス浸漬後の放置時間など試験の管理項目が多い
・内容積の小さい試験体では測定領域が狭まり、グロスリーク試験のリーク領域との重なりが取りづらい
 などがあげられる。

8. 不感帯のない試験のために

 電子部品の気密試験は、グロスリーク試験とファインリーク試験の2つの試験が必要であり、2つの試験領域に“重なり”がとれて初めて気密性の評価を行ったことになる。すなわち、それぞれの等価標準リーク率(換算)値でみて、ファインリーク試験の上限はグロスリーク試験の下限以上でなければならない。しかし、ヘリウム浸漬法の式1.をベースに計算すると、内容積が0.05mm³の小さな試験体では、実用値(浸漬0.6MPa abs, 1h, 放置時間2分, He判定値1E-09Pa・m³/s)で試験できる等価標準リーク率値は約1E-07Pa・m³/sまでとなり、液没によるグロスリーク試験の下限1E-06Pa・m³/sに達せず、完全なリーク試験にならない。このため下限をより小さくできるグロスリーク試験方法を使う必要がある。
 ファインリーク試験としてヘリウム浸漬法を、一方グロスリーク試験として圧力変化法をそれぞれ用いたシミュレーショングラフ(図8.)で説明する。

図8. シミュレーショングラフ(自社)
図8. シミュレーショングラフ(自社)

 左縦軸は、ファインリークのヘリウム測定値、右縦軸は、グロスリークのエアリーク測定値である。試験体内容積0.05mm³、ヘリウム浸漬0.6MPa abs. 1時間、試験空気圧力400kPaG 1秒としたときを図示している。
 グラフ左側には、浸漬終了2分後(水色)と5分後(青色)の測定ヘリウムのシミュレーション値が描かれており、判定するヘリウム測定値(閾値)を1E-09 Pa・m³/sとすれば、浸漬終了2分後では約1E-07 Pa・m³/s、5分後では約4E-08 Pa・m³/sの等価標準リーク率まで試験できることがわかる。
 一方、グラフ右側に描かれた差圧測定値のシミュレーション値をみると、グロスリーク試験の下限は8E-08Pa・m³/sで、ファインリーク試験の放置時間2分の検査上限1E-07Pa・m³/sと重なって、不感帯のない試験ができることがわかる。しかし、ファインリーク試験の放置時間が5分では、等価標準リーク率4E-08 Pa・m³/sから8E-08 Pa・m³/s間に不感帯が生じて検査リークが生じてしまうこともわかる。リーク試験では、このような等価標準リーク率による不感帯確認が極めて重要である。

9. おわりに

 電子部品の気密試験では、個々の試験の特性やリーク領域を考えて実施されているはずであるが、複数の試験方法で異なるリーク領域を測る場合、とりわけ内容積が1mm³以下の極小さいパッケージの電子デバイス製品やMEMS製品では、上述のような不感帯が発生するリスクが高いため、試験方法・試験の管理方法を十分熟知し数値検討をして実施することが求められている。当社へ電子部品のリークテスト依頼される顧客の中にも良品として判断したものが実はリーク品であったということは少なからず発生している。昨今のような極めて小さな電子部品の試験方法についてはMIL-STD-883でもフレキシブルなA2に沿った試験が必要と考えている。
 リーク試験装置の側でも、顧客のリーク試験要求に応えられる高感度化や不感帯の無いリーク試験装置を提供することは重要な課題としていきたい。本稿では触れていないが、MEMS製品のようなごく小さな内容積の製品において、長期の気密性を保証するためのリーク率として、例えば1E-14Pa・m³/sとか1E-15Pa・m³/sが求められることがある。現在では検出限界を超えており、試験方法のブレークスルーだけでなく、こうした欠陥が存在し得るかも含めた孔の最小径などの研究・議論にも期待したい。



引用・参考文献

  • 1) JIS Z 2330:2012 非破壊試験-漏れ試験方法及びその選択
  • 2) JIS C 60068-2-17:2001 環境試験方法-電気・電子-封止(気密性)試験方法
  • 3) JIS Z 2331:2006 ヘリウム漏れ試験方法
  • 4) JIS Z 2332:2012 圧力変化による漏れ試験方法
  • 5) 例えばMIL-STD-883 METHOD1014 SEAL
  • 6) 例えばJIS C 60068-2-17:2001 環境試験方法
  • 7) JIS Z 8754:1999 真空技術-質量分析計形 リークディテクタ校正方法
  • 8) 国分 清秀他、水晶摩擦真空計と粘性真空計の理論、真空1987 年 30 巻 9 号 p. 706-714


【著者紹介】
原 努(はら つとむ)
株式会社フクダ 密封品リーク技術部

■略歴
2012年 株式会社フクダ入社
電子部品気密検査装置の開発に従事 現在に至る。

医薬品業界で求められる漏れ試験(2)

(株)フクダ
医薬品等包装プロジェクト統括
樋口 泰彦

6. JP18、USP<1207>における疑似欠陥を用いた評価

JP18及びUSP<1207>では疑似欠陥を用いた品質評価を推奨している.(各局方からの引用)
6-1 JP18 参考情報 無菌医薬品包装の完全性評価より
(2.4試験方法の設定と検証)1)
医薬品包装の材質や構造を考慮し,予測される欠陥形状と同等又は近似する漏れ特性を持つ一定の孔(径)を用い陽性対象、陰性対象を作り定量的な評価を行う.
6-2 USP<1207.1>製品ライフサイクルにおけるパッケージ完全性評価(試験法の選定及び妥当性確認)より
(4.5.1欠陥作成方法)2)
一般的なポジティブコントロールは、レーザードリルを利用して作成する.この欠陥を公称孔形(ピンホール,マイクロピペット,マイクロキャピラリなど)に換算し近似させることによりシミュレーションに利用する事が出来る.
注)ポジティブコントロール:陽性対照 欠陥のあるサンプル
注)ネガティブコントロール:陰性対照 欠陥の無いサンプル

7. 欠陥形状におけるガス及び水の漏れ特性

 包装欠陥を分析する際,孔の径と長さに注目し近似欠陥を想定する必要がある.欠陥に対するエアー漏れ量が近似していても,ガス拡散量・水漏れ量は全く異なる特性を示す場合がある.
表-3は2種類の異なる,孔径φ20μm 孔長15μm(ピンホールモデル)と孔径φ50μm孔長10mm(キャピラリモデル)の孔)に対し,差圧:100kPaにおいてエアー漏れ量は同一である.しかし,ピンホールモデルの水蒸気拡散量は約50倍,水漏れ量は約17倍とキャピラリモデルに対し桁違いに多い量を示している.これにより欠陥を判別する際,エアー漏れ量だけで判別する事は片手落ちであり孔の形状(口径と長さ)を併せて考慮する必要性を示している.つまり欠陥に対するガス拡散特性や液体漏洩特性は気体の漏れ量に加え孔の形状に着目する必要があり,欠陥の分析においては孔径・孔長さを定量的に測定し完全性との相関を評価する必要性を示唆している.

8. 欠陥形状の分析

 以下に気体漏れ流量を用いて欠陥形状を定量化する計算式と,ガス拡散現象を用いて定量化する計算式を示す.何れも従来の理論を改善し新たに開発されたものである.

8-1 気体漏れ量を利用して分析する方法

 欠陥形状を分析するため孔径と孔長さを理想的な状態(真円で直管)を想定し計測する手法がある.しかし一般に数ミクロンの孔形状を測定する事は技術的に困難であり計測の基準もない.通常は電子顕微鏡などを利用する事が多いが孔の内部の形状までは測定する事は出来ない.
このため弊社では,国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)との共同研究により流体力学的手法を用い孔の形状を数値化するモデル式を開発した.この式は「修正クヌーセン式」C) と呼ばれ条件により複雑に変化する気体漏れ量を適応する数種の流量式を合成する事により一体化し複雑な条件設定無く,孔の形状から漏れ量を算定する事が出来る.計算式を,式-1に示す.ここでは式の解説は省略するが,例えば孔の長さを仮定すれば気体の漏れ量から孔の径を最大30%ほどの誤差で算定する事が出来る.また孔の径を仮定すれば孔の長さを算定することが可能となる.つまり孔形状を定量化する手段の一つとなる事が分かる.

式-1 修正クヌーセン式 3)
式-1 修正クヌーセン式 3)

8-2 ガス拡散現象を利用して分析する方法

 拡散現象とは,漏れ孔の入り口/出口の圧力差(全圧)が無く特定のガスの濃度差(分圧差)によって気体が移動する現象である.従来フィックの法則が一般的に知られているが孔の形状により誤差が拡大する欠点があるため,これを改良し考案された拡散式 D) である.これを利用する事で孔の形状が決まった段階で特定のガスの拡散量を算定することが出来る.またガス拡散量をある値に抑えたい場合どの程度の欠陥形状まで許されるかを算定することが可能となる.

式-2 拡散式 4)
式-2 拡散式 4)

9. 最大許容漏れ限度の設定手順

 4項において医薬品包装における完全性評価基準が最大許容漏れ限度である事を述べた.前述の分析理論を利用し医薬包装容器に求められる「最大許容漏れ漏れ限度(孔形状)」を一定の手順を踏むことにより設定する事が可能となる.以下示す表は工程別に手順を示したものである.
工程とは,1.設計 2.製造 3.定量化移行 4.不具合解析の4工程であり工程別に目的と手順が示されている. 主に手順-2・手順-3において品質要求を孔径化し妥当性確認を行う工程で前述の分析理論が利用される.尚,詳細についてはJPTI2021に解説されているので参考とされたい.

表-4 工程別最大許容漏れ限度設定手順JTPI2021参照
表-4 工程別最大許容漏れ限度設定手順 JTPI2021参照

10. 試験法選定

 漏れ試験方は包装形態,要求される漏れ規格・欠陥形状などの要素から選定される.
試験法を現す表-6から表-8に「対象包装形態」及び「検出能力限界」が記されている.検出能力限界に示される「行番号・範囲・標準孔径」は表-5「空気漏れ量と孔径分類」に示される行番号・空気漏れ量・孔径により漏れ試験法分類に紐づけ試験法選定を支援するものとなっている.
表-6から表-7に示される試験法分類・対象包装形態・検出能力限界は参考値であり包装の材質,形状および要求レベルなどにより測定できない場合もある.具体的な条件設定は包装形態や品質要求に合わせて個別に検討する必要がある.

表-5 空気漏れ量と孔径分類 2)
表-5 空気漏れ量と孔径分類 2)
注)表-5における孔径及び空気漏れ量の条件,孔径は,長さを無視した完全な孔.
漏れ条件は,25℃,入口圧1atm,出口圧1Torrでの乾燥空気の流量.
表-6 定性的漏れ試験法 5)~8)
表-6 定性的漏れ試験法 5)~8)
表-7 定量的漏れ試験法 5)~8)
表-7 定量的漏れ試験法 5)~8)
表-8 定量的漏れ試験法 5)~8)
表-8 定量的漏れ試験法 5)~8)

まとめ

 以上,医薬品業界で求められる漏れ試験について解説を試みた.結論としては容器完全性評価基準に最大許容漏れ限度という判断基準を設けた事,評価手順として模擬欠陥を利用し実証的手順を提示した事,欠陥形状分析に適応する理論式を開発した事,漏れ量/孔形状と試験法を紐づけた事,など包装完全性評価要因について一定程度条件整備されてきた,しかしフィールドにおいて広く実践して行くためには多くの課題が残されている.
例えば「微生物や微粒子の侵入する条件,欠陥形状」・「標準欠陥の製造技術」・「欠陥形状の工業規格化」・「包装形態別の試験装置開発」などがその例である.今後これら課題に対して産官学が協働し取組んで行く必要があり,その取り組みは今始まったばかりである.



参考文献

  1. 第十八改正薬局方 (令和3年6月7日厚生労働省告第220号)
    無菌医薬品の包装完全性評価(G7-4-180), 無菌医薬品の包装も漏れ試験法(G7-5-180)
  2. USPharmacopeia,40(2017),〈1207.1〉PACKAGE INTEGRITY TESTING IN THE PRODUCT LIFE CYCLE _TEST METHOD SELECTION AND VALIDATION,<1207.2>PACKAGE INTEGRITY TEST TECHNOLOGIES
  3. 2019年日本表面真空学会学術講演会 吉田 肇、新井健太、武井良憲
    「気体流れの全領域に適用可能な任意長さの円筒導管を通過する気体流量の簡易計算方法」
  4. 2019年日本真空学会学術講演会 北條 勤、猪股 順、原 努、平田真央
    「孔を拡散により通過する気体の解析」
  5. 日本工業規格JISZ2329:2002「発泡漏れ試験方法」
  6. 日本工業規格JISZ2330:2012「非破壊試験法-漏れ試験方法の種類及びその選択」
  7. 日本工業規格JISZ2331:2006「ヘリウム漏れ試験法」
  8. 日本工業規格JISZ2332:2012「圧力変化による漏れ試験方法」
  9. ASTM F2338-09 Standard Test Method for Nondestructive Detection of Leaks in Packages
    by Vacuum Decay Method (Reapproved 2013)
  10. 山中 明:高電圧式ピンホール検査機 JPI Journal Vol.46 No.10,2008
  11. Kirsch LE,Nguyen L,Moeckly CS, Gerth R,Pharmaceutical container/closure integrity,
    Ⅱ:The relationship between microbial ingress and Helium leak rates in rubber-stoppered glass vials, PDA Journal of pharmaceutical science & technology Vol 51,No5/September-October 1997.


【著者紹介】
樋口 泰彦(ひぐち やすひこ)
株式会社 フクダ 取締役 医薬品包装等プロジェクト統括

■略歴

  • 1977年同社入社、国内営業、海外営業,営業企画など担当,2000年電子部品業界参入,2018年MUH-0100(世界最高レベルのヘリウム漏れ試験装置 10-15Pam3/s)同業界に発表.
  • 医薬品業界において2016年 PMDA主管,日本薬局方原案審議委員会「無菌医薬品包装の完全性評価WG」に参画,第18改正薬局方 参考情報執筆.同年,日本薬局方技術情報(JPTI2021)執筆.
  • 日本PDA製薬学会,ISPE日本本部,創包工学研究会,などの医薬包装関連委員会に参画,各種医薬包装関連セミナー実施.
  • 2022年 孔形状規格化推進のため日本計量機器工業連合会・規格検討会参画.

漏れ量の校正(2)

(株)フクダ
取締役営業部・海外営業部 部長
中澤 茂夫

4. 校正方法

4.1 校正対象品

校正対象品は、標準リーク又はキャピラリー式流量計で、コンダクタンスリークとなる。「コンダクタンスリークは、流体が通ることができる一つ又は複数個の分離した経路からなるリーク」とJCSS 技術的要求事項適用指針 5)で定義されている。当社製品のフロースタンダードは、キャピラリー式のリーク計となる(写真1)。

写真1 フロースタンダード
写真1 フロースタンダード

なお流量・流速区分では、流量計をキャピラリー式流量計と規定している。一般的な流量計のイメージは、流れている流量の値を表示する、または流量の値を既定の出力信号で出力する計測器であるが、キャピラリー式流量計は表示部が無く、信号も出力しない流量計となる。
一定条件下でキャピラリー式流量計の上流側に指定の圧力を加え、下流側は大気圧又は真空とした場合、一定の流量が発生する。つまりキャピラリー式流量計は、一定の漏れ量を発生させる標準器である。

4.2 校正装置/圧力区分

圧力区分における標準リークの校正は、図2トレーサビリティ体系図に示すように圧力、長さ、温度、時間の上位標準器にて校正した標準器を組合せた装置にて行っている。 この校正装置はメインチャンバ、リファレンスチャンバ、蓄圧タンク、容積測定チャンバの4つのチャンバと高精度差圧計、絶対圧計などで構成されており、図3に示す配管及びバルブで連結されている。

図3 圧力区分の校正装置(定容リーク量装計)

蓄圧タンクは、校正する気体を指定された圧力に充填するタンクであり、メインチャンバは被校正器(標準リーク)を通過した流体が流入するチャンバ、およびリファレンスチャンバはメインチャンバとの間の差圧を計測する際の参照チャンバとなる。容積測定用チャンバは、メインチャンバやリファレンスチャンバの内容積を測定するためのタンクで、内部は体積が既知の金属球を出し入れできる構造となっている。メインチャンバ、リファレンスチャンバ、高精度差圧計、標準リークは測定中に温度の影響を受けないように、ペルチェ素子駆動温度槽/インキュベータ(恒温槽)内に入れ、槽内の温度ばらつきの影響を受けないよう微風のファンにて攪拌して安定した温度に保つようにしており、そのばらつきは10mK程度に抑えている。リーク量が少ないとメインチャンバの圧力上昇がゆっくりの為、測定時での温度変化は測定に大きな影響を及ぼし、不確かさを悪くする大きな要因の一つであり、当社においても大変苦心したところである。
高精度差圧計はキャパシタンス式ダイアフラム差圧計を用いている。圧力が加わるとダイアフラムが高圧側から低圧側に膨らむことで差圧測定をする。メインチャンバに流体が流れ込み圧力が上昇すると差圧計のダイアフラムが膨らみ、この分の容積が増加する。逆にリファレンスチャンバはこの分の容積が減少する。この現象は差圧1Paあたりの容積変化を係数で表す事ができ、発生した差圧により容積変化量が計算できる。校正装置に用いている高精度差圧計は1×10-4mL/Paの係数を持っている。
校正は、指定の気体種を指定の上流圧力で蓄圧タンクに充填し、メインチャンバとリファレンスチャンバ間の隔離弁を閉じたのち、蓄圧タンクより標準リークへ気体を流す。標準リークを通過した気体は既知の一定容積のメインチャンバ内に流れ込むことにより、メインチャンバ内の圧力が上昇する。単位時間内のこの圧力上昇値を計測することで、流体の流入量 つまりリーク量が測定出来る。
メインチャンバの容積をV、圧力上昇値を⊿P、流入時間を⊿tとすると 、リーク量Qは次式で表せる。

(1) 式で高精度差圧計の係数(センサ係数)や温度の影響、メインチャンバの容積、リファレンスチャンバの容積などの考慮をすると、

とあらわされる。

このQが校正値となる。

4.3 校正装置/流量・流速区分

流量・流速区分の気体用流量計(キャピラリー式流量計)の校正は、図4に示す装置の構成となっている。上位標準より校正した膜式流量計を参照標準として、キャピラリー式流量計の校正を行っている。

図4 流量・流速区分の校正装置
図4 流量・流速区分の校正装置

乾燥空気を上流側の圧力コントローラーを通して、DUT(キャピラリー式流量計)の上流側に指定圧力を加え流量を流す。キャピラリー式流量計は先述の通り流量値の表示が無く、流量値に相当する出力信号もない為、校正値は参照標準の流量計が示す流量値となる。

5. 不確かさ

誤差はなじみの表現と思う。JIS Z 8103 :2019計測用語では、「誤差は測定値から真値を引いた値」と定義されている。真の値は本来知ることができない。そこで不確かさの考えが校正において取り入れられている。測定結果の値には、ばらつきやかたよりが付いてくる。これが不確かさである。不確かさは、JIS Z 8103 :2019計測用語では、「測定値に付随する、合理的に測定対象量に合理的に結び付けられ得る値の広がりを特徴づけるパラメータ」と定義されている。なお不確かさは測定結果の値に付けられるもので測定器に付けられるものではない。

5.1 圧力区分の不確かさ

リーク量の校正値は(2)式で求められる。求められたパラメータにはそれぞれ不確かさがあり、それぞれ合成される。リーク量の不確かさの要因としては

があり、それぞれの標準器の不確かさや測定のばらつき、偏りなどが算出され、(3)式から(10)式の合成不確かさが求められる。
校正証明書には(2)式で求めた校正値とその値の不確かさが示される。

5.2 流量・流速区分の不確かさ

気体流量の校正値は、流量の値を示す表示や出力が無い事から、標準器の測定値が校正値となる。
従って不確かさの要因は、標準器の不確かさ、圧力の不確かさ、温度による不確かさになる。

があり、圧力区分同様に標準器の不確かさや測定のばらつき、偏りなどが算出され、合成不確かさが求められる。

6. おわりに

カーボンニュートラルが叫ばれる昨今、化石燃料を減らし自然エネルギーや水素エネルギーを用いるなどの変革が起きている。また自動車では電気自動車や燃料電池車の開発が進み製品化が始まっている。更に各種センサを搭載し安全機能を持たせた、あるいは自動運転を目指した自動車などが世に出始めている。これらに使われる部品や製品は、漏れの検査がますます重要になってきている。水素の漏れやセンサの防水性、電子部品の信頼性を上げる為の気密性など漏れ試験は様々にある。測定媒体にはエアーや水素、ヘリウムを用いるなどあり、それらは測定対象の特性や漏れ量の大きさにより異なる。
当社は1×10-6Pa・m³/sから200mL/min.の校正範囲においてJCSS校正の実施ができる登録事業者であり、校正を通して、漏れの信頼性を上げることに貢献できると確信している。今後顧客の要望に応え、校正能力の更なる向上に努めていきたい。



参考、引用文献

  1. JIS Z 8103:2019計測用語
  2. JIS Z 2300:2020非破壊試験用語
  3. JCSS種類⁻40:計量器等の種類を定める規定
    独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センター
  4. JCT20810:第23版 JCSS 技術的要求事項適用指針(流量・流速/気体流量計)
    独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センター
  5. JCT20503:第4版 JCSS 技術的要求事項適用指針(圧力/リーク計)
    独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センター
  6. Arai K and Yoshida H Metrologia 51 (2014) 522-527


【著者紹介】
中澤 茂夫(なかざわ しげお)
株式会社フクダ 取締役 営業部・海外営業部 部長

■略歴
1982年 株式会社長野計器製作所(現長野計器株式会社) 入社
2015年 株式会社フクダ 入社
2017年 同社 取締役 開発部 部長
2020年 現職