アーカイブ

オンキヨー、特許出願の発明「聴診器及び聴診システム」公開

オンキヨー(株)は、特許出願した発明「聴診器及び聴診システム」が、2023年2月2日に公開されたと発表した。

同社は、オンライン診療の需要に備え、家庭でも簡単に使用できる聴診器を目指し、聴診器の開発を開始した。聴診器には、アナログ聴診器とデジタル聴診器があるが、アナログ聴診器は、医師が対面で患者の心音等の聴診音を聴くためのものであり、オンライン診療には適していない。そのため、同社は、聴診音の録音が可能であり、録音した聴診音を遠隔の医師に送信すれば、遠隔の医師でも聴診音を確認すること可能である、オンライン診療に適したデジタル聴診器の開発を進めている。

公開された当社発明「聴診器及び聴診システム」(出願番号:特願2021-120549、公開番号:特開2023-016317)は、複数のセンサを採用し、複数のセンサの配置を工夫することで、安定した聴診音の採取を可能とする発明である。この発明は、同時に複数の音を取得できるので、各部位のタイミング・心音の血流の確認など、これまでの聴診器を超えた活用方法を提案している。

同社は、Onkyo ブランドの音響機器の開発において長年培ってきた音に関する技術・ノウハウをデジタル聴診器の開発にも展開している。例えば、アナログ回路技術、高周波技術、及びノイズ抑制技術は、デジタル聴診器における、超高感度低ノイズ回路に活かされている。スピーカー等で使われるアコースティック技術、振動解析技術、及び音響解析技術は、デジタル聴診器の筐体設計に活かされている。ソフトウェア処理技術、イコライザ技術、及び信号処理技術は、デジタル聴診器の測定対象物(例えば、心臓、腸、肺等)に応じた最適なフィルタ処理を行う技術に活かされている。

デジタル聴診器の開発には、専門的な知見が必須であるため、同社は、産学連携により、大学と共同で開発を行うことで、専門家の意見を取り入れたよりよいデジタル聴診器の開発を目指している。
現在、同社では、デジタル聴診器で聴診音を取得し、取得した聴診音データをクラウドに蓄積し、蓄積した聴診音データをAI を活用して解析するシステムを開発中。このシステムにより、より的確な診療を実現することが可能となるとしている。

ニュースリリースサイト(onkyo):https://onkyo.net/2023/02/17/stethoscope/

生産性向上と品質安定化に貢献 新型ロボットコントローラー「G4コントローラー」

品名:アーク溶接用ロボットコントローラー
品番:YA-2JAシリーズ(G4タイプ)、YA-2KAシリーズ(WG4タイプ)
溶接法:CO2/MAG/ ステンレスMIG/ パルスMAG/ ステンレスパルスMIG
希望小売価格:オープン価格
発売日:2023年2月16日
月間生産台数:2,200台

パナソニック コネクト(株)は、溶接電源融合型ロボット「TAWERS(The Arc Welding Robot System)」の次世代コントローラー「G4コントローラー」を2023年2月16日より発売する。国内仕様を皮切りに海外規格に対応した機種展開を予定している。

昨今、溶接の現場では、顧客より、タクトタイム向上やラインストップの低減による生産性の向上、IoT、AI、各種センサを活用した品質の安定化が求められている。そこで、同社は、溶接電源融合型ロボット「TAWERS」のコンセプトと高い溶接性能/使いやすさを継承し、ハードウェア・ソフトウェアの大幅な性能向上を図った。まず、加減速制御の改善により各軸の最高速度が現行機種と比べ最大27%向上。特に、基本3軸の高速化によって空走タクトタイム短縮に貢献する。また、スパッタ抑制制御技術であるMTS制御(Metal Transfer Stabilization Control)が更に進化、スパッタ量が最大6割減少した。加えて、オープンなインターフェース仕様であるOPC UA[*1]及びOPC UA for Robotics[*2]に対応。上位システム、周辺機器との接続が可能になりフロアレベルでの生産性・品質向上に貢献する。

同社は、世界トップクラスの先進的技術、繋がる設備とソフトウェア、モノづくりノウハウで、お客様の「現場」のイノベーションに貢献するとしている。

[*1] OPC Unified Architectureの略で、産業用アプリケーションの相互運用を実現するオープンなインターフェース仕様
[*2] 産業用ロボット向けの業界標準規格

特長
1. 加減速制御の改善による各軸の最高速度向上
2. スパッタ抑制制御技術の進化による更なるスパッタ量低減
3. オープンなインターフェース仕様であるOPC UA及びOPC UA for Roboticsに対応

ニュースリリースサイト(panasonic):https://news.panasonic.com/jp/press/jn230216-2

バス用子ども置き去り検知システム「LiDAS™」の実証実験を開始

三洋貿易(株)は自動車向けセンサで高い世界シェアを誇るIEE S.A(以下「IEE」)が開発した、バス用子ども置き去り検知システム 「LiDAS™(ライダス)」の日本市場での実運用に向けた実証実験を佛教教育学園 佛教大学附属幼稚園ならびに東山幼稚園で開始した。

LiDAS™は、2020年より量産を開始し、米国のスクールバスに搭載されているバス用子ども置き去り検知システム。ミリ波レーダーを使用することで、眠っている新生児の呼吸によるわずかな胸の動きを検知できる高い精度と、毛布やシートの下に隠れた子どもも検知可能な透過性が特徴である。温度や音、振動などの外部環境の影響を受けにくく、誤検知が限りなく少ない信頼性の高いシステム。
LiDAS™は、搭載されたバスのエンジンがオフになると約5分後に作動し、車内のスキャンを開始する。車内に取り残された乗員を検知すると、車両ホーンの警報音とSMS通知で運転手や運行責任者へ異常を知らせる。

今回の実証実験では、2022年12月に国が定めた安全装置のガイドライン※1で規定されている置き去り検知時の車内確認完了ボタンの設置場所の調整と、バスのタイプごとに適したセンサ取り付け位置および通信環境対応の最終的な確認を行い、2023年3月より、日本市場に製品の提供を開始するとのこと。

【実証実験概要】
<対象施設|車両|実証期間>
1.学校法人 佛教教育学園 佛教大学付属幼稚園
 設置車両:幼稚園バス1台(マイクロバスタイプ)
 実証期間:2023年1月27日~約1カ月

2.学校法人 佛教教育学園 東山幼稚園
 設置車両:幼稚園バス1台(バンタイプ)
 実証期間:2023年2月15日~約1カ月

■LiDAS™について
LiDAS™は、IEEが開発した、世界初のミリ波レーダーによるバス用置き去り検知システム。既存の車両への後付けが可能で、2020年より米国でスクールバスへの搭載が開始されている。日本国内では、2023年3月より実運用での搭載を開始する。

【製品概要(センサ部のみ)】
・サイズ:75×45×19mm
・質量  :45g
・周波数:24GHz帯

 LiDAS™製品サイトURL:
  https://www.sanyo-trading.co.jp/business/sangyou/iee/lidas/

※1. 送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン
  https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000433.html

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000080925.html

フロー式イムノセンサ-環境汚染物質ダイオキシン類及び炎症反応物 CRPの測定(2)

立石 典生(たていし のりお)
(株)シーズテック 京都バイオ研究所
所長代理
立石 典生

3.2 サンドイッチ方法

 サンドイッチ方法は測定対象となる抗原(検体)に対して抗体認識部位(エピトープ)が異なる2種類の特異抗体で挟み(サンドイッチ)、一方の特異抗体を蛍光標識2次抗体と反応して蛍光標識することにより蛍光量を測定する。高分子量抗原に対してエピトープの異なる2種の特異抗体で捕捉・検出することで特異性が高く感度も高い。
 フロー式イムノセンサを用いてサンドイッチ方法を適用する場合、例えば、測定対象となる生体内炎症反応物質CRP(分子量105,000)について、その化合物における別々のエピトープを認識し、互いの結合が拮抗しない2種類の特異抗体を抗CRP抗体Aと抗CRP抗体Bとする。測定は図4 (a) に示すように、抗原CRP、抗CRP抗体A及び蛍光標識2次抗体を混合すると、抗CRP抗体Aと蛍光標識2次抗体が反応して蛍光標識抗CRP抗体Aが生成し、抗原未反応蛍光標識抗CRP抗体Aと抗原CRP・蛍光標識抗CRP抗体A複合体が平衡して共存する。
 この溶液をセルへ送液すると、セル内にはあらかじめ抗CRP抗体B・BSAを固定化したビーズを充填してあるために、抗原CRP・蛍光標識抗CRP抗体A複合体と抗体Bが反応してビーズに捕捉される。未反応の蛍光標識抗CRP抗体Aを洗い流すと、セル内ビーズ表面に捕捉された抗原CRP・蛍光標識抗CRP抗体A・抗CRP抗体B複合体の蛍光標識に適した励起波長の照射による蛍光波長を計測することにより抗原CRP・蛍光標識抗CRP抗体A複合体の蛍光量を定量する7)
 図4 (b) のセンサグラムに示すように、CRPを含まないB0は、蛍光標識抗CRP抗体Aがセル内ビーズ表面に捕捉されないためにバックグラウンドとして取り扱い、抗原CRPを含む試料と蛍光標識抗CRP抗体Aを混合した測定溶液を送液した場合は、抗原CRP・蛍光標識抗CRP抗体A複合体としてセル内ビーズ表面に固定化された抗CRP抗体Bに捕捉されるため、その蛍光量測定に応じて抗原CRPを定量する。
 この方法は、抗原に対する2種類の異なるエピトープに反応する抗体があれば、毒性が高く取り扱いに制限のある対象物質の測定に適用できる。また、抗原に対する2種類の抗体の親和性の差が感度等に影響する。

図4 フロー式イムノセンサを用いたサンドイッチ方法―CRPの測定原理とセンサグラム
図4 フロー式イムノセンサを用いたサンドイッチ方法―CRPの測定原理とセンサグラム

3.3 適用拡大のための取組

 フロー式イムノセンサは、抗原・抗体反応を利用した測定装置であるため、特異抗体を作製・入手することで、分子量数百の化合物から数万のたんぱく質まで様々な対象物の測定に適用できる。これまでに環境分野における排出ガス、ばいじん、燃え殻、排水などのダイオキシン類の測定、絶縁油のポリ塩化ビフェニル(PCB)の測定、などの簡易測定を実現した。
 これらは環境省による簡易定量法マニュアルに公定法化されている。絶縁油の微量PCBの簡易定量として求められる要件は、真値と測定値の差が±20%以内(正確性)、繰り返し測定の変動係数が15%未満(繰り返し性)及び検出下限値が0.15mg/kg 以下(測定感度)という3つの基準をクリアする必要があった。繰り返し性については自動化したフロー式イムノセンサを用いることにより高い繰り返し性を実現し、測定感度については測定系に供する試料量を増大することにより達成した。
 ただし、測定系に供する試料量を増大することは、測定対象物であるPCB以外の妨害物質の影響により正確性に影響がある。したがって、PCB測定用の自動前処理装置を開発し、絶縁油の妨害物質を除去する精製操作により妨害物質による測定系への影響を低減することで、真値である機器分析値との高い相関性を達成して、定量化への認可を実現した。一方、環境水のダイオキシン類の測定に関しては、濃度が極めて低いために、3リッターの水試料について、抽出、濃縮、精製などの前処理を施した試料をフロー式イムノセンサで測定する方法を確立した。本測定方法は近くISO規格として発行される予定である。
 新たな測定対象の測定系を構築する上で、繰り返し性についてはフロー式イムノセンサ等の自動化装置に適用できる安定性の高い抗体が求められ、正確性は抗原・抗体反応に利用する抗体の特異性の高いことや高感度には抗原に対する親和性の高いことが必要である。それとともに、実試料の多検体を同時測定すること、並びに、フッ素化合物などの測定へ適用拡大することも重要課題である。
 一方、生体内炎症物質CRPの測定で示したように、病気診断に関係する物質測定、ウイルス、病原体、毒性物質等の測定への拡大が見込まれる。

4.小型化イムノセンサの開発

 フロー式イムノセンサは、操作が簡便であるだけでなく、データ解析は抗体の反応性の割合だけで、短時間で測定結果が得られるので、測定に不慣れな人でも使用できる。例えば、PCB測定では、産業廃棄物処理施設やオイルリサイクル施設等のPCB測定を必要とする現場での利用が多い。つまり、測定については可能な限りオンサイトで短時間(リアルタイム)で結果が得られることが求められる。

図5 小型化イムノセンサ図5 小型化イムノセンサ

 そこで、フロー式イムノセンサの外寸;W:470mm×D:300mm×H:510mm、重量;約27kgのサイズと重量を1/3に縮小した小型可搬型イムノセンサを近々発売する(図5)。この小型化イムノセは送液をエアー系でかつ送液の切り替えにバルブレス(現在特許申請中)を採用したことにより、多検体測定によるクロスコンタミネーションの軽減あるいは消耗品費の削減を可能にする。
 この小型可搬型イムノセンサはいつでもどこでも測定でき、しかも、リアルタイムに結果が得られることから、緊急度の高い測定の現場での活用が期待できる。この測定装置を活かして、さらなる測定分野への適用拡大を図るためには新規対象物質等に対する特異抗体の作製・入手が急務となる。

謝辞
岡山理科大学の藤谷 登 教授、畑 明寿 准教授にはCRPの測定に関して、また神戸大学の大川秀郎 名誉教授には原稿執筆に関して、有益なご助言を賜りました。厚くお礼申し上げます。


(株)シーズテック 京都バイオ研究所 ホームページURL:
https://seedstec.co.jp/seedstec/kyotobio/index.html



参考文献

  1. Tomoko Kubota, Norio Tateishi, Hideki Toita, Nobutoshi Kanaki, Akihisa Hata, Noboru Fujitani, “Development of a canine blood C-reactive protein-measuring device using a flow-type immunosensor,” Analytical Sciences, 38 (10), 1269-1276 (2022)


【著者紹介】
立石 典生(たていし のりお)
株式会社シーズテック 京都バイオ研究所 所長代理

■略歴
2003年 京都電子工業株式会社 入社
2004年 愛媛大学農学部環境分析化学(京都電子)講座 助手兼任(2007年3月まで)
2017年 株式会社シーズテック 入社(~現在に至る)

ネイチャーポジティブ実現に向けたバイオロギングによるソリューション開発(2)

野田 琢嗣
Biologging Solutions Inc.
京都R&Dセンター
野田 琢嗣
小泉 拓也
Biologging Solutions Inc.
京都R&Dセンター
小泉 拓也

2.太陽電池搭載型・LTE-M通信GPSロガー

 近年、野生生物と人間社会の軋轢が問題となっており、獣害もその一つである。例えば、カワウやシカ、サル、イノシシなどによる農作物の被害が挙げられる。その対策として電気柵や駆除などもあるが、人間による対策は労力的・金銭的にも限度があり、効果的な実施のためにも、それぞれの地区において野生生物の基礎的な移動生態を把握することが不可欠である。さらに、これらの野生生物は、生態系の中で様々な餌資源や環境を利用していることから、野生生物の移動データから、生物目線で生態系を可視化することも可能である(Kays et al. 2015)
 陸域での野生生物の移動はGPSロガーを取り付ければ容易に把握することができる。国内では、これまでにビーコンを頼りに野生生物に近づいた時に、ロガーに記録されたGPSデータを遠隔ダウンロードできる機器が主に利用されていたが、急峻な山など調査困難な場所で発見されることもあり、データダウンロードが困難という問題があった。そこで、新たに、近年IoT向けに利用できるようになった、LTE-M通信を用いたGPSロガー(LoggLaw G2)(図3)を開発した。本ロガーは太陽電池も搭載していることから、電池がなくなっても、太陽光で充電されれば再びGPS計測とデータ送信を行うことができ、半永続的な利用が可能である。実際に、本ロガーは、例えば、カワウやシカなどの移動追跡に用いられているところである(図4)。

図3:LoggLaw G2
図3:LoggLaw G2
図4:シカに装着した首輪タイプ
図4:シカに装着した首輪タイプ

3.データ解析基盤

 本稿では紹介しきれなかったロガーとして、回遊魚の移動追跡を行うことができるロガーがある。水中ではGPSが利用できないため、別手段で位置を推定する必要がある。そこで用いられているのが、照度や深度、加速度などのセンサである。しかしながら、解析の実施には、最先端の知識や、プログラミング能力が必要であることかボトルネックとなっていた。そこで、誰もが簡単に結果を得られることができるシステムとして、クラウド上で、データを表示し、クリックにて解析可能なシステム(LoggLaw Cloud)(図5)を開発した。

図5:LoggLaw Cloud
図5:LoggLaw Cloud

 また国際的には世界中で取得されたバイオロギングのデータをアーカイブするデータベースとして、ドイツのマックス・プランク研究所が主導するMovebank(https://www.movebank.org/cms/movebank-main)がある。ここには、既に35億点の位置データが格納され、事実上のスタンダートとなっている。しかし、このデータベースには、国内からはわずか0.4%しかデータが登録されておらず、その理由としては明確ではないが、海外のデータベースにデータを格納することの不信感やセキュリティの問題などが考えられる。そこで、主に日本国内向けに、国内のバイオロギング研究者有志らを中心に、「令和3ー4年度 文科省・海洋生物ビッグデータ活用技術高度化事業」に採択(代表:東京大学・佐藤克文 教授)されたことを受け、新たにバイオロギングのデータを蓄積可能なデータベース(Biologging intelligent Platform) (https://www.bip-earth.com/)が開発されている(図6)。Biologging Solutions Inc.は本システムの開発・運用を行っている。ここには、フォーマットが異なる様々なバイオロギングのデータセットを統一的に解析できるようにするために、データを標準化して格納する世界初のシステムを搭載している。本システムにデータが蓄積されることで、生物多様性の可視化や、生物目線で重要な環境(ホットスポット)の解明に繋がることが期待されている。

図6:BiPの画面
図6:BiPの画面


Biologging Solutions Inc.ホームページURL:https://biologging-solutions.com/



引用文献

  • Kays, R., Crofoot, M. C., Jetz, W., & Wikelski, M. (2015). Terrestrial animal tracking as an eye on life and planet. Science, 348(6240), aaa2478.


【著者紹介】

野田 琢嗣(のだ たくじ)
Biologging Solutions Inc. 京都R&Dセンター 最高技術責任者

■略歴
バイオロギング測器を開発するBiologging Solutions Inc.の共同設立者・最高技術責任者。岐阜県出身。2008年3月京都大学農学部卒業。2012年9月京都大学大学院情報学研究科、博士後期課程を修了。日本学術振興会特別研究員(DC及びPD)を経て、現職。博士(情報学)

小泉 拓也(こいずみ たくや)
Biologging Solutions Inc. 京都R&Dセンター 代表取締役

■略歴
経歴:バイオロギング測器を開発するBiologging Solutions Inc.の共同設立者・代表取締役。愛媛県出身。2006年3月トランスパシフィックハワイカレッジ卒業。2008年3月カリフォルニア大学サンタクルーズ校 環境学部卒業。2011年3月京都大学大学院情報学研究科 修士課程を修了。

次世代映像技術「空中映像・空中ディスプレイ」の開発(2)

前田 有希(まえだ ゆうき)
(株)パリティ・イノベーションズ
取締役研究開発部長
前田 有希

3.パリティミラーの非接触空中スイッチ・空中タッチディスプレイへの応用

 空中映像と各種非接触センサを組み合わせることにより,空中映像を触って操作する非接触空中スイッチが実現できる.エンターテイメント性に優れるだけでなく,実物体への指の接触がなくなるためウィルス等の接触感染対策として有効であると考えられる.空中映像を用いた非接触空中スイッチでは,操作者の指などが空中映像に触れているかどうかの判定を非接触で行う必要があり,比較的簡単な実現方法として距離センサの使用が考えられる.一例として,図7に示すように赤外線距離センサにより空中映像表示位置付近に物体が存在するかどうかを検出することで,非接触でOn/Off切り替え操作が可能な空中スイッチを実現できる.図7(b)の例ではパリティミラーを平置きにすることで空中映像が下から浮かび上がるように配置しており、図7(c)の例ではパリティミラーを縦置きにすることで空中映像が側壁から飛び出て見えるようにしている.このように、パリティミラーの配置方向を変えるだけで、スイッチの使われ方に応じて空中映像の表示位置に変化をつけることができる。

(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)

図7 空中スイッチ.
(a)1ボタンタイプの側面断面模式図.(b) 1ボタンタイプの写真.(c)複数ボタンタイプを操作している様子.

 指の座標情報をカメラやジェスチャーセンサなどで取得することにより複雑な操作も可能となる.このタイプのシステムは空中タッチディスプレイと呼ぶことができる.300mm角のパリティミラーと赤外線ジェスチャーセンサと用いた空中タッチディスプレイのシステム概略図とデモ機操作の様子を図8に示す.

(a)
(a)
(b)
(b)

図8 空中タッチディスプレイ.(a)システム概略図.(b)非接触操作をしている様子

 図8の例ではタンポポが空中映像として表示されており,空中浮遊感を強く与えるためにタンポポ以外の背景を黒にしている.また,空中映像に触れたかどうかを操作者に伝えるため,指がタンポポの綿毛を表示している位置に来たとき,タンポポが揺れて綿毛が飛ぶと同時に効果音が流れる.単に空中映像を表示するのに比べて臨場感を強く感じることができ.視覚と聴覚によるフィードバックにより,空中映像に触って操作しているという感覚を強めることができる.一方,従来のタッチディスプレイでは操作面である液晶パネルより奥に指が突き抜けることはないが,空中ディスプレイでは指が操作面である空中映像結像位置を突き抜けてしまうため,上記のフィードバックを与えたとしても慣れるまでは思い通りの操作が難しい傾向にある.如何にしてユーザビリティを向上させるかが今後の課題である.

4.おわりに

 本稿では,空中映像表示のコア技術であるパリティミラーと,パリティミラーを用いた非接触空中スイッチの応用例について述べた.本稿執筆時点では新型コロナウィルス感染症の流行もいまだ収まらず,非接触空中スイッチに対する期待はこれまで以上に高まっている.将来的にも同様の感染症が流行する可能性があり,スイッチ類に直接触れることに対して人々の抵抗感が生まれる状況においては,空中スイッチは有効な解決策の一つとなりうる.今後の市場での普及に向け,空中映像と親和性の高いコンテンツの探索,より自然に操作ができるタッチ判定の手法や操作者へのフィードバック方法の開発が求められる.

株式会社パリティ・イノベーションズ ホームページURL:https://piq.co.jp/index.html



【著者紹介】
前田 有希(まえだ ゆうき)
(株)パリティ・イノベーションズ 取締役研究開発部長

■略歴
2015年3月 大阪市立大学大学院 工学研究科 後期博士課程 電子情報系専攻修了
2015年4月 株式会社パリティ・イノベーションズ 入社
パリティミラーを用いた空中映像表示技術の研究開発に従事。
一般社団法人 日本光学会 情報フォトニクス研究グループ所属(産学官連携担当幹事)

伸縮導電伝送路とMEMSを利用した障害検知(2)

古田 兼三(ふるた けんぞう)
TSTジャパン(株)
代表取締役
古田 兼三

4. 橋梁点検へのシート型IoTセンサ利用

橋梁には様々な点検項目がある。その中で“たわみ量“と”亀裂“のモニタリング7)について考察する。

橋梁長:3m、たわみ量:1/300での各寸法
橋梁長:3m、たわみ量:1/300での各寸法

3mの橋梁で、たわみ許容量を1/300と仮定した。その際の数値は以下となる。
  δ(たわみ長): 3000mm x 1/300 = 10mm
  Θ :0.382°
  Δ(橋梁半分長の伸び): 33μm
Θ、Δとも非常に小さな値である。橋梁のモニタリングで予防保全を行うには、各数値の1/10程度の分解能のセンシング能力は必要と考える。

【加速度センサ】
様々の振動がある中で、微小なΘ角度を検知するには、以下の対応が必要。
・温度、ドリフト補正 → 補正機能つきMEMS加速度センサの採用
・外来振動の除去 → 帯域幅の最適化
さらにシート内にある複数センサの比較を行い、追加補正を行う。またセンサシートと橋梁との取付(接合)も重要な要素になってくる。

【伸縮センサ】
評価した伸縮伝送路長は10cmである。橋梁に取り付ける伸長センサの長さを1mと仮定した場合、単純な抵抗値変化量より、橋梁たわみ量を検知することは難しいことがわかる。橋梁で発生するひび割れ検知とひび割れ幅拡大をモニタするには、最低1mmの分解能は必要と考える。以下の要因ごとに試作と評価を繰り返し、精度向上を図っていく。

・異なる材質(導電材、ゴム、基盤など)
・異なる伝送路設計(線幅、線厚み)
・周波数特性(表皮効果での影響)
・伸縮伝送路と汎用伝送路(伸縮しない)を組みわせることで、特定エリアで精度向上


以下は、シート型センサを橋梁に設置し、既存の点検との組み合わせ例である。

橋梁の点検およびモニタリング、シート型IoTデバイスの設置例
橋梁の点検およびモニタリング、シート型IoTデバイスの設置例

5. 今後の予定

2025年に現場での実証実験を目指している。それまで以下のステップで進める計画である。
ステップ1
・ MEMSセンサ+伸縮伝送路(I2C通信)+制御部+LPWA無線を仮シート実装
・ MEMS加速度センサの各補正調整
ステップ2
・ 伸縮伝送路の改善→伸縮検知の分解能と精度向上
ステップ3
・ 各センサ間での補正および冗長性向上
ステップ4
・ 各点のデータから面データの作成
・ エッジAI機能踏査
ステップ5
・ 実証実験
・ 環境試験、耐久性試験

6. TST Sietemas社とTSTジャパンについて

TST Sietemasは、スペインSantanderで2007年創業し、欧州を中心にICT,IoTシステム・デバイス開発を行っている。TSTジャパンは2020年8月に大阪で設立し、日本市場向けの製品を日本企業および本社と連携して、製品開発を行っている。スペイン、日本とも、同じ高齢化問題、社会インフラ、自然災害などの共通課題がある。これらの課題を解決する商品開発を行っている。

TSTジャパン(株)ホームページURL:
https://www.tst-jpn.com/wordpress/



参考文献

  1. たわみ影響線及びたわみ曲線の変化率を利用した橋梁劣化箇所同定,
    市川辰旺,宮濱晃一,佐々木謙二,出水 享, 古賀掲維,島﨑航平,石井 抱,松田 浩
    実験力学 Vol.21, No.2


【著者紹介】
古田 兼三(ふるた けんぞう)
TSTジャパン(株) 代表取締役

■略歴
1982.3 同志社大学工学部電気工学科卒
1982.4 株式会社SCREENホールディングス(旧大日本スクリーン製造株式会社)入社
イギリス・ドイツ現地法人勤務
1999TUV Product Service Japan入社 EMC技術者
2004太陽誘電株式会社入社 EMCセンター、BQTF(Bluetooth認証ラボ)運用
BLE〈Bluetooth Low Energy〉規格策定などに従事
2011Southco(アメリカの機械部品メーカー)入社。 日本の現地法人立上
2014積水マテリアルソリューション株式会社入社。 IoT商品開発および普及・教育
2020.3 積水マテリアルソリューション株式会社を定年退職
2020.8 TST Sistemas,S.Aの日本現地法人設立。代表取締役就任。

IoEプラットフォーム「Ecogenie+」で高圧スマートメーター Bルートの利用が可能

NextDrive(株)は、IoEプラットフォーム「Ecogenie+」にて高圧スマートメーター Bルートの利用が可能になったことを発表した。
この度、高圧設備における初の事例として、シーキューブ(株)の三重支店にて、受電電力、太陽光発電量、EV(電気自動車)充放電器を統合管理するエネルギー管理システムとして導入された。

■市場を取り巻く環境 昨今、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みとして、企業の自家消費型太陽光や蓄電池、EVの導入が広がり、エネルギー設備の統合管理の必要性が高まっている。
しかしながら、高圧、低圧設備を同一の仕組みで、低コストかつ簡便に構築することが困難だった。

NextDriveのIoEプラットフォームは、その特徴である設置・設定の容易さ、幅広い機器との接続性を活かし、素早く手軽にエネルギーデータの収集、可視化、制御が可能となった。
今回、Attoが高圧スマートメーターとの接続でECHONET LiteのAIF認証を取得したことで、低圧から高圧まで、ワンストップに接続・管理・制御を実現する。
Attoと高圧スマートメーターを直接接続し、スマートフォンアプリを利用して設定が可能。
特別な機器やソフトは不要、数分で高圧メーターからのデータ取得が可能。

■シーキューブ(株)への導入設備
◎太陽光発電パネル
◎ソーラーパワーコンディショナ
オムロン ソーシアルソリューションズ(株)
完全自家消費型太陽光発電システム用
KPW-A55-2PJ4/KPW-A55-2J4
◎高圧スマートメーター
中部電力パワーグリッド
◎電気自動車充放電器
椿本チエイン
eLINK TPS10-A

■IoEゲートウェイ「Atto」
洗練されたデザインと安定したネットワーク通信が特徴で、4G LTEのSIMを内蔵し、Wi-Fiが届かない環境下でもネットワーク通信に対応する。センサなどのデバイスと併用すると、スマートフォンで気軽に電力可視化と家電の遠隔操作などが可能となる。
「エコーネットコンソーシアム」が制定した、国際通信プロトコルECHONET LiteのAIF認証(Application InterFace認証)を取得済。
また、Modbus RTU通信とModbus TCP/IP通信を標準サポートし、同プロトコルに対応している機器であれば、短期間でIoEプラットフォームを通じた利用ができるようになる。
RS-485やEthernetを介してIoEプラットフォームのエンドツーエンドのサービスを利用でき、モバイルアプリを通じて手軽にセットアップ、Web APIを利用したデータ取得が可能。
優れたデザインに贈られるグッドデザイン賞を受賞(2020年度)。

サイズ:122mm × 122mm × 38.6mm(壁掛けを含む)
電源:AC 100〜240V 50/60Hz
無線通信規格:Wi-Fi (802.11 a/b/g/n/ac) / Bluetooth Low Energy (BLE) 4.2 / Wi-SUN (Rohm BP35 C0) / 4G LTE
SIMカード:nano SIM内蔵

■IoEプラットフォーム「Ecogenie+」
NextDriveのIoEプラットフォームは、分散するエネルギー設備のネットワーク化を素早く、手軽に実現する。
様々な通信プロトコルをサポートし、通信の安全性も確保したエンドツーエンドのコネクティビティをPaaS(Platform as a Service)型で提供、大きなリソースを確保することなく、サービスの成長に応じた形で拡張していくことができる。
IoEプラットフォームを採用されたお客様は新規サービスの立ち上げ、エネルギーデータを活用した新たな価値創出に集中することが可能。
令和4年度の新エネ大賞で、新エネルギー財団会長賞を受賞した。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000045698.html

「Scanat」RoomPlan APIを活用した間取りスキャン機能の追加

nat(株)は、3D計測アプリ「Scanat」のアップデート版v1.0.8をリリースした。

・間取りスキャン機能の追加
今回リリースした新機能(バージョン1.0.8)では、iOS16で利用可能になる「RoomPlan」APIを使用した「間取りスキャン」機能を追加した。これまでのスキャン機能は「ノーマルスキャン」機能として存続する。
間取りスキャン機能では、部屋や会議室などを撮影するだけで、床・壁・テーブルなどの対象物を読み取り、瞬時に3D間取り図を作成する。また、スキャンと同時に撮影された写真を貼り付けることによって、単なる3D間取り図データだけではなく、3Dモデルへ処理を行うことも可能である。

新たに追加した「間取りスキャン」機能は、これまでの料金プランと変更無く利用できる。
本リリースをきっかけに、RoomPlanを活用した更なる新機能の開発を予定している。
同社は今後も業界課題の解決や、新しい「住」のサービス開発に注力するとしている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000046540.html

マッピング、資産・道路管理に最適な高精度MMS 「Trimble MX50」

(株)ニコン・トリンブルは、費用対効果の高いミドルレンジクラスのモバイルマッピングシステム(MMS)「Trimble MX50」を発売した。
Trimble MX50は、GNSS IMU、レーザー計測装置、カメラ装置をコンパクトに一体化し、従来モデルよりも軽量で可搬性に優れる。

Trimble MX50は、GNSS IMU、レーザー計測装置、カメラ装置を一体化したモバイルマッピングシステム。移動車両にシステムを搭載することで、高密度で高精度な地理座標の3次元点群が取得可能である。取得したデータに後処理ソフトウェアで計算処理を行うことで、道路周辺のあらゆる計測を行える。

レーザー取得点群数100万点/秒、最長照射距離80mと、資産管理、マッピング、道路管理に最適化されたシステム構成により、大幅な費用対効果の向上が見込める。

● 軽量で可搬性に優れ、難しい配線が不要。様々な車両に簡単に設置可能。
車両に取り付けるセンサユニットは23kgと軽量で、取り付けや付け替えの負担が軽減。また、従来機器よりも搭載条件が緩和されており、軽自動車や大型RV車のような車両から、鉄道作業台車やボードなど様々な移動体に取り付けることが可能となった。

さらに、センサーユニットと車内に設置するコントロールユニットとはケーブル一本のみで接続されており、複雑なケーブルの接続は不要で簡単に取り付け可能である。

● 初心者でも導入後すぐ計測が開始できるシンプルなオペレーション
Trimble MX50は操作が非常に簡単で、専門的な知識は必要ない。
操作用のフィールドソフトウェアはブラウザ上で動く仕組みとなっており、PCやタブレットへのアプリのインストールも不要。
計測は非常に簡単で、プロジェクトを立ち上げ、車両の情報・スキャン設定を選択し、上空が開けている場所で静止してGNSS IMUの初期化を行った後は、計測したい場所で記録ボタンを押すだけ。計測時に複雑なキャリブレーションやアライメントを行う必要がなく、非常にシンプルなオペレーションなので、業務経験の浅い方でも簡単に計測を行うことが可能。 また、計測中の車両の乗り降りやバック走行も可能で、計測中の予期せぬ道路交通事情にも柔軟に対応できる。

● データ取得から後処理までを一貫してサポートするTrimbleマッピングワークフロー
Trimble MX50で取得したデータの後処理には、電子基準点データ(※)を使って正確な走行軌跡データを解析するソフトウェア「POSPac MMS」、POSPacの解析結果を元に、取得した点群や画像データを組み合わせる点群後処理ソフトウェア「Trimble Business Center for Mobile Mapping (TBC)」をご用意。TBCでは、点群からの距離計測や簡単な図化が行える他、市販の図化用ソフトウェア用に点群データやカメラ画像の出力が可能。

※電子基準点に限らず独自でGNSS基準局を設けて利用することも可能。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000015437.html