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低消費電流、最大150°C動作の5V車載用オペアンプ「TSU111H」

ST マイクロエレクトロニクスは、5V車載用オペアンプ「TSU111H」を発表した。同製品は、低消費電流を特徴とし、最大150°Cの広範な動作が可能である。

TSU111Hは、AEC-Q100の温度グレード0(-40°C~150°C)に準拠し、ブレーキ・システム、内燃エンジンの排気系統、燃料電池のジェネレータなど、きわめて高温となる環境に対応することができる。最大動作温度が高いため、高温環境に配置されるセンサ制御ユニット(SCU)内部に使用することで、最適な測定精度を実現する。

また、125°C以下の環境では、広い動作温度範囲により、最大動作温度125°Cのグレード1デバイスと比べて3倍のミッション・プロファイルに対応可能。グレード1デバイスの無故障動作期間が8年と規定されているのに対し、グレード0デバイスとして65°Cで25年以上にわたる連続動作が可能で、自動車の寿命全体にわたって使用することができる。そのため、ハイブリッド自動車や電気自動車のバッテリ・マネージメント・システム(BMS)など、常時オンで消費電力の最小化が求められるアプリケーションに最適である。

TSU111Hの自己消費電流は1.7µA(Typ.)で、車載電源への負荷を最小限に抑えている。また、入力オフセット電圧は25°Cで250µV以下、全温度範囲で600µV以下が保証されており、幅広いアプリケーションや動作条件において高精度のシグナル・コンディショニングを実現する。オンボード・チャージャ(OBC)の高精度電流測定などで最適である。 TSU111Hは現在量産中で、SOT23-5Lパッケージで提供される。1000個購入時の単価は約1.29ドル。同製品は、車載および産業機器に対する長期的な製品供給を保証するSTの10年間の長期製品供給保証プログラムの対象製品。STのeStoreでは、無償サンプルを提供しているとのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001304.000001337.html

キヤノン、薄型・軽量と高精度を両立させた力覚センサー

キヤノンは、ロボットアームなどに搭載することで、物を動かす際の荷重や回転させる力の大きさ・方向を測定でき、人の手のような感覚を持たせることができる力覚センサーの新製品として“FH-300-20”を2023年4月中旬に発売する。

※おもな特長
●自社開発の光学式エンコーダー※1搭載による薄型・軽量化と高精度な力の測定の両立を実現

 キヤノンが長年技術を培ってきた、自社開発の光学式エンコーダーを搭載している。複数のエンコーダーを同一の電気基板上に配置することで、厚さ約20mm、質量約250gの薄型・軽量を可能にするとともに、低ノイズ化により、微小な動きも検出可能な高い能力での測定を実現する。これにより、微細な力加減を必要とするさまざまな作業を行うロボットアームなどに使用することができる。

●高速応答性を実現することで高速制御が可能

 独自のアルゴリズムにより、ロボットアームのシステムからの計測要求に約300μs※2という速さで瞬時に応答できる。そのため、高精度なロボットアームなどに求められる高速な制御に対応でき、繊細なはめ込み作業などに貢献する。

●防じん防水機構により幅広い用途に使用可能

 国際電気標準会議が定める水や異物侵入の保護等級の規格「IP65」の防じん/防滴性能を保持することができる。粉じんが内部に侵入しない「防じん性能6級」、いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない「防滴性能5級」の防水、防じん性能を実現し、さまざまな環境でも使用可能。

  ※1. モーターの軸の回転角度(位置)を検出するセンサ。
  ※2. マイクロセック。100万分の1秒。

○力覚センサーの市場動向

 生産現場では人手不足や技能伝承を効率的に継続するなどの課題に対し、さまざまな作業の自動化を進めています。しかし、微細な力加減の必要な作業は、人手に頼っています。そのような中、力覚センサーは、ロボットアームに人のような感覚を持たせることができるため、注目されています。ロボットアームだけではなく、細かい調整が必要なさまざまな機器の制御に導入されることも想定され、需要は拡大していくと見込んでいます。(キヤノン調べ)

ニュースリリースサイト:https://canon.jp/corporate/newsrelease/2023/2023-03/pr-fh-300-20

PTZカメラ一体型4眼マルチセンサーカメラを取扱い開始

パナソニック コネクト(株)は、i-PRO(株)のXシリーズネットワークカメラより21倍光学ズーム対応のPTZ(パン・チルト・ズーム)一体型4眼マルチセンサーカメラを取扱い開始する。

広い敷地を持つ物流倉庫や屋外駐車場、工場施設やショッピングモールなどの現場においては、人の目が行き届きづらく、複数台の監視カメラを設置することが求められる。

今回取扱い開始するネットワークカメラは、1台の筐体に5つのカメラユニットを搭載し、そのうち、5MP解像度のカメラユニット4つで360°の広域監視と、2MP解像度の21倍光学ズームに対応したPTZカメラユニット1つで被写体の詳細監視を両立する。これにより、1台で行き届いた監視とカメラの台数・設置工数・スペースの削減を実現する。

また、カメラにAIプロセッサーを搭載しており、AIアプリケーションを組み合わせることで人や車を検知し、効率的に自動追尾を行うことができるようになった。AIアプリケーションは最大6つ(※1)まで現場の用途に合わせてカメラにインストールでき、監視・防犯の強化や、業務効率化など様々な課題に対応する。

■主な特長
1. 360°の広域監視と被写体へのパン・チルト・ズームを両立
5MP解像度のカメラユニットを4つ搭載し360°の広域監視を実現。また、2MP(1080P)解像度の光学21倍ズームに対応したPTZカメラユニットのパン・チルト・ズームにより、被写体の詳細監視を実現する。これにより、複数台のカメラ設置が必要だった場所でのカメラの台数削減に貢献する。(※2)

2. 豊富なAIアプリケーションに対応
カメラにAIプロセッサーを搭載し、動体検知、ナンバー認識、顔検知、人物属性識別、車両属性識別、状態変化検知等の豊富なAIアプリケーションに対応。マルチセンサー部で最大4つ、PTZ部で最大2つ(合計6つ)を同時にインストールして使用できる(※3)。

3. 4つのカメラユニットで検知した対象をPTZでAI自動追尾が可能
豊富なAIアプリケーションの中から「AI動体検知アプリケーション」をインストールすると、4つのカメラユニットで検知した人や車をPTZカメラユニットが自動追尾するような連携をカメラ1台の中で完結することが可能。従来必要だったジョイスティック(※4)での追尾操作の代替として、AIが対象を認識しながら自動で追尾する。

同社は、今後もお客様現場の課題に向き合い、映像セキュリティソリューションを提供することで社会の安心・安全と変革に貢献し、多様な人々が幸せに暮らせる、持続可能な社会の実現を目指すとしている。

※1 マルチセンサー部で最大4つ、PTZ部で最大2つの合計6つに対応。
※2 筐体は、防塵防水規格“IP67/IP66”や耐衝撃保護等級”IK10”に対応。
※3 AIアプリケーションは別売のオプション。
https://connect.panasonic.com/jp-ja/products-services/security_iprobrand-software/lineup#product_types
※4 1本のレバーを動かしてカメラのパン・チルト・ズームを操作する機器。

ニュースリリースサイト(panasonic):https://news.panasonic.com/jp/topics/205072

卓越した高画質の4K動画を実現する8メガピクセル・イメージセンサ

オンセミは、革新的なイメージセンサ「AR0822」を発表した。AR0822は、セキュリティと監視、ボディカメラ、ドアベルカメラ、ロボットなど、照明条件が厳しいアプリケーションで求められる組み込み型ハイダイナミックレンジ(eHDR)および最適化された近赤外線(NIR)応答機能を搭載している。このセンサの低電力アーキテクチャおよびウェイクオンモーション機能は、システム電力を大幅に低減するという。

AR0822は、2.0μmピクセル積層構造の1/1.8インチ(対角8.81mm)8メガピクセル(MP)裏面照射型(BSI) CMOSデジタルイメージセンサ。3840 (H)×2160 (V)のアクティブピクセルアレイを備え、4K動画を60 fpsで提供することができ、ローリングシャッタ方式で画像をリニアモードまたはeHDRモード(120 dB)でキャプチャする。

最近のイメージセンサが直面する大きな課題のひとつに、制御不能な光条件下での動作要求がある。具体的には、ハイダイナミックレンジ(HDR)の場面、つまり極端に明るい部分と暗い部分を持つ画像の場合である。多くのHDR技術は、露光が異なる最大3枚の画像をイメージシグナルプロセッサ(ISP)に送信して合成する多重露光出力を使用しているが、この方法では特に解像度が高い場合は、最大3倍のシステム帯域幅と高価な部品が必要になる。AR0822ではセンサにHDR機能が組み込まれており、システム帯域幅とプロセッサ消費電力を削減しながら、動きやちらつきのある光源に対して補正する露光組み合わせによるインテリジェントな線形化を通じて、卓越した画質も提供する。

IoTアプリケーションの低電力動作およびバッテリ寿命の延長に対する期待に応えるため、AR0822はウェイクオンモーションなどの専用機能によりシステム電力を最適化する。大部分のカメラは、非アクティブ時に低電力モードで動作することで電力を節約し、動きを検出すると通常動作を再開する。これらのシステムでは一般的に、動きを検出するためにセンサとプロセッサの両方が動作する必要がある。AR0822はウェイクオンモーション機能を使用して、センサ上の動きをインテリジェントに検出できるため、センサが動きを検出してプロセッサを動作モードに復帰させるまで、プロセッサは低電力スタンバイモードに留まることができる。

AR0822は、高いNIR感度やビニング/ウィンドウイングなどの高度なカメラ機能も備えている。過酷な環境にも対応できるように設計されており、動作温度範囲は-30℃~85℃(接合部温度)。
AR0822はオンセミの正規販売代理店を通じて販売中である。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000243.000035474.html

順天堂大ほか、新原理の自己測定体液成分センサの開発

順天堂大学 医療科学部臨床工学科 六車仁志、東洋紡(株) 岩佐尚徳、産業技術総合研究所 ナノ材料部門 平塚淳典、田中丈士、清水哲夫らの共同研究グループは、単層カーボンナノチューブ(CNT) を孤立化(会合凝集状態から一分子に分離する)して酵素の活性中心に配置させることで、酵素反応によって生じる電子を直接取り出すことに成功した。それにより、単層CNTの優れた機能を活用した高感度でダイナミックレンジの広いセンサ特性が得られ、有効期限が3か月と短い既存製品の欠点を克服できる新原理の自己測定体液成分センサの開発を可能にした。今後は、血糖値やケトン体、尿酸などをより安価なセンサで自己測定できるよう、同技術の製品化を目指す。
本論文は米国電気電子学会の論文誌IEEE Sensors Journalに2023年2月1日付で公開された。

本研究成果のポイント
・単層カーボンナノチューブ孤立化の最適化を行った。
・孤立化した単層カーボンナノチューブにより酵素の中から直接電子を取り出した。
・新原理(直接電子伝達型)の自己体液成分測定センサを実現した。

※本研究はJSPS科研費19H02539, 19K05172の支援を受け実施された。

プレスリリースサイト(juntendo):https://www.juntendo.ac.jp/news/20230316-01.html

USB-IFの認証を取得した2品種のIC「STUSB140W」「ST-ONEHP」を発表

 STマイクロエレクトロニクスは、USB Power Delivery (USB PD) EPR(1)電源 / 充電器のアダプタ(ソース)側と機器(シンク)側に対応し、USB-IF(USB Implementers Forum)の認証を取得した2品種のIC「STUSB140W」(シンク)および「ST-ONEHP」(ソース)を発表した。これらの製品は、ユニバーサル・バッテリ充電器の出力を140Wまで拡大する。これにより、1個のAC-DCアダプタで、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチを含む従来の機器に加え、コンピュータ、スマート・ホーム機器用アクチュエータ、電動工具、電動自転車などを充電できるようになるという。

 USB-IFから140W(28V / 5A)出力の認証を受けた「STUSB140W」(シンク)および「ST-ONEHP」(ソース)は、USB PDリファレンス設計の機器(シンク)側とアダプタ(ソース)側に採用される。このリファレンス設計は、USB PDのシームレスな統合に向けた効率的かつコスト・パフォーマンスに優れたソリューションを提供する。また、ST-ONEHPには、USB PD 3.1 EPRファームウェアがプリロードされている。

 この新しいUSBソリューションにより、幅広い機器にUSB Type-Cコネクタが採用され、ユニバーサルAC-DCアダプタからの充電が可能になる。その結果、エンド・ユーザが所有するアダプタを減らすことで、電子廃棄物、輸送コスト、さらにはCO2排出量の削減にも貢献する。

■技術情報
 STの機器(シンク)側リファレンス設計は、STM32マイコン、アナログ・フロントエンドIC「STUSB1602」、高電圧保護デバイス、専用ソフトウェア・スタックをベースにしている。プロトコルの微調整をサポートしており、幅広いアプリケーションに対応する。

 アダプタ(ソース)側のリファレンス設計は、USB PD 3.1 EPR充電器専用に設計されたデジタル・コントローラ「ST-ONEHP」から、最大140W(28V / 5A)の出力を供給する。ST-ONEHPは、Arm® Cortex®-M0+、同期整流回路付きオフライン・プログラマブル・コントローラ、USB PD PHYを1パッケージに集積した製品。STの第3世代GaN(窒化ガリウム)パワー・トランジスタと高性能ゲート・ドライバを集積したシステム・イン・パッケージ(SiP) 「MasterGaN1」と組み合わせることで、140Wの出力と94%のピーク効率で業界最高レベルの電力密度(25W/in3)を備えたバッテリ駆動機器、生活家電、およびスマート・モビリティを実現可能である。

 ST-ONEHPは現在サンプル提供中でSSOP36リード・パッケージで提供される。1000個購入時の単価は、約3.90ドル。

(1) Universal Serial Bus(USB)Power Delivery(PD)Extended Power Range(EPR)
*USB Type-C®およびUSB-C®は、 USB Implementers Forum (USB-IF)の登録商標。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001300.000001337.html

Bluetooth Low Energy MCUファミリを車載ワイヤレスアプリケーション向けに拡張

オンセミは、Bluetooth® Low Energy接続を搭載した超低消費電力の車載用ワイヤレスマイクロコントローラを発表した。新製品のNCV-RSL15は、センサや車載通信の増加に伴い、余分なケーブル配線のコストや重量を削減するために、ワイヤレス接続への傾注が進む自動車メーカにとって理想的な製品である。この新しいマイクロコントローラは、センサ数の増加に伴う攻撃ベクトルの増加によって深刻化するセキュリティ上の懸念にも対応する。

タイヤ監視システム (TMS)やその他のセンシングアプリケーションでは、センサ数および一般的な機能が増加を続けているが、消費電力の供給量は増えていない。同時に、10年のバッテリ寿命を必要とするアプリケーションもある。NCV-RSL15は、EEMBC によって業界最小電力のセキュアなワイヤレスマイクロコントローラとして認定されており、独自のスマートセンスパワーモードを備え、可能な限り電力を消費しないように設計されている。より多くのバッテリを節約できることは製品寿命の延長に直結する。

アクセスポイント数が増えるほど、車両の中央ボディコンピュータや中央処理装置を不正な無線アクセスから保護するために、排除すべき潜在的な攻撃ベクトル数も増加する。NCV-RSL15は、ハードウェアベースのRoot of Trustセキュアブート、多くのユーザアクセス可能なハードウェアアクセラレーション暗号化アルゴリズム、および将来のファームウェアの更新とセキュリティパッチの展開を可能にするFOTA (Firmware-over-the-Air)機能を備えたArm® CryptoCellを使用して、最新の組み込みセキュリティを提供するという。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000242.000035474.html

大規模な3D環境内で自動運転アプリケーション向けのセンサやアルゴリズムを検証

 ドイツ パーダーボルン/ガルミッシュパルテンキルヘン、2023年3月14日:dSPACEとAVES Reality社は、自動運転車両の開発者が現実的なシナリオで仮想テストドライブによるセンサやアルゴリズムの検証を可能とするために、技術的パートナーシップを締結した。AVES Reality社は、dSPACEのセンサシミュレーションソリューションであるAURELION向けに、合成された環境を提供する。これにより、従来のコンテンツ提供の枠を広げることができるという。

 センサシミュレーションを用いた自動運転機能の検証を有意義なものにするためには、実在の場所や材質、セマンティクスなどを含む大規模な3次元環境モデルが必要となる。AVES Reality社は、人工知能(AI)や高度なビデオゲームテクノロジを用いて衛星画像を処理し、大規模な3Dコンテンツを生成する。生成されたコンテンツをAURELIONのカメラやレーダー、LiDARのシミュレーションで使用する。このようにして、合成された環境を用いて自動運転アルゴリズムのシミュレーションによる検証をAURELIONで実施することができる。

 dSPACEのシミュレーションソフトウェアであるAURELIONはSIL(Software-in-the-Loop)テストやHIL(Hardware-in-the-Loop)テストに加え、クラウド上で大規模な検証を行う場合など、開発プロセスのあらゆる段階を通じて利用できる。AURELIONには豊富なセンサモデルのライブラリがある。これにより、市販前の新しいセンサをシミュレーションソリューションで使用することができる。dSPACEでは、それを可能にするために、世界をリードするさまざまなセンサメーカーとの提携を進めている。AURELIONには、サードパーティ製センサモデルを統合することも可能とのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000096375.html

信頼性を求められる直流大電流センサ(2)

忠津 孝(ただつ たかし)
ロイヤルセンシング(同)
CEO
忠津 孝

オフセットの弊害

 電流センサの基本的誤差は,ノイズ誤差,ゲイン誤差,オフセット誤差に大別できる.ノイズ誤差は確率分布で現れるために平均化するとゼロになる.ただし許容される平均化時間に限界があるため,実用的にはゼロにはできない.ゲイン誤差は真値に対して一定の比率で現れる誤差であり被計測値がゼロの時は出力もゼロになる.オフセット誤差は被計測値に相関しない誤差であり被計測値がゼロでも出力はゼロにならない.したがってオフセット誤差は被計測値が小さくなると誤差率が大きくなり被計測値がゼロでは誤差率が無限大となる.電流センサのオフセット発生部は検出部分と駆動回路(電子回路)部分に大別できる.前記の着磁によるオフセットは検出部分の要素である.駆動回路については電子回路技術で様々な工夫ができて十分に小さな値にすることができる.
 直流大電流センサのこのようなオフセットは一部の用途では深刻である.例えば今後普及するであろう直流電力の売買である.移動した電力は電力量計で積算される.この際電流センサにオフセットがあると,それが積算されて長時間では大きな誤差になる.電力を全く使っていなくても徐々に積算されていくことにもなりかねない.交流電力量計では起こらない現象である.

Fig. 2Fig. 2 ゲイン誤差とオフセット誤差の性格

 また,直流電力を蓄電池に貯蔵(充電)して使用する際,電池のSOC(State Of Charge)を監視して過充電や過放電にならないように制御する必要がある.これが正しくできないと電池の種類によっては発火や爆発,あるいは破損につながる.スマホのような小さな電池でさえも発火すると危険だが,EV搭載電池や太陽光発電の充電施設のように大エネルギーを貯蔵している電池で事故が起こると大惨事になる.
 オフセットがあると,充電量の誤差がどちらかに少しずつズレていき,時々別の手段で真値を求めなければ危険である.この別の手段は所定の条件が揃わないと発揮できず,通常は稼働中には電流センサに頼るしかない.そこで,電池の容量に余裕を持たせることもできるが,これは電池の能力を十分に使っておらず利用効率が悪い.

興味ある情報

 以上述べたように直流大電流センサの信頼性向上には着磁によるオフセットという厄介な障壁があるが,近年斬新な電流センサが提案されている.それは磁気コアを磁性流体にしたものである.磁性流体には磁壁が存在せずヒステリシスがない,そして磁壁のピンニングで生じるバルクハウゼンノイズも発生しない.そのB-H特性はランジュバン関数で表され,磁気設計もしやすい.そして絶対に着磁しない.言い換えると着磁するものは磁性流体ではない.したがって磁性流体を使用すると着磁によるオフセットが発生しない.

Fig. 3Fig. 3 磁性流体のB-H特性と透磁率の模式図.
飽和磁束密度と初透磁率をそれぞれ 1 とした比率で表現.
このグラフの横軸最大値目安は数十 [kA/m]

 しかし,磁性流体の透磁率は非常に小さくて,大きくても比透磁率は精々5~8程度しかなく,従来の磁気コア材にとって代わることはできない.ところが磁性流体は液体であり,繋ぎ目なしに自由で複雑な形状の磁気コアを形成できる.この性質を生かして従来にはない動作原理を提案して,小さな透磁率を克服している.この提案はまだ広くは知られていないが,装置メーカなどが上手く使えば装置の性能向上に寄与するかもしれない.
 一例として次のような使い方がある.それは直流饋電(電車の電力)の地絡(漏電)の検出である.饋電電流はその区間に電車が走っている時には,最大で10 kAになることもあるが,その区間に電車がいない時には,漏電がなければ0 Aになるはずである.したがってこの電流を測れば地絡が検出できる.しかし従来の電流センサに10 kAも流すと,1 Aオーダを高信頼性で測ることは困難である.ところが,磁性流体を用いた電流センサは絶対に着磁ないないため,定格10 A程度のセンサを設置しておけば,これに10 kA流れても通電電流が10 A(定格)以下に戻れば正確に計測することができる.現在研究発表 1)されている試作品では定格±100 Aで5 mA以下を計測できることが示されている.これには10 kA通電の実績はないが3 kAの実績はあり,その通電後でも同じ特性であることが確認されている.

おわりに

 直流大電流の計測やスイッチングの技術は,直流発電や充電池のように一般には報じられないために,その重要性に関心を持つ人は少ないだろう.しかしこれらの技術がなければ直流電力社会は成長しない.そこで,直流大電流センサの一実情に迫ってみた.まだ気付いていなかった読者がいて,その目に触れたなら光栄である.



参考文献

  1. 電気学会研究会資料MAG-22-167


【著者紹介】
忠津 孝(ただつ たかし)
ロイヤルセンシング合同会社 CEO

■著者略歴
専門分野:磁気応用センサ
九州大学大学院総合理工学附量子プロセス理工学専攻 博士(2012年)

2002年:磁気ブリッジ方式(磁気検出方式)を提案/特許査定
2004年度:加速器用電流センサ共同研究開発(SPring-8)
2005年~:磁気ブリッジ型磁界センサの宇宙実証共同研究(JAXA)
2008年:磁性流体を用いた電流センサの提案/特許査定
2013年:磁性流体磁気ブリッジを用いた電流センサの共同研究開発(産総研 計測標準研究部門)
2014年:定励磁磁束方式電流センサの提案/特許査定
2017年:波状磁束型磁界センサの提案/特許査定
2018年:ロイヤルセンシング合同会社設立 代表に就任 現在に至る
現在は磁界センサと電流センサの新技術の研究に取り組んでいる.

脱炭素社会に貢献するHIOKIの電流センサ
HIOKI’s current sensors that contribute to a decarbonized society(2)

原野 正幸(はらの まさゆき)
日置電機(株)
アドバンスドアプリケーションエンジニア
原野 正幸

3.5 ゼロフラックス方式(ホール素子検出型)

(1) 動作原理(図6)

  • ゼロフラックス方式では、測定導体(1次側)に流れるAC電流により磁気コアで発生する磁束(Φ)を打ち消すように、帰還巻線に2次電流が流れ、2次電流による磁束(Φ’)が誘導される。
  • しかし、低周波領域では、磁束(Φ-Φ’)をキャンセルできないため、磁気回路内に残る。
  • ホール素子は、この残留磁束(Φ-Φ’)を検出し、続いて、低周波領域の磁束(Φ-Φ’)を打ち消すように、アンプ回路に帰還電流が加算される。
  • このトータルの2次電流がシャント抵抗に流れ、端子間に電圧が発生する。
  • この出力電圧は測定電流に比例する。

(2) 特徴

  • 磁気コア内の磁束を打ち消す負帰還動作のため、磁気コアのB-H特性の影響を受けず直線性に優れる
  • DCからの低周波領域ではホール素子とアンプによる動作、高周波領域では帰還巻線による動作により、広帯域化を実現
  • 自社開発の高性能ホール素子を採用しており、低ノイズ化を実現6,7)
  • 1台に3つの電流測定レンジを搭載し、低電流から大電流までの広ダイナミックレンジを実現8)
  • 各種産業機器における待機電流、突入電流、負荷電流、制御電流などの波形観測9)

(3) 用途

  • 各種産業機器における三相交流出力などの電力測定
図6 ゼロフラックス方式(ホール素子検出型)の概念図
図6 ゼロフラックス方式(ホール素子
検出型)の概念図

3.6 ゼロフラックス方式(フラックスゲート検出型)

(1) 動作原理(図7)

  • ゼロフラックス方式では、測定導体(1次側)に流れるAC電流により磁気コアで発生する磁束(Φ)を打ち消すように、帰還巻線に2次電流が流れ、2次電流による磁束(Φ’)が誘導される。
  • しかし、低周波領域では、磁束(Φ-Φ’)をキャンセルできないため、磁気回路内に残る。
  • フラックスゲートは、この残留磁束(Φ-Φ’)を検出し、続いて、低周波領域の磁束(Φ-Φ’)を打ち消すように、アンプ回路に帰還電流が加算される。
  • このトータルの2次電流がシャント抵抗に流れ、端子間に電圧が発生する。
  • この出力電圧は測定電流に比例する。
図7 ゼロフラックス方式(フラックスゲート検出型)の概念図
図7 ゼロフラックス方式(フラックスゲート検出型)の概念図

(2) 特徴

  • 磁気コア内の磁束を打ち消す負帰還動作のため、磁気コアのB-H特性の影響を受けず直線性に優れる
  • DCからの低周波領域ではフラックスゲートとアンプによる動作、高周波領域では帰還巻線による動作により、広帯域化を実現
  • フラックスゲートは、広い温度範囲でオフセットドリフトが非常に小さく、高精度電流測定が可能で、高精度電力計との組み合わせ使用に最適
  • 励磁周波数と高調波自体がノイズの原因となるため、フラックスゲートを使用した電流センサは、ホール素子を使用した電流センサよりもわずかにノイズが大きい
  • 用途別に合わせて、クランプタイプ10,11)、貫通タイプ12,13)、超高確度貫通タイプ14,15)、直接結線タイプ16)をラインアップ

(3) 用途

  • ハイブリッド車、電気自動車などの輸送機器における燃費・電費測定
  • 各種産業機器における高精度電力測定17~19)

4. 採用例

4.1 スイッチングデバイスの応答性能評価 20)

 ここでは、ゼロフラックス方式(ホール素子検出型)を用いた電流センサによる測定例を示す。
 スイッチング電源の性能向上を図るため、SiCやGaNなどの高速スイッチングデバイスを用いた製品開発が進められているが、高速化するに伴いスイッチングロスの低減が重要な課題の一つとなっている。この際に、スイッチングデバイスのオン/オフ時の電流・電圧波形を観測することによって性能評価を行う。図8にスイッチングデバイスの応答性能評価の概念図を示す。スイッチング波形をより正確に観測することによって、スイッチングロスの定量化を行うなど、製品開発に活かされている。

図8 スイッチングデバイスの応答性能評価の概念図

4.2 EVモーター、インバーター開発のための電力測定 21)

 ここでは、ゼロフラックス方式(フラックスゲート検出型)を用いた電流センサによる測定例を示す。
 電気自動車の開発において、モータードライブシステムの高効率化、小型化は重要な課題の一つである。この際に、インバーターの入出力パワーおよびモーターパワーを正確に測定し、効率や損失の把握が必要となっている。図9にEVモーター、インバーター開発のための電力測定の概念図を示す。インバーター出力はPWM変調されており、スイッチング周波数とその高調波成分が含まれている。負荷となるモーターの巻線はインダクタンス成分が主であるが、抵抗成分、磁性体の鉄損、巻線の表皮効果などによる損失も含まれており、駆動周波数が高くなるにつれ、これらの損失成分が増加する傾向である。したがって、こうした損失測定を正確に行うため、広帯域な特性を有するパワーアナライザおよび電流センサが活用されている。

図9 EVモーター、インバーター開発のための電力測定の概念図

4.3 電流センサ選定の目安

 図10に、各機器の動作電流と動作周波数の関係を示す。電流センサを選定する際の目安としたい。

図10 電流センサ選定の目安
図10 電流センサ選定の目安

5. まとめ

 本稿では、脱炭素社会に貢献するHIOKIの電流センサというタイトルで、弊社が開発してきた電流センサについて動作原理別に分類し、それぞれの特徴および採用例について説明した。今後も人類は地球と共存共栄していく権利を有するとともに、人類が快適・安全に生活し続けられるようにエネルギーの有効利用を図る義務もある。そのためには、エネルギーマネジメンの遂行は非常に重要な活動と考える。



参考文献

  1.  野村淳士:「電流プローブ向け薄膜ホール素子の低ノイズ化」, 日置技報Vol.36, 2015, No.1, pp.11-12
  2.  平林明彦:「電流プローブCT6700/CT6701」, 日置技報Vol.37, 2016, No.1, pp.59-66
  3.  横田修:「電流プローブCT6710/CT6711」, 日置技報Vol.41, 2020, pp.17-26
  4.  外谷彰悟, 増田秀和, 野村淳士:「スイッチング電流波形測定用電流センサの評価」, 2019年電気学会産業応用部門大会予稿集, pp.I-324-327
  5. 池田健太:「AC/DCカレントプローブCT6841/CT6843」, 日置技報Vol.36, 2015, No.1, pp.45-54
  6. 池田健太:「AC/DCカレントプローブCT6844/CT6845/CT6846」, 日置技報Vol.38, 2017, No.1, pp.43-54
  7. 池田健太:「AC/DCカレントセンサCT6875/CT6876/CT6877」, 日置技報Vol.41, 2020, pp.27-36
  8. 中沢宏紀:「AC/DCカレントセンサCT6872/CT6873」, 日置技報, 2022
  9. 依田元:「AC/DCカレントセンサCT6904/CT6904-60」, 日置技報Vol.40, 2019, No.1, pp.15-20
  10. M. Harano, H. Yoda, K. Seki, K. Hayashi, T. Komiyama, and S. Yamada, “Development of a Wideband High-Precision Current Sensor for Next Generation Power Electronics Applications”, Proc. IEEE ECCE, 2018, pp.3565-3571.
  11. 依田元:「AC/DCカレントボックスPW9100」, 日置技報Vol.38, 2017, No.1, pp.31-36
  12. M. Harano, H. Kobayashi, C. Yamaura, K. Ikeda, K. Nakazawa and S. Yoda, “Development of High-Precision Efficiency Measuring Device for High Power Motor Drive Systems”, Proc. EEMODS’19, 2019
  13. K. Hayashi, 「高精度広帯域パワーアナライザと電流センサによる低損失インダクタの実動作損失測定」, HIOKI技術資料, A_TA_PW0010J01, 2021
  14. 依田正三, 林和延:「空芯コイルを用いたパワーアナライザの電流・電圧位相誤差の周波数依存性検証」, 2022年電気学会産業応用部門大会予稿集, pp.II-77-80
  15. 「高速スイッチングデバイスの応答性能評価」, HIOKIアプリケーションノート, A_AP_CT0003J01, 2020
  16. K. Hayashi, T. Ijima and H. Kobayashi, 「EVモーター, インバーター開発のための電力測定」, HIOKI技術資料, A_AT_PW0011J01, 2022


【著者紹介】
原野 正幸(はらの まさゆき)
日置電機株式会社 ビジネスディベロップメント課
アドバンスドアプリケーションエンジニア
博士(工学)

■略歴
1993年3月 金沢大学大学院工学研究科修士課程修了(電気情報工学専攻)
1993年4月 日置電機株式会社入社
1998年3月 信州大学大学院工学系研究科博士後期課程修了(材料工学専攻)
日置電機の技術部門で電流センサを中心とした電気計測器の開発に従事し、2017年からマーケティング部門にてエネルギー関連市場向けの商品企画に従事。現在に至る。