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多点設置型防災IoTセンサ「クリノポール」、実際の斜面崩壊を捉えることに成功

 応用地質(株)は開発した多点設置型防災IoTソリューション「クリノポール(表層傾斜センサ)」により実際の斜面崩壊の検知に成功した。


【背景となる社会課題と実証試験の概要】
 台風や短時間強雨による土砂災害が全国的に頻発化する中で、斜面を監視するための表層傾斜センサが様々な企業により開発が進められている。しかしながら、斜面崩壊の管理基準値が確立された「地表面伸縮計」「孔内傾斜計」のような従来技術とは異なり、表層傾斜センサは、崩壊現場での適用事例や取得データが少ないことから、管理基準値※の設定が難しく、このことが、実際の現場での適用を阻害する要因となっている。
※ここでの管理基準値とは、当該センサ等のデータに基づく斜面崩壊の危険度や要監視・避難などの必要性を示す指標のことを指す。

 このため応用地質では、表層傾斜センサによる斜面崩壊に対する管理基準値の確立を目的として、全国地質調査業協会連合会(以下、「全地連」)「傾斜センサによる斜面監視モニタリングのマーケット開拓コンソーシアム」の活動として、同社が開発した表層傾斜センサ「クリノポール」を西日本地域の急斜面に設置し、斜面監視の実証試験に取り組んでいる。

【実証試験の結果】
 2023年3月23日に観測した降雨により、設置したクリノポールが斜面の変形を示す変位を検知し、その後の現地調査により、設置箇所で斜面崩壊していることを確認した。また、変位を検知しなかった斜面には異常はみられなかった。さらに、その後の詳細な検証※※の結果、一定量の変位が継続した後、同日午後5時10分に変位速度が加速度的に大きくなる現象が観測されたことから、クリノポールが実際に斜面の崩壊を事前に捉えたと判断された。
※※技術的な検証を含む本実証試験の詳細については、2023年9月6日~7日に開催された「全地連『技術フォーラム2023』横浜」にて論文掲載。

 なお、今回の斜面崩壊と、公開されている土壌雨量指数(降った雨が土壌中に水分量としてどれだけ溜まっているかを計算して数値化したもの)との間には明確な因果関係は見られなかった。斜面崩壊は、これまで多年に渡り経験してきた降雨による不安定化の進行が要因であったと推定される。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000047274.html

「動く繊毛」が運動装置であると同時に感覚器でもあることが明らかに

 芝浦工業大学 機械制御システム学科教授 吉村建二郎、生命科学科教授 渡邉宣夫、京都産業大学 産業生命科学科教授 若林憲一らの研究チームは、体内の細胞にも存在する「動く繊毛」が、衝突、振動、せん断力、滑り力というさまざまな機械刺激をTRP11という受容体型イオンチャネルで感じ、繊毛の運動パターンを変化させていることを明らかにした。
繊毛やイオンチャネルは生物の基本的な機能を支えており、それらの基礎的な機能を明らかにすることにより、各種疾患の原因解明や治療法開発につながると期待されるとのこと。


ポイント
・「動く繊毛」が環境から受ける機械刺激の種類によって運動パターンを変えている
・「動く繊毛」が運動装置であると同時に感覚器であることが明らかになった

研究の概要
 動物の繊毛は「動く繊毛」と「動かないが感覚器として働く繊毛」の2種類があると考えられていた。しかし、「動く繊毛」が感覚器としての機能を持つかはよく分かっていなかった。そこで、単細胞生物のクラミドモナスを用いて「動く繊毛」が、力や変形という機械刺激を感じるかを調べた。その結果、衝突、振動、せん断力、滑り力というさまざまなタイプの機械刺激を繊毛にあるTRP11という受容体型イオンチャネルで感じ、そのタイプに応じて繊毛の運動パターンを変化させていることが明らかになった。この成果は、動く繊毛が周囲の力学的環境を自ら感じ、運動を制御しているという新しい可能性を示している。繊毛という微細な装置に、汎用性が高いセンサと多機能な運動装置が備わっているということは生物の精緻さを考える上で興味深い発見だという。

今後の展望
 繊毛が運動装置であると同時に感覚器であるという新しい見方が、さらに広がる可能性がある。つまり、機械刺激以外に化学刺激や熱刺激にも感受性がある可能性を示唆している。すでに、クラミドモナスの繊毛はトウガラシの辛味物質であるカプサイシンなどの化学刺激にも反応することを報告している。また、生存に適した温度に移動する行動(走熱性)のために、温度センサも持ち合わせているのか、現在研究を進めている。
 繊毛やイオンチャネルは生物の基本的な機能を支えている。そのため、その異常は繊毛関連疾患やチャネル病というさまざまな疾患群の原因となる。本研究で、繊毛とイオンチャネルの基礎的な機能を明らかにすることにより、それら疾患の原因解明や治療法開発につながることが期待される。

ニュースリリースサイト(shibaura-it.ac):
https://www.shibaura-it.ac.jp/headline/detail/20230926-7070-902.html

Hyperluxイメージセンサ、NVIDIA DRIVEでのサポートにより自律走行車の視覚を向上

ハイライト
● HyperluxイメージセンサとNVIDIA DRIVERプラットフォームの組み合わせにより、自律走行車はより的確でスマートな判断を下し、迅速に反応
● Hyperluxイメージセンサは、先進運転支援システムを搭載した車両に対して、人間よりも優れた視覚能力を提供し、安全性を大幅に向上
● 露出設定の変更をなくし、死角を極力減らして、ほぼ瞬時の意思決定が可能に

オンセミ(onsemi)は、同社のHyperlux™イメージセンサファミリのドライバがNVIDIA DRIVEプラットフォームで利用可能になり、自律走行車の視覚が大幅に強化され、安全性が向上すると発表した。この強力な技術の組み合わせにより、自動運転システムはどのような照明条件下でも、より細部まで捉えるクラス最高の画質を得て、センサの利点をフルに活用したソリューションを実現できるという。

自律走行にとって最も重要な機能の一つが視覚システムである。Hyperluxイメージセンサは、比類のない詳細な画像を提供し、露出設定を変更することなく死角を回避する。これにより、NVIDIA DRIVEプラットフォームに最高品質のデータを提供し、処理を実行して、より良い情報に基づく意思決定を迅速に行うことができる。さらに、これらのセンサは、NVIDIAプラットフォームの効率的なアーキテクチャと組み合わせることで、業界をリードする低消費電力を実現し、自律走行車(AV)の運行に役立つ最小電力オプションを提供する。

NVIDIA DRIVEは、ハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアで構成されるオープンでスケーラブルなAIプラットフォームであり、これらの要素が連携して動作し、自動運転車の生産を可能にする。

Hyperluxイメージセンサは、現在市販されているセンサの中で、そのような期待に応え、さらには期待を上回る150 dBのハイダイナミックレンジ(HDR)を提供する唯一のセンサ。例えば、Hyperluxイメージセンサでは、人間の目では見えない、夕日を浴びたような状況でも、自律走行車は離れた場所にある黄色と赤の信号を区別できる。かなり暗くても、超露出ピクセル技術により要求条件を上回る性能を発揮し、運転中には見えにくい人や動物、物体を捉える。

Hyperluxイメージセンサは、NVIDIA DRIVEプラットフォームに、より的確な判断を下すのに必要な情報を提供する。他のイメージセンサでは、鮮明な画像を得るために露出モードの変更が必要な瞬間が含まれるフレーム落ちが、Hyperluxイメージセンサではほぼ発生しないためである。この遅延がないため、システムは人間の目では見逃した物体を含め、視界にあるすべての物について判断することができる。

信頼性の高い安定した性能
安全性を確保するには、イメージセンサがどのような状態でも安定して動作する必要がある。極端な温度では画質が低下し、物体の検出や分類などの認識タスクに対するシステム全体の効率が低下する。Hyperluxファミリは、-40℃から125℃までの車載用温度範囲全体にわたってスペック性能で動作し、ビューイングとセンシング両方のアプリケーションでクラス最高の画質を提供する能力を備えており、画質の劣化を回避する。Hyperluxファミリは、高温条件下でも鮮明な画像を実現できるだけでなく、動きの速い物体、車のヘッドライト、明滅する光も捉えることができ、システムの安全性を向上させる。

ニュースリリースサイト(onsemi):
https://www.onsemi.jp/company/news-media/press-announcements/ja/onsemi-hyperlux-sensors-now-supported-on-nvidia-drive-to-improve-vision-for-autonomous-vehicles

TechShare、新型電動4足歩行ロボット Unitree Go2 国内販売開始

TechShare(株)は国内総代理店としてUnitree社の新型電動4足歩行ロボットUnitree Go2 R&D版の日本国内向けの予約販売を2023年9月25日に開始した。

今回予約販売を開始したUnitree Go2は、2022年3月に販売を開始したUnitree Go1の後継機となる小型の電動4足歩行ロボット。
電動4足歩行ロボットは、従来人間が行っていた巡回監視業務の自動化のため、遠隔からの巡回監視や画像検査などへの実用化を目指して、現在幅広く実証実験が行われている。広い敷地内や危険な経路、人間が巡回しにくい場所を含めた、工場やプラント、トンネル、配管、床下などを含めた建設現場や工事現場、田畑・農場などの不整地や障害物が多い環境など、特にこれまでロボットでは自動走行が難しい環境における巡回監視作業で、電動4足歩行ロボットには大きな期待が寄せられている。

今回、TechShareが国内販売を開始するUnitree Go2は、利用目的別に下記の2つのモデルに大別される。
□ Go2 R&Dモデル(Enterprise Modelを含む)…2次開発可能
□ Go2 Air/Proモデル…ソフトウェア開発不可能

Go2 R&Dモデルは、理工系大学、企業の研究所や先行開発部門など、広く研究開発や実証実験などのエントリーモデルとして利用されているUnitree 社の電動4足歩行ロボットの中で、最も人気の機種Go1の後継となる最新製品。
Unitree Go2 R&Dの主な仕様は下記の通り。

<Unitree Go2 R&D(標準版)の主なスペック>
本体サイズ       :約70cm x 31cm x 40cm(立脚時)
重量          :約15kg(バッテリー重量を含む)
最大走行速度      :約13.3km/h(3.7m/s)
段差乗越え能力(階段) :16cm
最大登坂角度      :40°
バッテリー駆動時間   :約2-4時間
バッテリー容量(交換式):15,000mAh(Long)
搭載センサ:
  □ 4D LiDAR L1(360度半天球型/検知距離30m)x1基
  □ 広角HDカメラ(正面)x1基

<Unitree Go1(旧型モデル)からの主な改良点>
1) 12cmから16cmに改良された段差乗越え能力を含む、更に進化した不整地形の歩行性能
2) 2倍以上にアップしたバッテリー容量と大幅にアップした連続歩行時間
3) パワーアップした搭載モータによる積載可能重量の改善
4) 360度半天球範囲が検知できる4D LiDAR L1の標準搭載による障害物検知機能の強化
5) 搭載コンピュータ性能の改善、ナビゲーション用搭載センサ(Optional)の性能向上

Unitree Go2の国内販売価格はオープン価格で、Unitree Go2 Airに関しては、2023年10月末までアーリーバードキャンペーンとして、¥498,000(税抜)で販売。
Unitree Go2の国内出荷開始の予定は、Go2 Airは10月末頃、それ以外のモデルは2023年末頃の予定。

ニュースリリースサイト:https://www.dreamnews.jp/press/0000287659/?m=media&u=

ST、IoT機器開発を加速させるSTM32H5マイコン用開発キットを発表

STマイクロエレクトロニクスは、汎用32bitマイクロコントローラ(マイコン)「STM32H5シリーズ」用の開発キット(Discoveryキット)「STM32H573I-DK」を発表した。同開発キットは、豊富な機能を搭載し、さまざまなアプリケーション開発に貢献する。また、STM32H5シリーズは、スマート・センサ、スマート家電、産業用コントローラ、ネットワーク機器、パーソナル電子機器、医療機器など、幅広いアプリケーションにおける高性能処理や、高度なセキュリティの実現に最適な製品であるという。

STM32H573I-DK Discoveryキットを使用することで、アナログ周辺回路やタイマ、ST ART(アダプティブ・リアルタイム)アクセラレータ™、メディア・インタフェース、数値演算アクセラレータなど、STM32H5マイコンに内蔵されたあらゆる機能を活用した開発が可能になる。 これにより、産業用プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)や、モータ・ドライバ、生活家電向けスマート・コントローラなど、新たな設計の評価を簡単に行うことができる。また、エアコンや冷蔵庫・洗濯機といった生活家電、警報システムのコントローラや通信ハブ、スマート照明制御などのアプリケーションにも最適。

STM32H573I-DK Discoveryキットは、STM32H5マイコンやカラー・タッチパネル・ディスプレイ、デジタル・マイク、各種インタフェース(USB、Ethernet、Wi-Fi®など)を搭載した多機能な開発ボード。また、オーディオ・コーデックやFlashメモリも備えており、拡張シールドやドーター・ボードとの接続用ヘッダも搭載している。

さらに、開発プロセスの簡略化に貢献するSTM32H5マイコン用ソフトウェア・パッケージ「STM32CubeH5」も提供されており、サンプル・コードやアプリケーション・コードなど、STM32H5マイコンを使用したアプリケーション開発に必要なものがすべて含まれている。同パッケージは、STM32Cube開発エコシステムに完全に統合されているため、アプリケーション開発に貢献する追加のソフトウェアも活用できる。また、マイコンの初期化コード自動生成ツール「STM32CubeMX」も提供されている。

2023年3月に発表されたSTM32H5シリーズは、Arm® Cortex®-M33(動作周波数250MHz)を搭載し、STのマイコン向けセキュリティ・ソリューション「STM32Trust TEE Secure Manager」に対応した初のマイコン。Arm TrustZone®セキュリティとSTのSTM32Trustフレームワークを組み合わせることで、信頼性に優れたストレージや、暗号化、認証、およびソフトウェア・アップデート機能を提供する。そのほか、サイド・チャネル攻撃から保護するハードウェア暗号化アクセラレータを搭載するとともに、PSA Certified Level 3およびGlobalPlatform SESIP3仕様に準拠している。

STM32H573I-DK Discoveryキットには、セキュリティ・サービスの使用法を示すサンプルが付属しており、STM32Cube開発エコシステムに含まれるすべての必要なソフトウェア・ツールおよびサポートが統合されている。

STM32H573I-DKおよびSTM32H5マイコンを搭載したSTM32 Nucleoボード「NUCLEO-H563ZI」は、STのeStoreおよび販売代理店から入手可能。STM32H573I-DKの価格は約98.75ドル、NUCLEO-H563ZIの価格は約28.75ドル。

これらの製品に伴い、STM32用のIoTクラウド・ソリューションが近日発表される予定。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001328.000001337.html

GaNデバイスの性能を最大限に引き出す超高速ゲートドライバICを開発

 ローム(株)は、超高速でGaNデバイスを駆動するゲートドライバIC「BD2311NVX-LB」を開発した。
 新製品は、ナノ秒(ns)オーダーのゲート駆動スピードを実現し、GaNデバイスを高速にスイッチングさせることが可能である。この特性は、GaNデバイスを熟知し、ゲートドライバICの性能を追求できたからこそ実現できた特性であり、最小ゲート入力パルス幅1.25ナノ秒での高速スイッチングにより、アプリケーションの小型化、省エネ化、高性能化に貢献する。
 また、独自の駆動方式を採用することで、これまで非常に難しいとされていたゲート入力波形のオーバーシュートを抑制する機能も搭載しており、過電圧入力によるGaNデバイスの故障を防ぎ、ロームのEcoGaN™と組み合わせて構成することで、セット設計の容易化を実現するとともに、アプリケーションの信頼性向上にも寄与する。さらに、アプリケーションによるさまざまな要求に対しても、ゲート抵抗を調整することで、最適なGaNデバイスを選定することが可能である。
 新製品は、2023年9月より量産を開始(サンプル価格900円/個:税抜)している。インターネット販売も開始しており、チップワンストップやコアスタッフオンラインなどから購入することができる。
 ロームでは省エネ・小型化に寄与するGaNデバイスを「EcoGaN™」としてラインアップしており、今後、これらGaNデバイスの持つ性能を最大限引き出すゲートドライバICを組み合わせたパワーソリューションを提供することで持続可能な社会への貢献を目指すという。

ニュースリリースサイト:
https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2023-09_news_gate-driver&defaultGroupId=false

NECプラットフォームズ、夜間でも鮮明にデジタル映像化し高度な監視業務のDX化を支援する超高感度低ノイズカメラ

 NECプラットフォームズは、人の目では認識できない闇夜でも鮮明なデジタル映像化が可能な超高感度低ノイズカメラ(型番:NC-H100) (注1)を10月1日から販売開始する。

 新製品は、微弱な光を捉える「高効率化特殊光学系(注2)」と、イメージセンサで検出した信号のノイズに対して抑制・低減を2段階で処理する「映像適応型デジタル信号処理エンジン(注3)」の2つの独自技術を搭載しています。これにより、当社の従来製品に比べ高感度撮影時のノイズを約75%(注4)低減することができ、従来製品ではノイズに埋もれて視認できなかった対象物の可視化が可能になる。昼夜・天候を問わず対象物を映像化して遠隔からモニタリングすることや、画像解析などの技術と組み合わせて様々な現場を映像化することが可能となり、監視業務の自動化・効率化によるDX化を支援する。

 夜間に対象物を撮影する際は、特殊なカメラである高感度カメラを一般的には使用する。高感度カメラは光を捉え増幅することにより映像化するが、人の目では認識することができない星明り程度の超高感度撮影の領域(感度:+60dB前後)に達すると、捉えたわずかな微光を増幅し映像化するため、輝度ノイズや色ノイズといった複数のノイズも増幅されることで対象物がノイズに埋もれてしまい、視認判別が難しくなる。
 本製品は、これまで撮影することができなかった環境でも独自の高効率化特殊光学系と映像適応型デジタル信号処理エンジンにより、非常に弱い光も検出しながらノイズを大幅に抑制・低減することで鮮明なデジタル映像化を実現する。これにより、自然災害対策として夜間の河川・海岸・山の斜面・火口監視や、安全対策としての鉄道や空港での不審行動や異常事態監視、放送局やケーブルテレビ局における報道用の定点観測、野生生物の生態観察、星雲・オーロラや天体観測などの様々な場面で活用することが可能。さらに、ノイズを大幅に低減したデジタル映像で対象物の画像判別がより容易になり、解析用システムによる画像の自動解析率が向上する。

(注1)「超高感度」とは、当社の技術指標ではゲイン(増幅率)+60dB以上のカメラ感度を指す。従来製品はゲイン+48dB以上であり撮影領域は「高感度」であるとして区別をしている。
(注2)高効率化特殊光学系とは、当社独自で新たに開発した特殊光学技術を用いて微弱な光の信号を余すことなく検出できる光学系部分。
(注3)映像適応型デジタル信号処理エンジンとは、超高感度撮影時に発生する様々なノイズ(輝度ノイズ、色ノイズ、熱ノイズ、ランダムノイズ、固定ノイズ、電源ノイズ、伝送ノイズ、回路内ノイズ、回路外ノイズ等)を複合的に組み合わせてデジタル信号処理を行うエンジン。
(注4)従来製品において感度約48dBでの撮影時に検出されるノイズ量と、新製品における感度約60dB程度での撮影時に検出されるノイズ量が同等。感度60dBは、感度48dBから4倍程度の増幅度が必要なことからノイズの75%(1/4)低減を実現した。

ニュースリリースサイト:https://www.necplatforms.co.jp/press/202309/20230920_01.html

水晶と水晶を用いたセンサー(2)

佐藤 健二(さとう けんじ)
セイコーエプソン(株)
マイクロデバイス事業部
佐藤 健二

3.2 水晶の加工法

 水晶の加工法には、大きく分けて3つの方法がある。「機械加工」「ウェットエッチング」「ドライエッチング」の3種類である。現状、量産技術としては、機械加工とウェットエッチングが主に用いられている。ここでは3つの加工法について概要を説明する。

3.2.1 機械加工 5)

 最も基本的な加工方法が機械加工である。機械加工は、図7に示すようなワイヤーソーでの切断や、ラッピングマシンでの研磨などがそれにあたる。また、数mmサイズの振動子に個片化するのも機械加工が主な手段であり、何段階もの機械加工を施すことによって、仕上がり精度が数μmのバラツキの少ない振動子が実現できている。
 厚みすべり振動を用いるATカットの振動子では、振動効率を上げるために、単純な平板ではなく、平板の中央部が厚く、周囲にいくにしたがって徐々に板厚が薄くなるような、べべルやコンベックス(図8)と呼ばれる曲面加工を行うこともある。これらの曲面加工は、所望の曲面をもつ円筒形あるいは球状の加工機の中に、個片の水晶素子とともに研磨剤を入れ、回転させることで加工機の曲面を水晶素子に転写する。
 これらの機械加工は水晶特有のものではなく、他の結晶の加工と共通している。

図7 ワイヤーソーによる切断
図7 ワイヤーソーによる切断
図8 べべルとコンベックス
図8 べべルとコンベックス

3.2.2 ウェットエッチング 2)

 ウェットエッチングとは、エッチング液(エッチャントともいう)に浸すことで、水晶を加工する方法である。水晶だけでなく、シリコン(Si)などでも広く利用されている加工法の一つで、機械加工やドライエッチングに比べ、大量かつ高速に加工することができるのが大きな特徴である。水晶のエッチング液には、フッ化水素酸水溶液や重フッ化水素アンモニウム水溶液、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムの混合液(バッファードフッ酸)などが用いられる。
 水晶のウェットエッチングでは、異方性のため結晶面によってエッチング速度が異なり、ウェットエッチング後の形状を矩形や円形など単純な形状にすることや、エッチング加工面を垂直にすることは難しい。フォトマスクの形状、エッチャント温度やエッチング時間などを組み合わせることで、意図する形状に近づけることはできる。振動子やセンサーとしての特性に影響を与えないような素子設計が重要となる。

3.2.3 ドライエッチング 2)

 ドライエッチングとは、シリコンなどの半導体部品の製造に多く用いられている方法で、外形加工など深堀りを行うのは、反応性イオンエッチング(RIE: Reactive Ion Etching)法を用いて加工を行うことが多い。水晶やガラスなどの素材も、この技術によって加工することができる。
 ドライエッチングは、ウェットエッチングのデメリットである結晶の異方性によるエッチングレートの違いを気にせず加工できることから、より設計者の意図する形状に加工しやすい。しかし、エッチングレートがウェットエッチングに比べ遅く、加工にはプラズマが必要であり、加工装置の制約上、プラズマを発生させる領域が限られているため大量に加工できないのが欠点である。水晶製品の量産技術として使われることは現状少ない。

4 水晶を用いるセンサー

 水晶をセンサーとして用いる場合は、水晶を振動させ、その振動周波数で検出する方式が用いられることが多い。水晶を用いる優位点は以下のとおりである。

 ・圧電性を有しているため、振動を励振させやすい
 ・温度に対する振動周波数の安定性が高く、Q値(共振先鋭度)も高いため、誤差が少ない
 ・単結晶で物質的に安定しており、経時変化に強い

 前述のとおり、水晶振動子はその振動周波数が安定であるため、誤差の少ない高精度なセンサーとして構成しやすい。また、周波数検出方式は高い分解能で計測でき、デジタル変換が容易であり、高精度のセンサーに向いている。

4.1 水晶を用いるセンサーの種類 6)

 水晶を用いた主なセンサーの素子形状や振動形態、検出方式などを表1に示す。振動形態は厚みすべり振動と屈曲振動のいずれかであり、検出方式の多くが周波数検出であることが分かる。ここでは、温度センサー、圧力センサー、力覚センサーについて述べるが、QCM、ジャイロセンサー、加速度センサーは、ここの別の記事を参照願いたい。

表1 水晶を用いた各種センサーの振動形態と検出方式
センサー種類 素子形状 カット角 振動形態 検出方式
QCM 円形板、矩形板 ATカット 厚みすべり振動 周波数検出
温度センサー 円形板、矩形板 Yカット 厚みすべり振動 周波数検出
圧力センサー 双音さ +2°X 屈曲振動 周波数検出
加速度センサー 双音さ +2°X 屈曲振動 周波数検出
ジャイロセンサー 音さ +2°X 屈曲振動 電荷検出
力覚センサー 円形板、矩形板 Yカット 振動利用なし 電荷検出

4.1.1 温度センサー

 温度センサーには、多くの種類があり、測定できる温度範囲や測定精度に違いがある。熱膨張を利用する水銀温度計、異なる金属接合部で発生するゼーベック効果を利用する熱電対、セラミックや高分子材料などの温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタや白金測温抵抗体などもある。
 水晶温度センサーは古くから用いられており、Yカットの厚みすべり振動や、1次の温度係数を高くした音さ振動子のタイプもある。周波数検出方式のため、高分解能の温度センサーとして利用されてきた。水晶温度センサーの分解能は、高いもので0.0001℃のものも製品化されていたが、最近では見られなくなった。

4.1.2 圧力センサー

 圧力センサーには、ダイヤフラム構造の表面が圧力を受けることで生じる歪みや変形をピエゾ抵抗や静電容量で検出するもの、またベローズやブルドン管など、圧力による機械的な変形量を計測するものがある。
 水晶を用いた圧力センサーは、ベローズの機械的な変形を利用したもので、圧力によって生じた変形を双音さ振動子の軸方向に加えることで、振動周波数の変化として測定する方式である。非常に高精度で高い分解能があり、ダムの水位計などに利用されている。また、気圧計としても利用されており、数cmの高さによる気圧の違いを計測できる性能をもっている。

4.1.3 力覚センサー

 力覚センサーとは、力やモーメントの大きさや向きを計測するセンサーである。これは人間の触覚と同じように、物体にかかる力を計測することで、微妙な力加減や制御を機械的に再現することができる。検出原理により、光学式、歪ゲージ式、静電容量式や圧電式などがある。水晶の力覚センサーは、圧電式に該当する。
 これまでの他のセンサーとは異なり、振動させて使うものでもなく、周波数検出方式でもない。計測したい力を水晶に加えることで圧電効果によって発生した電荷を検出することで、その力の大きさを測定する。微小な力であっても圧電効果によって電荷は発生するので、広いダイナミックレンジの力を検知することができる。

5 おわりに

 本稿では、水晶と水晶を用いたセンサーについて説明してきた。まず、水晶の結晶異方性や圧電性、人工水晶の製造方法や加工方法について紹介した。次に、水晶を用いた各種センサーについて、水晶が使われることでの特徴などについても紹介してきたが、概要的な説明になってしまったので、詳しくは各種文献等を参照願いたい。
 今後も、水晶の特性を活かした、小型で高感度かつ高精度なセンサーが人々の生活をよりよくしていくことだろう。環境にやさしく、持続可能な社会に水晶が役立つことを心から願っている。



参考文献

  1. 「人工水晶とその電気的応用」, 滝 貞男著, 日刊工業新聞社, (1974)
  2. 「圧電材料学の基礎」, 池田拓郎著, オーム社 (1984)
  3. 「水晶周波数制御デバイス」, 岡野庄太郎著, テクノ (1995)
  4. 「マイクロセンサ工学」, 室 英夫編著, 技術評論社 (2009)


【著者紹介】
佐藤 健二(さとう けんじ)
セイコーエプソン株式会社 マイクロデバイス事業部 TD商品開発部

■略歴

  • 1995年山形大学 理工学研究科 電子情報工学専攻 博士前期課程修了
  • 1995年東洋通信機株式会社 入社
    水晶振動子(MHz帯)の設計業務に従事
  • 2000年東京都立大学 工学研究科 出向
    有限要素法による水晶振動子の設計応用の研究およびメサ型水晶振動子の工業化の研究
  • 2004年山形大学 理工学研究科 生体センシング機能工学 博士後期課程修了
    水晶を用いたジャイロセンサーの研究開発に従事
  • 2005年セイコーエプソン株式会社 マイクロデバイス事業部
    車載向けのジャイロセンサーの開発・設計業務に従事
    車載/センサーのマーケティング、戦略業務に従事
    加速度センサーの開発業務に従事

水晶ジャイロセンサーについて(2)

押尾 政宏(おしお まさひろ)
セイコーエプソン(株)
マイクロデバイス事業部
押尾 政宏

3. ジャイロセンサーの重要特性

 ジャイロセンサーには様々な特性があり、アプリケーションに応じて適切なセンサーを選択する必要がある。以下にポイントとなる重要特性についてまとめる。

3.1 アラン分散

 静止時の出力値(バイアス出力)を評価する指標としてアラン分散がある 1)。測定は、静止状態で長時間センサー出力を計測することで行い、アラン分散σ(τ)は、測定時間の間隔τとその時間内のセンサー出力平均値の分散から式(3.1)の様に求める。

 図3-1はアラン分散σ(τ)と測定時間間隔τの関係を示す概念であり、ここでは詳細説明を割愛するが、1枚のグラフでセンサー出力のノイズ成分や時間変動分を表すことができる。バスタブ曲線を描き、縦軸の値が小さいほど優れたセンサーである。τ-1/2 の領域は角度ランダムウォーク(ARW: Angle Random Walk)と呼ばれホワイトノイズを表し、τ0の領域(σの最下点)はバイアス安定性(BI: Bias Instability)と呼ばれ、フリッカノイズ(1/fノイズ)と密接な関係がある。

図3-1 アラン分散σと測定時間間隔τの関係
図3-1 アラン分散σと測定時間間隔τの関係

3.2 バイアス出力温度特性

 温度によるバイアス出力の変化を示す指標である。本特性が安定していると、環境温度の変化に影響されず、僅かな回転運動を検出できる。例えば、カーナビゲーション等のジャイロセンサーの角速度出力を時間積分する用途では、温度による出力変化が大きいと時間経過とともに測定誤差が積算され、車両が走行している向きを正確に測定できない。

3.3 耐衝撃・振動特性

 振動や衝撃により加速度が加わった際のバイアス出力の変化を示す指標である。本特性が優れていると、外部から振動や衝撃を受けた際の影響を抑え、正確に角速度を測定できる。例えばジャイロセンサーが車両に搭載され、走行中に路上からの振動が伝わった場合、本特性が悪いと、センサー出力にノイズが発生し誤測定の原因となる。

4. ダブルT型水晶ジャイロの動作原理と特長

 水晶が持つ圧電効果を応用した振動ジャイロとして、Kikuchi 2) はT型振動子を組み合わせたダブルT型構造を考案し、高精度かつ信頼性の高いジャイロセンサーを実現した。人が感じられない程の僅かな運動を検出できることや、振動・衝撃に対して影響を受けにくいといった特長をもち、カメラの手ブレ補正やカーナビゲーション、車載安全など、様々なアプリケーションに搭載されてきた。本章では動作原理と特長について説明する。

4.1 ダブルT型水晶ジャイロの動作原理

 T型振動子とは、固定部からT字型の振動子が平面内に伸びた図4-1の様な屈曲振動子を言う。このT型振動子には、T字の両端が同方向に動く図4-2(a)の振動モードが存在し、これを駆動振動モードとして用いると、この振動子に面内の回転角速度(紙面垂直の回転軸)が加えられた場合、振動方向と直角をなす方向にコリオリの力が働くので、T型振動子の基部(図4-1のBase部)が屈曲する。すると、図4-2(b)の振動モードが励振され、この振動を検出することによって、振動ジャイロが構成できる。

図4-1 T字型振動子
図4-1 T字型振動子
図4-2 T型振動子の駆動振動モード(a)およびT型振動子の検出振動モード(b)
図4-2 T型振動子の駆動振動モード(a)およびT型振動子の検出振動モード(b)

 図4-3に示す様にダブルT型構造は、2つのT型振動アーム、2つの検出共振アームと中央の連結部からなっている。2つのT型振動アームは中央連結部から突き出し、更に、その対称軸線上に2つの検出共振アームを突き出した構造である。その駆動振動モードは、図4-3(a)に示す様に両方のT型振動アームが同位相で広がったり縮んだりする屈曲振動モードである。この振動子に、紙面垂直の軸に回転が加えられた場合、振動方向と直角にコリオリの力が発生するため、図4-3(b)に示す様な検出振動モードが励振される。
 ダブルT型構造は、回転時にコリオリ力が2つのT型振動アームに発生し、その力を効率良く検出共振アームに伝えることができるため、感度の高い構造となっている。また、2つのT型振動アームの対称軸線上に検出共振アームが配置されているため、検出共振アームは、駆動振動モードでは振動せず、静止時の出力が安定する理想的な構造となっている。

図4-3 ダブルT型構造の駆動振動モード(a)および検出振動モード(b)
図4-3 ダブルT型構造の駆動振動モード(a)および検出振動モード(b)

 実際の製品では、フォトリソグラフィを用いた水晶加工技術を駆使して小型化したセンサーチップ(図4-4)が使用され、重心を中央連結部1か所で支持している。このセンサーチップの振動アーム断面は三次元的に加工され、振動子の電界印加効率は格段に向上し、アームが細く小型になっても、インピーダンスが低減され、低電圧駆動が実現されている。またアームの先端にシュモクザメのような「ハンマーヘッド」を付けて、小型化しつつ感度を高めている。

図4-4 ダブルT型構造のセンサーチップ
図4-4 ダブルT型構造のセンサーチップ

4.2 ダブルT型水晶ジャイロの特長

 以下に本章で説明してきたダブルT型水晶ジャイロの特長を挙げる。
 ① 出力のノイズや時間変動が小さい
 ② 温度による出力の変化が小さい
 ③ 振動・衝撃による出力の変動が小さい
 ④ 経時変化が小さく、特性ばらつきが小さい

 ダブルT型水晶ジャイロはその動作原理や構造から、高感度で高いS/N比が得られるため、低ノイズで高安定な特長をもつ。図4-5にアラン分散のグラフを示す。最新製品のバイアス安定性は1゜/hを下回り、ARWは0.065゜/√hを実現している。

図4-5 アラン分散特性
図4-5 アラン分散特性

 図4-6はダブルT型水晶ジャイロのバイアス出力温度特性をシリコン製の容量型MEMSジャイロと比較したグラフである。ダブルT型構造は、母材に用いている水晶の物性が安定であることや、支持系からの応力を受けにくい構造的な特徴を持っていることから安定した出力が得られている。また、センサーチップを中央連結部1点のみで支持する構造は熱応力を伝えにくく、補正が困難となる温度昇温時、降温時の出力差(ヒステリシス特性)も小さく抑えることができる。

図4-6 ダブルT型水晶ジャイロ(a)とシリコン製MEMSジャイロ(b)のバイアス出力温度特性
図4-6 ダブルT型水晶ジャイロ(a)とシリコン製MEMSジャイロ(b)のバイアス出力温度特性

 振動・衝撃の耐性に関しては、様々な評価方法が存在するが、ここでは落下衝撃試験の結果を示す。図4-7はダブルT型水晶ジャイロとシリコン製の容量型MEMSジャイロを並べ、400Gで落下させた時の衝撃応答を調べたものである。シリコンMEMSジャイロは衝撃の影響により、出力が大きく変動しているのに対し、ダブルT型水晶ジャイロの変動は僅かである。ダブルT型構造は、直線加速度を受けると2本の検出共振アームから同相信号が出力され、差動回路により信号をキャンセルできること、また、センサーチップの重心を中央連結部1か所で支持されていることにより、振動や衝撃の影響が軽減されている。

図4-7 ダブルT型水晶ジャイロとシリコン製MEMSジャイロの400G落下衝撃応答
図4-7 ダブルT型水晶ジャイロとシリコン製MEMSジャイロの400G落下衝撃応答

 また、ダブルT型水晶ジャイロは単結晶圧電体の水晶を用いているため、材料の劣化が小さく、特性の経時変化が小さい。更に、圧電性を利用することによりシンプルな構造で駆動・検出ができることや、フォトリソグラフィを用いて加工精度が高められることで特性ばらつきを抑えられるという特長をもつ。

おわりに

  ジャイロセンサーはこれまで様々なアプリケーションに用いられ、安全・安心で快適な社会の実現に寄与してきた。今後も小型で安価な振動ジャイロは、精度の向上によって応用範囲は広がっていくと考えている。特に近い将来、本格的な実用化が期待される自動運転技術には、高精度な自己位置推定技術が要求され、衛星測位システム(GNSS: Global Navigation Satellite Systems)と慣性センサーを組み合わせた手法は必須技術になると予測している 3,4)。ジャイロセンサーはこの統合システムにおいて、GNSSが苦手とするトンネル下や高層ビル、街路樹間の走行における相対的な位置推定の役割を担う。ジャイロセンサーのバイアス(若しくはオフセット)やドリフトは位置推定に大きな影響を及ぼすため、精度の高いものが望まれる。本稿で紹介した水晶ダブルT型ジャイロセンサーは精度が高いだけでなく、安全性の面でも車載用として多くの搭載実績があり、自動運転を実現する重要デバイスとして期待している。



参考文献

  1. IEEE Standard Specification Format Guide and Test Procedure for Single-Axis Interferometric Fiber Optic Gyros, IEEE Std. 952-1997.
  2. T.Kikuchi et al., ” Miniaturized Quartz Vibratory Gyro Sensor with Hammer-Headed Arms,” 2004 IEEE International Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control 50th Anniversary Joint Conference, FC2-H-6, Aug.2004.
  3. 高野瀬碧輝, 渥美善規, 滝川叶夢, 目黒淳一, ”都市環境下で適用可能なGNSS/IMUに関する研究”, 自動車技術会論文集, Vol.51, No.4, pp.721-726, 2020.
  4. 瀧澤照夫, “高精度MEMSジャイロセンサ技術動向と自動運転車への応用可能性”, 技術情報協会, 自動運転車に向けた電子機器・部品の開発と制御技術, pp177-188, 2022.


【著者紹介】
押尾 政宏(おしお まさひろ)
セイコーエプソン株式会社 マイクロデバイス事業部 TD商品開発部 課長

■略歴

  • 2000年電気通信大学 機械制御工学科 修士課程修了
  • 2000年セイコーエプソン株式会社 入社
    弾性表面波デバイスの研究開発に従事
  • 2009年水晶ジャイロセンサーの開発設計に従事
  • 2020年TD商品開発部 課長

水晶加速度センサーについて(2)

中仙道 和之(なかせんどう かずゆき)
セイコーエプソン株式会社
マイクロデバイス事業部
中仙道 和之

3. 水晶加速度センサーのアプリケーション例

 開発初期のターゲットアプリケーションは、地震観測[2]でした。人が感じる事が出来ない極微小な振動から、巨大地震が発生する非常に大きな振動まで計測する必要がある地震観測は、水晶加速度センサーの特徴である低ノイズで広い計測ダイナミックレンジが活かせると考えたからです。同時期に2011年3月に東日本大震災、2012年12月に中央自動車道の笹子トンネル事故、日本では国民の安全な生活を脅かす大きな災害や事故が発生し、社会インフラの老朽化が社会課題として広く認識されるようになりました。この課題を解決するために人に変わってセンサーを活用して社会インフラの点検や監視を実施して、効率的に安全性を高める技術が注目されました。特に構造物の微小な動きから健全性を診断する技術が盛んに開発されていました。しかし、橋やビル、トンネルなどのインフラ構造物は巨大で質量も重いため、発生する振動は微小で低周波となります。一般的に0.1Hz~数10Hz程度の周波数で、発生する加速度も非常に小さいため、高感度のセンサーが必要となります。高感度のセンサーとして、サーボ型が地震観測などに使われていました。しかし、耐久性や価格に課題があり、橋などの安全監視に適用することは困難でした。そこで、サーボ型センサーに匹敵する高感度特性と高い耐衝撃性を両立する水晶加速度センサー M-A352/M-A552を開発しました。更にデジタル出力で低消費電力なため、システム構成がシンプルで安定に稼働する監視システムの実現にも貢献しました。これによって、インフラ構造物の安全監視に高感度センサーの適用を可能にしました。
 その後、計測周波数範囲を1,000Hzまで拡大したM-A342/M-A542を開発し[3]、大型回転機器へ適用アプリケーションを拡大しました。近年、地球温暖化により想定外の大雨や洪水が頻発する現代、治水に関わる河川やダムの水門を安全に管理することは、地域住民の安心・安全な生活に必要不可欠なものになっています。本センサーは、国の管理指針[4]に基づき水門やダムのゲートを開閉するモーターなどの振動を計測し、状態の把握と適切なメンテンナスを実現します。図5に、水晶加速度センサーの計測範囲と適合アプリケーションを示します。

図5.計測範囲と適合アプリケーション
図5.計測範囲と適合アプリケーション

4. まとめ

 本稿では、水晶加速度センサーの動作原理と特徴を中心として、適用アプリケーションの概要についても紹介しました。水晶を素材とする独自の素子構造と独自の周波数カウント技術により、低ノイズで広い検出レンジを有し、高感度なのにデジタル3軸で使いやすいセンサーを実現しました。今後も、社会課題を起点としてセンサー開発とアプリケーション開発を同時に進めながら、水晶加速度センサーが安心・安全で持続可能な社会インフラや産業インフラの実現に貢献しつづけるデバイスとなることを期待しています。



参考資料

  1. 松田,“水晶振動子による加速度センサーの微動観測への適用性に関する検討,” 土木学会論文集A1(構造・地盤工学),Vol.76,N0.4,I_793-I_803,2020.
  2. 佐藤,“振動の精密リサージュ図形描画アルゴリズムとこれを用いた状態監視/診断技術に関する研究,”日本機械学会 年次大会,2022.
  3. 国交省,“ダム用及び河川用水門設備状態監視ガイドライン,”総合政策局 公共事業企画調整課 施工安全企画室,2018.


【著者紹介】
中仙道 和之(なかせんどう かずゆき)
セイコーエプソン株式会社 マイクロデバイス事業部 TD商品開発部 課長

■略歴

  • 1995年長岡技術科学大学 電子工学科 修士課程修了
  • 1995年東洋通信機株式会社 入社
    光通信用光学デバイスの開発設計に従事
  • 2007年セイコーエプソン株式会社 入社
    水晶センサーの開発設計及び、新領域の事業開発に従事
  • 2018年MSM推進プロジェクト 企画設計 課長
  • 2022年TD商品開発部 課長