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新規ジアミン化合物APPの販売開始

日本材料技研(株)は、この度、ピリダジン系含硫ジアミン化合物APPのサンプル販売を開始した。

APPは分子屈折率の高いピリダジン骨格と硫黄原子を有しており、ポリイミドなどのポリマーに高屈折率を付与することができるモノマーである。センサやカメラなどの光学モジュールや光通信などの高機能化・小型化トレンドを受けて、材料に対する市場ニーズも急速に拡大・多様化している中、APPは反射防止膜などの薄膜コーティング材料や、光導波路、マイクロレンズなど、各種光学用部材への応用が想定される。なお、本件は同社がJSR株(株)および東京工業大学から独占的通常実施権許諾契約を受けて事業化を進めているもの。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000052040.html

TechShare、2次開発できるフルサイズのヒューマノイドロボットUnitree H1販売

TechShare(株)は、Unitree社の汎用ヒューマノイドロボットUnitree H1の予約販売を2023年12月6日開始した。

 予約販売を開始したUnitree H1は、購入者が自由に2次開発できるフルサイズの汎用ヒューマノイドロボット(電動2足歩行ロボット)。 Unitree H1のサイズは、身長は180.5cm、本体重量は約47kg(バッテリーを含む)と超軽量のフルサイズのヒューマノイドロボットで、最大の特徴は、購入者がソフトウェア面でも、ハードウエアの面でも、自由に2次開発できることである。

 ソフトウエア面では、Unitree Go2と同様に、メーカーが開発した歩行・運動パターンを使うハイレベル制御の開発環境と、各関節レベルを制御してユーザ独自の歩行や運動パターンを開発できるローレベル制御の開発環境の2つが提供されるため、幅広いユーザがヒューマノイドロボットの開発プラットフォームとして活用できる。  また、Unitree H1には8kgのBody Payloadがあるので、たとえば、8kg以内の電子機器をUnitree H1の背中に搭載して、ロボットに搭載されたバッテリーから給電して、その電子機器の機能を追加したUnitree H1にハードウエアを改造することも可能。
Unitree H1の主な仕様は下記の通り。

<Unitree H1の主なスペック>
<基本仕様>
● サイズ   :高さ180.5cm(1520+285mm)×幅57.0cm×奥行22.0cm
● 本体重量   :約47kg
● 歩行速度   :Max 1.5m/s (potential speed >5m/s)
● 最大積載重量 :8kg(Body Payload)
● 連続歩行時間 :3h以上(連続歩行)
<機構部の仕様>
● 脚部(Legs):
□DOF(各脚) : 5(Hip×3 + Knee×1 + Ankle×1)
□大腿部+下脚部 : 40.0cm × 2
● 腕部(Arms):
□DOF(各腕) : 4(Expandable)
□上腕部+前腕部 :33.8cm × 2
<搭載コントローラ・センサ>
● 搭載コントローラ: Intel Core i7-1265U(Optional)x 2基
● 搭載センサ – 3D LiDAR:Mid-360 – 深度センサー:Intel RealSense D435i
<電源仕様>
● 電源 :交換式バッテリー(2コ搭載)
● バッテリー容量:15Ah(0.864KWh),Max Voltage 67.2V

・Unitree H1の国内販売価格はオープン価格で、予約販売開始時の販売価格は1,580万円(税抜)。 ・Unitree H1の国内出荷開始の予定は、2024年2月下旬~3月上旬を予定しているので、今年度内の納品も可能なスケジュールで出荷開始する予定。

ニュースリリースサイト:https://techshare.co.jp/unitree-h1-press-release/

Starlinkと自動充電ポート付きドローンを活用し、現場監理業務を80%削減

 (株)大林組とKDDIスマートドローン(株)は、Starlinkと自動充電ポート付きドローンを活用し、現場監理業務を削減するシステムを開発し、実証実験を行った。本実証実験は、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM(プリズム))の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に採択され、実施しているもの。

 本実証実験では、自動充電ポート付きドローンが目視外で自律飛行し、建設現場および既存インフラの巡視、点検、計測、異常検知を自動で行うことができるドローンシステム(以下、本システム)の開発を行い、現場監理業務を80%削減できることを確認した。この結果、2023年6月に国土交通省より、技術の導入効果や社会実装の実現性について高く評価され、最高評価であるA評価を獲得した。

■本実証実験について
1.概要
 大林組とKDDIスマートドローンは2023年2月に三重県伊賀市の川上ダムに自動充電ポート付きドローンを設置し、本システムでドローンを自律飛行させることで、ダム建設における現場監理の効率化に資するかの検証を実施した。
【実施内容】
・KDDI株式会社が提供する、Starlinkをバックホール回線(※1)としたauエリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」による通信環境の整備
・自動充電ポート付きドローンによる、定期的な監視・測量フライトの実施
・地震発生時を想定した、自動充電ポート付きドローンによるダムおよび貯水池の状況把握
・撮影した写真を基にした3次元点群モデルの生成と大林組が活用するCPS(Cyber Physical System)(※2)での管理
・撮影した画像のAI画像判定による建設現場の進捗状況判定

2.成果
 建設現場および既存インフラの巡視、点検、計測、異常検知を自動で行うことができ、建設現場監理者の日常的な管理業務を大幅に削減できた。具体的には、従来であれば工事事務所からの移動時間も含めて345分かかる業務を、本システムを使えば60分で実施可能となり、80%の削減ができることを確認した。

3.今後の取り組み
 今後、全国の大規模建設現場への導入を目指し、本システムの検証を進める。また本システムで複数のドローンを同時に管理する検証を実施する予定。

(※1)バックホール回線
 街などのau基地局と、基幹通信網との接続点である最寄りの拠点施設とをつなぐ中継回線のこと
(※2)CPS(Cyber Physical System)
 現実世界(フィジカル)で取得したセンサ情報を、ネットワークを介して収集し、コンピュータ上に構築し た仮想空間(サイバー空間)で処理・分析・解析・知識化する技術。また、そこから得られた情報・計算値・推論値を現実世界へ反映させるシステム

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000118168.html

電力使用量の最適化と信頼性向上に貢献するMIPI I3C対応の高精度デジタル電力モニタ

STマイクロエレクトロニクスは、高精度なデジタル方式の電流 / 電圧 / 電力モニタ「TSC1641」を発表した。同製品は、高精度の入力チャネルを備え、先進的なバス・インタフェースであるMIPI I3C(※1)をサポートしている。

TSC1641は、産業用バッテリ・パックやパワー・インバータ、DC電源、データ・センターおよび通信用機器、電動工具をはじめとする幅広いアプリケーションにおいて、電力使用量の最適化と信頼性の向上に貢献する。同製品は、デュアル・チャネルの16bit ADコンバータを使用してDC電流とDC電圧を同時にモニタリングし、内部で電力を計算する。電流測定と電圧測定を同期させることにより、電力を高精度に計算することができる。

同製品は、MIPI I3Cに加えて、I2CおよびSMBusでホストと通信することによって、測定値を送信するほか、電流・電圧・電力・温度が設定範囲を超えた場合に警告を送信することで回路の損傷を防止する。また、警告用のアラート・ピンを備えているとともに、温度検出用センサを内蔵しているため、外付け部品の削減に貢献する。

TSC1641は、60Vまでの電圧測定範囲を備えており、産業機器のさまざまな設定に使える。外付けのシャント抵抗を使用して電流をモニタリングすることで、ハイサイド、ローサイド、および双方向の測定に柔軟に対応する。シャットダウン・モードではわずか50nAしか消費しないため、システム全体の消費電力における影響を最小限に抑えることができる。

また、MIPI I3Cインタフェースにより、STM32H5シリーズなどの最新のマイクロコントローラ(マイコン)をTSC1641に直接接続できるため、システムによるモニタリングを簡単に実現できる。MIPI I3Cは、最大12.5MHzのデータ・レートをサポートし、プルアップ抵抗が不要なため、部品コストや基板面積の削減に貢献する。

TSC1641は、-40°C~+125°Cの広い動作温度範囲に対応する。現在量産中で、DFN10プラスチック・パッケージ(3.0 x 3.0mm)で提供される。単価は、1000個購入時に約1.83ドル。

また、TSC1641を使用した開発をすぐに始めることができる評価ボード「STEVAL-DIGAFEV1」も提供されている。この評価ボードは、STのウェブサイトから入手可能で、単価は約36.00ドル。スタンドアロン・モードまたは、STM32マイコン用開発ボード「NUCLEO-H503RB」に接続して動作させることができる。NUCLEO-H503RBは、MIPI I3C通信をサポートしており、TSC1641設定用のグラフィック・ユーザ・インタフェース(STSW-DIGAFEV1GUI)と、サンプル・ファームウェア(STSW-DIGAFEV1FW)を利用することができる。

(※1)MIPI I3Cは、拡張性に優れた中速度のユーティリティおよび管理用バス・インタフェースで、ペリフェラルとアプリケーション・プロセッサを接続する。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001338.000001337.html

ST、Qiワイヤレス充電器の開発期間を短縮するレシーバ / トランスミッタ評価ボード

STマイクロエレクトロニクスは、Qi準拠ワイヤレス充電レシーバIC「STWLC38」およびトランスミッタIC「STWBC86」をベースとした評価ボード「STEVAL-WLC38RX」および「STEVAL-WBC86TX」を発表した。これらの評価ボードは、最大15WのQi準拠ワイヤレス充電器の開発簡略化に貢献するという。

5W / 15WレシーバICのSTWLC38を搭載した評価ボード「STEVAL-WLC38RX」および、5WトランスミッタICのSTWBC86を搭載した「STEVAL-WBC86TX」は、ワイヤレス充電器の試作開発や試験の期間短縮に貢献する。両製品ともに、開発をサポートするワイヤレス充電トランスミッタ / レシーバ用の評価ツール「STSW-WPSTUDIO」とあわせて使用することができる。

レシーバICのSTWLC38は、Qi 1.3準拠の15W EPP(Extended Power Profile)および5W BPP(Baseline Power Profile)をサポート。5Wのトランスミッタとしても使えるため、機器間の充電において給電もできる。同期整流器と低ドロップアウト(LDO)リニア・レギュレータを集積しているため、受信コイルから電力を4V~12Vでプログラム可能なDC出力電圧に85%の変換効率で変換する。STの適応型整流設定(ARC)モードにより、使用可能な充電面積を最大化し、受信器の検出距離を50%延長可能。また、空間的な自由度が向上するため、機器を最適な給電位置にセットできるようになる。

Qi 1.2.4のBPPに準拠した5WトランスミッタICであるSTWBC86は、高効率、低インピーダンスのフルブリッジ・インバータとドライバを集積しているため、低消費電力化および部材コストの削減に貢献する。同製品は、PWM(パルス幅変調)周波数とデューティ・サイクルを調整することにより、送信コイルから転送される電力を制御する。

STWLC38およびSTWBC86は、幅広い入力電圧範囲で動作できるため、コンスーマ機器や産業機器に最適。両製品ともに、Arm® Cortex®-M0+コアによって最適な効率になるようにダイナミックに制御できる。また、不揮発性メモリ(NVM)を集積しているため、先進的な機能を提供し、ファームウェア・アップデートによるプロトコル更新が可能である。

STWLC38はWLCSP40パッケージ(2.12 x 3.32mm)、STWBC86はWLCSP72パッケージ(3.26 x 3.67mm)で提供され、熱管理および電気保護機能を内蔵している。いずれも小型のチップスケール・パッケージで提供されるため、スペースに制約のあるアプリケーションに最適。

両製品は、ワイヤレス充電トランスミッタおよびレシーバICをベースとしたソリューションの開発期間短縮に貢献します。スマートフォンやタブレット、スマート・ウォッチなどのウェアラブル機器、コンスーマ向け医療機器、ドラッグ・デリバリ機器、携帯型超音波システム、歯ブラシ、シェーバー、コンピュータ周辺機器、補聴器、充電ケース、電動工具、モバイル・ロボットなど、幅広いコンスーマ機器や医療機器、産業機器に最適であるという。

「STEVAL-WLC38RX」および「STEVAL-WBC86TX」は、現在STのウェブサイトから入手可能である。価格は、STEVAL-WLC38RXが72.28ドル、STEVAL-WBC86TXが84.53ドル。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001337.000001337.html

HEREと村田製作所、ジャカルタの交通問題の解決に向け提携

HERE Technologies(以下、HERE)は、村田製作所との提携を通し、インドネシアのジャカルタ市当局に対して交通渋滞に関するこれまでにないインサイトや、さまざまな交通関連の問題を監視、予測し、対処する機能の提供を進めることを発表した。

ジャカルタは交通渋滞でよく知られている。 ジャカルタ警察の交通課によると、2022 年には、通勤者は交通渋滞によって1 回の移動につき平均 30 分を失っている[1]。 従って昨年1年間で、推定 45 億米ドルの経済損失がインドネシアにもたらされたことになる[1]。

HEREと村田製作所の協働は、ジャカルタ市のよりスマートで持続可能な交通管理の可能性を広げるものである。 HEREの地図と交通データを、LiDAR 技術を使用した村田製作所のトラフィックカウンタシステムと統合することにより、ジャカルタ市当局は、車両数、分類、流れの方向、速度などのリアルタイム交通データ、交通量のピーク時間、混雑する移動ルートなどの交通パターンに関するこれまでにないインサイトを得ることができる。さらに、都市のモビリティに関するさまざまな課題を監視、予測して、積極的に対処できるようになる。

また、この交通管理システムは、二酸化炭素や気圧センサに基づいて降雨を予測するなど、環境条件を測定し、浸水する可能性のある/浸水しているエリアや通行不能なエリアを特定することもできる。これにより、交通状況に応じて信号機のサイクルを変更することで特に交通量の多い道路での交通のボトルネックを軽減し、事故を最小限に抑えるなど、道路交通のより適切な視覚化と管理が実現したという。

システムの機能が進化し続ける中、ジャカルタ市当局は、交通渋滞が発生する前に最適なルートを積極的に提案するために、過去の交通データを活用する予測分析の導入を検討している。 また、このシステムとインドネシアのスマートシティ構想の統合を進め、交通信号管理や駐車システム、公共交通ネットワークに接続する計画もあるとのこと。

[1] Train ridership rising in Jakarta, as people seek to escape traffic jams, The Straits Times, July 2023
https://www.straitstimes.com/multimedia/graphics/2023/07/jakarta-traffic-jams/index.html

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000121823.html

海洋ロボットの概要と課題(1)

山本 郁夫(やまもと いくお)
長崎大学副学長・教授
山本 郁夫

1.海洋ロボットとは

 海洋ロボットは、海で観測や作業を行うロボットの総称で、無人潜水機や自律船等が代表的である1)。無人潜水機は有人潜水機の救助やダイバーに代わる危険な水域ミッションを行うために生み出されたものが多く2)、水上の船や陸上の装置と通信、動力のやりとりを行いつつ遠隔操作可能なRemotely Operated Vehicle(以下「ROV」という)と、自らの判断、認識により自律的な行動を可能とする Autonomous Underwater Vehicle(以下「AUV」という)に分けられる3)。これまで、 ROVやAUVは主に海洋の調査に利用されてきたが、最近は洋上風力発電設備の施工・点検や海底油田・ガス田のパイプラインの整備等への適用も広まりつつある。また、船舶のドック入港前検査への活用も期待されている。自律船は広域海洋観測のニーズから近年盛んに開発されており、無人潜水機との連動システムも注目されている。

2.AUV、ROVの概要

 うらしま等の大型長距離自律航走AUVでは、多くの機器を搭載できるスペースを潜水機内に確保できるため、カメラ、ソナー、CTD計、採水器など海中環境、地形計測のための多くのセンサを搭載して多目的な海洋計測が可能である。自律運動を可能とするために、慣性航法装置、速度計、深度計、高度計、GPS等運動計測用センサも搭載できる。しかしながら、小型のAUVでは搭載ペイロードに制限があるため、計測目的を絞る必要がある。ROVは画像による海中モニタリングニーズが多く、センサとしてカメラと音響装置を用いる。図1、図2、図3に示す小型ROVでは小型カメラを搭載し、LEDで海中を明るく照らしながら海中の目標物を画像にて計測する。例えば、図4に示す様な浮体式洋上風車の海中下コーン構造部の状況を画像にて計測するのに有効であり、洋上風車コーン回りの環境計測やコーン最下部の状況をリアルタイムモニタリングが可能である(図5)。海中の電気伝導度、水温、圧力などの環境データの同時計測にはCTD計を用いるが、AUV、ROVのスペースとペイロードが確保できれば搭載できる。近年、ROVはAI(人工知能)によりAUV化される傾向にあり、図6に示すように藻場の位置を搭載のカメラにより計測し、AIがその位置を記憶して、再度ROVの計測地点自動回帰を可能としたり、潮流下で目標画像を捕捉し続けることが可能である。
 AUV の制御系設計はエージェントネットベース4) の制御システムにおいてマクロ設計とミクロ設計を考える。マクロ設計ではそれぞれのAUVを一つのエージェントとして考え、各エージェントがAUV群システムの全体目標を達成するために自律的なオペレーションを行う。ミクロ設計ではそれぞれのソフトウェアコンポーネントをひとつのエージェントとして考え、AUVの目的達成のために自律的な協調を行う。このようなシステムにおいて、階層制御システムソフトウェア設計が重要である。
 意思決定の階層化アーキテクチャは図7に示すようにミッションレベル、プランニングレベル、実行レベルの3層により構成される5)
 ミッションレベルは、スタート、停止、自律・遠隔制御操作の切り替え、自律制御の実行コマンドの管理を含めた、AUVの制御を統合する。
 プランニングレベルは船上装置からコントローラのタイプによってクラス分けされた細部の実行コマンドに 入力された実行コマンド自律シナリオの航行計画を決定する。
 実行レベルは、アクチュエータ、センサ、パワー供給、観測装置などのプランニングレベルから与えられた情報を基に制御装置を動かし、センサ値、観測値、それぞれのアクチュエータからのオペレーション状態をプランニングレベルに送信する。

図1 ROV SUIBOT
図1 ROV SUIBOT
図2 ROV SEABOTα
図2 ROV SEABOTα
図3 REMONA
図3 REMONA
図4 浮体式洋上風車
図4 浮体式洋上風車
図5 ROVによる洋上風車コーン最下部リアルタイムモニタリング
図5 ROVによる洋上風車コーン最下部リアルタイムモニタリング
図6 ROVによる藻場計測
図6 ROVによる藻場計測
図7 自律制御のシグナルフロー
図7 自律制御のシグナルフロー

3.自律船の概要

 自律船は自動で設定航路に従って航行し、海洋観測と作業を行う船舶である。以下「ASV」(Autonomous Surface Vehicle)と称す。ASVは無人潜水機や飛行ドローンを搭載して、複合的なモビリティ群でミッションを遂行する場合もある。図8はROV搭載のASVであり、海ごみ観測や元寇沈船探査にも活用された6)。また、図9に示すような船型ロボットにより採水装置を海中に下して海水を採水し、環境汚染調査、赤潮プランクトンや海洋マイクロプラスチックの把握に用いられる。

図8 ROV搭載ASV
図8 ROV搭載ASV
図9 採水船
図9 採水船


次回に続く-



参考文献

  1. Ikuo Yamamoto,Practical Robotics and Mechatronics,IET (The Institution of Engineering and Technology, UK),Control,Robotics and Sensors Series 99,ISBN978-1-84919-968-1(2016)
  2. 山本郁夫, 「しんかい6500・かいこう」の開発, 日本造船学会誌TECHNO MARINE 885号, pp.107-110, 2005年
  3. 山本郁夫, 日本の水中ビークル技術の技術史 うらしま, 日本造船学会誌TECHNO MARINE 883号, pp.67-70, 2005年
  4. 山本郁夫, 滝本隆, 工科系のためのシステム工学, 力学・制御工学, 共立出版、ISBN978-4-320-08191-8, 2013年
  5. Ikuo Yamamoto, Design of Agent-Net Based Control System of Marine System, Proc. IFAC MCMC, A-3, No.3, pp.1-6, 2006
  6. Ikuo Yamamoto, Akihiro Morinaga and Yasunori Izumi, Development of ASV/ROV joint mobility vehicle for ocean investigation, Proceedings of the Thirty-third (2023) International Ocean and Polar Engineering Conference, Ottawa, Canada, June 19-23, 2023, ISBN 978-1-880653-80-7; ISSN 1098-6189, pp.1130-1134, Jun., 2023


【著者紹介】
山本 郁夫(やまもと いくお)
長崎大学副学長・教授

■略歴

1983.3 九州大学工学部航空工学科卒、同大学院工学研究科修了、博士(工学)。
1985.4 三菱重工本社技術本部、2004.4 海洋研究開発機構、2005.4 九州大学大学院総合理工学府教授、2007.4 北九州市立大学教授、2013.4 長崎大学教授、2019.4 同大学副学長。GlobalScot(スコットランド名誉市民)、フランス国際賞受賞。

専門はロボット工学。実用的なロボットを世界に先駆けて開発することで定評がある。三菱重工業(株)で10000m(10900m)無人潜水ロボットやB787主翼、JAMSTECで300km(317km)以上を自律で航走する水中ロボットを開発してきた。大学では小型飛行体や小型水中ロボット、本物そっくりにおよぐ魚ロボットを世界に先駆けて開発している。宇宙遊泳する魚ロボットも開発した。30年以上のロボット研究歴の中で英国、フランス、日本などでPractical Roboticsの創出法に関する本など多く執筆している。内閣府総合海洋政策本部参与会議自律型無人潜水機(AUV)戦略PT有識者委員。

複数AUV同時運用による海底広域探査(1)

藤原 敏文(ふじわら としふみ)
海上技術安全研究所
藤原 敏文

1.はじめに

 海洋資源探査や海洋構造物の保守点検、海洋経済安全保障等の観点から海中無人機利用に対するニーズが高まっている。
 (国研)海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所(以下、海技研)では、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第1期「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」(2014~2018年)でAUV(Autonomous Underwater Vehicle、自律型無人潜水機)、ASV(Autonomous Surface Vehicle、自律型洋上中継機)の複数機同時運用、SIP第2期「革新的深海資源調査技術」(2018~2022年)では「深海AUV複数運用技術に関する研究開発」で複数AUVの隊列制御技術開発を行ってきた1)2)3)。2023年度からは新たにSIPの海洋課題として「経済安全保障プラットフォームの構築」が開始された(2023~2027年、いずれも研究推進法人は(国研)海洋研究開発機構(JAMSTEC))4)
 他方、海洋ロボティクス関連開発の社会的取り組みの必要性から、新たに閣議決定された海洋基本計画(2023年4月)の中では、AUV開発の重要性がより一層強調されている5)。さらに内閣府では官民一体となっての情報共有と技術開発の方向性を同じにしながら国策として効果的政策を打ち出そうと官民プラットフォームを立ちあげ、AUV開発ロードマップやビジョンを打ち出し、施策を進めているところである6)
 複数AUV同時運用に関連した研究開発は、主に水深2000m以浅で存在する熱水鉱床や水深6000m域に存在するレアアース泥を探索するためのSIP事業技術開発として行ってきた。これまで行ってきた技術開発を総括すると共に、今後の展開について言及する。

2.SIP第1期でのAUV開発

 従前、1機のAUVを運用母船やASVを使って海底、海中観測を行うことが専らの対応であったが、運用は海上の天候に大きく左右される。さらに高額な傭船、運用費用を鑑みると、単機AUVの運用では作業効率向上が期待できず、複数AUV運用は今後の海洋観測を促進する上で、必須の方策となることが予想された。また、大型のAUVとなると専用支援船、または限られた船での運用に制限されるために、汎用的に利活用が可能な小型・軽量化されたAUVの開発が望まれた。
 このような状況下、海技研はSIP第1期で、航行性能が優れ、広範囲の観測が可能な航行型AUVと限られた範囲であるが詳細な海底・海中探索が可能なホバリング型AUV、全 5機を開発するとともに、耐波性能の優れた半没水型ASVを開発した。それらのAUVとASVの外観と仕様を図1、表1に示す。いずれも全長4m以下、重量800kg以下と小型・軽量化された仕様であり、専用支援船を必要としないため、例えば数トン級のクレーンを装備した作業船で運用が十分可能である。
 海底鉱物資源探査のための代表的な運用イメージを図2に示す。船舶による広域調査を行いながら水深と海底状況の大まかな様子を把握する。海底鉱物資源が存在すると予想される海域において、航行型AUVを複数機用い、短時間に広範囲の調査を実施する。海技研航行型AUV(2号機から4号機)はMBES(Multi-Beam Echo Sounder、マルチビーム音響測深機)を搭載しており、80~100m程度の海底からの高度で観測を行う。分解能1m以下程度で海底地形を把握できるため、チムニーなど熱水鉱床の存在を把握する事が可能である。その後、熱水鉱床の形状、分布状況などを詳細に映像にて確認することが望まれるため、同地点にホバリング型AUVを投入し、画像データによる状況把握を行う。SIP第1期では、ASVを用いた複数AUV同時運用を実現し、最大5機のAUV同時観測を成功させた。

図1 海技研で技術開発・運用中のAUVとASV(写真右から航行型AUV2, 3, 4号機と半没水型ASV、前列はホバリング型AUV“ほばりん”)
図1 海技研で技術開発・運用中のAUVとASV
(写真右から航行型AUV2, 3, 4号機と半没水型ASV、前列はホバリング型AUV“ほばりん”)
図2 AUV各機に探査機能を分担させた複数機AUV運用のイメージ
図2 AUV各機に探査機能を分担させた複数機AUV運用のイメージ

3.SIP第2期での複数AUV隊列制御技術による海底観測

 SIP第2期では、第1期を上回るAUVの運用効率を目指して、AUV隊列制御技術の開発および海底観測運用の実証を実施した。その中で多機関の種別の異なるAUVの同時利用が要望されるとともに、AUV10機の同時運用を可能とするシステム開発を行うこととした。
 多機関・異機種合同の海底調査等を実施する場合、異なる制御システム・通信プロトコルを有するため、多くの場合、各機関のAUV艇体内制御アルゴリズムを修正する必要がある。そのような状況下、制御アルゴリズムの改変を限りなく少なくし、多数AUVの同時運用を容易に可能とするシステムが望まれた。そこで、ASVを基準(リーダー的役割)として、ASVからの監視から外れそうな事象が生じる場合のみ各AUVに増減速を指示し、絶えずASVの監視域に留まるような隊列制御システム(基本隊列制御システムと呼称)を構築、実海域で複数機AUVを用いてシステムの有効性を検証した。実施概念図を図3に示す。
 各AUVは、試験前に計測スタート時刻、スタートまでの待機行動、終了後待機時刻・行動、および航行地点データ(WP、情報としては緯度・経度・深度等)を保持し、水中に投入される。ASVの位置を基準とした図中の自由航行域に全機留まることを基本とし、そこから外れる距離割合に応じてAUVの増減速度を基本隊列制御システムがASVを通じて指示する。

図3 SIP第2期で開発された複数AUV統括監視・制御システム(基本隊列制御システム)
図3 SIP第2期で開発された複数AUV統括監視・制御システム(基本隊列制御システム)
図4 複数AUV運用実証試験(基本隊列制御システム使用)で用いたAUVとASV
図4 複数AUV運用実証試験(基本隊列制御システム使用)で用いたAUVとASV

 最終的には2022年9月に海技研航行型AUV2、3、4号機、株式会社IHI所有AU3、JAMSTEC所有ASVのKaiKooを用い、技術開発的には10機以上の運用を可能とする隊列制御システムを用い、AUV4機による海底地形観測を実施した。使用したASV、AUVを図4に示す。
 駿河湾水深1300m域で行った試験でのMBES観測による海底地形図を図5に示す。MBESの音響ビームのラップ率は50%程度としたが、30%での観測においてもデータの欠如なく観測を行うことができた。結果として、多機関・異機種AUVによる運用を実現、欠測域のない超高解像度海底地形計測に成功した。

図5 複数AUV運用実証試験で得られた海底地形図(駿河湾水深1300m域、1m間隔分解能、上図:AUV航路と高低図、下図:同観測域の陰影段彩図)
図5 複数AUV運用実証試験で得られた海底地形図
(駿河湾水深1300m域、1m間隔分解能、上図:AUV航路と高低図、下図:同観測域の陰影段彩図)


次回に続く-



参考文献

  1. 藤原敏文ほか:特集号 海技研AUV研究開発、海上技術安全研究所報告第21巻第4号、2022
  2. 藤原敏文、金岡秀、篠野雅彦ほか:海技研AUV開発最新状況、海上技術安全研究所報告第21巻別冊、2021
  3. 金岡秀、佐藤匠、岡本章裕ほか:高度な海洋調査に向けた海洋無人機システム、令和5年秋季日本船舶海洋工学会講演会論文集、2023.11開催
  4. 内閣府:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期(令和5年~)課題一覧、
    https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/sip3rd_list.html
  5. 内閣府:第4期海洋基本計画、
    https://www8.cao.go.jp/ocean/policies/plan/plan04/plan04.html
  6. 内閣府:官民プラットフォームについて、
    https://www8.cao.go.jp/ocean/policies/auv/call_for_participants/auv_index.html


【著者紹介】
藤原 敏文(ふじわら としふみ)
(国研)海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所 研究統括監 工学博士
SIP第3期海洋安全保障プラットフォームの構築 海洋ロボティクス調査技術開発 テーマリーダー

■略歴

  • 1994年大阪府立大学(現、大阪公立大学)大学院工学研究科修了
  • 1994年運輸省船舶技術研究所 運動性能部 研究官
  • 2003年英国サウサンプトン大学 工学部船舶科学科 上級客員研究員
  • 2004年海上技術安全研究所 輸送高度化研究領域 主任研究員
  • 2011年同 海洋開発系 海洋システム研究グループ長
  • 2016年同 海洋利用水中技術系 海洋エネルギー研究グループ長
  • 2018年同 海洋先端技術系長
  • 2021年海上・港湾・航空技術研究所 研究監
    (兼)海上技術安全研究所 海洋先端技術系長
  • 2023年海上技術安全研究所 研究統括監

船舶・海洋構造物の風・波等外乱下での運動特性に関する研究、安全性評価研究に従事、最近では海洋再生可能エネルギー関連、AUV研究開発に関与
https://researchmap.jp/read0079257

ホバリング型AUVによる海中探査技術(1)

松田 匠未(まつだ たくみ)
明治大学 理工学部 専任講師
松田 匠未

1.はじめに

 近年,海中ロボットによる海洋探査が広く行われるようになっている.海中には水産資源や金属資源をはじめとした生活を支える資源が存在しているが,水圧や呼吸の問題によって人は水中に容易にアクセスできない.海中ロボットは人の代わりに海中を調査するためのプラットフォームとして期待されている.特に自律型海中ロボット(AUV: Autonomous Underwater Vehicle)は航法センサやコンピュータを搭載しており,全自動で海中探査を行うことができる.AUVの中でも海底に接近して画像観測などを行うことができるタイプをホバリング型AUVと呼ぶ.本稿ではホバリング型AUVについて説明するとともに,ホバリング型AUVによる研究事例を紹介する.

2.ホバリング型AUV

 ホバリング型AUVは,推進器(スラスタ)によって自由度の高い航行が可能であり,一般的にサージ(前後),スウェイ(左右),ヒーブ(上下),ヨー(方位)の4自由度を制御することができる.AUVのタイプには他にクルーズ型とグライダー型がある.クルーズ型は細長い形状で後方にスラスタを搭載しており,推進性能が高いタイプである.一方,グライダー型はスラスタを搭載せず,機体の浮力を変化させて航行する.クルーズ型やグライダー型と比較して,ホバリング型AUVは海底に接近した状態を維持することができるため,詳細に観測が必要なエリアの調査に適している.
 図1に東京大学生産技術研究所巻研究室で開発されたホバリング型AUV Tri-TONを示す.Tri-TONは鹿児島湾の熱水噴出地帯の画像観測などに適用されている1).水中では電波が急速に減衰するため,陸上のように衛星測位を直接利用することはできない.代わりにAUVは複数の航法センサを搭載し,センサの計測情報を統合することで水中での位置や姿勢を推定する.Tir-TONの場合,圧力センサやジャイロで水深と姿勢を計測する.またドップラ式対地速度計(DVL:Doppler Velocity Log)により海底からの高度や海底に対する速度を計測し,一軸の光ファイバジャイロ(FOG:Fiber Optic Gyro)により方向を計測する.このような複数のセンサの計測値を組み合わせることで,水中での3次元位置や姿勢を把握しながら,Tri-TONは海底に沿って探査活動を行う.
 図2にホバリング型AUVが撮影した海底画像を示す.海底に接近することで海底環境の様子を知ることができる.

図1 AUV Tri-TON
図1 AUV Tri-TON
図2 ホバリング型AUVが観測した画像の一例.海底に生息する魚の様子を把握できる.
図2 ホバリング型AUVが観測した画像の一例.海底に生息する魚の様子を把握できる.

3.研究事例紹介

 ここまでホバリング型AUVについて紹介してきた.海底に接近できるため他のタイプのAUVと比べて海底の精密観測に向いている.しかし水中では衛星測位を陸上のように利用できないため,水中での測位方法が重要となる.前章で述べたようにAUVは様々な航法センサの計測値を組み合わせて位置や姿勢を推定するが,センサには計測誤差が含まれており,時間とともに推定誤差が増加する.この推定誤差の増加を抑えるために様々な方法が研究されているが,これまで筆者らが開発した方法を紹介する.

3.1.海底ステーションを基準局とした探査手法

 探査する海域に海底ステーションと呼ばれる測位の基準局を設置して,ステーションを基準にAUVは位置や姿勢を推定する方法を開発した2).ステーションの設置位置はあらかじめ船舶から音響測位装置を用いて地球上の位置(緯度・経度)を計測する.図3のようにAUVはステーションと相互に音響信号をやりとりして相対位置を求め,さらに搭載した航法センサの計測値と組み合わせることで,ステーションの周囲で高精度な測位が可能となる.本手法を搭載したAUVとステーションにより,鹿児島湾の海底画像観測に成功している.

図3 海底ステーションを基準とした相互音響測位手法 2)
図3 海底ステーションを基準とした相互音響測位手法 2)


次回に続く-



参考文献

  1. T. Maki, Y. Sato, T. Matsuda, A. Kume, T. Sakamaki, and T. Ura, “AUV Tri-TON-A hover-capable platform for 3D visualization of complicated surfaces,” Underwater Technology Symposium (UT), pp.1–6, 2013.
  2. T. Maki, T. Matsuda, T. Sakamaki, T. Ura, and J. Kojima, “Navigation Method for Underwater Vehicles Based on Mutual Acoustical Positioning With a Single Seafloor Station,” IEEE Journal of Oceanic Engineering, 38(1), pp.167-177, 2013


【著者紹介】
松田 匠未(まつだ たくみ)
明治大学理工学部 専任講師

■略歴

  • 2012年3月東京大学大学院 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 修士課程修了 修士(環境学)
  • 2015年3月東京大学大学院 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 博士課程修了 博士(環境学)
  • 2015年4月~2019年3月東京大学生産技術研究所 特任研究員
  • 2019年4月~2020年3月東京大学生産技術研究所 特任助教
  • 2020年4月~現在東京大学生産技術研究所 協力研究員
  • 2020年4月~2021年9月明治大学理工学部 助教を経て2021年9月より現職

■所属学会

  • IEEE OES,日本船舶海洋工学会,海洋調査技術学会,日本ロボット学会

■受賞歴

  • 2020年海洋調査技術学会 第32回研究成果発表会 若手優秀発表賞
  • 2021年海のフロンティアを拓く岡村健二賞
  • 2022年日本ロボット学会 第37回研究奨励賞

■専門分野

  • 知能ロボティクス,フィールドロボティクス,自律型海中ロボット(AUV),マルチロボットシステム

海洋ロボコンを経て進化する海洋ロボット技術(1)

岡田 正之(おかだ まさゆき)
九州職業能力開発大学校
生産電子情報システム技術科
特任能力開発教授
岡田 正之

1.はじめに

 2013年当時、次世代海洋資源開発として、産学官(文部科学省、経済産業省、国土交通省)連携により、次世代海洋資源開発の基盤的技術から実用化段階までの展開が進行中であり、システムの技術的課題や経済性などに関する検証が積極的に行われていた。これにより、我が国の産業界、学術界、および官公庁の協働を通じて、次世代海洋資源の開発におけるプレイヤー(産業)の育成を図るプロジェクトが着実に進展していた。
 このプロジェクトの一環として、沖縄海洋ロボットコンペティション(以下、沖縄海洋ロボコン)開催を考えるに至った。この大会は、「国内企業等の技術力および経験の蓄積」、「包括的なエンジニアリング能力の取得および増強」、「人材育成」を通じて、資源開発のリーダーシップ九州職業能力開発大学校を担う人材の育成を目指している。こうした取り組みを通じて、海洋資源開発の重要性を認識し、その未来に向けての持続的な展望を築くとともに、我が国の技術とイノベーションの力強さを証明する場としての役割を果たしていくことを目的としている。
 また、次世代海洋資源開発において、地理的条件が最も適している場所として沖縄が挙げられる。特に、沖縄近郊の東シナ海領海における海底調査が太平洋側に比べて遅れている現状がある。この地域には、深海1000メートル以内において熱水鉱床や天然資源が存在する可能性が高いと考えられており、これに着目し、海底探査で自律型無人潜水機(以下、AUV)を活用して推進していく。
 さらに、沖縄海洋ロボコンは、全国および近隣諸国の研究機関を招聘し、技術交流を含む研究会を定期的に開催することで、技術力向上を図るプロジェクトである。これらの交流会は海洋関連テーマを包括的に取り扱い、海洋再生可能エネルギー、海洋バイオテクノロジー、水産業の振興など、幅広い領域にわたる海洋開発に関する議論の場として位置づけられている。これにより、沖縄を未来の海洋開発拠点として確立するための基盤づくりを推進していく。我が国の次世代海洋資源開発は、綿密な計画と協力を通じて、持続可能な未来への架け橋としての役割を果たすことを目指して始まった。
 沖縄海洋ロボコンの開催に至るもう一つの要因として、九州職業能力開発大学校で過去に取り組んだ課題、「浅海用AUVEMM(Autonomous Underwater Vehicle for Electro-Magnetic Measurement)の開発」が大きく関わっている。まず、このテーマについて述べる。

2.浅海用AUVEMMの開発

図1.21世紀に入り発生した地震の震源分図1.21世紀に入り発生した地震の震源分

 21世紀に入り、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震を筆頭に、図1に示すように日本各地でマグニチュード6以上の大地震が多発し、各地に甚大な被害をもたらしている。2005年3月20日に発生した福岡県西方沖地震(M7.0)や2007年3月25日に起きた能登半島沖地震(M6.9)など地震発生の危険性が少ないと思われていた場所での地震が立て続けに起こり、地震災害対策の必要性が叫ばれている。地震などの地球活動による自然災害は、人間の生活において人命や財産の損失に繋がり、大きな社会的問題となっている。そのような災害発生を未然に検知するためには、その発生機構などを解明する必要がある。つまり、地球の活動を正確に把握・理解することが必要であり、そのためには、地球内部構造を詳細に把握すると共に、その活動の物理過程をも解明する必要がある。地球内部は、我々の肉眼では見ることのできない世界であるが、固体内部を伝播する地震波や電磁場変動を用いることでイメージング(可視化)することが可能である。ただ、現状は、殆どの観測は陸上でなされたものであり、海に囲まれた日本全体の構造を把握するためには海域での観測が不可欠である。
 特に、複雑で活発な低層流のある浅海底において、極微小な自然電磁場変動を計測する機器OBEM[1](Ocean Bottom Electro – Magnetometer:海底電位差磁力計)は実用化されていなかった。そこで、水深200m程度までの浅海底(沿岸域から大陸棚領域)において、自然電磁場変動を計測する機器の開発に取り組むこことした。図2にOBEMの構成図を示す。
図2.海底電磁計測装置(OBEM)構成
図2.海底電磁計測装置(OBEM)構成

 山陰沖での海底電磁場観測を2007年6月25日から8月22日まで実施した。観測場所は、山陰沖の水深243mの101箇所で、図3に示す。

図3.山陰沖での海底電磁場観測
図3.山陰沖での海底電磁場観測

 図3で示した通り、自然浮上による回収作業のため何処に浮上するか分からず何回か回収に失敗した経験もある。図4に8月1日における海底電磁場データを示す。で囲まれた箇所のデータでBxーEy,ByーExが高相関となっている。このことも含めて、この測定値は信頼できる結果であると言え る。

図4.海底電磁場データ(2007年8月1日)
図4.海底電磁場データ(2007年8月1日)

 OBEMでの電磁場観測では、長期間海底での観測および自然浮上による回収のため常に観測装置をロストする危険がある。
 従来の電磁場変動計測機器では、設置・回収に時間と労力を要した。そこで、より短周期の電磁場変動を観測するために、自律型海中ロボットを用いた電磁場変動計測機器AUVEMM[2](Autonomous Underwater Vehicle for Electro-Magnetic Measurement)の開発に着手した。
 電磁場変動計測装置部は、既存の技術を活用することで順調に開発することができたが、AUV(Autonomous Underwater Vehicle)の開発は、作成経験がなく、また、技術的な課題も多く、難航した。その結果、担当学生のモチベーションが低下し、開発が停滞する状況となった。
 このような状況を受け、学生から他大学の海洋(水中)ロボット分野における技術力や技術交換も含めて競技会等の要望があった。そこで、海での海洋ロボット大会を開催する試みを行った。

3.海洋ロボットコンペティションin沖縄開催

 はじめにでも述べたように、沖縄21世紀プランにおいても次世代のリーディング産業の一つとして海洋産業を掲げている。一方、沖縄には海洋資源分野の專門の研究施設がなく研究者・技術者・学生等の專門的スキルアップが図れない状況にある。
 そこで、長崎大学 山本郁夫教授の協力で沖縄県内閣府でのプレゼンテーションが功を通し、予算面等で協力体制ができた。
 これにより県内の高等教育機関や企業等の研究開発成果を発表する場となるとともに県民や児童生徒・学生の沖縄の海洋資源関連産業や海洋ロボットの可能性について理解を深める場となる。この趣旨で、企業及び大学院、大学、高等工業専門学校(高専)、専門学校等によるグループまたは個人による参加を呼びかかけた。コンテスト部門としては、ROV(Remotely Operated Vehicle)、AUVに分かれての競技とした。審査方法は、1)独創性・コンセプト、2)運動性能・技術性、3)プレゼンテーション、4)実機デモンストレーションを評価基準とした。

3-1. AUV仕様

 水中ロボットコンテスト競技大会は、10年以上の歴史を持つ大会で水中ロボット開発や人材育成に大きく寄与している大会である。この競技大会は、プールを使用しての大会であり、学生等がアイディアや水中ロボットに興味を持たせるには恰好な大会である。しかし、AUVやROVが実際に活用されるのは海である。AUV(またはROV)は、海水仕様(3)と真水使用では特に防水面において難易度が格段に違ってくるが、我々は敢えて「海洋ロボットコンテストin沖縄」に出場するためにこの難関に挑むこととし開発[3]に着手した。海洋研究開発機構からの援助もあり、吉田弘様から初年度は3回の技術セミナーを開催し参加チームの技術向上に努めた。

3-2. AUVの機構

 筐体は、図5に示す通りアクリル製とし前後にアルミで蓋をする構造とした。アルミ蓋にはOリングを使用することで防水対策とした。また、浮力と重心を調整するためにバランサーを付けて、海水の比重変化にも対応できるようにした。

図5.AUV外観
図5.AUV外観

① 蓋部分の防水対策について
 Oリングを2つ用いて図5に示すように設置する。さらにグリスをアクリルパイプとOリング周辺に使うことで密封性を高めた。合わせて、前後の蓋にはステンレスの板を取り付け、シャフトを通して面接触になるようボルトで固定することにより稼働中に蓋が外れて浸水することを防いでいる。メンテナンスを考えアルミ蓋には、空気抜き用シールプラグの穴を設けている。

図6.蓋部分の防水
図6.蓋部分の防水

② スラスタ
 スラスタは、スクリューシャフトに軸ぶれ防止用にカップリングとベアリングを使用して軸の安定化させた。カップリングにはスリット型を使用し、オイルシールとベアリングの空間にはグリスを注入して防水効果を高めている。動力は、DCモーター駆動で12V(トルク167mN-m)を使用している。

図7.スラスタ
図7.スラスタ

 筐体とスラスタは、学生の設計により作成したものである。外部ケーブルとコネクタ以外は、機械系学生が作成したものである。作成に当たり、セミナーを受けて完成度の高い筐体とスラスタを完成させている。

図8.本体外観
図8.本体外観

 「海洋ロボットコンペティションin沖縄」プレ大会の優勝AUVである。搭載しているセンサ類は、USBカメラ、3軸地磁気センサ(方位)、センサ(深度)と加速度センサを載せている。

3-3. 大会参加者の推移

 会場は、北谷町海岸(1)、波の上(2)、宜野湾漁港(6)と場所は変更しながら開催してきている。ROV競技は順調に参加者はいるが、AUV競技については伸び悩んでいる。第8回からは、韓国のチームも参加するようになって国際大会に発展しつつある。第9回大会からは、企業協賛金と参加費での運営となり協力企業が集まらなければ中止となる。
 また、第4回からは知能チャレンジ部門を設け、この大会から新たな技術を提供する試みを始めた。第8回大会の知能チャレンジの技術報告を紹介する。

表1.競技参加数
  ROV AUV フリー 知能チャレンジ
ROV AUV
プレ大会 6 5 1    
第1回 9 4 1    
第2回 6 3 2    
第3回 8 5 5    
第4回 6 6 1 1 0
第5回 6 6 1 1 0
第6回 7 3 9 1 2
第7回 7 3 7 2 2
第8回 13 4 4 3 中止


次回に続く-



参考文献

  1. 浅海用OBEMの開発 平成19年度開発課題報告書、九州職業能力開発大学校 2007年
  2. 浅海用AUVEMMの開発 平成21年度開発課題報告書、九州職業能力開発大学校 2009年
  3. 海中ロボットの開発 平成26年度開発課題報告、沖縄職業能力開発大学校


【著者紹介】
岡田 正之(おかだ まさゆき)
九州職業能力開発大学校 生産電子情報システム技術科 特任能力開発教授

■略歴

  • 1981年 3月東海大学工学部光学工学科卒業
  • 1990年 4月北九州職業訓練短期大学校講師
  • 1993年10月国際協力事業団出向 ブラジル国長期派遣
  • 1995年 6月北九州職業能力開発短期大学校 情報技術科 講師
  • 1999年 4月九州職業能力開発大学校 専門課程 情報技術科 准教授
  • 2000年 3月九州芸術工科大学大学院 博士後期課程修了
  • 2002年 4月九州職業能力開発大学校 応用課程 生産情報システム技術科 教授
  • 2013年 4月沖縄職業能力開発大学校 応用課程 生産情報システム技術科 教授
  • 2016年 4月九州職業能力開発大学校 応用課程 生産情報システム技術科 教授
  • 2020年 4月九州職業能力開発大学校 応用課程 生産電子情報システム技術科 特任能力開発教授

2014年から沖縄海洋コンペティションに実行委員として参加