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SEQSENSE、警備ロボットサービスに「倒れている人検知」と「消火器検知」を搭載

 SEQSENSE(株)は、警備ロボットサービスの一部として、体調不良者などを発見する「倒れている人検知」と消火器の有無や倒れている状態を自動判定する「消火器検知」の2つの新機能を2024年2月1日より正式リリースする。
 画像認識を駆使したこれらの機能は、警備現場で発生している異常を検知し、警備員にリアルタイムに通知する。これにより迅速な対応が可能となり、安全性の向上に寄与するという。

■背景
 ロボットが代替できる業務の中でも、建物全体をくまなく回り、決められた箇所を順々に目視する「巡回」は、異常や不審な点を早期に発見する重要な業務である。その一方で、巡回中の確認箇所は、建物の特徴によって異なり、またその広さにより無数に存在するため、人が対応すると非常に作業負担が高く、確認漏れも発生しやすい状況である。
 このような状況を受けて、巡回業務の中でも特に重要度が高く、頻度の高い確認項目を、お客様へのヒアリングを重ねながら洗い出した。その結果、今回「倒れている人検知」と「消火器検知」機能を新たに開発・搭載した。

■機能 ・倒れている人検知
 ロボットが稼働中に、体調不良やそのほかの事情で倒れている可能性のある方を自動で検知し、警備員に向けてアラートを発報する。この機能を利用することで、警備現場で発生した異常を発見しやすくなり、より迅速な対応をすることが可能になる。

・消火器検知
 ロボットが巡回中に、各消火器設置箇所で消火器の有無や、倒れている状態などを自動で判定する。異常を検知した際はロボット巡回時のレポート結果に反映することができる。この機能を利用することで、従来警備員による巡回の際に目視が必要だった消火器点検作業の大幅な効率化が期待される。

プレスリリースサイト(seqsense):https://www.seqsense.com/news/5p__-1kayd6v

ヒト嗅覚受容体センサの開発および匂い情報DXの実現 
Development of human olfactory receptor sensor and realization of odor information DX(1)

黒田俊一(くろだ しゅんいち)
大阪大学 教授
黒田 俊一

1.はじめに

 次世代情報社会において「ヒト嗅覚情報の記録、保存、伝送、再構成(一連の流れを『匂い情報DXと定義』」を実現するには、ヒト嗅覚が感じる全ての匂いを、出来るだけ単純な共通フォーマットで客観的かつ一意的なデジタルデータとして表現する必要がある。そのために使用する匂い評価法は、限られた匂いしか検出できない酸化金属や有機ポリマーによる従来型匂いセンサ、匂わない気体分子も全て検出しデータが膨大化するGC-MS(ガスクロマトグラフ・質量分析計)、各個人の嗅覚特性に依存した主観的な官能試験などがあるが、これらは匂い情報DX実現には必ずしも適していない。それは,匂い分子だけでも40万種類以上存在し,通常は複合臭で存在するので,その組成は無数になることが大きな理由である。
 一方,約1兆種類の単純臭や複合臭を識別可能なヒト嗅覚は、嗅上皮に存在する嗅神経細胞(Olfactory sensory neuron; OSN)に発現する嗅覚受容体(Olfactory receptor; OR)全て(本論文では388種類)が、それぞれ匂い対し異なる強度で応答し、全体でパターン認識する1)。そこで,各ORの応答強度を指標にすれば、ヒトが感じるほぼ全ての匂いを388次元のパラメーターで表現可能になると考えられた。
 本稿では、匂い情報DXを強力に推進するために開発した全ヒトOR発現細胞(388種類)を使用したヒト嗅覚受容体センサについて紹介する。

2.ヒト嗅覚受容体センサの開発

 当初は、マウス嗅上皮からOSNを単離して、任意の匂いに応答するOR群を同定する試み(deorphanization)が数多くなされてきた。最近では、マウス嗅上皮由来細胞をセルアレイ化して、匂いに応答したOSNだけを、1細胞単離するロボットが開発されているが2)、ヒト嗅上皮の単離は倫理的にも不可能であるため、全ヒトOR遺伝子を異種細胞に発現させたライブラリーから匂いに応答するOR発現細胞を探索する方法が主流である3)
 しかし、ORを異種細胞で発現すると、ORが小胞体に凝集・蓄積し分解されることが多く4)、全てのヒトORを細胞表面に提示させ、匂い分子応答可能にすることは困難であった。松波らは、シャペロンであるRTP1,RTP2,REEP1を導入したHEK293細胞(Hana3A)と、N末端にRhoタグを付加したORの組合せが,大幅に細胞表面発現を改善することを見出した5)。特にRTP1のC末端側が異なるRTP1SがORの細胞表面発現や匂い分子応答をより強く改善した6)。また、Lucyタグ7)やIL-6-Haloタグ8)が、Rhoタグよりも幅広いORの細胞表面発現を可能にした。さらに、非ORのGタンパク質共役型受容体(βAR, M3R)の共発現がORとヘテロダイマーを形成して細胞表面への移行を改善した9,10)。特に、M3Rの共発現はβアレスチン2を介するORのインタナライザーションを抑制した11,12)。次に、OSN特異的なGタンパク質α GNAL13)、Gαタンパク質のシャペロンであるRic-8B14)などの共発現、高感度なcAMP検出用LuciferaseであるGloSensorの採用15)などにより、セカンドメッセンジャー(cAMP)生成・検出系の改善も行われている(図1左下)。
 以上の試みにより、大半のヒトORがHEK293細胞の細胞表層で匂い分子認識ができるようになり、任意の匂い分子に対して応答する嗅覚受容体群を同定することが可能になってきている16)。さらに最近では、全てのORを細胞表面発現させるために、RTP非依存的に細胞表面発現するORの構造的特徴が見出されている17,18)。しかし、この構造的特徴の導入は、OR本来の匂い分子認識能を変化させる可能性があり、ヒトOR全てを使用する網羅的deorphanizationには現時点では採用できない。
 以上の全てのORの細胞表面発現と匂い分子応答能を改善する試みは非常に重要であるが、その多くが匂い刺激後30分間から4時間のOR応答によるセカンドメッセンジャーcAMP生成量のエンドポイント測定である。ヒト嗅覚は匂い刺激直後から強く応答し数分間のうちに順応する。この過程はOSNのOR応答に大きく依存しており、匂い情報DXを実現するためには、OSNの活動電位変化をリアルタイム測定することが最善であるが、現状では多くのOR発現細胞を一度に測定するのは困難であるので、細胞内Ca2+変化をリアルタイム測定するのが望ましい19)
 具体的には、上記OR発現細胞に、環状ヌクレオチド作動性チャネル(CNG)とCa2+依存性蛍光タンパク質(GCaMP)を導入し、388種類のヒトORをそれぞれ発現したHEK293T細胞を用意する20)(図1右下)。次に、スライドグラス上に0.5mm四角のマイクロウェルを20列×20行に配置し、ロボットを使用して、各マイクロウェルに各OR発現細胞を約400-500細胞ずつ整列配置したセルアレイとし、還流装置にセットし、蛍光顕微鏡で観察する(ヒト嗅覚受容体センサ)。対象の匂いを溶解したリンゲル溶液を還流させ、アレイ全体をビデオ撮影して、匂い分子に応答するORを発現する細胞が発する蛍光を記録する(図2上段)。
 1細胞解析により得られた各細胞の膨大な波形から、機械学習したAIプログラムにより、匂いに応答したOR由来の波形を抽出し、平準化した各ORの応答波形を得る。この方法により、筆者らは数多くの匂いを388種類のヒトORの応答強度で、単純臭、複合臭を問わず表現できる(匂いマトリックスと呼ぶ)(図2下段)。この時、同じORでも異なる匂い分子に対する応答波形は異なるので、この匂いマトリックスは各ORにつきそれぞれ経時的変化も含んでいるが、通常は簡略化のためスナップショットを使用している20)。このセルアレイ技術に基づくヒト嗅覚受容体センサは、製薬会社においてGPCR作動薬のスクリーニングに使用されている多くのマイクロプレートと試薬を必要とするFLIPR21)よりも、遥かに迅速かつ安価に、しかも同じ測定セットで異なる条件を連続して測定できる。

3.ヒト嗅覚受容体センサによる匂い情報DX

 ヒト嗅覚において全ORがどのように匂いを認識しているかを正確に調べる網羅的deorphanizationを行うには、現行のヒトOR発現細胞では課題が多い。まず、発現に使用している細胞に含まれるGαタンパク質がOSNと異なる場合、ORの匂い分子応答が変化する22)。また、ヒトORには点突然変異(SNPs)が数多く見られ匂い分子応答が変化する23-25)。さらに、液相中の匂いに対するOR応答を測定しており、ヒト嗅覚では気相中の匂いを、鼻汁を介してOSNのORが応答するので検出感度に大きな差が生じる。しかしながら、匂い情報DXの実現(特に、記録)のためには、固定されたヒトORセットにより、一定の条件で匂いを測定し、ヒトが感じる匂いを全て388次元の匂いマトリックスで定義できれば十分であり、ヒト嗅覚による匂いの感じ方を正確に反映する必要はない。
 これまで、任意の匂いを再構成するには、オリジナルの匂いをGC-MSで成分分析して、主要香気成分を同じ割合で混合すれば再構成できた。しかし、それでは約40万種類と言われる匂い分子全てを用意しなければ、匂い情報DXの再構成を実現できず、実質的に不可能である。特定の香料群(アロマ精油)をGC-MS分析して、同じ香調を示す匂い分子を整理して、任意のアロマ精油の香調を再現する試みがあるが、この方法は広範囲な匂いの再構成には使用できない26)
 筆者らはヒト嗅覚受容体センサとGC-MSを用いて、鰹節、バラ精油、ラベンダー精油、バニラ香料の香気成分を測定した。その結果、各サンプルは数多くの気体成分を含んでいるにもかかわらず、顕著に応答したヒトORは10種類以下であった。また応答ORの中には共通したものが含まれており、鰹節に応答した10種類のORのうち、4種類がバニラ香料にも応答した。バラ精油に4種類のORのうち、1種類がラベンダー精油にも応答した。さらに、各ORをピンポイントに刺激する匂い分子をサンプルには含まれていない匂い分子から選抜し、匂いマトリックスを再現できる比率で混合したところ、鰹節は7種類、バラ精油は4種類、ラベンダー精油は3種類、バニラ香料は5種類のサンプルには含まれていない匂い分子で、オリジナルのサンプルとほぼ同じ香調を示すことができた(㈱香味醗酵HP掲載データ)。この結果は、どんなに複雑な匂いでも、ヒト嗅覚受容体センサにより匂いマトリックスを得て、各応答ORをピンポイントで刺激する匂い分子を混合すれば、遥かに少ない種類の匂い分子で再現可能であることを示している27)
 これまでに、複合臭に対するOSNの応答は、各匂い成分のOSN応答と基本的に線形であるが28)、匂い分子同士の干渉が存在し29)、非線形なOR応答が時折観察される30)。また、濃度依存的に同じ匂い分子がOR応答を促進したり抑制したりするInverse agonistが存在する31)。これらの複合臭における例外的な匂い分子の作用は予期せず起きるため,従来の匂いセンサやGC-MSで匂いを測定しても正確な香調の評価が困難である。
 以上から,特に複合臭に対する香調評価にはヒト嗅覚受容体センサのみが有効であり、匂い情報DX実現に必要な,任意の匂いと同じ香調を有する匂いの再構成に使用する匂い分子は、各ORをピンポイントで刺激する匂い分子のみを使用するほうがよい。

図1 ヒト嗅覚受容体応答のエンドポイント発光測定法とリアルタイム蛍光測定法
図1 ヒト嗅覚受容体応答のエンドポイント発光測定法とリアルタイム蛍光測定法
図2 ヒト嗅覚受容体センサによる匂い測定手順
図2 ヒト嗅覚受容体センサによる匂い測定手順


次回に続く-



参考文献

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  18. Fukutani Y, Nakamura Y, Muto N, Miyanaga S, Kanemaki R, Ikegami K, Noguchi K, Ohsawa I, Matsunami H, Yohda M. 2021 Hot spot mutagenesis improves the functional expression of unique mammalian odorant receptors. Int. J. Mol. Sci. 23 277.
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【著者紹介】
黒田 俊一(くろだ しゅんいち)
大阪大学 産業科学研究所 所長/教授

■略歴

1984年 京都大学農学部農芸化学科卒業
1986年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)
同年 武田薬品工業(株)生物工学研究所研究員
1992年 京都大学博士(農学)
1994年 神戸大学バイオシグナル研究センター助手
1996年 同助教授
1998年 大阪大学産業科学研究所助教授
2002年 ジュネーブ大学医学部客員教授(兼任)
~03年
2009年 名古屋大学大学院生命農学研究科教授
2015年 大阪大学産業科学研究所教授
2017年 (株)香味醗酵取締役(最高科学担当)
~23年
2024年 大阪大学産業科学研究所所長
現在に至る

製薬会社において遺伝子組換えタンパク質製剤の開発研究,大学では細胞内情報伝達機構の研究,DDSナノキャリア開発,全自動1細胞解析単離装置の開発を行った後,現在はヒト嗅覚受容体発現細胞セルアレイセンサの開発と社会実装を行う。日本農芸化学会奨励賞,同学会技術賞,バイオビジネスコンペJAPAN優秀賞,日本バイオベンチャー大賞文部科学大臣賞,ものづくり日本大賞(経済産業大臣賞)などを受賞。

触感定量化に基づく感性価値創造 Kansei Value Creation based on Tactile Quantification(1)

山﨑 陽一(やまざき よういち)
関西学院大学 工学部/感性価値創造インスティテュート
特任准教授
山﨑 陽一
長田 典子(ながた のりこ)
関西学院大学 工学部 教授
感性価値創造インスティテュート 所長
長田 典子

1.はじめに

 ユーザのニーズが多様になり,プロダクトやサービスのカスタマイズ化やパーソナル化への要求が高まっている.この実現には個人の感性を的確に把握し,それにあわせて具体的なプロダクト・サービスのデザインに展開する方法論が必要になる.
 著者らは,感覚・感性を指標化し,指標を介したプロダクトデザインを通して新たな感性価値を創出するための研究に取り組んでいる.また,最近ではDX(Digital Transformation)やEC(E-Commerce)の推進に伴い,触覚情報も視覚・聴覚情報と同様に定量的に扱う方法論への注目が高まっており,この感性の指標化技術の方法論を,触感に展開することで,触感と物理量との関係を定量的に扱うことを可能とする触感定量化技術の研究にも取り組んでいる.本稿では,この触感定量化技術のうち特に触感計測についてその原理を紹介する.さらに当該技術による応用事例としてふきとり化粧水の処方設計,所望のテクスチャ触感を有するハイトマップ生成の事例について紹介する.

2.感性指標化技術の触感への展開

 感性研究において中心的なトピックの一つが印象(イメージ)の定量化である.プロダクトデザイン分野においては,人がプロダクトに対して「好き」や「欲しい」などの感情(感性価値)を抱くのは,「かわいい」や「美しい」といった印象を抱くからであり,またこうした印象は色や表面性状などの物理要因によって形成されると捉えられている.
 我々が研究を進めている感性指標化の枠組み(1)を図1に示す.ここでは感性のモデルを「感情―印象―物理量」の3層からなる階層構造として表現する(2).最下位層である対象の物理量から、上位要素である対象の印象、印象に基づく総合評価である価値や価値によって喚起される内的な情動までの階層的な対応関係を構成する。印象層を介することでヒト(価値)とモノ(物理要因)の対応関係における感性的な価値形成の根拠(因果関係)が明らかになり,プロダクトデザインへのフィードバックが容易になる.また印象層で個人差の補正を行えるので,モデル全体の精度が上がるというメリットもある.
 モデル化のフローは図1に示すように、心理学実験と統計解析に基づくものである.主観評価によって有効な評価語セットと対象物セット(プロダクトやサービス)を選定し,次にこれらの対応関係を主観評価によってデータ化し,統計解析によって指標を構築し、さらに物理要因とマッピングする。フローの各ステップでは開発者の予断や先入観を極力排除し、対象となるヒトが対象となるモノから喚起される反応を正しく取り出し、これを真値 (grandtruth) としてモデルを構築する.こうして構築されたモデルによって,対象物の持つ価値やそれにより喚起される情動を定量化・可視化し,逆に情動や価値をもたらす物理要因を求めることができる.
 著者らは,この感性指標化の枠組みに基づいた触感の指標化・定量化の研究に取り組んでいる.この研究では、他感覚に対する触覚の特殊性を考慮する必要がある.通常,我々は手を動かして物に触れることで触感を得る.このアクティブタッチにより得られる触感は、物の物性値のみでは説明できない.皮膚の振動や摩擦といった人と物の相互作用を考慮することが重要であるとされている(3).つまり、触感と物理量の定量的関係を扱う上で、ヒトの要因を考慮することが鍵となる.本稿で紹介する触感定量化技術は、アクティブタッチ時の皮膚の状態に基づいた触感と物理量の関係性を定量化している.さらに,所望の触感を実現するための枠組みとして,触感計測,シミュレーション,ディスプレイ技術に関する基盤技術と応用研究も進めている(図2).この触感定量化技術は,自動車,化粧品,化学など幅広い業種のプロダクトデザインに展開されている.

図1 感性の階層構造と感性指標化アーキテクチャ
図1 感性の階層構造と感性指標化アーキテクチャ
図2 触感計測提示技術
図2 触感計測提示技術

3.触感計測

 本章では,触感計測の研究について示す(4).当該研究は,モノの表面を撫でた際に得られるテクスチャ触感を,実際にモノに触れた際に生じた振動量に基づいた客観計測の実現を実現するため,摩擦力及び押込みに対する反力の時間プロファイルを計測するための専用デバイスを試作し,布地表面を撫でた際に得られた触感と振動量の同時計測し,そこから振動量から触感を予測するためのモデル構築法を確立した(図3).次に,布地を対象とした触感予測モデル構築の事例を示す.

図3 触感計測の原理
図3 触感計測の原理

3.1.試作装置

 サンプル表面を撫でた際に指の接触面に加わる2軸(垂直,水平方向)のちからの振動情報を計測するための装置を試作した.本装置は,図4に示したように刺激資料を布置する台と,それを垂直及び水平方向から保持する振動板,そして振動板の歪を電気信号に変換するロードセルから構成され,摩擦力と押込みに対する反力の時間プロファイルを計測できる.

図4 触感計測装置
図4 触感計測装置

3.2.主観評価に基づく触感の指標化・定量化

 布地の表面をなでた際に得られる触感を指標化・定量化するため,大学生及び大学院生20名(男性17名,女性3名,平均年齢22.4歳)の参加者を対象とした主観評価実験によるデータ収集と,そのデータを対象とした因子分析を実施した.実験刺激には,質感サンプルセット(武井機器工業株式会社)に含まれる,10×10 [cm]の金属板に貼り付けられた図5(a)に示した13種の布地を用いた.また,評価項目として5つの材質感次元(マクロ粗さ,ファイン粗さ,硬軟感,摩擦感,温冷感)を代表する図5(b)の12項目を採用した.
 主観評価実験において参加者は,実験刺激が見えない状況において,実験刺激を約1 [N]の押込み力で,約5 [cm/s]の速度で撫で,その際に感じた触感を各評価項目についてどの程度当てはまるかを5段階のリッカート尺度により回答した.なお,実験刺激の提示順序は参加者毎にランダマイズした.
 主観評価実験によって,各刺激について12評価項目,20名分の評価データが得られた.このデータから触感の印象を代表する特徴量を抽出するため,まず各刺激について12の評価項目それぞれに対する20名の評価の平均点を求め,これを各刺激の評価項目毎の代表値とした.更に,布地触感の印象に関する心理構造を把握するため因子分析を実施した.因子分析時,因子抽出法は最尤法,回転はプロマックス回転,因子数はカイザーガットマン基準により決定した.その結果として,布地の触感は粗さ(roughness)と硬さ(hardness)の2因子により表現できることが分かった(図5(b)).これは,各刺激の触感を粗さと硬さの因子得点により感性量を指標化できることを意味するものである.図5(c)は,粗さと硬さの2次元空間における各刺激の分布を示したものであり布地の特徴を良く捉えており,真値として適切な指標が得られたことが分かる.

図5 布地触感の指標化・定量化の結果
図5 布地触感の指標化・定量化の結果

3.3.振動計測と特徴量抽出

 前述の試作装置を用いて,主観評価実験と同様の条件で布地を撫でた際に皮膚に生じた振動を計測し特徴量を抽出する.計測は,主観評価実験に参加した20名の参加者を対象として, 13種類の布地について実施した.参加者は,1種類の布地について1.02[N]の押込み力で,5 [cm/s] の速度でサンプルを上から下に向かって10回撫で,その際の振動記録した.
 触感は指の皮膚内部に存在する4つの触覚受容器を介して振動が知覚されることで形成される.この触覚受容器は,3つの異なる振動周波数に対して感度を持ち,指全体で振動周波数に対してフィルタバンク状のセンサ構造を形成することが知られている.これは振動情報が脳に伝達される以前に受容器が応答する振動周波数に対応した少数の要素に集約されることを意味しており,触感と振動の関係をモデル化する上で,振動情報,すなわち周波数特性を集約的に表現することが触感との関係を考える上で有意であるといえる.
 この観点から,収集された摩擦力・押込み力のデータについて,4つの触覚受容器の周波数応答の多様性を表現する大凡200[Hz]までの情報を抽出し,周波数特性としてパワースペクトル密度を求め,得られたスペクトルに対して主成分分析を適用した.その結果として,摩擦力については6,押込み力については15の主成分を抽出した.図3には,主成分負荷量を示しており,図中のそれぞれの線は主成分の基底ベクトルであり,周波数成分の関連の強さを表している.各主成分は,ことなる周波数帯域を代表している.また,主成分に対応する主成分得点は,主成分が代表する周波数帯域の振動の大きさを表す特徴量であり,これを振動特徴量として採用した.

3.4.触感予測モデルの構築と評価

 触感予測モデルは,触感指標を目的変数,振動特徴量を説明変数とした重回帰分析により構築する.図6(a)は,布地の触感を構成する粗さ(roughness),硬さ(hardness),それぞれのモデル構造を示したものである.この結果から,粗さ,硬さは異なる周波数成分から形成されており,必ずしも振動の大きな成分が触感形成に寄与していない.これは主成分分析が振動の機械的特性を反映したものであり,必ずしも周波数毎の振動の知覚量と対応しないことに起因する.この知覚量への変換特性はモデル係数の重みとして反映されている.
 更にモデルの予測精度について,leave-one-out交差検証法による検討を試みた.交差検証では,布地の1つを未学習データとして選択し,残りのデータを学習データとしてモデルを構築し,構築したモデルにより未学習データの各触感因子の予測値を求めた.これを1全ての布地について行い,未学習データから得られた触感の予測値と主観評価によって得られた触感の観測値とを比較した.図6(b)は,各触感についての評価結果で,何れの触感についても一直線上に布地が分布しており,決定係数は粗さ,硬さそれぞれ0.89,0.85と高く,著者らの提案した手続きにより触感を高い精度で振動情報から予測できるモデル構築が可能であることが分かる.

図6 布地触感の予測モデルと評価結果
図6 布地触感の予測モデルと評価結果


次回に続く-



参考文献

  1. 長田典子, 感性の指標化とプロダクトデザインへの応用, 電子情報通信学会誌, Vol.102, No. 9, pp. 873-880 (2019)
  2. 片平建史,武藤和仁,橋本翔,飛谷謙介,長田典子,SD法を用いた感性の測定における評価の階層性,日本感性工学会論文誌,Vol.17, No.4, pp. 453-463 (2018)
  3. 伊豆南緒美, 田中由浩, 佐藤真理子, 皮膚振動・摩擦と衣素材の触感に関する研究, J Fiber Sci and Technol, Vol.77, No. 9, pp.239-249 (2021)
  4. 山﨑陽一, 飛谷謙介, 谿雄祐, 井村誠孝, 亀井光仁, 長田典子, 感性工学的手法に基づく触感予測モデルの構築と評価〜布地触感予測の実現〜,電学論C, Vol.142, No. 5, pp.616-624 (2022)


【著者紹介】

山﨑 陽一(やまざき よういち)
関西学院大学 工学部/感性価値創造インスティテュート 特任准教授

■略歴
2012年4月 愛知県立大学大学院情報科学研究科 博士(情報科学)取得
2011年4月〜2016年3月 公益財団法人科学技術交流財団 知の拠点重点研究プロジェクト統括部 研究員
2011年4月〜2016年3月 愛知県立大学情報科学共同研究所 客員共同研究員
2016年4月〜現在に至る 関西学院大学 工学部/感性価値創造インスティテュート 特任准教授

専門は,感性工学,生体医工学,生体シミュレーション,医用画像処理等.(公)科学技術交流財団では,血流刺激に対する血管の動きを血管壁を構成する細胞の振る舞いから説明可能なマルチスケールモデルの開発とその応用に関する研究に従事.関西学院大学では,モノと感性の定量化技術及びプロダクトデザインへの応用に関する研究に従事.

長田 典子(ながた のりこ)
関西学院大学 工学部 教授 / 感性価値創造インスティテュート 所長

■略歴
1983年京都大学理学部数学系卒業,同年三菱電機(株)入社
産業システム研究所においてマシンビジョンの研究開発に従事
1996年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了
2003年より関西学院大学理工学部情報科学科助教授
2007年同教授
2009年米国パデュー大学客員研究員
2013年感性価値創造研究センター長
2015年革新的イノベーション創出プログラム
「感性とデジタル製造を直結し,生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」サテライトリーダー
2020年感性価値創造インスティテュート所長.博士(工学).専門は感性工学,メディア工学等.
著書「感性情報処理」(共著)他

2013年文部科学大臣表彰科学技術賞(科学技術振興部門),2023年兵庫県科学賞受賞

海洋産業研究・振興協会の施策(洋上風力発電の推進)(1)

小山内 智(おさない さとる)
一般社団法人 海洋産業研究・振興協会
常務理事
小山内 智

 当協会の概要は、図1のとおりとなっている。当初は「海洋産業研究協会」と称していたが、近年研究とともに、会員にとってメリットとなるような産業振興策の提案も業務の中で重みを増しつつあることから、2021年海の日をもって名称を「海洋産業研究・振興協会」と改称した。しかしながら、従前からの「海産研」の略称も並行して使用されている。
 旧法人制度の下では、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の4省が所管行政庁であったが、近年ではこの4省に加えて内閣府総合海洋政策本部とも連携をとって仕事をしている。


一般社団法人海洋産業研究・振興協会(海産研)の概要
図1 一般社団法人海洋産業研究・振興協会(海産研)の概要

 会員は、海運、造船、鉄鋼、海洋工事、海洋調査等大型の海洋プロジェクトに関わるような業種の企業が中心となってきたが、近年大型プロジェクトがなくなっていることもあり、会員企業の関心が洋上風力発電に向きつつあり、協会としても仕事の大きな柱となっている。これを受けて最近では洋上風力発電事業に携わる企業やものやサービスを提供している、提供しようとしている企業の入会も増えている。
 会の情報サービス事業としては、定例研究会、グループ研究、会報、メールマガジンと見学会がある。

1. 定例研究会

 定例研究会は、一般的にはセミナーと呼ばれている種類のもので、その都度にテーマを決めて、有識者の方に講師をお願いして、年数回開催している。21年度以降の開催事例を図2として掲げてある。21年度のはじめに当時ノルウェーの船級協会に所属されていた正林さん(現在はエクイノールに所属)に3週連続で洋上風力発電のコスト削減をテーマの中心にお話をお願いした。これ以前の定例研究会は、会場出席が中心であったが、講師がノルウェーオスロに在住ということもあり、当協会としてははじめて講師も出席者もすべてリモート参加という形式を採用した。これまでは会場に30人も集まれば、当協会の定例研究会としては盛況という感じであったが、これを機に、洋上風力発電をテーマに取り上げれば会場、Webあわせて100名は参加いただけるという感じになってきている。
 有識者の方に学術的な話しを聞くだけではなく、企業の方に先進的なサービスの話しをお願いしたり、水産関係の方に講師をお願いすることもある。
 会員企業、官公庁、公益法人等に所属の方、研究の方等については無料で参加できる。会員以外の企業の方については、通常有料となっているが、状況により異なる。開催は、3.のメールマガジンでお知らせしている。

定例研究会 21年度以降の開催事例
図2 定例研究会 21年度以降の開催事例

2.会報

 会報は年3,4回の発行を行っている。海産研会報という黄色い冊子である。

3.メールマガジン

 海洋産業についてのニュース、当協会のイベント等を毎月皆さんにお知らせしている。購読は無料なので、ご希望の方は、HPから申込みいただきたい。

4.見学会

 コロナ禍発生以降しばらくの間、見学会は開催できなかったが、22年度は、7月に横須賀沖の第2海堡と10月にハマウィング、帆船日本丸、横浜みなと博物館の見学会を、23年度も6月に神奈川大学みなとみらいキャンパスと氷川丸、11月に海上技術安全研究所、IHIそらの未来館、IHI瑞穂工場の見学会を開催した。これも開催に際しては、メールマガジンでお伝えしている。

5.グループ研究

グループ研究
図3 グループ研究

 当協会は、特定のテーマについて、会員の中から希望者を募って研究を進めるグループ研究を開いており、23年度は図3に掲げる7個のグループ研究を開催している。括弧内は、参加している会員企業数である。このうち、①、⑤、⑥が洋上風力発電の振興に関わるものとなっている。
 それ以外の②は、従前はメガフロートと呼ばれていたマリンフロートの活用に関わるもので、フロートの技術を活用できる機会はないかの検討を行っている。
 ③は当初、沖ノ鳥島保全の関連で大型のプロジェクトが期待できたことから始まったが、昭和の終わりから平成のはじめにかけて護岸等の工事が行われ、最近では大型工事は見込めなくなっている。しかし南鳥島周辺海域にかなりの量のレアアース泥の存在が見込めること、その開発拠点として島の利用が考えられること、島周辺の玄武岩質が二酸化炭素の貯留に使えると考えられること等から、参加会員の関心は南鳥島に向きつつある。
 ④は、潮力、波力等風力以外の海洋エネルギーの利用を中心に勉強している。
 ⑦は今年度から始めたもので、2050年のカーボンニュートラルに向けてブルーカーボンの重要性が高まっていることに鑑み開始したものである。



次回に続く-



【著者紹介】
小山内 智(おさない さとる)
一般社団法人 海洋産業研究・振興協会 常務理事

■略歴

  • 昭和54年4月運輸省入省 船舶局監理課勤務
  • 平成3年5月在ノルウェー日本国大使館一等書記官(平成6年6月まで)
  • 平成9年6月国際油濁補償基金事務局法務参事官(平成13年5月まで)
  • 平成18年7月海上保安庁総務部参事官(警備救難担当)
  • 平成19年7月(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構業務・用地統括役
  • 平成20年7月海上保安庁総務部参事官(海洋情報担当)
  • 平成21年7月海上保安庁交通部長
  • 平成23年7月(独)航海訓練所理事
  • 平成25年7月北海道運輸局長
  • 平成26年7月国土交通省退職
  • 平成26年10月(株)コバック顧問
  • 平成28年7月海外鉄道技術協力協会理事長
  • 令和2年7月海洋産業研究会常務理事
  • 令和3年7月海洋産業研究・振興協会に改称
  • 現在静岡市海洋産業クラスター協議会委員
  • 現在横浜市海洋都市横浜うみ協議会委員

海中、海上の目・耳・鼻・口、そして肌触り -海洋産業タスクフォースの活動-(1)

佐藤 弘志(さとう ひろし)
海洋産業タスクフォース
佐藤 弘志

【初めに】

 第1期海洋基本計画が2008年に策定され、昨年2023年には新たに第4期海洋基本計画が始まった。その間、 EEZ(排他的経済水域)の概念とその利活用として、水産資源、エネルギー、鉱物資源に加えて安全保障や環境保護、海上設備の保全や防災・減災などの取り組みが進められ、海洋が脚光を浴び始めている。このように、これまで興味という面では宇宙に比べて地味であった海洋が宇宙に並びつつある。
 ただ、海中はもとより、海上における産業活動での実作業を考えると、これまで私たちが行ってきた陸上の産業活動の「人が自分の眼で見て、鼻で匂いを嗅いで、耳で音を聞いて、触れて振動や温度を感じてその情報と遠隔監視・制御で対応する」手法とは異なる手法を考える必要がある。例えば、これまでの私たちの技術は「陸上での人に帰属した産業活動」を前提に組み上げられてきたことから、「海中・海上で人と同じことを感じる技術を上手く活用する」などの現在の技術を活用することで、海洋開発が進むと考えられる。
 陸上で人が行う作業が何かという点にハイライトして考えると次の通りとなる。人は目や耳や鼻から入ってくる情報と触ることにおける対象物の状況認識、そしてそれを言葉や神経で頭に伝え、それと知識を照らし合わせて経験としている。経験したものに対して情報を受け取った脳が過去経験を元に対処方式を判断して対処しており、初めての事象も過去の経験に類似するものに結び付けて対処することが特徴である。そう考えると、海中ではこれらの殆どが出来ず、海上では人が継続してそこに滞在できるツール(船舶等)があって初めてそれが出来る事となる。即ち、人がこれまでに進化してきた手法そのままでは対応できないのが海洋での事業展開となる。
 では、人の代わりに人と同じかそれ以上の情報を頭脳に伝え、精確な判断をさせるツールが有れば、陸上と同じことが出来ることとなる。それがセンサであり、DXとなり、それらを管理するシステムとなる。この機会に海洋での産業開発に関してのセンサやシステムについて考えた。本報告では開発から建設、操業とその用途はかなり広くなるので、操業という部分に視点を置いた。さらに、「人」の能力をどう置換するのか、何が代替するのかというのを基軸にまとめた。

【海洋における事業とセンサ】

 海洋に於いての事業として考えられるのは、既存の「水産業」の他に「洋上風力発電」・「海洋資源開発」・「海洋インフラ保守」・「安全保障」・「防災・減災」であり、これに「海洋環境保護用の監視」も視野に入る。何れも、陸上であれば人が現地に行って状況を確認するが、海洋ではそれが難しく、人の「目」や「鼻」や「耳」や「接触による感触」を代替するものとして、各種のセンサが使われることとなる。人の五感に対応する形を考えると、

  • 眼(視覚): カメラ
  • 鼻(嗅覚): 海水中の不純物検出センサ、空中の不純物検出センサ
  • 耳(聴覚): 海中の圧力変化検出センサ、空中の音センサ
  • 口(通信): 海中、空中の通信設備
  • 肌(触覚): 海中の振動、温度変化検出センサ、空中の振動、温度変化検出センサ

が代表例として挙げられる。この他に自律航行に必要なセンサも必要だが、今回は産業界にて活躍するための遠隔監視・状態監視とその省人化システムについての内容を中心に述べる。
 人の場合はこの感じたものを脳に送って、異常を経験値から確認して対処への動きとなる。同様のことを当て嵌めると、この「五感で得て脳に送られた情報に基づく行動」の部分がDX(Digital Transformation)になると考えられる。人の脳の「経験値に応じた判断」はこのシステムでは「通常範囲であればDXのシステム内にあるAIが経験値による対処」となり、未経験の領域であれば、「人が経験者に聞いて指示を仰ぐ」のと同様に「コントロールスーパーバイザーに報告して指示を仰ぐ」という形になる。これらを検討している各海洋事業で考えると次から示す事例とその概念図のようになる。

1.洋上風力発電

洋上風力では、

  • 海上: 風車、発電設備
  • 海中: 電気ケーブル、基礎

というものが監視対象となる。
 この場合、海上設備の操業・保守にはDrone、海中設備の操業・保守にはAUV(Autonomous Underwater Vehicle)やROV(Remote Operated Vehicle)等が人の代わりに設備の状況確認に使用される。設備管理からくるデータと並行して、これらの情報は中央コントロール室に送られ、その上位に位置して、全体を管理監督するDXシステムへ供給される(図1)。DXシステムにはAIが搭載され、人間の脳の役目を行い、操業全体の管理を行う。AIはその特性から経験の無いものには対応できないので、この部分を対応できる経験豊富なスーパーバイザーが管理室に常駐する。ただ、ルーティンと判断される経験事象についてはAIが自動的に判断し、スーパーバイザーに結果報告をするので、人(スーパーバイザー)の作業量は現状に比べて激減することが考えられる。洋上風力発電に於いて、操業段階で無人探査機が取得する主要なデータは表1に纏める。

図1:洋上風力発電の遠隔監視・制御イメージ
図1:洋上風力発電の遠隔監視・制御イメージ
表1:洋上風力発電に於ける、海中と空中における主要センシング項目
表1:洋上風力発電に於ける、海中と空中における主要センシング項目

2.メタンハイドレート開発

 これはメタンハイドレートに代表される海洋からの油ガスの回収の場合を念頭に置いたものである(図2)。

図2:海洋メタンハイドレート操業時に於ける、遠隔監視・制御イメージ図
図2:海洋メタンハイドレート操業時に於ける、遠隔監視・制御イメージ図

 このシステムは基本的に洋上風力と変わらず、センサの機能、DXとして行う機能も変わらない。変わる部分はセンシングの対象で、メタンハイドレート層の生産による変化と、操業保守対象の設備が海中・海底中心となること、海上に関しては船上からの操業監視でAUV等の状況監視機能が小さくなる点が異なる。ここでメタンハイドレート層の変化とは海底下の地層がメタンハイドレート(ガス)を生産されることで、その地層の形状変化や地層からの油ガスの漏れ等を監視することとなる。ガスが海中に流れ出ることを感知する「鼻」の機能と海底での地形が変形するのを監視する「眼」の機能の強化が必要となる。従い、AUV/ROVに代表される海中機器は次の「設備を監視するもの」と「油ガスを保有する地層エリア全体を監視するもの」の二種類が必要となる。

  • 設備を監視する機器:固定設備を監視するため、定点に留まるか、決められた狭い領域を移動
  • ガスの生産井近辺を監視する機器:複数ある生産井を巡回して監視
  • 地層全体を監視する機器:対象となる地層からの漏れを監視するため、動き回って広い領域を移動

機能としてのDXは変わらないが、「経験値」については「海底油ガス田の操業知見」となる。

3. 海洋CCS

 CO2を地層に圧入するCCSは、油ガスの生産と同様の操業・保守のシステムを適用することとなる。従い、上述のメタンハイドレート事業と同様にAUVやDroneが使用され、それに搭載されるセンサ、コントロールするGXも同様の対応が必要となる(図3)。

図3:海洋CCSに於ける、遠隔監視・制御イメージ図
図3:海洋CCSに於ける、遠隔監視・制御イメージ図

対象となるのは、

  • 海上、海中の設備
  • 圧入井
  • 圧入する地層の広がり部分

となり、その状況確認は油ガス生産と同様のものとなる。圧入流体がCO2という無味無臭のものである点がこの事業にAUV等を投入する際の開発ポイントとなる。CO2センサが新たに導入されるが、海中にCO2は多く存在しており、その濃度の異常値等を認識するセンサが必要となる。



次回に続く-



【著者紹介】
佐藤 弘志(さとう ひろし)
海洋産業タスクフォース
東洋エンジニアリング株式会社 海外営業統括本部 カーボンニュートラス本部

■略歴

  • 昭和56年04月東洋エンジニアリング㈱入社
  • 平成05年06月エネルギー事業推進センター幹部部員・主査 等
  • 平成11年06月プラント事業本部施設・環境事業部エネルギーグループ兼 基本計画本部幹部部員・参事補
  • 平成12年10月プラント事業本部施設・環境事業部資源開発グループ幹部部員・参事補 -Toyo U.S.A., Inc.(副社長)
  • 平成17年04月より海外事業本部資源開発部長・資源エネルギー本部長 など歴任
  • 平成23年05月より執行役員・エネルギー事業本部長を歴任
  • 平成31年04月社長特命(ストラテジックアライアンス担当)
  • 令和03年04月プラントソリューション事業本部(シニアプリンシパル)
  • 令和04年06月海外営業統括本部カーボンニュートラス本部
  • (シニアプリンシパル、現在に至る)

新潟県弥彦村で自動運転EV「MiCa」の通年運行を開始

 新潟県の弥彦村は、ソフトバンク(株)の子会社のBOLDLY(株)(ボードリー、以下:BOLDLY)、大日本印刷(株)(以下:DNP)などと協力し、2024年2月2日(金)に自動運転EV「MiCa(ミカ)」の通年運行を開始する。
冬季に一定の降雪・積雪がある弥彦村での通年運行開始に当たり、BOLDLYは北海道での自動運転車両の運行実績を生かして、2024年1月上旬から降雪・積雪の環境下で「MiCa」を走行させ、適切なルート設定などの事前準備を行った。

【背景】
 弥彦村では、地元のバス事業者の事業撤退などを受けて、隣接する燕市と共同で、燕市と弥彦村の主要拠点を結ぶルートで広域循環バス「やひこ号」を運行している。しかし、ドライバーの高齢化や不足に伴い、ルートの拡大といった住民のニーズに応えることが難しいという課題があった。弥彦村は、こうした課題に対して、持続可能で利便性が高い公共交通サービスを実現するため、国土交通省の「自動運転実証調査事業」の採択を受け、自動運転EV「MiCa」2台の通年運行を開始する*1。
*1 開始時は1台で運行し、2台目は車両の準備が整い次第、運行開始。

【運行のポイント】
・「MiCa」は、弥彦村役場を起点とする北吉田ルート(片道約5.7km)と井田ルート(片道約2.5km)の2つのルートを走行する。どちらのルートも住宅地などを通り、弥彦村役場のバス停で「やひこ号」に接続する。また、北吉田ルートでは「北吉田駅」のバス停でJR北吉田駅に接続。
・ルート上の計3カ所にDNPの屋外デジタルサイネージ「モビリティポート」を設置し、「MiCa」の運行状況や利用方法、 イベントなどの地域情報を配信することで、利用者の利便性向上や地域活性化を図る。
・「MiCa」の運行業務は、当面の間、BOLDLYと(株)セネック*2が担当する。2024年度以降は、地元の交通事業者を含めた関係者などと議論を重ねた上で、最適な体制を構築する予定。 
*2 全国各地の自動運転バスの運行および運行管理業務を行う実績を持つ交通事業者。

【運行の概要】
運行期間:2024年2月2日(金)に通年運行を開始  *月・火・金のみ運行
乗車定員:8人  *オペレーターを含む
車両:MiCa(ミカ)  (エストニア・Auve Tech社製)
速度:時速20km未満
バス停:13カ所
運賃:無料

【降雪・積雪地域での運行について】
 BOLDLYは、冬季に雪や氷点下の環境となる北海道の自治体で、自動運転バス「ARMA」の通年運行を実現している。その中で、行政と連携した除雪による走行環境の整備や、除雪に伴う路肩などの雪山に合わせたセンサ検知範囲の調整など、降雪・積雪地域で自動運転車両を安全に運行させるためのさまざまなノウハウを蓄積している。弥彦村では、これらのノウハウを生かして、「MiCa」をより安全に運行していくという。

ニュースリリースサイト(dnp):https://www.dnp.co.jp/news/detail/20173180_1587.html

ハタケホットケ、農業用ロボットミズニゴール2024年版、GPS型も提供

(株)ハタケホットケは、水田除草ロボット「ミズニゴール」の最新版・2024年モデルを開発、今春にGPS自動運転型を提供開始する。

「ミズニゴール」は、全国で小規模農家が最も多く、後継者不足、耕作放棄地といった農業課題を抱える長野県で生まれた自動除草ロボット。水田を走り回り、田んぼの水を濁らせることで、稲の栄養を奪う雑草の光合成を遮り除草作業を自動化する。

■ミズニゴール 2024年モデルの概要
●生産台数:最大100台生産予定
 GPS自動版(実証実験)30台、ラジコン版70台
●2024年4月中旬以降~7月中旬のレンタル提供
●GPS版は長野県および近県(およそ100km圏内)で提供
●インチアップ(走破性)
●耐久性アップ:国産モーター、ギア機構、トルク
・レンタル料金:
 ・ミズニゴール2024 RC(ラジコン):¥220,000(税込)
 ・ミズニゴール2024 GPS(ラジコン+自動運転):¥330,000 (税込)
 ※追加バッテリー、GPS設定費用は枚数に応じて別途発生
・重量:8kg
・提供対象:全国の農家・自治体・農業関係機関様
・生産台数:100台。(GPS:30台、ラジコン:70台)
※先着順で受付。予定数を上回った場合はキャンセル待ち。

製品サイト(hhtk):https://hhtk.jp/

ST、エッジAI機能付きモータ・ドライバ・リファレンス設計「EVLSPIN32G4-ACT」発表

STマイクロエレクトロニクスは、インテリジェントな3相モータ・ドライバ「STSPIN32G4」をベースにしたエッジAI機能付きモータ・ドライバ・リファレンス設計「EVLSPIN32G4-ACT」を発表した。
同製品は、スマート・アクチュエータの開発簡略化に貢献する。また、インダストリアルIoT向けワイヤレス・センサ・ノード用開発キット「STWIN.box」(STEVAL-STWINBX1)と直接接続することで、モータ制御や環境データのリアルタイム分析、IoT接続を組み合わせた先進的なシステムの開発を加速させるとのこと。

EVLSPIN32G4-ACTは、モータ制御システムにおけるイノベーションに、データ・サイエンスとアプリケーションを融合させることで、革新的な性能と持続可能な収益性を実現する。STWIN.boxに搭載された高品質のセンサによってアクチュエーション・エンジンの状態に関する情報を取得しつつ、高速データ・ロギング機能を活用してエッジAIと機械学習に基づく先進的なソリューション開発をサポートする。環境データと制御データを組み合わせることで、システム・エンジニアはアプリケーションの動作状況を正確に把握できるため、異常状態を特定しやすくなり、データ・ドリブンのアルゴリズムに基づいてトラブル・シューティングと性能の最適化を実行できる。

同リファレンス設計には、パワー・マネージメント回路を持つインテリジェントなゲート・ドライバとSTM32G4マイクロコントローラ(マイコン)を組み合わせたSTSPIN32G4が搭載されている。また、最大48V / 5Aの3相モータ用インバータ段および、センサ・モジュールに接続してアプリケーション構築を開始するためのソフトウェアも含まれる。これらの機能により、温度変化や大気圧、音、動き、超音波信号などのイベントにインテリジェントに対応する自律メカニズムの開発に貢献するという。

STSPIN32G4は、FA(ファクトリ・オートメーション)機器やビル・オートメーション・システム、サーボ・ドライバ、家庭用 / 産業用ロボットなど、小型かつ低消費電力のIoT機器およびインダストリアルIoT機器開発に最適。STSPIN32G4に搭載されたSTM32G431マイコンは、3相ブラシレスDCモータ制御用の周辺回路(4つの超高速コンパレータ、3つのオペアンプ、2セットのPWMタイマおよび12bit A/Dコンバータなど)を備えている。さらに、ブートストラップ・ダイオード、DC-DCコンバータ、LDO(低ドロップアウト)レギュレータも集積しており、外部回路なしでモータ電源からゲート・ドライバとマイコンに電源を供給する。

EVLSPIN32G4-ACTは、最大250Wのモータを駆動でき、12V、24V、36V、または48V電源で動作する。過熱保護、低電圧保護、過電圧保護、過電流保護機能を備えており、部品点数の削減や小型化に貢献する。ユーザは、6ステップ制御またはフィールド指向制御(FOC)を選択できるとともに、センサ付き / センサレス・ロータ位置検出、3シャント / 1シャントの電流検出も選択可能である。

STWIN.boxは、すぐに接続して使用することができ、超低消費電力STM32U5マイコン、Bluetooth®、Wi-Fi、NFCトランシーバに加え、STの幅広い産業グレードMEMSセンサを搭載している。これらのセンサには、3軸地磁気センサや、センサ内AI機能として機械学習コア(MLC)を内蔵したIMU(慣性計測ユニット)が含まれており、これらを組み合わせることで合計9自由度(DoF)の慣性センシングが可能。さらに、高性能の加速度センサ、帯域幅6kHzの3軸デジタル振動センサ、機械学習コアを内蔵した高精度2軸傾斜計も搭載している。環境センサとして、デジタル大気圧センサ、I²C / SMBusの温度センサも搭載されている。オーディオおよび超音波検出用に、デジタル / アナログMEMSマイクも搭載。

ソフトウェアには、データ・ロギングのファームウェアとソフトウェア・スイート、Bluetooth Low Energyアプリケーション、Pythonソフトウェア開発キット(SDK)が含まれている。これらのソフトウェアを代表的なデータ・サイエンス・ワークフローに簡単に統合して、エッジAIや機械学習ソリューションを設計可能である。高速データ・ロガー(FP-IND-DATALOGMC)は、モーション制御アルゴリズムからのデータと外部センサからのデータを組み合わせた、高分解能の正確なタイム・スタンプ付きデータ・セットの取得およびラベリングにより、リアルタイムのモニタリングをサポートする。

EVLSPIN32G4-ACTは、これらのさまざまな機能と包括的なサポート・ソフトウェアを活用して、STのセンシング技術と3相モータ・ドライバ技術を融合したモーション制御向けエッジAIを実現する。

EVSPIN32G4-ACTを使用することで、ユーザはメインのモーション・コントローラ側にエッジAI機能を近づけることができるため、インテリジェンスと意思決定能力を備えたIoT機器を開発可能。これにより、FA機器やスマート生活家電、スマート・アクチュエーションを必要とするアプリケーションなど、幅広い用途において、より高速かつ高効率なデータ処理とアクチュエーションを実現する。

EVLSPIN32G4-ACTは、STのウェブサイトから入手可能で、単価は約149.00ドル。STEVAL-STWINBX1の単価は、約122.00ドル。

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001354.000001337.html

理科大、植物の活性酸素種生成酵素の活性化メカニズムを解明

 東京理科大学大学院 創域理工学研究科の橋本貴史氏、進藤大輝氏、東橋本研志助教、坪山 祥子ポストドクトラル研究員、朽津 和幸教授らの研究グループは、京都大学の宮川拓也准教授、東京大学の田之倉優名誉教授の協力を得て、ゼニゴケを用いて、植物の活性酸素種生成酵素RBOH(Respiratory Burst Oxidase Homologues)(*1)の基本的な活性化メカニズムを解明することに成功した。

 活性酸素種(ROS, Reactive Oxygen Species)(*2)は一般に、呼吸や光合成の際に生じる有害な副産物として捉えられてきた。しかし、近年の研究から、多くの真核生物、特に植物ではROSを積極的に生成する酵素系が発達しており、免疫(感染防御)応答をはじめとする生体内のさまざまな生命現象にROSを利用していることが明らかとなってきている。こうした研究に朽津教授らの研究グループも大きく貢献してきた。ROSは毒性が高いことから、生体内の適切な部位で適切な量を生成するための巧妙な制御機構が存在していると考えられる。カルシウムイオン(Ca2+)の結合と、リン酸化が相乗的に活性化に関与することが2008年に朽津教授らの研究グループによって提唱されたが、両者の関係など詳細なメカニズムは解明されておらず、世界的にも重要な生物学上の未解決課題となっていた。

 本研究では、モデル植物であるゼニゴケ(Marchantia polymorpha)を用いて、微生物由来のキチン(*3)により誘導される感染防御応答時のROS生成メカニズムを調べた。研究の結果、キチンによって細胞内のCa2+濃度上昇が誘導されること、RBOHはCa2+との結合により活性化されること、そしてこのCa2+結合は、陸上植物全般に保存された活性制御領域内に含まれる2つのアミノ酸残基のリン酸化により増強されること、すなわちこの2つのアミノ酸残基のリン酸化によりCa2+が結合しやすくなりRBOHが活性化されることを見出した。

 本研究で解明された基本的なRBOH活性化メカニズムは、陸上植物全般に共通している可能性があり、ROSを介して、病原体に対する免疫、成長や生殖など植物のさまざまな機能を制御するための重要な基礎的知見になると考えられる。

本研究成果は、2023年12月12日に国際学術誌の「Physiologia Plantarum」(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ppl.14101)にオンライン掲載された。

*用語解説
*1  RBOH 細胞膜局在型酵素(NADPHオキシダーゼ)であり、NADPH由来の電子を酸素分子と反応させることで、細胞壁空間に活性酸素種を生成する。

*2  活性酸素種(ROS) 酸素分子(O2)と水(H2O)との間の酸化還元状態に位置する反応性の高い分子群で、スーパーオキシドアニオンラジカル(・O2−)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシルラジカル(・OH)などが含まれる。生体内では、DNAやタンパク質など種々の生体分子と反応することで細胞毒性を示す一方、さまざまな生命現象におけるシグナル分子として利用されている。

*3  キチン
カビなど真菌類の細胞壁を構成する糖鎖。植物が持つキチン分解酵素(キチナーゼ)により遊離したその断片であるオリゴ糖は、代表的なMAMP(微生物分子パターン; *5)として、植物に感染防御(免疫)応答を引き起こす。

ニュースリリースサイト(tus):https://www.tus.ac.jp/today/archive/20240124_7312.html

HORIBA、微量ガス分析計「AP-380シリーズ」発売

 (株)堀場製作所は、一酸化炭素・二酸化硫黄・オゾン・窒素酸化物・炭化水素の濃度を、ナノレベルで高精度に連続測定する微量ガス分析計「AP-380シリーズ」を発売する。
 「AP-380シリーズ」は、大気の環境モニタリングに加え、半導体・センサ・電子部品などの製造エリアにおける分子状汚染物質の監視や、ガス製造プロセス中の不純物の監視、自動車内の空気質検査など、多様なニーズに対応する超微量ガス分析計。カスタマイズ性の高いモジュール設計※1をガス測定部に採用することで、従来は困難とされていたガス測定部単体での提供も可能になった。

主な製品特長
 一酸化炭素用の「APMA-380」・二酸化硫黄用の「APSA-380」・オゾン用の「APOA-380」・窒素酸化物用の「APNA-380」・炭化水素用の「APHA-380」の全5機種を展開。

1.ガス測定部のモジュール設計により、高いカスタマイズ性とダウンタイムの最小化を実現
 ガス測定部をモジュール化することで、従来のベンチトップ※2型・ラックマウント※2型のみならず、ウォールマウント※2型、装置内への組み込みなど、お客様のニーズに合わせた使用方法を提案できる。さらに、多成分測定などお客様の要望にあわせたカスタマイズも可能。メンテナンスや不具合時にも現場でモジュールを交換できるため、装置のダウンタイムを大幅に削減する。

2.ソフトウェアの刷新とフルリモート機能により、作業効率を向上
 ソフトウェアを最適化し、視認性や操作性を向上させた。さらに、フルリモート機能を備え、パソコンやスマートフォンなどさまざまなデバイスから遠隔操作ができる。

3.水銀フリーをはじめ徹底した環境負荷低減設計
 消費電力を抑える省エネ化(最大20%削減※3)、軽量化(最大15%削減※3)を実現。さらに、LED光源やオゾン発生器など水銀フリーの部品を使用し、環境負荷低減を追求した。

4.各種ガスをナノレベルかつワイドレンジで測定可能
 ppm※4からppb※5までのナノレベルの高精度測定が可能。測定できる濃度の範囲を従来製品から大幅に拡大(最大40倍※3)させた。さらに、より高濃度のガスを測定するために、オプションで希釈装置と組みあわせることも可能。

※1 モジュール設計:製品を機能単位で設計して組み合わせる手法。交換やカスタマイズなどが容易にでき、製品の柔軟性や保守性を高めることができる
※2 ベンチトップ:机の上などに設置する方法、ラックマウント:専用の棚(ラック)に機器や装置を収納する方法、ウォールマウント:壁面に支えを作って固定する設置方法
※3 同社従来製品との比較。使用方法や条件によって効果が異なる場合がある
※4 100万分の1を単位とする比率の概念。ガス成分の場合、1ppmは100万リットルのガス中に対象成分が1リットル存在することを意味する
※5 10億分の1を単位とする比率の概念。ガス成分の場合、1ppbは10億リットルのガス中に対象成分が1リットル存在することを意味する

ニュースリリースサイト(horiba):
https://www.horiba.com/jpn/company/news/detail/news/1/2024/20240123-ap-380-jn/