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アクセルスペースの実証衛星PYXIS(ピクシス) 打ち上げ日決定


(株)アクセルスペースが開発を進めてきた人工衛星PYXISについて、この度、打ち上げ日が2024年3月5日(日本時間)に設定された。



打ち上げとミッションについて

打ち上げの概要は以下の通り。
・打ち上げ日:2024年3月5日(日本時間)
・ロケット:Falcon 9
・ミッション名:Transporter-10
・射場:バンデンバーグ宇宙軍基地(アメリカ・カリフォルニア州)
・投入軌道:太陽同期軌道、高度500~600km
・打ち上げ事業者:SpaceX (Space Exploration Technologies Corp.)
 *打ち上げ日等は、天候の状況などにより変更される場合あり

今回の打ち上げを通じて、PYXISは周回軌道上で以下のミッションに取り組む予定である。
1.AxelLinerが今後提供する汎用バスシステム※1の実証
2.次世代GRUS(グルース)衛星に向けたセンサの先行実証
3.ソニーグループによる通信システム技術の実証
 ※1 バスシステム:姿勢制御や電力供給といった衛星運用の基盤となるシステムのこと。

 同社は、小型衛星のワンストップサービス「AxelLiner」の展開を通じて、100kg級小型衛星におけるデファクトスタンダードを目指すための実証機としてPYXISを開発した。最大の特徴は、新たに開発した汎用バスシステムの採用である。
 従来の一品生産による衛星は、長期の開発期間と大きなコストを要してきた。そこでAxelLinerでは今回、衛星の基盤部分についての標準化を図った。今後は、衛星の同時開発も視野に入れた量産体制の構築を通じて、受注から打ち上げまでの期間を約1年に短縮し、さらに、より安価な提供の実現を目指す。これによって、ユーザーの衛星活用における負担を大幅に軽減するとともに、小型衛星へのニーズの急速な高まりにタイムリーに応えることができるとしている。

プレスリリースサイト:https://www.axelspace.com/ja/news/pyxislaunch/

ライカジオシステムズ、完全統合自律型 LiDAR UAVの受注開始

 ライカジオシステムズ(株)は、、全く新しい完全自律飛行型レーザースキャナー Leica BLK2FLY (以下BLK2FLY)について、3月1日、日本国内で受注開始することを発表した。

 この製品は完全に統合された自律飛行型レーザースキャニングセンサで、すでに欧州では2021年に発売されており、2023年には新たに屋内スキャン機能が搭載され注目を集めている。複雑なスキャニングプロジェクトをより広範囲にカバーできるようになったBLK2FLYは、屋内外を問わず、構造物全体のデジタルツインを構築するライカジオシステムズのBLKファミリーの最新イノベーション製品である。

 BLK2FLYはタブレットを数回タップするだけで起動し、ユーザーは構造物や環境を正確かつ完全に空中から素早く簡単にスキャンすることができる。空からのスキャニングは、構造物の外観の特徴や寸法を完全に捉えることができるため、立ち入りが困難な場所や手の届きにくい場所(ファサードの突起や屋上など)の正確なデータを必要とする様々な業界にとって画期的であるという。

 BLK2FLYは、高度な自律障害物回避機能を備えた次世代の飛行安全性を導入している。LiDAR、レーダー、カメラ、GNSSのセンサの融合により、最適かつ安全な飛行経路を確保する。ユーザーは、BLK2FLYからのデータを、LiDARやハンディ―型移動体レーザースキャナー Leica BLK2GO やその他地上型スキャナーで取得した建物や構造物の内部スキャンとシームレスに組み合わせることができる。取得した色付き3D点群は、現場の状況を記録するなど、ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)プロセスに役立つ。

 BLK2FLYはGNSSが利用できない場所でもスキャンできるため、発電所や変電所をはじめとした立ち入りが困難な環境でも屋内外でスキャン可能である。屋内飛行モードでは、自律飛行システムの性能が向上したことで、センサの空間認識能力が高まり、より狭い空間での障害物回避が可能になった。この新機能は、HexagonのビジュアルSLAMシステムの進化によるもので、BLK2FLYの飛行可能範囲を直径3メートルまで向上させる。

 BLK2FLYは、ライカジオシステムズの地上センサと自律型センサのポートフォリオを補完するもので、これらを組み合わせることで、あらゆるスキャニングプロジェクトに活用できる。ユーザーは、タブレット端末やスマートフォンを使って現場からデータをクラウドにアップロードし、データの合成、メッシュ化、3Dモデルの作成を現場から自動的に行うことができるHexagonのクラウドアプリケーション、Reality Cloud Studio(Powered by HxDR)も活用できるとのこと。

プレスリリースサイト(leica-geosystems):
https://leica-geosystems.com/ja-JP/about-us/news-room/news-overview/2024/02/jp_blk2fly_launch

Bfull、PLATEAUを使用した風洞実験用都市模型を3Dプリンターで製作。

(株)Bfullは、国土交通省主導で整備されている3次元都市モデル「PLATEAU」から風洞実験用都市模型を3Dプリンターで製作した。

◆光造形3Dプリンター活用のメリット
 従来、風洞実験は、アクリル板や木材などを手作業で加工し、実際の街並みを表現した模型が用いられることが多かったが、建物のディティールや地表の細かな凹凸までは再現することができなかった。
 3Dプリンターを活用することにより、東京都の3次元都市モデルのデータを1/800スケールで造形。光造形ならではの高精度プリントで、ビル群一つ一つの細かいディティールまで忠実に再現することができるという。


プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000528.000019615.html

trinamiX、Visionox、STら、スマートフォン向け有機EL埋込み型の顔認証システム

 trinamiXは、VisionoxおよびSTマイクロエレクトロニクスと協力し、スマートフォン・ディスプレイの背面に搭載できる顔認証システムを開発した。

 この協力において、先進的な統合型ディスプレイ・ソリューションの製造をけん引するVisionoxは、スクリーン背面に顔認証モジュールを埋め込むことができる半透明の有機ELディスプレイを提供している。

 この有機ELディスプレイは、最初から専用の設計を行う必要がなく、すぐにスマートフォンに搭載することができる。また、STマイクロエレクトロニクスは、近赤外線(NIR)感度に優れた高性能グローバル・シャッター機能搭載CMOSイメージ・センサを提供している。STの超小型センサ、trinamiXのアルゴリズムおよび、Visionoxの半透明有機ELディスプレイを組み合わせたこのシステムはスマートフォンの新モデル向けに、6~9ヵ月以内にメーカーへの提供が可能になる予定だという。

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001360.000001337.html

SAR衛星(Xバンド)による地表面沈下計測システムの開発と現場適用について 
Development of a Land Surface Subsidence Measurement System Using SAR Satellite (X-Band) and Its Application in the Field(1)

五十嵐 善一(いがらし ぜんいち)
株式会社パスコ
新空間情報事業部
五十嵐 善一

1.はじめに

 現在、国土交通省では建設現場の省力化・効率化の施策として、BIM/CIM(Building Information Modeling/Construction Information Modeling)および i-Constructionを推進している。
 BIM/CIMでは、3次元モデルを測量・設計・施工・維持管理の各フェーズで現場適用しており、令和5年度から原則適用となっている。i-Constructionでは、平成28年度にICT土工から適用され、浚渫工・舗装工・地盤改良工と順次拡大してきている。3次元モデルと3次元測量データを元にして土工重機(バックフォー、ブルドーザ、振動ローラ等)の自動運転をめざしている。当社においては、3次元データを測量できる計測機器を多数保有して現場適用している。(図―1)

図―1 パスコが保有する計測機器
図―1 パスコが保有する計測機器

一般的に地表面からの距離が高くなるほど、地表面における測量精度が低下しており、地表面のmm単位の沈下計測では、レベルやトータルステーションを使用している。(図―2)

図―2 計測機器による地表面測量精度 (BIM/CIM 活用ガイドライン(案) 令和3年3月 共通編 から引用)
図―2 計測機器による地表面測量精度
(BIM/CIM 活用ガイドライン(案) 令和3年3月 共通編 から引用)

 都市部でのトンネル工事では、シールド機を用いて掘削するシールド工法が用いられており、シールド機の掘進にあわせて地表面の沈下測量が行われている。住宅地や道路上のレベル測量は私有地や交通量により計測が困難な場合が多い。
 本研究では、従来、沈下測量が困難となっていた沈下計測範囲において、人工衛星によるSAR(Synthetic Aperture Radar)衛星画像を用いてmm単位の精度で計測できるか検証を行った。SAR衛星は、雲や雨の影響を受けることなく地表面の状況を確認できる特長があり、シールド機の掘進に合わせて地表面沈下がmm単位でしかも面的に計測できたので、報告する1)

2.SAR衛星の沈下計測原理および計測手順

 SAR衛星は、宇宙から電波を照射し、波長の位相差の違いから沈下及び隆起を観測する(図-3)。本研究では、ドイツが運用しているXバンド(波長:3.1cm)のTerraSAR-X(テラサーエックス)衛星30シーンを使用して沈下計測を実施した。
 SAR衛星による沈下計測においては、宇宙から照射された電波が地面・電柱・照明および建屋構造物の上部・側面等の各部で反射し、波長の位相差を計測することになる。本研究で利用するTerraSAR-X衛星は、11日周期に同じ位置を飛行するので、沈下計測も11日ごとに算定できる。SAR衛星による沈下計測手順を、図-4に示す。

図―3 SAR衛星の沈下計測原理
図―3 SAR衛星の沈下計測原理
図―4 SAR衛星の沈下計測手順
図―4 SAR衛星の沈下計測手順

 本研究では、より多くのSAR画像を利用することによって安定した変動把握が可能なPSInSARと呼ばれる解析手法を利用した。PSInSARは、15-20枚以上のSAR画像を必要とし、SAR衛星データ内から安定して計測可能な点(PS点、ピーエス点/恒久的散乱点)を用いて位相データの差分解析を行うことになる。具体的には、SAR画像に対してマスク処理から解析範囲を絞り込み、SAR衛星軌道情報、大気状態、建物等の高さ等の補正を段階的に行っていく。
 本解析を当該エリアに適用した場合のPS点は、シールド掘進ルート上の幅10mにおいて、約0.6観測点/m2の観測密度であり、地表面沈下計測を面的に実施できると考える。(図―5)このPS点は、全30回撮影されたSAR画像において安定して観測された点となる。

図―5 SAR衛星による計測点とレベル測量点
図―5 SAR衛星による計測点とレベル測量点


次回に続く-



参考文献:

  1. 宮田岩往、五十嵐善一他:シールド工事(下水道工事)におけるSAR衛星による地表面沈下計測の精度確認について:土木学会第72回年次学術講演会(平成29年9月)Ⅵ-323,P.645~P.646


【著者紹介】
五十嵐 善一(いがらし ぜんいち)
株式会社パスコ 新空間情報事業部 事業推進部 顧問

■略歴

  • 1979年大阪大学工学部土木工学科卒業
  • 1979年株式会社奥村組入社
  • 2016年株式会社奥村組入社定年退職
  • 2016年株式会社パスコ入社
  • 2020年株式会社レンタルのニッケン顧問職にて入社
  • 2022年株式会社オリンポスの顧問職にて入社
  • 現在、株式会社パスコ、株式会社レンタルのニッケン、株式会社オリンポスの3社の顧問職を担当

3,000m 対応 AUV「Deep1」10 年間の活用(1)

高橋 裕和(たかはし ひろかず)
深田サルベージ建設株式会社
東京支社 海洋開発部
高橋 裕和

1. はじめに

 私たち深田サルベージ建設株式会社は、社名からイメージされる「海難救助」、「鉄構工事」、「海洋土木」、「重量物輸送・曳航」に加え、近年では「海洋開発」及び「洋上風力」といった海中・海底、オフショアにも事業範囲を広げている。新たな事業を展開していく中で、積極的に深海設備機器(海中ロボット)によるオペレーションにも挑戦し、現在に至っている。
 本稿では、2013年から商用運用を開始した自律型潜水探査機 (Autonomous Underwater Vehicle; AUV)「Deep1」の10年間の活用を振り返る。気が付けば2024年2月現在まで、計200回以上の潜航を経験してきた。探査計測の各論は参考文献に譲るとし、AUV「Deep1」の基本的な性能を紹介しながら、活用の変化や苦労した機材管理についてお話しするのでお付き合い願いたい。

図1 AUV「Deep1」10年間の活用の概略
図1 AUV「Deep1」10年間の活用の概略

2. AUV「Deep1」の導入(2013年)1), 2)

 2000年以降、陸上資源の枯渇や希少金属への需要が高まり、世界的に海底資源への注目が高まってきた。これに伴い、従来の船舶(洋上船)による探査方法だけでなく、有索式潜水探査機(ROV)やAUVによる精密探査の役割が大きくなってきた。弊社は、2012年に水深3,000m対応のAUVを購入し、2013年1月の業務から商業オペレーションを開始している。
 Deep1の外観の写真を図2に示す。このAUVはカナダInternational Submarine Engineering (I.S.E)社製Explorer型と呼ばれる機体であり、同じくカナダHawboldt Industories社とI.S.E社が共同開発した軽量Ramp型投入揚収装置(LARS)により海中投入・揚収される。AUV導入時、その支援母船は弊社所有船舶「新海丸(339トン)」であった。(後に新竜丸(698トン)に変更)

図2 3,000m対応AUV「Deep1」
図2 3,000m対応AUV「Deep1」

 I.S.Eエンジニアによると、(国防等を除けば)精密な海底地形図や洋上船では調査が困難な氷海下の環境調査のためにAUVを購入する顧客が多いという。一般に、AUVに求められる主要な計測は、マルチビーム測深機(MBES)、サイドスキャンソナー(SSS)、サブボトムプロファイラ(SBP)による海底地形図・海底堆積プロファイルであろう。弊社AUV「Deep1」運用開始についても、最初は海底熱水鉱床の調査、表層型メタンハイドレートの探査が中心であった。
 AUV「Deep1」の主要項目を表1にまとめる。Deep1にはセンサ類の追加搭載が可能なペイロードがある。表1の調査機器の項目にあるように、これまで顧客の要望に応えて多様な物理・化学センサを搭載し、調査潜航に貢献してきた実績がある。

表1 AUV「Deep1」の主要項目
表1 AUV「Deep1」の主要項目

 AUV「Deep1」の航行は、無線による「パイロットモード」と自律航行及び音響制御下による「ミッションモード」で制御される。
 パイロットモードは、支援母船上のオペレータが海上航行しているDeep1との無線操縦である。AUV投入してから潜航まで、調査潜航を終えて浮上してから揚収までの操縦はこのモードで実行される。
 ミッションモードとは、支援母船から懸架された音響トランスデューサとDeep1側との相互の音響通信で航行制御されるものと、事前に作成された潜航・調査プログラムをDeep1ビークル側にインストールすることでプログラムに沿った航行を行うものである。Deep1投入後は、潜航段階により使い分けている。例えば、潮流の影響を受けてDeep1が大きくドリフトした際には、音響通信による位置情報を更新することになる。また航行中、障害物回避システム(OAS)が作動することにより、水中衝突や接触を未然に防止することもミッションモードの自律制御によるものである。
 潜航中のDeep1の航行状況は、音響通信装置及び音響測位装置により支援母船のモニターで監視されている。

3. Deep1のアップグレード(2020年)

 資源調査を中心にAUV「Deep1」を運用してきたが、客先からはより正確な情報が望まれるようになった。そこで2019年、Deep1をI.S.E社へ返送し、オーバーホールとともに搭載機器がアップグレードすることとなった。アップグレードの内容は、(1) MBES、(2) 光学式カメラシステム、(3) バッテリーシステムとなり、同時期に(4) HiPAPによるGAPSのバックアップ、(5) 支援母船の変更を行っている。
 R2Sonic社製MBESのビーム数を256本から1024本に増やすことで最大4倍の解像度を得た。この解像度から海底熱水鉱床のチムニーの「煙突状の形」がより得やすくなることが期待できる。加えて、ウォーターカラムを計測することにより、水中異常を取得することでプルームの可視化が可能となる。これまではSSSによる2D情報だけであったが、3Dで座標を取得することができる。
 通常、海底面の様子を知るには、SSSの音響によるイメージを取得する。一部、パイプライン等の保守整備を目的としたサーベイでは、安心して接近できる環境下で光学式カメラが使用されていると思う。このときDeep1に搭載した光学式カメラシステムはこれまで見たシステムより高性能であると感じた。
 AUV下面のトップとテールにストロボライト(省電力LEDライト)を搭載し、巡航しながら光学式カメラの写真、すなわち自然色に近い画像を得られるようになった。
 電力を消費する光学式カメラシステムを搭載することもあって、AUVビークル内に搭載されているバッテリーシステムも刷新した。バッテリー個数を9個から11個に増加し、潜航時間は最大24時間となった。
 海中を航行するビークルにとって、音響測位のデータは重要なファクタである。このデータによって、航行する機体の位置と深度が決定され、計測データと整合される。音響測位装置GAPSをフルメンテナンスすると同時に、そのバックアップシステムについて検討した。
 新たなAUV支援母船「新竜丸(698トン)」には、ROV用の音響測位装置HiPAP(Kongsberg社製)が既設であった。あるとき、AUV運用チームの一人から「このHiPAPをGAPSのバックアップに使用できないか」というアイデアが出され、Deep1でも利用可能となった。このHiPAPによる音響測位は、万一、GAPSが不調となった際の使用だけではない。GAPS/HiPAPを切り替えることにより、より高品質な測位データを取得することが可能になったのである。



次回に続く-



参考文献

  1. 大貫裕志 他:3000m 級自律型無人探査機「Deep1」について, 第25回海洋調査技術学会研究成果発表会, 2013
  2. 大辻由希 他:AUV(Deep1)の可搬式軽量ランプ型着水揚収装置(LARS)および船上一次処理ソフトウェアの開発, 日本水路協会第 28 回水路技術奨励賞, 2014


【著者紹介】
高橋 裕和(たかはし ひろかず)
深田サルベージ建設株式会社 東京支社 海洋開発部 部長代理

■略歴

  • 1991年東海大学大学院海洋学研究科海洋工学専攻修士課程修了
  • 2004年新日本海事株式会社
  • 2005年深田サルベージ建設株式会社、現在に至る

ドップラ速度ログDVLの最近の動向:Nortek社の場合(1)

國分 祐作(こくぶ ゆうさく)
Nortekジャパン合同会社
國分 祐作

1 はじめに

 近年、海上での基本的な作業を自動化しようという取り組みが、海中ロボット(Subsea Robotics)市場を急成長させている。この海上作業の自動化は、海上作業員の安全性向上、各作業員の負荷軽減、プロジェクトのコスト削減、そして、二酸化炭素排出量の削減といった環境負荷の削減につながることが期待されている。歴史的には、海中ロボットは石油・ガスなどの市場における無人探査機である遠隔操作型無人潜水機ROV(Remotely Operated Vehicle)に限定されていたが、近年ではより高度な機能を有するROVや人間の操作を必要としない自律型無人潜水機AUV(Autonomous Underwater Vehicle)へと多様化が進んでいる。これらの高度な水中ビークルが自身の挙動を決定する際には、機体に搭載している各種センサ類からの情報に大きく依存している。したがって、高精度な水中ナビゲーションを実現するために各種センサ類の性能に対する要求が年々高まってきている。本稿の前半では中でもドップラ速度ログ(DVL)センサについてそのしくみと性能向上への取り組みについて紹介し、後半では小型水中ビークルを対象として新開発されたDVLセンサとその使用事例について紹介する。

2 水中ナビゲーションについて

 水中ではGNSS衛星からの信号が届かないため、水中ビークルの自己位置を推定するためには、機体に搭載されたセンサ類から取得される情報を頼りに水中におけるナビゲーションを実行する必要がある。この水中ナビゲーションには、機体に搭載されたセンサ類と共に、水上・水中の位置を基準に自己位置を推定する方法や、推測航法(Dead Reckoning)と呼ばれる方法を用いるなど、水中ビークルの運用環境や用途に応じて選択されている(表1)。航続距離が長い自律航行や、複雑な水中構造物の中を航走するといった用途においては、推測航法が使用されることが多い。

表1 水中ナビゲーションの種類と説明
表1 水中ナビゲーションの種類と説明

 推測航法とは、方位、速度、タイミングセンサからの出力を統合し、演算処理を行うことで、移動体の時間的な位置変化を継続的に把握して行う航法である。これは多くの場合、GNSSまたは他の絶対測位システムより得られた既知の開始位置を基準として実行される。推測航法では、決められた時間間隔で位置の算出を行い、その積分を行うことで現在位置が算出されるため、各センサの誤差は時間と共に累積する(図1)。そのため、最終的な位置の誤差は、機体に搭載されているセンサの性能に密接に関係する。

図1 推測航法において、左上の航走開始点からの移動距離に応じて位置誤差が累積するイメージ、黄色線は計画航路、青破線は水中ビークルの航跡、右上黄色点と青点の間の距離が位置誤差を表す
図1 推測航法において、左上の航走開始点からの移動距離に応じて位置誤差が累積するイメージ、黄色線は計画航路、青破線は水中ビークルの航跡、右上黄色点と青点の間の距離が位置誤差を表す

 水中ナビゲーションが用いられる例としては、潜水士用のハンドヘルド・システムといったコンパクトな機材から、数千キロもの航続距離を持つような全長数メートル級の探査・測量用大型AUVまで様々である。また、自己位置の把握は、自律的な航行の用途の他、探査・測量データに地球上の座標情報を付与するために必要とされている。

3 ドップラ速度ログDVL(Doppler Velocity Log)とは

推測航法など、各種水中ナビゲーションにおいて重要な役割を担うのがDVLである。DVLは、ボトムトラッキング (Bottom Tracking、海底検知)と呼ばれる、水中の基準となる面(海底等)に対する相対速度を計測する技術を用いた音響センサである。なお、この「水中の基準となる面」は、垂直配置された壁面や水中構造物の天井など、海底に限られないため、本稿では以降「基準面」と記載する。大きな特徴として、基準面に対する相対速度を経時的なドリフトや偏りが発生すること無く計測できる。

DVLは、音波の送受波器となっているトランスデューサ(探触子)を3つ以上持ち、それぞれ異なる方向を向くように配置している(図2)。この3つ以上のトランスデューサから音波パルスをそれぞれ基準面へ送信し、この面から反射されてトランスデューサへ到達した反射波(エコー)に対してドップラ効果を用いて周波数解析を行う。この結果、各トランスデューサ面に対し垂直方向の速度が得られる。その後、設計上既知となっているトランスデューサの配置された角度(向き)から、DVLの正面方向を基準とした3軸の直行座標成分へ速度を分解し、最終的にDVLの基準面に対する移動速度が得られる(図2)。3つ以上のトランスデューサを用いることで、基準面に対する三次元速度が得られる。

図2 左上)DVL1000がOceanScan社製AUV Light Autonomous Underwater Vehicleに搭載された例(courtesy OceanScan)、左下)Nortek社製DVL1000 300mの外観、右)水中ビークルの下部に設置されたDVLが海底に対する相対速度を計測しているイメージ、図中ではV1とV2を合成して水平方向の移動速度を算出している
図2 左上)DVL1000がOceanScan社製AUV Light Autonomous Underwater Vehicleに搭載された例(courtesy OceanScan)、左下)Nortek社製DVL1000 300mの外観、右)水中ビークルの下部に設置されたDVLが海底に対する相対速度を計測しているイメージ、図中ではV1とV2を合成して水平方向の移動速度を算出している

推測航法は、この速度情報と共に、方位センサから得られるDVL(または機体)の方位情報(進行方向)と組み合わせて演算処理を行うことで、実行することができる。そのため、DVLは方位センサを含む慣性センサを持つ慣性航法装置(Inertial Navigation System、INS)と組み合わせて使用されることが多い。近年では、DVLとINSの接続の際に必要な接続・校正作業を不要とする、DVLとINSが一体化された製品も登場している。

一方、DVLを単独で水中ビークルに搭載し、速度計として用いる場合もある。特に、水中ビークルを水流がある環境下において運用する場合、位置を自動で保持する定点保持(ステーションキーピング)と呼ばれる機能が有効になる。速度情報は、水中ビークルがスラスタ等の駆動部を水流に対抗するように自律的に動作させるために使用される。

4 DVLの性能を決定する主な要素

DVLの性能は、1)計測レンジ、2)計測精度、3)計測時間管理の3つの要素が重要であるとされる。

1) 計測レンジ

  • 長い計測レンジを持つDVLは、潜航後の早い段階から基準面(海底等)を検知することが可能となり、水深方向においてビークルの運用可能な範囲が広がる。
  • 基準面(海底等)の検知には精度の良いボトムトラッキングアルゴリズムの設計が必須である。
  • Nortekが独自に開発したボトムトラッキングアルゴリズムは、基準面からの反射音波の識別能力を高めることで、ノイズ等の混入シグナルによる誤検出の低減を実現している。その結果、音波減衰が発生しやすいような、基準面が遠方にある状況においても、精度良く基準面を捉え、速度の算出が可能となっている。

2) 計測精度

  • 計測精度の高いDVLを使用することで、自律航行等で設定された計画された航路からの逸脱(位置ドリフト)を低減することができる。
  • 同一の音響周波数を用いた場合、計測精度と計測距離は反比例する傾向がある(計測距離増加にて計測精度低下)。同様に、音波帯域と計測距離に関しても同様な反比例の傾向がある(音波帯域狭にて計測距離増加)。そのため、同一音響周波数を使用した場合において、計測距離を延ばすために帯域を狭めた音波パルスを使用した場合には、計測距離は増加する一方で計測精度が低下する要因となる恐れがあり、注意が必要となる。
  • Nortek社では、可能な限り広い帯域の音波パルスを用いることに重点を置いてトランスデューサやDVL全体の設計がなされている。一般的には使用する音波の帯域が広くなるほど基準面からの反射音波を識別することが容易になるため、計測精度が高くなる。ただし、帯域を広く取るほど計測可能な距離が短くなるため、計測精度と計測距離の適正なバランスが重要となる。前項の独自開発されたボトムトラッキングアルゴリズムは、計測精度を保ちつつも計測距離を延ばすことに貢献している。

3) 計測時間管理(タイムスタンプ付与)

  • DVLとINSを統合して推測航法を行う場合、各計測データの時間情報(タイムスタンプ)の誤差が、推測航法全体の誤差に直結する。そのため、データが取得された際の時間情報を可能な限り正確に管理する必要がある。
  • DVLとINSは、時間同期と通信の確立が、可能な限り精度よくなされていることが不可欠である。
  • Nortek社のDVLには、有効時間(Time of validity)と呼ばれる機能が搭載されている。この機能によって、音波パルスの発信時刻や受信時刻を時刻情報とするのではなく、音波パルスが実際に基準面に到達した時刻を判別して時刻情報として使用することができる。従って、INSも音波が海底に到達した正確な時刻を演算に用いることができる。これは、基準面までの距離が大きい場合や、航走速度が速い場合など、音波パルスが基準面とビークル間の水中を伝搬している間に水中ビークルの移動が生じるような状況において、特に位置誤差の低減に貢献する。

5 Nortek社製DVLの例

 DVLには様々な形状、サイズ、音響周波数を持つ機種が存在する。DVLの音響周波数は、計測可能な距離をある程度決定付ける。低周波数の音波パルスに対応した機種は高周波数に対応した機種よりも長い計測距離を持つが、低周波数の音波パルスを発生させるためにトランスデューサの寸法を大きくする必要があるため、機器の重量と寸法が高周波数の機器よりも増加する傾向にある。 INS等の慣性センサと接続することで水中ナビゲーションを実現するNortek社製DVLには、計測レンジや耐圧性能により合計8種類の機種がある(図3)。機種名「DVL」に続く数字は、各機種が使用する音響周波数がkHzにて表示され、製品名となっている。DVL1000の場合、1MHz(1000kHz)の音響周波数を使用している。これらDVLシリーズは長期精度0.1%を実現しており、長期間の自律航行への貢献が期待される。

図3 左)Nortek社製DVLシリーズ、各計測レンジに対応したラインナップ、高深度用の機種にはチタン製耐圧容器を使用、右)DVL1000が搭載されたArtifex 養殖網検査用ROV、DVLを水平に配置して養殖網を壁面に見立てて計測を行いながら距離を保持して検査を行う(courtesy SINTEF Ocean AS)
図3 左)Nortek社製DVLシリーズ、各計測レンジに対応したラインナップ、高深度用の機種にはチタン製耐圧容器を使用、右)DVL1000が搭載されたArtifex 養殖網検査用ROV、DVLを水平に配置して養殖網を壁面に見立てて計測を行いながら距離を保持して検査を行う(courtesy SINTEF Ocean AS)


次回に続く-



【著者紹介】
國分 祐作(こくぶ ゆうさく)
Nortekジャパン合同会社 代表

■略歴

  • 2011年独Leibnitz Institute for Baltic Sea Research 招聘研究員
  • 2012年JFEアドバンテック株式会社 入社
  • 2014年東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科 修了 博士(海洋科学)
  • 2017年Nortekジャパン合同会社 入社

2018年より現職

■執筆歴
センサイトWEBジャーナル:
「超音波ドップラー式流向流速プロファイラー(ADCP)の技術とその応用」
(1) https://sensait.jp/12234/
(2) https://sensait.jp/12235/

次世代セーリング型USV(無人水上艇)豪Ocius社“Bluebottle™”の販売

 サイスガジェット(株)はOciusTechnology Ltdと代理店契約を締結したことに伴い、同社のセーリング型USV“Bluebottle™”の販売ならびに同USVを用いた海洋データ計測サービスの国内提供開始を2024年2月28日(水)から東京ビッグサイトで開催される『WIND EXPO[春]2024』において発表する。
 Ocius社の“Bluebottle™”は苛酷な気象環境下で数ヶ月以上の海洋観測ミッションが遂行できる世界で最もタフな自律無人水上艇として知られており、オーストラリア海軍が*ASW用途で5隻を所有するなど、堪航性が要求される分野で採用されている。
*ASW:対潜水艦戦闘(対潜戦)

●風力/波力/太陽光によるハイブリッド動力で永続的な海洋調査を可能に
 “Bluebottle™”は遠隔操作で収納/展開が可能な、大型ソーラーパネル搭載のハードセイルが特長である。従来のセーリング型USVはハードセイルが収納できなかったため、設計以上の暴風下では艇の安全を確保しながらの海洋観測が困難だった。また強い向かい風の中では前進効率が著しく損なわれ、予定期間内でのミッション完了が困難であった。“Bluebottle™”は極端な暴風下ではセイルを収納した状態で太陽光発電を行い電気推進で前進することが可能である。また長期間にわたり日照が不足する場合でも、艇が波で上下運動する力を前進推力に変換する”フリッパーフィン“の効果で航行を継続することが可能である。

●無人システム軍事演習「Autonomous Warrior 23」で優秀な成果
 2023年11月にシドニー近郊のジャービス湾で*AUKUSにより対潜戦ASWサポートを主要ミッションとして行われた無人システム軍事演習「Autonomous Warrior 23」において、複数のUSVで参加したBluebottle™艦隊は風速13m~15m/秒、時には25m/秒を超える暴風状態の中、予め設定されたコース通りに曳航ソナーアレイによる海中探索を完了するなど、演習に参加した無人艦艇の中でも優秀な成績を納めた。これはBluebottle™が優れた堪航性を有していることの証明にもなり、AUKUSの海事担当者だけでなく、世界の海洋無人システム関係者の注目を集めた。
*AUKUS:オーストラリア、イギリス、アメリカの三国間軍事同盟

●強力なペイロード電力供給であらゆる観測ニーズに対応
 3タイプあるBluebottle™ USVのうち、最新設計のBathy Class USVはセーリング型USVとしては希有な5kWディーゼル発電機を搭載している。このため、最大4kW/平均850W(30日連続)の電力をペイロード観測装置に供給可能である。この豊富な電力のおかげで、沿岸水深測量に必須のマルチビーム測深機の搭載だけでなく、洋上風力発電サイトの事前調査に必要な地層探査ソーナーも搭載可能。また科学魚群探知機、気象観測センサなども搭載可能で、これらを含めて海上での1ヶ月から数ヶ月以上にわたる長期観測を可能にするとのこと。

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000113141.html

商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」、デブリへの接近を開始

 (株)アストロスケールは、日本時間2月18日深夜に打ち上げられた商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ、Active Debris Removal by Astroscale-Japan の略)」のミッションにおいて衛星の初期運用を終え、日本時間2月22日の20時頃、世界初※1となるデブリへの接近を開始した。

 運用を終了した衛星等のデブリは非協力物体※2であり、外形や寸法などの情報が限られるほか、位置データの提供や姿勢制御などの協力が得られない。よって、その劣化状況や回転レートなど、軌道上での状態を把握しつつ当該デブリに安全・確実にRPO※3(ランデブ・近傍運用)を実施することは、デブリ除去を含む軌道上サービスを提供するための基盤となる。ADRAS-Jは実際のデブリへの安全な接近を行い、デブリの状況を明確に調査する世界初の試みである。具体的には、大型デブリ(日本のロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)への接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行う。

 ADRAS-Jはまず、自身に搭載するGPSと地上からの観測値をもとに、スラスタ等を駆使してデブリに接近していく(絶対航法)。そして一定の距離に達すると、衛星搭載センサを駆使する相対航法へ切り替え、対象デブリとの距離や姿勢などさまざまな情報をもとに、安全にさらに距離を詰めていく。また、センサのシームレスな切り替えも高難度かつ非常に重要であり、これは地上で例えると、高速で移動しながら、望遠鏡、双眼鏡、虫眼鏡を切り替えるイメージである。

※1 過去に同様のミッションが実施されたか否かをアストロスケール社で調査(2023年)
※2 非協力物体:接近や捕獲・ドッキング等を実施されるための能力・機器を有さない物体のこと
※3 RPO:Rendezvous and Proximity Operations Technologiesの略称 、ランデブ・近傍運用

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000067481.html

マクニカ、沖縄県南城市にてセカンダリアクティビティ検証の公道実証実験

(株)マクニカは、自動運転EVバスと路車協調を連携活用した、将来的レベル4実現に必要な要素となるセカンダリアクティビティ*1が可能になるための技術検証を沖縄県南城市の公道にて実証実験を実施する。

 マクニカは、本実証実験において、ハンドル・アクセル・ブレーキペダルのない自動運転EVバスであるGAUSSIN MACNICA MOBILITY社の「ARMA(アルマ)*2」を手動走行する。南城市をフィールドに地域交通の維持・確保や観光客の二次交通のさらなる整備に向け、AIカメラ・センサ等を活用したリアルタイム交通情報の活用により、より安全かつ効率的な遠隔監視を可能とし、安全性の高い自動運転モビリティシステム構築を目指す。

 また、より安全な運行を目指し一部区間において、同地区における実証実験では初となる走行ルート内の車両周囲の道路環境情報を可視化させたインフラ連携による路車協調を実証する。

 今回の路車協調では、走行ルート上に設置したカメラやセンサにより走行ルートの状況をリアルタイムに把握し、安全性を評価した上で、監視者による遠隔操作や手動運転への切り替えの判断に必要な通知を行う仕組みを構築することで、自動運転走行中にセカンダリアクティビティが可能になるための技術検証等を行う。

 自動運転EVバスの走行情報は、マクニカ製遠隔監視システム「everfleet*3」に連携させ、自動運転EVバスのリアルタイムな運行状況を離れた場所から監視・管理する。

●本実証実験の概要
■日  程  :2024年2月23日(金) ~2月29日(木)
■時  間  :10時00分~17時00分(1日7便)
■自動運転バス:自動運転EVバスARMA
■走行ルート :知念岬公園と斎場御嶽を往復するルート

*1:セカンダリアクティビティとは、運転手が運転中にできる運転以外の行為のこと。
*2:自動運転EVバスARMA(GAUSSIN MACNICA MOBILITY社製)
 ARMAは自動運転EVシステムを搭載した自動運転シャトルバスである。EV(電気自動車)仕様となり、1回の充電で約9時間(100km)の自動走行が可能。
*3:everfleet (マクニカ製遠隔監視システム)

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000014021.html