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cerevo、スマホ連携のスキー板用センサモジュール「SKI-1」を開発

株式会社cerevoはスキーの技術向上に役立つセンサモジュール「SKI-1」を開発した。本製品はLTEモジュールと各種センサーを搭載したスキー板用センサーモジュールで、各種センサーを通して計測したデータは、スマートフォンやクラウドと連携することでリアルタイムに滑走データを記録し、スマートフォンアプリで確認ができる。
グラフィカルに滑りの状態を可視化することで自分の滑走を振り返りができ、テクニックをより向上させることができるとのこと。
またGPSとLTEモジュールを搭載し、万が一スキー板を紛失した場合でも位置情報をモジュールから定期的に発信することで、現在位置を特定できる。

Cerevoは今回「SKI-1」を、株式会社SnowSnow の手がける「日本の匠の技」を取り入れた木製スキー板などを販売する総合スキー用品ブランド「Reine Deer(レインディア)」へ提供している。

ニュースリリースサイト:https://xon.cerevo.com/ja/ski-1/

私のセンサ雑感(2) 人間を測るセンサの限界-1

西澤 紘一
(株)プライムネット 取締役

(2)人間を測るセンサの限界

我々は、病気にかかると医者に診断を仰ぐ。昔は、脈を測り目や口腔を観察すると言う対面診察がメインで、せいぜい聴診器と血圧計を使って、後は医者の経験と勘に頼って診断が行われてきた。昔を振り返ってみても、町医者に診てもらえば風邪や腹痛など診察後2,3日で治った。それでも特に大きな誤診は無かったように思う。昨今は、総合外来で、あれこれ症状を聞かれたあと専門化した診療科へ回される。次いで、採血、検尿、心電図、超音波診断、レントゲンなどの定番検査を受けるとそのデータが診察室の医者のPC画像上に現れて、2~3分のチェックの後、診断を下され処方箋をもらって帰ることになる。昔に比べると相当程度診断の精度は上がったようだが、2~3時間待って2~3分診察が当たり前の状態となった。

昨今の医療分野における測定装置、その中に組み込まれているセンサの機能多様化と精度の向上が著しい。特に光学系の医療機器の進歩には目を見張るものがある。医者は、患部を直接見たいと言う欲求が強い。古くは、古代ギリシャ時代に遡る。このころ筒状パイプを通して膀胱、尿道、咽頭などを観察していたようだ。19世紀後半になって筒状の金属パイプに小型レンズをリレー式に設置して食道や気管支までを見る硬性内視鏡が発明されたが、患者への負担は相当のものであったと言う。その後、1950年ごろ超小型カメラを先端に取り付け電線と照明系を一体化した胃カメラが実用化され、内臓部の写真が直接撮影できることになり診断が長足の進歩をした。

次いで1950年後半に実用化された「イメージスコープ」は特筆すべきものである。光学繊維(光ファイバ)の両端を1対1にそろえた繊維束は、イメージバンドルと呼ばれて可撓性を有しつつ直接画像を伝送することができ胃や十二指腸まで医者が直接見ることができるようになった。最近は、マイクロカプセルと呼ばれる光学系、画像処理系、伝送系などを集積化した素子が開発されており、患者はカプセルを飲み込むだけで検査が済むため負担は軽くなった。現在では、内視鏡の役割が診断にとどまらず治療にも使われるようになってきた。いわゆる低侵襲内視鏡下の手術である。さらに、レンズ系ではあるが8K画像による内視鏡手術法が開発された。人間の視覚の分解能を上回る解像力を有し、手術中でも直接像が毛細血管まで視覚化されるため、高精度の手術が可能となった。これらの進歩も先端の光学系、2次元のイメージセンサなどの小型化、高精度画像処理技術が寄与している。

【著者略歴】
1967年 京都大学大学院無機化学専攻修了
         同年、日本板硝子社に入社、以降光ファイバ、マイクロオプティックス、
         光センサ、セルフォックレンズ、光・電子応用ガラス材料の開発に従事した。
         通産省大型プロジェクト「光計測制御システム」に参画し、ガスセンサの開発に従事した。
1991年 北海道大学工学研究科応用物理分野で工学博士取得
1996年 厚生労働省傘下の職業能力開発大学校教授に赴任
2004年 通信システム工学科を創設、初代教室主任
2007年 技能五輪世界大会(静岡)で日本国技術代表
2008年 諏訪東京理科大学客員教授となりガラス材料工学を担当
         同年、㈱プライムネット(特許ビジネス)を設立
2010年 ㈱みらい知研を設立、その後、代取社長、会長を勤める
2018年 同社後進に譲り退任

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~キーワードから解説する~「IoT時代を担うキーはセンサ技術」(2)

藍 光郎
((一社)次世代センサ協議会 顧問)

頭文字Iは初期のIntegrationのハードからInformation、Internet、Intelligenceのソフトへ、同様にCはCircuit、Computerのハードから後半はCommunicationのソフト、Tは中期のTechnologyのソフトから現在のハードとソフトが融合されたThingsになっており、略称にもハード、ソフト、それらの融合、と時代の変遷がある。一般にThingsは「物」であるが、筆者は「物事」と定義している。「もの」は形があり、「こと」は形の無いもので、Thingsはハード、ソフトが融合された森羅万象を網羅する物事と考えている。

センサは人間の五感を代替するといわれてきた。すなわち、視覚、触覚、聴覚、味覚、嗅覚である。この他にも温覚などがあり、現在では人間の感覚の領域をはるかに超えた各種のセンサが活躍している。更に電気、磁気など、人間が持っていないとされた物理・化学量をはかるセンサとして幅広く実現している。 1950年代前半迄はメカニカルな機構(からくり)を用いるものが主体であり、一部が金属材料の機能性を利用していたが、後半になると半導体材料(Si)の物性を用いた電子技術が生まれ急速に発展した。更に、1970年後半MEMSが誕生し、電子技術の進展に伴ってセンサも新しい時代に突入した。最近はナノ寸法のNEMSの開発も進んでいる。

センサは多くの技術分野にまたがる境界領域の先端的な技術・製品である。いろいろな技術を融合・活用させることによって、はるかに多彩なセンサがうまれ自動車、家電などにも積極的に利用され、センサ自身も飛躍的な発展を遂げつつある。異種センサの複合化とパターン認識手方の導入によって、化学センサの技術的な障害が除かれ、急速に実用化が進んだ。日本生まれの世界に先駆けた誇るべき技術である。 センサ自身も、初期は単体のハードであったが、CPUを内蔵できるようになった中期以降はインテリジェントセンサ、スマートセンサ、AIセンサ、センスパイアなど次第に演算や通信などのソフトが組み込まれるようになった。今やセンサ内部に組み込まれたソフトは一種のハードと定義できる地位を占めている。

現在は自動車、スマートフォン、ゲーム機など、安価で超小形の既存のセンサを主体として色々な分野に応用されつつある。単純なセンサを数種類組み合わせることによって、人間の健康度や幸福度などの情報も計れるようになった。道路、橋梁、鉄道などのインフラの予防保全にも役に立つ。 また人は情報の70~80%を視覚から得ているといわれる。視覚センサはカメラの画素数が数千万になり、AI等のソフト技術が進歩した結果、応用範囲が格段に拡がって、人に劣らない情報を得られるようになった。高精細の4K、8Kカメラの普及が更に多くの情報を得る手段になるであろう。

現在、世界のセンサ使用数は一人当たりほぼ1個であるが、これを100個以上にするトリリオン(兆)・センサという概念が具体的に提案されている。IoTはあらゆる「物 と事」を対象とする。物事にセンサを装備すると100個では足りず、これからは遥かに多くの新しい種類のセンサが必要となる。過去にはこのビッグデータを超高速に処理できるコンピュータ、サーバ、ストレージ、クラウドやそれに伴うソフトウエアが未熟であったが、現在はかなり対応できるようになり、更に将来も急速に進歩する見通しがある。 AIはデータが多い程精度が上がる。データの発信源はセンサである。センサが無ければ物事からの情報を得られない。このためにIoTの中でも特にセンサの将来性が期待されている所以である。今や我々はセンサ無しには生活できない時代に突入しているのである。 電子技術の進歩については、コンピュータやAIが人間の能力を完全に超える時点のシンギュラリティが2045年問題として議論され始めている。センサからの正確で安定した大量の情報をいかに活用するかが、我々人類が直面する今後の大きな課題であろう。

藍 光郎(あい みつお)略歴

元 :(株)日立製作所 センサ技術委員会 委員長
    (社)日本技術士会 副会長
    (株)超伝導センサ研究所 代表取締役専務
     マレーシア標準工業研究所 チーフアドバイザー
    (一社)次世代センサ協議会会長

現在 : (一社)次世代センサ協議会 顧問
      工学博士、技術士(機械)、一般計量士

排泄予測デバイス「DFree」が、CES 2019にて3つのアワードを受賞


以前この欄にてご紹介した、トリプル・ダブリュー・ジャパン(株)が開発した排泄予測デバイス「DFree」(ディー・フリー)が、 アメリカ・ラスベガスにて開催されている世界最大級の電子機器の見本市 CES 2019においてCES「Innovation Awards」、 IHS Markit「Innovation Awards」、 Engadget「Best of CES」の3つのアワードを受賞したとのこと。


■受賞したアワードについて
1.CES「Innovation Awards – Fitness, Sports and Biotech」
https://www.ces.tech/Events-Programs/Innovation-Awards/Honorees.aspx

2.IHS Markit「Innovation Award – Fitness, Wearables and Health Devices」
https://news.ihsmarkit.com/press-release/technology/ihs-markit-announces-innovation-awards-winners-showstoppers-ces-las-vegas-1
※日本の企業としては、唯一の受賞。

3.Engadget「Best of CES – Digital Health and Fitness」
https://www.engadget.com/2019/01/10/best-of-ces-2019-winners/
※日本のスタートアップ企業(J-Startupの出展企業)としては、唯一の受賞。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000019617.html

凸版印刷、ZETAとAIで病院内施設見守りの実証実験

 凸版印刷株式会社は、LPWA(低消費電力広域ネットワーク)規格ZETA(ゼタ)※1を活用し、センサー検知とAIにより病院内施設のトイレやシャワー室・お風呂などの個室における転倒や利用状況などを可視化できる医療施設向け見守りサービス(以下、本サービス)を開発した。
2019年1月初旬より、医療機器の輸入・販売を手掛ける株式会社メッツ協力のもと、埼玉県総合リハビリテーションセンターの個室トイレで実証実験を開始する。

本サービスは、医療施設のトイレやシャワー室・お風呂などの個室内に人感センサー・開閉センサーなどを組み合わせて設置し、利用者の動きや扉の開閉状況を検知することで、転倒などの利用状況の把握ができる。センサーで検知した情報はクラウド又はオンプレミス※2上に蓄積され、ナースステーションなど別の場所に設置されたPC上で確認が可能です。ZETAの活用により、ワイヤレス医療機器などに使用される既存の通信帯域と異なる帯域での通信が実現するため、診療や看護に支障をきたさず電波干渉を防ぐことができ、医療施設内での導入に適しているという。

 また、AIを活用することにより蓄積された緊急時の検知パターンを学習し本サービスの精度を高め、緊急時の早期発見を可能にする。従来、外から状況を把握することが困難であった医療施設内の個室において、患者の体調急変につながるインシデントや個室の長時間利用の把握を実現するとのこと。

※1 ZETA
ZiFiSenseが開発した、超狭帯域(UNB: Ultra Narrow Band)による多チャンネルでの通信、メッシュネットワークによる広域での分散アクセス、双方向での低消費電力通信が可能といった特長を持つ、IoTに適した最新のLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格。LPWAの規格のひとつであるZETAは、中継器を多段に経由するマルチホップ形式の通信を行うことで、他のLPWAと比べ、基地局の設置を少なくでき、低コストでの運用が可能な方式として注目されている。

※2 オンプレミス
自社でサーバなどハードウェアを設置・導入し、管理・運用する形態。 ZETAはクラウド上に用意されたZETAサーバの活用が前提となる為、オンプレミスを利用する場合は他のネットワーク規格も含めて現場に合ったシステム構成を検討する。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000164.000033034.html

オプテックス・エフエー、東京光電子工業を子会社化

平成31年1月4日付で、オプテックス・エフエー株式会社(以下「オプテックス・エ フエー」)は東京光電子工業株式会社(以下「東京光電子工業」)の発行済み株式を 100%取得し、子会社化したと発表した。

オプテックス・エフエーは、産業用センサメーカーとして、2002 年の設立以来、工場の自動化に貢献する光電センサや変位センサ、画像センサ、画像処理用 LED 照明の開発・製造・販売を行っており、特にレーザ変位センサにおいては、精度・品質向上が求められる半導体・FPD、電気・電子部品業界用途に向けて、国内外で幅広いラインアップを展開している。

東京光電子工業は、1969 年に創立し、測定システムの専門メーカーとして国内で初めてレーザ外径測定器を開発。レーザを応用した精密測定を得意とし、レーザマイクロゲージ、ローラ測定器、光学式露点計を、幅広い業界に向けて開発・製作している。

オプテックス・エフエーは、東京光電子工業を子会社化することにより、非接触での高精度レーザ測定分野におけるラインアップを補完するとともに、両社の技術・販路を融合させることで、国内外での更なる事業拡大をする意図があるもよう。

オプテックス・エフエー株式会社 リリースサイト:
https://www.optex-fa.jp/release/index_190k2837y456t28j.html

ams、Face++との提携で3D光センシング技術の実装を促進

センサソリューションサプライヤーのamsと人工知能ソフトウェアのFace++(Megvii Beijing Technology Co.,Ltd)は顔認識などの3D光センシング技術について、OEMやシステムインテグレーターを通じて導入を加速するための提携に合意した。

今回の提携によってメーカーは、顔認識、顔認識による決済、アニ文字、拡張/仮想現実といった機能を実行するシステムを、素早く市場に投入できるようになるとのこと。
amsとFace++が作成した3D光センシングソリューションは、赤外線プロジェクターの使用によりユーザの顔といった現実の物体の表面をマッピングし、セキュリティと認証機能の動作において革新的な変化をもたらすという。
例としては、携帯電話での顔認識が可能になり、PINコードや指紋認識機能に替わる簡単かつ安全な方法で、デバイスのロック解除や支払い機へのアクセスが可能になったことが挙げられるとのこと。

amsとFace++は新しいパートナーシップの下、amsの3D光センシングシステムとFace++の技術が相互に最適化されるよう協業する。顧客サービスにおいても提携し、共同でシステムレベルの技術サポートを製品メーカーに提供するという。

ニュースリリースサイト:https://www.dreamnews.jp/press/0000187506/

私のセンサ雑感(1) センサ技術は拡大再生産する

西澤 紘一
(株)プライムネット 取締役

(1)センサ技術は拡大再生産する

人間の進化に伴って最も重要な役割を果たしてきたのは、測る、比べる手法の発明、すなわちそのためのセンサであろう。人間は、共同生活を始めたころ、それぞれの人間にとっての価値観の違いをどう埋めるかに心を砕いてきた。その際に大切なことは客観的に重さや、長さを比べることであった。天秤が発明され、ものさしが創造された。特にものさしは、人間の手の幅や脚の長さを基準としたらしい。古代エジプトでは、人間の体の長さから単位を作った。親指の付け根の幅をインチ、手を広げた時の指先から鼻先までをヤード、足のつま先から踵までをフィートと呼び、さらに肘から中指の先までをキュービットと呼んだ。重さの単位は、小麦1粒の7000倍を1ポンドとしたのが起源だとされている。定量的な測定には、必ずものさしが必要である。しかも万人が認めたものでなければならない。その後、水1リットルの重さを1000gとしたことで万国共通の単位が生まれた。このように最初の頃の品物は身近な体や穀物から基準の単位を作り出したのである。

図1) キュービット図

次に気温や体温のように目に見えないものを測る必要が出てきた。これらは間接測定、すなわちセンサの物理量の変換機能を借りなくてはならない。特に温度計の発明が典型的であるが、アルコールや水銀を毛細管に閉じ込めてそれらの熱膨張率を利用して液の高さに変換することでビジブルにしたと言う工夫を行った。こうして、人類の原典でもあるセンサ技術は物理・化学現象の基本として地道に進化し続けてきた。科学史に名を残した科学者達が発見したあらゆる物理・化学・生理的現象は、すべてセンサの力に頼っている。つまりセンサの精度と機能が上がるに連れて新しい現象が発見され、結果得られた新しい物理・化学・生理現象が他の分野への計測に利活用されてその効用が拡大再生産されていく。これがセンサの特徴である。磁気共鳴吸収は、極めて基礎的な物理現象であり一昔前は大学の講義で聞いたことがある程度の知識であったが、今や人体の断層撮影としてのMRIを知らない人はいない。センサの拡大再生産の好事例の1つであろう。

【著者略歴】
1967年 京都大学大学院無機化学専攻修了
         同年、日本板硝子社に入社、以降光ファイバ、マイクロオプティックス、
         光センサ、セルフォックレンズ、光・電子応用ガラス材料の開発に従事した。
         通産省大型プロジェクト「光計測制御システム」に参画し、ガスセンサの開発に従事した。
1991年 北海道大学工学研究科応用物理分野で工学博士取得
1996年 厚生労働省傘下の職業能力開発大学校教授に赴任
2004年 通信システム工学科を創設、初代教室主任
2007年 技能五輪世界大会(静岡)で日本国技術代表
2008年 諏訪東京理科大学客員教授となりガラス材料工学を担当
         同年、㈱プライムネット(特許ビジネス)を設立
2010年 ㈱みらい知研を設立、その後、代取社長、会長を勤める
2018年 同社後進に譲り退任

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匂いセンサ最前線

都甲 潔 (九州大学高等研究院/五感応用デバイス研究開発センター 特別主幹教授/特任教授)

 匂いセンサはもう30年以上前から研究開発され、幾つかの市販品も存在する。しかし、匂い全体の強度しか測れない、感度が不足している、匂いの質に分解できない、用途が限定されている等々、欠点も多く、社会に浸透していないのも事実である。ここで改めて「匂い」を定義すると、化学物質の集合体から構成される空気質とでも言えよう。本稿では、最新の匂いセンサの開発状況を紹介しよう。

内閣府ImPACTの宮田プログラム「進化を超える極微量物質の超迅速多項目センシングシステム」の中の「有害低分子」プロジェクト(H26-30)1)では、複数種の化学物質を認識するセンサを多数用意し、その出力をAI(人工知能)でパターン認識するという手法を採る。

図1 ケモレジセンサの作製方法、電流電圧特性、応答特性2)

 図1は受容材料としてガスクロマトグラフィー(GC)材料とカーボンブラックを用い、トランスデューサとして2つの同心円型電極による電気化学インピーダンス測定を利用したケモレジセンサ(chemosensitive resistor)の作製方法、電流電圧特性、そして芳香族化合物ピロールへの応答を示している2)。ピロール添加ON/OFFで電気抵抗が増減しているが、これは受容材料のピロールの混入による膨潤/収縮の効果と考えられる。現在0.9 mmサイズの電極16個を同一基板上に作製し、その部分に異なる電気化学特性を有する受容膜を塗布することで、気相中の複数種の化学物質の識別と定量に成功している。

 このように作製した人工嗅覚システムを使い、ウィスキー、ブランデー、ワイン、吟醸酒の識別が行えるのは当然のことであるが、(同じアルコール度数の)ビール種の識別、沖縄の焼酎である泡盛種の識別も可能となっている。また、その際に、電位応答の大きさ(振幅)のみでなく、動的変化(過渡応答)をフーリエ変換し特徴量として抽出することで、識別能力が格段と上がることも判明している。現在、人工嗅覚システムは14×14×15cm3サイズとコンパクト化しており、専用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を開発することで、H30年度内にさらなるコンパクト化を図る予定である。

 このIoT社会にあって、人工嗅覚システムは、これまでの分析装置とは異なる立ち位置、つまり、簡便迅速、人の感覚に近い出力、可搬性という特徴で、安全・安心を産む科学技術として世の中に浸透していくことであろう。

参考文献

1) http://www.jst.go.jp/impact/program/09.html

2) B. Wyszynski, R. Yatabe, A. Nakao, M. Nakatani, A. Oki, H. Oka and K. Toko, Sensors, 17, 1606 (2017)

五蘊と感情センサ

藤田 嘉美 (藤田技術士事務所 所長)

日本技術士会のロボット技術研究会に属している筆者にとって、今最も興味深いセンサは「感情センサ」である。ここであらかじめお断りしておかなければならないことは、昨今のセンサはIoTのデバイスを通じてビッグデータに集積されAI(人工知能)を用いて検証したものが、各種の感情表現のセンシングに用いられているという事実である。人とコミュニケーションをとるサービスロボットのPepperには、人との触れ合いや環境状況に応じて変化する基本の2感情である快(悦、喜、愛、楽、安心)と不快(不安、悲哀、怒、苦、辛)の組み合わせからなる多数の感情表現が再現できると発表されている。

ここでは、お釈迦様の「人間は五蘊(色・受・想・行・識の五つ)からなり立っている」という説に基づいて、人間の各種感情を知るためのセンシング対象と対象センサの名称を図1.に整理してみた。

最初の色(肉体)からは、心拍や脈拍数、体温、発汗量などを下着や腕などに装着するセンサから情報を収集してAIで判定する「疲労センサ」、「睡眠センサ」、「健康センサ」などがある。非接触センサの事例としては、超音波を胸に当て反射波から心拍を計測し疲労度を測るという研究もある。「個人識別センサ」としては、顔画像とAIの組み合わせによるものがよく知られているが、クリーンルームや食品工場といった顔を隠す職場での個人識別として耳に挿入するイヤホン型の「個人識別センサ」がある。その他、ボクシングのダメージ度を赤外線カメラとAIで可視化する「ダメージセンサ」がある。これは、パンチを浴びると皮膚下で内出血が起こり選手の体表温度が下がるという現象を計測し、選手の体表温度とAIからダメージ度を判定するというものである。

図1

受(五感)では、呼気量や着衣圧、通気温湿度などから判定する「着心地センサ」がある。

想(妄想)では、目や瞼の瞬きや視線、態度などをカメラで捕らえてで判定する「眠気センサ」や「犯罪センサ」があり、心拍数などから眠気や、喜び、悲しみ、驚き、ストレスといった直接的な感情表現を認定する各種センサもある。

行(行動)では、腕や頭の動きを時系列に捕らえた行動形態などから判定する「ヒヤリハットセンサ」や「万引きセンサ」などが注目されている。

識(思慮)は、ずばり脳波の測定から、幸福感、失望感、楽観、軽蔑、不安感、嫌悪感などの各種感情を知ろうというもので、頭部に密着させて測定するセンサがある。