古川勇一郎
利用事例紹介
ここからはLoRaWANの利用事例として「八王子防災プロジェクト」を紹介する。
「八王子防災プロジェクト」は総務省「身近なIoTプロジェクト」内の「IoTサービス創出支援事業」に採択された実証事業である。
実証事業を行った東京都・八王子市は、三方を丘陵に囲まれたほぼ盆地状で、市内に17河川が流れる自然豊かな環境の反面、土砂災害警戒区域も多く存在し、過去には豪雨による風水害も経験した場所である。近年で最も大きかったのは「平成20年8月末豪雨」で、高尾駅周辺の地区では8月28日から31日まで4日間の総雨量が332.5ミリに達し、166世帯への避難勧告、187棟の床上・床下浸水、駅構内の冠水、車両の脱線と甚大な被害をもたらした。
これらの被害は、市内を流れる中小河川・用水路(以下、中小河川等)の増水・氾濫が起因となる事が多いが、既存の水位監視システムは一級河川等の大規模河川にしかなく、中小河川等は対象外となっている。また、中小河川等の水位監視を行うには多地点で展開する必要があるが、大規模河川を対象とした既存の水位監視システムでは大きさ・コスト共に中小河川等には適していない。さらに、水位の変化は大規模河川に比べ非常に早く、既存の水位監視システムと同じ計測間隔(10分毎)では、その変化を捉まえることができない可能性がある。(注1)
では、中小河川等を監視するにはどのようなシステムが適しているのか。
中小河川等は川幅が狭く住宅に隣接した場所を流れていることが多いので、大掛かりな装置を設置することは難しく、ソーラーパネルなどの外部電源を必要とせずコンパクトでなければならない。また、中小河川等の早い水位変化を捉えるため、計測間隔は大規模河川の2~5倍、つまり5~2分毎とする必要がある。但し、計測を頻繁に行うと電池寿命に影響するため省電力が求められる。そして、多地点で計測するために水位計は安価である必要があり、長期運用かつメンテナンスフリーが求められる。当然、設置コストも安価でなければならない。
これらの条件を鑑みて、LoRaWANを用いた水位計を開発した。
(注1)2017年時は大規模河川しか水位監視システムはなかったが、現在は国土交通省主導で小河川等に危機管理型水位計の設置が進んでいる。
次週に続く-
【著者略歴】
1996年 3月 日本電子専門学校電子音響工学科卒業
1996年 4月 株式会社東洋リンクス入社 マイコン関連開発業務に従事
2009年 1月 株式会社エイビット(技術部)入社
2017年 5月 総務省実証事業「八王子防災プロジェクト」に従事
センサイト・キュレーション:「LPWA(Low Power Wide Aria)ネットワーク」(2)
センサイト編集部
11.〔【IoT時代の無線通信技術「LPWA」とは?〕運営:株式会社インプレス
デジタル関連のメディアも扱うインプレスのサイト。
さすがに詳細な説明がされていて、LPWAの各方式の中でさらに分かれた規格についても解説している。
2019年の記事。
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/nettech/1175202.html
12.〔通信から見たIoT市場〕運営:株式会社富士通総研
国内でも普及に向けて本格的な取り組みが始まった、LPWANに関する特徴や先行事例について解説している富士通総研のサイト。2017年の記事。
https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2017/2017-6-2.html
13.〔LPWAとは | IoTを本格化させる省電力・広域・長距離通信の最前線〕運営:スマートキャンプ株式会社
WEBマガジン「ボクシル」のサイト。2018年だがLPWAの市場予測なども含めて詳しく解説している。
https://boxil.jp/mag/a3611/#3611-8
14.〔3つの代表的LPWAの違いを理解する【SIGFOX、LoRa、NB-IoT】〕
運営:株式会社リックテレコム
メディアとして歴史あるリックテレコムの運営するサイト「Business Network.jp」の解説。
2017年の記事。
https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/5106/Default.aspx
15.〔平成29年版情報通信白書LPWA〕運営:総務省
総務省が出している情報通信白書の平成29年版。
スマートフォンが個人の通信の殆どを占めるようになっている事から始まり、IoTやLPWAについても記述している。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc133220.html
16.〔ドコモのLPWA〕運営:株式会社NTTドコモ
ドコモのLPWAについての解説があるサイト。
https://www.nttdocomo.co.jp/biz/special/iot/lpwa/
17.〔IoT時代の通信方式LPWA〕運営:KDDI株式会社
KDDIのLPWAのサイト。LTE-M(LTE Cat.M1)についての解説となっている。
https://iot.kddi.com/lpwa/
18.〔ソフトバンクのIoT〕運営:ソフトバンク株式会社
ソフトバンクのサイト。NB-IoTの応用例などを挙げている。
https://www.softbank.jp/biz/iot/
19.〔ELTRES™ for IoT Sensing Network〕
運営:ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
SONYの提供するLPWA「ELTRES™ 」の紹介サイト。
TSI(欧州電気通信標準化機構)の国際標準規格としても採用されている。
https://www.sony-semicon.co.jp/products_ja/eltres/index.html
20.〔導入事例(Open Blocks)〕運営:ぷらっとホーム株式会社
実際にセンサネットワークを組む場合のゲートウェイやデータ管理用機器の利用事例紹介のサイト。
https://www.plathome.co.jp/case/
いよいよ通信も5Gの時代が迫ってきて、LPWAネットワークにより沢山のセンサを繋ぐ、もしくは纏めることが当たり前になってくる。総論としてはおおよそ数年前からの予測通りであるが、LPWAの技術や製品は日進月歩で、状況は刻刻と変わっていくであろう。通信方式としてはやはりひとつだけが寡占するのでは無く、各方式が並行して進んでいく模様である。業界や使用環境によって使う方式が決まっていくことも考えられそうである。
いずれにせよLPWAネットワークについてはこれからも目が離せないものとなろう。
Sigfoxネットワークの概要および実用事例(2)
システム(株)
LPWAソリューション事業部
宮下純一
3.Sigfox通信の特長
Sigfox通信はセンサデータの送信を主に行うことを想定した非常に単純化された通信仕様となっており、デバイスは電池で長時間運用することが可能だ。上り通信は最大12バイトのデータを1日140回まで送信することができる。12バイトは小さなサイズではあるものの、センサデータであれば十分だ。送信時に下り要求フラグを立てることで、8バイト固定長の下りメッセージを送信することもできる。これは、デバイス制御や設定変更などに利用できる。
また、SigfoxはUNB(Ultra Narrow Band)と呼ばれる超狭帯域通信技術であり、日本のISMバンド920MHz帯中の192kHzの帯域幅において、100Hz幅のみを使用してメッセージを送信する。これにより端末の多元接続を実現している。
4.シームレス・グローバルローミングサービス「Monarch」
Sigfoxは世界各国の通信基準に準拠するため、RC(Radio Configuration)と呼ばれるリージョンを設けている。
| RC1 | RC2 | RC3 | RC4 | RC5 | RC6 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| リージョン | 欧州 | 北中米/南米 | 日本 | 南米/APAC | 韓国 | インド |
| 周波数(MHz) | 868-878.6 | 902.1375 -904.6625 |
920.5-929.7 | 920.1375 -922.6625 |
922-923.4 | 865-867 |
| EIRP(dBm) | 16 | 24 | 16 | 24 | 14 | 16 |
Sigfoxには、基地局が送信するビーコンを受信してこのRCを自動的に識別し切り替える、シームレス・グローバルローミングサービス「Monarch」がある。このサービスを利用すると、IoTデバイスが海外へ移動したとしても通信を維持することができるため、海外輸送されるアセットのトラッキング等が容易に実現できる。
5.Sigfoxジオロケーションサービス「Atlas」
Sigfoxは位置測位に強みを持つLPWAでもある。GPS情報をメッセージに乗せて送ることももちろんできるが、それ以外にも独自の位置測位サービスを提供しており、ニーズに合わせて利用することができる(図1)。
Atlas Native(基地局ベースの位置測位で、精度数km以内)であれば、低消費電力でおおよその位置を特定でき、特殊なセンサを必要としないためデバイスコストを抑えることができる。Atlas Wi-Fi(Wi-Fiアクセスポイントを利用した位置測位で、精度数百m以内)であれば、屋内での利用も可能となる。また、今後リリース予定のAtlas Bubble(精度10m以内)であれば、さらに詳細な位置を把握することができる。
次週に続く-
【著者略歴】
宮下 純一(みやした じゅんいち)
京セラコミュニケーションシステム株式会社
LPWAソリューション事業部
LPWAソリューション部
LPWAソリューション課 課責任者
2005年京セラコミュニケーションシステム株式会社入社、研究部配属。
以降、広域無線LANシステム、地デジ中継局FRCワイヤレスリンクシステム開発、自治体向けソリューションの開発普及、人工知能の活用によるセキュリティシステム開発、画像認識サービスLabellioの活用、顔認証システムの開発普及に従事。
2019年1月、Sigfoxネットワークの日本展開を加速させるため、技術責任者としてLPWAソリューション部に異動。
検査装置の小型化に貢献する90°回転タイプの同軸照明を発売
オプテックス・エフエー(株)は5月13日から下旬にかけて、センシング同軸照明90°回転タイプ「OPX-SVシリーズ」を発売すると発表した。
「OPX-SVシリーズ」は、設置スペースが限られる電子部品向け検査装置の小型化に貢献する画像処理用の同軸照明。狭指向角(半値角±17°)発光の面光源を搭載し、高輝度・高均一照射が可能。微細なキズや打痕の検出用途に対応するという。
標準タイプの同軸照明は、ワーク検査面に対して垂直にカメラを設置するため、ワーク・照明・カメラを一直線上に設置するスペースが必要だったが、90°回転タイプの同軸照明「OPX-SVシリーズ」は、ワーク検査面に対して水平にカメラを設置可能なため、スペースを削減できるとのこと。
また「OPX-SVシリーズ」は、標準タイプの同軸照明で課題となっていたハーフミラーの透過に起因する解像力(※)の低下を解消する。標準タイプの構造では、ハーフミラーを透過した後にカメラに入光するが、90°回転タイプはハーフミラー表面で反射した光がカメラに入光する構造のため、高精細な撮像が可能であるという。
本シリーズは18、27、35、50mmの4サイズ、白・青・赤色の計12機種展開。標準価格は18mmサイズの白色・青色が79,000円(税別)、赤色が74,000円(税別)となる。
(※)カメラと光学部品において、どの程度細かく画像として再現できるかを表す能力
■製品サイト(オプテックス・エフエー):
https://www.optex-fa.jp/products/light/opxsv/index.html#series_default_go
■プレスリリースサイト:
https://www.dreamnews.jp/press/0000194244/
凸版印刷・ホシデン・日本全薬工業 IoTで家畜のストレス管理の実証実験
凸版印刷株(株)(以下 凸版印刷)、ホシデン(株)(以下 ホシデン)、日本全薬工業株式会社(以下 日本全薬工業)は3社共同で、凸版印刷が提供する「ID-Watchy® Bio(アイディーウォッチーバイオ)」を活用し、家畜の活動状況と連携したストレスなどの生体情報の取得により健康状態が把握できる「家畜健康管理サービス」(以下、本サービス)の開発に向けて実証実験を開始する。
(株)トータルハードマネージメントサービス協力のもと、北海道野付郡の牧場であるトータルハードカーフサービスにおいて、2019年5月下旬より子牛の飼育における本サービスの実証に向けての検討を開始、本格的な実証実験を2019年夏より行うとのこと。
(画像:「家畜健康管理サービス」使用イメージ)
本サービスは、凸版印刷が提供する位置情報とネットワークカメラの映像データによる労務管理と、生体センサー連携によるデータ取得で作業員の健康状態を把握できる「ID-Watchy Bio」を活用したもの。
本実証実験では、「ID-Watchy Bio」の機能である生体センサー「MEDiTAG®(メディタグ)」の装着器を家畜専用に改良し、足や首へ装着することで家畜のストレスなどの生体情報の常時取得と可視化を検証し、リアルタイムで映像と生体情報が連動することで、体調急変などの早期発見を目指す。また日本全薬工業が動物用医薬品の研究開発などで培ったノウハウを活かし、家畜の活動状況と生体情報を連携させた取得データの分析を実施。具体的には、トラクターの走行音で牛のストレスレベルが上昇するなど活動状況と生体情報が連携した健康状態を把握することで、飼育環境や状況に配慮した家畜の健康・安全管理の実現を目指すという。
本実証実験において凸版印刷は「ID-Watchy Bio」の提供及びシステム開発、ホシデンは生体センサー「MEDiTAG」の提供及び家畜向けシステム開発、日本全薬工業は実証フィールドの提供・データ分析を行うとしている。
■本実証実験の概要
・場所:北海道野付郡 牧場 トータルハードカーフサービス
・内容:
1)家畜(子牛)の生体情報管理
実証対象の子牛の足や首にMEDiTAGを装着。24時間体制による連続的な生体情報(パルス*・転倒検知・ストレスレベル・歩数検知)の取得と家畜の健康状態の常時管理を検証。
*パルスは拍数/分を推定、算出している。
2)家畜(子牛)の活動状況管理
飼育場所にネットワークカメラを1台設置し、24時間体制で子牛の活動状況の映像を記録。リアルタイムで生体情報と合わせた活動状況の把握を検証。
3)活動状況と生体情報を連携させたデータ分析による家畜用データの蓄積
カメラで記録した活動状況とストレスなどの生体情報を連携させ、データ分析を実施。生体情報で異常値を検知した際の原因を検証し、ID-Watchy Bioの家畜用サービス展開に向けてデータの蓄積を実施。
*「ID-Watchy」は凸版印刷株式会社の登録商標。
*「MEDiTAG」はホシデン株式会社の登録商標。
*「MEDiTAG」は医療機器ではない。装着状態、電波の状況により作動しないことがある。
* 本ニュースリリースに記載された商品・サービス名は各社の商標または登録商標。
* 本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のもの。その後予告なしに変更される場合あり。
ニュースリリースサイト(凸版印刷)2019年5月9日:
https://www.toppan.co.jp/news/2019/05/newsrelease190509_1.html
テラドローン インド、4,200平方Kmの土地の大規模測量の実施に成功
―RGBセンサを搭載したドローンと独自のデータ解析システムを活用―
テラドローン インドは、インド マハラシュトラ州の政府関連機関Maharashtra Krishna Valley Development Corporation の依頼を受け、 4,200平方キロメートル(およそ東京都2つ分)の土地の測量を完了したとのこと。
(画像:測量で撮影した写真から画像処理を行って作成したオルソ画像)
今回の測量ではRGBセンサを搭載したドローンを活用し、高精度な空中写真を撮影。自社のシステムで取得したデータを処理解析し、地上解像度(GSD)約2 cm/pixel精度の各種成果物を作成し、1085の村を含んだ広大な土地の区画整理を実現した。従来の測量方法と比べると、約2分の1の時間で測量を完了させたことになるという。
また地質調査や水質調査を行い、そのデータをドローンで取得したデータと併せて処理、解析した。これにより肥沃な土地が居住地として使用されている場合には農地に変えて農業の効率性を上げるなど、様々な改善策を検討することを可能にした。
このような最新テクノロジーを駆使した測量により、灌漑の状況に加え、居住地と農地の境界、栽培されている農作物の種類など、土地に関する多角的な情報を視覚化し、現状の把握を容易にすることに成功したとしている。
〔背景〕
現在、インドでは農業用水の税金未納が深刻な社会問題となっており、これがより深刻な問題となっている背景として、インド国内全体の水利用のおよそ8割を農業が占めていることがあげられる。農地の中には、徴税から逃れるため、耕作地としての申請がされていない地域で、農作物が栽培されている例が多く見られた。農業用水に対する徴税が極めて困難なことから、政府にとってこの課題の解決は急務となっていた。
これに対し、テラドローンはドローンを活用した大規模な測量を実施し、高精度なデータベースの構築を実現、過去に作成された地図をアップデートすることで、土地の使用状況や変化を正確に把握することができるようになった。これにより政府は、徴税の対象地域の特定、加えて地質や水質に応じた土地に対する徴税額の決定が可能となったとのこと。
プレスリリースサイト(テラドローン):https://www.terra-drone.net/blog/mkvdc-india-survey/
ヴァイサラ、恒温恒湿チャンバー向け 「HMM170 湿度温度モジュール」を新発売
「要件の厳しい人工気象室や過酷な環境への組み込みに最適なオープンフレームOEMモジュール」
ヴァイサラ(株)は真空や高圧などの厳しい環境下においても高精度で信頼性の高い計測が求められる恒温恒湿チャンバーへの組み込みに適したオープンフレームOEMモジュール、「HMM170 湿度温度モジュール」(以下、HMM170)を本日より販売開始する。価格はオープン価格。
■ 過酷な使用環境に耐える設計
HMM170は、人工気象室の温度範囲(-70~+180℃)と結露に達するまでの湿度範囲の全てに対応する。また、真空環境と10barまでの圧力下環境に耐えられる。プローブは小型で、回路基板もコンパクトサイズのため、多様な環境条件を再現する人工気象室、医薬品向け安定性試験チャンバー、インキュベータなど、様々なOEM用途に柔軟に組み込めるとのこと。
■ 堅牢なセンサ技術
HMM170には、高分子薄膜静電容量式のヴァイサラHUMICAP® 湿度センサ技術が採用されている。最新の湿度センサ「ヴァイサラ HUMICAP® R2 センサ」は、優れた耐腐食性と長期安定性を備える。本製品は、ケミカルパージ機能により一般的な化学物質がセンサから除去され安定した計測を実現する。また、プローブの加温機能により結露を防止し、正確な湿度計測を提供するという。
プレスリリースサイト(ヴァイサラ):
https://www.vaisala.com/ja/press-releases/2019-05/vaisala-hmm170
合成紙ユポを使用したエレアコギター向けコンタクトセンサを共同開発
(株)ユポ・コーポレーション(以下「同社」) は、ヤマハ(株)(以下「ヤマハ」)、一般財団法人小林理学研究所(以下「小林理研」)と三社共同で、このほど合成紙ユポを使用したエレクトリック・アコースティックギター向けコンタクトセンサを開発した。当製品は、2019年5月25日(土)に新製品としてヤマハより発売される、アコースティックギター「FG/FS Red Label シリーズ」のエレクトリック・アコースティックギター「FGX/FSX」に採用されるとのこと。
(画像:コンタクトセンサにユポが使用されている、ヤマハ 新開発のAtmosfeel(TM)(アトモスフィール)ピックアップシステム)
※エレクトリック・アコースティックギターは、アコースティックギターに「ピックアップ」という、弦の振動と音を拾う装置を内蔵することによって、エレキギターのようにアンプに繋いで大きな音を出すことができる。略称:エレアコギター
共同開発したコンタクトセンサについて
このたび共同開発したコンタクトセンサは、弦や本体の振動を電気信号に変換する圧電素子に、新しく開発した「圧電特性を有するユポ」を使用。薄くて柔らかい素材特性を持つユポを使用することで、本センサは、セラミックを圧電素子とした従来のセンサと比べ、高感度かつ広帯再現性を有し、ギターの演奏で生じる楽器本体の振動をより忠実に電気信号へと変換できるようになった。本センサをピックアップとして搭載したエレクトリック・アコースティックギターは、従来のピックアップでは拾いきれなかったサウンドホールから出る弦振動のまとまり、一弦ごとの余韻、フィンガリング時のタッチ感、高音域の倍音成分によってもたらされる空気感や繊細な音を再現し、アコースティックギターを生音で弾いている時の感覚を呼び起こすという。
合成紙ユポについて
ユポは、ポリプロピレン樹脂と無機充填剤を主原料とする、耐久性や耐水性に優れたフィルム法合成紙。ユポは、国内外で多数の特許を取得する独自製法(二軸延伸フィルム成形法)により、無数の微細な空孔(以下「ミクロボイド」)がその表面及び断面に付与されており、このミクロボイドにより、紙の特性である「不透明度」や「印刷・筆記適性」を実現しているとのこと。
開発の経緯について
同社は、長年の研究開発で培われた「空孔制御技術」により、ミクロボイドの形状・配置を最適化し、かつ特殊な帯電工程を経ることでミクロボイド壁面が帯電し、ユポが薄くてやわらかく、かつ耐久性を持つ集音感度の高い圧電素子となることを見出した。その後、同社はヤマハ、小林理研とで実用化に向けた共同研究開発を2013年より開始し、このたび、ピックアップシステムのコンタクトセンサとして、ヤマハの「FGX/FSX」に採用された。
ニュースリリースサイト(ユポ・コーポレーション):
https://japan.yupo.com/news/2019/20190426.html
日立、水道管の漏水などを高精度で早期に検知するシステムを開発
(株)日立製作所(以下、日立)は、ガス管や下水管などの地中埋設インフラを効率的に保守管理するデジタルプラットフォームを構築した。高感度・低電力センサにより、地中配管などのデータを収集し、デジタル技術を活用することで、地中埋設インフラの保守作業の高度化・効率化を実現します。その第一弾として、本プラットフォームを活用し、水道管の漏水エリアを高精度で瞬時に特定するシステムを開発した。今後、実用化に向け実証実験を進め、2020年度に水道事業者向けサービスを提供開始する予定とのこと。
本システムにより、漏水量を減らし造水コストを低減するとともに、大漏水による断水や道路の陥没事故を未然に防ぎ、安心・安全・快適な都市インフラの構築に寄与するとしている。
漏水検知システムの主な特徴
(1)日々の漏水検知を実現する高感度・低電力センサ
日立が開発した高感度センサを300m間隔で設置することで、漏水による微弱な振動を検知する。また、低電力化を実現する回路技術により、電力消費量を従来比で50%削減。これらにより、センサは内蔵バッテリーのみで5年以上稼動し、広範囲にわたって漏水を日々検知することができる。
(2)誤検知防止と通信負荷低減を実現するデータ分析技術
日立はこれまでの漏水検知に関する知見やノウハウから、漏水時は連続的な一定の振動が発生することを発見し、漏水による振動を検知する高度データ分析技術を開発した。センサに本技術を適用し、自動車や人の往来による振動といったノイズの除去をセンサで処理することにより、通信負荷を低減したデータの収集・分析が可能になる。これらにより、漏水の誤検知を削減し、高精度な漏水検知を実現する。また、センサとの通信は、NTTグループが提供するIoT通信技術 LPWA*(LTE-Mなど)の活用を想定している。
* LPWA(Low Power Wide Area):省電力広域無線通信技術
(3)既存の水道管に容易に設置できるセンサ
日立が開発したセンサには磁石が内蔵されており、追加工事なしで既存の水道管に容易に設置でき、データを収集することができる。これにより、センサーを広範囲の水道管へ設置することができるとのこと。
ニュースリリースサイト(日立):
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2019/04/0425.html
IoTを牽引する広域センサネットワークLPWA の最新動向と将来展望(1)
1. LPWAの概要
LPWA(LowPowerWideArea)は、低消費電力で広域をカバーする無線センサネットワークである。センサネットワークは、1990年代末に研究が始まったユビキタスネットワーク、これを2012年頃から継承したIoT(InternetofThings)の中核ネットワークとして期待されたが、主に通信距離不足のため利用が進展せず低迷が続いた。
このような状況で出現したLPWAは、2010年代半ばより徐々に利用され始め、2022年には200兆円の大市場を創造すると予測されているIoTの起爆剤として近年急速に注目を集めている。LPWAの市場は2019年以降年率20%以上の成長が見込まれている。
2012年以降相次いでサービスを開始した独自仕様のLPWAのSigfoxとLoRaは、2015年からヨーロッパにおいて従来携帯電話網で提供されていたデータ通信の市場を奪い始めた。これに対抗するため、ヨーロッパを中心とした携帯電話関連機器ベンダが、第4世代携帯電話網(以下4G)の仕様としてLTE(LongTermEvolution)版LPWAを急遽規格化し、世界各国の通信事業者がLTE版LPWAの開発を開始した。2018年には中国や北欧等でLTE版LPWAの一部の仕様を採用したサービスを開始した1),2)。
国内では、2017年にSigfox、LoRaのサービスが相次いて開始され、通信事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)は2018年にLTE版LPWAのサービスを開始した。
独自仕様のLPWAについては、2018年以降も新規参入が相次いでいる。携帯電話網を利用したLPWA(以下セルラーLPWA)についても、2020年にサービスが開始される第5世代携帯電話網(以下5G)に向けた検討が2018年に開始された。
1.1 センサネットワークの分類とLPWA
センサネットワークでは、他の指標と比べ相対的により公平な評価が可能な通信距離によって、表1.1のように分類するのが一般的である。また、LPWAは、上記のように、大きく独自仕様のLPWAと、携帯電話網を利用したセルラーLPWAに分けられる。
準広域ネットワークは、スマートグリッドへのニーズの高まりに伴い、2009年頃に本格的な研究が開始され、2012~2016年に標準化された。しかし、狭域センサネットワークも準広域センサネットワークも通信距離不足から利用は拡大せず、IoTの市場を立ち上げるに至っていない。
準広域センサネットワークについては、Wi-SUN、IEEE802.11ah(WiFi-HaLow)、沖電気のSmartHopが代表的である。Wi-SUNとSmartHopはマルチホップ通信による数100mの通信を特徴とし、IEEE802.11ahは無線LANの実績を武器に2018年に普及に向けた推進協議会を設立している。
1.2 LPWAの特徴
従来の無線ネットワークに対するLPWA共通の特徴として、低消費電力と長い通信距離(1ホップで約2km以上)に加え、以下が挙げられる。
・通信速度が遅い(1Mbps以下)
・パケット長が短い(数byte~数10byte)
・通信頻度が少ない(センサからの収集頻度は1時間に数回~1日に数回)
LPWAの位置づけと従来の無線ネットワークとの関係を図1.1、独自仕様のLPWAとセルラーLPWAの比較を表1.2に示す3)~5)。
1.3 LPWAの応用
LPWAでは、IoTとほぼ同様、公共、産業、個人レベルまで、人々の生活の隅から隅に至る広い応用が想定されている。メータリング(検針)、モニタリング(監視)、トラッキング(追跡)が主要3機能とされ、各機能の主な応用を表1.3に示す。
次週に続く-
参考文献
1)S.Sakata、”EmergingLPWAasacoreofIoT-OverviewandPerspective、”Wireless TechnologyPark(WTP)、2017.5
2)阪田史郎、”LPWAの現在と未来、”MDB技術予測レポート(日本能率協会総合研究所)、 2018.2
3)阪田史郎、”広域センサネットワークLPWAの最新動向、”けいはんな情報通信オープンラボ研 究推進協議会、’IoTサービス創出に向けて’講演会、2018.2
4)阪田史郎、”LPWAの最新動向と将来展望、”総務省九州総合通信局電波利活用セミナー-IoT 時代におけるLPWAの魅力と可能性、2018.6
5)阪田史郎、”競争激化で成長・普及期に突入したIoT向け広域センサネットワークLPWAの詳細、”組込みシステム開発技術展(ESEC)、2019.4
【著者略歴】
1972年早大理工電子通信卒。1974年同大学大学院理工学研究科修士卒。同年NEC(日本電気)入社。
以来、同社研究所にてインターネット、マルチメディア通信、モバイル通信の研究に従事。工学博士。
1996-2004年同社研究所所長。1997-1999年(兼)奈良先端科学技術大学院大学客員教授。
2004-2014年より千葉大学大学院教授。同大学では、ユビキタスネットワーク、IoT/LPWA、5Gネットワークの研究に従事。2014-2019年同大学グランドフェロー。
2019年より同大学名誉教授。IEEE Fellow、電子情報通信学会フェロ―、情報処理学会フェロ―。
情報処理学会では、理事、監事歴任に加え、山下記念研究賞受賞、マルチメディア通信およびモバイル通信に関する先駆的研究に対し功績賞受賞。
電子情報通信学会では、理事、評議員(2期)歴任に加え、ユビキタスネットワークに関する先駆的研究に対し顕彰功労賞受賞。
総務省より、災害支援のための無線マルチホップネットワークに関する研究業績に対し総務省関東総合通信局長賞受賞、他受賞。
情報通信ネットワークに関する単著書4、共著書40。
http://sakatashiro.com/で詳しく紹介。
