推進コンソーシアム・上席顧問
/次世代センサ協議会・理事
岡崎 正一
通信事業者が全国展開する5G通信システムを、地域あるいは個別の自営網として活用するローカル5Gの検討が進んでいる。本稿では、5Gの現状とローカル5Gの概要、電波の特性などについて紹介する。なお、LOSサービスを提供するネットワークインフラの1つとして、ローカル5Gを考えることができる。
1.5G(第5世代移動体通信システム)の現状
1.1 5Gの特徴
通信方式がアナログ方式からデジタル方式に移行した1990年代の2G以降、高速化・大容量化が図られ、4Gでは動画・音楽などがスマートフォンなどで気楽に楽しめる環境を提供してきた。4Gまでは、移動体無線技術の高速・大容量化を狙ったものであった。
一方、5GではIoTの普及に伴いモバイル通信に対する要求が高速化だけでなく、IoTの基盤技術としても期待されている。5Gの主要3特徴を図1に示す。①の高速化だけでなく、IoTに対応した②の端末の多数同時接続、自動走行車や遠隔医療等と関連する③の超低遅延が5Gの特徴として挙げられる。
1.2 4Gから5Gへの移行
4Gから5Gへの移行シナリオとして、図2のシナリオが想定される。2020年の5G導入当初は、通信需要の高いエリアを対象に、5G用の新しい周波数帯を用いた超高速サービスを提供する。そのために新たな無線技術(NR:New Radio)に対応した基地局(NR基地局)は、LTE基地局と連携して動作するNSA(Non-Standalone)構成で運用する。(図2の左側)
5Gの普及期(図2の右側)では、超高速、多数同時接続、低遅延の要求に対応するサービスが段階的に提供される。また、5Gの新しい方式に基づくサービス提供のためにSA(Standalone)構成のNR基地局の運用が開始され、既存周波数帯域へのNR導入が進展する。
図2 4Gから5Gへの移行シナリオ(案)
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【著者略歴】
岡崎 正一(おかざき しょういち)
1975年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了.
同年三菱電機株式会社入社,基本ソフトウェア,ネットワークシステム,大規模応用システム開発等に従事.主な著書「UNIX-基本操作から実践活用まで-」,翻訳「PCパーフェクトガイド」等.
2012年より,MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)にて,IoTシステム技術等を推進.技術士(情報工学)、博士(情報学).
エッジAIにおけるセンサ技術のインテリジェント化(1)
コンピュータ&ネットワークシステムラボラトリー
松岡 康男
1. はじめに
巻頭言『 IoT時代におけるセンサ技術と技術継承』を受け、「エッジAIにおけるセンサ技術のインテリジェント化」に関して筆者が活動しているIVIでの活動事例を通して現在の課題、将来の期待について筆者なりの新解釈のもとで解説する。
日本でもIndustry4.0 が2015年を境に注目されつつあり、今では「わが国でも、新産業・イノベーション創出や国際競争力強化を牽引することを目的として、各種業種毎、さまざまな機関が存在している。中でも 『AI(人工知能)、IoT、ビッグデータ』をキーワードに、これらを核とした IoT の社会・ビジネスへの実装に向けた研究開発・実証がそれぞれの立場で、目的をもって進められている。究極は、どの機関でも、種々のセンサで得た巨大なデータを活用して集約する技術、また集約したデータ(ビッグデータ)を基に統計学的な解析判断を下す、または各種AIを利用して合理的判断を下そうという動きは共通している。ただ、それぞれに置かれている立場、立ち位置の違いから、そのデータの集積場所、AIの活用場所に大きな違いがあり、ビジネスモデルも違う。そうした中、半導体微細化技術、集積応用技術が進んで様々なエコ(低価格化、高速化、大容量化、長寿命化)な技術開発のもとで革新的に進化している半導体集積回路(メモリーIC)をはじめ、コンピュータの高速処理に特化したハードウェア化などは注目に値する。こうした技術の進歩にも牽引され、これまでの概念を大きく変えているケースも多々現れている。
近年、将来動向を見据えたうえで戦略的にビジネスモデルの大幅な見直しが各機関、企業にて急ピッチに進展しており、エッジコンピュータ化がそのトレンドの一つである。膨大な各種センサから収集できるデータをこれまでは、インターネットを通じて、クラウドに集約し、AIを活用して物事の最適解を求めるといったサイバー空間の考えから、日本に見られる現場主義、所謂、現場の末端、例えば製造装置から上がってくる各種時間軸管理(タイムアセット)に沿ったディープなデータを基にそのままリアルタイムにフィジカル空間の中で最適解を求める自律制御の考え方にシフトしている傾向が製造業において特に強くなっている。
そこで、本解説では、日本の強みとする製造業を主体としたManufacturing Industry系の中より現実の困りごとから最終的なあるべき姿を通して、ボトムアップ的な発想でサイバーフィジカルシステム(CPS)を考え、様々な実証検証を通して共通なリファレンスモデルを構築しようとしている団体のひとつ、日本における第4次産業革命をリードする業界団体IVI(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ:Industrial Value Chain Initiative:以下IVI)の活動を通してこれからの『Next Bigdata&AI(NBA)』を見据えて、世界的に注目されているコンソーシアムの動向を敷衍しつつ日本における活動動向などを通して現在の課題、将来の期待について筆者なりの新解釈のもとで解説する。加えて筆者が注目している次世代センサ協議会での速度感をもったセンサ技術の基盤技術開発(LOS(エルオーエス)は新たなユーズ視点の立場への展開加速とコンソーシアム連携強化活動にて今後のセンサ技術の発展、強いては日本のモノづくり産業の強化につながると思われる。
2.世界的な企業間連携動向
最初に世界的な企業間・連携の動向を通して世界的なインダストリアルIoTイニシアティブの連携関係を示したうえで、世界的に注目されているコンソーシアムの動向を敷衍した(図1)
日本流の産業の未来像「Connected Industries」。そこには『日本の産業の強さは「人間中心」で「現場力」にある』ということが示されており、『これらを独自の強みとしつつ、国家間、産業間で協調を進めていく』という事が示されている。これを受け、IVIは、積極的に活動を展開してゆく中で、2017年4月26日、ドイツのハノーバー市にて、インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(以下、IIC)とインダストリアルIoT(IIoT)推進で連携する合意文書(MoU)に調印、今年6月には昨年に引き続き2回目の合同セミナーを開催するなどと活動的である。
また、昨年2018年3月1日には、IVIとドイツのインダストリー4.0 団体Allianz I4.0とも産業向けIoT 推進で提携。日独相互でインダストリー4.0 に関する情報交換をすることで、互いの活動への相互参加などを通じ、両者が連携するMoUに調印し活動を強化している。
そこで筆者は、本活動を通して、日本ならではの製造業を中心とするコンソーシアム活動に参加(活動期間:2016年4月から2019年3月までの4年間の活動)した中で、公知となった活動中心に『エッジAIにおけるセンサ技術のインテリジェント化』と題して、その活動概要から筆者なりの解釈のもとで解説をする。*1) *2) *3)
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参考文献
*1) https://iv-i.org/wp/ja/activities/
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/index.html
*2) https://iv-i.org/wp/ja/2018/04/23/001-9/
*3) https://iv-i.org/news/press_170426.pdf
【著者略歴】
松岡 康男
(株)東芝 研究開発本部 研究開発センター
コンピュータ&ネットワークシステムラボラトリー
専門は半導体プロセス微細加工技術、生産システム情報工学、脳型人工知能チップ研究開発、次世代エッジコンピュータの研究開発。
IVI(Industrial Value Chain Initiative)のビジネス連携委員長(2017-2018)、センサーデータ活用技術研究会:主査(2018-2019)、応用物理学会会員(1985-2019)、一般社団法人 日本USA産業振興協議会・準会員(2016-2019)
劣化判定センサによる劣化診断・余寿命推定技術
三菱電機(株)受配電システム製作所 受配電システム部

<診断サービス名>
劣化判定センサによる劣化診断・余寿命推定技術
「劣化判定センサによる劣化診断・余寿命推定技術」は、センサを用いて受配電設備における有機絶縁物の余寿命(使用限界)を推定する技術である。これにより、従来の劣化診断技術では対応できなかった「無停電診断」と「専門作業者の派遣不要」を実現した。
受配電設備の更新計画における有機絶縁物の重要性
受配電機器は電気エネルギーを工場や建物へ供給する役割を担っている設備であり、長期にわたり信頼性・安定性を確保して稼動することが求められる。この受配電設備には導体の保持や相間の絶縁のため、非常に多くの有機絶縁物が使用されているが、そのほとんどが非修理系(補修も交換も不可能な部品)である。
また、有機絶縁物は汚損物の付着による化学変化などで材質が変化し、絶縁性能が劣化する。絶縁性能が一定以下まで劣化すると部分放電が発生する。部分放電の発生は有機絶縁物の劣化を更に進展させるため、電気的トラブル(地絡・短絡)に至る危険性が非常に高まる。電気的トラブルは操業被害などを含む波及事故に直結する。
このように、非修理系かつ劣化が事故に直結する有機絶縁物の寿命を、受配電設備としての寿命と言っても過言ではない。
しかし、有機絶縁物には経過年による更新基準(TBM※1)のみであり、使用状態による更新基準(CBM※2)が確立されていなかった。このため、受配電機器に用いられる有機絶縁物の劣化を精度よく診断するための技術が望まれている。
※1 TBM:時間基準保全、Time Based Maintenanceの略。一定期間で点検や更新を行う保全。
※2 CBM:状態基準保全、Condition Based Maintenanceの略。設備の状態を把握もしくは予知して点検や更新を行う保全。
有機絶縁物の劣化診断・余寿命診断技術
三菱電機では有機絶縁物の劣化に起因する事故を回避するため、部分放電の発生を使用限界と考え、診断時から部分放電発生までの期間を余寿命として推定する劣化診断技術を提供している。余寿命の明確化により事故リスクを最小限に抑えた更新計画立案をサポートすることで、多くのユーザの安全・安心な設備運用に貢献してきた(診断実績3000配列以上、2018年度時点)。
従来劣化診断の制約
従来の劣化診断技術は有機絶縁物の余寿命を明確にするためには有用であるが、以下の制約がある。
●診断対象設備の停電
絶縁物表面から付着物を採取するため、診断の設備は停電が必須である。
●専門技術者の派遣
付着物の採取を行う専門技術者の派遣費(現地作業費含む)が必要であるため、診断費用が高額となる。

劣化判定センサによる劣化診断・余寿命診断技術
前述の制約を解決するため、停電不要、専門技術者の派遣不要な有機絶縁物の劣化診断技術を開発した。センサによる劣化診断は以下の手順で実施する。
(1) 当社から郵送したセンサキットをユーザが設備内に設置。
(2) 6か月間、設備内の環境情報を測定。
(3) 測定完了後、センサを当社に返送。
(4) センサが収集した設備内の環境情報と従来の劣化診断結果データベースを用いて有機絶縁物表面の付着物を推定。
(5) 従来劣化診断技術のアルゴリズムを用いて有機絶縁物の余寿命(部分放電発生までの期間)を推定。
センサによる劣化診断のメリット
●無停電診断
センサ本体は受配電設備内の非充電部に設置可能であるため、診断時に設備の停電が不要である。従来の劣化診断では対応できなかった、止められない設備の劣化診断を実現した。
●専門技術者の派遣不要
センサはユーザにより設置が可能であるため専門技術者の派遣が不要となり、診断費用低減につながる。
今後もセンサを初めとした有機絶縁物の劣化診断手法をさらに進化させ、より多くのユーザに適用してもらうことで、受配電設備の安全・安心な運用に貢献していく。
主な仕様
| 診断対象設備 | 納入後20年以上経過した受配電設備(他社盤含む) |
| 診断対象絶縁物 | エポキシ,フェノール,不飽和ポリエステル |
| 診断内容 | 放電発生までの余寿命(使用限界) |
| 診断対象設備の公称電圧 | 440V~77kV(66,77kVは三菱製受配電設備のみ対象) |
| 設置方式 | マグネット貼り付け |
| 重量(本体) | 50g |
| 寸法(本体) | 120×110×14 mm |
本劣化診断に関するお問い合わせ:
三菱電機株式会社 受配電システム製作所 受配電システム部 予防保全技術課
〒763-8516 香川県丸亀市蓬莱町8番地
TEL:0877-24-8055
E-mail:Swg.Consultant@nd.MitsubishiElectric.co.jp
ライト一体型セキュリティカメラ「Bright Eye」Makuakeチャレンジ開始
(有)world Order は照明一体型のセキュリティ・見守りカメラ「Bright Eye」をクラウドファンディング“MAKUAKE”でプロジェクト支援のチャレンジを開始した。
「Bright Eye」は電球の差込口にこの製品を差し替えるだけで設置が出来るもの。
用途としてはペットの見守り、留守番中の子供とのコミュニケーション、赤ちゃんの様子見、高齢の両親とのコミュニケーション
、会社やマンションのセキュリティ対策として使えるとのこと。
〔仕様〕
入力電圧:AC100 – 240V / 50 – 60Hz
消費電力:17W
画像の解像度:1080P
画像伝送:WiFi
音声通話:双方向通信
ステージデバイス:16GBメモリ内蔵
ランプビーム角:ランベルト&アンチグレアスポットライト24°
色温度:5000K
LEDの光束:1200lm
CRI:> 80
防水:IPX4
モバイルOS要件:Android 4.1以上iOS9以上
生産国:台湾
クラウドファンディングサイト:https://www.makuake.com/project/brighteye/
応用地質、「自治体向け災害対策情報提供システム」自治体への提供を開始
応用地質(株)は、IoTおよびビッグデータ分析の最新技術を活用した「自治体向け災害対策情報提供システム(以下、本システム)」の、自治体へのサービス提供を開始したと発表した。
このシステムは、応用地質が提供する各種防災モニタリング情報のほか、KDDIの人口動態データ(注1)やトヨタ自動車のコネクティッドカーから得られるプローブデータ、気象庁などが提供する気象情報などを地図上に統合し、自治体が災害時に必要とする地域の情報を提供するもの。
水路やため池、土砂災害の危険箇所など、地域の危険箇所を防災IoTセンサでモニタリングするとともに、住民の避難状況などの人の動き、車両の通行実績などの車の動きを準リアルタイムに捕捉することで、大雨、ゲリラ豪雨、台風時の発災前から復旧までの地域の状況を迅速に把握する事が可能になるとのこと。
このシステムの提供により、激甚化する自然災害の到来に際し、タイムリーな避難判断や通行規制、救援物資の適切な配分など、高度に効率化された自治体の防災体制の構築を支援するという。
■提供料金 (注2)
初期導入費:100万円(税抜)
年間利用料:240万円~(税抜)
なお、このシステムは「KDDI、応用地質、トヨタ、IoT で防災・減災を実現するデータ協業に合意」(2018 年 4 月 24日報道発表)により、KDDIがシステムを開発し、今後、応用地質が全国の自治体へ販売を行う。
(注1)KDDIの人口動態データとは、KDDIがauスマートフォンユーザー同意の下で取得し、誰の情報であるかわからない形式に加工した位置情報データ及び属性情報(性別・年齢層)のこと。
(注2)年間利用料金は、自治体の人口規模により異なる。なお、提供料金には本システムの利用料および自治体内に設置する防災IoTセンサの費用が含まれる。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000047274.html
単一NVダイヤモンド量子センサで世界最高感度を実現
京都大学化学研究所と産業技術総合研究所の研究グループは人工的に合成したリンドープn型ダイヤモンドを用い、NV中心(窒素―空孔中心)の室温での世界最長電子スピンコヒーレンス時間(T2)と、単一NV中心を用いた量子センサでの世界最高磁場感度実現に成功したと発表した。
このT2は、他の固体系電子スピンの中でも室温では一番長いものだとのこと。
NV中心は室温でも長いT2を有し、超高感度量子センサや量子情報素子の実現および量子センサの生命科学分野への応用の観点から注目されている。T2は重要な特性で、量子センサではT2が長いほど感度が良くなる。今回、研究グループは産総研で作製された高品質なリンドープn型ダイヤモンド中の単一NV中心のT2が、あるリン濃度で非常に長いことを見出した。リンは電子スピンを有するため磁気ノイズ源となり、リンをドープするとT2は短くなると考えるのが常識だが、今回の結果はそれに反する結果であったという。
系統的にリン濃度のみを変えた試料での結果からも、一定量以上のリンがドープされた試料において世界最長のT2が測定され、リンドープの効果が確認された。n型ダイヤによるT2長時間化は、合成中に生成した空孔欠陥が電荷を帯び、磁気ノイズ源となる複合欠陥の生成が抑制されたためと考えられるとのこと。精密なノイズ測定より、今回の試料でのノイズ源は、リン以外の不純物欠陥の電子スピンであることが示唆され、それらの抑制により、さらなるT2の長時間化も期待される。n型ダイヤにより最長のT2を実現した点は意義深く、さらなる高感度化に加え、n型半導体特性を活かした量子デバイスへの幅広い応用へ道を拓くものと期待されるという。
なお、この成果は2019年8月28日に英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されると伝えている。
ニュースリリース(産総研):
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2019/pr20190828/pr20190828.html
HACCP対応温度管理ソリューションサービス「サーマルコネクト」の提供開始
センスウェイ(株)は、2018年6月に公布されたHACCP(ハサップ)に沿った食品衛生管理へ対応する食品事業者のため、IoTによるHACCP対応温度管理ソリューションサービス「サーマルコネクト(THERMAL CONNECT)」の提供を2019年9月2日より開始すると発表した。
サービス開始記念として、初月基本料無料、先着5社にセンサ1台無償提供のキャンペーンを実施するとのこと。
HACCPは国際標準の食品衛生管理規格で、改正食品衛生法により2020年6月から原則として全ての食品製造業、食品販売事業者等がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことが義務付けられた。今後、食品製造業、食品販売事業者は、冷蔵庫など食品保管場所の温度データの継続的な収集・管理が必要になり、管理業務の増加が懸念されている。
厚生労働省の調査(※1)によると、食品製造業、食品販売業事業者等へのHACCP導入状況は、「関心があるが、具体的に検討していない」施設の割合が、多くの業種で約20%~40%となっており、具体的な取り組みが遅れている状況。このうち、年間販売額別では5,000万円~3億円未満の企業が約40%となっており、導入が進む余地があると考えられる。
日本政策金融公庫の食品事業者へのHACCP導入に関する調査(※2)では、課題として「HACCP導入後に掛かるモニタリングや記録管理コスト」が44.7%と管理コストが課題となっている。
(※1) 厚生労働省 「HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果」
(※2) 日本政策金融公庫「食品製造業者の8割超がHACCP導入に意欲」
今回センスウェイは、IoTによる導入、管理コストを抑えた初期費用0円、月額料金制の温度管理ソリューションサービス「サーマルコネクト(THERMAL CONNECT)」をリリースした。初期導入コスト不要で、かんたんにセンサーの設置が行える。低消費電力の通信規格LoRaWAN(※3)対応温度センサーで冷蔵庫内の温度を測定し、クラウド上でデータを一元管理することで、リアルタイムにデータの確認ができるという。
(※3) LoRaWAN™:全世界で500以上の通信キャリア・企業が加盟するLoRaAlliance™により、規格・仕様が策定されているグローバルでオープンなIoT向けの無線規格。IoTのための無線通信技術(LPWA)の1つで、従来の通信技術に比べ少ない消費電力で長距離通信できるのが特徴。
本サービスの特徴は以下の通り。
・価格:初期費用不要。サービス基本料9,800円/月(アプリケーション、通信費、室内用基地局含む)、センサ1台980円/月から利用可能
・導入:温度センサーはマグネットでかんたんに設置できる。
・運用:低消費電力のLoRaWAN対応温度センサでデータ取得の自動化と、長寿命バッテリーで約5年稼働し管理コストを削減する。室内用基地局はセンサー接続台数無制限でセンサ増減に対応。
・管理:専用アプリケーションで遠隔から温度データを一元管理、マルチデバイスで閲覧できる。異常値検出時にメールでアラート送信。収集したデータはCSV出力でき報告書作成が行える。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000037700.html
NEXTDRIVE、スマートロックメーカーのARTにクラウドソリューションを提供
台湾発のIoT・エネルギー企業NextDriveは出入管理システムメーカーの(株)アートと連携し、「Cube for ALLIGATE」スマートロッククラウドソリューションを発表した。
ARTのALLIGATEシリーズが展開する各種スマートロックは、NextDriveのHEMS・IoTゲートウェイCubeを通し、出入管理データを自動的にクラウドにアップロードし、遠隔から権限設定と施錠・解錠もできるようになり、出入管理システムのメンテナンスと管理コストを大幅に削減するという。
此度、NextDriveのCubeはALLIGATEのデータをクラウドと連携する専用のゲートウェイとして採用されることになった。これまではクラウドと連携するためには、専用のスマートフォンもしくはタブレットが必要だったが、Cubeを導入することによりクラウドとのデータ連携が自動化され、ファームウェアの更新も自動化され高額なタブレットの費用・日々の人的メンテナンス費用の軽減ができることになるとのこと。
HEMS・IoTゲートウェイCubeはWi-Fi、Bluetooth 4.2、Wi-SUNなどの無線通信モジュールを内蔵し、スマートメーターと接続することでスマートエネルギー管理ができる。また、環境センサ、動作感知センサやカメラなどのデバイスと連携して多様なユースケースへの対応が可能となる。さらに、Cube は機能の拡充がしやすく、クラウドAPI でパートナー企業と連携できるほか、アプリSDK の提供やシステム・インテグレーションを含めたカスタマイズ開発のサポートも可能だとしている。
ニュースリリース(NextDrive):https://jp.nextdrive.io/news/2019/8/6/nextdriveart
センサを利用したスマート農業の現状と今後の動向(3)
大学院生物資源学研究科
教授 亀岡 孝治
4. 農作物の健康診断技術 4)
4.1 農作物の光センシング
近年,可視(RGB),遠赤色(FR),近赤外(NIR)の5バンドを用いるマルチスペクトルカメラやハイパースペクトルカメラを搭載したUAV(ドローン)がリモートセンシングで広く用いられ,主に植生の分布状況や活性度を示すNDVI(植生指標,Normalized Difference Vegetation Index)の取得に用いられている。圃場レベルでは,農産物の外観品質計測に色彩計測と紫外・可視・近赤外分光計測が用いられる。
また,FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)とATR法(全反射測定法),いわゆるFTIR/ATR法は,農産物や農作物中の有機物の非破壊定量に広く用いられ,この応用として,簡易に植物体内の様態の異なる窒素含量が計測出来る葉柄切断面のスペクトル測定法5)が提案されている。
4.2 マルチ分光センシングとその特徴
圃場IoTによる生育環境計測の進展と,高速な遺伝子解析が可能になる中で,農作物の情報,特に表現型の取得方法の確立が急務となっている。可視・赤外画像・分光計測に蛍光X線分光と蛍光分光を加えたマルチ分光センシングは圃場での農作物の表現型計測に最適である(図1)。
携帯型の蛍光X線分析計により,圃場で農作物体内のCa,K,P,Sなどの多量元素といくつかの微量元素の非破壊同時計測が可能となった。また,クロロフィル,フラボノール,アントシアニン蛍光などの代謝二次産物の同時測定が,携帯型の色素蛍光測定装置を用いて簡易に出来るようになり,圃場レベルでの農作物の健康診断が現実味を帯びてきている6)。従来困難であった自然環境下での農作物の正確な色彩情報取得も,MEMS可視分光器を用いた色補正技術により可能となってきた,7)。農作物の計測に多用される分光分析では,対象物のスペクトルを取得し,そのスペクト情報から目的化学種を分離しスペクトル的に定量するが,この解析にはケモメトリックス・ケモインフォマティックス分野の理解が不可欠である。
土中から植物中への水・ミネラル・共生微生物の移動状況,植物の状態計測は依然として極めて難しく,今後さらに様々な戦略的作物センサの開発が必要である。また,農作物栽培モデルと気象ジェネレータを用いて,不確実性を予測に反映させる栽培のリスク管理も不可欠である。センシングデータ,確率モデルと機械学習,ビッグデータと深層学習,などに基づく栽培管理や経営支援サービスのためにも,圃場IoTと光センシングを用いる新たな栽培技術体系の構築が急務である。
4.2 デジタル農業と食・農エコシステム
100ha規模の農業(主に北海道)では,農業IoTで取得される気象情報と自走農業機械から得られる土壌情報などの生育環境データと,UAVや光センシングから得られる農作物情報が蓄積され,ビッグデータ化された後,画像データなどが人工知能(AI)で処理され,作物モデルなどを援用して各種二次データが生成され,自走農業機械の作業を支援する情報としてクラウド上の圃場マップに「見える化」される「デジタル農業」(図2)が実現されつつある。
また,データ連係や提携機能を持つ「データ連係基盤(WAGRI:https://wagri.net/)」が構築され,WAGRIに1km×1km(基準地域メッシュ)のメッシュ農業気象データシステム(https://amu.rd.naro.go.jp/)が搭載されると共に,データ充実とデータ連係のための各種APIが開発されつつある。
「食・農エコシステム」8-9)は今準備が整いつつあるデータ駆動型の「デジタル農業」を起点とする,地域を豊かにする持続可能性を有する産業システムである。この「食・農エコシステム」では,食・農分野の関係者,複数の企業,モノが有機的に結びつき,循環しながら広く共存共栄していく「協力しつつ競争する仕組み」とともに,「儲かる農業」を起点に品質で「おいしい食」をつなぎ消費者に届ける「フードシステム」の実現が求められている。
5.おわりに
農作物の植物生理,栄養と病理に関わる「光合成産物の動き」や「共生微生物+根系」など,「スマートな農業」に資する農作物の栽培管理技術の今後の飛躍的な展開に期待したい。「農業は人が主体で行うもの」という事実が重要で有り,人の関与の重要性は今後も不変である。圃場IoTや農作物の健康診断技術の実現により「人の関わり方の変化」を意識した「標準化・共通化活動」と「技術と標準を意識した体系化」など,時代に即した人材育成と共に技術の普及体制の確立が求められる。なお,全般的な「スマート農業」の詳細に関しては,「農業情報学会編(2019):新スマート農業」1)を参照されたい。
参考文献
1)農業情報学会編(2019):新スマート農業 -進化する農業情報利用-,農林統計出版.
4)Kameoka, T. et al. (2013):Smart Sensors, Measurement and Instrumentation, Vol.3, Springer, pp.217-246.
5)Kameoka, T. et al. (2015): IEICE Trans. Commun., E98-B(9), pp.1741-1748.
6)Kameoka, S. et al. (2017): Sensors 17.5.966: 1-21.
7)Hashimoto, A. et al. (2017): Food Packaging and Shelf Life 14(A): pp.26-33.
【著者略歴】
亀岡 孝治(かめおか たかはる)
1978年,東京大学農学部農業工学科卒業
1980年,同大学院農学系研究科修士課程(農業工学専門課程)修了
1984年,同大学院農学系研究科博士課程修了(農学博士)
1984年,カナダ国サスカチュワン大学工学部農業工学科博士研究員を経て,
1985年,三重大学農学部助手
1988年,三重大学生物資源学部助教授,1998年,教授
研究テーマは、農業ITと農作物・農産物の品質同定のための色彩画像処理とFTIR/ATR法による分光解析
2001年 3月 スウェーデン王国ルンド大学 ケミカルセンター客員教授(10ヶ月)
2004年から2007年まで,理事・副学長(情報・国際交流担当)図書館長、国際交流センター長
2007年から現在,三重大学大学院生物資源学研究科教授
現在の研究テーマは、圃場における農業IoT、農産物・食品・調理におけるマルチ分光センシングの応用。デジタル農業を起点とする食・農エコシステムなど
現在、農業情報学会副会長、一般社団法人ALFAE代表理事
2005年に「農業情報学会顕彰学術賞」、2015年に「農業情報学会功績賞」
2018年に「農作物・農産物のマルチ分光計測」の功績に対して日本農業工学会賞
MIT、バッテリーなしでデータを送信できる水中センサを開発
MITは、バッテリー不要でほとんど電力を必要としない水中センサーと通信システムを作ったとテッククランチが伝えた。
これは“水中IoT”の実現に寄与するものであり、海水温度や水中生物のリアルタイムモニタリングが、電池交換の必要なく可能になるとMITは言っているとのこと。
MITの研究チームが開発した同システムは、水中に向けて音波を送信する発振器を使用し、それをセンサーシステムに内蔵された受信機が受けとると微小なエネルギーが発生する。センサーはそのエネルギーを使って返信する、あるいは返信しない。それが1または0の信号になり、バイナリー通信ができる。システムが動作するために必要なエネルギーは、発振器から送られる音波に含まれる力だけという。
このシステムは、ピエゾ電気共振器という100年以上前からマイクロフォンなどに使われている装置を使って、音波を受けるとそれに反応して変形するか、波形を維持して反射するかを、対応するセンサの状態に応じて決定する。そうやって返信されたバイナリー信号を収集し解析する。
研究チームの次の目標は、これが長距離でも動作し、他のセンサと協調して同時に通信可能であると示すことだ。究極的には、音声や低解像度の画像も送信できる可能性があり、そうなれば遠隔監視システムにとって画期的な進歩になるとしている。
ニュースサイト(TechCrunch Japan):
https://jp.techcrunch.com/2019/08/21/2019-08-20-mit-develops-a-sensor-that-can-work-underwater-without-a-battery-and-send-back-data/
