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歩行者自律航法(PDR)の実用化・事業化へ。 GPS・WiFi・ビーコン等外部信号非依存型測位手法。

サイトセンシング(株)は、これまでの歩行者自律航法(PDR)技術を飛躍的に高めると同時に、(株)NSDの連結子会社である株(株)NSD先端技術研究所と事業提携し、PDRplusシステムの大規模化を実現したと発表した。 工場・倉庫・地下施設等の作業員の位置情報を見える化し、最大で1000人分の動きをリアルタイムで計測可能なトータルソリューションサービス「Tracking Navi(トラッキング ナビ)」として、(株)NSD先端技術研究所から市場デビューしたとのこと。

これまでPDRは、GPS環境外での測位を可能にする技術として取り沙汰されて来たものの、機器装着を前提としているため、機器のサイズが大きい、重い、連続稼働時間が短い、といった課題のため本格的な普及には至らなかった。「Tracking Navi」ではこの点に着目、装着機器としてAndroid系スマートフォンを使い、誰でも何処でも安価に即実施可能な環境を創出した。2019年9月~10月に掛けて運輸倉庫及び機器の製造工場にて、作業員の方々を計測対象とした大規模なPoCを実施し高い評価を得て、11月以降「Tracking Navi」は本格導入の運びとなっているという。

プレスリリースサイト(NSD先端技術研究所):
https://www.nsd.co.jp/news_pdf/news190926_1.pdf

LPWA通信規格「ELTRES™」対応のIoTクラウドサービスの提供開始

IoTBASE(株)は、ソニーネットワークコミュニケーションズ(株)、NECネッツエスアイ(株)、オリックス(株)が提供するIoTネットワークサービス「ELTRES™ IoTネットワークサービス」のパートナープログラムにアプリケーションパートナーとして参画したと発表した。


◇ ELTRES™ とは
「ELTRES™(エルトレス)」はソニーが独自に開発したLPWAの通信規格。
「長距離安定通信」「高速移動体通信」「低消費電力」の特長を活かし、様々なセンサで取得した情報を広範囲に効率よく収集することができ、様々なユースケースに利用することが出来る。「ELTRES™ IoTネットワークサービス」は、この「ELTRES™」を活用したIoTネットワークサービスとなっており、9月30日より提供が開始されたとのこと。

◇IoTBASEについて
IoTBASEは、企業のデジタル変革を支援するためにIoTプラットフォームを中心としたIoTサービスを提供している。「ELTRES™ IoTネットワークサービス」の提供開始に伴い、当社IoTサービスも「ELTRES™」との接続に対応し、「ELTRES™」で収集したセンサデータのモニタリングが可能になったとしている。

プレスリリースサイト(IoTBASE):https://iotbase.co.jp/news/press/2390/

光ファイバーセンサによる防災・減災へ「異常温度リアルタイム監視ソリューション」を共同開発

OKIは、自社が提唱する「インフラモニタリングソリューション(注1)」につながるセンシング・デバイスのひとつである光ファイバーセンサを用いて、災害につながる異常な温度上昇をリアルタイムに監視する「異常温度リアルタイム監視ソリューション」を日本ドライケミカル(株)と共同開発し、10月8日より両社で販売を開始すると発表した。
両社は2014年8月の業務提携以降、双方の強みを活かした新たな防災システムの開発に取り組んできており、本ソリューションはその成果となるという。

近年の防災意識の高まりにより、火災などの予兆をより早く検知し、速やかな対処、避難や消火活動を可能とするシステムが求められている。「異常温度リアルタイム監視ソリューション」は、このようなニーズに対応し、建物や構造物、設備機器類に敷設したOKIの「光ファイバーセンサー WX1033 A/B(以下 WX1033 A/B)」によりリアルタイムに検知された異常な温度上昇などのデータを、日本ドライケミカルが開発した監視システムと連動させることで、火災などの早期発見・対処を実現する。
※左上画像:「異常温度リアルタイム監視ソリューション」のイメージ(「WX1033A」使用例)

「異常温度リアルタイム監視ソリューション」に使われているWX1033 A/Bは、OKIが通信市場で長年取り組んできた高速光通信技術を活かした、リアルタイムセンシングが可能な光ファイバーセンサ。OKI独自の技術「SDH-BOTDR方式(注2)」を採用し、従来のBOTDR方式では数十分かかっていた温度計測が1秒で実施できるほか、1秒周期で温度上昇を検出し、その発生場所を1m単位で特定することができる。
一方、日本ドライケミカルは、これまで総合防災企業として蓄積してきた火災発生のメカニズムや検知方法、最適な報知方法などのノウハウを統合して、OKIのWX1033 A/Bで検知した異常温度をリアルタイムで監視するアプリケーションを開発し、これを監視システムに組み込んだ。このアプリケーションは、光ファイバーセンサが異常温度を検知した際に、その位置や温度など発報に至った情報を、建物や設備系統図などの監視図面上にわかりやすく表示するもの。

両社の強みを活かした「異常温度リアルタイム監視ソリューション」は、素早く災害の予兆をとらえることができるため、法令で義務付けられた防災設備を補い、防災や減災に寄与するソリューションとして幅広く活用することが可能だとしている。

プレスリリース(OKI):https://www.oki.com/jp/press/2019/10/z19042.html

用語解説
注1:インフラモニタリングソリューション
 OKIが提唱するインフラ構造物・設備の維持管理業務向けにAIなどのIoT活用技術による、運用の異なる現場に合わせたコーディネイトを段階的かつ効率的に実現するソリューションコンセプト。「インフラの見える化」「インフラの状態診断」「インフラの劣化予測」「インフラ工事の工程・安全監視」の4つのソリューションで構成される。
注2:SDH-BOTDR
 BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry:ブリルアン光時間領域反射測定法)は、光ファイバーに光パルスを入射したときに発生する後方散乱光の1つである「ブリルアン散乱光」の周波数が温度や歪みに比例して変化するという特性を利用した、従来の光ファイバーセンシング手法。
 SDH-BOTDR(Self Delayed Heterodyne -BOTDR:自己遅延ヘテロダインBOTDR)は、OKI独自の新技術(特許第6308160号「光ファイバー歪み測定装置および光ファイバー歪み測定方法」)により、「ブリルアン散乱光」の周波数の変化を電気信号の位相シフトに変換して捉えることで大幅に測定時間を短縮した、新たな光ファイバーセンシング手法。

触覚センサの研究開発動向とこれからの展開(2)

電気通信大学  名誉教授
下条 誠

4. 最近の触覚センサの研究開発動向

4. 1 新製法&新材料の利用

(1)E-skin: 近年、皮膚のような特徴の実現を目的としたE-skin(Electronic skin)の研究開発が盛んである2)3)。E-skinは印刷技術によりフレキシブルなフィルム上に有機トランジスタなどを用いて検出素子と電子回路とを作成したものであり、低コストで、大量生産が可能な特徴がある。
有機半導体は、インクジェット法などの印刷技術で、高分子フィルムの上に容易に製造できる。また大面積で低コストな電子部品が作製可能であり、軽量性と柔軟性を兼ね備えた、伸縮可能な触覚センサなどが開発されている。このため曲面などへの実装が可能であり義手、ロボットなどへの利用、その特徴を活かしたwearable sensor など様々なIoT 機器への応用が模索されている。
図3にはその例を示す5)。薄さ(2 µm)の有機トランジスタ集積回路を、1.2µm厚のポリエチレンテレフタレート基板上に作製したフレキシブルな回路で、4.8×4.8cm2のアクティブエリアに144 (12 ×12) セルを搭載している。図のように肌のような自由曲面に貼り付けることが可能で、センサは電気的・機械的特性の劣化がほぼ無く233%まで伸長可能とのことである。

図3 有機半導体を用いた薄く軽量で伸縮可能な触覚センサ(Someya et.al)5)

このほか、検出素材として、ナノチューブ、グラフェン、硫化モリブデンが利用されるなど、新たな変換材料の試みも行われている。また、力、近接距離、温度、湿度など各種検出器をフィルム上に製作することで多角的センシングを行う試みも行われている6)
ただし触覚は接触により情報収集を行う。このため伸び、縮み、擦り、打撃などに対する物理的耐久性や、水,油、湿気などの浸透に対する化学的耐久性が重要となる。E-skin に関して、現実の環境での実績に関して筆者は残念ながら知らないが、最近開発が進んだこともあり長期間に渡る安定性については未知の部分があると思われる。

(2)E-textile: E-textileとは、導電性高分子繊維、炭素、金属などで表面修飾した繊維を撚り糸状や布状に織り上げて、触覚センサとしたものである4)
静電容量変化から力を検出している例を図4に示す7)。図のようにケブラー繊維を導電繊維でコーティングし、その上を誘電体であるPDMDで覆った導電繊維を交差させて用いる。
交差部は導体間に誘電体が挟まれたキャパシタを形成し、力によって誘電体部分が変形するため容量が変化し、力を計測する。

図4 PDMDで覆った導電繊維を交差させ、導体間の静電容量変化により力を計測する( J. Lee et.al.) 7)

このように検出原理は、編上げた繊維間の静電容量や接触抵抗の接触力による変化から荷重を検出する。織物としてセンサを構成する方式は、製作が比較的容易で安価に作れ、大面積化が容易、柔軟性もあるなどの特徴を有する。このため現在wearable e-textile として、ヘルスケア、スポーツ、ゲームなどの分野での利用が行われている。また、ロボットでは空間/強度分解能が低くても良い部分などへの利用は適当であろう。

4. 2 モジュール化

近年モジュール構造としたセンサでロボット全体を覆い、各モジュールを階層的バス方式で接続する触覚センサがある。例えば、実際にロボットに利用されたセンサとしては、iCub skin(図5)、HEX-O-skin(図6)などがある。
iCub はフレキシブル基板上に電極を作り、誘電体を挟んだ静電容量式である8)。図のように電極を三角形状とし物体をこのパッチで覆う。この三角形中には12 個の検出点があり、I2C 経由で検出データを転送している。
静電容量式は薄型で構造がシンプル、誘電体により検出感度などの特性を変更可能、静電容量検出専用の計測ICがあるため利用しやすいなどの利点がある。しかし、静電容量式では、対象物の材質や体積によってもセンサ出力が変化し、特に検出物体と地面の間での接地状態にも依存してセンサ出力は変化するため、物体に依存せず距離・姿勢を計測することは難しい。また電磁ノイズ、温度の影響を受けやすいなどの欠点がある。

図5 静電容量型触覚 iCub skin (A. Schmitz et.al) 8)

HEX-O-skin は一辺が14mmの六角形構造の中に荷重、近接、温度、加速度センサおよびMPUを含む9)10)。各六角形はポートで隣接モジュールに接続し計測データを伝送する。実装はこの六角形構造でロボット腕等を覆うことを想定している。ただし、PCB 基板を用いているため柔軟性は低いようだ。

図6 複合型センサ HEX-O-SKIN (Cheng et.al.)9)10)

次週に続く-

参考文献

2) T. Yang, D. Xie ,Z. Li, H. Zhu: Recent advances in wearable tactile sensors: Materials, sensing mechanisms, and device performance, Materials Science and Engineering: R: Reports, vol.115, pp.1-37, 2017.

3) M. Park, B. Bok, J.H. Ahn and M.S. Kim: Recent Advances in Tactile Sensing Technology, Micromachines, 9(7), 321,2018.

4) C. Gonçalves, A.F. da Silva,J. Gomes and R. Simoes: Wearable E-Textile Technologies: A Review on Sensors, Actuators and Control Elements, Inventions, 3(1), 14 ,2018.

5) M. Kaltenbrunner, T. Sekitani, J. Reeder, T. Yokota, K. Kuribara, T. Tokuhara, M. Drack, R. Schwödiauer, I. Graz, S. B. Gogonea, S. Bauer & T. Someya, An ultra-lightweight design for imperceptible plastic electronics, Nature 499, 458–463, 2013 https://www.youtube.com/watch?v=4oqf–GMNrA

6) Q. Hua, J. Sun, H. Liu, R. Bao, R.Yu, J. Zhai,C. Pan & Z.L.Wang: Skin-inspired highly stretchable and conformable matrix networks for multifunctional sensing, Nature communications, 9:244, 2018.

7) J. Lee et al., Conductive Fiber-Based Ultrasensitive Textile Pressure Sensor for Wearable Electronics, Adv. Mater., 27, pp.2433–2439, 2015

8) A. Schmitz , P. Maiolino, M. Maggiali, L. Natale, G. Cannata and G. Metta: Methods and Technologies for the Implementation of Large-Scale Robot Tactile Sensors, IEEE Trans. Robotic, 27(3), pp.389-400, 2011 https://www.youtube.com/watch?v=yQGXYGS0Ojo

9) P. Mittendorfer, G. Cheng: Humanoid Multimodal Tactile Sensing Modules, IEEE Trans. Robotic, 27(3), pp.401-410, 2011.

10) Florian Bergner ; Emmanuel Dean-Leon ; Gordon Cheng, Event-based signaling for large-scale artificial robotic skin – realization and performance evaluation, IEEE/RSJ Int. Conf. on Intelligent Robots and Systems, 2016 https://www.youtube.com/watch?v=H66vDX3wAZQ

【著者略歴】
下条 誠(しもじょう まこと)
1976年 東京工業大学 総合理工学研究科 精密機械システム専攻修了
1976年 通商産業省工業技術院 製品科学研究所
1985年 – 1986年 スタンフォード大学 客員研究員
1993年 通商産業省工業技術院 生命工学工業技術研究所
1997年 茨城大学工学部情報工学科 教授
2001年 電気通信大学 知能機械工学専攻 教授
2016年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 特任研究員
現在に至る



専門分野
ロボティクス・メカトロニクス研究、特にロボットハンドと触覚センシングの研究を行っている。具体的には、視覚と触覚情報を補完する近接覚センシング、薄く柔軟なすべり覚センサの研究、これらセンサを取付けたロボットハンドの研究開発など。

超小形MEMS触覚センサによるヒトの触覚への挑戦(2)

立命館大学
情報理工学部 教授
野間 春生

3. MEMS触覚センサ

3.1. 基本原理
 筆者らはこれまでにMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用し、超小型の触覚センサを開発してきた。図3にその動作原理を、図4に試作したサンプルを示す。
この触覚センサはSi基板の上に極小マイクロカンチレバーを複数個作製し、さらに全体を弾性体(エラストマ)で覆う構造である。この弾性体の上部に外力を与えると、弾性体が変形し、同時にカンチレバーの傾斜角度も変わる。電気的にこの傾斜角を計測し、適切な演算を施すことで、弾性体上部に作用する外力を3軸(圧力+剪断力2軸)として計測できる。現在の試作センサは直径1mm、高さ1mmで実現している。先のヒトの皮膚触覚構造に述べたように、この触覚センサが外部からの機械的刺激を弾性体内部の超小型の検知素子で検出する構造は人間の触覚受容器に類似している。

図3 MEMS触覚センサの基本構造
図4 試作MEMSチップ

3.2. 製造プロセス
 図5にMEMS触覚センサの製造プロセスを示す。作製は主にSiマイクロマシンニング技術を用いる。まず SOI ウェハ上に絶縁層として Si3N4、検知層のひずみゲージ薄膜としてNiCr、カンチレバーを傾斜させるための応力層として Cr、配線として Au をそれぞれ積層(スパッタリング)・パターニングする。その後、基板からカンチレバーをリリースするために、バッファードフッ酸(BHF)を用いて SOI ウェハの埋め込み酸化層を犠牲層としてエッチングする。カンチレバー構造が基板から切り離されると、基板の拘束から解放されてCrが縮むことにより、カンチレバーの断面内に応力分布が発生し、自動的にカンチレバーが基板から持ち上がった構造となる。この構造に対して、PDMSをスピンコートで塗布してカンチレバー構造全体をカバーし、最終的にPDMSであらかじめ作製した突起を接着してセンサとして完成する。

図5 MEMS触覚センサの製造プロセス

4. MEMS触覚センサの機能

4.1. 触覚計測
 MEMS触覚センサのプロトタイプにはカンチレバー構造を三つ配置することで、センサの突起部先端にかかる外力を計測できる。図6に示ように各センサの出力をei (i:1〜3)として、あらかじめ各センサ毎に作製する構成マトリックスMと掛け合わせることで、センサに対して垂直な圧力とセンサに沿う方向の2軸の剪断力としてFk(k:x,y,z)を得る。それぞれの軸方向に作用させた外力を正確に分離できることが分かる。またPDMSが外力を変形に変換するトランスデューサであるが、この硬度を変化させることでMEMS部分の設計を変更することなくダイナミックレンジを変更できる。

図6 複合的な3軸の圧力の計測

一方で、この試作センサの感度は極めて高い。図7に示すように日本の紙幣には偽造防止のためにインクで印刷された高さ30μm,幅500μmのスリット状の構造が設けられている。その表面をヒトがなぞると紙幣の真贋を見破ることができるが、同様にMEMS触覚センサでスリット部分をスキャンすると、図7に示すようにこれを検出できる。

図7 紙幣の印刷による凹凸の検知

4.2. ヒトを越える光学近接計測機能
 さらに、このセンサを産業用ロボットに応用する上で有効な機能として、触覚計測に加えて光学近接計測機能も有している。生産ラインにおいてロボットが物体を掴むためには、あらかじめカメラなどで環境を計測し、対象物体近傍にロボットハンドを移動させたのち、指を物体表面に接触させる。その際に接触直前の近接情報は安定した把持のために極めて重要である。本センサでは制御が容易な光を利用した方法を採用し、距離検出の手法を実現した。

まず光検出の原理および手法について示す。図8はMEMS触覚センサのカンチレバーの検知部の二つの端子を通り基板に対して垂直な面で切った断面図である。Si でバイス層には、金属半導体間の仕事関数差により空乏層が存在すると考えられる。触覚検知のように端子 A,B 間の直流抵抗を測定する場合には、Si3N4 薄膜は絶縁膜として振る舞うため,NiCr ひずみゲージ抵抗の変化のみを検出する。
一方、端子間に交流信号を印加した場合、Si3N4 薄膜はキャパタとして振る舞うため、光照射によって半導体 Si 層に生成したキャリアにより、Si 層の抵抗 RSi および空乏層容量 Cd が変化する。つまり、センサへの入射光量を端子間の交流インピーダンス変化として検出することができるため、端子間で計測する信号の交流/直流を切り替えるという単純な方法で近接覚と触覚の2つの情報が検出可能となる。そこで図 9 に示すように触覚センサの傍に投光用のチップ LED を配置し、物体表面で反射してセンサに入射する光の強度が物体センサ間の距離により変化することを利用し、交流計測モードで接触までの距離を検出できる。

図8 MEMS触覚センサへの入射光量の計測結果
図9 MEMS触覚センサ上の近接計測結果と接触時荷重計測結果

次週に続く-

謝辞
本稿のMEMSに関する図面は共同研究者である新潟大学寒川雅之准教授から提供を受けた。

【著者略歴】
野間 春生(のま はるお)
立命館大学 情報理工学部 情報理工学科 実世界情報コース
メディアエクスペリエンスデザイン研究室

1994年3月 筑波大学大学院 博士課程 工学研究科構造工学専攻修了 博士(工学)取得
1994年4月 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 入社
2012年12月 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 退社
2013年1―3月 Worcester Polytechnic Institute 客員研究員
2013年4月 立命館大学 情報理工学部 教授

学会役職
日本バーチャルリアリティ学会 理事(2019年−)

専門分野・研究テーマ
バーチャルリアリティ、触覚インタフェース、ウェアラブル&ユビキタスインタフェース

安全な協働ロボットのための壊れにくい力覚センサの開発(2)

埼玉大学 工学部
准教授 辻 俊明

2.力覚検知のメカニズム

力を検知するメカニズムは①ひずみゲージ型や静電容量型などの力覚センサを用いる方法、と②外力推定オブザーバのようにロボットや機械の入出力の関係から推定する方法、に大別される。また、前者と後者を組み合わせた手法も提案されている3)。前者は起歪体と呼ばれる構造体の微小変位から力を導出するのに対して後者はモータのトルクと角速度から動力学に基づき力を計算する。ほとんどの場合ロボットにはモータと角度センサが標準搭載されていることから、ロボットを想定した場合にはセンサレスで力を計測できるのが後者のメリットである。ただし、慣性や摩擦などの影響を受けるため、そのパラメータを正確に知る必要がある。以下では適用範囲の広い前者の力覚センサを中心にそのメカニズムを述べる。

空間においては並進方向に3軸の力、回転方向に3軸の回転力(モーメントやトルクとも呼ばれる)が存在し、一つの剛体に生じる合力は合計6軸まである。そのうちの1軸のみを検知するものは荷重センサやロードセルと呼ばれ、力覚センサの分類に数えないことが多い。上記のように剛体には6軸の力が作用することから、ツールの合力を知るためには6軸の力検知が標準的に必要であり、現在では6軸力覚センサが協働ロボットや組み立てロボットに数多く採用されている。多軸の力を検知するため、起歪体の様々な場所に微小変位を検知する複数の素子が取り付けられるが、ほとんどの場合その素子の数は軸の数に対して冗長な構成となっている。例えば歪ゲージ型の6軸力覚センサでは20~30枚の歪ゲージが貼り付けられることが多い。

次週に続く―

参考文献

*3) Yu Izumikawa, Kazuhiro Yubai, and Junji Hirai. “Fault-tolerant control system of flexible arm for sensor fault by using reaction force observer.” IEEE/ASME Transactions on mechatronics 10.4, pp. 391-396, 2005.

【著者略歴】
辻 俊明(つじ としあき)

1978年7月9日生。2006年3月慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学
専攻後期博士課程修了。
同年4月 東京理科大学工学部第一部機械工学科嘱託助手。
2007年4月埼玉大学工学部電気電子システム工学科助教。
2009 年10月から2015年3月までJSTさきがけ研究員を兼任。
2012 年3月より埼玉大学工学部電気電子システム工学科准 教授、現在に至る。

2018年度,2019年度日本ロボット学会理事。再生医療とリハビリテーション学会
理事。博士 (工学)。

2006年度,2007年度ファナックFAロボット財団論文賞等を受賞。主として力覚センシングとその信号 処理に関する研究に従事しており、リハビリ支援ロボット,モーションコントロール技術に応用している

東北大学が共同研究により開発した技術で事業化を推進

東北大学の寒川誠二教授は、リソテックジャパン(株)とSPPテクノロジーズ(株)、長瀬産業(株)との共同研究により、世界初となる新技術・超微細加工ナノ構造による撥水性制御を開発し、長瀬産業による事業化の推進が決定したと発表した。同社独自技術により量産供給が可能である材料「フェリチン」の供給と、超微細加工ナノ構造による撥水性制御との組み合わせにより、あらゆる材料の撥水性を自在に制御することが可能となった。これにより、従来のコーティング膜に比べて耐久性を有する恒久的撥水性が実現されるとしている。

新技術・超微細加工ナノ構造による撥水性制御は、東北大学の寒川誠二教授およびリソテックジャパン、SPPテクノロジーズ、長瀬産業らのグループの研究により、ガラス、シリコンを代表にあらゆる材料の表面濡れ性を自在に制御することに成功した世界初の新技術で、自動車用センサやスマートフォン等のカメラのレンズ部分、各種電子部品、工業用部品などの産業分野でも極めて注目を集めている。
特に、自動運転用や安全確保用のセンサ類の市場においては、2020年には2017年比で約1.9倍となる1.7兆円(※1)になると見込まれており市場の伸びが期待される。また、スマートフォンの出荷台数は2020年には2017年比で約1.1倍となる16億台(※2)になる見込みであり、これらの市場を主なターゲットとし事業化を推進していくとのこと。

[引用]
図1:U.S. National Library of MedicineURL:https://ghr.nlm.nih.gov/condition/neuroferritinopathy#imagesより引用(日本語訳:長瀬産業)
(※1):矢野経済研究所調べ  (※2):IHS Technology調べ

プレスリリース(東北大学 AIMR):
https://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/jp/news/press/2019/20191007_001206.html

inahoがRaaSモデルで自動野菜収穫ロボットのサービス提供を開始

自動野菜収穫ロボットを開発のinaho株式会社は自動野菜収穫ロボットのサービスを開始したことを発表した。
選択収穫野菜における自動野菜収穫ロボットを従量課金型のビジネスモデル(RaaS)で展開するのは国内初(※当社調べ)の取り組みだという。

日本の農業従事者は少子高齢化ともあいまって激しい減少が予想されており、2010年から2030年の20年間で半減するとの予想もある。(農林水産省「農業構造動態調査報告書」)
inahoは自動野菜収穫ロボットとRaaSモデルで農業が抱える人手不足や経営課題の解決に貢献していくとしている。

■ロボットの基本情報
サイズ・重量:全長:125cm/全幅:39cm/高さ:55cm/約65kg
稼働時間  :最大10時間(バッテリー駆動/家庭用コンセントで充電可能)
収穫時間  :12秒/本

■ロボットの特徴
主な動作として、移動、探索、収穫という一連の流れで自動収穫を行う。
【移動】
・畑に白い線を設置するだけで設定したルートを自動走行
・ビニールハウス間の移動や夜間の利用も可能
・ロボットの操作はスマートフォンで簡単に可能
【探索】
・AIを駆使して自動走行しながら作物と枝等を判別
・探索した作物に対して収穫適期かどうかを判別
・収穫対象は出荷基準に合わせてcm単位で設定可能
【収穫】
・作物を傷つけることなくロボットアームで収穫
・収穫した作物はカゴに優しく収納
・カゴがいっぱいになると利用者のスマートフォンに通知

■初期費用&メンテナンス費無料のRaaS(Robot as a Service)
・選択収穫野菜の自動野菜収穫ロボットでは国内初のビジネスモデル※当社調べ
・販売ではなく、市場の取引価格×収穫量の一部を利用料としてinahoへ支払い
・農家は導入費を抑えて利用可能で、故障によるメンテナンス費も不要
・定期的に最新のパーツに交換することで、ロボットの性能が継続的に向上
・ロボット間のネットワークを構築し、さまざまなデータを収集予定
・農家へ生産性向上のアドバイスも実施予定

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000024969.html

ヴァイサラ、モバイル路面凍結検知センサを発売

ヴァイサラ(株)は、冬季道路メンテナンス向けに、主要な道路気象項目が計測可能な小型複合モバイルセンサ、「MD30 モバイル路面凍結検知センサ」(以下、MD30)を10月2日より販売開始すると発表した。価格はオープン価格。

MD30は、厳しい環境下で活動する除雪車などの雪氷車向けに設計されており、冬季道路メンテナンス作業の、より正確な意思決定や薬剤散布量の最適化などを可能にすることを目的として、リアルタイムの路面状態を検知するとのこと。
 車両に設置することで、継続的な路面状態監視をし、道路気象データ(摩擦係数、路面状態、路面膜厚、路面温度、大気温度、露点温度、相対湿度)を計測する。このため、設置型の気象観測局間のデータ補完を目的として使用することも可能という。

特長としては、

(1)堅牢な設計と容易なメンテナンス
雪氷車向けに設計されているMD30は、激しい振動に耐え、水の侵入を防ぐためにモールド成型されている。また、レンズを汚れや跳ね返りから保護するために、空気の流れを制御する特別な二重通気構造のフード(ダブルフード構造:特許出願中)を採用。レンズは結露や霜の発生を防ぐために加温される。清掃時には工具を使用することなく手でフードを外すことができ、レンズ周りの汚れを拭き取ることが可能。
(2)高い信頼性と使いやすさ、
 MD30は改良され高速サンプリングが可能となった、既存の設置型路面センサである「DSC111 路面センサ」のレーザー技術を採用。これにより、迅速な応答性と高精度な路面状態に関するデータの提供を実現している。
 MD30は車両始動時に自動的に計測、データ収集を開始する。取集されたデータはRS-232インターフェースを介して出力することも、Bluetoothを用いてスマートフォンに送信することも可能。専用のAndroidアプリソフトを使用することで、動画の録画や静止画の撮影の設定ができる。また、モバイル回線やWi-Fiなどを介して事業所などのパソコンへのデータ送信が可能であり、専用のWebアプリで色分けされた路面状況データ、グラフデータ、動画/静止画データを同一画面で閲覧できる。

等が挙げられるとのこと。

ニュースリリースサイト(共同通信Wire):https://kyodonewsprwire.jp/release/201910011637

自動運転関連の事業会社「パイオニアスマートセンシングイノベーションズ(株)」を設立

パイオニアは、自動運転関連事業を担うスマート&オートノマスモビリティ事業グループの事業活動を承継する新会社「パイオニア スマートセンシングイノベーションズ株式会社」を新設分割により10月1日付で設立すると発表した。
新設会社は、3D-LiDARセンサーを核としたセンシング技術を軸にパイオニアグループの自動運転関連事業をさらに推進していくという。

名称   :パイオニア スマートセンシングイノベーションズ株式会社
設立年月日:2019年10月1日
所在地  :〒113-0021 東京都文京区本駒込2-28-8 文京グリーンコート
資本金  :100百万円(パイオニア株式会社100%)
代表者  :代表取締役社長 高木晴彦
事業内容 :
 1.光学装置、電子装置、機械、ソフトウェア、器具の企画、研究、開発、製造、制作および販売
 2.その他前各号に付帯または関連する一切の事業

ニュースリリースサイト(パイオニア):
https://jpn.pioneer/ja/corp/news/press/2019/pdf/0930-1.pdf