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スマートものづくり応援ツールに「アムニモ センス ベータ」と「ポンプ ガード」が選出

 アムニモ(株)のIoT導入・運用に必要な機能全てを1カ月単位から利用できるパッケージサービス「アムニモ センス ベータ(amnimo sense beta)、以下amnimo sense)」と、うずまきポンプの遠隔監視サービス「ポンプ ガード、以下pump guard」が、ロボット革命イニシアティブ協議会開催の「第3回スマートものづくり応援ツール」において、中堅・中小製造業に適したIoTツールと、審査委員イチオシツールに選出された。
(画像:「アムニモ センス ベータ」)

「amnimo sense」と、「pump guard」は、低コストで、大規模なシステムや専門的な知識がいらず、手軽に導入できるIoTツールとして高く評価されたとのこと。 アムニモは今回の選出を契機に、中堅・中小企業の方々がIoTをもっと手軽に使えるようサービスの普及に努めていくとしている。

【amnimo senseの特徴】
IoTの導入から運用まで必要な機能がパッケージ化されていて、センサからのデータ取得、通信、運用、監視、セキュリティまで必要な機能が、全て基本サービスに含まれている。そのため、専門的な知識がなくても、簡単な接続ですぐにIoT活用が始められる。

【pump guardの特徴】
工場やプラントの生産用などのうずまきポンプの異常動作を監視。緊急時にはポンプを停止させることで、重大な故障を未然に防ぐとともにダウンタイムを削減することができる。また、遠隔地のユーザーにメールで通報することができ、万が一ポンプが故障した場合にも稼働データを常時記録しているため、そのデータを故障の原因分析に活用することが可能となる。

第3回「スマートものづくり応援ツール」について: https://www.jmfrri.gr.jp/event/seminar/1223/

AI×自動走行型アームロボット「トマト自動収穫ロボット」の実証実験を開始

(株)スマートロボティクスは、2019年10月より、ビニールハウスでのAI×自動走行型アームロボット「トマト自動収穫ロボット」の実証実験を開始したと発表した。

【ロボット開発の背景】
スマートロボティクスは、農作業の約半分を占める「収穫」の人手作業軽減に貢献するため、2018年11月より自動野菜収穫ロボットの企画及び設計開発に取り組んできた。収穫する作物は、「鈴なりで果実がなり、傷つきやすくサイズが小ぶり」といった性質から、難易度が高いと言われるミニトマトとした。

【ロボットの概要】
同社開発の自動野菜収穫ロボットは、ハウス内を自動的に移動しながら、ヘタが取れないようにミニトマトを収穫してカゴに詰めていく。ロボットには、カメラや距離センサが搭載されており、ディープラーニングによる画像認識などの技術を用いて、トマトの認識、サイズ判別や収穫判断をおこなう。ロボットハンドは自社で設計開発(※ 特許申請中技術)し、2019年3月にオフィス内に設置したミニトマト苗の収穫実験にて、1個あたりの収穫時間『約15秒』を実現したとのこと。

今後は、量産に向けたコストダウン、自動走行機能の改良、昼夜での認識機能の向上などを進めて、2020年春の実用化を目指す。製品については、生産者様に導入コストの負担がかからないように、収穫時期のみ利用可能なレンタルを中心に提供する予定という。

スマートロボティクスのサイト:https://www.smartrobotics.jp/

IoTセンサー・デバイス パートナープログラムに第一精工が参加

2019年10月11日、ぷらっとホーム(株)は、第一精工(株)が、協業プログラム「IoTセンサー・デバイス パートナープログラム」に参加したことを発表した。
これによりぷらっとホームの「OpenBlocks® IoT Family」を第一精工が提供する匂いセンサ「nose@MEMS」からデータ収集できる初のIoTゲートウェイ製品として対応を進めるとともに、今後有害物質検知や衛生管理などを目的としたIoTソリューションを両社協力のもと提供していくという。

◎匂いセンサ「nose@MEMS」について
第一精工が提供する匂いセンサ「nose@MEMS」は複数の検知素子が検出する匂い分子のパターンを認識し、識別するセンサ。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電薄膜に異なる感応膜を塗布した複数の検知素子をセンサチップ上に搭載しており、電圧をかけて共振している感応膜に匂い分子を付着させ、共振周波数の変化から数値データを取得、パターンを照合することにより匂いを識別する。

これまで特定の匂い(単一臭)を検知する匂いセンサは比較的低コストかつ小型で実現できたが、複数の臭気が混ざりあわさった複合臭を検知する匂いセンサは小型化、低コスト化が困難だった。PZTの圧電薄膜を用いた「nose@MEMS」は、検知素子の数を増やすことで多くの匂いを識別可能にすると同時に小型・低コストでの提供を実現し、施設内での異臭検知や、農産物の品質確認、清掃業務での最終チェック、食品の識別および品質管理など幅広い分野で活用できるIoTソリューションの実現が可能となったとのこと。

「IoTセンサー・デバイス パートナープログラム」のサイト:
https://www.plathome.co.jp/product/openblocks-iot/partner-program/

触覚センサの研究開発動向とこれからの展開(3)

電気通信大学 名誉教授
下条 誠

4.3 カメラモジュールの利用

カメラモジュールとゲルを組み合わせた触覚センサがある。物体によるゲルの接触変形をカメラにより高い空間的解像度で計測することでゲル表面の3D変形から物体の接触状態を解析する。
図7に例としてGelSightを示す11)。このセンサは反射膜をコーティングしたゲルを用い、物体が接触した時の変形を複数のLED照明(赤青緑色)を当て、カメラで計測する構造である。ゲル表面の3D変形から物体の接触状態が高空間分解能で計測できる。カメラを搭載するため指先形状寸法に制限はあるが、詳細な接触状態情報は把持・操り制御への可能性を感じさせる。

図7 Gelsight カメラモジュールにより柔軟ゲル表面の3D 変形から物体の接触状態を高空間分解能で計測する(R.Li et.al.)11)

またゲルを透明にして、近接情報も計測するセンサがある12)。これらはカメラを搭載するため形状制約がある。ただし、最近ミラーを用いて薄型に構成したセンサも出てきた13)。カメラを利用した触覚センサは、視覚情報処理技術との相性もよく、ロボットハンドなどへの利用が進むかもしれない。

4.4 触・近接覚センサ

触覚は接触するまで検出できない。しかし、近接覚と統合することでセンサから数十cm程度まで離れた物体を検出できる。これにより視覚から触覚までシームレスにつなぐセンシングシステムができる14)。この触·近接覚センサは、近接覚を基礎として開発が容易だ。
図8には触・近接覚の例を示す15)。センサは、透明なPDMS(シリコーンの一種)の下に、フォトリフレクタ型近接覚(発光と受光を組合わせた素子)を配置した構造である。(a)物体がない場合、反射光はPDMS境界面からのみである。(b)物体が近づくと物体からの反射光が加算される。(c)物体接触後は、PDMSの変形量を反射光量から計測することで接触力を計測する。ただし、この方式は、対象物表面の反射率の影響を受ける。

図8 透明なPDMS層の下に、フォトリフレクタ型近接覚を配置。
反射光強度から近接距離、接触力を計測する(Lammie et.al.)15)

図9には複数個のフォトリフレクタ配置と点滅位相を工夫することで、物体表面の反射率の影響を受けず、高速(1ms)かつ高精度(50µm)な特徴があり、近接距離は無論、接触力を指先柔軟体変位より計測するセンサを示す16)。なお高精度·高速な近接覚は従来のレーザ距離計より精度は劣るが、薄型軽量安価なセンサとしても利用可能である。

図9 高速(1ms)かつ高精度(50µm)な近接覚センサ(Koyama et.al.) 16)

このほか近接距離センサとして、TOF(Time of Flight) 方式がある。その原理は、光の往復時間(Time of Flight)から対象物までの距離を測る方式である。小型軽量で反射率の影響を受けないため使い易い。製品例として17)、測定レンジは0~100mm、応答は15msのものがある。但し、距離誤差が2mm程度あり、近接距離での制御への利用は難しいだろう。このように空間拡張型の触覚センサは、一つの発展の方向性を示すものと考える。

4.5 機械学習での利用が増加

近年、ロボティクス分野では触覚センサを用いた機械学習の研究が多くなってきた。機械学習は、視覚と触覚など異なる感覚モダリティーを統合する上で有効であり、数多くのパラメータが関係する制御設計が難しい動作に対して、新たなフレームワークとツールを提供する。ただし、機械学習は大量のデータを必要とする。しかし、触覚でのデータ取得は対象物に触れ、触運動により取得するため時間が掛かる問題がある。このため、シミュレーション利用する試み、および転移学習など各種学習方法の研究も行われている。

4.6 市販の触覚センサ

最後に触覚センサとして市販されているものをいくつか紹介する。それ以外にも多くあるが参考文献を参照していただきたい18)

(1)イナストマー
圧力により抵抗値が変化する感圧導電性ゴムを用いて計測する19)。原理は、ゴム材料にカーボンなどの導電素材を混ぜ、弾性体ゴムの変形に伴って導電素材の相互接触が増減することで電気抵抗値が変化する特性を用いている。触覚センサとして簡便に使える。検出回路が簡単で、センサは薄型で耐久性があるなどの特徴がある。

(2) Tekscan
圧力により接触抵抗値が変化する感圧インクを用いて計測する20)。原理は、感圧インク表面の微小な凹凸部分の接触面積が圧力により増減し、電極間の電気抵抗が変化することから圧力を計測する。触覚センサとして簡便に使える。センサは薄いフィルム状(0.1mm)で、印刷による作成ため自由な形状と空間分解能が可能である。

(3)Pressure Profile Systems
電極間ギャップ距離の変化による静電容量変化から圧力を検出する方式である21)。原理は、弾性のある誘電体などを電極で挟み、電極間隔の変位による静電容量変化から圧力を検出する。薄型で構造が簡単、各種電極材料の利用が可能で設計の柔軟性があるなどの特徴がある。

(4)タッチエンス
発泡剤(スポンジ)と発光受光素子を組合わせ、力により変形する発砲材内の散乱光量変化を光透過性の変化から計測することで、力を計測する22)。スポンジ素材による「やわらかい」外装を持ち、三次元方向の変位検出が可能などの特徴がある。

(5)BioTac
BioTac は、伸縮性のある外装とコアの間を導電性流体で満たした構造のセンサである23)。外装フィルムの変形によるインピーダンス変化を、コア上の電極(19個)で検出することから、力を計測する。また滑りによる振動を流体圧力センサ、熱伝導率の違いによる温度変化をサーミスタにより検出している。

次週に続く-

参考文献

11) R. Li, R. Platt Jr., W. Yuan, A. t. Pas, N. Roscup, M.A. Srinivasan,E. Adelson: Localization and manipulation of small parts using GelSight tactile sensing, IEEE/RSJ Int. Conf, on Intelligent Robots and Systems, pp.3988-3993, 2014.
https://www.youtube.com/watch?v=w1EBdbe4Nes

12) A. Yamaguchi and C. G. Atkeson: Combining Finger Vision and Optical Tactile Sensing: Reducing and Handling Errors While Cutting Vegetables, IEEE-RAS Int. Conf. on Humanoid Robots, pp.1045-1051, 2016.

13) E. Donlon, S. Dong, M. Liu, J. Li, E. Adelson, A. Rodriguez: GelSlim: A High-Resolution, Compact, Robust, and Calibrated Tactile-sensing Finger, arXiv:1803.00628, 2018.

14) 下条誠, 小山佳祐、計測自動制御学会、56(10), pp.758-763, 2017

15) D. Hughes, J. Lammie and N. Correll: A Robotic Skin for Collision Avoidance and Affective Touch Recognition, IEEE Robotics and Automation Letters, 3(3), pp.1386-1393, 2018

16) K. Koyama, M. Shimojo, T. Senoo, M. Ishikawa: High-Speed High-Precision Proximity Sensor for Detection of Tilt, Distance, and Contact, IEEE Robotics and Automation Letters, 3(4), pp.3224-3231, 2018. https://www.youtube.com/watch?v=UVMg2qdhdYs

17) https://www.st.com/ja/imaging-and-photonics-solutions/vl6180x.html

18) SlideShare: https://www.slideshare.net/secret/1yjCbOD2JOU68l

19) http://www.inaba-rubber.co.jp/index.html

20) https://www.tekscan.com/flexiforce-load-force-sensors-and-systems
https://www.youtube.com/watch?v=rzHiGQh2FNo

21) https://ja.pressureprofile.com/
https://www.youtube.com/watch?v=lvVJ9vG6H_k

22) http://www.touchence.jp/cube/index.html
https://www.youtube.com/watch?v=MHjZrrltpRA

23) https://www.syntouchinc.com/en/sensor-technology/
https://www.youtube.com/watch?time_continue=12&v=W_O-u9PNUMU

【著者略歴】
下条 誠(しもじょう まこと)
1976年 東京工業大学 総合理工学研究科 精密機械システム専攻修了
1976年 通商産業省工業技術院 製品科学研究所
1985年 – 1986年 スタンフォード大学 客員研究員
1993年 通商産業省工業技術院 生命工学工業技術研究所
1997年 茨城大学工学部情報工学科 教授
2001年 電気通信大学 知能機械工学専攻 教授
2016年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 特任研究員
現在に至る



専門分野
ロボティクス・メカトロニクス研究、特にロボットハンドと触覚センシングの研究を行っている。具体的には、視覚と触覚情報を補完する近接覚センシング、薄く柔軟なすべり覚センサの研究、これらセンサを取付けたロボットハンドの研究開発など。

安全な協働ロボットのための壊れにくい力覚センサの開発(3)

埼玉大学 工学部
准教授 辻 俊明

3.力覚センサの最大のリスク

力覚センサは人とロボットの協働における力学的インタラクションを処理することを主目的として実装されることが多い。そればかりでなく、適切な力指令値を与えれば力制御によって過剰な力が人にかかることを避けられるため、安全性の面でも力覚検知および力制御は必須である。

「人の痛みを理解する」能力がロボットには必要だと言い換えてもよい。しかし、必ずしも力覚センサの市場は現時点では大きくない。その主要因は力覚センサの故障リスクにあることがしばしば指摘されている。力覚センサはその特性上作業時の負荷を常に受けているが、負荷が過剰になった際にデバイスの破損や断線に起因して正しい値を提示しなくなることがある。

図2にそれを模擬した例を示す。右の力覚センサにペットボトルを載せると、その重力が検知され、左のディスプレイに矢印として表示される(図2(a))。この状態でセンサの導線のうちの一本を断線させると力覚センサは正しい値を検出しなくなる(図2(b))。力制御を実装したロボットでは、力センサの値をロボットの制御入力に反映させているため、力覚センサの故障はロボットの暴走を引き起こす。位置計測のセンサが故障した場合も当然暴走する恐れがあるが、位置計測のセンサは機構上衝突によって破損することがあまりない。そのため、衝突等の過負荷により力覚センサが故障し、暴走するリスクが人間支援ロボット実用化の最も強いネックになっている。

故障のリスクを避けるには主に以下の3つの対策が考えられる
対策1:力覚センサの機械的設計による破損の回避
対策2:力覚センサの耐故障計測アルゴリズムによる補償出力
対策3:コントローラやオブザーバへの耐故障制御の実装

図2 故障発生時の力センサの応答(CGで可視化)

次週に続く―

【著者略歴】
辻 俊明(つじ としあき)

1978年7月9日生。2006年3月慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学
専攻後期博士課程修了。
同年4月 東京理科大学工学部第一部機械工学科嘱託助手。
2007年4月埼玉大学工学部電気電子システム工学科助教。
2009 年10月から2015年3月までJSTさきがけ研究員を兼任。
2012 年3月より埼玉大学工学部電気電子システム工学科准 教授、現在に至る。

2018年度,2019年度日本ロボット学会理事。再生医療とリハビリテーション学会
理事。博士 (工学)。

2006年度,2007年度ファナックFAロボット財団論文賞等を受賞。主として力覚センシングとその信号 処理に関する研究に従事しており、リハビリ支援ロボット,モーションコントロール技術に応用している

超小形MEMS触覚センサによるヒトの触覚への挑戦(3)

立命館大学
情報理工学部 教授
野間 春生

5. MEMS触覚センサによるヒトの触覚の再現

5.1. ステージモデルによる物体識別の学習
 従来の触覚モデルは、閾値の実験結果に基づいて図10(a)に示すように4種類の触覚受容器から得られる個別の機械受容器からの出力を重ね合わせることで触覚を再現する考え方が主流である。この仮説に基づく触覚モデルに対して、触覚心理学研究の原点であるカッツは、感覚要素と特定の概念を組み合わせて感覚知覚ができると考えた[1]。カッツに続く一連の研究の成果として、物体の表面を触ったときの感触である”表面触”を構成する感覚の軸として、”硬い−軟らか”、”粗い-細かい”、さらに”粘−滑”が、三つの主たる触知覚的属性であるとの仮説があり、それぞれの触知覚的属性が物体の”弾性コンプライアンス”、”振動力”、”摩擦”の各物理的特性と高い相関が示されている[2]

図10 MEMS触覚センサによるヒトのような触覚情報の処理

我々はこの触知覚的属性の考えに基づいて図10(b)に示すように機械触覚をモデル化し、神経ネットワークの中間出力として触知覚的属性を組み込むステージモデルにならった人工触覚情報処理を提案している。中間出力前半は、複数のセンサからの出力を入力として機械学習の一種であるAuto Encoder (AE)の仕組みを導入し、後半は通常のDeep Neural Network (DNN)を導入している。前半のAEは教師信号無しのNeural network(NN)の一種である。AEは多次元の入力信号の次元削減を実現するが、その際のネットワークの学習においては教師信号を用いず、入力信号を再現するアルゴリズムによって学習を進める。この部分は、ヒトにおいては皮膚触覚の末端である機械受容器から神経系を上って大脳に至る経路の前半に相当し、この部分では典型的な学習よりも神経ネットワークによる情報削減の仕組みが現実的であると考えたためである。一方、機械学習の後半では、AEの出力である中間出力を入力として、素材に関する情報を出力とする。教師信号はセンサで触れた素材についての情報とし、典型的なDNN構造での学習を進める。この部分は、ヒトにおいて視覚などの他感覚や記憶による継続的な学習の成果として物体の識別や複雑かつ豊かな感触を出力するモデルを仮定した。

5.2. ステージモデルによる対象識別
 このステージモデルの実証のために、対象物の表面なぞりの結果から対象物を区別するタスクを設定した。まずMEMS 触覚センサを用いて収集された、上質紙やデニム生地、ダンボールや発泡スチロールなど計28種類の素材を対象として、触覚センサによって表面をなぞった際の計測データを収集した。ステージモデルでは複数のカンチレバーを有する触覚センサを想定しているが、ここで得られたデータは単一のカンチレバーで得られた信号であり、時系列に並ぶ一定時間の計測結果を複数のカンチレバーから得られた信号として見なして学習用のデータセットを作成した。
まず提案する触覚モデルの優位性を確認するために、簡易化させたConvolution Neural Network(CNN) モデルのみを用いた材質の識別を行った。このCNN モデルを用いた材質識別では 98 %の識別を達成し、センサデータには対象物を特定し得るだけの情報が含まれていることがわかった。この結果を指標として、図11に示す質感評価や触り心地といった表現をできるような人工触覚のためのステージモデルを作成した。 まず前半のAE部分のみを自身の信号だけを用いて学習を進め、十分に次元削減を行う。エンコーダとして、入力層と5 層の畳み込み層及びmax pool 層デコーダとして、出力層と 6 層の畳み込み層及び5層のup sample層、また、特徴量として用いる中間層の全 24 層からなっており、ネットワークの重みを入力データと出力データのユークリット距離とした誤差逆伝播法 を用いて学習を行った。ここでは入力のデータセットは1024次元、出力は32次元であった。この特徴量を元に、CNN を用いた解析を行い、結果として 68 %程度の識別が可能となった。先のCNNのみのモデルに比べれば識別率は大きく低下したが、前半のAEの部分では教師信号によって学習していないことを考えれば、触覚認知モデルの構造において、ニューラルネットワークの有用性を示すことができたと考えられる。今後、学習のための重み付けや層の構造、またデータ構造などを改良することで、より高度な人工触覚モデルの構築を目指す。

図11 神経情報処理ネットワークによる物体識別

次週に続く-

謝辞
本稿のMEMSに関する図面は共同研究者である新潟大学寒川雅之准教授から提供を受けた。

参考文献

[1] カッツ(著)、東山ら(訳)、触覚の世界、新曜社、2003.

[2] 東山、体と手がつくる知覚世界、勁草書房、2012.

【著者略歴】
野間 春生(のま はるお)
立命館大学 情報理工学部 情報理工学科 実世界情報コース
メディアエクスペリエンスデザイン研究室

1994年3月 筑波大学大学院 博士課程 工学研究科構造工学専攻修了 博士(工学)取得
1994年4月 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 入社
2012年12月 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 退社
2013年1―3月 Worcester Polytechnic Institute 客員研究員
2013年4月 立命館大学 情報理工学部 教授

学会役職
日本バーチャルリアリティ学会 理事(2019年−)

専門分野・研究テーマ
バーチャルリアリティ、触覚インタフェース、ウェアラブル&ユビキタスインタフェース

人手不足の解消を実現するサービスロボット「AIエッジロボット」を開発

OKIは、深刻な社会課題となっている人手不足の解消を実現するサービスロボット(注1)コンセプトの試作機として、AIエッジ(注2)コンピューターを活用した「AIエッジロボット」を開発した。「AIエッジロボット」は、さまざまな現場で、多様な用途に高稼働率で活用することができ、大幅な省力化を実現するとしている。


◇「AIエッジロボット」は以下の3つの特長により従来のサービスロボットの課題を解決し、多様なサービスの現場における省力化の実現と作業効率の倍増をめざすとのこと。

□現場業務の省力化
・自律動作するロボットと運用センターに配備したコックピットからの遠隔操作を組み合わせることにより、一人で多数(10台程度)のロボットを用いて、現場業務の遂行を効率的に支援することが可能。
遠隔操作では、今後5G、ローカル5Gを用いたソリューションも検討していく。

□高い稼働率
・搭載するAIエッジコンピューターが、ロボット自身では対応できない作業環境を認識した場合には、即時に運用センターからの遠隔操作に切り替えることによって、サービスを止めずに運用することが可能。
・ロボットの「目」としてOKIの俯瞰映像モニタリングシステム「フライングビュー®」を搭載しており、運用センターからロボット周囲を俯瞰する映像を確認しながら、スムーズな操作を行うことが可能。

□多様な用途での活用
・AIエッジに、音・振動・画像・空間・におい等の多様なセンサを接続・搭載できるインターフェースを装備して、用途に応じてこれらの「五感」を使って現状を認識・伝達することで、多様な用途での活用を可能としている。

注1:サービスロボット
多様な人と関わり、人とのインタラクションを通じたサービス提供が可能なロボット。産業用ロボットと区別して使われることが多い。

注2:AIエッジ
ネットワークの末端、顧客接点などのエッジに配置されたデバイスで動作するAI技術を指す。ロボットは、リアルの世界とデジタルの世界を繋ぐエッジに位置し、そこで動作するAI技術も、AIエッジとなる。

プレスリリースサイト(OKI):https://www.oki.com/jp/press/2019/10/z19049.html

自動運転プログラム+準天頂衛星「みちびき」による高精度自律制御の共同開発

ドローンなどの無人機開発を手掛けるイームズロボティクス(株)と、多彩かつ高度な衛星測位技術で位置情報を得る受信機を開発するマゼランシステムズジャパン(株)はパートナーシップ契約を結び、協業を開始したとのこと。 (画像:マゼランシステムズジャパン「多周波対応GNSSアンテナ」)

この契約締結により、イームズロボティクスとマゼランシステムズジャパンは中小農業機用械開発分野(ロボット農機)において、革新的な技術やアイディアを持つ両社の関係を強化すると共に、イノベーション創出を加速させるとのこと。

イームズロボティクスは国内で自社開発したプログラムにより既にドローンをはじめとする無人機の自動運転を実現している。基礎技術としての自律走行の手法は確立され、マーケットも成熟しつつあるが、従来のGNSS受信機を使った走行性能では、メーター級の誤差があり、地上走行にて実走させる段階に至らなかった。
マゼランシステムズジャパンは、準天頂衛星「みちびき」のL6信号を受信し、高精度かつ単独測位を実現するGNSS受信機を提供している。同社製の受信機はセンチメートル級の精度を実現しており、イームズロボティクスが開発した自動運転プログラムとの親和性が極めて高いため、UAV(ドローン/無人航空機)やUGV(無人車両)などのロボット分野において、自律飛行・自律走行を実現するための超高精度による制御が可能となった。

イームズロボティクスとマゼランシステムズジャパンは両社の強みを活かした「自動走行ユニット」を共同で開発することで屋外における高精度で正確な自動運転を実現する。この「自動走行ユニット」で提供する技術は、やがて社会のインフラとして求められると確信しているという。

開発スケジュール予定:
– 「自律走行ユニット」の共同開発を開始(2019年夏)
– 「自律走行ユニット」のサービスリリース(2020年初旬予定)
– 「自律走行ユニット」の量産・販売(2020年予定)

ニュースリリースサイト(イームズロボティクス): https://eams-robo.co.jp/news/index.html#e33

SII、消費電力を見える化するエネルギーハーベスト型ワイヤレス電流センサノードを発売

セイコーインスツル(株)(略称:SII)は、このたび電源、配線工事不要で、簡単に施設・設備の消費電力の見える化を実現する、エネルギーハーベスト型ワイヤレス電流センサノード「SW-42D0-1000」を発売すると発表した。

工場やビルの省エネを実現するには、建物内のどこで、どれだけのエネルギーを消費しているかを把握することが必要である。しかし、多くの企業では、エネルギー監視システムは導入しているものの、電力消費の多くを占める設備単位の消費電力の把握・管理については、工事の手間や費用がかかることから導入が進んでいないのが現状である。

そこでSIIでは、設備の分電盤の電源ケーブルに、CT(カレントトランス)を接続することにより電流値を測定、920MHz帯無線で送信すると同時に、その電流を電源とし、継続動作が可能な、エネルギーハーベスト型のワイヤレス電流センサノード「SW-42D0-1000」を開発した。これにより配線工事や定期的な電池交換をすることなく、継続的に設備の稼働状況や消費電力を見える化をすることが可能になるとしている。

ニュースリリースサイト(SII):https://www.sii.co.jp/jp/news/2019/10/09/14109/

OKI、「ドローン搭載型MNB測深機」による河床状況調査の実証実験

OKIは、JR東日本が設立したJR東日本モビリティ変革コンソーシアム(注1)において、FPV Robotics(株)と共同で、空飛ぶ水中測深装置「ドローン搭載型MNB(multi narrow beam)(注2)測深機」による、河床状況調査の作業効率化および安全性向上に関する実証実験を始めたと発表した。

コンソーシアムでは、河床状況調査を対象とした測深技術についての検証を行っている。河川橋梁の維持管理のために行う橋脚付近の河床状況調査では、主に橋梁の上から錘の付いたロープを水底まで下ろして河床の状況を測定してきたが、測定箇所が限定される、流速が早い場合は測定精度が低下するなどの課題があった。OKI、JR東日本、FPVの3社は、コンソーシアムのロボット活用WGマルチビーム測深SWG(以下SWG)において、こうした課題の解決に向け、MNB測深機とドローンを一体化した「ドローン搭載型MNB測深機」による河床状況調査の実証実験を推進している。

実証実験にあたり3社は、OKIグループの関係会社OKIシーテックの可搬ボート型マルチビーム測深機「CARPHIN V(カーフィン ブイ)」の測深装置部、および測定場所への移動手段となるドローンの活用を検討することとした。「CARPHIN V」は、小型・軽量な無人船体に測深装置部を一体化した装置で、有人測量船では測定が不可能な港湾や湖沼、小規模河川などにおいてMNB方式の深浅測量を行った実績がある。

3社で検討した結果、「CARPHIN V」の測深装置部をさらに小型化し、水空両用ドローンと一体化することで、調査対象場所へのアプローチから着水、測定対象範囲の水上航行と測深、離水、着陸までの一連のプロセスを、遠隔操作または自動制御で行うことを可能とした。これにより、橋脚付近の河床状況調査における作業の効率化を実現するとともに、安全性の向上にも寄与するとのこと。

SWGでは今後、試作機の運用試験による課題整理や技術検証を行ったうえで、実フィールドでの実証実験、実運用に向けたルールなどの検討を共同で進めていくという。

OKIは、このドローン搭載型MNB測深機を「CARPHIN air(カーフィン エア)」として、2020年度第三四半期の販売開始を目指すとしている。

注1:JR東日本モビリティ変革コンソーシアム
解決が難しい社会課題や次代の公共交通について、交通事業者と各種の国内外企業、大学・研究機関などがつながりを創出し、オープンイノベーションによりモビリティ変革を実現する場として、2017年9月5日にJR東日本が設立。2019年9月20日現在、157団体が参加している。
URL:https://www.jreast.co.jp/jremic/

注2:MNB(multi narrow beam)
船の左右両舷方向に扇状の音波を放射し、前後方向に指向性の鋭い多数の受波ビームにより反射音を受信することで、広い範囲の水深を測定する深浅測量方式。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000319.000017036.html