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3種類の信号のクロスメディア記録と多チャンネル記録「コスモレコーダー」

(株)イマジオムは、複数チャンネルの映像・音声・電気信号を同時に記録することができる高機能システム「コスモレコーダー」を開発した。この製品は、パソコンをベースとする記録システムで、8台以上のカメラから入力されるカラー映像、4台以上のマイクロホンから入力されるステレオ音声、32個以上のセンサ・スイッチから入力される各種電気信号を同時に記録する性能を持っている。
記録機能とともに再生機能も備えており、記録した映像・音声・電気信号を同期させて再生することが可能。コスモレコーダーは、2020年5月18日(月)の発売を予定しているという。

■「コスモレコーダー」の特徴
1.無制限の多チャンネル
 Uエディションの場合、ソフトウェアにはチャンネル数の制限なし。パソコンの性能が許す限り、たくさんのカメラ・マイクロホン・センサ・スイッチを接続し、それらからの入力をまとめて記録することができる。

2.高速記録も長時間記録も
 高速撮影性能に定評のある「ターゲット・ウォッチャー」や「瞬間ハンター」(いずれも同社製品)と同じ記録アルゴリズムを採用。充分な性能を持つ本体パソコンにインストールすれば、多カメラでの高速撮影記録も可能。また映像を圧縮形式で記録する機能を持ち、これを使うと多カメラでの長時間連続記録もできる。

3.同期再生機能を搭載
 データの記録機能だけでなく、再生機能も搭載しており、記録したすべてのチャンネルを同期させて再生することができる。時間範囲を指定して再生したり、コマ送りで再生したりすることも可能。さらにはデータをチャンネルごとに分け、一般的な形式のファイルに保存することもできる。

動画→AVIファイル(Windows Media Playerなどで利用可能)
音声→WAVファイル(Windows Media Playerなどで利用可能)
電気信号→CSVファイル(Microsoft Excelなどで利用可能)

4.誰でも使える簡単操作
 取り扱い説明書を読む必要がないほど操作が簡単。

■製品の販売
<Lエディション ライセンス>
モジュールの同時使用数:最大4モジュール 価格:800,000円(税抜き)
<Uエディション ライセンス>
モジュールの同時使用数:無制限 価格:1,200,000円(税抜き)
※「モジュール」とは、それぞれの入力機器に対応する「コスモレコーダー」のウィンドウのこと。画面例では8モジュールを使用。

ニュースリリースサイト:http://www.imageom.co.jp/PressRelease-200512.PDF

DDR5メモリモジュール用、JEDEC準拠の高精度温度センサ発売

 ルネサス エレクトロニクス(株)は新たな高精度温度センサ「TS5111」を発売した。この製品は、DDR5メモリモジュールに加え、ソリッドステートディスク(SSD)、コンピュータのマザーボード、正確なリアルタイム温度監視が求められる通信機器などの多様な用途に適している。JEDEC準拠の温度センサは、ピーク効率やリアルタイムでの信頼性に優れ、クローズドループ温度監視アルゴリズム動作によるメモリモジュールや温度に敏感なシステム構築に最適だという。

 TS5111は、システムの温度を高い精度で正確に維持するために、非常に重要な役割を果たす。プログラム可能な警告フラグにより、システムはメモリリフレッシュレート、ファン速度、帯域幅制限などの温度制御ループメカニズムを実行できる。また、TS5111はわずか0.8mm×1.3mmというコンパクトサイズのため、省スペースPCはもちろん、メモリやストレージモジュールなど、確実に稼働させるために近接センシングが欠かせない用途にも最適で、I2C、SMBusプロトコルに加え、最大動作クロック12.5MHzを実現する新たなI3C Basicプロトコルや、その他のインバンド割り込み、パリティチェック、パケットエラーチェックなどの先進の機能にも対応しているとのこと。

TS5111温度センサ 主な特長
●JEDEC JESD302-1シリアルバス温度センサデバイス仕様
(Serial Bus Thermal Sensor Device Specification)に準拠
●温度センサ精度
 ・周囲温度(Ambient Temperature/Ta)が75 °C~95 °C の範囲で、±0.5 °C (Typ.)
 ・周辺温度が40 °C~125 °C の範囲で、±1.0 °C (Typ.)
 ・周辺温度が-40 °C~125 °Cの範囲で、±2.0 °C (Typ.)
●2つのワイヤバスシリアルインタフェース(I2CおよびI3Cオペレーションモード)
●最大動作クロック12.5MHz
●電源供給1.8 V と1.1 V
●パケットエラーチェックおよびパリティエラーチェック機能
●バスリセット機能
●SAピンによる2つのユニークアドレスの選択
●インバンド割り込み

ニュースリリースサイト(RENESUS):
https://www.renesas.com/jp/ja/about/press-center/news/2020/news20200505.html

蚊はなぜ暗闇でも飛ぶことができるのかー千葉大学

 千葉大学大学院工学研究院中田敏是助教が参画する国際研究チームは、蚊が自らの羽ばたきで生み出した気流のわずかな変動を感知することで、暗闇でも障害物を避けて飛行できるメカニズムを実証した。
この成果は、国際科学誌「Science」にて、2020年5月8日(金)(日本時間)に公開されたという。なお、国際研究チームには、英王立獣医大学、ブライトン大学、リーズ大学の研究者らが参画しているとのこと。
(図1:蚊の羽ばたきによって生じる地面付近の気流蚊は気流が障害物に当たって変動することを感知し、床や壁面を避けて飛ぶことができる。赤色は特に気流の変動が大きく、青色になるにつれて徐々に小さくなることを示す。)

研究の背景
 蚊はデング熱や日本脳炎などの感染症を媒介することで知られており、その生態を様々な観点から理解することは、蚊から身を守るうえで非常に重要である。蚊は、暗い部屋の中でも360度目がついているかのように飛び、なかなか捕まえられない。実験的にも、蚊が暗闇で周囲の障害物を避けて飛ぶことが観察されていたが、その科学的なメカニズムについては、これまで未解明のままだった。一方で、蚊の触角の根元にはジョンストン器官と呼ばれる特殊な器官があり、11nmあるいは10-7m/sの空気の振動によって生じる0.005°の触角のふれに反応できるとの報告がなされている。これは、わずかな空気の流れも読み取ることができる「超高感度センサ」が、蚊の身体に備わっていることを示しているという。

研究成果
 研究チームは、蚊が真っ暗な環境でも障害物を避けて飛行できているのは、身体に備わる「超高感度センサ」によって、自らの羽ばたきで引き起こされた気流のひずみを検知しているのではないかと仮説を立てた。中田助教は、これまでにも高速度カメラによる3次元運動測定とシミュレーションによって、蚊の飛行メカニズムを明らかにしている。今回は、研究チームの先行研究データを利用し、数値計算で蚊の羽ばたきによって生じる気流を再現し、壁や床の存在による触角付近の気流の変動を調べた(図1)。その結果、蚊の触角の感度であれば、わずか4mmほどの体長の蚊が、体長の10倍近い距離である約30〜40mm離れた場所の気流の変動を感知し、壁や床などの障害物を検知できる可能性があることがわかった。メスの蚊は、水面から20〜70mm離れたところから、水中に卵を産み落とすことが知られているが、今回の研究でのシミュレーション結果は、その知見とも一致していた。この知見をもとに、国際研究チームの研究者らが、ドローンを使ってプロペラが起こす気流の変動検知の機能を評価したところ、蚊と同様に壁や床が検知できることが実証されたとしている。

ニュースリリースサイト(千葉大学):
http://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2020/20200508mosquito.pdf

6つのセンサ搭載のGPSトラッカー「TIVE」リアルタイムで荷物状況把握

Blue Green Group(株)は、アメリカTIVE社 が提供する物流業界向けGPSトラッカーを2020年4月10日から販売を開始した。物流業界の抱える課題に対して次世代の新しいテクノロジーを活用し、サプライチェーンの見える化を提供するという。

「TIVE」に搭載されているセンサは位置、傾き、衝撃、パッケージ開閉、温度、湿度の6つ。それぞれのデータは専用ソフトでリアルタイムにモニターすることができる。位置情報についてはGPS測位、Wifi測位、基地局三角測量法のすべてを活用し高精度を実現。それぞれのセンサは独自にアラーム設定が可能。盗難や不正な開閉、破損、温度変化など、見落とすことなく状況が確認できる。軽量(160g)かつ小型(153mm x 89mm x 12mm)でバッテリー寿命は約1年。簡単な取り付けで長期間の荷物状況把握が可能とのこと。
*BlueGreenGroup(株)は、「TIVE」の国内正規総代理店

プレスリリースサイト:https://www.dreamnews.jp/press/0000214610/

ホロラボ・イトーキ、遠隔コミュニケーションシステム「HOLO-COMMUNICATION」をリリース

(株)ホロラボと(株)イトーキは、共同開発を進めている次世代遠隔コミュニケーションシステム HOLO-COMMUNICATION の HoloLens 2 と Azure Kinect Developer Kit 対応版の提供を開始した。

 2017年からホロラボとイトーキで共同開発を進めている次世代遠隔コミュニケーションシステム HOLO-COMMUNICATION の HoloLens 2 と Azure Kinect Developer Kit(以下、Azure Kinect DK)対応版の提供を開始する。このシステムでは、遠隔参加者の前に設置した 3D センサ(Azure Kinect Developer Kit)により 3D 立体映像をリアルタイムで目の前に出現させ、音声やジェスチャーでコミュニケーションできる。2D による Web会議とは異なり、3D 立体映像で遠隔参加者の存在を傍に感じることができる、全く新しいスタイルのコミュニケーション システムとのこと。

中継サーバーの配置場所として Microsoft Azure クラウドサービスを採用しており、インターネット経由での配信や事前収録した録画映像の再生ができる。Azure Kinect DK は、Microsoft の最も優れた AI センサ(1MP ToF (Time-of-Flight) 深度カメラ、7 マイク アレイ、12 MP RGB カメラ、IMU)が搭載されているため、HOLO-COMMUNICATION に採用することで、これまでにないリッチな 3D立体映像の配信、コミュニケーションを実現できるという。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000023638.html

オン・セミ、産業用モータドライブ・アプリケーション向けポートフォリオの新製品

オン・セミコンダクターは産業用モータドライブ・アプリケーション向けポートフォリオの新製品を発表した。

・1200ボルト(V)アプリケーション向けのトランスファモールド・パワーインテグレーテッド・モジュール(Transfer Molded Power Integrated Module、TM‐PIM)の新製品「NXH25C120L2C2」、「NXH35C120L2C2/2C2E」、「NXH50C120L2C2E」
・インテリジェントパワーモジュール(IPM)ポートフォリオを拡張する新製品「NFAM2012L5B」、「NFAL5065L4B」
・IGBTゲートドライバの新製品「NCD57000」、「NCD57001」
・ゼロ・ドリフト・オペアンプの新製品「NCS21871」
・LDO レギュレータの新製品「NCP730」

オン・セミコンダクターは、産業用モータドライブ・アプリケーション向けポートフォリオを継続的に拡大し、利用者の個別の設計課題の解決をさらに支援する。モータドライブ・システムは、インダストリアルオートメーションやロボット市場の拡大とともに急速に増加しており、これらのシステムには、厳しい産業機器の環境内でのエネルギー効率、高精度な測定、正確な制御、高い信頼性が要求される。産業用モータドライブ向けの効果的な半導体開発には、先進的な設計、能動部品と受動部品を統合する能力、サブストレートの材料を含む高度なパッケージ技術、および高品質と高信頼性の規格が必要だという。

ニュースリリースサイト(ON Semi):https://www.onsemi.jp/PowerSolutions/newsItem.do?article=4540

ピッキングアシストロボットのサブスクリプションサービスを商用化

Rapyuta Robotics(株)とプラスオートメーション(株)(以下「+A」)は日本通運(株)向けに物流倉庫向け協働型ピッキングアシスタントロボット(AMR)のサブスクリプションサービスを日本で初めて(1)商用化したと発表した。
この結果、日本通運は初期投資額を抑制し、毎月のロボットサービス使用料・メンテナンス料等をすべて含む月額定額料金で、AMRを使用することが可能となるという。

Rapyuta Roboticsと日本通運はこれまで、実証実験を通じてロボティクスソリューションのインテグレーション及び開発を加速させるクラウド・ロボティクスプラットフォーム「rapyuta.io」を介しRapyuta Robotics製AMRを連携させ、倉庫の作業員と協働しピッキング作業の効率化、作業者の負荷軽減を図ることを目的に検証を行ってきた。その結果、AMRが十分な信頼性と品質を備えていることを確認したことから、日本通運が運営している平和島のセンター向けに、AMRを提供することになった。加えてRapyuta Roboticsと+Aのパートナーシップに基づき、より柔軟で機動力のある+Aの新たなサブスクリプションサービスを活用することとなった。これにより、日本通運は変化の激しい物流量、倉庫立地、オペレーション設計等に対して、柔軟な対応策を構築することが可能となり、今後複数拠点への展開も計画しているとのこと。

(1)IDC Market Scape: Worldwide Autonomous Mobile Robots for General Warehouse Automation 2019 Vendor Assessment (May 2019) IDC、及びRBR Top 50 Companies (May 2019) Robotics Business Reviewに日本企業及び日本市場でPA-AMRが提供・使用されている記述が無いことを根拠とする。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000021229.html

次世代型養殖の開発と新たな海洋産業の創出に向けた取り組み(1)

長崎大学
海洋未来イノベーション機構
  征矢野 清

1.水産業の現状

水産業は海に囲まれた我が国の基幹産業の一つであるが、その置かれている状況は非常に厳しい。漁業に携わる方の高齢化と後継者不足、食料資源となる海洋生物の減少と捕獲制限、日本人の魚離れ、安価な海外産の水産物の輸入など複数の要因が、この厳しい状況を生み出している。しかし、古くから魚食を文化の一つとしている我が国において、水産業は不可欠なものであり、また、健康志向の高まりにより、水産業への期待は膨らんでいる。このような背景をふまえ、水産業の維持・回復には、「漁船漁業」を維持しながらも、「養殖」への転換と拡大が必要性であるとされており、国、地方自治体、水産関連企業がその取り組みを進めているが、水産業の回復に向け十分な成果が得られているとは言い難い。一方、海外に目を向けると、水産物の消費は増加しており、それに伴って魚介類や藻類の養殖は急速に伸びている(図1)。

図1 世界の漁業・養殖業生産量の推移

資料:FAO「Fishstat (Capture Production, Aquaculture Production)」(日本以外の国)及び
農林水産省「漁業・養殖業生産統計」(日本)に基づき水産庁で作成
出典:平成30年度水産白書資料(水産庁HPより jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h30_h/trend/1/t1_3_3_1.html)

また、養殖技術の開発も盛んに進められており、特に、少人数で効率よく魚を管理するシステムの開発と導入に力が注がれている。このような技術の進歩も手伝って、各国で生産された魚は、海外への輸出にも向けられており、国際商材として扱われている。たとえば、ノルウェーは養殖サーモンを中心に2017年度には輸出総額約14兆円(945億クローネ)を達成している。またこのうち養殖魚の割合が約70%を占める。しかし、我が国では輸入が圧倒的に輸出を上回り、海外で生産・加工された安い水産物の流通が目立っている。水産物の国内消費が減る中、これでは我が国の水産業の発展は見込めない。

2.求められる水産業のあり方

我が国の水産業の再生には、水産物の海外販売を促進させる以外にない。海外へ水産物を輸出する上で、特に注意を払わなければならない重要な点は、安全安心な水産物であること、そして環境を汚さずに生産したものであることである。また、完全に素性のわかる養殖魚であることも重要なポイントとなる。日本では天然魚介類を良しとする傾向が強いが、海外では生活の履歴が不明な天然生物は避けられる傾向にある。つまり、いつ、どこで、どのような暮らしをしてきたかわからない海洋生物は信用しないということである。したがって、生まれた時から取り上げるまで、すべての過程を人の管理下に置いた完全養殖魚介類の生産と、環境保全型の養殖システムの構築が、海外販売を展開する上では必要不可欠なのである。しかし、このような海外販売を念頭に置いた養殖システムの構築は、漁業者だけでは整備できるものではない。また、養殖業者が安心して魚介類の生産を行うには、確約できる販売量とそれに向けた流通システムや加工システムを整備すること、そのうえで生産に見合った規模の飼育施設等を整備すること、さらには、安価で購入出来る餌料の供給制度、低労働力で飼育・管理を行うことができるシステム、新たな保険制度などの整備が欠かせない。ここにあげた個々の課題に関して、これまでも対応がなされなかったわけではないが、これらを一つのサプライチェーンとして捉え、バリューシステムを作り上げることが、養殖を中心とした水産業において今求められているのである。

次回に続く-

【著者紹介】
征矢野 清(そやの きよし)
長崎大学海洋未来イノベーション機構
環東シナ海環境資源研究センター
教授・副機構長・センター長
次世代養殖戦略会議会長

■略歴
1993年 北海道大学大学院水産学研究科博士後期課程修了 博士(水産学)
1993年 長崎大学水産学部助手
2008年 長崎大学環東シナ海環境資源研究センター教授

■所属学会
日本水産学会、日本水産増殖学会、日本内分泌かく乱化学物質学会(環境ホルモン学会)、日本動物学会

■主な研究・活動
主な研究テーマは「魚類の卵子や精子はどのようなメカニズムでつくられるのか」、「卵子・精子形成に与える水温・日長・月周期の影響を解析」、「ハタ類やブリ類など有用魚種の種苗生産・養殖技術の開発」、「魚類の繁殖の及ぼす環境中に存在する化学物質や医薬品の影響解明」などである。また、2020年4月に「次世代養殖戦略会議」を立ち上げ、水産業の発展と海洋環境の保全に関わる活動を積極的に行っている。

■著書など
ハタ科魚類の水産研究最前線(恒星社厚生閣)/ 魚の形は飼育環境で変わる(恒星社厚生閣)/ 水産ハンドブック・内分泌(生物研究者)など

洋上風力発電に関する世界の状況、技術の進展、日本の課題、長崎の取り組み(1)

長崎大学
海洋未来イノベーション機構
  織田 洋一

1.欧州の状況

欧州各国では2000年頃から本格的な洋上風力発電の促進政策が開始された。しかし、初期の約10年間は拠点港を含むインフラ整備や産業サプライチェーンの拡充等が充分ではなく、発電コストは上昇を続けた。欧州の洋上風力発電コストが低減傾向に転じたのは年間新設出力が0.9GW、累計出力が3GWに拡大した2010年以降である。(注:1GW=100万kW)
現在は年間1兆円を超える市場に拡大し2019年末の発電能力は22GWに達している。(図1)

(図1) 欧州の洋上風力発電能力拡大推移1)

欧州の洋上風力発電コストはここ数年間で急速に低減している。例えば、2019年9月に実施された英国の事業落札では、数年後に操業を開始する事業(合計5.5GW)の売電価格が£40/MWh (¥5.20/kWh)前後で落札され、2015年から約66%も低減した。これを現在価値に換算すると約£45/MWh(¥5.85/kWh)に相当し、英国の電力平均卸売価格と同水準である。(1英ポンド=130円換算)
欧州委員会(EC)は、2050年までに230~450GWの洋上風力発電が必要であると提言し、これを達成するための議論が始まっている。洋上風力発電の合計出力が450GWに拡大すれば、欧州の全電力需要の約30%を供給できることになる。
洋上風力発電の拡大と本格的な発電コストの低減を実現するためには大規模な導入目標と長期的な市場拡大政策が必要である。

2.世界の状況

国際エネルギー機関(International Energy Agency)は、世界の洋上風力発電の平均コストが2024年までにUS$60/MWh(6.5円/kWh(1US$=108円換算))に低減するとの予想を2019年10月に発表した。この中で過去10年間に技術革新によるコスト削減でエネルギーの大変革をもたらした分野として、シェールガス革命と太陽光発電を挙げたうえで、洋上風力発電もそれに加わる可能性があると指摘している。
欧州で発展してきた洋上風力発電は、今後世界に普及し発展すると予想されている。例えばBloomberg NEFは世界の合計発電能力は2030年に177GWに拡大すると予測している。今後アジアや米国でも洋上風力発電が普及し、中国が世界最大の洋上風力発電導入国になると予想されている。(図2)

(図2) 2030年までの世界各国の洋上風力発電能力の拡大予測2)

3.事業開発ステップ

欧州の実績では、洋上風力発電事業が計画から発電開始までに要する平均期間は約11年で、 各段階毎の主な実施内容と所要年数は表1の通りである。

(表1)洋上風力発電の事業開発ステップ3)
段階 名称 年数 主な実施内容
1 海域リース 2年 候補地選定、環境影響評価、空間利用計画
2 許認可 4年 初期調査、系統確保、概要設計、建設許可、技術検証、事業性評価
3 資金調達 2年 詳細設計、業者選定、事業入札、売電契約、最終投資判断
4 建設設置 3年 機器製造、事前組立、陸上工事、洋上工事、連系、発電開始
(写真1) 英国の洋上風力発電ファーム Dudgeon Offshore Wind4)

次回に続く-

【著者紹介】
織田 洋一(おだ よういち)
1952年9月10日生まれ
国立大学法人長崎大学 海洋未来イノベーション機構 コーディネーター

■略歴
1977年 4月  三井物産株式会社入社
        金属資源本部(新規事業開発、リサイクル事業推進などを担当)
2008年 4月~ 三井物産戦略研究所
       (洋上風力発電、海流・潮流発電、海底資源開発などを担当)
2017年10月~  国立大学法人長崎大学  海洋未来イノベーション機構

■社会における活動
2013年10月~2015年3月  名古屋大学客員教授
2015年11月~2016年3月  内閣官房 総合海洋政策本部 参与会議
             新海洋産業振興・創出PT
             洋上風力発電・海洋再生可能エネルギーWG
2016年 1月~2017年3月 文部科学省科 科学技術・学術審議会
             海洋開発分科会 次世代深海探査システム委員会
2016年 3月~2018年3月 国立研究開発法人 海洋研究開発機構
             イノベーション促進プログラム選考メンバー
2019年10月~2020年3月  内閣府 総合海洋政策本部 参与会議
             科学技術・イノベーション スタディグループ
2019年12月~2020年3月  戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期
             革新的深海資源調査技術 ピアレビュー会議 など

長崎県・長崎大学の海洋産業への取組(1)

長崎大学
海洋未来イノベーション機構
森田 孝明

1.はじめに

長崎県は、太古の昔から海とともに歩んできた。海は、国と国を隔てるものであり、対馬では「防人(さきもり)」が海からの外敵の侵入を見張っていた。また、一方で、海は、大陸から人や文化や技術を運ぶ交通路であり、大航海時代、海からみて魅力的な場所であったこと(天然の良港を有していたこと)が、本来(陸からの視点では)、街ができるはずもない辺境の地・長崎を、海外との貿易や交流の拠点として発展させた。明治日本の産業革命遺産として世界遺産に登録されている「軍艦島(端島)」に象徴される良質な石炭の産出も「海底炭鉱」の開発であり、トーマスグラバーの息子・倉場富三郎が日本に最初に紹介したトロール漁法等、新たな漁業技術と豊かな水産資源があいまって水産業が長崎の産業を支えていた。さらに貿易を支える海上物流では、三菱重工長崎造船所を筆頭とした造船産業集積など、長崎は海にまつわる産業とともに、その営みを紡いできた。
時を経て、石炭から石油の時代に移る中での炭鉱の閉山、イワシ資源をはじめとする水産資源の変動や魚価の低迷による水産業の低迷、中国・韓国の台頭による造船業の苦境など、社会の変化にともなって、海に関わる長崎の姿も時代とともに移り変わってきた。

2.海洋県長崎

日本は、世界第6位の広さの排他的経済水域を持つ海洋国家で、長崎は、海洋国家日本の最前線に位置している。県土の面積は、北海道の20分の1しかない小さい県であるが、海岸線の延長は4,184kmと北海道の4,457kmにほぼ匹敵し、北海道の北方4島の海岸線延長が1,348km、第3位の鹿児島は2千km台であり、生活の中で、住民が海に接する長さが断トツに長いのは、長崎県ということになる。
島の数は、面積1k㎡以上で数えると594島、海岸線100m以上だと971島と、いずれも全国1位で、港湾と漁港の数の合計は390港に上り全国第1位の数を有している。

3.「ながさき海洋・環境産業拠点特区」、「実証フィールド」と「長崎大学海洋未来イノベーション機構」

このような海洋県である長崎の特徴を活かし、時代の変化に対応した産業の維持発展・新たな創出を目指して、長崎は、様々な取組を続けている。平成24年、県は、長崎市・佐世保市・西海市とともに、内閣府の地域活性化総合特区に、①海洋における地球温暖化対策、②海洋環境の保全対策、③海洋エネルギーの実用化等を柱とする「ながさき海洋・環境産業拠点特区」を提案し、平成25年2月、内閣総理大臣決定として、長崎県の海域すべてを区域とする「ながさき海洋・環境産業拠点特区」の指定を受けた。筆者の知る限り、「海洋」をテーマとした特区は、長崎のこの特区が唯一のものである。
平成25年4月、第2期海洋基本計画(H25~H29)が閣議決定され、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策として、「海洋再生可能エネルギーの利用促進」が掲げられ、その中で、実海域において海洋再生可能エネルギー技術を開発するための「実証フィールド」の整備に取り組むことが示された。
長崎県は、関係市町の協力の下、県内3海域の指定を国に提案し、平成26年7月15日、全国初の国指定の「海洋再生可能エネルギー実証フィールド」(図-1)として、五島市椛島沖、同市久賀島周辺海域、西海市江島・平島周辺海域が指定を受けた。

図-1「海洋再生可能エネルギー実証フィールド」 出典:長崎県産業労働部

これまでに、五島市椛島沖の実証フィールドでは、我が国初の浮体式洋上風力の実証が成功し、現在、五島市崎山沖で我が国初の浮体式洋上風力の商用化が進んでいる。また、潮流発電についても、五島市久賀島周辺海域において、我が国初となる大型潮流発電の実証事業が九州電力グループにより進められているほか、長崎大学による小型の浮沈式潮流発電システムの開発も進められている。そのほか発電機本体以外の周辺技術の実証も実証フィールドを活用し開発されている。

県においては、実証フィールドの誘致と並行して、平成25年度から、産業創出のための構想づくりに着手した。平成26年度に、県産業労働部に「海洋産業創造室」を新設し、平成27年3月に「海洋エネルギー産業の拠点形成構想」を取りまとめた。
長崎大学においては、この県の「海洋エネルギー産業の拠点形成構想」づくりに参画するとともに、第3期中期計画において、大学の地域貢献機能の強化を打ち出し、平成28年3月には長崎県、長崎大学、長崎総合科学大学、NPO法人長崎海洋産業クラスター形成推進協議会との4者による「海洋エネルギー関連分野における連携協力に関する協定」に調印するとともに、その翌月平成28年4月の第3期中期計画のスタートとともに、学長直属の研究組織「海洋未来イノベーション機構」を創設した。
海洋未来イノベーション機構は、図-2に示す領域の研究を行う組織で、令和2年4月10日現在、専任8名、併任28名の研究者及びスタッフを擁し、同機構・環東シナ海環境資源研究センターでは、東シナ海を取り巻く中国、台湾、韓国の大学・研究機関とコンソーシアムを形成し、洋上風力の商用化が進む台湾とは、洋上風力と共生する水産振興などでも情報交換を行っている。

図-2「海洋技術クラスター構想」 出典:長崎大学海洋未来イノベーション機構

次回に続く-

【著者紹介】
森田 孝明(もりた たかあき)
長崎大学海洋未来イノベーション機構 機構長特別補佐
兼 長崎県産業労働部 参事監(2020年3月まで)
長崎県産業労働部 参事監(大学連携推進担当)(2020年4月~)

■略歴
1985年3月長崎大学経済学部卒業後、三井銀行で融資業務に従事ののち、出身地である長崎にUターンし長崎県庁に入庁。
2013年、産業労働部産業政策課企画監(課長級)の折、「長崎県海洋エネルギー産業拠点形成構想」策定に従事。
2014年から海洋産業創造室長として、内閣官房海洋政策本部からの実証フィールド選定獲得に奔走するとともに、長崎県、長崎大学、長崎総合科学大学及び長崎海洋産業クラスター形成推進協議会の4者による海洋エネルギー関連分野における連携協力に関する協定を締結。海洋・環境産業創造課長を経て、
2017年4月、産業労働部部付の課長となり、4者連携協定に基づき設立された長崎大学海洋未来イノベーション機構の機構長特別補佐を併任。日本財団の長崎海洋開発人材育成フィールドセンター事業の誘致を主導。
2019年4月からは、県産業労働部参事監(次長級)として同業務に従事。長崎県西海市と長崎大学海洋未来イノベーション機構との連携協定締結や共同研究をプロデュースした。長崎県における産学官による海洋エネルギー産業づくりに一貫して従事するとともに、九州地域戦略会議における海洋エネルギー産業化実務者会議の副座長、内閣府総合海洋政策推進事務局による「海洋状況表示システム(海知る)の活用推進のための検討会」委員のほか、 日本船舶海洋工学会海洋教育推進委員会委員及び海洋教育フォーラム長崎地区実行委員長として、若者への海洋の普及啓発にも取り組んでいる。
2020年4月からは、県産業労働部に新設された参事監(大学連携推進担当)として、引き続き、産学官連携による産業づくりに従事している。