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オンキョー、交通量推定用振動センサシステムに関する英語論文誌掲載

オンキョー(株)は、奈良先端科学技術大学院大学との間で産学連携した共同研究に関する協定の締結を行い、AIを活用した新事業の創出に向けて技術開発に取り組んでいるが、この度、奈良先端大ユビキタスコンピューティングシステム研究室との共同研究にて行った、交通量推定用振動センサシステムの研究成果について、センサ技術分野の英語学術論文誌である、”Sensors andMaterials”※1に掲載された。

1.背景
道路交通調査は、整備計画の立案やスムーズな道路活用によるCO2の削減を目的として、道路における交通量の実態調査と課題把握のために行われている。日本においては5年に1度、大規模な国土交通省による全国道路・街路交通情勢調査が行われているが、人手によらない機械計測による調査については、高速道路においてETC2.0プローブ等を活かした機械計測が活発に行われている一方で、一般道路においては機械計測が普及していない。「平成27 年度全国道路・街路交通情勢調査一般交通量調査結果の概要」(国土交通省)によると最新の平成27年の調査でも50%以上は人手による交通量の調査が行われており、機械化をいかにして早急に行うかが議論されている。この要因としては、現状のトラフィックカウンタが高価であること、装置の規模が大きいため設置と調整に時間と手間がかかること、またカメラを使用する場合はプライバシー対策が必要であることや、夜間で照明の少ない道路における車両検知が困難である等といった課題があった。
そこで同社は、音に関する技術を活用し、プライバシーへの侵害が少ない振動センサシステムを奈良先端大と開発し、車両通過時の道路の振動を採取、機械学習で分析し判定する技術研究を行ってきた。本論文はこのセンサシステムの実用化に向けた構造検討と振動音採取に関する研究の詳細や原理、ML-based LDAをもちいた車両分析の検討について述べているとのこと。

2.奈良先端大ユビキタスコンピューティングシステム研究室との共同研究について
奈良先端大ユビキタスコンピューティングシステム研究室は、センサ・デバイス・ネットワークが連携し、センサから取り込まれる実世界データを処理・集約・解析することで、高度なサービスを効率良くユーザに提供するシステム―ユビキタスコンピューティングシステム―の実現に向けた研究に取り組んでいる。※2
同社と奈良先端大ユビキタスコンピューティングシステム研究室は、モノを伝わる振動(音)データを機械学習によって分析をすることで、様々な分野での各種分析、判断へ応用することを目的に共同研究を行っている。同社が培ってきたオーディオ技術を用いて、微弱な振動(音)に含まれる特徴的な信号を忠実に増幅することによって得られたデータを使用して、機械学習・分析を行う奈良先端大ユビキタスコンピューティングシステム研究室と連携することにより、今後もこれまでにない幅広いニーズに対応するための研究を進めていく予定だという。

●論文名※3  「Traffic Census Sensor Using Vibration Caused by Passing Vehicles」

※1SensorsandMaterialsについてSensors and Materialsは、センサ技術や、関連材料、センサを応用したシステムについて、学術的な内容を掲載する査読付きの英語学術論文誌。1988年より実験や理論分野の独創的な研究を紹介しており、インパクトファクターのある論文誌。(インパクトファクターとは自然科学分野等で学術雑誌の影響度を数値化するために用いられる指標。)
※2奈良先端大ユビキタスコンピューティングシステム研究室HP「研究室の概要」より
※3出典:Sensors and Materials, Vol. 33, No. 1 (2021) 1–16
https://doi.org/10.18494/SAM.2021.2999Published on January 15, 2021

プレスリリースサイト(ONKYO):https://onkyo.com/news/images/20210205_NAISTSensorsMaterials.pdf

生産設備等の故障予兆信号を検知する、防水接触型アコースティックセンサのサンプル配布

新日本無線(株)は、生産設備等の故障予兆信号を検知する防水接触型アコースティックセンサを開発し、サンプルの配布を開始した。

概要
 工場の生産設備などで使われる回転機器はベアリングの摩耗や損傷などによる故障で急な生産ライン停止を招く恐れがあるため、定期的なメンテナンスや使用時間などから部品交換を行う定量管理がなされてきた。予防保全は使用可能な状態でもメンテナンスや部品交換を実施するため、作業者のリソースや部品交換費用の無駄が生じる。工場のIoT化が進む昨今ではセンサにより生産設備の状態をリアルタイムで監視する状態管理へ移行することで、保全コスト削減やダウンタイム回避につながる。
 このような背景から、新日本無線ではMEMSセンサ技術を応用し、可聴音から超音波まで検出可能なアコースティックセンサを開発した。従来の振動センサでは感度を有しない超音波領域をモニタリングすることで、より早い故障予兆の検知が可能となるとのこと。

特長
■ 可聴音から超音波まで検出可能
 ・20Hz~100kHzの帯域でフラットな感度を実現
■ 優れた耐環境性
 ・防水防塵 IP67対応(防水施工時)
 ・高耐環境性のステンレス筐体
 ・耐候性(耐油、耐薬品、耐UV)ケーブル使用
■ 使いやすい
 ・接触設置のため周囲ノイズを遮音
 ・専用マウント不要(穴あけ、ねじ切り不要)
 ・ラインアンプ付き電圧出力
 ・ケーブル付き(3m)

アプリケーション
●生産設備等の予兆保全
 ・モーター/ポンプ等の故障予兆検知
 ・配管/バルブ等のリーク検知

生産/参考価格
  生産     サンプル配布中
  サンプル価格 ¥98,000.-

ニュースリリースサイト(新日本無線):https://www.njr.co.jp/news/2021/semi_20210205-acoustic-sensor.html

凸版印刷、IoTで充填・包装工程のDXを支援

 凸版印刷(株)は、ものづくりから卸・小売り、生活者にいたるサプライチェーン全体のデジタル化を推進し、顧客の事業変革を支援する「トッパン・デジタルトランスフォーメーション(T-DX)」を展開している。
 このたび、2019年4月より提供している製造DX支援ソリューション「NAVINECT®」の更なる拡大を狙い、凸版印刷が顧客に包材と合わせて提供している充填機・包装機に標準搭載可能な製造支援DXソリューションパッケージ(以下 本サービス)を開発。2021年2月3日より提供を開始した。

 本サービスは、社内の装置製造知見を元に充填包装工程での品質向上のための追加センシング、装置メーカーと連携したデータ収集の標準化を行い、充填機・包装機へ標準機能として搭載している。これにより、従来よりも導入コストを抑え、「充填/包装ライン全体の情報監視・参照」「製品毎の製造・検査情報トレース」「充填/包装機の制御」が装置導入と同時に可能となり、食品・飲料・化学業界の顧客の現場改善を支援するという。
 なお、本サービスを搭載する充填・包装機は、四国化工機(株)、大森機械工業(株)、(株)トッパンテクノが製造している。今後、他装置メーカーとも順次連携を行い、食品・飲料・化学業界の製造DXを進めていくという。

▮「本サービス」の特長
 本サービスには、顧客の製造現場(エッジ)で稼働し、監視・制御などの直接的な効果を狙うものと、クラウドで稼働し、中・長期的なデータの管理/分析といった間接的な効果を狙うものがある。
① 【エッジパッケージの提供機能】
・稼働状態監視
生産設備の稼働情報を遠隔でリアルタイムモニタリングができ、異常の早期検知、早期対応が可能。またコロナ禍でのリモートワークに有用で、設備稼働状況やエラー内容、生産予定に対する進捗状況のモニタリングもできる。
・異常予兆監視
各種センサデータの推移をリアルタイムで監視し、予め設定した条件から異常傾向を自動検知でき、現場のオペレーターに通知することが可能。これにより、品質及び設備異常への早期対応や、未然防止につなげることができる。センサおよび異常検知の条件は、凸版印刷のノウハウを元に初期搭載されており、導入後即利用可能。
・製造履歴参照 (トレーサビリティ)
各種センサ情報、稼働/アラーム情報の時系列データ参照、および製品毎の製造履歴情報(トレーサビリティ)の参照が可能。これにより、検索機能や装置停止要因の解析、品質異常発生時の波及範囲検索ができ、原因特定の確度UP・高速化へ寄与する。
・誤投入防止制御
投入資材、使用金型治具のセット位置を使用前に照合することで、選定間違いや設置ミスを防止。異常時には標準搭載されているインターフェースを通じて、装置が異常状態のまま運転を開始することを抑止するインターロック機能を提供することにより、不良品発生を防止する。

② 【クラウドパッケージの提供機能】
・MIoTASU™(ミオタス・見える化) 
充填機の付帯機能として、装置に標準搭載されたIoT機能を活用した装置データの中・長期的な変化の見える化/集計機能を「MIoTASU™」として提供。充填機のデータをLTE/3Gモバイルデータ通信による安全な通信でクラウドサーバー上に蓄積。これまで培ってきた充填機の運用ノウハウを元に装置の保全活動に役立つ形へと整理・集約した5画面100項目以上の情報が、事務所や外出先など場所を問わず閲覧可能。なお、「MIoTASU™」は2021年2月に大関(株)へ導入を予定しているとのこと。

価格
① 【エッジパッケージ】
 ・初期構築費:700万円~  サービス購入価格:34.5万円~/1機能
② 【クラウドパッケージ】
 ・初期構築費:260万円~  月額利用料:3.5万円~
  ※上記価格は、1ライン導入時の価格。2ライン目以降は別途見積り。

ニュースリリースサイト(TOPPAN):https://www.toppan.co.jp/news/2021/02/newsrelease210203_1.html

「愛・地球博記念公園屋外公共施設における新たな車室空間体験を伴う移動自動運転実証実験」協力

アイサンテクノロジー(株)は、愛知県長久手市の愛・地球博記念公園において実施される、「屋外公共施設における新たな車室空間体験を伴う移動」をテーマとした愛知県事業の自動運転実証実験に協力する。
本実証実験では、自動運転コンセプト車両「MOOX(ムークス)」(画像)を使用し、園内大芝生広場を周回するルートで運転することにより、自動運転の実用化に向け社会実装のあり方を技術面、運用面の両面から追求する。
車両内では、車窓のAR(拡張現実)映像コンテンツにより、自動運転による移動時の新たな体験を提供すると共に、最先端の安心・安全な車室環境を提供する実証を行うとしている。

1.実証日程 2021年2月12日(金)から2月19日(金)まで
2.自動運転コンセプト車両「MOOX(ムークス)」自動運転実証実験概要
◆車両概要
 車両
   ・(自動運転コンセプト車両)トヨタ紡織「MOOX」
 仕様
   ・自動運転OS「Autoware」※を搭載し事前に取得する「高精度3Dマップ」を使用して走行
   ・乗車定員2名
   ・ハンドルやペダルはない
   ・LiDAR(自動運転センサ)、カメラ等を搭載ゴルフカートをベースとした近未来型モビリティ

◆自動運転コンセプト車両「MOOX(ムークス)」自動運転実証実験実施体制(団体/企業と役割)
・愛知県           :実証団体
・(株)NTTドコモ       :実証実験実施主体
・トヨタ紡織(株)      :車両提供(「MOOX」)
・アイサンテクノロジー(株) :自動運転実証実験の実施と高精度3次元地図の作成等
・(株)ティアフォー(※)  :自動運転に係る技術提供
・損害保険ジャパン(株)(※):リスクアセスメントの実施と自動運転専用保険の提供
・岡谷鋼機(株)(※)    :実証実験の支援
・(株)マップフォー(※)  :システム開発とオペレーター
  (※)印は、アイサンテクノロジーの外注・委託先として参画

◆参考情報
愛知県ホームページ
愛・地球博記念公園において自動運転実証実験を実施します
~自動運転がもたらす新たな時間・空間の体験~
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/sangyoshinko/2020-morikoro-jidouunten.html

ニュースリリースサイト(AISAN):https://www.aisantec.co.jp/ir/information/2021/02/post-32.html

TechShare, 協働ロボットDOBOT CR3, CR10国内販売開始

TechShare(株)は、、国内正規代理店としてDOBOT社の6軸ロボットアームDOBOT CR3及びCR10の国内販売を2021年2月1日付で開始した。

この度、TechShareが販売代理店として販売を開始するDOBOT CR3及びCR10は、昨年DOBOT社がリリースした5kg可搬の6軸ロボットアームDOBOT CR5に続くシリーズ製品の協働ロボット。
DOBOT CR3、CR5、CR10は、安全柵がなくても利用できる協働ロボットに分類される製品で、衝突検知・安全停止機能などの安全対策が実装されている製品である。今回のCR3、CR10の販売開始により、DOBOT社の協働ロボットDOBOT CRシリーズは、協働ロボットが最も利用される3kg~10kgのペイロードをカバーし、その用途が大幅に広がる。また、DOBOT社では、更に16kg可搬のDOBOT CR16の追加リリースを計画しており、最終的に3kg~16kgまでのペイロードの作業をカバーする協働ロボットのシリーズ製品となる予定という。

DOBOT CRシリーズの国内販売価格はオープン価格で、TechShareでは、2021年3月末までのリリース特別キャンぺーンとして、各ロボットアームの基本セットを下記の特別価格で販売するとのこと。

<販売製品>
製品名   リリース特別価格(税抜)
1. DOBOT CR3 ¥1,680,000-
2. DOBOT CR5 ¥1,980,000-
3. DOBOT CR10 ¥2,780,000-

DOBOT製品ページ:https://techshare.co.jp/product/dobot

ブレインラボ、「Cirq®ロボットアームシステム」販売開始

ブレインラボ(株)は、、脳神経外科手術用ナビゲーションシステムの追加機能として導入可能なエコシステムコンセプトの手術支援ロボットアーム「Cirq®ロボットアームシステム」の販売を2021年2月1日より開始した。

 Cirq®ロボットアームシステム(サーク ロボットアームシステム)(以下、Cirq)は、ブレインラボ社(ドイツ、ミュンヘン)脳神経外科手術用ナビゲーションシステムのアドオンシステムとして機能する、エコシステムコンセプトの光学式手術支援ロボットアームで、脳神経外科、脊椎外科領域をサポートする。
 脳神経外科ナビゲーションシステムは、手術中の位置情報をミリ単位の精度で3D表示する手術支援コンピューターシステムで、主要な医療機関において、脳神経外科、脊椎外科、耳鼻咽喉科領域で安全な手術を行うための医療機器として導入されている。
 Cirqは、20年以上にわたる研究を重ねたナビゲーションシステムの実績と位置精度を継承するロボットアームシステムとして開発され、2021年1月に日本国内で薬事承認を取得したとのこと。

【Cirqの特長】
・人の腕、手、指に近い可動性を有するモジュールを組み合わせたロボットアームシステム
・電磁ホールドとタッチセンサ機能を有する手動式7DoFロボットアーム
・先端部アライメントモジュールの4DoFキネマティック可動による、ファインチューニング
・先端器具を付け替えることでクラニアルセットアップ、スパインセットアップの双方に対応
・手術台のサイドレールに取り付けるゼロフットプリントデバイス
・手動操作とロボティック制御のモジュールを組み合わせ、可動の全てをロボットに依存しないコンセプト
・確立されたナビゲーション手術手技を踏襲し、ロボットセットアップ時間を多く必要としないワークフロー

【製品概要】
一般的名称   : 脳神経外科手術用ナビゲーションユニット
販売名     : Curveナビゲーションシステム (Cirqロボットアームシステム)
医療機器承認番号: 22400BZX00153000

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000073157.html

コグネックス、In-Sight画像処理システム「In-Sight® 3D-L4000」発表

Cognex Corporationは(以下、コグネックス)は、組み込み型画像処理システム「In-Sight® 3D-L4000」を発表する。
三次元レーザー変位センサが組み込まれた初のスマートカメラとなるIn-Sight® 3D-L4000は、自動化された生産ライン上で行われるさまざまな検査を、迅速、正確、かつ費用対効果の高い方法で実施するという。

In-Sight® 3D-L4000は、特許取得済みのスペックルが生じない青色レーザー光源装置と多様な真の三次元画像処理ツールを組み合わせただけでなく、In-Sightスプレッドシートの柔軟性を持ち合わせた製品。このオールインワンのソリューションにより、インライン検査、ガイダンス、および測定の際に、これまでに実現できなかった高品質の三次元画像を素早く取得、処理することが可能。
三次元画像に処理したパーツに画像処理ツールを直接適用できるため、In-Sight® 3D-L4000は従来の画像処理システムよりも精度が高く、検査の幅も広がる。さらに、検査は三次元で行われるため、画像処理ツールが実際の検査でどのように機能するかを確認することができる。
In-Sight® 3D-L4000には平面や高さの測定など、従来の三次元測定ツールで求められていたすべてのツールが搭載されている。さらに設計にも工夫が施され、三次元検査に対応できる画像処理ツールを豊富に搭載する包括的な製品である。
In-Sightスプレッドシートのインタフェースは直感的であるため、素早く簡単に三次元検査を実行できる。プログラミングや外部処理は不要。アプリケーション開発が簡素になり、入出力および通信の機能セットをその場で円滑に組み込むことができる。また、二次元と三次元の画像処理を同時に行えるため、現場への展開スピードも向上する。
In-Sight® 3D-L4000は視野(FOV)が異なる3モデルがラインナップされており、出荷時にキャリブレーション済み。食品・飲料、消費者向け製品、梱包、自動車、医療機器、および家電製品などさまざまな業界に理想的だとしている。

ニュースリリースサイト:https://kyodonewsprwire.jp/press/release/202101280317

光ファイバセンサの国際規格とモニタリングシステムのガイドライン(1)

東京大学
新領域創成科学研究科
教授  村山 英晶

1.はじめに

遠隔計測、分布・多点計測や耐電磁ノイズ性、耐久性といった光ファイバセンサの特長を活かした社会基盤・建築、資源・エネルギー開発、輸送機器、農業・水産業への適用・応用が進められている。例えば、シェールガスやオイルサンドなど非在来型資源の難易度の高い開発では、光ファイバに沿って分布的・連続的に温度を遠隔計測することができるDTS (distributed temperature sensing) が油井の状態監視に用いられ、資源抽出の最適化に役立てられている1)。また、船舶の構造健全性をひずみや加速度から監視・評価するための船体構造モニタリング (hull monitoring system) では、おもに長期計測やキャリブレーションの観点から、FBG (fiber Bragg grating) と呼ばれる光学デバイスから構成される光ファイバひずみゲージや加速度センサが一般的に使用されるようになってきた2)
近年、光ファイバセンサの普及が進む中で、質あるいは量のうえで大規模なシステムを開発するインテグレーターとの連携によりビジネスチャンスを狙うセンサ企業、様々な開発元のセンサを組み合わせて付加価値を高めたいシステムインテグレーターが、「標準」や「規格」に関心を持ち始めている(本稿では標準と規格は同義の用語として用いている)3)。なかでも、IEC (International Electrotechnical Commission) で光ファイバセンサに関する国際規格の制定が活発に進められている。
本稿では、IEC規格を中心に光ファイバセンサの国際規格の動向とその基盤となっている標準・規格について紹介する。また著者が関わる海上輸送機器(船舶)の構造モニタリングについて、国内外の動向と今後の展望について述べる。

2.光ファイバセンサの国際規格

光ファイバセンサの国際標準化はIEC TC86の下にあるSC86C、さらにその中にあるWG2において審議され、規格が作成・開発される。ここでTCとはTechnical Committeeで、TC86はファイバオプティクスを委員会名としてもち、おもに光ファイバ・ケーブル、光コネクタや通信装置とともに用いられる光ファイバシステム、モジュール、デバイスに関する標準を整備することを目的とする専門委員会である4)。またSCはSub Committee、WGはWorking Groupで、それぞれ小委員会、作業部会を表している。TC86/SC 86C/WG2は、光ファイバセンサに関係する用語、性能、インターフェース特性、試験方法、信頼性などに関する標準化を担当している。現在(2021年1月時点)、16か国から著者を含む68名のMemberが登録されている。ConvenorはドイツのWerner Daum氏が務めている。
現在まで、総則のIEC 61757:2018 Fibre optic sensors – Generic specification、FBGを用いたひずみ計測についての規格IEC 61757-1-1:2020 Fibre optic sensors – Part 1-1: Strain measurement – Strain sensors based on fibre Bragg gratings、ラマン散乱光やブリルアン散乱光を用いた温度の分布計測、すなわちDTSについての規格IEC 61757-2-2:2016 Fibre optic sensors – Temperature measurement – Distributed sensing、ファラデー効果を利用した光ファイバ電流計測に関する規格IEC 61757-4-3:2020 Fibre optic sensors – Part 4-3: Electric current measurement – Polarimetric methodの4つの規格が発行されている。規格の番号には、光ファイバセンサに関する規格として61757が、次に計測量を示す数字、計測技術を示す数字が付け加えられている。表1に光ファイバセンサのIEC規格の体系を示す。実業での利用が進んでいるDTSとFBGを用いたひずみ計測について規格が発行され、電流計測が続いた。現在、進展度合いはそれぞれ異なるが、FBGを用いた温度計測と傾斜計測、DSS (distributed strain sensing)、DAS (distributed acoustic sensing) およびDSV (distributed vibration sensing)に関する規格の作成が進められている。DSSはブリルアン散乱光やレーリー散乱光を用いたひずみの分布計測が対象で、パイプラインやケーブル、盛土のモニタリングなどに利用されている。またDASあるいはDSVは光ファイバに発生する微小な振動外乱を分布的・連続的に計測できるため、石油・ガス産業やセキュリティ、地震観測などの分野で近年の発展と注目が著しい技術である。

表1 光ファイバセンサのIEC規格の概要
IEC 61757 Fibre optic sensors – Generic specification
横軸:計測技術 (T)
縦軸:計測量 (M)
IEC 61757-M-1
Fibre Bragg grating
IEC 61757-M-2
Distributed sensing
IEC 61757-M-3
Faraday effect
IEC-61757-M-T
Strain measurement
ひずみ
IEC 61757-1-1:2020 Strain measurement – Strain sensors based on fibre Bragg gratings DSS    
Temperature measurement
温度
Temperature sensors based on FBG IEC 61757-2-2:2016 Temperature measurement – Distributed sensing    
Acoustic sensing
音響
  DAS/DVS    
Electric current measurement
電流
    IEC 61757-4-3:2020 Fibre optic sensors – Part 4-3: Electric current measurement – Polarimetric method  
Tilt measurement
傾斜
Tilt sensors based on FBG      

TC86/SC 86C/WG2では、新規にIEC規格を作成するプロジェクトを立ち上げる際、PL候補が規格の対象、技術、市場などについてプレゼンする以外に、内容のあるドラフトの準備が求められる。ドラフト作成にあたっては、これまでドイツVDI/VDEの規格、石油・ガス産業における光ファイバの利活用を促進する目的をもつ国際的な産業ジョイント・フォーラムであるSEAFOM™の文書、日本の光産業技術振興協会規格 (OITDA規格) などが参照されてきた。
標準化を「基本規格」、「製品規格」、「試験方法規格」、「プロセス規格」という観点で分けた場合3,5)、現状の光ファイバセンサに関するIEC規格は「基本規格」、あるいは「試験方法規格」と捉えることができる。前者は製造者とユーザー間、あるいは研究者・技術者間での正確なコミュニケーションを実現するため、用語、単位の統一を図ることをおもな目的としており、総則のIEC 61757がその役目を担っている。その他は試験方法規格であり、製品やシステムの性能・特性を正確に評価できる信頼性・汎用性の高い試験方法が示されている。
一般的な電磁気的な原理で作動するセンサとは異なる性能・特性を有する光ファイバセンサでは、それらを示す特徴的な専門用語が用いられ、またそれらを評価するための手法も独特のものとなり得る。例えばDTSのような分布計測において、光ファイバに沿って計測量を分離同定できる2点間の最小距離を空間分解能 (spatial resolution) は、最も重要かつ特徴的な性能指標と言えるが、用語、定義、評価手法がIEC規格によって標準化されたことは画期的であったといってよい。
計測システムをモジュール化された部品で構築することができるよう部品の互換性を高めたり、インターフェースを標準化したりすることは製品規格になる。また計測システムと他のシステムとのインターフェースやデータ形式を標準化することは、大規模なシステムを開発するインテグレーターにとって関心の高いものであろう。ただし、光ファイバセンサは高度に標準化された光ファイバ通信技術にもとづいて構築されるため、またシステムの構成要素として組み込まれる場合は、それぞれのシステムの仕様に合わせる必要があるため、今のところ光ファイバセンサのIEC規格で製品規格に相当するプロジェクトは議論されていない。製品開発に大きな影響を及ぼす可能性があるため、センサメーカーは動向をフォローしておく必要があるだろう。
具体的に光ファイバセンサを利用する場合、どのような製品を選べばよいのか、またどのようにセンサを設置・較正すればよいのか、といった問題は、徐々に普及が進み、一般的になってきたとは言え、ユーザーを悩ませることが多いと考える。このようなとき、製品製造やシステム構築・運用のための方法や管理などのプロセスを標準化するプロセス規格が心強い味方となってくれるだろう。
著者の知る限りでは、ASTM (American Society for Testing and Materials) Internationalが分布型光ファイバセンサを用いたトンネル等の工事の際に発生し得る地盤変動のモニタリングの実施方法について6)、SAE (Society of Automobile Engineers) Internationalが光ファイバセンサを航空機に使用する際のセンサシステムの選定ガイドラインを発行している7)。製品規格同様、プロセス規格についてもSC 86C/WG2でこれまで具体的な標準化活動は行われていないが、今後、様々な分野での正しい利用を支援するうえで、このようなプロセス規格は重要となると考える。例えば、橋梁の維持管理を目的としたモニタリングに光ファイバセンサを適用する場合、センサの設置位置、施工法、較正法、データ形式・処理・解析・評価などに対して標準化された手法が確立されると、互換性・共通化による初期費用・維持費の低コスト化や利便性の向上、体系的な知見の蓄積による利用価値の向上などが期待できるだろう。
著者自身は、海上輸送、海洋における再生可能エネルギー・資源開発における光ファイバセンサの適用拡大に資する標準化やガイドライン作成に関心を持っている。次章では、船舶の構造の健全性を監視する船体構造モニタリングについて述べ、光ファイバセンサおよびその標準化との関連について検討する。

次回に続く-

参考文献

1) T. Yamate, G. Fujisawa, Toru Ikegayami, Optical Sensors for the Exploration of Oil and Gas, Journal of Lightwase Technology, 35(16), 3538-3545, 2017.

2) 藤野陽三(監)、構造物のモニタリング技術、コロナ社、2020.

3) 村山英晶、特定非営利活動法人・光防災センシング振興協会の取り組み:標準化・啓発・開発、計測と制御、51(3)、293-298、2012.

4) 松井隆、荒木則幸、泉田史、IEC TC86 (ファイバオプティクス) における国際標準化活動状況、NTT技術ジャーナル、28(9)、56-59、2016.

5) 藤野仁三、江藤学、標準化ビジネス、白桃書房、2009.

6) ASTM F3079-14, Standard Practice for Use of Distributed Optical Fiber Sensing Systems for Monitoring the Impact of Ground Movements During Tunnel Utility Construction on Existing Underground Utilities, 2014.

7) AIR6258, Fiber Optic Sensors for Aerospace Applications, SAE International, 2015.



【著者紹介】
村山 英晶(むらやま ひであき)
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 教授

■略歴
1996年 3月 東京大学工学部船舶海洋工学科卒業
1999年 1月~2001年3月日本学術振興会特別研究員
2001年 3月 特殊法人宇宙開発事業団宇宙開発特別研究員
2003年 5月 東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻講師
2006年10月 同助教授
2007年 4月 同准教授
2008年 4月 東京大学 大学院工学系研究科システム創成学専攻准教授
2013年 7月 – 現在 東京大学 大学院工学系研究科附属レジリエンス工学研究センター 協力教員
2015年 4月~2016年4月スウェーデン王立工科大学 School of Engineering Sciences 客員研究員を経て
2017年 6月より現職

FBGセンサとその応用(1)

長野計器(株)
生井 貴宏

はじめに

ここでは、光ファイバセンサの中でも多点型の代表格とも言えるFBGセンサの適用事例を中心に紹介する。先ずは、土木構造物のモニタリング分野への適用である。道路橋梁に対して義務化されている5年に一度の全数点検は、1巡目を終え既に2巡目に入っているが、点検の効率化や定量化などの課題が明らかになる中で、2019年に道路橋定期点検要領が改訂され、支援のための新技術導入の余地が広げられた。コスト等での課題はあるものの、FBGセンサを始めとする光ファイバセンサが橋梁点検に活用される環境が、急速に整ってきたと感じている。

次に紹介するのは、船舶におけるモニタリング分野への適用事例である。造船、海運などの海事産業にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が急速に押し寄せており、中でも自動航行船については、主要各国で激しい開発競争が繰り広げられている。センサやモニタリング技術は、DXの要となる技術であろうが、中でも船体構造の応答をモニタリングするシステムにおいては、FBGセンサが有力な候補になると考えている。

1.FBGセンサとは

光ファイバセンサには、異なる原理に基づく幾つかの方式が存在し、それぞれに適した用途は異なる。光ファイバでひずみを計測するという手法で言えば、光ファイバに沿って連続した一定区間毎のひずみや温度の分布を計測する分布型と、局所的なひずみや温度を計測するポイント型に分類でき、分布型で代表的なものはBOTDR方式であり、ポイント型で代表的なものは光ファイバ内にグレーティング(回折格子)を有するFBG(Fiber Bragg Grating)方式である。FBGセンサは、光ファイバの導波路であるコアの一部にグレーティング(回折格子)を製作したものであり、図1に示すように、その反射光はグレーティングピッチΛ(格子間隔)と屈折率nに比例する。屈折率と格子間隔は光ファイバの温度とひずみによって変化するため、温度センサやひずみセンサとして用いることができる

図1 FBGセンサの構造と反射光の波長
図2 FBGセンサの波長変化

2.変換機構

図3 FBG傾斜センサの構造

測定対象物の表面にそのままの形で接着するなどし、ひずみセンサとして使うことも多々あるが、ひずみ以外の物理量センサとして用いることもできる。ここでは、傾斜センサ、加速度センサ、変位センサの構造例を紹介する。 図3は、傾斜センサの構造例である。原理は単純で、錘が金属製の板バネと光ファイバによって支持されており、傾斜による錘の変位がFBGセンサに伸縮を与えるものである。
図4は、加速度センサの構造例である。原理は傾斜センサと同一であり、加速度による錘の変位がFBGセンサに伸縮を加えるものである。
図5は変位センサの変換機構の例である。プーリ―に巻かれたワイヤーの先端が変位するとプーリ―が回転し、中央のボビンが鉛直方向に変位する機構を持つもので、ボビンの先端に連結した板バネ上のFBGセンサのひずみを変化させるものである。

図4 FBG加速度センサの構造例
図5 FBG変位センサの構造例

このようにFBGセンサに変換機構を設けることで構造物のモニタリングの指標となる様々な物理量を計測することができる。さらにこのような機構に組み込んでおけば構造物への取り付けも容易である。

3.FBGセンサの適合性

FBGセンサのインフラ構造物モニタリングに対する適合性を考えてみる。ここで、代表的なFBGセンサの特徴を以下にまとめる。
(1) 光ファイバなので非常に軽量であり、センサが長寿命。
(2) 電力を消費しないのでセンサ自体に給電不要。
(3) 電磁波など誘導ノイズの影響を受けにくく強電界下でも使用可能。
(4) 数km~の伝送距離が可能で、屋外にも敷設可能。
(5) 落雷の影響を受けない。
(6) 1本の光ファイバに複数のセンサを接続できる。
(7) 耐環境性能、安定性に優れ、経時変化が少ない。

写真1 FBGセンサの落雷試験
図6 落雷時の読み取り値(異常なし)

これらはインフラ構造物に対し、中長期的に継続してモニタリングを行う用途に適した特徴と言える。

4.土木構造物のモニタリングへの適用

写真2 モニタリング構造物

4.1 構造物の微小変位をモニタリングした事例

写真2はバイパス道路建設中の様子(2010年3月撮影)である。元々扇状地のところにコンクリート製の凾渠(写真中①、②)を設置したところ、地盤沈下が生じ、写真手前側に僅かずつ傾いていくことが判り工事が中断した。工事の再開の是非を判断できるまで凾渠の変位を連続的にモニタリングすることとなり、長期にわたり連続してモニタリングすること、屋外設置ゆえに落雷による誘導サージからセンサを保護する必要があったことなどからFBG傾斜センサ4台とFBG変位センサ2台から構成されるシステムを選択した。

図7 システム構成
図8 変位センサ
図9 傾斜センサ

図7はシステム構成図である。凾渠①、②は上から見た図である。地盤沈下によって生じた2つの凾渠のすきま長の変化をモニタリングする為に両者の間に変位センサを2台設置した。また、地盤沈下に伴う凾渠の傾きを監視する為に傾斜センサを4台設置した。各センサは光接続箱の中で光ファイバの幹線ケーブルに融着接続している。光ファイバセンサの読み取り装置とデータ保存用のPCは計測小屋に設置し、定期的にディスクに保存された連続データを確認した。

表1 センサの仕様
変位センサ 傾斜センサ
外観
測定レンジ 0 ~ 50 mm ±3°
精度 ±1%R.O ±3%R.O
最大損失 3dB以下 3dB以下
波長レンジ ±2nm ±2nm
防水性能 IP65相当 IP65相当
質量 1.5kg 1.0kg
図10 傾斜角の推移 (約5か月)
図11 変位の推移 (約5か月)

図10は工事再開が決定されるまでの5か月間連続して測定した傾斜角をプロットしたものである。図11は同じ期間の変位をプロットしたものである。5か月後には凾渠の変位の進行がほぼ収束したと判断され、工事の再開が決定した。この例のように、屋外のインフラ構造物でセンサを常時設置し長期間モニタリングする用途において、光ファイバセンサの利用価値は高い。

写真3 モニタリング構造物(工事再開後)

次回に続く-



【著者紹介】
生井 貴宏(いくい たかひろ)
長野計器株式会社 開発センター FBG開発課

■略歴
2004年3月 芝浦工業大学大学院修士課程 修了
2004年4月 長野計器株式会社 入社

ファブリ・ペロー干渉計を用いた極限環境光ファイバセンサ(1)

長野計器(株)
山手 勉
(藤田 圭一、小川 顕)

1.初めに

光ファイバセンサはセンサ部にエレクトロニクスが不要なため、高温動作、耐雷性、耐電磁ノイズ性に優れ、電力供給が不要なためセンサ部は完全防爆である。さらに分布計測が可能であり、1次元~3次元+時間を組み合わせた4D計測や、温度、圧力、振動、スペクトル等の複数の物理量の測定ができる。また、細径、軽量、小型という光ファイバの特性を生かして、厳しい機械的衝撃・振動下での光計測器も実現でき、耐熱性が向上された光学部品と組み合わせることで高温動作も可能である。このような特徴を活かして、高温・高圧等の極限環境下での応用が広がっている[1], [2]
光ファイバセンサの計測形態は、大きく分けてExtrinsic 型とIntrinsic型に分けられる[3]
Extrinsic型は計測部と変換機の信号を中継する手段として光ファイバを用いている。ファブリ・ペロー干渉計は主にExtrinsic型のポイントセンサに用いられている。Intrinsic型は光ファイバ自身を計測部とするタイプで連続分布計測や準連続分布計測(マルチポイントセンサ)が可能である。ファブリ・ペロー干渉計は、鋭いスペクトルピークを利用した高感度加速度センサに応用されている。

表1 光ファイバセンサの計測形態と概略図

ここでは、ファブリ・ペロー干渉計を用いたセンシングシステムを解説した後、極限環境計測への光ファイバセンサへの応用として高温高圧圧力温度センサ(Extrinsic型)と高感度加速度センサ(Intrinsic型)を紹介する。

2.ファブリ・ペロー干渉計を用いたセンシングシステム

ファブリ・ペロー干渉計は1899年にフランスの物理学者のシャルル・ファブリとアルフレッド・ペローにより発表された[4]。ファブリ ペロー干渉計は,微小化が容易であり, MEMS 技術との相性も良いことから、Extrinsic型の光ファイバセンサ(圧力・温度・歪・加速度等)や小型分光デバイスとして応用されている。特に圧力センサへの応用ではセンササイズや圧力レンジの設計自由度が高いので、最適な方法である[5]

ファブリ・ペロー干渉計は、2枚のミラーを向かい合わせた構造となっている(図1)。手前側の反射面で反射された光と、奥の反射面で反射された光が重ね合わされると、その光路長差によって生じる位相差により干渉が生じる。干渉によって得られる反射光の強度は二つの反射面間の光路長D(=距離d×屈折率n)に応じて以下の式で表される[6]

図1 ファブリ・ペロー干渉計を用いた測定の模式図。分光器で得られる干渉波形から、
センサヘッドのミラー間の距離を測定できる。
(反射率が10%程度までの場合の近似)

λは光の波長である。

ここで、測定対象の物理量によって屈折率nまたは距離dが変化する構造を作ると、反射光強度が式(1)に従って変化するので、ファブリ・ペロー干渉計をセンサとして使用することができる。

しかしながら、干渉を用いたセンサは一般的に、反射光強度が位相2π毎に周期的に同じ値を取ってしまうという欠点がある。このため変位量の大きい測定や、圧力等の絶対値測定に適用するには工夫が必要である。

対策の一つとして、白色干渉(低コヒーレンス干渉)が用いられている[7]。これは、特定の(狭帯域な)波長の光を用いる通常の干渉計と異なり、広帯域な(白色)光を用いて測定を行う方式である。一般に、干渉計の光路長差が大きくなると干渉が生じ難くなるが、その限界の目安となる距離をコヒーレンス長(可干渉長)という。狭帯域な光であるほどコヒーレンス長は長くなり、レーザー光はその代表的な例である。コヒーレンス長Lと線幅(波長帯域) Δλ、中心波長λの関係を式(2)に示す[8]

これを逆手に取って、コヒーレンス長が短い広帯域な白色光を用いることで、干渉が生じる領域を制限し、絶対値を知ることができる。

白色干渉の出力を読み取る方法として、(1)波長領域で読み取る方法と、(2)距離の領域で読み取る方法がある。

(1)波長領域
分光器や波長可変光源等を用いて干渉光のスペクトルを読み取る。これは、式(1)の反射光強度を特定の波長λではなく、広い波長帯に亘ってスペクトルとして測定することに相当する。これにより、式(1)の三角関数に含まれるパラメータとしてDを推定することが可能となる。この方式で得られる波形の例を図2に示す。

図2 波長領域の測定で得られる白色干渉波形(橙線)の例。三角関数状の波形となる。狭線幅なレーザーで測定した場合、図中の青線のようにある1波長のみの強度しかわからないため、キャビティ長の絶対値を知ることができない。

(2)距離領域
光路長差を掃引できる干渉計を測定系に用いる(図3)[9]。この場合、測定用の干渉計とセンサの干渉計の光路長が一致する周辺で干渉が生じる。この方式にコヒーレンス長が長いレーザー光を用いると、レーザーの波長の周期に一致する干渉が広い範囲に亘って生じてしまう。白色干渉ではコヒーレンス長が短いため、センサの光路長差の差が小さい領域でのみ干渉が生じ、その最大となる点を干渉計の光路長差として特定することができる(図3)。

図3 距離領域の測定(上図)で得られる白色干渉波形(図中橙線、中心波長λ=600nm,線幅Δλ=300nm)とレーザーによる干渉波形(図中青線、λ=600nm,Δλ=0.3nm)の例。白色干渉では、測定用の干渉計の光路長差dとセンサの干渉計の光路長差d’が小さい領域の周辺(この例では20um)でのみ干渉が生じ、絶対値が推定できる。

(1)波長領域と(2)距離領域での測定結果は相互に変換可能であり、アプリケーションに応じて素子のコストや信号処理の容易さ等によって適した方式を選択する。
白色干渉は本稿で解説するファブリ・ペロー干渉計以外の干渉を用いた測定にも広く適用されており、代表的な応用には医療分野の光干渉断層撮影(OCT)[10]や3次元測定器[9]などがある。
次章では、このファブリ・ペロー干渉計を用いた極限環境センシングへの適用事例を紹介する。

次回に続く-

参考文献

1)”耐環境光計測技術”、第59回光波センシング技術研究会講演論文集 (応用物理学会・光波センシング技術研究会、2017)

2)Yamate, Tsutomu, Go Fujisawa, and Toru Ikegami. “Optical sensors for the exploration of oil and gas.” Journal of Lightwave Technology 35, no. 16 (2017): 3538-3545.

3)光ファイバセンサ入門 (光防災センシング振興協会, 2012)

4)Perot, A; Fabry, C (1899). “On the Application of Interference Phenomena to the Solution of Various Problems of Spectroscopy and Metrology”. Astrophysical Journal 9.

5)Éric Pinet, “Pressure measurement with fiber-optic sensors: commercial technologies and applications”, Proceedings Volume 7753, 21st International Conference on Optical Fiber Sensors; 775304 (2011)

6)Santos, J. L., A. P. Leite, and David A. Jackson. “Optical fiber sensing with a low-finesse Fabry–Perot cavity.” Applied Optics 31.34 (1992): 7361-7366.

7)Wyant, James C. “White light interferometry.” Holography: A Tribute to Yuri Denisyuk and Emmett Leith. Vol. 4737. International Society for Optics and Photonics, 2002.

8)Born, Max, and Emil Wolf. Principles of optics: electromagnetic theory of propagation, interference and diffraction of light. Elsevier, 2013.

9)Deck, Leslie, and Peter De Groot. “High-speed noncontact profiler based on scanning white-light interferometry.” Applied optics 33.31 (1994): 7334-7338.

10)Huang, David, et al. “Optical coherence tomography.” science 254.5035 (1991): 1178-1181.



【著者紹介】
山手 勉(やまて つとむ)
長野計器株式会社 フェロー

■略歴
1984年 シュルンベルジェ株式会社入社
     石油・ガス探査装置の開発に従事

2017年 長野計器株式会社入社、現在に至る
     極限環境計測センサ開発を主導
     光ファイバセンシング振興協会理事
     応用物理学会光波センシング技術研究会常任幹事