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ST、G3-PLC Hybrid電力線および無線通信規格の新規認証取得を発表

STマイクロエレクトロニクスは、電力線通信チップセット「ST8500/STLD1」がデュアルPLC(プログラマブル電力線通信) & RF通信規格であるG3-PLC Hybridの認証を取得したことを発表した。
同製品には、PLCモデム・システム・オン・チップ(SoC)「ST8500」、デュアル・ライン・ドライバ「STLD1」、およびSub-GHz無線トランシーバ「S2-LP」が集積されている。

G3-PLC Hybridは、スマート・グリッドやスマート・シティ、産業機器、およびIoT機器などに最適な通信規格。ネットワーク状態に応じて、最適な無線または電力線チャネルを自動的かつ動的に選択することができるため、通信範囲の拡大や、信頼性と拡張性の向上に貢献する。また、コスト効率に優れたシステム動作や、新たなアプリケーションも実現可能であるという。

STは、2020年に開催されたG3-PLCアライアンスの相互運用性プラグフェストにおいて、世界初のG3-PLC Hybrid対応ソリューションの1つであるST8500/STLD1のデモを実施した。同製品は、Hybridプロファイル・テストが組み込まれた最新のG3-PLC認証スキーム(2021年3月発表)を完了した初の製品とのこと。

今回認証を受けたST8500/STLD1には、マルチプロトコルのPLCモデムSoC「ST8500」、デュアル・ライン・ドライバ「STLD1」、および超低消費電力Sub-GHz無線トランシーバ「S2-LP」が集積されています。ST8500/STLD1では、柔軟なプログラミングができるため、CENELEC(ヨーロッパ)やFCC(米国)など世界各地域の周波数帯において、幅広い電力線プロトコル・スタックをソフトウェア定義で実装することができる。

ST8500は、スマート・メータ、スマート・インダストリ、およびインフラ向けに幅広く使用されているSoCプラットフォームである。Hybridターンキー・ソリューションは、すでにスマート・グリッド市場における主要ステークホルダーにより採用されている。また、STのハードウェアおよびファームウェア・ソリューションは、G3-PLCアライアンスの公式RF認定テスト機器として利用されているという。

ST8500は、QFN56パッケージ(7 x 7 x 1mm)で提供され、STLD1およびS2-LPは、それぞれQFN24パッケージ(4 x 4 x 1mm)で提供される。いずれの製品も現在量産中。価格およびサンプル提供については、STのセールス・オフィスまたは販売代理店までお問い合わせのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001161.000001337.html

量子磁気計測センサ応用ME機器の研究開発と実用化(2)

元 横河電機(株) 取締役中央研究所長
大手計測センサ技術事務所
大手 明

2.Appendix:量子磁気計測センサ応用ME機器の実用化の展望(私見)

2.1 脳磁計(MEG)

脳磁計(MEG)は超電導量子干渉素子(SQUID)を用いたものが商品化されたが、液体ヘリウム冷却を必要とし、有用性もあまり確認されていない。新しいMEGは室温で動作し、取扱いが容易で、多くの医療関係の研究者に使用してもらい、診断等に活用してもらうことが必要である。多チャンネルの最高性能の光ポンピング原子磁気センサ[A1]が期待される。

2.2 磁気共鳴イメージング装置(MRI)

本文では0.15Tの小型の常電導磁石で十分な画質と速度の試作品を報告したが、現在実用化されているのは超電導磁石を用いた製品で、装置が大型で設置も大変である。信号検出感度が向上すれば、低磁場でも十分な画質が得られる。光ポンピング原子磁気センサ[A1]、ダイヤモンドNVセンター[A2]、などが提案されている。MRIは既に確立された市場もあり、更に低磁場で小型の製品が開発されれば、世界中に市場が広がる可能性がある。正に新しい産業に育つことになる。企業でも適切な磁場を設定して汎用のMRI装置を開発することは可能である。

2.3 心磁計(MCG)

最近MCGの必要性が報告されている。(筑波大学、日立製作所2019)[A3] 。室温動作のMR素子を用いたMCGも発表されている。2015年:東北大学-コニカミノルタ[A4]、2019年:TDK-東京医科歯科大学大学院)[A5]。これらの中でもMCGの重要性が記載されている。
MCGは日本ではSQUIDを用いたものが2台設置されているに過ぎない(国⽴循環器病研究センター病院、筑波大学附属病院)。検査に使用され、保険適用されているが利用は限られている。
筆者は不整脈で薬による治療を行っているが、薬の変更が必要となり、専門医に相談した。カテーテルアブレーション手術を勧められたが、危険を伴うので、薬の変更で対処してもらっている。不整脈の発生部位と状況を正しく把握できれば、最適な薬の選択や安全な手術が可能になるものと考える。
早急にマルチチャンネル化した高性能磁気センサのMCGを開発し、全国の不整脈専門医に普及させる必要がある。光ポンピング原子磁気センサ[A1]、MR素子[A4] [A5]などの常温動作の機器が候補になる。

参考資料

[A1] 小林哲生:超高感度な光学的磁気センサをコア技術として新たなニューロイメージングへ挑む、京都大学電気関係教室技術情報雑誌CUE, NO.39 MARCH, 3-8, 2018
またはセンサイト6月号「量子磁気センサ」特集 2.医療分野への応用 京都大学 小林哲生先生(発刊予定)

[A2] ダイヤモンド量子磁気センサを用いたデスクトップサイズNMR装置の開発
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 渡邊幸志他 https://unit.aist.go.jp/esprit/image/panel/io2018/04io.pdf

[A3] ニュースリリース不整脈の発生部位を高い精度で特定~心磁図と心臓CT画像の合成技術を用いて~2019年8月1日、国立大学法人 筑波大学、株式会社日立製作所 https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2019/08/0801.html

[A4] ニュースリリース 室温で動作する高感度・高分解能の小型心磁計を開発~心疾患の治療・検査が革新的に変わる~
2015年7月23日 東北大学大学院工学研究科、東北大学大学院医学系研究科、コニカミノルタ株式会社、科学技術振興機構 https://www.konicaminolta.com/jp-ja/newsroom/2015/0723_02_01.html

[A5] TDK Developing Technologies 常温で微弱な⽣体磁場を⾼感度センシング 世界初、常温センサによる⼼臓の磁場分布の可視 化に成功 東京医科歯科大学大学院との共同研究(2016年)。
https://product.tdk.com/ja/techlibrary/developing/bio-sensor/index.html



【著者紹介】
大手 明 (おおて あきら)
大手計測センサ技術事務所
(元 横河電機(株) 取締役中央研究所長)

■略歴
1961東京大学工学部応用物理学科卒業(計測工学専修)、横河電機製作所(現横河電機株式会社)入社
工計研究部、研究開発部などにて
1961-76 主としてプロセス制御用計測器及び温度計測関係の研究開発に従事
差動容量式変位変換器/磁気式変位伝送器/アナログ式プロセス制御システム(I-Series)/トランジスタ温度センサ/NQR(四重極共鳴)標準温度計
1976- 研究開発部 室長・部長として研究開発の企画推進
超音波診断装置/NMRイメージング装置(MRI)/コヒーレント光通信用計測技術/高速電子計測技術
1990 電子デバイス本部長、計測制御機器用センサ及びICの開発、設計、生産を担当
1996 取締役中央研究所長、
1998 同社顧問兼横河総合研究所副社長
2003 横河電機技術開発本部技術コンサルタント。
現在 株式会社イーエス技研 監査役、技術顧問
  (大手計測センサ技術事務所)
(次世代センサ協議会元理事、海洋計測センサ部会元代表)

■受賞等
工学博士(1980年東京大学)、IEEE Life Fellow、計測自動制御学会フェロー
1975年 科学技術庁 第1回研究功績者表彰 「NQR標準温度計」

光ポンピング原子磁気センサと次世代の脳機能計測(2)

京都大学
大学院工学研究科
小林 哲生

4.  小型OPMモジュールの開発とMEG計測

我々は、これまで多チャネルMEG計測に向けた小型OPMモジュールの開発を行ってきており、2012年に最初のOPMモジュールを報告した。その後、小型・高感度化を進め2015年に報告した10)第二世代のOPMモジュールを(図5)に示す。このOPMモジュールでは、底面積64cm2、高さ19cm程度の円筒型であり、内部にセンサ本体となるカリウムを封入した一辺2cmの立方体ガラスセルを有している。

図5 MEG計測用(上段)10)とMR信号計測用(下段)のOPMモジュールの内部構造と外観。
図6 視覚誘発脳磁界計測結果。(上段)OPMによる計測結果。(下段)全頭型SQUIDにより計測結果。

図6に、この小型OPMモジュールを用いた視覚誘発脳磁界(VEF)の計測例を示す。この例では、上部に示したチェッカーボードパターン用い、左右視野に分けてパターンリバーサル刺激を呈示した際の結果を示している。上段がOPM、下段が全頭型SQUID-MEGシステム(Neuromag社製)を用いたVEFである。両者は共通の応答と捉えていることが分かる。また、このOPMモジュールを用いて、自発律動の計測にも成功している10)。なお、小型OPMモジュールについては、実用化を目指した産学共同研究を現在も継続している。

5.  OPMを用いたULF-MRI

我々はOPMモジュールをセンサとし、前節で紹介したMEGなどの生体磁気信号の同時計測も可能なマルチモーダルな超低磁場MRIシステムの実現を目指して研究・開発を進めてきた。OPMのように低周波数帯域で超高感度な磁気センサを用いれば静磁場強度が1μT〜10mTでMRIを撮像可能な超低磁場MRIの実現も可能であり、形態と機能の同時計測可能な高次生体磁気イメージングシステムの実現へと繋がる基盤技術としてその開発・実用化に大きな期待が集まっている。
我々は、小型のOPMモジュールをMR信号の受信に用いる超低磁場MRIに関して、水冷型のpre-polarizedコイル、2次微分型の入力側コイルを備えたフラックストランスフォーマ、OPMモジュールを組み合わせて遠隔計測するシステムのプロトタイプを設計・試作し、合わせてこのMRIシステム用のパルスシーケンスの開発を行った。本マルチモダリティULF-MRIのプロトタイプでは、フラックストランスフォーマの入力コイルを2次微分型とすることによりS/Nを向上させ、さらに独自の水冷のプリポーラライズ磁場コイルを製作し、2016年にはラーモア周波数が5kHzという低周波数において初めてOPMによる磁気共鳴信号ならびにMRIの撮像に成功した11)。OPMをセンサとする超低磁場MRIは、装置の小型・低価格が図れるメリットがあることから、近所のクリニックなどへの普及が容易で、さらに検診車に搭載することも可能であり、その実用化によって各種疾患のスクリーニングや早期発見に寄与することが期待される。
さらに、我々はこのMRI撮像に用いたものと同一のOPMモジュールを用いた磁気粒子イメージング(MPI)に向けて、超常磁性酸化鉄ナノ粒子を対象とした微弱磁気信号の遠隔計測を試み、0.01μmolの磁気粒子(Resovist)からの磁気信号の検出にも成功した12)

6.  まとめと展望

我々は、上記のULF-MRIにより解剖画像だけではなく機能的MRI計測を行うことを目指している。そこで、神経活動の直接計測が期待されているスピンロック撮像法に着目した基礎実験を行なってきた13-15)。スピンロック撮像シーケンスはスピンロックとそれに引き続く撮像シーケンスであり、磁化が計測対象となる振動磁場と2次回転座標系において核磁気共鳴を起こし、MR信号強度が減衰することを利用している。この新たなfMRIの原理はULF-MRIにも適用可能であることから、OPMを共通のセンサとしたMEGとfMRIを融合した次世代の脳機能計測の実現が期待でき、多くの謎に包まれているヒトの高次脳機能のメカニズム解明と臨床応用に繋がるものである。
OPMは、その感度の高さから脳機能計測に留まらず磁気計測に関連する様々な分野にイノベーションやパラダイムシフトを起こす大きな可能性を有している。今後、OPMのさらなる高感度化・小型化・低価格化により、OPMをコア技術とする次世代の脳機能計測の実用化が早期に実現し、脳機能の謎の解明と医療分野への応用が進むことが期待される。

参考資料

(9)伊藤,西,小林, 日本生体磁気学会誌,Vol.31, No.1, pp.178-179 (2018)

(10)K. Kamada, T. Kobayashi, et al., JJAP, Vol.54, 026601 (2015)

(11)I. Hilschenz, T. Kobayashi, et al., J. of Magnetic Resonance, Vol.274, pp.89-94 (2017)

(12)T. Oida, T. Kobayashi, et al., Inter. Jour. on Magnetic Particle Imaging, Vol.5, No.1, Article ID 1906001, 7 pages (2019)

(13)H. Ueda, T. Kobayashi, et al., J. of Magnetic Resonance, Vol.295, pp.38-44 (2018)

(14)T. Sogabe, T. Kobayashi, et al., J. of Magnetic Resonance, 106849 (7 pages)(2020)

(15)Y. Ito, M. Ueno, T. Kobayashi, Scientific Reports, Vol.10, 5463 (2020)



【著者紹介】
小林 哲生(こばやし てつお)
京都大学大学院工学研究科
電気工学専攻 生体医工学講座 教授

■略歴
1984年 北海道大学大学院工学研究科 電子工学専攻 博士後期課程修了(工学博士)
1984年〜1992年 北海道科学大学講師・助教授
1987年〜1992年 University of Rochester, USA, Visiting Scholar
1992年〜2004年 北海道大学電子科学研究所講師・助教授
1996年〜1997年 Simon Fraser University, Canada, Visiting Associate Professor
2004年3月より現職

専門分野は、脳計測科学、電気電子工学、認知神経科学、ニューロイメージングなど。現在、国際複合医工学会副理事長,国際磁気共鳴医学会日本支部 (ISMRM-JPC) Past-Chair, 国際脳電磁図トポググラフィ学会 (ISBET) 理事,日本生体磁気学会理事・監事・第36回大会長、International Journal of Magnetic Particle ImagingのEditorなどを務めている。医用生体工学分野の国際賞James Zimmerman Prize (IFMBE, 2018年)などを受賞。

走査型SQUID顕微鏡の開発と地質試料への応用(2)

産業技術総合研究所
地質調査総合センター
小田 啓邦

3.国産の走査型SQUID顕微鏡の開発

ヴァンダービルト大学での成功により、SQUID顕微鏡による鉄マンガンクラストのサブミリメータ古地磁気層序による年代推定の道が開けたが、米国での実験には制約条件や問題も多かった。十分なマシンタイムを確保し、自由な発想で様々な実験を行うには、自ら装置を持つ必要があると考え、日本でSQUID顕微鏡を準備することとなった。金沢工業大学の河合淳教授が脳磁計用のSQUID素子を開発していることを知り、連絡を取って事情を話したところ、「やってみましょう」との返答をいただき、科研費申請に協力いただくことになった。科研費は、最初の申請から5年目の2013年に「SQUID顕微鏡による惑星古磁場の先端的研究の開拓」として採択された。

4.走査型SQUID顕微鏡の詳細と初期成果

図2 (a) SQUID顕微鏡本体の模式図、(b)SQUIDチップ、中央がSQUID素子、(c) SQUID顕微鏡システムの全体像(Oda et al., 2016 6)のFig.1d)。

SQUID顕微鏡本体の初期動作は、プロジェクト2年目の2014年に確認された6)。図2aが模式図になるが、真空断熱層の距離(リフトオフ)調整のために、中空構造のクライオスタットを用いた。液体ヘリウムリザーバの中央は中空構造になっており、マイクロメータに接続されたシャフトが貫通している。シャフトはフレクシャー機構を介して冷却用の銅ブロックに接続され、銅ブロックにサファイアロッドが取り付けられている。SQUIDチップ(図2b)はサファイアロッド先端に実装され、メタライズ配線を通して外部と電気接続されている。SQUIDは1mm角のSi基板上にNb系の薄膜技術で作製され、200μm角のワッシャタイプの検出コイルにより磁場の垂直成分を検出する。室温で試料に接触するサファイア窓は直径3mmφ、厚さは40μmである。リフトオフはサファイア窓が取付けられたベローズの伸縮で粗調整し、マイクロメータの回転で微調整する。液体ヘリウムリザーバ容量は約10Lで、1日約3Lの液体ヘリウムが蒸発する。SQUID 素子の動作ノイズは1.1pT/√Hz@1Hzであった。温度変化によるドリフト低減のために、低ドリフトFlux-Locked Loop(FLL; SQUID素子磁場読み取りのための電子回路)を開発し、14μV/℃を実現した。直線電流が作る磁場で計測されるリフトオフの最小値は約120μmで、このときセンサと試料表面の距離は約200μmである。
図2cはSQUID顕微鏡システムの全体像である7)。SQUID 顕微鏡本体(D)はPCパーマロイ2重磁気シールド(E)の中で上部アルミフレームに保持される。磁気シールドは外部磁場変動を1/100程度に低減する。試料測定部の残留磁場は3nT程度以下である。磁気シールドは下部アルミフレーム(B)で支えられ、アルミフレームにはXYZステージ駆動部が配置される。試料は長い非磁性アクリルパイプ先端に装着して駆動部と距離を離し、磁気ノイズ低減を図っている。XYZステージは専用ソフトウェアでPCから制御され、FLLのアナログ出力はADコンバータでデジタル化してPCに入力される。後に、液体ヘリウムリザーバ内部に挿入したレファレンスセンサにより、地磁気の日変化に起因する変動磁場や実験室周辺のノイズの除去を可能とした8)。開発されたSQUID顕微鏡を用いて、コバルトリッチクラストが確認されている北西太平洋の拓洋第5海山の薄片試料を分析した。この結果、成長速度3.4mm/百万年のほぼ一定な成長を示す年代値が得られ、ベリリウム同位体による成長速度の推定値(2.9mm/百万年)とも一致することが確認された9)

5.野島断層の加熱履歴

図3 (a) 野島断層の岩石薄片写真。黄色矢印は断層の運動方向を示す。(b) 磁気画像を重ね合わせたもの。赤(青)は上向き(下向き)磁場を示す。Fukuzawa et al. (2016) 9)のFig.6を一部改変。

鉄マンガンクラストに続き、東北大学との共同研究として、1995年1月の兵庫県南部地震で大きな変位が確認された淡路島の野島断層から薄片試料を作成し、SQUID顕微鏡で分析を行った10)。断層運動にともなって流動化した岩石が波打った構造を示すが(図3a)、1995年以前の断層活動によると推定されている。磁気画像(図3b)で、流動化した部分を中心に帯状に強い磁場が確認できる。これは、断層運動で加熱されて磁性鉱物が生成され、地球磁場中で冷却する際に強く磁化したと考えられる。

6.42億年前の地球磁場

さらに、米国ロチェスター大学との共同研究として、ジルコン粒子の分析により、42臆年前に地球磁場が存在した可能性を示した11)。西オーストラリアのジャックヒルズには44億年前の最古のジルコン粒子を含む堆積岩が分布している。本研究では、40-41臆年前のジルコン粒子が現在と同程度の比較的強い地磁気強度を持つこと、40-42億年前の地球磁場強度が信頼できることを示した。ジルコン粒子中のウランは年代推定に用いるが、放射壊変に伴うアルファ粒子は結晶の破壊と変質を引き起こし、変質部に後から生成した磁性鉱物による偽の磁場強度を示す。このため、ジルコン粒子には厳しい選定基準(合格率2%)を課すとともに、信頼性を確認した。信頼性確認には同位体顕微鏡など様々な分析装置が使われたが、SQUID顕微鏡によって、ジルコン粒子に安定磁化を保持する磁鉄鉱が存在すること、周囲の石英には変質による磁性鉱物がないことが示された。本研究成果は、地球創世直後の地球磁場が太陽風荷電粒子を遮ることで、地球大気の宇宙空間への散逸を防いで保持し、生命の進化に貢献したことを示唆する。

7.今後の課題と展望

世界的な液体ヘリウム供給不足によってSQUID顕微鏡の運用が困難となっているため、液体ヘリウム液化循環装置の導入を検討中である。また、サファイアロッドへのSQUIDチップ装着・配線方法の改良による安定性と分解能の向上、ソフトウェアの改良などを計画している。これら改善を進めつつ、地質試料の磁気記録を高精度で読み取り、多くの謎に包まれた地球の歴史を紐解くことが目標である。

参考資料

6) Kawai et al. (2016) IEEE Trans. Appl. Supercond., 26, 1600905.

7) Oda et al. (2016) Earth Planets Space, 68, 179.

8) Oda et al. (2020) J. Phys. Conf. Ser., 1590, 012037.

9) https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2017/nr20170626/nr20170626.html

10) Fukuzawa et al. (2016) Earth Planets Space, 69, 54.

11) https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2020/pr20200121/pr20200121.html



【著者紹介】
小田 啓邦(おだ ひろくに)
産業技術総合研究所
地質情報研究部門
上級主任研究員

■略歴
1995年 京都大学理学部地質学鉱物学専攻 博士課程修了
工業技術院地質調査所 ポスドク、職員を経て
2001年より産業技術総合研究所 職員
2016年より現職


2001年4月〜2002年3月 文部科学省研究開発局海洋地球課併任
2002年3月〜2004年3月 ユトレヒト大学地球科学部在外研究

簡単に設置・移設できるIoT環境無線センサ「ハッテトッテ™」防水型販売

DIC(株)は、温度・湿度・照度のセンシングに用いるやわらかい無線センサーに防水機能を付与した防水型「ハッテトッテ™」の販売を2021年6月15日より開始する。

「ハッテトッテ™」は、これまで屋内向けのIoT環境無線センサとして、簡単設置・簡単移設、薄く小さく目立たないデザイン、LoRaWAN®※による長距離無線通信といった特長を持ち、既存製品には無い価値を提供している。

一方、屋外においては、工事現場やグラウンドなどで熱中症を予防するための熱中症危険度の測定や、浴室や脱衣所などではヒートショック危険度の測定などの機能がセンサに求められている。しかし、従来品では設置や移設が難しいこと、取り付けが簡便なテープでの固定には落下の危険性を伴うこと、筐体に厚みがあり作業の邪魔になること、水の掛かる場所でも使用できる防水機能が必要などの課題があった。

これらの課題を解決するため、当社は温湿度の測定機能により、熱中症危険度1やヒートショック危険度2の算出にも応用できる防水型「ハッテトッテ™」を開発した。
本製品は、IPX6相当の防水機能を有するため、雨天時にも屋外で使用できるほか、浴室や脱衣所など水の掛かる場所でも使用可能。加えて、「ハッテトッテ™」は照度センサも備えているため、日中のみ、浴室使用時のみなど使用するシーンに応じて警告を出すという設定も可能。やわらかく軽量であるため、万一落下した場合も危険を低減できる。加えて、貼るだけで簡単に設置でき、多くの場所に設置できるため、広範囲の現場で温湿度の測定が可能であるという。

※ LoRaWAN®は LoRa Alliance®の登録商標で、消費電力が小さく長距離での通信が可能な無線ネットワーク
1 「ハッテトッテ™」が測定するのは温度・相対湿度。日射の無い環境に設置し、接続されるシステム側での、簡易WBGT値の算出が必要となる
2 「ハッテトッテ™」が測定するのは温度・相対湿度。接続されるシステム側での、場所による温度差の算出が必要となる
<本製品は医療用途向けの製品ではなく、あくまで一般的な予防の目安として利用下さい>

ニュースリリースサイト(DIC):https://www.dic-global.com/ja/news/2021/products/20210611145212.html

日加量子技術イノベーションマッチングプログラムにQuantum Transformation Projectが協力

Quantum Transformation (QX) Project (以下「QX PJ」)は2021年6月23日(水)及び24日(木)の各日AM8時30分ー11時に開催されるカナダ大使館主催「日加量子技術イノベーションマッチングプログラム」に協力する。


 QX PJは住友商事において2021年3月に正式発足した。QX PJは、かねてより量子コンピュータの産業応用分野においてモビリティや工場分野などで様々な世界初実証をリードし、国際会議等で発信をしてきた寺部 雅能が、2020年より量子技術による社会変革「Quantum Transformation (QX)」を提唱し、それを推進すべく立ち上げたプロジェクトである。

 この度、2021年6月23日(水)及び24日(木)AM8時30分ー11時(日本時間)にカナダ大使館が主催する「日加量子技術イノベーションマッチングプログラム」に協力することで、国境を超えたコラボレーションを創発し、QXを一層推進していくという。

 本イベントでは量子コンピュータ、量子センサ、量子通信、耐量子暗号等様々な量子技術を開発する量子テックスタートアップ27社が参加し、オンライン上での個別面談のマッチングを行う。
参加無料、参加募集中。

【日加量子技術イノベーションマッチングイベント】
日時:2021年6月23日(水)及び24日(木) 各日AM8時30分ー11時(日本時間)
場所:オンライン開催
主催:カナダ大使館
協力:カナダ量子産業協会 (QIC)
   カルガリー大学量子科学技術研究所
   シェルブルック大学量子研究所
   クリエイティブデストラクションラブ(CDL)
   カナダ・ビジネスデブロップメント銀行キャピタル
   ナノカナダ
   オンタリオ/ケベック/ブリティッシュ・コロンビア/アルバータ州政府日本事務所
   住友商事Quantum Transformation(QX)Project

事前登録方法や参加27社一覧は下記WEBサイトより
https://www.quantumtransformation.world/post/20210604

羽田空港国内線第1・第2ターミナル出発ゲートラウンジ全域で 「WHILL自動運転システム」展開

 WHILL(株)と羽田空港旅客ターミナルを運営する日本空港ビルデング(株)は、昨年7月に羽田空港第1ターミナル北エリア内で初期導入された、空港の利用者が搭乗ゲートまで乗車できる「WHILL自動運転システム(注1)」運行サービスが、第1・第2ターミナルの国内線出発ゲートラウンジ全域に拡張されると発表した。

 本サービスでは、空港の利用者自身のタッチパネル操作で自動運転パーソナルモビリティを使って搭乗ゲートまで移動することが可能。これにより、長距離の歩行に不安を持つ人を含むすべての利用者に快適な移動手段を提供する。また、利用時に空港係員との接触が回避されることにより、新型コロナウイルス感染症への感染リスク低減にも寄与する。

 昨年7月の初期導入時点で、空港における自動運転パーソナルモビリティの実用化は羽田空港が世界初であり、導入期間において安定した運用が確立されたため、今回、羽田空港第1・第2ターミナルの国内線出発ゲートラウンジ全域において展開するに至った。

■サービス概要
◇展開時期・エリア: 2021年6月14日より順次展開エリアを拡大
 6月14日から第1ターミナル全域と第2ターミナルの北エリア。7月中旬から両ターミナルの全域。
 ※すべて出発ゲートラウンジ内での運用。
◇サービス内容:待機場所から利用便の搭乗口まで自動運転モードにて案内。無料で利用できる。
 ※利用終了後は無人運転により待機場所まで返却される。
◇対象者:羽田空港から国内線で搭乗の利用者。※一部利用制限あり。
◇運用時間:8:00〜20:00(通年)

■WHILL自動運転システム(注1)
 WHILL社が開発する、デザイン性と走破性に優れたパーソナルモビリティに自動運転・自動停止機能などを搭載した「WHILL自動運転モデル」と、複数の機体を管理・運用するシステムから構成される、歩道・室内領域のための自動運転システム。あらかじめ収集した地図情報と、センサ群で検知した周囲の状況を照らし合わせ、自動走行および自動運転による無人での返却が可能。(画像)

プレスリリースサイト(WHILL):https://whill.inc/jp/news/30405

セコム、公共空間と調和した新しいセキュリティロボット「cocobo」を開発

 セコム(株)は、商業施設やオフィスビルなどさまざまな場所に調和しながらAI・5Gなどの最先端技術を活用して警備業務を行う、新しいセキュリティロボット「cocobo(ココボ)」を開発した。
2021年6月から国内のさまざまな施設で試験運用を開始し、2021年内の発売を予定している。

 このたび開発した「cocobo」は、AI・5Gなどを活用し、常駐警備員の代わりに巡回警備や点検業務を行うセキュリティロボット。巡回ルートを自律走行し、搭載したカメラでとらえた映像をリアルタイムでAI解析、ルート上の放置物などを自動で検知して防災センターに通報。不審者を発見した場合には、音声やライトでの警告、煙を使った威嚇を行うことも可能。
 点検業務を行う際には、ゴミ箱などの点検、扉の施錠確認などの目的に応じたアームを装着する。商業施設やオフィスビルなどの安全確保を担う常駐警備員の“視覚・聴覚・臭覚・触覚”と“判断力”を備え、一部の能力は警備のプロをも上回るという。

また、建物の監視カメラ映像、エレベーター・電気錠などの設備情報、施設や地域の情報など、クラウド上のさまざまな情報を活用し、平時・有事の安全確保から有用・快適情報の提供まで、常駐警備員と連携して、幅広い業務の効率化と品質向上を実現する。

 開発に際しては、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」をはじめとする、多くの工業製品のコンセプト企画や開発を手掛けた znug design(ツナグ・デザイン)の根津孝太氏ならびに(株)ロフトワークと協働し、“公共空間との調和”“威厳と親しみやすさ”をコンセプトに中性的で凛としたデザインとしたとのこと。

ニュースリリースサイト(secom):https://www.secom.co.jp/corporate/release/2021/nr_20210610.html

アールティ、研究用ティーンサイズヒューマノイドロボット「Bonobo」発売

株式会社アールティは、人型サービスロボットの研究開発促進のため、研究者が触って体感しながら開発できる、本質安全を重視したティーンサイズのヒューマノイドロボット「Bonobo(読み:ボノボ)」を開発した。

┃開発の背景
 アールティには創業時から「サービスロボットとは触れる、触れあえるものであってほしい」という思いがあり、その思いに基づいて、着ぐるみを着て人と握手やハグができるようなエンターテインメントロボット「RIC90(読み:リックキュウジュウ)」や、人の隣でも安全に働ける人型協働ロボット「Foodly(読み:フードリー)」などの開発、販売を続けてきた。
 協働ロボット、サービスロボットの研究開発用教材としては、軽量かつコンパクトでスタイリッシュをコンセプトとしたアームロボット「CRANE-X7(読み:クラインエックスセブン)」や、上半身型ロボット「Sciurus17(読み:シューラスセブンティーン)」を展開し、大学や企業の研究機関などに利用されてきたが、人型(二足歩行)ロボットでも同様のコンセプトの製品が欲しいとの要望を貰ったことから、今回ティーンサイズのヒューマノイドロボット「Bonobo」としての製品化に至った。
 製品名については、ヒト科チンパンジー属の霊長類ボノボ(Pan paniscus)が遺伝学上もっとも人に近く平和的な動物と言われていることから、人に近い形状で安全を重視したロボットとして同じ名前を採用し「Bonobo」としたという。

┃Bonoboの概要
 サービスロボットや歩行ロボット、コミュニケーションロボットの研究に使えるヒューマノイドロボット。身長120cmのコンパクトサイズで、腕の長さは小柄な成人をモデルにしている。
 ボディを3Dプリンタ製のプラスチック外装にすることで、全体で約15kgと軽量にしており、研究者が一人でも持って移動させることが出来る。全関節80W以下のモータを使用してアーム等の動く力が強くなりすぎないように配慮するほか、挟み込みを防止する設計構造にすることで使用時の本質安全にも優れている。
 従来の同コンセプト製品と同じく、持ち運びや稼働中の運用を楽にしたい、アームやボディを触って体感しながら、触れるサービスロボットや協働ロボットの研究開発を進めたい場合に適したヒューマノイドロボット。
 頭部にはデプスカメラを標準搭載しており、対象物の認識や障害物回避の腕の軌道生成などが研究できるとのこと。

ニュースリリースサイト(rt-net):https://rt-net.jp/notice/20210610/

IOTA Chrysalisに対応するSTM32マイコン用ソフトウェア拡張パッケージを発表

STマイクロエレクトロニクスは、IOTA財団の分散型台帳技術(DLT)とインフラストラクチャに変革をもたらすChrysalisネットワークのアップグレードに伴い、STM32マイクロコントローラ(マイコン)用のソフトウェア拡張パッケージ「X-CUBE-IOTA1」のアップデートを発表した。
IOTA Cライブラリが統合された同パッケージは、すでに開発および検証が完了し、STM32マイコン用のソフトウェア開発エコシステム「STM32Cube」の拡張パッケージとして提供されているとのこと。

STM32Cube開発エコシステムには、ロー・レベルおよびミドルウェアのソフトウェアを1つに統合したライブラリ、およびSTM32マイコンの初期化コード自動生成ツール「STM32Cube MX」が含まれている。また、今回アップデートされたX-CUBE-IOTA1を含め、100を超えるソフトウェア拡張パッケージが提供されており、進化を続ける開発エコシステムとして、さまざまなアプリケーションに対応するソフトウェアが積極的に追加されている。
X-CUBE-IOTA1には、IOTAに特化したミドルウェアとサンプル実装が含まれているため、さまざまな機能を高度に集積した高効率のSTM32マイコンを活用し、IOTA DLTの最新Chrysalisアップグレードを利用してトランザクションを処理するスマートなIoT機器を構築することができるという。

Tangleとも呼ばれるIOTA DLTは、データの改竄を防止するセキュアな分散型データベースである。IOTA財団によると、新しいChrysalisでは、従来型のIOTA実装と比較して、電力効率が60%改善されている。この高効率を実現するために、同財団ではアトミック・トランザクションを使用するようにプロトコルをアップグレードした。
これにより、アカウント残高全体の更新が必要な「アカウント・ベース・モデル」よりも効率的にステート変更を登録することができる。アトミック・トランザクションでは、データ・サイズを従来の3500バイト / トランザクションからわずか275バイト / トランザクションまで低減することが可能。
また、「tip」選択アルゴリズムが改善され、より高速なトランザクションの検証および同期を行うことができる。IOTA財団によると、ビットコインのトランザクション1回で消費される電力で、6億回のトランザクションを実行することができるとのこと。

最新バージョンのX-CUBE-IOTA1は、IoT端末向けの開発ボード「B-L4S5I-IOT01A Discovery キット」で動作する。同ボードは、超低消費電力STM32L4+マイコンを搭載し、ボード上のWi-Fiインタフェース経由でインターネットに接続。X-CUBE-IOTA1は、STM32 Cryptolibの高度に最適化された堅牢なセキュリティ・アルゴリズムを利用しており、以下を備えている。

・以下に対応するミドルウェア・ライブラリ
– Tangleとやり取りするIOTAクライアントAPI
– 暗号化、ハッシュ、メッセージ認証、電子署名のためのSTM32暗号化ライブラリ
– Transport Layer Security(MbedTLS)
– FreeRTOS
– Wi-Fi管理
・ボード上のモーション・センサと環境センサにアクセスするための完全なドライバ

X-CUBE-IOTA1は、STのウェブサイトより入手可能。

* STM32は、STMicroelectronics International NVもしくはEUおよび / またはその他の地域における関連会社の登録商標および / または未登録商標。STM32は米国特許商標庁に登録されている。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001159.000001337.html