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SGST、焼肉の和民にてサービスロボット「Kettybot」を実証実験

(株)SGSTは、新型コロナウイルス対応として飲食店、レジャー施設、医療機関向けにロボットによる非接触サービス化の展開を進めている。今般、国内に飲食店を展開するワタミ(株)の「焼肉の和民」西武池袋東口店において、レストラン内の配膳・下げ膳・ご案内をメインとしてロボットの利用がサービスの向上に繋がるかどうかを検証するための実証実験(POC)を開始した。

【サービスロボット「Kettybot」の概要】 Pudu Robotics社が開発したKettybotは優れた障害物回避能力や移動能力を有する最新型配膳ロボット。汎用性が高くコンパクトでありながら18.5インチの大型広告画像、3層構造のトレイ(最大負荷7Kg/トレイ)をもち、親しみやすいデザインでレストランにおける配膳と下げ膳を安全かつ正確に行う。コロナ感染症の防止や人件費削減に高い効果を発揮するという。

【実証実験の概要】
ワタミは飲食業界における店舗運営の省人化オペレーションとして、配膳ロボットの活用を採用されており、今回Kettybotを活用してサービスのさらなる充実が実現できるかを検証することとなった。ロボットを活用した「配膳・下げ膳」に加えて新たに「ご案内」もロボットに担当させることについて検証し、運用面での改善/調整に向けて協議していく。

期間:2021年8月30日~9月21日
検証項目:
 ① Kettybotを用いた飲食店舗省人化オペレーションの検証
 ② Kettybotを利用したご案内対応による非接触対応強化及び業務効率化
 ③ 設置店舗の新たなニーズ確認と要望に応じたカスタマイズ対応

【SGSTのロボットソリューションについて】
同社では新型コロナウイルス対応で疲弊する飲食店や医療機関スタッフの負荷軽減を目的として、AI搭載のロボットによる非接触サービス化を提案している。飲食店での配膳ロボットの活用で感染リスクの低減や人件費削減が期待できるだけでなく、医療機関における紫外線照射ロボットの活用で効率的な除菌作業を実現している。また、規模の大きい病院では、院内の案内係ロボットとしての活用も提案していくとしている。

ニュースリリースサイト(SGST):https://sgst.ai/news/news_202109141549.html

河川流量のモニタリング(2)

(国研)土木研究所
水工研究グループ
山本 晶

4. 流量観測の今後に向けて

4.1 さらなる技術開発とその支援

 流速計や水位計については、低価格化や高精度化のほか、新たな計測手法や活用方策等を目指した開発が現在でも産学の各機関において行われている。国土交通省でも、「革新的河川技術プロジェクト」の1つとして流量観測の無人化・自動化に向けた機器の開発を支援している。
 土研においても、電波式流速水位計を用いた流量の自動観測に向けた研究を継続している。近年は、流速水位計の小型化を行いドローンに搭載した電波式流速水位計による計測実験等を実施した(写真-5)。また、流速水位計の電波照射方向を遠隔または自動で制御可能となるよう、雲台に搭載した電波式流速水位計による計測実験を国内数か所で実施している。
 本稿では主に流速の計測技術について紹介したが、流量を精度よく把握するためには、洪水中に変動する河床の高さを把握することが必要になる。河床高の計測、推定についても土研では今後取り組みを進めていく予定である。

写真-5 電波式流速水位計を搭載したドローン
写真-5 電波式流速水位計を搭載したドローン

 こうした取り組みを産官学で共有し、連携して推進するために、土木学会水工学委員会に河川観測高度化研究小委員会(委員長:名古屋大学 椿涼太准教授)が設置されている。土木研究所としては、こうした場も活用し情報共有を通じて各機関の研究開発への支援を行っている。

4.2 新技術の普及に向けた取り組み

 電波式流速計等の新しい観測技術は、直轄河川を中心に各種調査に利用されつつあるものの、現場レベルではまだそのノウハウが十分でないのが実情である。土研には地整等からの問い合わせが多く寄せられており、積極的に技術指導を行っているところである。
 一方、こうした利用はまだ直轄河川の一部であり、多くの現場(特に都道府県)では新しい技術に関する知識が十分ではない。土研では、開発した技術の広報、普及のため、「土研新技術ショーケース」を各地方ブロック毎にほぼ2年に1度の頻度で主催する等、積極的な活動を行っている。電波式水位計についてもこの場で講演やパネル展示を行い、その有用性等について積極的にPRしているところである。
 また、こうした観測技術を普及させていくためには、河川の状況に応じた適切な観測方法を提示していくことが重要と考えている。土研では、今後国土交通本省や地方整備局等とも連携して様々な河川において複数の手法で観測を行い、河川の状況等に応じた各種流量観測技術の適用性の検証を行っていく予定である。

5.おわりに

 近年の水文観測技術の高度化を受け、平成29年3月に国土交通省の水文観測業務規程が改正された。改正された主な点は、雨量観測の手法としてレーダー雨量計が正式に位置づけられ、データを蓄積することとされたこと、流量観測の一手法として非接触型流速計が位置付けられたことである。また、令和3年5月に閣議決定された第5次社会資本整備重点計画では、基準水位・流量観測所における自動流量観測導入率を令和7年度までに100%とすることが目標として掲げられている。こうした政府の方針を支援するため、土木研究所では、今後も非接触型流速計の普及の取り組みや流量観測の高度化に向けたさらなる研究開発を続けていく。

参考文献

1) 萬矢敦啓、墳原学、工藤俊、小関博司、笛田俊治:電波式流速水位計の開発、土木学会論文集G(環境)、土木学会、Vol.72、I_305-I_311、2016

2) 佐藤匡、萬矢敦啓、橋場雅弘:平成28年台風10号空知川上流における画像処理型流量観測の適用性-大規模出水に対応した流量観測高度化(その2)-、国土交通省北海道開発局第60回(平成28年度)北海道技術開発研究発表会

3) 河川砂防技術基準 調査編、平成26年4月、国土交通省水管理・国土保全局

4) 平成14年度版水文観測、国土交通省河川局監修、独立行政法人土木研究所編著、社団法人全日本建設技術協会



【著者紹介】
山本 晶(やまもと あきら)
国立研究開発法人 土木研究所 水工研究グループ 水文チーム
上席研究員

■略歴
東北大学工学部土木工学科卒業
1993年 建設省入省
2003年 国土交通省東北地方整備局河川部河川計画課長
2007年 国土技術政策総合研究所危機管理技術研究センター水害研究室主任研究員
2010年 東北地方整備局河川部水災害予報企画官
2011年 国土交通大学校建設部建設企画科長
2013年 国土技術政策総合研究所河川研究部水害研究室主任研究員
2016年 香川県土木部次長
2018年より現職

河川モニタリングに対する社会的ニーズと最新技術・機器(2)

静岡沖電気(株)
技術部
森 孝之

3.3 弊社の流速(流量)、流向センサ

河川の流速、流向の計測は以下の目的で使用される。

  • 水位計、河川断面係数により流量を算出することで、下流域での洪水予測が可能となる。

  • 下流域への土砂の流出量や汚染物質の流出量の把握が可能となる。

  • 大型河川に流入する、支川の樋門、樋管部の流速、流向を把握することで支川の排水能力の把握や逆流の検知を行い、適切なゲートコントロールにより内水氾濫の低減が可能となる。

など、水位計だけでは把握できない事象に対し有用なデータを取得することが可能となる。
弊社の流速、流向計は、河川横断方向に対し斜めに対向して設置された超音波送受波器の伝搬速度の差を計測しているので、河川の横断平均流速の計測が可能であり、上記目的に対しより正確なデータの取得ができる。

計測の原理は

図-7 大型河川用流速計の概要
図-7 大型河川用流速計の概要

・河川を斜めに横断する形で超音波パルスを送信/受信する
・超音波パルスの伝搬時間は河川の流速により変化するため、この伝搬時間を正確に計測する
・計測された伝搬時間を用い、下式で流速を算出する
 V=(R1+R2)2 ×(t1-t2)/(2×D×t1×t2)
  V:横断平均流速(m/sec)
  R1:A→Bの距離(m)
  R2:B→Cの距離(m)
  D:A→Cの距離(m)
  t1:A→B→C の経路の伝搬時間(sec)
  t2:C→B→A の経路の伝搬時間(sec)

上式において、計測範囲の水中の音速が一様とできる場合は、音速を含む必要がなく、水温や懸濁物の影響で水の比重が変動した場合でも音速の変動が流速算出には影響を与えないため安定した計測が可能となる。
大型河川の場合は、偏流成分の除外のため、図-7に示すようにV字型の配置とするが、小型河川(川幅100m以下)の場合は一軸伝搬(A→BとB→A)でも計測は可能である。

  1. (1) 超音波式流速(流量)計
    河川幅100m以上の大型河川で流速を計測するために使用される。
    1軸の計測間隔は200mが最大であるが、複数のポイントでの計測も可能であるため、送受波器を増やし側線を増やすことにより200m以上の河川幅にも対応が可能である。

    図-8 大型河川用流速計システム例
    図-8 大型河川用流速計システム例
    表-8 大型河川流速計仕様
    表-8 大型河川流速計仕様
  2. (2) 小型河川流速計
    河川幅100m以下の中小河川で流速を計測するために使用される。

    図-8 小型河川用流速計外観
    図-8 小型河川用流速計外観
    表-9 小型河川流速計仕様
    表-9 小型河川流速計仕様
  3. (3) 小型河川流向計
    河川幅30m以下の小河川で流向を計測するために使用される。

    図-9 小型河川流向計外観
    図-9 小型河川流向計外観
    表-10 小型河川流向計仕様
    表-10 小型河川流向計仕様

3.4 弊社の情報伝達、収集装置:ゼロエナジーゲートウェイ

モニタリングシステムでは、各センサーで計測したデータをインターネット経由でクラウドやサーバーに送信するゲートウェイが必要となる。
従来のゲートウェイは商用電源を必要とし、現場に設置する際の電源の配線工事に多大な費用と期間を要していた。
本製品は、920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop®」とLTEによる無線通信機能を備えたIoTゲートウェイで、太陽発電駆動に対応することにより、外部からの給電が不要なため、通信線配線、電源配線が不要な装置である。

図-10  ZEゲートウェイ概要
図-10  ZEゲートウェイ概要
表-11  ZEゲートウェイ仕様
表-11  ZEゲートウェイ仕様

参考

OKIテクニカルレビューVol235 太陽電池を利用したゼロエナジー水位計 依田、境

OKIテクニカルレビューVol237 ゼロエナジーゲートウェイ~太陽光発電駆動のIoTゲートウェイでインフラ監視の導入を容易化 久保、橋爪、依田



【著者紹介】
森 孝之(もり たかゆき)
静岡沖電気株式会社 技術部

■略歴
1977年 沼津工業高等専門学校 工業化学科(現 物質工学科)卒業
同年   興国ゴム工業株式会社(現 興国インテック株式会社)
1989年 沖電気工業株式会社
2000年 静岡沖電気株式会社(現職)
2018年~ NPO法人 光ファイバセンシング振興協会 監事

グリーンレーザドローンの現状と河川管理での活用(2)

株式会社 パスコ
間野 耕司

3.河川横断測量へのグリーンレーザドローン活用

 レーザドローンによる河道や河川堤防の再現性を確認するために,クワ畑等の木本 とツル・ヨシ群集等の草本の植生で覆われている高水敷や草本で覆われた河川堤防において,トータルステーションで取得された横断測量成果と比較した.ドローンによるレーザ計測は,落葉樹 の萌芽期である4月と植生が繁茂した9月の2 時期に,約100点/m²の計測密度で実施した.この比較では,植生被覆域の地上到達度と地形再現性を評価した5)
 地上到達度では,横断測量の断面線から水平位置0.5m,標高0.05m以内に到達した点群と地上到達点と見なし,その点数と照射点数の割合を植生種ごとに確認した.その結果を表2の地上到達度に示す.4月の地上到達度は,河川堤防の人工草地で83%と最も高く,多くの計測点が地盤を捉えている.一方,葉の大きいカナムグラ群落が21%と低く,それ以外の草本が30~50%,木本が約30%の地上到達度を示した.9月の地上到達度は全ての植生で4月より低い.有人機の航空レーザ測量よりビーム径が小さく,100点/m²程度の高密度な計測ができるレーザドローンでも,葉が大きい植生被覆域や夏季の地上到達度が低くなることがわかる.
 地形再現性では,横断測量成果の標高較差を確認した.その結果を表2の地形再現性,点群による断面表示図を図3に示す.4月の結果に着目する.カナムグラ群落以外の植生は平均二乗誤差で約0.1mを示し,凹凸のある植生被覆域でも0.1m程度の位置精度で河道形状を再現できることが確認できた.また,9月の平均較差は0.15m以上の値を示した.以上の結果から,最適な時期におけるドローンレーザ計測の実施が重要なことや植生の種類によって横断図による地形再現精度が異なることがわかった.
 図4は,冬季に計測した点群による陸部と水部が存在する測線の横断表示である.グリーンレーザドローンによる水部計測では,水質,水面,河床の状態により測深能力が異なる計測特性が確認されている.この地区では最大2.8m程度の測深を確認でき,横断表示により陸部と水部が連続的につながった断面が再現できることを確認できた.
 以上の結果より,植生が繁茂していない時期にグリーンレーザドローンによるデータ取得を行うことで,陸上部と水部の横断形状を再現でき,河川横断測量成果として利用できることを確認した.

表2 横断測量成果との比較による植生被覆域の地上到達度と地形再現性
表2 横断測量成果との比較による植生被覆域の地上到達度と地形再現性
図3 河川堤防(人口草地),ツル・ヨシ群集における点群の断面表示
図3 河川堤防(人口草地),ツル・ヨシ群集における点群の断面表示
図4 陸部・水部がある河道の横断表示
図4 陸部・水部がある河道の横断表示

4.堰・護床ブロック点検へのグリーンレーザドローンの適用

 堰周辺や護岸工周辺においてTDOT GREENによる点検を実施した事例を紹介する.図5は河川の堰周辺を取得した三次元点群の鳥観図であり,レーザ計測時に取得された反射強度をグレースケールで色分けしたものである.100点/m²以上の高精細な三次元点群は,堰本体,門柱,ゲート,護床工のブロックひとつひとつの形状が確認でき,さらに一部の護床工が崩れている状況を把握できる.
 次に,別の河川でTDOT GREENで取得した点群を用いて,護床ブロックを点検した6).この護床ブロックは,水深50cmから2mに位置しており,常に水中にある.点検では,崩れや損傷のある箇所をわかりやすく可視化するために計画河床高とTDOT GREENで取得された三次元点群の差分解析を行った.図6は,ドローンで取得した写真地図と差分解析結果の段彩表示図を示す.写真地図から,この護床ブロックの一部が流出していることが確認できる.TDOT GREENは,数点~数百点/m²程度の密度で水底を計測することができため,ブロック損傷箇所の把握が可能となる.また,段彩表示図から,下流側ブロックの約2/3が沈下しており,その中央部は水底地形と伴にさらに沈下していること,上流側ブロックの約1/3が,ブロックの損傷と流出していること等,ブロック形状の把握と伴に面的な沈下量が定量的に把握できることが確認できる.

図5 堰周辺を取得した点群の鳥瞰表示
図5 堰周辺を取得した点群の鳥瞰表示
図6 写真地図と差分解析結果の段彩表示図
図6 写真地図と差分解析結果の段彩表示図

5.まとめ

 本稿は,グリーンレーザドローンの概要と,グリーンレーザドローンを横断測量といった河道形状の状況把握に利用した事例と,堰や護床工の点検にグリーンレーザドローンを用いた事例を紹介した.この結果で得られた知見を以下に示す.

  • グリーンレーザドローン(TDOTGREEN)は,100点/m²以上の高密度な3次元点群を取得でき,フットプリント5㎝程度(対地高度50m)により,高精細な形状を再現できる.

  • 河川横断測量へのグリーンレーザドローン適用では,三次元点群により,陸部と水部が連続的につながった断面表示ができること,ただし,最適な時期の計測の実施が重要であり,植生の種類によって横断図による地形再現精度が異なる留意点が必要である.

  • グリーンレーザドローンを用いた堰や護床工の点検では,堰本体,門柱,ゲート,護床工のブロックひとつひとつの形状,さらに一部の護床工が崩れている状況を把握できること,河床計画高と点群の差分解析により,ブロック損傷箇所をわかりやすく可視化でき,ブロックの損傷状況と面的な沈下量が定量的に把握できる.

 以上の結果から、グリーンレーザドローンは,河道、河川堤防の形状、護床工の状況を面的かつ定量的に把握できることがわかった.また、ドローンを用いた三次元計測は、狭域の計測や複数回の計測(モニタリング)に適しており、河川管理の高度化・効率化に寄与できる可能性が確認できた.一方,グリーンレーザドローンの課題は,水部の計測で,水質,水面,河床の状態により測深能力が異なることが挙げられる.今後は,計測実績を増やして測深予測,適用可能な範囲を明確にできるようにすることで,高度で効率的な河川管理の実現に寄与していきたいと考えている.

参考文献

5) 間野耕司, 森田真一,小澤淳眞,井関禎之,冨井隆春:UAVレーザ計測による地形再現性と計測特性に関する検討,一般社団法人日本写真測量学会平成30年度秋季学術講演会発表論文集, p33-34,2018.

6) 堺浩一,間野耕司,橘菊生,西山哲:UAVグリーンレーザ計測による河川構造物点検への適用検討,河川技術論文集第27巻, 2021.



【著者紹介】
間野 耕司(まの こうじ)
株式会社パスコ

■略歴
 1999年3月岐阜大学大学院工学研究科土木工学専攻修了.1999年4月株式会社パスコに入社後,航空レーザ測量,MMSおよびUAVなどの三次元計測業務に従事し,現在に至る.その間,2018年岡山大学大学院環境生命科学研究科環境科学専攻を修了.博士(工学).

河川防災におけるモニタリングシステム(2)

坂田電機(株)
飯田 あゆ美

4.河川堤防の侵食をリアルタイムで検知「侵食センサ」

河川の増水により堤防が決壊すると甚大な被害が発生するため、日常の点検により堤防の軽微な変状を把握し、必要に応じて補修を行う維持管理が行われている。
堤防の侵食に対するモニタリングは徒歩による目視点検を主体としているが、降雨や増水による水の濁り、夜間等の条件が重なると目視による変状の発見は困難な場合がある。そこで、従来の目視点検に加え堤防決壊の前兆となる軽微な変状をリアルタイムで検知するモニタリングシステムが開発されている6)

侵食センサの模式図を図5に示す。侵食センサには3軸のMEMS加速度センサを使用し、侵食により生じるセンサ自身の姿勢変化(傾き・回転)を計測する。侵食を検知すると磁気通信技術により受信装置へ信号を発信し、河川管理者へ通知する。磁気通信技術の採用により、土中や濁流化した水中からでも通信でき、侵食をリアルタイムで検知することが可能となった。
庄内川における実証試験では、大雨による侵食を3台の侵食センサで検知した(図6)。

図5 侵食センサ 模式図
図5 侵食センサ 模式図
図6 左:庄内川における侵食センサ設置状況、右:検知後の庄内川における侵食状況
図6 左:庄内川における侵食センサ設置状況、右:検知後の庄内川における侵食状況

5.低周波磁界により水中・地中の砂礫まで追跡「砂礫トレーサー」

河川の土砂移動の実態を把握することは、河川の流域全体における土砂管理計画に役立つ。土砂移動の計測では色付けした礫をトレーサーすることが多いが、河床の土砂に埋まり追跡できない場合があった。そこで、地中・水中でも通信可能な低周波磁界を用いた砂礫モニタリングシステムが開発されている。

システムの概要を図7に示す。現地で採取した礫に発信機を埋め込み、出水後の移動距離を可搬型探知機で検知する。礫ごとに異なる周波数の発信機を内蔵することで、礫の識別を行う。安部川砂防における実証試験7)では、水中や土砂に埋まったトレーサーも追跡でき(図8)、2回の増水において短い距離では300m、長い距離では5,300mの土砂移動が確認された。

図7 左:システム概要、右:発信機写真
図7 左:システム概要、右:発信機写真
図8 礫NO.29(河床から100cm)
図8 礫NO.29(河床から100cm)7)

6.土石流の発生を直ちに知らせる「ワイヤセンサ」

土石流は、山腹や川底に堆積した土砂が水と一体となり下流へ押し流される現象であり、長雨や集中豪雨に起因して発生する。全国の土石流危険渓流は18万箇所以上にのぼる8)。土石流は時速20~40kmで流下するため、短時間で下流の集落などに到達し人的・物的被害を引き起こす危険性が知られている。土石流が発生した場合、直ちにサイレン等で下流域周辺の住民に知らせ、避難を促す必要がある。

ワイヤセンサの模式図を図9に示す。河川上流部で河道を横断するようにワイヤを張り、対岸の立木や岩盤、砂防えん堤等にワイヤセンサを設置する。土石流によりワイヤが切れると、土石流警報器が検知し回転灯・サイレンにより通知する。
2014年8月に広島市で発生した土石流災害では、災害後の緊急対策工事の安全管理および対策工事完成までの住民への警報連絡手段として、8渓流に合計28台のワイヤセンサを施工した(図10)。

図9 ワイヤセンサ 模式図
図9 ワイヤセンサ 模式図
図10 ワイヤセンサ 設置事例
図10 ワイヤセンサ 設置事例

7.おわりに

近年、降雨が激甚化しているため、より広範域での河川モニタリングシステムの構築が必要と考える。今後も計測機器メーカとして、防災へ寄与できるよう尽力する。

参考文献

6) 佐古俊介、柳畑亨、石沢孝、須賀原慶久、中山修、味方圭哉:計測機器を用いた河川堤防の変状検知モニタリングシステムの開発、第4回河川堤防技術シンポジウム講演概要集、p65-68

7) 西川友幸、高橋正行、細野貴司、江島敬三、谷 弘行、伊藤力生、才田 誠:安倍川砂防における低周波を用いた土砂移動実験、平成17年度砂防学会研究発表会概要集、pp136-137

8) 国土交通省:都道府県別土砂災害危険個所、国土交通省ホームページ、https://www.mlit.go.jp/common/001286018.pdf(入手2021年7月24日)



【著者紹介】
飯田 あゆ美(いいだ あゆみ)
坂田電機株式会社

■略歴
2013年 坂田電機株式会社へ入社。
計測機器の設置、データ解析業務に従事。
2021年 現在に至る。

京セミ、レーザー給電向け高出力光給電コンバータ「KPC8H-FC」を発表

(株)京都セミコンダクターは、レーザー給電向けに開発した高出力光給電コンバータ「KPC8H-FC」を発表した。

京セミが2011年にリリースした光給電コンバータ「KPC8-T」は発売から10年を迎えた。これまで送電の難しい遠隔地での設備機器や電磁ノイズの影響を受けやすい設備機器、航空機内の設備機器などで、光ファイバを介したレーザー給電(※1)を使用した数々のアプリケーションで採用されたが、この度発表した高出力光給電コンバータ「KPC8H-FC」では顧客からの要望多かった2つの項目を改善したという。

(1) 高出力化
効率を高めることにより、光入力に対する出力が従来製品比1.3倍(※2)に向上した。また、放熱の向上により最大光入力の定格値が従来製品の3倍になった。これにより新たなアプリケーションの可能性が広がる。

(2) 省スペース化
従来製品(※2)は光ファイバ一体型ピグテイルモジュールだったが、今回FCレセプタクル一体型の形状を採用しており直接機器類の操作パネルに取り付け(パネルマウント)が可能となっている。省スペース化となるため機器の小型化も期待できる。

なお、高出力光給電コンバータ「KPC8H-FC」のサンプル出荷開始は2021年9月15日、量産開始は2022年4月28日を予定している。

※1 レーザー給電: 光ファイバケーブルや自由空間を介してレーザー光を光電変換素子を用いて電力を伝送する方式。光ファイバケーブルを介したレーザー給電はメタル電線よりも損失が少なく、完全な電気絶縁が可能なため、メタル電線では困難であった落雷対策が必要であった屋外の設備機器や遠隔地に設置された設備機器、電磁雑音の影響が強い環境下への電力の伝送が可能となる。
※2 同社従来製品: 光給電コンバータ KPC8-T https://www.kyosemi.co.jp/products/kpc8-t/

ニュースリリースサイト:https://www.kyosemi.co.jp/news/2076/

Bosch、保護された診断機能を実行可能にする「セキュア ダイアグノシス アクセス」販売開始

ボッシュ(株)はこのたび、「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」によって可決されたサイバーセキュリティ及びソフトウェアアップデートの国際基準によってアクセスが制限される車両診断機能を実行可能にするソリューション、「セキュア ダイアグノシス アクセス(SDA)」を9月13日に発売開始する。

コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化を表す「CASE」と呼ばれる自動車の技術改革により車両の電子化が進んでいるが、同時に乗員や歩行者を車両へのサイバー攻撃被害から守るため2020年6月「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」において2022年7月以降の新型車においてサイバーセキュリティ対策を講じる事が必須となった。
既に国内で販売されている一部の車両ではサイバーセキュリティ対策が講じられており、それにより診断機能へのアクセスが制限され始めている。この流れは2022年以降の国内法施行によりさらに加速することが見込まれている。

このサイバーセキュリティ対策により自動車整備で必要となる診断機能にアクセス制限がかかり、先進運転支援システム(ADAS)エーミング作業(補正作業)とオイル交換後などに必要となるサービスインターバルリセットなども出来なくなる。
この状況に対してボッシュの車両診断ソフトウェアESI[tronic]2.0の新機能である「セキュア ダイアグノシス アクセス(SDA)」は各自動車メーカーのセキュリティアクセス権を一元管理し、セキュリティ保護された診断機能の実行を可能とする。これよって一般整備工場の将来の整備ビジネスにおいても効率的に新しい車両の診断が可能となるとのこと。

車両のサイバーセキュリティ対策は各自動車メーカーにより異なるため、それぞれの車両のアクセス権を取得するには自動車メーカー毎に登録、契約や支払い条件など個別の対応が必要となる。しかし、ボッシュはこの自動車メーカー毎のセキュリティアクセス権を一元管理しセキュア ダイアグノシス アクセス(SDA)によって一般整備工場に提供するため、一般整備工場が自動車メーカー毎に契約する必要がなく効率的に診断作業を進める事が出来る。また、将来的には全ての車両においてセキュリティアクセス権なしでは包括的な診断作業が不可能になる。
ボッシュは、今回のSDAリリースで対応したフォルクスワーゲン(VW)、アウディ(AUDI)、セアト(SEAT)、スコダ(SKODA)に加え、さらに対応する自動車メーカー、システム、モデルを拡大していくため継続的に自動車メーカーとの対話と開発を行い、将来的にも継続して使用可能なツールの提供を目指すという。

セキュア ダイアグノシス アクセス(SDA)を利用するためにはボッシュの診断機(KTS560、KTS590)と専用ソフトであるESI[tronic]2.0と、その故障診断(SD)ライセンスを所有している場合のみ可能。また、オンラインでデータにアクセスするため、インターネット環境が必要となるとのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000053190.html

リアルアバター、東大VR教育研究センターに全身360度撮影システムキット納品

リアルアバター(株)は、東京大学情報理工学系研究科バーチャルリアリティ教育研究センターに、全身360度撮影システムキットを納品し検査に合格した。

瞬間同期撮影された80枚の画像から、VR/AR用の3Dリアルアバターの元となる3Dモデルの作成が可能とのこと。

●3Dモデルを360度回転、拡大・縮小して見られるリンクは下記
https://sketchfab.com/3d-models/2022-06241272128b41b290f1292948903eec
*この3Dモデルは、Blender等の3Dモデリングソフト他での修正は行っていないが、  編集を行うことも可能。

●撮影カメラ仕様:
・カメラ80個 – Raspberry Pi Camera Module v2 – での全身360度瞬間同期撮影
 - より高解像度のデジタル一眼レフカメラや他のセンサー/レンズ/モジュールにも変更可。
 - カメラ台数の追加他、各種の変更や拡張を可能にするソフトウェアの実装。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000045668.html

減災・防災IoTデバイス「ミテテル・傾斜計2」LPWA2とWi-Fi通信を利用した新モデル

アイ・サイナップ(株)は、同社が提供する防災IoTデバイス「ミテテル・傾斜計2」においてLPWA2(LTE-M)とWi-Fi通信を利用した新モデルを開発し、2021年9月10日より販売を開始する。
新モデルでは「ミテテル・傾斜計」を親機と子機に分け、親機と子機の間をWi-Fiを利用して通信することで子機の情報を親機に集約し、親機がLPWA2で一括して情報を管理システムに送信する。

「ミテテル・傾斜計」は、国内で増加する気象災害に備えて開発された防災IoTデバイス。山の斜面などに設置した場合、設置時の角度を0度として、3次元のセンサにより0度から180度までの傾きを検知する。管理者は離れた場所からシステム上でミテテル傾斜計の状態を確認できるほか、傾きがあらかじめ設定した閾値を超えた場合は携帯メール等によるプッシュ通知もあり、非常時にどこにいても異常を見逃すことは無いという。

「ミテテル・傾斜計」は従来のLPWA(920Mhz)通信でセンサの情報をクラウドに送る方式を採用していた。しかし、従来のLPWA通信のエリアが過疎地には届きにくい点、また1台1台に通信契約するためコストの点から課題があった。その課題を解決するため、新モデルでは通信方式にLPWA2としてLTE-Mを採用し携帯電話網のエリア内であれば通信可能にした上で、「ミテテル・傾斜計2」本体を親機と子機に分けて、Wi-Fi-通信で子機の情報を親機で集約し一括送信するという方式を採用した。

今回の新モデル発売により「ミテテル・傾斜計2」は過疎地や山間部などでさらに使いやすい製品となった。異常気象による災害が増加する近年、土砂崩れや水害の情報をいち早く伝えて避難するなど、IoTを活用した防災の仕組み作りが求められている。同社も2001年の創業時から培ってきたIoTの技術を活かして、安心安全な社会の実現に努めるとしている。

ニュースリリースサイト:https://www.dreamnews.jp/press/0000243780/

ST、LEDディスプレイ向けにエコ設計規格の200Wデジタル電源ソリューションを発表

STマイクロエレクトロニクスは、LED / 有機ELディスプレイ向け200Wデジタル電源およびアダプタの迅速な設計に貢献する評価ボード「STEVAL-NRG011TV」を発表した。この評価ボードは、エネルギー効率とスタンバイ電力において、最も厳しいエコ設計規格を上回る性能を実現するという。

STEVAL-NRG011TVは、STのデジタルPFC(力率補正回路)および共振LLCコンバータ「STNRG011」をベースに、優れた実績と信頼性を持つトポロジを採用しており、動作パラメータの設定・微調整による性能の最適化が可能である。また、デジタル制御アルゴリズムがコントローラのROMにあらかじめプログラムされており、プログラマブルな不揮発性メモリ(NVM)にパラメータのサンプルも保存されているため、コーディングが不要。

STEVAL-NRG011TVは、テレビのコントローラとオーディオ・サブシステム用の電源として12V / 4Aの安定した出力を提供すると共に、LEDバックライト向けに65V / 2.5Aの出力を提供する。90V~264Vの幅広いAC入力電圧範囲を備えているため、世界各地域の電源やアダプタに対応している。また、最も厳しいエコ設計仕様を超える性能を有しており、115Vおよび230VACで全負荷時に91%以上の効率、および無負荷時に120mW未満の消費電力を達成している。

ベースとなるSTNRG011には、8bit CPUサブシステム、PFCやLLC SMED(event-driven state machines)などのコントロール・ロジック、A/Dコンバータ、高電圧起動回路、パワー・マネージメント、保護回路などが搭載されており、高効率PFCコンバータ用の高集積ソリューションを提供する。2線のインタフェースを使用して外部EEPROMとの通信や遠隔モニタ、ソフトウェア更新などに対応可能。また、20ピンSO20パワー・パッケージで提供され、基板レイアウトの簡略化と小型化に貢献するとのこと。

STEVAL-NRG011TVは現在入手可能で、価格は約195.00ドル。STNRG011は現在量産中で、単価は1000個購入時に約1.56ドル。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001181.000001337.html