Blue Economyと日本・スコットランドの協業(2)

英国大使館・スコットランド国際開発庁
松枝 晃

1-1.石油・ガス

北海油田開発の時期から数えると、50年以上の歴史がある。
これまで、435憶バレル相当の石油・ガスが採掘されている。2014年以降の油価下落後も、生産量は落ちていない。ローコスト化の努力により現状の油価でビジネスが可能になっており、北海油田の価値最大化を目指し2025年までに£170憶の投資が予想されている(図3)。

図3
                                         

図4,5にここ数年の開発・生産状況と近年のプロジェクトを示す。
実効的な残余量は、これまで採算があわなかった小規模の貯留層の生産がどこまでローコスト化できるかによる。
図3にあるように100から200憶バレル相当の残余量が見込まれている。

図4
図5

1-2.再生可能エネルギー

北海油田は、harsh environment(過酷な環境) だと言われるが、これは再生可能エネルギー源が多くあると言う事になる。実際、ヨーロッパ地域の洋上風力エネルギーの25%はスコットランド周辺にあると言われている。
2018年末の時点で再エネは約10GWの発電容量がある。スコットランド政府は2020年には全ての電力供給を再生可能エネルギーで賄うという目標をたてており、 2017年には約68%、2018年には約75%が達成されている。2030年には全てのエネルギーの50%を再エネで賄うという目標を立てている(2017年時点で20%)。
https://www.gov.scot/publications/annual-energy-statement-2019/pages/3/

図6

洋上風力発電では、浮体式にする事でより沖合、より深い海域に設置が可能になってきている。それに伴い1)設置に向けた調査、海底の整備(Surveys / Seabed Preparation),2)基礎、係留(Foundation and moorings)3)設置、ケーブル(installation, cables,)4)IMR 点検、保守、修理(Inspection Repair Maintenance ), 5)設置後のセンシング、モニタリング などの技術開発が必要になっている。

波力潮力発電は、風力に続くものであり英国内では合計40基を超える発電デバイスが設置されている。スコットランド北部とストローマ島の間にあるMey Genプロジェクトは最大のもので、2019年には、Gridに接続されて電力供給を行っている。しかし全体では依然コスト低減が必要な状況で、発電デバイスの大容量化が一つの方策とされている。

図7に近年計画されているプロジェクトの概要を示す。技術課題としては、1)基礎と係留(ピラー、アンカー、ムアリング。コスト低減)、2)設置(開発コストとリスクの大きな部分を占める)、3)材料と腐食(ダメージを防ぐ事で致命的な故障やライフサイクルコスト低減)、4)。点検と状態モニタリング( 石油ガスの検査技術が有効、IoT化自動化によるコスト低減)。5)発電と配電(送電用のケーブル、コネクター、配電機器)などがある。なお、Offshore Renewable CatapultにAnnual report、Technology reportなどがあり参考となる。
https://ore.catapult.org.uk/reports-and-resources/reports-publications/ore-catapult-reports/

図7

次週に続く-

【著者略歴】
松枝 晃(まつえだ あきら)
英国大使館・スコットランド国際開発庁 上席投資担当官
金沢大学 工学部 電気工学科卒、
1981年オリンパス光学株式会社(当時)。研究開発部門で回路設計、新規事業開拓、オープンイノベーション等経験。
2010年スコットランド国際開発庁。センシング技術を中心に日本スコットランド間の技術案件を担当。2012年から海洋関係。北海のSubsea技術と日本の海洋関連技術のコラボレーションを促進。