安全な協働ロボットのための壊れにくい力覚センサの開発(2)

埼玉大学 工学部
准教授 辻 俊明

2.力覚検知のメカニズム

力を検知するメカニズムは①ひずみゲージ型や静電容量型などの力覚センサを用いる方法、と②外力推定オブザーバのようにロボットや機械の入出力の関係から推定する方法、に大別される。また、前者と後者を組み合わせた手法も提案されている3)。前者は起歪体と呼ばれる構造体の微小変位から力を導出するのに対して後者はモータのトルクと角速度から動力学に基づき力を計算する。ほとんどの場合ロボットにはモータと角度センサが標準搭載されていることから、ロボットを想定した場合にはセンサレスで力を計測できるのが後者のメリットである。ただし、慣性や摩擦などの影響を受けるため、そのパラメータを正確に知る必要がある。以下では適用範囲の広い前者の力覚センサを中心にそのメカニズムを述べる。

空間においては並進方向に3軸の力、回転方向に3軸の回転力(モーメントやトルクとも呼ばれる)が存在し、一つの剛体に生じる合力は合計6軸まである。そのうちの1軸のみを検知するものは荷重センサやロードセルと呼ばれ、力覚センサの分類に数えないことが多い。上記のように剛体には6軸の力が作用することから、ツールの合力を知るためには6軸の力検知が標準的に必要であり、現在では6軸力覚センサが協働ロボットや組み立てロボットに数多く採用されている。多軸の力を検知するため、起歪体の様々な場所に微小変位を検知する複数の素子が取り付けられるが、ほとんどの場合その素子の数は軸の数に対して冗長な構成となっている。例えば歪ゲージ型の6軸力覚センサでは20~30枚の歪ゲージが貼り付けられることが多い。

次週に続く―

参考文献

*3) Yu Izumikawa, Kazuhiro Yubai, and Junji Hirai. “Fault-tolerant control system of flexible arm for sensor fault by using reaction force observer.” IEEE/ASME Transactions on mechatronics 10.4, pp. 391-396, 2005.

【著者略歴】
辻 俊明(つじ としあき)

1978年7月9日生。2006年3月慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学
専攻後期博士課程修了。
同年4月 東京理科大学工学部第一部機械工学科嘱託助手。
2007年4月埼玉大学工学部電気電子システム工学科助教。
2009 年10月から2015年3月までJSTさきがけ研究員を兼任。
2012 年3月より埼玉大学工学部電気電子システム工学科准 教授、現在に至る。

2018年度,2019年度日本ロボット学会理事。再生医療とリハビリテーション学会
理事。博士 (工学)。

2006年度,2007年度ファナックFAロボット財団論文賞等を受賞。主として力覚センシングとその信号 処理に関する研究に従事しており、リハビリ支援ロボット,モーションコントロール技術に応用している