エッジAIにおけるセンサ技術のインテリジェント化(1)

(株)東芝研究開発本部研究開発センター
コンピュータ&ネットワークシステムラボラトリー
松岡 康男

1. はじめに

巻頭言『 IoT時代におけるセンサ技術と技術継承』を受け、「エッジAIにおけるセンサ技術のインテリジェント化」に関して筆者が活動しているIVIでの活動事例を通して現在の課題、将来の期待について筆者なりの新解釈のもとで解説する。
日本でもIndustry4.0 が2015年を境に注目されつつあり、今では「わが国でも、新産業・イノベーション創出や国際競争力強化を牽引することを目的として、各種業種毎、さまざまな機関が存在している。中でも 『AI(人工知能)、IoT、ビッグデータ』をキーワードに、これらを核とした IoT の社会・ビジネスへの実装に向けた研究開発・実証がそれぞれの立場で、目的をもって進められている。究極は、どの機関でも、種々のセンサで得た巨大なデータを活用して集約する技術、また集約したデータ(ビッグデータ)を基に統計学的な解析判断を下す、または各種AIを利用して合理的判断を下そうという動きは共通している。ただ、それぞれに置かれている立場、立ち位置の違いから、そのデータの集積場所、AIの活用場所に大きな違いがあり、ビジネスモデルも違う。そうした中、半導体微細化技術、集積応用技術が進んで様々なエコ(低価格化、高速化、大容量化、長寿命化)な技術開発のもとで革新的に進化している半導体集積回路(メモリーIC)をはじめ、コンピュータの高速処理に特化したハードウェア化などは注目に値する。こうした技術の進歩にも牽引され、これまでの概念を大きく変えているケースも多々現れている。
近年、将来動向を見据えたうえで戦略的にビジネスモデルの大幅な見直しが各機関、企業にて急ピッチに進展しており、エッジコンピュータ化がそのトレンドの一つである。膨大な各種センサから収集できるデータをこれまでは、インターネットを通じて、クラウドに集約し、AIを活用して物事の最適解を求めるといったサイバー空間の考えから、日本に見られる現場主義、所謂、現場の末端、例えば製造装置から上がってくる各種時間軸管理(タイムアセット)に沿ったディープなデータを基にそのままリアルタイムにフィジカル空間の中で最適解を求める自律制御の考え方にシフトしている傾向が製造業において特に強くなっている。

そこで、本解説では、日本の強みとする製造業を主体としたManufacturing Industry系の中より現実の困りごとから最終的なあるべき姿を通して、ボトムアップ的な発想でサイバーフィジカルシステム(CPS)を考え、様々な実証検証を通して共通なリファレンスモデルを構築しようとしている団体のひとつ、日本における第4次産業革命をリードする業界団体IVI(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ:Industrial Value Chain Initiative:以下IVI)の活動を通してこれからの『Next Bigdata&AI(NBA)』を見据えて、世界的に注目されているコンソーシアムの動向を敷衍しつつ日本における活動動向などを通して現在の課題、将来の期待について筆者なりの新解釈のもとで解説する。加えて筆者が注目している次世代センサ協議会での速度感をもったセンサ技術の基盤技術開発(LOS(エルオーエス)は新たなユーズ視点の立場への展開加速とコンソーシアム連携強化活動にて今後のセンサ技術の発展、強いては日本のモノづくり産業の強化につながると思われる。

2.世界的な企業間連携動向

最初に世界的な企業間・連携の動向を通して世界的なインダストリアルIoTイニシアティブの連携関係を示したうえで、世界的に注目されているコンソーシアムの動向を敷衍した(図1)

図1 世界的な企業間・連携の動向

日本流の産業の未来像「Connected Industries」。そこには『日本の産業の強さは「人間中心」で「現場力」にある』ということが示されており、『これらを独自の強みとしつつ、国家間、産業間で協調を進めていく』という事が示されている。これを受け、IVIは、積極的に活動を展開してゆく中で、2017年4月26日、ドイツのハノーバー市にて、インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(以下、IIC)とインダストリアルIoT(IIoT)推進で連携する合意文書(MoU)に調印、今年6月には昨年に引き続き2回目の合同セミナーを開催するなどと活動的である。
また、昨年2018年3月1日には、IVIとドイツのインダストリー4.0 団体Allianz I4.0とも産業向けIoT 推進で提携。日独相互でインダストリー4.0 に関する情報交換をすることで、互いの活動への相互参加などを通じ、両者が連携するMoUに調印し活動を強化している。

そこで筆者は、本活動を通して、日本ならではの製造業を中心とするコンソーシアム活動に参加(活動期間:2016年4月から2019年3月までの4年間の活動)した中で、公知となった活動中心に『エッジAIにおけるセンサ技術のインテリジェント化』と題して、その活動概要から筆者なりの解釈のもとで解説をする。*1) *2) *3)

次週に続く-

【著者略歴】
松岡 康男
(株)東芝 研究開発本部 研究開発センター
コンピュータ&ネットワークシステムラボラトリー

専門は半導体プロセス微細加工技術、生産システム情報工学、脳型人工知能チップ研究開発、次世代エッジコンピュータの研究開発。
IVI(Industrial Value Chain Initiative)のビジネス連携委員長(2017-2018)、センサーデータ活用技術研究会:主査(2018-2019)、応用物理学会会員(1985-2019)、一般社団法人 日本USA産業振興協議会・準会員(2016-2019)