3.ローカル5G
3.1 ローカル5Gとは
IoTの普及等に伴う通信ニーズの多様化が進んでいる。特に5G時代においてはより一層の多様化が進むことが予想され、地域や個別のニーズ対応した5Gシステムを導入できる制度の必要性が認識されている。総務省は、情報通信審議会の下の「新世代モバイル通信システム委員会」に「ローカル5G検討作業班」を設置し、ローカル5Gの技術的条件等を取りまとめている。
ローカル5Gの候補帯域の状況を図4に示す。ローカル5Gは、4.6~4.8GHzおよび28.2~29.1GHzの周波数を利用することを想定しているが、検討項目が少ない28.2~28.3GHzの100MHz幅については先行的に技術的条件等の検討を行い、実証実験を始めている。
3.2 ローカル5Gネットワークの特徴
自営網であるローカル5Gネットワークは、次の特徴を有する。
(1)安定性
帯域を確保することにより、外部の無線トラフィックによる影響を受けない。
(2)柔軟性
必要な機能だけをいつでもどこにでも構築できる。
(3)独立性
公衆網から隔絶したネットワークを構築できる。
このようなローカル5Gネットワークの特徴を活かして、従来なかったサービスを提供することが可能となる。ローカル5Gを用いた主なシステム適用方法として、次のようなシステム構築が想定されている。
・地域や産業個別のニーズに対して、自治体や地域企業が5Gを使って独自に柔軟なシステムを構築可能。
・通信事業者の5G展開が進まない地域においても、5Gシステムを構築、利用が可能。
・工場内の通信は有線が主流であったが、ローカル5Gを用いて独自のセキュリティ対策、帯域の確保が可能となり、工場の無線化が加速。
3.3 プライベートLTE
2008年より導入された地域BWA(Broadband Wireless Access)は、デジタルディバイドの解消や地域の公共の福祉の増進に寄与することを目的として導入された2.5GHz帯の周波数(2,575~2,595MHz)の電波を用いた電気通信業務の無線システムである。このBWAバンドを、LTEを用いた自営無線(プライベートLTE)として利用できるようにする自営BWAの検討が始まっている。この自営BWAと呼ぶ無線システムの制度検討を行っているのは、5Gを自営網として利用できるようにするローカル5Gを検討している情報通信審議会のローカル5G検討作業班である。
LTEを用いることにより、企業における無線LANの位置付けとして次のメリットがある。
・通信エリアが広い
・重要なトラフィックの優先制御が可能である
・ノイズ耐性が高い
・セキュリティ強化策が打てる
次週に続く-
【著者略歴】
岡崎 正一(おかざき しょういち)
1975年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了.
同年三菱電機株式会社入社,基本ソフトウェア,ネットワークシステム,大規模応用システム開発等に従事.主な著書「UNIX-基本操作から実践活用まで-」,翻訳「PCパーフェクトガイド」等.
2012年より,MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)にて,IoTシステム技術等を推進.技術士(情報工学)、博士(情報学).