空間系LiDARから水中への展開(2)

島田 雄史
(株)トリマティス
代表取締役
鈴木 謙一
(株)トリマティス
マネージャー

2.2 LiDARへの取り組み
国内で入手できる主力LiDAR製品は、Velodyne5)、robosense6)、Valeo7)、QUANERGY8)などの海外メーカー製で、自動運転を直近のアプリケーションとして意識し、小型化、低価格化が進んでいる。しかしながら、自動運転など特定アプリケーションを見据えているため、必要最低限の機能、部品実装となり、我々の想定するアプリケーションへの転用は困難であった。
そこで我々は、投受光回路、信号処理回路、制御回路、ソフトウェア、光学系部品、スキャナで構成され、自動運転に限らず、様々な用途を想定したLiDARの研究開発、実験に使えるLiDAR KITを開発した9)。開発したLiDAR KITの外観、測定例、および特徴を図2に示す。開発したLiDAR KITは、測定距離レンジ、スキャン角度、測距精度、波長(光デバイス選定による可視光~近赤外への対応)、出力などのカスタマイズや、投光部、受光部、制御回路部のカスタマイズに対応可能で、1500nm帯波長の光源を用いた「アイセーフLiDAR」、可視光光源を用いた「可視光LiDAR」や、フラッシュ光源を用いた「Flash LiDAR」等、様々な用途を見越したLiDAR実験に適用可能である。

図2 開発したLiDAR KITの外観、測定例、および特徴

また、図2の測定例に示す通り、アイセーフ波長(1,550 nm)を使用することにより、S/N比の厳しい長距離でも正確な距離測定や、電線の観測が可能な高い空間分解能(10Gb/s系高速デバイス適用によるミリ単位の高分解能)を実現している。

3.水中LiDAR

3.1 水中LiDARに適用される光源
水中では、電波の損失が大きく、計測には音波がもっぱら用いられてきた。一方、光については、可視光領域で、水中の損失が小さいことが知られている。また表2に示すように水域、水の透明度によって損失の低い波長が異なり、透明度の高い純水や深海では青色の、透明度が若干低い沿岸や近海では緑の、透明度が著しく低い湾内では黄色の損失が低い。深海で損失の低い青色光源としては、昨今の高出力化、低コスト化の進展が著しく入手性の高いGaN-LD10-11)が普及している。またGaN系LDは、研究開発が進み、緑色光源としても期待されている10-11)。また、LDより扱いにくいが、ファイバーレーザー、個体レーザーや波長変換による緑色光源12)が入手可能である。黄色光源としては、個体レーザー13)や波長変換14)による研究開発が行われている。

表2 水域毎の低損失光と光源

次週に続く-

著者略歴

島田 雄史 (しまだたけし)
• 1994年 4月国際証券株式会社(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社
• 1995年 9月株式会社応用光電研究室(現在は消滅)入社
• 2001年 7月株式会社オプトクエスト設立に参加
• 2002年 8月富士通東日本ディジタル・テクノロジ株式会社(現在は富士通に吸収)入社
• 2004年 1月有限会社トリマティス(現株式会社トリマティス)設立、代表取締役 CEOに就任
• 2018年一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の共創プログラムであるALANコンソーシアムの代表にも就任

鈴木 謙一(すずき けんいち)
• 1990年4月日本電信電話株式会社入社
• 2009年3月博士(情報科学)取得(北海道大学大学院博士後期課程修了)
• 2011年IEEE1904.1 SIEPON WG(現IEEE1904 ANWG)副議長
• 2012年8月HATS推進会議光アクセスAd-hoc WG(現光アクセス相互接続連絡会主査
• 2013年4月日本電信電話株式会社NTTアクセスサービスシステム研究所グループリーダ
• 2019年2月株式会社トリマティス入社