土木と光技術のいま(4)

三田 典玄
(センサイト 企画運営委員)

●光ファイバー計測に集まる注目

やっと最近になって、と言われそうだが、実際、道路や橋などを扱う土木の分野では、橋などの歪みをリアルタイムで取得できる、埋込み型の光ファイバーの計測「光ファイバーセンシング」への問い合わせが増えている。これまでもいくつもの橋梁などの構築物に光ファイバーセンサは使われてきたのだが、まだまだ一部、というのが現状だった。

光ファイバーを橋梁などに埋め込み、その片方の端に光源を起き、もう片方に光センサを配置することにより、光センサが受ける光の微妙な変化を数値化することにより、リアルタイムで光ファイバーとそれに沿った構築物の歪みなどがわかる、というこの技術。光ファイバーを、たとえば橋梁に沿って埋め込んだ場合は、橋梁の歪みなどがわかる、というものだ。前記のように、老朽化した橋梁も増えてきた現在、舗装面や舗装面の下部の落下や剥落などの事故や、それを引き起こす、想定外の重量の貨物の通過(多くは時代の流れとともに、積荷の内容が変化した、などの事情もある)なども、大きな問題となることがある。橋梁の事故などが起きたときの責任の所在などを追求する場合などに、橋梁の歪みのデータは大きな意味を持つことになったため、光ファイバーセンサについて、特に施工業者からの問い合わせが増えているのが現状だ。

(写真1.)光ファイバセンシング振興協会

●土木におけるIoTのキーはソフトウエアによる画像処理技術

以上、土木における「光技術」について、総合的に見てきたが、なんといっても「光による構築物のクラック検査」は、その中でも今後大きく伸びる分野と言われている。その技術の要となるのは、ハードウエアとしてのセンサではなく、センサを利用してデータを得る「画像処理ソフトウエア」である。

もちろん、ハードウエアとしてのセンサはベースとなる技術として重要だが、現在土木業界はじめ、多くの業界が求めているのは「わかりやすく表示された正確な結果」であるからだ。また、これまでは、光技術だけに注目してきたが、ユーザーにとってみれば、それが光技術を使ったものか、あるいは超音波を使ったものか、はある意味どうでも良い。正しく正確な結果が簡単な操作で得られるかどうか?が重要である。

そのため、ソフトウエアにより重点が置かれているのだ。IT・ハイテクノロジーが身近になったぶん、ユーザーの求めるものは「より良い結果」である。そのため、ある一つの事象を捉える(例えばコンクリート構築物の内部のクラックを検出する)とき、これまでは光のセンサだけに頼っていたものを、その結果を他の種類のセンサで取得した事象とソフトウエアで合成し、より正確な結果をユーザーに提供する、という「計測器の新たなパラダイム」の時代が幕を開けたのが、現代という時代である。計測器も「デジタル」「ソフトウエア」が不可欠となったのはそのためだ。

参考文献

(写真1) 光ファイバセンシング振興協会ホームページ
http://www.phosc.jp/

著者紹介
三田 典玄(みた のりひろ)
サイバーセキュリティ、コンピュータ言語、インターネット、IoT専門家。 インターネットを日本に持ち込んだ一人。著書・翻訳書多数

2019現在     日本フォトニクス協議会知財戦略専門部会事務局長 センサイトプロジェクト企画運営委員
2013~2015  韓国・慶南大学・コンピュータ学科教授。専門:サイバーセキュリティ
2002~2004  経済産業省・産業技術総合研究所・ティシュエンジニアリング(再生医療)研究センター 特別研究員
1996~1997  東京大学・先端科学技術センター 協力研究員

その間、(株)シグマコーポレーション/(株)シースターコーポレーション/技能五輪 国内大会・世界大会の情報技術職種委員/台湾新聞/ジョルダン(株)/(株)プライムネット等