NEDOの委託事業である「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業」(以下、本事業)において、このたび、立命館大学は、複数のロボットを活用し、複雑なシステム連携を行う際のデータ連携基盤の運用に係る実証を本格的に開始する。
本事業を通じて、配送ロボットやドローンなどの自律移動ロボットに必要な種々のシステムのように、運用者の異なる複数システムが高度に連携するシステム(System of Systems:SoS)を形成した際に生じる課題を解決することで、ヒトとロボットが共生し、急速な変化に適応する自律進化を促す社会「Society5.0」の実現を目指す。
1.概要
NEDOは本事業※1において、立命館大学と「複雑なシステム連携時に安全性及び信頼性を確保する仕組みに関する研究開発」(以下、本テーマ)に取り組んでいる。
本テーマでは、配送ロボットやドローンなどの自律移動ロボットに係る種々のシステムのように、運用者の異なる複数システムが高度に連携するシステム(System of Systems:SoS※2)を形成した際に生じる課題(事故の予見や原因特定が困難など)の解決を目指している。
具体的には、SoS運用時のデータの収集・管理・共有が可能となるデータ連携基盤を構築するとともに、従来の一律で詳細な法規制とは異なる新たなガバナンスのあり方(アジャイル・ガバナンス※3)について検討する。
2.実証の概要
立命館大学は、自律移動ロボットの運用データおよびガバナンスに係るデータの収集・管理・共有のためのデータ連携基盤「アジャイル・ガバナンスプラットホーム」(以下、本プラットホーム)を研究開発している。
本プラットホームの構築により、運行中の配送ロボットやドローンなどの自律移動ロボットから取得されるセンサ情報のほか、建物側に設置される監視センサ(カメラ、LiDARなど)情報の統合管理により、事故やヒヤリハット発生時に、短時間での原因の特定と類似災害を防止するための情報共有などを実現する。
立命館大学は、2023年9月より大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)内のコーヒーショップと連携した配送ロボットをはじめ、自律移動ロボットの運行と本プラットホームの運用を繰り返してきた。そしてこのたび、5月19日の「いばらき×立命館DAY※4」を皮切りに、キャンパス内の大学生協のショップと連携した配送ロボットや清掃・警備ロボットも追加し、複雑なシステム連携時における本プラットホーム運用の実証を本格的に開始する。
3.今後の予定
NEDOと立命館大学は今回の実証を通じて、実用性および安全性の向上に資する知見を開発にフィードバックする。これにより、複数のシステムが連携した際、万が一事故が発生しても、原因究明や責任の特定の迅速化に資する本プラットホームの実現を目指す。また、アジャイル・ガバナンスの研究との両輪により、ヒトとロボットが共生し、急速な変化に適応する自律進化を促す社会「Society5.0」の実現に向け取り組んでいくという。
【注釈】
※1 本事業
事業名:産業DXのためのデジタルインフラ整備事業
事業期間:2022年度~2024年度
事業概要:産業DXのためのデジタルインフラ整備事業
※2 System of Systems:SoS
ドローンやサービスロボットなどの自律移動ロボットに係る種々のシステムのように、運用者の異なるさまざまなシステムが複雑に相互接続して短期間で更新されていくシステム全体のこと。従来の一律で詳細な法規制に基づくガバナンスのみでは、「事故の予見」「原因の特定」「原因が複数存在する」といったSoS特有の課題への対応が困難である。また、SoSでは、各システムの高頻度更新や人工知能(AI)による判断の増大など、そのシステムの安全性・信頼性評価などが膨大かつ高頻度になっていくことが想定され、その省力化が重要になる。
※3 アジャイル・ガバナンス
政府、企業、個人、コミュニティーといったさまざまなステークホルダーが、自らの置かれた社会的状況を継続的に分析し、目指すゴールを設定した上で、それを実現するためのシステムや法規制、市場、インフラといったさまざまなガバナンスシステムをデザインし、その結果を対話に基づき継続的に評価し改善していくモデルのこと。
※4 いばらき×立命館DAY
立命館大学大阪いばらきキャンパスで開催される一般公開イベントのことで、学生と地域住民のつながりをつくること、イベントに参加した団体同士で交流を深めてもらうことなどを目的とし、大阪府茨木市共催のもと開催している。
プレスリリースサイト(nedo):https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101743.html