1.【D2Dとは】
IoT(Internet of things)という単語が使われるようになって、既に10年以上の時間が経つ。今年2024年に新たに出現したキーワードは「D2D(Direct to Device)」だ。このキーワードだけでは何と何が「ダイレクト」なのかがわからないだろう。実は「D2D」は「衛星と地上のデバイス」という意味だ。
2.【Starlinkが拓いた道】
2022年後半に、あのイーロン・マスクが作った会社「SpaceX(Space Explosion Inc.,)」が、衛星と地上を直に接続する安価で一般庶民でも買って使うことのできるインターネット接続サービス、「Starlink」サービスを始めた。日本でも2022年11月に、サービスが開始され、かくいう私自身も、2023年1月に個人でStarlinkのハードウエアを購入し、以降、今日まで使い続けている。ハードウエアの購入費用36,500円。毎月の最低接続料金6,600円。まさに庶民に手の届く「衛星インターネット接続サービス」だ。クレジットカード払いで、1週間ほどでアンテナとルーターのセットが首都圏の私の自宅に届いた。2024年2月現在、Starlinkの日本での企業向け代理店はau/KDDI(株)となっている。
3.【Amazonも参入する「衛星」ビジネス】
また、2024年後半には、あのAmazonがStarlinkのようなサービスを開始する、とアナウンスされており、2024年の2月現在、様々な情報が飛び交っている。噂によれば、Starlinkと同じようなサービスを、Starlinkとほぼ同じか、あるいはさらに安く提供するとのこと。
4.【衛星コンステレーション】
これらのStarlinkが先陣を切った「一般消費者向け衛星インターネットサービス」は、数千から数万のインターネット基地局になる、低軌道に打ち上げた衛星をお互いにメッシュ状に接続し、地上のインターネットサービス・プロバイダに接続する。Starlinkの日本の地上局はau/KDDIが担っており、Amazonのサービス「Project Kuiper」は、NTT docomoが担う事になっている。低軌道のため、地上との通信の遅延は非常に少ない。しかし低軌道の衛星では静止衛星ができないため、数千から数万の衛星を打ち上げて、それらがとっかえひっかえ地上と通信をする。要するに日本の携帯電話事業の最初に作られた基地局切り替えのハングオーバーの技術が使われている。この衛星インターネットサービスを担うこの仕組みを「衛星コンステレーション(Constellation – 星座)」と言う。
5.【D2Cが】
2023年、ワシントンD.Cで開催された「Satellite 2023」には多くの西側諸国の衛星関連ビジネスマンが集い、様々なビジネスが始まった、というのが、Satellite 2023を訪れた方々の印象だったようだ。さらに、2023年1月にラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)では、さらに進んで、衛星と家庭等に置かれた地上局ではなく、衛星と現在普通に使われている4G/5Gのスマートフォンとの接続のデモも行われた。これは「Direct to Cell(Phone)」と呼ばれた。略して「D2C」だ。考えて見れば、現在のスマートフォンの基地局を低軌道の衛星に載せただけ、とも言えるが、もちろん、様々な特許と工夫の塊だ。
次回に続く-
【著者紹介】
三田 典玄(みた のりひろ)
株式会社オーシャンIoT事業部長
■著者略歴・他
インターネットを日本に持ってきた一人。
元 韓国・慶南大学校教授
元 東京大学先端技術研究所協力研究員
元 産業技術総合研究所特別研究員
元 台湾新聞日本語版副編集長。
現在、株式会社オーシャン(鹿島道路グループ)IoT事業部長。IoTのセミナー&プロダクト開発に従事。