オープンデータから広がるセンサデータ活用(1)

大島 正美(おおしま まさみ)
(一社)データクレイドル
代表理事
大島 正美

1.はじめに 社会とデータ

 新型コロナウイルス感染症により、経済活動、行政サービス、働き方、医療、教育、防災等様々な分野で社会と価値観の変容がもたらされた。また、デジタル化が急速に進展し、社会はデータであふれている。
 人の行動ログデータ、機械の稼働ログデータ、センサデータ、生体データ等、大量に生成されるデータが、人やAIの知識や判断の材料になり、暮らしやビジネスの改善・向上に活用されている。誰もがデータ消費者であり、データ生成・発信者になっている。

(図-1 社会はデータであふれている)
(図-1 社会はデータであふれている)

表-1 生成方法によるデータの種類
生成方法によるデータの種類 説明
行動ログデータ 人が行動することで、購買や健康等の様々なデータが蓄積される。誰がどのデータにアクセスしたかというアクセスログも行動ログの一種。
機械の稼働ログデータ、センサデータ 機器や都市に設置されたセンサから自動収集されるデータ。一定間隔で取得するデータ、障害発生時に取得するデータ等がある。
実験データ、調査データ 実験や調査の目的に応じて収集されるデータ。アンケートでは、調査対象の年齢や地域の分布、調査数等、調査結果が偏らないような配慮が必要。
生体データ 指紋や虹彩、顔画像、声、健康情報といった人体に由来するデータ。本人確認や健康管理などに用いられる。

出典:DXリテラシー標準(DSS-L)政府相互運用性フレームワーク (GIF)研修資料1)

2.デジタル化社会におけるデータ戦略

 国は、データは智恵・価値・ 競争力の源泉であるとともに、課題先進国である日本の社会課題を解決する切り札と位置付け、我が国初となる「データ戦略」(2020年12月データ戦略タスクフォース第一次とりまとめ)及びその具体的な取組の方向性となる「包括的データ戦略」2)(2021年6月)を策定した。
 Society 5.0 の実現をビジョンに定め、その実現に向けた基本的行動指針として、①データがつながり、いつでも使える、②データを勝手に使われない、安心して使える、③新たな価値の創出のためみんなで協力するよう推進していく というデータ活用の原則が示されている。

【データ活用原則】
① データがつながり、いつでも使える
・つながる(相互運用性・重複排除・効率性向上)
・いつでもどこでもすぐに使える(可用性・迅速性・広域性)
② データを勝手に使われない、安心して使える
・自分で決められる、勝手に使われない(コントローラビリティ・プライバシーの確保)
・ 安心して使える(セキュリティ・真正性・信頼)
③ 新たな価値の創出のためみんなで協力する
・みんなで創る(共創・新たな価値の創出・プラットフォームの原則)

 この「データ戦略」の基本的な考え方の中で、リアルタイム性を有するデータについて、以下のように特筆されている。
「リアルタイムデータを含む膨大な量のデータを生成、収集 、活用し、日本の豊かな人間社会と新たな価値を創出し、日本の国力を強化 するためには、国民や行政機関、企業、アカデミア等がデータに対する認識を共有する必要があることに留意すべきである。」
人々が地域や社会の状況や変容をいち早く把握し、スピーディに対応するために、リアルタイム性を有するデータは重要な役目を持っており、リアルタイム性を有するデータを生成するセンサに寄せる期待は大きい。

出典:デジタル庁「包括的データ戦略2)



次回に続く-





【著者紹介】
大島 正美(おおしま まさみ)
一般社団法人データクレイドル 代表理事

■略歴
民間企業研究所において情報検索業務に従事後、独立し起業、地域中小企業の情報検索・活用を 20 年余り支援。2012 年より NPO 法人地域 ICT 普及協議会設立、理事として遠隔医療や在宅医療介護連携などICT を活用した地域課題解決に取り組み、2015 年(一社)データクレイドル設立、理事就任。地域でオープンデータ推進、データ活用促進、データ活用人材の育成に取り組む。2022 年4月代表理事就任。

デジタル庁オープンデータ伝道師
総務省地域情報化アドバイザー
国土交通省「中国圏広域地方計画学識者等会議」委員