温度変化に左右されずセンサ信号を高精度に増幅。ゼロドリフトオペアンプ「LMR1002F-LB」

 ローム(株)は、産業機器や民生機器向けに入力オフセット電圧*1と入力オフセット電圧温度ドリフト*2を極小レベルに低減したゼロドリフトオペアンプ「LMR1002F-LB」を開発した。各種計測機器に搭載されるセンサからの出力信号を高精度に増幅できるオペアンプとして、電力制御インバータなどの電流計測用途や温度・圧力・流量・ガス検知などに最適である。

 新製品は、チョッパ方式*3を用いたローム初のゼロドリフトオペアンプ。従来品の低オフセットオペアンプにおける入力オフセット電圧が最大150µVなのに対して、新製品では94%減の最大9µVに抑えた。これにより、入力オフセット電圧の調整に必要な周辺部品やソフトウェアが不要となり、設計工数やコストの削減に貢献する。また、入力オフセット電圧温度ドリフトは、動作温度-40℃~+125℃の範囲で最大0.05µV/℃と、ロームのオペアンプで最小を実現した。温度など環境の変化に左右されず、計測したセンサ信号を正確に増幅できることから、工場内で稼働する産業機器などの高精度な制御に貢献する。電源電圧範囲は2.7V~5.5Vと広く、Rail to Rail入出力*4も備えることから、幅広い産業機器向けアプリケーションに対応可能である。

 なお新製品は、2023年11月から月産100万個の体制で量産を開始(サンプル価格1,100円/個:税抜)している。生産拠点は、前工程がローム浜松(株)、後工程がROHM Electronics Philippines, Inc.である。インターネット販売も開始しており、チップワンストップやコアスタッフオンラインなどから購入することができる。

<用語説明>
*1) 入力オフセット電圧
  オペアンプの入力端子間に生じる誤差電圧のことを入力オフセット電圧と呼ぶ。
*2) 入力オフセット電圧温度ドリフト
  温度の上昇、下降により入力オフセット電圧が変動することを入力オフセット電圧温度ドリフトといい、この変動量が小さいほど高精度なオペアンプといえる。入力オフセット電圧温度ドリフトをオペアンプ内で自動補正するのがゼロドリフトオペアンプ。
*3) チョッパ方式
  オペアンプ内部で生じるオフセット電圧を検出し、デジタル回路による制御で自動補正する回路方式のひとつ。回路内の静電容量に蓄えたオフセット電圧を電圧-電流変換回路を用いてフィードバックすることで、オフセット電圧をキャンセルする。
*4) Rail to Rail入出力
  オペアンプの入力及び出力の電圧が、供給されている電源電圧の範囲まで対応可能な回路形式のこと。このときの電源電圧をRailと呼ぶ。

ニュースリリースサイト:
https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2023-12-19_news_opamp&defaultGroupId=false