ダイキン・東ガス・理研、初めて冷媒の漏えいを遠隔検知するレーザー式R32検知技術を開発

 ダイキン工業(株)、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(株)〔以下「TGES」〕と、(国研)理化学研究所〔以下「理研」〕は、世界で初めてレーザーによるHFC-32(以下「R32」)の遠隔検知技術(以下「本技術」)を開発した。また、ダイキンとTGESは、その技術を実装した遠隔R32検知器の試作機(以下「本検知器」)を共同で開発し、本検知器による遠隔でのR32検知を実証した。今後、検知感度のさらなる向上を図り、2024年度中のフィールドテストの実施を経て、2025年度の実用化を目指すという。

 エアコンには、空気を冷やしたり温めたりするために欠かせない冷媒と呼ばれるガスが封入されており、冷媒には主にHFC(ハイドロフルオロカーボン)が使用されている。近年、その漏えいによる温暖化影響が国際的に問題視され、冷媒の温暖化係数(以下「GWP」)低減や、漏えい対策が求められている。こうした中、日本では世界に先駆けて、2012年以前に主な冷媒として使用されていたHFC-410A(以下「R410A」)※1と比べてGWPが1/3となる低GWP冷媒のR32への転換が進み、現在では、国内向けに製造販売されている家庭用エアコンのほぼ100%がR32となっている。また、R32はグローバルでも低GWP冷媒としての認知が広がり、すでに130ヵ国以上で普及が進んでいる。世界的に普及が進むR32に対する漏えい対策の重要性が増す中、R32の漏えいを的確かつ効率的に発見できる本技術の実用化を通じた温室効果ガス排出のさらなる抑制に取り組む。

 現在、エアコンのフィールドサービスで行われる冷媒漏えい有無の確認には、漏えいが疑われる箇所に検査機器を近づけて周辺の気体を採取する採気式※2を用いるのが一般的である。この手法では、エアコンの本体や配管は、天井の裏側など、脚立が必要な高所や人の手が届きづらい狭い場所に据え付けられていることが多いため、作業に手間と時間を要するだけでなく、安全性を確保しづらい場合や、検査機器を近づけることが困難な場合もあった。一方、このたび開発した本検知器は、離れた場所から対象物周辺に向けてレーザー光を照射することで、レーザー光の経路中におけるR32の有無を遠隔から効率的に確認できる。従来の採気式と比べ、作業工数の大幅な削減や安全性の向上が期待でき、その後の迅速な対処にもつなげられる。

 加えて、本技術および本検知器は、R32を含む混合冷媒の検知もできるため、例えば、以前は主要な冷媒として使われていたR410A冷媒に対しても活用可能である。また、使用中の機器からの冷媒漏えいの検知だけでなく、撤去された機器からの漏えい検知、冷媒の再生プラントでの漏えい監視など、冷媒循環サイクルにおける様々なシーンでの活用を通じた、温室効果ガス排出抑制への貢献も期待できる。今後、本技術および本検知器の社会実装を通じてサステナブルな社会への貢献を目指す。

※1 R410AはR32とR125を50:50で混合した冷媒で、地球温暖化係数がR32の約3倍。
※2 検査機器に内蔵したセンサに接触した冷媒を検知する方式

ニュースリリースサイト:https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20231115-01.html