1. ソーナーを使用したシールドマシンのトンネル掘進作業支援技術開発
シールドマシン作業の音響支援を通じて、工事に起因した地盤の沈下などに配慮して、施工工事における安全管理技術の一環として実施した。
(1) 音響反射波を捉える工夫
シールドマシンが起動中、掘削スポーク裏面からの音響反射波を計測するため、中心周波数30kHzのチャープ波を使い、帯域を広げ、検出能力を上げた。また、発信の干渉ノイズ、鋼板内部反射を除去、掘進作業騒音を除去、攪拌翼の反射波を避けることが重要な課題である。そこで、様々な工夫を試行錯誤した。ノイズに埋もれた反射波を抽出するため、回転に伴うスポーク反射波の変動特性との相関に注視した。ノイズ除去法と、加重平均による反射点の抽出法を開発、自動解析処理化を図った。ノイズを除去し弱い反射波を捉えるため、掘削回転移動している音響反射情報を利用し、スポークを通過する、1スキャン当たり平均200回程度自動計測することとした。また、1スキャンを10分割とし、センターに近づく信号と遠ざかる信号を比較して、反射波を抽出することが可能となった。最終的には音速と、反射強度からベントナイト泥の密度を監視、加泥量を制御するための基本情報を得ることが可能となった。
本技術開発は鉄建建設株式会社の事業として実施した。
2.海鷹海脚のメタンプルーム湧出量の定量観測手法開発と実用化
- 音響ビデオカメラVoyager3000とガスサンプラーの2つの定量計測
音響ビデオカメラ3MHz、分解能3mm、高度2m で海底から湧出するメタンガスプルームを計測し、浮上速度の計測、ガス粒子径、航走速度を補正して湧出量Q(m3/h)を求める高精度技術を開発し、実用化を推進した。 - EM2040wcd(water column display) による各サイト湧出ポイントと湧出量の計測
マウンド地形と大きな湧出プルームの位置関係、活動状況を高度40mで、低速航走し、300kHz、分解能0.1mで湧出量を計測・解析する技術を開発・実用化した。
ガスプルームの反射が強く、システムが海底と区別できない状態の情報を使い、そのまま海底地形抽出すると、海底のマウンド地形と大きな湧出プルームの位置関係、活動状況が詳細に分かる技術を開発した。 - REOPARD ROV作業により独自製作ガスサンプラー8㍑計量容器を湧出口に被せて、5分から30分の湧出量の計量を行い、正確な湧出量を計測した。重要な参照値として位置づけられる。
- EM122wcd海鷹海脚全体の湧出量を音響反射強度から定量計測し、湧出活動の時空間変動の関係を把握した。EM2040wcd及びEM122wcd計測原画像から、送信ビームのセクター、海底検出情報を、音響画像情報に重畳し広範囲のプルーム湧出位置と量を計測する。次に、干渉ノイズを除去、トンネル効果干渉ノイズを除去、ビーム間の干渉ノイズを除去、プルームの海底直上の検出境界下限を設け、的確にプルームの反射強度を抽出する。さらに、受信サイドローブビームに映るゴーストを自動除去し、ランダムに時間変動するノイズを除去、同じ空間位置の連続する反射波を自動抽出することにより正確性を向上した。
湧出プルームの定量解析する際に、送信サイドローブゴーストを自動除去する工夫を行い、実用性を高めた。最終的に、詳細なプルーム涌出量のマッピングを行い、EM122wcd海脚全体の湧出量を音響反射強度から定量計測を繰り返し実施し、湧出活動の時空間変動の関係を把握する手法を開発した。
本研究は、経済産業省のメタンハイドレート研究開発事業の一部として実施した。
This study was conducted as a part of the methane hydrate research project funded by METI (the Ministry of Economy, Trade and Industry, Japan).
次回に続く-
【著者紹介】
浅田 昭(あさだ あきら)
東京大学 名誉教授
■略歴
- 昭和52年3月早稲田大学工学部電気工学卒業
- 平成7年10月東京大学理学博士授与
- 昭和54年4月海上保安庁海洋情報部入庁
- 平成12年4月東京大学生産技術研究所教授
- 平成25年4月東京大学生産技術研究所海中工学国際研究センター長
- 平成31年3月定年退職
- 令和元年6月東京大学名誉教授
学会活動:
WSS2008,Scientific Committee (平成20年)
IEEE/OES Japan Chapter , 表彰選考委員(平成20年)
海上保安庁UJNR海底調査専門部会, 日本側技術顧問(平成22年)
UT2013, Technical Committee Co-chair (平成25年)
TECHNO-OCEAN General Co-Chairs (平成30年)