京大院薬とNIBIOHN、抗体ペアが抗原分子上に反応場をつくり出す

 京都大学大学院薬学研究科〔以下「京大院薬」〕と国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所〔以下「NIBIOHN」(ニビオン)〕では、両機関の連携を通じて創薬科学に貢献する新技術の開拓を進めている。連携研究室であるバイオ医薬品化学分野に所属する秋葉宏樹 京大院薬 助教(兼 NIBIOHN 研究員)、大野浩章 同教授、鎌田春彦 NIBIOHNプロジェクトリーダー、西山健太郎 京大院薬 博士後期課程学生らの研究グループは、Biepitopic Antigen-Templated chemical Reaction (BATER):2つのエピトープを利用する抗原テンプレート反応 という新しい概念の化学反応を開発した。

 特定の場所だけで化学反応を起こす技術は、医薬品開発研究や生体内での薬物治療法の開発等に利用できるため、様々な反応の開発が進んでいる。研究グループでは、『エピトープ均質化抗体パネル』と呼ばれるNIBIOHNの技術を利用して、特定の蛋白質の複数の異なる部分(エピトープ)を抗原として認識する抗体を複数取得した。これらの抗体のうち、結合する抗原の場所が近接した抗体を2つ用い、それぞれに互いに反応する官能基を修飾した。これらの抗体が抗原に結合した際のみに特定の化学反応が進行することを、明らかにした。この成果から、生体内で利用できる反応の開発が進むことが期待されるという。

本研究成果は、2023年5月31日に国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載された。

ニュースリリースサイト(nibiohn):https://www.nibiohn.go.jp/information/nibio/2023/06/008605.html