1-Wire®バス(2)

永井 郁(ながい いく)
アナログ・デバイセズ(株)
リージョナル・ビジネス・グループ
永井 郁

2.2.1-Wireメモリ/認証デバイス製品

 電源や電気回路が搭載されていないメカ部品や周辺機器、消耗品に1-Wireメモリ製品を追加し正規品認証、使用回数管理、製造情報管理、校正データの保存などを行う事で、製品の安全性や信頼性および機能の向上をはかることができる。図3に1-Wireメモリ製品の一例として112バイトのユーザーEEPROMを持つDS28E055)のブロック図を示す。

図3.1-Wireメモリ製品の内部ブロック図
図3.1-Wireメモリ製品の内部ブロック図

 なお、NFCなどの無線タグ技術を使うことで電源の無い部品や機器の認証を非接触で行う事もできるが、1-Wire製品は物理的接続を必要とすることにより確実に接続されたかどうかの確認を行う事ができ、図3に示すような産業用の電源コネクタや医療機器のカートリッジなど、確実な接続が確認できない場合に本体機器の動作を禁止したい用途に有効である。1-Wireメモリ製品は図4に示すSFN3), 4) (Single、Flat、No contact) パッケージに対応し、機器の接続面に直接取り付けて直接パッケージ端子で電気的接合をとり、コネクタやPCB基板を不要とする簡易で経済的な設計を実現する。パッケージは3.5mm x 5mm x 0.35mm、3.5mm x 6.5mm x 0.75mm、6mm x 6mm x 0.9mmの3種類がある。

図4.1-Wireメモリ製品の用途例とSFNパッケージ(上:用途例、左下:SFNパッケージ写真、右下:SFNパッケージを樹脂筐体に組み込んだ例)
図4.1-Wireメモリ製品の用途例とSFNパッケージ
(上:用途例、左下:SFNパッケージ写真、右下:SFNパッケージを樹脂筐体に組み込んだ例)

 なお、1-Wireメモリ製品として様々なメモリ容量の製品があるほか、医療機器などで求められるガンマ線耐性を保持する製品がある。更にECDSAやSHAなどの暗号化技術を搭載し、1-Wireコントローラとの間で暗号認証を行う1-Wire認証デバイスもあり、用途で求められるセキュリティ・レベルに応じて使い分けることができる。

2.3.温度センサ/iButton®

 図5に1-Wire温度センサの例としてMAX31820PAR6)の外形とコントローラとの結線図を示す。MAX31820PARは-55~125℃の測定範囲、10~45℃の範囲で+/-0.5℃の精度を保証する環境温度センサであり、1-Wireバスの少ピン数の特徴を生かし3ピンのTO92パッケージで提供する。温度センサの精度としては一般的な精度ではあるが、1-Wireバスからの給電で駆動できるため、電源や電気回路が搭載されていないメカ部品や周辺機器、消耗品などの周辺温度の容易かつ経済的な測定を実現する。

図5.1-Wire温度センサの外形と結線図
図5.1-Wire温度センサの外形と結線図

 1-Wireバスのセンサとして、iButton® 7)8)と呼ばれる図6に示すようなボタン電池状の缶パッケージに収められた温湿度データロガーもある。iButton製品は内部に電池、温度センサ、基準クロック、1-WireインターフェースICを内蔵し、事前に専用のソケットに接続してPC経由で測定間隔などの設定を行った後にタイムスタンプ付の温度データの取得を開始する。図5の例にあるDS19239)の場合は-20~85℃の温度測定範囲で測定可能で、-10~65℃で0.5℃精度、0~100%RHの湿度測定範囲で0.04%RHの分解能でデータ記録し、1分間隔のデータ記録頻度で2~3ヵ月以上の動作が可能である。記録されたデータは再び専用のソケットに接続してPC経由で取得する。センサ精度のトレーサビリティ証明として、パッケージおよび内部メモリに記載/記憶された固有のIDに紐づいたNIST証明書が提供される。DS1923のパッケージはIP56相当の封止レベルであり、医薬品や食品などの輸送履歴管理が必要な物資に同梱して使用される実績がある。

図6.iButtonの構造と外形(左上:構造図、右上:外観、下:外形サイズ)
図6.iButtonの構造と外形
(左上:構造図、右上:外観、下:外形サイズ)

3.まとめ

 本稿では、電源や電気回路が搭載されていないメカ部品などのモニタリングや管理を簡易かつ経済的に行える1-Wire技術およびそれを利用したセンサを紹介した。本稿で紹介した技術がセンシング応用を広げユーザーの利便性向上を進めるうえでの一助となれば幸いである。





【著者紹介】
永井 郁(ながい いく)
アナログ・デバイセズ株式会社 リージョナル・ビジネス・グループ

■略歴

  • 1999~2004年電子部品メーカーで製品開発に従事
  • 2004年~アナログ・デバイセズ社 MEMSセンサのビジネス開拓と技術サポート、産業分野のビジネス等に従事