「徳島大学におけるイノベーション ~多様な産学連携の推進~」
 4章:高等教育研究センター 学修支援部門 創新教育推進班(イノベーションプラザ)の活動(1)

 

徳島大学 研究・産学連携部 地域産業創生事業推進課
徳島大学 高等教育研究センター学修支援部門 創新教育推進班 徳島大学i.school

4.1 創新教育推進班(イノベーションプラザ)

 近年、世界経済の環境変化が激しさを増し、日本の産業競争力低下が懸念される中、大学にはその変化に対応できる人材の育成が期待されている。急速にグローバル化が進む世界において、技術力と製品化で世界を先行していた日本が再び勢いを取り戻すためには、経験のない課題や問題に対しても的確に物事を捉える課題発見力や、それを解決するための自主性や探求力、独創性、表現力等を備え、デザイン思考によりイノベーションを創出できる人材の育成が不可欠である。
 そこで徳島大学では、イノベーション教育に関連する学内資源を集約した「イノベーションプラザ」を設置し、「創造」「自主」「共創」の理念を基に、今までにない新しいアイデアを生み出し、社会の様々な課題を解決できる真のイノベーション人材の育成を目指している。これを実現するため、学生の創造性とアントレプレナーシップを育成するイノベーション教育手法と学習達成度評価法を開発するとともに、その成果を学内外に情報発信することで、イノベーション教育の推進を支援している。これらの目的を達成するため、イノベーションプラザには次の3つの担当を用意している。
 「イノベーションデザイン担当」は、イノベーションの基盤である課題の探索と解決のための新規アイデア創出を支援している。2018年4月には産学連携による課外活動「イノベーションチャレンジクラブ」を発足させ、徳島にいながら東京や大阪などに本社機能を持つ企業のリアルな課題に対し、デザイン思考で課題解決を目指す課外活動に取り組み、2018年から2020年までの3年間で、延べ79名が活動を行ってきた。これらの活動は、現在「徳島大学i.school」の活動へと受け継がれている(詳細は本特集号「3章 CO.TOKUSHIMAの活動」を参照)。
 「イノベーション創成担当」は、学生の自主・共創の精神を養成し、学部学科の分野を横断する自主的なプロジェクト活動を支援している。具体的には、プロジェクト活動の計画・実行に関する助言、活動場所や発表機会の提供、目標の達成度評価、活動成果の発信などを行っており、学生は「自らを創成する」ことを目的に様々なテーマに取り組み、また、地域貢献として子ども達を対象にした科学イベントや企業との交流なども行っている。所属人数は2019年度156名(8プロジェクト)、2020年度132名(7プロジェクト)、2021年度195名(7プロジェクト)、2022年度223名(6プロジェクト)と、全学部から学生が参加し、活動している。
 2022年度は、徳島初の電車走行を目指す阿波電鉄プロジェクト(図1)、ゲーム制作を通して専門技術や社会人基礎力の習得向上を目指すゲームクリエイトプロジェクト、鳥人間コンテスト滑空機部門への出場を目指す鳥人間プロジェクト(図2)、自作燃料でのハイブリッドロケットの製作打上を目指すロケットプロジェクト(図3)、災害時救助のためのロボットの技術開発などを競うレスキューロボットコンテスト2022で「消防庁長官賞」を受賞したロボコンプロジェクト(図4)、学生のよりよい大学生活を目指すアプリ開発プロジェクト(仮)の6プロジェクトが活動している。この中で2018年度からスタートした鳥人間プロジェクトでは、活動4年目となる2021年に、念願の初出場を果たした。

図1 電車走行を目指す阿波電鉄プロジェクト
図1 電車走行を目指す阿波電鉄プロジェクト
図2 鳥人間プロジェクト
図2 鳥人間プロジェクト
図3 ロケットプロジェクト(2020年に打ち上げたTRP-HR10 EDDY号)
図3 ロケットプロジェクト(2020年に打ち上げたTRP-HR10 EDDY号)
図4 ロボコンプロジェクト「とくふぁい!」
図4 ロボコンプロジェクト「とくふぁい!」

 「社会実装担当」は、後に示す大学産業院と連携し、学生生活から生まれたアイデアの実社会への実装に向けた取組みを支援している。ビジネスコンテスト参加支援として、学生に対してプレゼンテーションや申請書類作成のサポート、徳島県外で開催されるコンテストの交通費や参加費の補助を行っている他、学生の社会実装活動を支援する助成事業「仁生イノベーショングラント」を平成28年度より実施している。その他にも、学生の取り組みを徳島県内で活躍する企業代表者に知っていただく機会を創出し、参加学生のアントレプレナーシップ醸成を目指す「徳島ネットワーキングピッチ」や、学生のクラウドファンディング支援など、幅広い支援を行ってきた。クラウドファンディングについては、学生プロジェクトからは4つ、イノベーションチャレンジクラブからは1つのプロジェクトが実践し、すべてのプロジェクトで目標を上回る金額を達成した。
 これらの取組の中で生まれた徳島大学発ベンチャーである株式会社KAIは、 2021年3月に開催された「Japanビジネスデザイン全国発見&発表会η(イータ)2020-2021」において、女性起業家大賞、ナイスビジネス賞を受賞した。
 イノベーションプラザでは、これらの担当を通して、アイデア創出から自主的プロジェクト活動による実践活動、社会実装までの一貫した実践的イノベーション教育を目指した活動を続けており、着実に成果を挙げている。



次回に続く-