JMU次世代セミサブ型洋上風力発電浮体コンセプトについて (2)

ジャパンマリンユナイテッド(株)
神澤 謙

3.次世代セミサブ型浮体コンセプト

本浮体コンセプトは前述の福島実証研究事業等で培った浮体の建造・設置・保守管理の知見を活かし、信頼性・製造性・収益性の高い設計を目指している。
また2021年に本浮体デザインに対して、DNV(ノルウェー船級協会)よりSTATEMENT OF FEASIBILITY を取得した。特にシンプルな構造体とすることで、高い信頼性とライフサイクルコストの低減を実現できるとの評価を受け、本浮体が実用的技術であることが認められている。

次世代セミサブ型浮体
次世代セミサブ型浮体
DNV Statement of Feasibility
DNV Statement of Feasibility

3.1 浮体の信頼性

洋上風力発電浮体は他の海洋構造物と比較して非常に大きな風荷重を受けることが特徴である。一旦設置された後は20 年以上稼働することが前提であり、その間台風を始めとした日本特有の厳しい気象海象に耐える必要があるため、浮体には高い信頼性が求められる。
本浮体では高信頼性を実現するため、損傷リスクの高いブレース等を使用せず、シンプルな平板ボックス構造を採用した。また全ての区画に浮体内部からアクセス可能としており、高いメンテナンス性を確保している。

3.2 浮体の製造性

風力発電のコスト低減のため今後更なる風車大型化が想定されており、浮体には大型風車の施工に対応可能な高い施工性が求められる。更に風車大型化に伴い浮体も大型化するため、既存設備を有効活用できるよう高い建造性も確保することが低コスト化において重要となる。
本浮体は4本コラムとすることで浮体の幅を縮小し、国内外の多くの造船所で建造できる設計としている。また喫水が浅いため風車搭載や曳航時荒天避難の際に多くの港湾に入港が可能である。

3.3 浮体の収益性

採算性の高い浮体コンセプトとするには浮体自体のコスト削減に加え、設備利用率を向上させる必要がある。
本浮体においては、12MW級の大型風車に対応しつつもコンパクトな浮体サイズとすることで鋼材使用量を削減している。また大波高時でも低動揺となる性能を実現することで波が高い時でも発電が可能となり、設備利用率の向上が見込め、荒天時の風車の破損を防止することができる。

4.おわりに

JMUでは海象条件や風車機種といった様々な仕様条件に合わせ、設計・建造・風車搭載・設置までを一貫して行うことが可能である。その技術力を生かし開発した次世代セミサブ型浮体の早期実現化を通じ、温室効果ガス排出量の削減が世界的に求められる中で環境保護と社会の発展に貢献していく所存である。



【著者紹介】
神澤 謙(かみざわ けん)
ジャパンマリンユナイテッド株式会社 海洋エンジニアリング事業部
海洋エンジニアリングプロジェクト部 洋上風力開発G

■略歴
2017年 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 卒業
同年 ジャパンマリンユナイテッド株式会社 入社 現在に至る
  洋上風力発電浮体を始めとした、海洋構造物の開発・設計に従事