福岡工業大学大学院工学研究科生命環境化学専攻の宮元展義准教授の研究グループは、約100万分の1mmの薄さの無機ナノシートの集合体を用いて、力を検知して色変化を起こす新素材「無機ナノシート構造色ゲル」を開発した。
この新素材は、極めて微弱な力(1kPa)を検知して色が変わり、色変化は何度も繰り返して起こすことが出来る。このゲル膜を使えば複雑なセンサの取り付けを行うことなく物体表面の力をリアルタイムで可視化できる。また、無機ナノシートが高分子ゲルとナノレベルで複合化されているため、高い強度と柔軟性を併せ持つ。
これらの特性から、表面加重を可視化することが重要なスポーツ科学分野や、水力発電用水車などのエネルギー機器開発分野で役立つことが期待される。さらに、この新素材は、無機ナノシートの液晶特性を利用して製造されるため、低コストで作成できる。この研究成果はドイツの化学誌『Angewandte Chemie International Edition』で掲載されるのに先立ち、Early viewとして、3月3日付けでonline掲載されたとのこと。
◇強く、柔軟、高速応答。様々な用途に応用
1kPa(豆腐を押しつぶすのに必要な力の10分の1ほど)の弱い力を検知し、1000分1秒の以下のスピードで応答する。これにより、物体のどの部位にどれくらいの圧力がかかっているかを、リアルタイムでの色調変化としてとらえることができる。「無機ナノシート構造色ゲル」は柔軟性と強度(圧縮破壊強度3MPa)を併せ持っているため、荷重による破壊前兆を警告する表示デバイスを作ることができる。また、インクや染料と違って紫外線などによる褪色に強いため、色褪せない装飾品などとしても利用できるという。
◇鉱物由来のハイテク素材「無機ナノシート」
天然の鉱物などの無機物質の中には、薄いシートが幾重にも重なった層状結晶の状態で存在するものがある。これらの層状結晶をバラバラに剥離・分離させ、約100万分の1ミリの薄さのナノレベルの小さなシートにしたものが「無機ナノシート」。
「無機ナノシート構造色ゲル」はこのナノシートの集合体で作られている。無機物であるが故に耐久性があり、かつ薄いシート状のため他の材料に比べて比表面積大きく、高分子ゲルと強力に相互作用しながら混ざり合うため、高い強度を実現している。さらに、今回用いたナノシートは、様々な機能性と高い設計性を持つことから注目を浴びている「層状ペロブスカイト」という物質から造られており、特定の化学物質の検出など、さらなる応用も期待されるとしている。
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