3.静電容量式圧力センサ
静電容量式圧力センサでは図3に示すように圧力が印加されるダイアフラムと数μm程度の狭いギャップを挟んで固定電極を設けて可変容量を構成し、印加圧力変化をその静電容量値の変化に変換する。
狭いギャップはエッチングによりくぼみを形成したシリコン基板を上で述べた陽極接合技術を用いてガラス基板に接合することで容易に実現することができる。
ギャップ長が d 、対向面積が S 、ギャップの誘電率が ε0 の平行平板電極間の静電容量値 ε0S/d に対して、圧力が印加されて、ダイアフラムが w だけ変位したときの静電容量値 C は変位 x はダイアフラムの場所の関数となるために次式で与えられる。
ここで積分範囲はダイアフラムの面全体である。
変位 w(x,y) はダイアフラム中央で最大となり、周辺に向かって減少する形となる。印加圧力に対する容量値変化の線形性を改善するためにダイアフラムの中央部を肉厚のボスとする方式などが用いられている。
静電容量式圧力センサの信号処理では可変容量を発振回路に取り込んで容量値変化を発振周波数変化に変換する方式や可変容量を差動容量の構成にして交流ブリッジ回路に組み込んで電圧変化に変換する方式などが用いられている。後者では寄生容量の影響を打ち消すことができるので容量値が小さい場合などに有効となる。
4.まとめ
以上MEMS圧力センサについて基本事項のみを述べたが、実際の圧力センサでは様々な圧力レンジに対応するために専用の実装構造が用いられている。油圧用など高圧用センサでは金属ダイアフラムを有するケースの内側をシリコンオイルで満たし、その中に半導体ダイアフラムのセンサチップを設置したような2重ダイアフラム構造も用いられている。また低圧用として表面マイクロマシニングによる多結晶シリコンダイアフラムを用いたものも開発されている。表面マイクロマシニングを用いることで、さらに小型のダイアフラムを有する圧力センサや小型ダイアフラムを二次元アレイ化した触覚イメージセンサを実現することが期待されている。また加速度センサなどの他のセンサとのセンサ・フュージョンによる高機能化も研究が行われている。
参考文献
1) 室英夫他「マイクロセンサ工学」(技術評論社)、5.1 圧力センサ、pp.100-113 (2009).
【著者紹介】
室 英夫(むろ ひでお)
一般社団法人センサイト協議会 企画運営副委員長
■略歴
1976年 東京大学工学部電子工学科卒業
1978年 同大学院工学系研究科電子工学専攻 修士課程修了
1981年より日産自動車(株)中央研究所において自動車用半導体デバイス・MEMSセンサの研究開発に従事
1998年 東京大学より博士(工学)の学位取得
2006年 千葉工業大学工学部教授
SOI-MEMS技術を用いた共振形センサ、熱式マイクロセンサ、磁歪膜積層型磁気センサなどの研究に従事
2019年 同定年退職
2008年より次世代センサ協議会技術委員長
■著書
マイクロセンサ工学(技術評論社、共著)
次世代センサハンドブック(培風館、共著)
電子デバイス入門(日新出版、共著) など